以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、圧電型MEMSスイッチ100の概略構成を示す図である。
圧電型MEMSスイッチ100は、所謂高周波スイッチ(RFスイッチ)の1つであり、圧電アクチュエータによって機械的にスイッチングを行う装置である。
図1に示すように、圧電型MEMSスイッチ100は、第1駆動部SP1と、第1信号線14と、接触端子15と、第1グランド(第1GND)16と、第2駆動部SP2と、第2信号線24と、第2グランド(第2GND)26と、を含んで構成される。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11(圧電駆動素子)と、第1駆動回路12と、第1ビーム13(梁)とを含んで構成される。また、第2駆動部SP2は、第2駆動素子21と、第2駆動回路22と、第2ビーム23(梁)とを含んで構成される。また、圧電型MEMSスイッチ100を構成する上述の要素は、例えば筐体等の固定部材PKによって覆われた状態とされる。
第1信号線14及び第2信号線24はそれぞれCu等の導体から構成される。また、接触端子15は、例えばAu等の導体から構成される。圧電型MEMSスイッチ100では、外部からの入力信号を第1信号線14及び第2信号線24を介して導き、第2信号線24から出力信号として外部へ出力する。第1信号線14と第2信号線24との間は、接触端子15により接続及び切断が切り換えられる。
接触端子15が、第1信号線14に固定されている場合は、接触端子15が第2信号線24に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。接触端子15は、第1信号線14ではなく、第2信号線24に固定することもできる。
接触端子15が、第1信号線14及び第2信号線24の双方から離間している構造の場合、接触端子15の移動によって、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24の双方に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。
なお、第1信号線14と第1GND16とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、所定の特性インピーダンスを有する高周波線路が形成される。また、第2信号線24と第2GND26とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、所定の特性インピーダンスを有する高周波線路が形成される。第1GND16と、第2GND26とは、電気的に接続されており、同電位に固定されていることが好ましい。これらのグランドは、第1信号線14と第2信号線24を一続きの高周波線路、例えばCPW(Coplanar Waveguide)を形成する。なお、第1信号線14と第1GND16との間には容量C1が介在し、第2信号線24と第2GND26との間には容量C2が介在する。
接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えは、第1信号線14、接触端子15及び第2信号線24のうちの一部の物理的な移動によって行われる。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11によって、第1ビーム13を変形させ、第1信号線14に接触端子15が固定されている場合には、これら双方を移動させ、第1信号線14に接触端子15が固定されていな場合には、接触端子15を移動させる機能を有している。
第2駆動部SP2は、第2駆動素子21によって、第2ビーム23を変形させることができるので、第2ビーム23に固定された第2信号線24は、必要に応じて、接触端子15の方向へ移動したり、離間することができる。なお、第2ビーム23を変形する必要が無い場合には、第2駆動素子21には第2駆動回路22から駆動信号は与えられず、第2ビーム23の変形が不要である場合は、第2駆動回路22は無くてもよい。
第1駆動部SP1では、制御回路CONTからの信号に基づいて第1駆動回路12からの電圧印加により、第1駆動素子11が変形する。第1ビーム13(可撓性部材)は、可撓性を有する部材により構成され第1駆動素子11の変形に伴って変形する。
同様に、第2駆動部SP2では、制御回路CONTからの信号に基づいて第2駆動回路22からの電圧印加により、第2駆動素子21が変形する。第2ビーム23(第2信号線支持部材)は、可撓性を有する部材により構成され第2駆動素子21の変形に伴って変形する。
図2は、圧電駆動素子の構成について説明する概略断面図である。
以下では、XYZ三次元直交座標系を設定する。図1に示した第1ビーム13の厚み方向をZ軸方向とし、長手方向をX軸方向として、Z軸及びX軸の双方に垂直な幅方向をY軸方向とする。
図2に示すように、第1駆動部SP1の第1駆動素子11は、Pt等の下部電極11a、圧電体11b、及びPtなどの上部電極11cをZ方向に積層配置した構成を有する。この第1駆動素子11の下部電極11aと上部電極11cとの間に電圧を印加することにより、圧電体11bの厚さが増加し、面内寸法が減少する(面内方向では縮む)。
第1駆動素子11が、圧電素子である場合の材料について、補足説明する。
圧電体の材料としては、電気機械結合係数が大きく、伝搬損失およびパワーフロー角が小さく、遅延時間温度係数が小さい材料が好ましい。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)などが好適である。各層の形成には、従来公知の成膜方法を適宜用いることができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法、プラズマアシスト気相成膜(PCVD)法、めっき等を用いることができる。その他、圧電体の材料としては、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、チタン酸ビスマスナトリウム(BNT)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ビスマス鉄酸化物(例えば、BiFeO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等を用いることができる。
第1駆動素子11の寸法について説明する。
第1駆動素子11のX軸方向の寸法は200μm(50μm〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50μm〜500μm)、Z軸方向の寸法は2μm(0.3μm〜3μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1駆動素子11の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求される駆動素子の微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。
第2駆動部SP2の第2駆動素子21についても、第1駆動素子11と同様に、下部電極21a、圧電体21b、及び上部電極21cを含んで構成される。また、第2駆動素子21の構造、材料及び作用効果は、第1駆動素子11の場合と同一である。さらに、第2駆動素子21のXY平面内の形状は、第2ビーム23のXY平面内の形状と同一であり、これらが固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
図3は、第1ビーム13及び第2ビーム23の周辺構造を説明する概略構造図である。
本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチ100では、第1ビーム13及び第2ビーム23はそれぞれX軸方向に延びる平板状の可撓性部材であり、長手方向がX軸方向に沿って整列し、同一のXY平面内に配置されている。第1ビーム13の−X方向の一端側及び第2ビーム23の+X方向の一端側がそれぞれ固定部材PKに対して固定されていて、第1ビーム13及び第2ビーム23において、互いに対向する先端部分は、自由端とされている。すなわち、第1ビーム13及び第2ビーム23は所謂片持ち梁構造を有する。
第1ビーム13には第1信号線14が取り付けられていると共に、第2ビーム23には第2信号線24が取り付けられている。第1信号線14及び第2信号線24は、それぞれ第1ビーム13及び第2ビーム23の延在方向(X軸方向)に沿って配置されている。また、第1ビーム13における自由端側の端部には接触端子15が取り付けられる。接触端子15は、第1信号線14と接続している。接触端子15は、第1ビーム13から接続する本体部15a(接触端子本体)と、本体部15aから突出する接点部15bとを含んで構成される。接点部15bは、本体部15aにおいて、第2信号線24と対向する位置に設けられる。接触端子15は導体により構成されて、第1駆動素子11及び第2駆動素子21が駆動していない状態では、本体部15aにおいて第1信号線14に対して接続する側の端部とは逆側の端部に設けられ、第2信号線24側へ突出する接点部15bが第2信号線24に対して離間した状態に配置される。なお、接触端子15の接点部15bは、接触端子15の本体部15aと同一の材料であってもよいし、本体部15aとは別の材料であってもよい。
第1駆動素子11は、第1ビーム13と固着しているため、第1駆動素子11の変形の通りに、第1ビーム13は変形する。また、第2駆動素子21は、第2ビーム23と固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
第1駆動素子11に対して電圧を印加することによって第1駆動素子11と連動して変形すると、第1ビーム13が変形し、接点部15bが下方へ移動する。同様に、第2駆動素子21に対して電圧を印加することによって第2駆動素子21と連動して変形すると、第2ビーム23が変形する。第1ビーム13の変形及び/又は第2ビーム23の変形により、接点部15bが第2ビーム上の第2信号線24と接触する。これにより、接触端子15を介して第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続される。
なお、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えができる構成であれば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の構成は特に限定されない。例えば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の一方は駆動回路を備えず、駆動素子の圧電駆動によってビームが移動しない(すなわち、固定部材PKに対して固定される)構成であってもよい。この場合であっても、一方側のビームの変形によって、第1信号線14、第2信号線24、及び接触端子15の位置関係を変更することによって、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えを実現することができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料について、補足説明する。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料は特に限定はされないが、歪応力曲線において線形性を示す材料、すなわち弾性を有する材料が好ましい。例えば、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Sn−P合金、単結晶Si等を適宜用いることができる。なかでも単結晶Siは、歪応力曲線において広い線形領域を有するため、特に好適に用いることができる。第1ビーム13及び第2ビーム23の材質は、上述のように、可撓性を有する材料から適宜選択することができるが、上述の材料の他に、SiNx(窒化シリコン)、Al2O3(アルミナ)、TiNx(窒化チタン)、SiO2(酸化ケイ素)、AlN(窒化アルミ)、多結晶Si、アモルファスシリコン、ダイアモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を用いることができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の寸法について説明する。
第1ビーム13のX軸方向の寸法は250μm(50μm〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50μm〜500μm)、Z軸方向の寸法は3μm(0.5〜5μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1ビーム13の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求されるビームの微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。また、第1ビーム13のXY平面内の形状は、偏向可能な可動領域(固定部材PKに固定された部分よりも先端側の領域)に関しては、概ね長方形であるが、この可動領域の形状としては、例えば、半円形、フォーク状形状、三角形が考えられる。
なお、上記の圧電型MEMSスイッチ100は、例えば、図4に示す電子機器に適用することができる。
図4は、本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチが適用される電子機器の一例の概略構成図である。
図4に示す電子機器200は、無線通信を行う電子機器であり、ハウジングHに収容された複数の圧電型MEMSスイッチ100と、複数の圧電型MEMSスイッチ100に対してそれぞれ直列に接続されたフィルタ102と、アンテナ103と、スイッチ104と、処理回路105と、入力装置106と、ディスプレイ107と、制御回路CONTと、を含んで構成される。
アンテナ103からは、変調された高周波信号(RF信号)が入力される。電子機器200では、制御回路CONTからの制御によって複数の圧電型MEMSスイッチ100におけるON/OFFが切り替えられる。例えば、アンテナに含まれる複数の周波数帯域の信号から、単一の周波数帯域の信号を選択することができる。アンテナ103により受信された入力信号は、必要に応じて、アンプで増幅された後、ON状態が選択された圧電型MEMSスイッチ100、及び、当該圧電型MEMSスイッチ100に接続されたフィルタ102を通り、スイッチ104を経て処理回路105に入力し、処理回路105において入力信号に係る処理が行われる。それぞれのフィルタ102は、通過帯域の異なる周波数フィルタであり、選択された周波数の信号が、処理回路105に入力されることとなる。
処理回路105は、変調されていた入力信号を復調し、復調された信号から、文字又は画像情報を抽出し、制御回路CONTは、処理回路105から得られた文字又は画像情報をディスプレイ107上に表示することができる。なお、アンテナ103への入力信号は、映像信号又は音声信号とすることもできる。
また、入力装置106からユーザにより入力される情報が、制御回路CONTに対して送られて制御回路CONTによる複数の圧電型MEMSスイッチ100の制御に反映されると共に、処理回路105による処理の結果等が制御回路CONTを介して、ディスプレイ107に対して出力されて、ユーザに通知される。なお、電子機器は、携帯電子機器とすることができる。
本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチ100は、上述したように、第1駆動素子11及び第2駆動素子21の圧電駆動により、接点部15bと第2信号線24との接触及び離間が繰り返されることにより、第2信号線24と接触端子15との接続及び切断が繰り返される。
ここで、圧電型MEMSスイッチ100では、第1ビーム13に取り付けられた接触端子15が支持部材によって支持されていることを特徴とする。この支持部材は、接触端子15を複数方向から支持する。接触端子15が支持部材により支持されていることで、接点部15bが第2信号線24と接触する際に生じる力を分散させることができる。そのため、例えば、変形や破損等による圧電型MEMSスイッチの接触不良を低減可能とすることができる。
図5は、圧電型MEMSスイッチ100における第1ビーム13及び第2ビーム23の周辺の拡大図である。圧電型MEMSスイッチ100における支持部材30による接触端子15の支持について、図5を参照しながら説明する。
図5に示すように、圧電型MEMSスイッチ100では、第1ビーム13及び第2ビーム23の形状が一般的な圧電型MEMSスイッチと異なる。すなわち、X軸方向に延び互いに対向配置される第1ビーム13及び第2ビーム23の端部の形状が凹凸となっている。具体的には、第2ビーム23は、第1ビーム13側の端部(自由端側の端部)において、端面が第1ビーム13側に突出している凸部23aを有する。一方、第1ビーム13は、第2ビーム23側の端部(自由端側の端部)において、端面に凹部13aを有する。第2ビーム23の凸部23aと第1ビーム13の凹部13aとは対応する形状になっていて、所定の距離だけ離間した状態で対向して配置している。すなわち、第1ビーム13の凹部13aにより形成された空間に第2ビーム23の凸部23aが入り込む状態となっている。
第1ビーム13では、凹部13aの周縁付近まで第1信号線14が延び、第1信号線14に対して接触端子15(本体部15a)が接続する。なお、凹部13aの周縁とは、第1ビーム13の主面のうち、凹部13aを囲む領域のことである。接触端子15の第1信号線14側の端部は、第1ビーム13における凹部13aの周縁において、第1ビーム13の主面に対して固定される。一端が凹部13aの周縁に固定された接触端子15は、平面視において凹部13aと重なるように、凹部上方へ突出する。上述のように、凹部13aにより形成された空間に第2ビーム23の凸部23aが入り込んでいるので、平面視において、接触端子15の下方には第2ビーム23の凸部23aが位置する。一方、第2ビーム23上の第2信号線24は、X軸方向に延びて、凸部23a上まで延在する。
したがって、第1ビーム13の変形及び/又は第2ビーム23の変形により、接触端子15の接点部15bが、第2ビームとの相対的に下方へ移動することで、接点部15bが第2ビーム23の凸部23a上の第2信号線24と接触する。これにより、接触端子15を介して第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続される。
第1ビーム13の接触端子15は、上側、すなわち、本体部15aにおいて接点部15bが設けられている側とは逆側から、支持部材30によって支持される。
支持部材30は、Y軸方向に延びて、接触端子15のうち接点部15bが設けられている側の端部を覆うように形成される。また、支持部材30の両側の端部は、第1ビーム13の凹部13aの周縁において、第1ビーム13の主面に対して固着される。また、平面視において接触端子15と重なる領域では、接触端子15に対して固着される。すなわち、支持部材30は、接触端子15を複数の方向(+Y方向及び−Y方向)から支持する。なお、接触端子15を支持する方向とは、支持部材30によって形成される接触端子15と第1ビーム13とを結ぶ直線の延びる方向のことを指す。
支持部材30の厚さは、特に限定されないが、支持部材30を厚くすると接触端子15を含む第1ビーム13の先端部分の重量が増大するため、動作に影響を与える可能性がある。したがって、支持部材30の厚さを第1ビーム13の動作に影響を与えない範囲(例えば、1μmを下回る程度)とすることが好ましい。
なお、支持部材30は接触端子15に対して交差するようにY軸方向(接触端子15に対して+Y方向及び−Y方向)に延びているが、少なくとも接触端子15及び第1ビーム13のそれぞれに対して固着されている部材であれば、支持部材として機能する。つまり、支持部材30は、接触端子15から+Y方向へ延びて第1ビーム13の凹部13a周縁に固着される第1の部材、及び、接触端子15から−Y方向へ延びて第1ビーム13の凹部13a周縁に固着される第2の部材の2つの部材から構成されていてもよい。
このように、支持部材30が接触端子15の延在方向(X軸方向)に対して交差する方向に延びて、平面視に見たときに接触端子15に対して複数の方向(+Y方向及び−Y方向)から接触端子15を支持する構成とすることで、接点部15bが第2信号線24と接触する際に生じる力を支持部材30が分散させることが可能となる。
また、支持部材30のように、接触端子15の延在方向とは異なる2つの方向から接触端子15を支持する場合、接点部15bと第2信号線24との接触により生じる力を、接触端子15の延在方向とは異なる複数の方向へ分散することができるため、本体部15aに対して負荷がかかることを防ぐことができる。したがって、接触端子15の接点部15bにおける接触不良を低減可能となる。なお、支持部材30が、接点部15bが設けられている側とは逆側において、接点部15bに対応する位置を支持している場合に、上記の作用が効果的に奏される。
また、図5に示すように、第1ビーム13が凹部13aを有していて、接触端子15が凹部13a周縁に対して固着されて凹部13aの方向へ延びる構成である場合に、支持部材30は、凹部13a周縁のうち接触端子15とは異なる位置に端部が固着されて接触端子15を支持する構成とした場合、接触端子15の延在方向とは異なる方向から接触端子15を支持する構成を実現しやすくなる。また、凹部13aを利用した構成の場合、第1ビーム13に固着されている支持部材30の一端側と、接触端子15と固着されている一端側との距離を短くすることができるため、接触端子15の支持をより強固に行うことができる。
なお、支持部材30の材料は特に限定されないが、第1ビーム13及び第2ビーム23と同様に、歪応力曲線において線形性を示す材料、すなわち弾性を有する材料が好ましい。支持部材30が弾性を有していることで、接点部15bが受ける力の分散をより好適に行うことができる。弾性を有する材料としては、例えば、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Sn−P合金、単結晶Si等を適宜用いることができる。なかでも単結晶Siは、歪応力曲線において広い線形領域を有するため、特に好適に用いることができる。支持部材30の材料は、上述のように、可撓性を有する材料から適宜選択することができるが、上述の材料の他に、SiNx(窒化シリコン)、Al2O3(アルミナ)、TiNx(窒化チタン)、SiO2(酸化ケイ素)、AlN(窒化アルミ)、多結晶Si、アモルファスシリコン、ダイアモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を用いることができる。なお、支持部材30は、第1駆動素子11を構成する下部電極11a及び上部電極11cよりもヤング率が高いこと、又は、降伏強度大きいことが好ましい。このような構成を備えることで、電圧の印加による第1駆動素子11の変形を支持部材30が規制することを防止することができる。
ただし、支持部材30は、第1ビーム13とは別の材料であることが好ましい。支持部材30が固着する第1ビーム13と、支持部材30とが異なる材料により構成されている場合、第1ビーム13と支持部材30の間に固着面(接合面)が形成されるため、第1ビーム13と支持部材30とが同じ材料により構成されている場合と比較して、接触端子15の接点部15bにかかる力による接触端子15の変形の抑制効果が高くなる。
なお、支持部材30は、接触端子15と同じ材料とすることもできる。すなわち、接触端子15と支持部材30とが一体化されていてもよい。この場合、支持部材が固着される第1ビーム13の端部は、駆動素子の電極や信号線等の導電性の部材からは絶縁されている必要がある。
次に、図6〜図13を参照しながら、圧電型MEMSスイッチ100の製造方法について説明する。圧電型MEMSスイッチ100の製造方法は、公知の圧電型MEMSスイッチの製造方法と比較して、支持部材の形成に係る工程が含まれている点が相違する。
図6は、上記の工程を説明するフロー図であり、図7〜図13は、製造工程を説明する模式図である。
図5に示したように、接触端子15及び支持部材30の周辺は構造が複雑であるため、図7〜図13では、図N(A)として第1ビーム13及び第2ビーム周辺の平面図を示し、図N(B)として、X軸方向に沿った矢視図(NB−NB線に沿った矢視図)を示し、図N(C)として、Y軸方向に沿った矢視図(NC−NC線に沿った矢視図)を示している。なお、図7〜図13では、第1ビーム13及び第2ビーム23がそれぞれ幅広の平板状であり、第1ビーム13及び第2ビーム23内にそれぞれ2つの駆動素子が離間して配置されていて、且つ、第1ビーム13及び第2ビーム23上に第1GND16及び第2GND26が配置されている例について説明するが、当然ながら図7〜図13の構成に限定されるものではない。
まず、基板上に、駆動素子層、ビーム材層を成膜した後に、パターニングを行う(S01)。具体的には、図7に示すように、基板41上に、下部電極層、圧電体層及び上部電極層がこの順に下から積層された第1駆動素子層11d及び第2駆動素子層21dを形成する。その後、高さ調整用の犠牲層42(レジスト)を形成した後にパターニングを行う。なお、基板41は、圧電型MEMSスイッチにおける固定部材PKとなる部材である。犠牲層42の厚さは、第1ビーム13及び第2ビーム23の高さ位置によって決められる。
次に、図8に示すように、駆動素子層11d,21d及び犠牲層42の上方に第1ビーム材層13d(可撓性部材層)及び第2ビーム材層23d(第2信号線支持層)を形成する。このとき形成される第1ビーム材層13d及び第2ビーム材層23dは、圧電型MEMSスイッチ100における第1ビーム13及び第2ビーム23の形状に対応して、図8(A)等に示すように、対向部分に凹凸が形成されている。
さらに、第1ビーム材層13dと第2ビーム材層23dとの隙間には、犠牲層43(レジスト)を形成する。この犠牲層43は、第1ビーム材層13d及び第2ビーム材層23dの上方に接触端子層及び支持部材層を形成する際に、第1ビーム材層13dと第2ビーム材層23dとの隙間が埋められることを防止するためのものである。なお、図8(A)(以降の図も同様)に示すように、本実施形態で説明する第1ビーム材層13d及び第2ビーム材層23dにはそれぞれ開口13e,23eが形成されているが、第1ビーム13及び第2ビーム23の軽量化等を目的としたものであり、必須ではない。
次に、ビーム材層上に信号線用の金属層を形成する(S02)。図9に示すように、第1ビーム材層13d上に、第1信号線層14dと、第1グランド(GND)層16dとをパターニングにより形成する。同時に、第2ビーム材層23d上に、第2信号線層24dと、第2グランド(GND)層26dとをパターニングにより形成する。
次に、接触端子15のためのGAP犠牲層を形成する(S03)。本実施形態では、図10に示すように、2層のGAP犠牲層44,45を積層して形成する。GAP犠牲層44は、接触端子層を第2ビーム材層23dから離間させて形成することを目的とした層である。また、GAP犠牲層44の上方に形成されるGAP犠牲層45は、接触端子の下側(信号線側)を規定するための層である。GAP犠牲層44,45には、例えば、Si,SiO2等の材料を用いることができる。また、樹脂材料等をGAP犠牲層に使用してもよい。
次に、接触端子層15dを形成した(S04)後に、支持部材層30dを形成する(S05)。図11は、GAP犠牲層45の上部に接触端子層15d及び支持部材層30dをこの順に積層した状態を示している。なお、支持部材30が接触端子15と一体化された導体により形成される場合は、支持部材層30dは、接触端子層15dと一体的に形成される。図11(C)に示すように、支持部材層30dの端部が、第1ビーム材層13dの主面上に固着するように形成されることで、支持部材層30dから形成される支持部材30を接触端子15と第1ビーム13との間に架け渡すことができ、接触端子15を接触端子15の延在方向とは異なる方向から支持することを可能とする。
その後、犠牲層42,43及びGAP犠牲層44,45をエッチングにより除去する(S06)。これにより、図12に示すように、第1ビーム材層13d及び第2ビーム材層23dの一部が宙に浮いた状態となる。ただし、駆動素子層11d,21dは、基板41に対して浮いていない。
そのため、基板上面のエッチングを行う(S07)。この結果、図13に示すように、駆動素子層11d,21dも基板41から離間した状態となり、一方の端部が基板41(固定部材PK)に固定されて他方の端部が自由端となり、内部に第1駆動素子11を有する第1ビーム13と、同様に一端が自由端であって内部に第2駆動素子21を有する第2ビーム23と、ビーム上に取り付けられた第1信号線14及び第2信号線24と、第1ビーム13の端部に設けられた接触端子15と、接触端子15を支持する支持部材30と、を有する圧電型MEMSスイッチ100が製造される。
このように、本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチ100では、接触端子15を複数の方向から支持する支持部材30によって、接触端子15が支持されている。これにより、接点部15bが第2信号線24と接触する際に生じる力を分散することができる。したがって、スイッチの制御を繰り返すことによって接点部15bを含む接触端子15の破損等によって接触不良が生じることを防止することができる。
また、圧電型MEMSスイッチ100では、X軸方向に延び互いに対向配置される第1ビーム13(可撓性部材)及び第2ビーム23(第2信号線支持部材)の端部の形状が凹凸となっている。特に、第1ビーム13は、第2ビーム23側の端部(自由端側の端部)において、端面に凹部13aを有していて、接触端子15は、第1ビーム13の主面上の凹部13aの周縁から凹部13a側に突出している。また、支持部材30は、第1ビーム13上の凹部13a周縁において接触端子15の取り付け位置とは異なる位置に対して端部が固着された状態で接触端子15を接点部15bが設けられた側とは逆側(上側)から支持する。これにより、支持部材30による接触端子15の複数方向からの支持を好適に行うことができる。
さらに、第2ビーム23に設けられた凸部23aが第1ビーム13の凹部13aに対応した形状となっていて、凸部23aと凹部13aとが入り込んだ配置となっていることで、圧電型MEMSスイッチ100における主要部となる接触端子15、第1ビーム13、第1信号線14、第2ビーム23及び第2信号線24をコンパクトに配置することができ、スイッチとしての機能を好適に発揮することができる。
また、支持部材30が第1ビーム13とは別材料で構成されていることで、第1ビーム13と支持部材30の間に固着面(接合面)が形成される。したがって、第1ビーム13と支持部材30とが同じ材料により構成されている場合と比較して、接触端子15の接点部15bにかかる力による接触端子15の変形の抑制効果が高くなる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、支持部材30の形状は適宜変更することができる。上記実施形態では、X軸方向に延びる接触端子15に対して、支持部材30がY軸方向(+Y方向及び−Y方向)から接触端子15を支持する構成について説明したが、接触端子15を支持する方向が複数方向であればよく、上記の構成には限定されない。したがって、例えば、接触端子15の延在方向と同一の方向から支持する支持部材と、接触端子15の延在方向とは異なる方向から支持する支持部材と、の組み合わせであってもよい。
また、接触端子15を3以上の方向から支持する構成であってもよい。この場合、図5に示すように第1ビーム13の主面上と接触端子15との間を架け渡す支持部材の数を増やす構成としてもよい。また、支持部材を幅広形状又は平面視において半円形状として、第1ビーム13の凹部13aの周縁における固着部分を増やすことで、複数方向から接触端子15を支持する構成としてもよい。この場合、支持部材は接触端子15を面的に支持することになり、接触端子15において接点部15bが第2信号線24と接触する際に生じる力を分散する効果を更に高めることができる。
また、第1ビーム13及び第2ビーム23の形状等は適宜変更することができる。例えば、第1ビーム13の凹部13aと第2ビーム23の凸部23aとが入れ込んだ構成にも限定されない。また、凹部13a及び凸部23a自体を備えない構成であってもよい。その場合でも、接触端子15を複数の方向から支持する支持部材を備えていることで、接点部15bを含む接触端子15の破損等によって接触不良が生じることを防止することができる。
さらに、第1ビーム13及び第2ビーム23を変形させるための第1駆動素子11及び第2駆動素子21の配置及び形状等も適宜変更することができる。また、第2ビーム23は、可撓性を有していなくてもよい。この場合でも、第1ビーム13が変形することで、信号線間の接続と切断とを切り替えることができる。