図1から図5は、本発明の第1の実施形態に係るスイッチング素子X1を表す。図1は、スイッチング素子X1の平面図である。図2は、スイッチング素子X1の一部省略平面図である。図3から図5は、各々、図1の線III−III、線IV−IV、および線V−Vに沿った断面図である。
スイッチング素子X1は、基板S1と、固定部11と、可動部12と、信号線13と、信号線14(図2にて省略)と、駆動線15と、駆動線16(図2にて省略)と、グラウンド線17とを備える。
固定部11は、図3から図5に示すように、境界層18を介して基板S1に接合しており、例えば、単結晶シリコンなどのシリコン材料よりなる。固定部11を構成するシリコン材料は、1000Ω・cm以上の抵抗率を有するのが好ましい。境界層18は例えば酸化シリコンよりなる。また、本実施形態では、固定部11は、基板S1とともに本発明における固定部をなす。
可動部12は、例えば図1および図2に表れているように、可動ランド部12aおよび梁部12b,12cを有し、スリット19を介して固定部11に囲まれている。梁部12b,12cは、固定部11および可動ランド部12aを連結し、当該固定部11および可動ランド部12aの間において本実施形態では平行に延びて、並列している。すなわち、可動部12は、片持ち構造で固定部11に支持されている。可動部12について図3から図5に示す厚さT1は例えば15μm以下である。また、可動部12について、図2に示す長さL1は例えば200〜400μmであり、長さL2は例えば300〜500μmである。スリット19の幅は例えば1.5〜2.5μmである。このような可動部12は、例えば単結晶シリコンよりなる。
信号線13は、図2によく表れているように、可動ランド部12a上、梁部12b上、および固定部11上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部12a上において、信号線14と接触可能な接点部13aを有する。信号線13の厚さは例えば0.5〜2μmである。また、信号線13は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線13は、所定の導電材料よりなり、例えば、Mo下地膜とその上のAu膜とからなる積層構造を有する。このような信号線13は、本発明における第1信号線である。
信号線14は、図3に示すように、固定部11上に立設されており、且つ、信号線13に対向する部位を有する。信号線13に対向する部位において、信号線14は、信号線13に向かって延出する突起部たる接点部14aを有する。信号線14の厚さは例えば10μm以上である。また、信号線14は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線14の構成材料としては、Auを採用することができる。このような信号線14は、本発明における第2信号線である。
駆動線15は、図2によく表れているように、可動ランド部12a上、梁部12c上、および固定部11上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部12a上において、駆動電極部15aを有する。駆動電極部15aは、本発明における可動駆動電極部である。駆動線15の厚さは例えば0.5〜2μmである。駆動線15の構成材料としては、信号線13の構成材料と同一のものを採用することができる。このような駆動線15は、本発明における第1駆動線である。
駆動線16は、図4に示すように、駆動線15の駆動電極部15aの上方を跨ぐように固定部11上に立設されており、駆動電極部15aと対向する駆動電極部16aを有する。駆動電極部16aは、本発明における固定駆動電極部である。駆動線16の厚さは例えば10μm以上である。また、駆動線16は、図1に示すように信号線13,14に沿って延び、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線16はグラウンド線である)。駆動線16の構成材料としては、信号線14の構成材料と同一のものを採用することができる。このような駆動線16は、本発明における第2駆動線である。
グラウンド線17は、図1に示すように信号線13,14に沿って延び、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。グラウンド線17の構成材料としては、信号線14の構成材料と同一のものを採用することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X1において、駆動線15に電圧を印加すると、駆動線15の駆動電極部15aと駆動線16(グラウンド接続されている)の駆動電極部16aの間には静電引力が発生する。印加電圧が充分に高い場合、可動部12は、信号線13の接点部13aが信号線14の接点部14aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、図6に示すような、スイッチング素子X1の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線13,14が接続され、信号線13,14間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X1において、駆動線15に対する電圧印加を停止することによって駆動電極部15a,16a間に作用する静電引力を消滅させると、可動部12はその自然状態に復帰し、信号線13ないし接点部13aは、信号線14ないし接点部14aから離隔する。このようにして、図3および図5に示すような、スイッチング素子X1の開状態が達成される。開状態においては、信号線13,14が電気的に分離され、信号線13,14間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。また、このような開状態にあるスイッチング素子X1については、上述したスイッチオン動作によって再び閉状態ないしオン状態に切り替えることが可能である。
スイッチング素子X1においては、信号線13は、可動ランド部12a上、梁部12b上、および固定部11上にわたって設けられ且つ可動部12上ないし可動ランド部12a上において接点部13aを有し、信号線14は、接点部13aに対向する接点部14aを有し且つ固定部11に対して固定されており、接点部13a,14aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線13,14間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X1は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X1では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X1は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X1においては、駆動線15は、可動ランド部12a上、梁部12c上、および固定部11上にわたって設けられ且つ可動ランド部12a上において駆動電極部15aを有し、駆動線16は、駆動電極部15aに対向する駆動電極部16aを有し且つ固定部11に対して固定されており、駆動電極部15a,16a間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部15a,16a間に静電引力が生じて、駆動電極部15aが接合している可動ランド部12aが駆動電極部16a側へと動作ないし弾性変形する。駆動線15は信号線13とは別体として設けられており(駆動線15は、信号線13が通過する梁部12bとは異なる梁部12cを通過して、可動ランド部12aから固定部11まで引き回されている)、且つ、駆動線16は信号線14とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X1においては、信号線13,14と駆動線15,16とは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X1では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X1は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X1では、図1の平面視において、信号線13,14のなす信号線路は駆動線16(グラウンド線)およびグラウンド線17の間に配され、且つ、駆動線16およびグラウンド線17は当該信号線路に沿った形状を有する(当該信号線路、駆動線16、およびグラウンド線17は、平行に配されている)。すなわち、信号線路(信号線13,14)および二本のグラウンド線(駆動線16,グラウンド線17)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線13,14からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
図7から図10は、スイッチング素子X1の製造方法を、図3の一部、図4の一部、および図5の一部に相当する断面の変化として表す。
本方法においては、まず、図7(a)に示すような材料基板100を用意する。材料基板100は、SOI(silicon on insulator)基板であり、第1層101、第2層102、および、これらの間の中間層103よりなる積層構造を有する。本実施形態では、例えば、第1層101の厚さは15μmであり、第2層102の厚さは525μmであり、中間層103の厚さは4μmである。第1層101は、例えば単結晶シリコンよりなり、上述の固定部11および可動部12へと加工される。第2層102は、例えば単結晶シリコンよりなり、上述の基板S1へと加工される。中間層103は、例えば酸化シリコンよりなり、上述の境界層18へと加工される。
次に、図7(b)に示すように、第1層101上に導体膜104を形成する。例えば、スパッタリング法により、第1層101上にMoを成膜し、続いてその上にAuを成膜する。Mo膜の厚さは例えば50nmであり、Au膜の厚さは例えば500nmである。
次に、図7(c)に示すように、フォトリソ法により導体膜104上にレジストパターン105,106を形成する。レジストパターン105は、信号線13に対応するパターン形状を有する。レジストパターン106は、駆動線15に対応するパターン形状を有する。
次に、図8(a)に示すように、レジストパターン105,106をマスクとして利用して導体膜104に対してエッチング処理を施すことにより、第1層101上に、信号線13および駆動線15を形成する。本工程におけるエッチング手法としては、イオンミリング(例えばArイオンによる物理的エッチング)を採用することができる。後出の金属材料に対するエッチング手法としてもイオンミリングを採用することができる。
次に、レジストパターン105,106を除去した後、図8(b)に示すように、第1層101にエッチング処理を施すことによってスリット19を形成する。具体的には、フォトリソ法により第1層101上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して、第1層101に対して異方性エッチング処理を施す。異方性エッチングとしては、DRIE(deep reactive ion etching)を採用することができる。DRIEでは、SF6ガスを用いて行うエッチングとC4F8ガスを用いて行う側壁保護とを交互に繰り返すBoschプロセスにおいて、良好な異方性エッチング加工を行うことができる。後出のDRIEについても、このようなDRIEのBoschプロセスを採用することができる。本工程にて、固定部11および可動部12が成形されることとなる。
次に、図8(c)に示すように、可動部12、信号線13、および駆動線15を覆いつつ、スリット19を塞ぐようにして材料基板100の第1層101側に犠牲層107を形成する。犠牲層材料としては例えば酸化シリコンを採用することができる。犠牲層107を形成するための手法としては、例えばプラズマCVD法やスパッタリング法を採用することができる。形成される犠牲層107の厚さは例えば5μmである。また、犠牲層材料としてはポリイミドを採用してもよい。
次に、図9(a)に示すように、犠牲層107において凹部107aを形成する。具体的には、フォトリソ法により犠牲層107上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して犠牲層107に対して所定の深さまでエッチング処理を施す。エッチング手法としては、ウエットエッチングを採用することができる。ウエットエッチングのためのエッチング液としては、例えばバッファードフッ酸(BHF)を採用することができる。犠牲層107に対する後出のウエットエッチングにおいてもBHFを採用することができる。凹部107aは、信号線14の接点部14aたる突起部を形成するためのものである。
次に、図9(b)に示すように、犠牲層107をパターニングして開口部107b,107c,107dを形成する。具体的には、フォトリソ法により犠牲層107上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して犠牲層107に対してウエットエッチングなどのエッチング処理を施す。開口部107bは、固定部11において信号線14が接合する領域を露出させるためのものである。開口部107cは、固定部11において駆動線16が接合する領域を露出させるためのものである。開口部107dは、固定部11においてグラウンド線17が設けられる領域を露出させるためのものである。
次に、材料基板100において犠牲層107が設けられている側の表面に通電用の下地膜(図示略)を形成した後、図9(c)に示すようにレジストパターン108を形成する。下地膜は、例えば、スパッタリング法により厚さ50nmのMoを成膜し、続いてその上に厚さ300nmのAuを成膜することによって形成することができる。レジストパターン108は、信号線14に対応する開口部108a、駆動線16に対応する開口部108b、およびグラウンド線17に対応する開口部108cを有する。
次に、図10(a)に示すように、信号線14、駆動線16、およびグラウンド線17を形成する。具体的には、開口部108a,108b,108cにて露出する上述の下地膜上に、電気めっき法により例えばAuを成長させる。成長させるめっき材料の厚さは例えば20μmである。
次に、図10(b)に示すように、レジストパターン108をエッチング除去する。この後、電気めっき用の上述の下地膜において露出している部分を除去する。下地膜の除去手法としては、イオンミリングや、反応性イオンエッチング(RIE)を採用することができる。
次に、図10(c)に示すように、犠牲層107および中間層103の一部を除去する。具体的には、犠牲層107および中間層103に対してウエットエッチング処理を施す。本エッチング処理では、まず犠牲層107が除去され、その後、スリット19に臨む箇所から中間層103の一部が除去される。このエッチング処理は、可動部12の全体と第2層102との間に適切に空隙が形成された後に停止する。このようにして、中間層103において境界層18が残存形成される。また、第2層102は、基板S1を構成することとなる。
次に、信号線14および駆動線16の表面に付着している上述の下地膜(図示略)を必要に応じて除去する。除去手法としては、ウエットエッチングを採用することができる。
この後、必要に応じて、超臨界乾燥法により素子全体を乾燥する。超臨界乾燥法によると、可動部12が基板S1等に張り付いてしまうスティッキング現象を適切に回避することができる。以上のようにして、スイッチング素子X1を適切に製造することができる。
本方法では、信号線13に対向する部位を有する信号線14について、めっき法によって厚く形成することができる。そのため、信号線14については、所望の低抵抗を実現するための充分な厚さを設定することが可能である。厚い信号線14は、スイッチング素子X1の挿入損失を低減するうえで好ましい。
図11および図12は、スイッチング素子X1の第1変形例を表す。図11は、第1変形例の平面図である。図12は、第1変形例の一部省略平面図である(図12では、信号線14および駆動線16を省略する)。
スイッチング素子X1は、図11および図12に示すようなパターン形状を有する駆動線15を備えてもよい。図11および図12に示す駆動線15は、可動部12上において部分15bを有する。図の明確化の観点から、部分15bについては、駆動線15の他の部分よりも細かいハッチングを付して表す。この部分15bは、可動部12上における信号線13のパターン形状(部分15bと同様の細かいハッチングを付して表す)と合同のパターン形状を有する。このような対称的な構成は、駆動時に弾性変形する可動部12において不当な変形(捩れ変形等)が生ずるのを抑制するうえで好ましい。
図13から図16は、スイッチング素子X1の第2変形例を表す。図13は、第2変形例の平面図である。図14は、第2変形例の一部省略平面図である(図14では、信号線14および駆動線16を省略する)。図15および図16は、各々、図13の線XV−XVおよび線XVI−XVIに沿った断面図である。
スイッチング素子X1は、図13、図15、および図16に示すようにストッパ部20(図14にて省略)を備えてもよい。ストッパ部20は、固定部11上に立設されており、且つ、可動部12に対向する部位を有する。可動部12に対向する部位において、ストッパ部20は、可動部12に向かって延出する突起部20aを有する。スイッチング素子X1の非駆動時(可動部12は自然状態にある)においては、図16に示すように、可動部12上の信号線13の接点部13aと信号線14の突起部たる接点部14aとの間のギャップG1よりも、可動部12と突起部20aとの間のギャップG2は、大きい。このようなストッパ部20は、スイッチング素子X1のスイッチオン動作時(可動部12は、駆動線16の駆動電極部16aの側に弾性変形する)において、接点部13a,14aが閉じた後に可動部12に当接可能であり、当該可動部12が駆動電極部16a側に更に変形しようとするのを阻止し得る。したがって、このようなストッパ部20の採用は、駆動時において駆動電極部15a,16aが当接して短絡するのを防止するうえで好適である。また、このようなストッパ部20は、固定部11上に信号線14を形成したのと同様の手法によって、固定部11上に形成することができる。
図17および図18は、スイッチング素子X1の第3変形例を表す。図17は、第3変形例の平面図である。図18は、第3変形例の一部省略平面図である(図18では、信号線14および駆動線16を省略する)。
スイッチング素子X1は、図17および図18に示すような形状の可動部12、信号線13,14、および駆動線15を有してもよい。図17および図18に示す信号線13は、可動部12の梁部12b上および固定部11上にわたってパターン形成され且つ梁部12b上において接点部13aを有するものであり、例えば図1および図2に示す信号線13よりも短い。信号線13は短いほど低抵抗化するところ、信号線14よりも相当程度に薄い信号線13が図18に示すように短いことは、信号線路(信号線13,14)における信号損失を抑制するうえで好ましい。また、第3変形例における可動部12は、図17および図18の平面視において、仮想線Pを対称軸として対称な形状を有する。このような対称的な構成は、駆動時に弾性変形する可動部12において不当な変形(捩れ変形等)が生ずるのを抑制するうえで好ましい。
図19から図22は、スイッチング素子X1の第4変形例を表す。図19は、第4変形例の平面図である。図20は、第4変形例の一部省略平面図である(図20では、信号線14および駆動線16を省略する)。図21および図22は、各々、図19の線XXI−XXIおよび線XXII−XXIIに沿った断面図である。
スイッチング素子X1は、図21および図22に示すように、部分的に厚い箇所を有する信号線13および駆動線15を備えてもよい。図21に示す信号線13は、可動部12の主に梁部12b上において厚肉部13bを有する。信号線13がこのように厚肉部13bを有することは、信号線13の低抵抗化を図るうえで好適であり、従って、信号線路(信号線13,14)における信号損失を抑制するうえで好ましい。また、信号線13が可動部12の主に梁部12b上において厚肉部13bを有するのと同様に、図22に示す駆動線15は、可動部12の主に梁部12c上において厚肉部15bを有する。このような対称的な構成は、駆動時に弾性変形する可動部12において不当な変形(捩れ変形等)が生ずるのを抑制するうえで好ましい。
図23から図27は、本発明の第2の実施形態に係るスイッチング素子X2を表す。図23は、スイッチング素子X2の平面図である。図24は、スイッチング素子X2の一部省略平面図である。図25から図27は、各々、図23の線XXV−XXV、線XXVI−XXVI、および線XXVII−XXVIIに沿った断面図である。
スイッチング素子X2は、基板S1と、固定部21と、可動部22と、信号線23と、信号線24(図24にて省略)と、駆動線25と、駆動線26(図24にて省略)と、グラウンド線27とを備える。固定部21は、図25から図27に示すように、境界層28を介して基板S1に接合している。可動部22は、図23および図24に表れているように、可動ランド部22aおよび梁部22b,22cを有し、スリット29を介して固定部21に囲まれている。梁部22b,22cは、固定部21および可動ランド部22aを連結し、当該固定部21および可動ランド部22aの間において本実施形態では平行に延びて、並列している。信号線23は、図24によく表れているように、可動ランド部22a上、梁部22b上、および固定部21上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部22a上において、信号線24と接触可能な接点部23aを有する。また、信号線23は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線24は、図25に示すように、固定部21上に立設されており、且つ、信号線23に対向する部位を有する。信号線23に対向する部位において、信号線24は、信号線23に向かって延出する突起部たる接点部24aを有する。また、信号線24は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線23,24のなす信号線路は、図23の平面視において、可動部22の可動ランド部22a上にて屈曲する(可動ランド部22a上に接点部23a,24aは位置する)。駆動線25は、図24によく表れているように、可動ランド部22a上、梁部22c上、および固定部21上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部22a上において、駆動電極部25aを有する。駆動線26は、図26および図27に示すように、駆動線25の駆動電極部25aの上方を跨ぐように固定部21上に立設されており、駆動電極部25aと対向する駆動電極部26aを有する。また、駆動線26は、図23に示すように信号線23,24に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線26はグラウンド線である)。グラウンド線27は、図23に示すように信号線23,24に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。固定部21、可動部22、信号線23,24、駆動線25,26、およびグラウンド線27の各々に関する他の構成は、第1の実施形態における固定部11、可動部12、信号線13,14、駆動線15,16、およびグラウンド線17の各々に関して上述したのと同様である。このようなスイッチング素子X2は、第1の実施形態に係るスイッチング素子X1の製造方法と同様の手法によって製造することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X2において、駆動線25に駆動電圧を印加すると、駆動線25の駆動電極部25aと駆動線26(グラウンド接続されている)の駆動電極部26aの間には静電引力が発生し、可動部22は、信号線23の接点部23aが信号線24の接点部24aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、スイッチング素子X2の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線23,24が接続され、信号線23,24間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X2において、駆動線25に対する電圧印加を停止することによって駆動電極部25a,26a間に作用する静電引力を消滅させると、可動部22はその自然状態に復帰し、信号線23ないし接点部23aは、信号線24ないし接点部24aから離隔する。このようにして、スイッチング素子X2の開状態が達成される。開状態においては、信号線23,24が電気的に分離され、信号線23,24間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。
スイッチング素子X2においては、信号線23は、可動ランド部22a上、梁部22b上、および固定部21上にわたって設けられ且つ可動部22上ないし可動ランド部22a上において接点部23aを有し、信号線24は、接点部23aに対向する接点部24aを有し且つ固定部21に対して固定されており、接点部23a,24aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線23,24間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X2は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X2では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X2は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X2においては、駆動線25は、可動ランド部22a上、梁部22c上、および固定部21上にわたって設けられ且つ可動ランド部22a上において駆動電極部25aを有し、駆動線26は、駆動電極部25aに対向する駆動電極部26aを有し且つ固定部21に対して固定されており、駆動電極部25a,26a間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部25a,26a間に静電引力が生じて、駆動電極部25aが接合している可動ランド部22aが駆動電極部26a側へと動作ないし弾性変形する。駆動線25は信号線23とは別体として設けられており(駆動線25は、信号線23が通過する梁部22bとは異なる梁部22cを通過して、可動ランド部22aから固定部21まで引き回されている)、且つ、駆動線26は信号線24とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X2においては、信号線23,24と駆動線25,26とは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X2では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X2は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X2では、図23の平面視において、信号線23,24のなす信号線路は駆動線26(グラウンド線)およびグラウンド線27の間に配され、且つ、駆動線26およびグラウンド線27は当該信号線路に沿った形状を有する。すなわち、信号線路(信号線23,24)および二本のグラウンド線(駆動線26,グラウンド線27)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線23,24からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X2では、図23の平面視において信号線路(信号線23,24)が可動部22上ないし可動ランド部22a上にて屈曲するように、信号線23,24が設けられている。そのため、スイッチング素子X2では、可動ランド部上において、第1の実施形態における信号線13よりも信号線23を短く設計しつつ、第1の実施形態における駆動電極部15a,16aの対向面積よりも駆動電極部25a,26aの対向面積を大きく設計しやすい。信号線路(信号線23,24)における信号損失を抑制するうえでは、薄肉の信号線23は短い方がよい。駆動電圧の低減を図るうえでは、静電引力(駆動力)を生ずるための駆動電極部25a,26aの対向面積は大きい方がよい。すなわち、スイッチング素子X2は、信号線路における信号損失を抑制しつつ駆動電圧の低減を図るのに好適な構造を有するのである。
スイッチング素子X2では、スイッチング素子X1の第1変形例における可動部12上の信号線13および駆動線15に関して上述したのと同様に、可動部22上の信号線23および駆動線25について、対称的なパターン形状を採用してもよい。スイッチング素子X2は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部25a,26aが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。スイッチング素子X2では、スイッチング素子X1の第3変形例における信号線13,14が梁部12b上に接点部13a,14aを有するのと同様に、信号線23,24について、梁部22b上に接点部23a,24aが位置するように設けてもよい。また、スイッチング素子X2では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線23および駆動線25が部分的に厚肉部を有してもよい。
図28から図31は、本発明の第3の実施形態に係るスイッチング素子X3を表す。図28は、スイッチング素子X3の平面図である。図29は、スイッチング素子X3の一部省略平面図である。図30および図31は、各々、図28の線XXX−XXXおよび線XXXI−XXXIに沿った断面図である。
スイッチング素子X3は、基板S1と、固定部31と、可動部32と、信号線33と、信号線34(図29にて省略)と、駆動線35と、駆動線36(図29にて省略)と、グラウンド線37とを備える。固定部31は、図30および図31に示すように、境界層38を介して基板S1に接合している。可動部32は、図28および図29に表れているように、可動ランド部32aおよび梁部32b,32cを有し、スリット39を介して固定部31に囲まれている。梁部32b,32cは、同方向に延び、当該延び方向に離隔して可動ランド部32aを間に配し、且つ、可動ランド部32aおよび固定部31を連結する。すなわち、可動部32は、両持ち構造で固定部31に支持されている。信号線33は、図29によく表れているように、可動ランド部32a上、梁部32b上、および固定部31上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部32a上において、信号線34と接触可能な接点部33aを有する。また、信号線33は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線34は、図30に示すように、固定部31上に立設されており、且つ、信号線33に対向する部位を有する。信号線33に対向する部位において、信号線34は、信号線33に向かって延出する突起部たる接点部34aを有する。また、信号線34は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。駆動線35は、図29によく表れているように、可動ランド部32a上、梁部32c上、および固定部31上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部32a上において、駆動電極部35aを有する。駆動線36は、図31に示すように、駆動線35の駆動電極部35aの上方を跨ぐように固定部31上に立設されており、駆動電極部35aと対向する駆動電極部36aを有する。また、駆動線36は、図28に示すように信号線33,34に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線36はグラウンド線である)。グラウンド線37は、図28に示すように信号線33,34に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。固定部31、可動部32、信号線33,34、駆動線35,36、およびグラウンド線37の各々に関する他の構成は、第1の実施形態における固定部11、可動部12、信号線13,14、駆動線15,16、およびグラウンド線17の各々に関して上述したのと同様である。このようなスイッチング素子X3は、第1の実施形態に係るスイッチング素子X1の製造方法と同様の手法によって製造することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X3において、駆動線35に駆動電圧を印加すると、駆動線35の駆動電極部35aと駆動線36(グラウンド接続されている)の駆動電極部36aの間には静電引力が発生し、可動部32は、信号線33の接点部33aが信号線34の接点部34aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、スイッチング素子X3の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線33,34が接続され、信号線33,34間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X3において、駆動線35に対する電圧印加を停止することによって駆動電極部35a,36a間に作用する静電引力を消滅させると、可動部32はその自然状態に復帰し、信号線33ないし接点部33aは、信号線34ないし接点部34aから離隔する。このようにして、スイッチング素子X3の開状態が達成される。開状態においては、信号線33,34が電気的に分離され、信号線33,34間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。
スイッチング素子X3においては、信号線33は、可動ランド部32a上、梁部32b上、および固定部31上にわたって設けられ且つ可動部32上ないし可動ランド部32a上において接点部33aを有し、信号線34は、接点部33aに対向する接点部34aを有し且つ固定部31に対して固定されており、接点部33a,34aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線33,34間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X3は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X3では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X3は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X3においては、駆動線35は、可動ランド部32a上、梁部32c上、および固定部31上にわたって設けられ且つ可動ランド部32a上において駆動電極部35aを有し、駆動線36は、駆動電極部35aに対向する駆動電極部36aを有し且つ固定部31に対して固定されており、駆動電極部35a,36a間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部35a,36a間に静電引力が生じて、駆動電極部35aが接合している可動ランド部32aが駆動電極部36a側へと動作ないし弾性変形する。駆動線35は信号線33とは別体として設けられており(駆動線35は、信号線33が通過する梁部32bとは異なる梁部32cを通過して、可動ランド部32aから固定部31まで引き回されている)、且つ、駆動線36は信号線34とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X3においては、信号線33,34と駆動線35,36とは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X3では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X3は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X3では、図28の平面視において、信号線33,34のなす信号線路は駆動線36(グラウンド線)およびグラウンド線37の間に配され、且つ、駆動線36およびグラウンド線37は当該信号線路に沿った形状を有する。すなわち、信号線路(信号線33,34)および二本のグラウンド線(駆動線36,グラウンド線37)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線33,34からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X3においては、非駆動時における接点部33a,34a間の離隔距離および駆動電極部35a,36a間の離隔距離を、正確に制御しやすい。両持ち構造で固定部31に支持されている可動部32は、非駆動時において、図30および図31に示す厚さ方向Hには不当に変位しにくいからである。スイッチング素子X3における信号線33は、第1の実施形態における信号線13と同様の手法によって形成することができ、そのような信号線33には、収縮する方向に作用する内部応力が生じ得る。駆動線35は、第1の実施形態における駆動線15と同様の手法によって形成することができ、そのような駆動線35には、収縮する方向に作用する内部応力が生じ得る。信号線33および駆動線35の内部応力は、可動ランド部32aが信号線34および駆動線36の側に接近するように可動部32を変形させる力として可動部32に対して作用するが、両持ち構造で固定部31に支持されている可動部32は、そのような変形力に抗しやすく、従って、非駆動時において図30および図31に示す厚さ方向Hには不当に変位しにくいのである。
スイッチング素子X3は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部35a,36aが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。スイッチング素子X3では、スイッチング素子X1の第3変形例における信号線13,14が梁部13b上に接点部13a,14aを有するのと同様に、信号線33,34について、梁部32b上に接点部33a,34aが位置するように設けてもよい。また、スイッチング素子X3では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線33および駆動線35が部分的に厚肉部を有してもよい。
図32から図36は、本発明の第4の実施形態に係るスイッチング素子X4を表す。図32は、スイッチング素子X4の平面図である。図33は、スイッチング素子X4の一部省略平面図である。図34から図36は、各々、図32の線XXXIV−XXXIV、線XXXV−XXXV、および線XXXVI−XXXVIに沿った断面図である。
スイッチング素子X4は、基板S1と、固定部41と、可動部42と、信号線43と、信号線44(図33にて省略)と、駆動線45と、駆動線46(図33にて省略)と、グラウンド線47とを備える。固定部41は、図34から図36に示すように、境界層48を介して基板S1に接合している。可動部42は、図32および図33に表れているように、可動ランド部42aおよび梁部42b,42cを有し、スリット49を介して固定部41に囲まれている。梁部42b,42cは、同方向に延び、当該延び方向に離隔して可動ランド部42aを間に配し、且つ、可動ランド部42aおよび固定部41を連結する。すなわち、可動部42は、両持ち構造で固定部41に支持されている。信号線43は、図33によく表れているように、可動部42の梁部42b上および固定部41上にわたって設けられ、且つ、梁部42b上において、信号線44と接触可能な接点部43aを有する。また、信号線43は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線44は、図34に示すように、固定部41上に立設されており、且つ、信号線43に対向する部位を有する。信号線43に対向する部位において、信号線44は、信号線43に向かって延出する突起部たる接点部44aを有する。また、信号線44は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。駆動線45は、図33によく表れているように、可動ランド部42a上、梁部42c上、および固定部41上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部42a上において、駆動電極部45aを有する。駆動線46は、図35に示すように、駆動線45の駆動電極部45aの上方を跨ぐように固定部41上に立設されており、駆動電極部45aと対向する駆動電極部46aを有する。また、駆動線46は、図32に示すように信号線43,44に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線46はグラウンド線である)。グラウンド線47は、図32に示すように信号線43,44に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。固定部41、可動部42、信号線43,44、駆動線45,46、およびグラウンド線47の各々に関する他の構成は、第1の実施形態における固定部11、可動部12、信号線13,14、駆動線15,16、およびグラウンド線17の各々に関して上述したのと同様である。このようなスイッチング素子X4は、第1の実施形態に係るスイッチング素子X1の製造方法と同様の手法によって製造することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X4において、駆動線45に駆動電圧を印加すると、駆動線45の駆動電極部45aと駆動線46(グラウンド接続されている)の駆動電極部46aの間には静電引力が発生し、可動部42は、信号線43の接点部43aが信号線44の接点部44aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、スイッチング素子X4の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線43,44が接続され、信号線43,44間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X4において、駆動線45に対する電圧印加を停止することによって駆動電極部45a,46a間に作用する静電引力を消滅させると、可動部42はその自然状態に復帰し、信号線43ないし接点部43aは、信号線44ないし接点部44aから離隔する。このようにして、スイッチング素子X4の開状態が達成される。開状態においては、信号線43,44が電気的に分離され、信号線43,44間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。
スイッチング素子X4においては、信号線43は、梁部42b上および固定部41上にわたって設けられ且つ梁部42b上において接点部43aを有し、信号線44は、接点部43aに対向する接点部44aを有し且つ固定部41に対して固定されており、接点部43a,44aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線43,44間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X4は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X4では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X4は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X4においては、駆動線45は、可動ランド部42a上、梁部42c上、および固定部41上にわたって設けられ且つ可動ランド部42a上において駆動電極部45aを有し、駆動線46は、駆動電極部45aに対向する駆動電極部46aを有し且つ固定部41に対して固定されており、駆動電極部45a,46a間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部45a,46a間に静電引力が生じて、駆動電極部45aが接合している可動ランド部42aが駆動電極部46a側へと動作ないし弾性変形する。駆動線45は信号線43とは別体として設けられており(駆動線45は、信号線43が設けられている梁部42bとは異なる梁部42cを通過して、可動ランド部42aから固定部41まで引き回されている)、且つ、駆動線46は信号線44とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X4においては、信号線43,44と駆動線45,46とは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X4では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X4は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X4では、図32の平面視において、信号線43,44のなす信号線路は駆動線46(グラウンド線)およびグラウンド線47の間に配され、且つ、駆動線46およびグラウンド線47は当該信号線路に沿った形状を有する。すなわち、信号線路(信号線43,44)および二本のグラウンド線(駆動線46,グラウンド線47)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線43,44からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X4においては、非駆動時における接点部43a,44a間の離隔距離および駆動電極部45a,46a間の離隔距離を、正確に制御しやすい。両持ち構造で固定部41に支持されている可動部42は、非駆動時において、例えば図36に示す厚さ方向Hには不当に変位しにくいからである。スイッチング素子X4における信号線43は、第1の実施形態における信号線13と同様の手法によって形成することができ、そのような信号線43には、収縮する方向に作用する内部応力が生じ得る。駆動線45は、第1の実施形態における駆動線15と同様の手法によって形成することができ、そのような駆動線45には、収縮する方向に作用する内部応力が生じ得る。信号線43および駆動線45の内部応力は、可動ランド部42aが信号線44および駆動線46の側に接近するように可動部42を変形させる力として可動部42に対して作用するが、両持ち構造で固定部41に支持されている可動部42は、そのような変形力に抗しやすく、従って、非駆動時において例えば図36に示す厚さ方向Hには不当に変位しにくいのである。
スイッチング素子X4では、図32の平面視において信号線路(信号線43,44)が可動部42上ないし梁部42b上にて屈曲するように、信号線43,44が設けられている。そのため、スイッチング素子X4では、可動ランド部上において、第1の実施形態における信号線13よりも信号線43を短く設計しつつ、第1の実施形態における駆動電極部15a,16aの対向面積よりも駆動電極部45a,46aの対向面積を大きく設計しやすい。信号線路(信号線43,44)における信号損失を抑制するうえでは、薄肉の信号線43は短い方がよい。駆動電圧の低減を図るうえでは、静電引力(駆動力)を生ずるための駆動電極部45a,46aの対向面積は大きい方がよい。すなわち、スイッチング素子X4は、信号線路における信号損失を抑制しつつ駆動電圧の低減を図るのに好適な構造を有するのである。
スイッチング素子X4は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部45a,46aが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。また、スイッチング素子X4では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線43および駆動線45が部分的に厚肉部を有してもよい。
図37から図42は、本発明の第5の実施形態に係るスイッチング素子X5を表す。図37は、スイッチング素子X5の平面図である。図38は、スイッチング素子X5の一部省略平面図である。図39から図42は、各々、図37の線XXXIX−XXXIX、線XL−XL、線XLI−XLI、および線XLII−XLIIに沿った断面図である。
スイッチング素子X5は、基板S1と、固定部51と、可動部52と、信号線53と、信号線54(図38にて省略)と、駆動線55A,55Bと、駆動線56A,56B(図38にて省略)とを備える。固定部51は、図39から図42に示すように、境界層58を介して基板S1に接合している。可動部52は、図37および図38に表れているように、可動ランド部52aおよび梁部52b,52c,52dを有し、スリット59を介して固定部51に囲まれている。三本の梁部52b〜52dは、固定部51および可動ランド部52aを連結し、当該固定部51および可動ランド部52aの間において本実施形態では平行に延びて、並列している。すなわち、可動部52は、片持ち構造で固定部51に支持されている。信号線53は、図38によく表れているように、可動ランド部52a上、梁部52b上、および固定部51上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部52a上において、信号線54と接触可能な接点部53aを有する。また、信号線53は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線54は、図39に示すように、固定部51上に立設されており、且つ、信号線53に対向する部位を有する。信号線53に対向する部位において、信号線54は、信号線53に向かって延出する突起部たる接点部54aを有する。また、信号線54は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。駆動線55Aは、図38によく表れているように、可動ランド部52a上、梁部52c上、および固定部51上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部52a上において、駆動電極部55aを有する。駆動線55Bは、可動ランド部52a上、梁部52d上、および固定部51上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部52a上において、駆動電極部55bを有する。駆動線56Aは、図40に示すように、駆動線55Aの駆動電極部55aの上方を跨ぐように固定部51上に立設されており、駆動電極部55aと対向する駆動電極部56aを有する。また、駆動線56Aは、図37に示すように信号線53,54に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線56Aはグラウンド線である)。駆動線56Bは、図41に示すように、駆動線55Bの駆動電極部55bの上方を跨ぐように固定部51上に立設されており、駆動電極部55bと対向する駆動電極部56bを有する。また、駆動線56Bは、図37に示すように信号線53,54に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線56Bはグラウンド線である)。固定部51、可動部52、信号線53,54、および駆動線55A,55B,56A,56Bの各々に関する他の構成は、第1の実施形態における固定部11、可動部12、信号線13,14、および駆動線15,16の各々に関して上述したのと同様である。このようなスイッチング素子X5は、第1の実施形態に係るスイッチング素子X1の製造方法と同様の手法によって製造することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X5において、駆動線55A,55Bに駆動電圧を印加すると、駆動線55Aの駆動電極部55aと駆動線56A(グラウンド接続されている)の駆動電極部56aとの間および駆動線55Bの駆動電極部55bと駆動線56B(グラウンド接続されている)の駆動電極部56bとの間には静電引力が発生し、可動部52は、信号線53の接点部53aが信号線54の接点部54aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、スイッチング素子X5の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線53,54が接続され、信号線53,54間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X5において、駆動線55A,55Bに対する電圧印加を停止することによって駆動電極部55a,56a間および駆動電極部55b,56b間に作用する静電引力を消滅させると、可動部52はその自然状態に復帰し、信号線53ないし接点部53aは、信号線54ないし接点部54aから離隔する。このようにして、スイッチング素子X5の開状態が達成される。開状態においては、信号線53,54が電気的に分離され、信号線53,54間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。
スイッチング素子X5においては、信号線53は、可動ランド部52a上、梁部52b上、および固定部51上にわたって設けられ且つ可動部52上ないし可動ランド部52a上において接点部53aを有し、信号線54は、接点部53aに対向する接点部54aを有し且つ固定部51に対して固定されており、接点部53a,54aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線53,54間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X5は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X5では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X5は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X5においては、駆動線55Aは、可動ランド部52a上、梁部52c上、および固定部51上にわたって設けられ且つ可動ランド部52a上において駆動電極部55aを有し、駆動線55Bは、可動ランド部52a上、梁部52d上、および固定部51上にわたって設けられ且つ可動ランド部52a上において駆動電極部55bを有し、駆動線56Aは、駆動電極部55aに対向する駆動電極部56aを有し、駆動線56Bは、駆動電極部55bに対向する駆動電極部56bを有し、駆動電極部55a,56a間および駆動電極部55b,56b間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部55a,56a間および駆動電極部55b,56b間に静電引力が生じて、駆動電極部55a,55bが接合している可動ランド部52aが駆動電極部56a,56b側へと動作ないし弾性変形する。駆動線55A,55Bは信号線53とは別体として設けられており(駆動線55A,55Bは、信号線53が通過する梁部52bとは異なる梁部52c,52dを通過して、可動ランド部52aから固定部51まで引き回されている)、且つ、駆動線56A,56Bは信号線54とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X5においては、信号線53,54と駆動線55A,55B,56A,56Bとは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X5では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X5は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X5においては、駆動電極部55a,56a間に静電引力(駆動力)が発生可能であり、且つ、駆動電極部55b,56b間に静電引力(駆動力)が発生可能である。これら駆動力が発生する箇所は、図37および図42に示す矢印D1方向に離隔する。そして、スイッチング素子X5では、接点部53a,54a(開閉箇所)は、図42に示すように、二つの駆動力発生箇所の離隔方向(矢印D1方向)において当該二つの駆動力発生箇所の間に位置する。そのため、スイッチング素子X5の駆動時には、接点部53a,54aが当接した後に当該当接箇所の両側から均等な荷重を当該当接箇所にかけやすく、従って、当該当接箇所について安定した接触を実現しやすい。
スイッチング素子X5では、図37の平面視において、信号線53,54のなす信号線路は駆動線56A,56B(共にグラウンド線)の間に配され、且つ、駆動線56A,56Bは当該信号線路に沿った形状を有する。すなわち、信号線路(信号線53,54)および二本のグラウンド線(駆動線56A,56B)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線53,54からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X5では、スイッチング素子X1の第1変形例における可動部12上の信号線13および駆動線15に関して上述したのと同様に、可動部52上の駆動線55A,55Bについて、対称的なパターン形状を採用するのが好ましい。スイッチング素子X5は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部55a,56aや駆動電極部55b,56bが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。スイッチング素子X5では、スイッチング素子X1の第3変形例における信号線13,14が梁部12b上に接点部13a,14aを有するのと同様に、信号線53,54について、梁部52b上に接点部53a,54aが位置するように設けてもよい。また、スイッチング素子X5では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線53および駆動線55A,55Bが部分的に厚肉部を有してもよい。
図43から図48は、本発明の第6の実施形態に係るスイッチング素子X6を表す。図43は、スイッチング素子X6の平面図である。図44は、スイッチング素子X6の一部省略平面図である。図45から図48は、各々、図43の線XLV−XLV、線XLVI−XLVI、線XLVII−XLVII、および線XLVIII−XLVIIIに沿った断面図である。
スイッチング素子X6は、基板S1と、固定部61と、可動部62と、信号線63と、信号線64(図44にて省略)と、駆動線65A,65Bと、駆動線66A,66B(図44にて省略)とを備える。固定部61は、図45から図48に示すように、境界層68を介して基板S1に接合している。可動部62は、図43および図44に表れているように、可動ランド部62aおよび梁部62b,62c,62dを有し、スリット69を介して固定部61に囲まれている。梁部62c,62dは、固定部61および可動ランド部62aを連結し、当該固定部61および可動ランド部62aの間において本実施形態では平行に延びて、並列している。これとともに、梁部62bは、梁部62c,62dとは反対の側において可動ランド部62aおよび固定部61を連結する。すなわち、可動部62は、両持ち構造で固定部61に支持されている。信号線63は、図44によく表れているように、可動ランド部62a上、梁部62b上、および固定部61上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部62a上において、信号線64と接触可能な接点部63aを有する。また、信号線63は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線64は、図45に示すように、固定部61上に立設されており、且つ、信号線63に対向する部位を有する。信号線63に対向する部位において、信号線64は、信号線63に向かって延出する突起部たる接点部64aを有する。また、信号線64は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。駆動線65Aは、図44によく表れているように、可動ランド部62a上、梁部62c上、および固定部61上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部62a上において、駆動電極部65aを有する。駆動線65Bは、可動ランド部62a上、梁部62d上、および固定部61上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部62a上において、駆動電極部65bを有する。駆動線66Aは、図46に示すように、駆動線65Aの駆動電極部65aの上方を跨ぐように固定部61上に立設されており、駆動電極部65aと対向する駆動電極部66aを有する。また、駆動線66Aは、図43に示すように信号線63,64に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線66Aはグラウンド線である)。駆動線66Bは、図47に示すように、駆動線65Bの駆動電極部65bの上方を跨ぐように固定部61上に立設されており、駆動電極部65bと対向する駆動電極部66bを有する。また、駆動線66Bは、図43に示すように信号線63,64に沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線66Bはグラウンド線である)。固定部61、可動部62、信号線63,64、および駆動線65A,65B,66A,66Bの各々に関する他の構成は、第1の実施形態における固定部11、可動部12、信号線13,14、および駆動線15,16の各々に関して上述したのと同様である。このようなスイッチング素子X6は、第1の実施形態に係るスイッチング素子X1の製造方法と同様の手法によって製造することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X6において、駆動線65A,65Bに駆動電圧を印加すると、駆動線65Aの駆動電極部65aと駆動線66A(グラウンド接続されている)の駆動電極部66aとの間および駆動線65Bの駆動電極部65bと駆動線66B(グラウンド接続されている)の駆動電極部66bとの間には静電引力が発生し、可動部62は、信号線63の接点部63aが信号線64の接点部64aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、スイッチング素子X6の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線63,64が接続され、信号線63,64間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X6において、駆動線65A,65Bに対する電圧印加を停止することによって駆動電極部65a,66a間および駆動電極部65b,66b間に作用する静電引力を消滅させると、可動部62はその自然状態に復帰し、信号線63ないし接点部63aは、信号線64ないし接点部64aから離隔する。このようにして、スイッチング素子X6の開状態が達成される。開状態においては、信号線63,64が電気的に分離され、信号線63,64間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。
スイッチング素子X6においては、信号線63は、可動ランド部62a上、梁部62b上、および固定部61上にわたって設けられ且つ可動部62上ないし可動ランド部62a上において接点部63aを有し、信号線64は、接点部63aに対向する接点部64aを有し且つ固定部61に対して固定されており、接点部63a,64aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線63,64間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X6は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X6では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X6は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X6においては、駆動線65Aは、可動ランド部62a上、梁部62c上、および固定部61上にわたって設けられ且つ可動ランド部62a上において駆動電極部65aを有し、駆動線65Bは、可動ランド部62a上、梁部62d上、および固定部61上にわたって設けられ且つ可動ランド部62a上において駆動電極部65bを有し、駆動線66Aは、駆動電極部65aに対向する駆動電極部65aを有し、駆動線66Bは、駆動電極部65bに対向する駆動電極部66bを有し、駆動電極部65a,66a間および駆動電極部65b,66b間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部65a,66a間および駆動電極部65b,66b間に静電引力が生じて、駆動電極部65a,65bが接合している可動ランド部62aが駆動電極部66a,66b側へと動作ないし弾性変形する。駆動線65A,65Bは信号線63とは別体として設けられており(駆動線65A,65Bは、信号線63が通過する梁部62bとは異なる梁部62c,62dを通過して、可動ランド部62aから固定部61まで引き回されている)、且つ、駆動線66A,66Bは信号線64とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X6においては、信号線63,64と駆動線65A,65B,66A,66Bとは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X6では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X6は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X6においては、駆動電極部65a,66a間に静電引力(駆動力)が発生可能であり、且つ、駆動電極部65b,66b間に静電引力(駆動力)が発生可能である。これら駆動力が発生する箇所は、図43および図48に示す矢印D2方向に離隔する。そして、スイッチング素子X6では、接点部63a,64a(開閉箇所)は、図48に示すように、二つの駆動力発生箇所の離隔方向(矢印D2方向)において当該二つの駆動力発生箇所の間に位置する。そのため、スイッチング素子X6の駆動時には、接点部63a,64aが当接した後に当該当接箇所の両側から均等な荷重を当該当接箇所にかけやすく、従って、当該当接箇所について安定した接触を実現しやすい。
スイッチング素子X6では、図43の平面視において、信号線63,64のなす信号線路は駆動線66A,66B(共にグラウンド線)の間に配され、且つ、駆動線66A,66Bは当該信号線路に沿った形状を有する。すなわち、信号線路(信号線63,64)および二本のグラウンド線(駆動線66A,66B)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線63,64からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X6では、スイッチング素子X1の第1変形例における可動部12上の信号線13および駆動線15に関して上述したのと同様に、可動部62上の駆動線65A,65Bについて、対称的なパターン形状を採用するのが好ましい。スイッチング素子X6は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部65a,66aや駆動電極部65b,66bが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。スイッチング素子X6では、スイッチング素子X1の第3変形例における信号線13,14が梁部12b上に接点部13a,14aを有するのと同様に、信号線63,64について、梁部62b上に接点部63a,64aが位置するように設けてもよい。また、スイッチング素子X6では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線63および駆動線65A,65Bが部分的に厚肉部を有してもよい。
図49から図52は、本発明の第7の実施形態に係るスイッチング素子X7を表す。図49は、スイッチング素子X7の平面図である。図50は、スイッチング素子X7の一部省略平面図である。図51および図52は、各々、図49の線LI−LIおよび線LII−LIIに沿った断面図である。
スイッチング素子X7は、基板S1と、固定部71と、可動部72と、信号線73と、信号線74A,74B(図50にて省略)と、駆動線75A,75Bと、駆動線76A,76B(図44にて省略)と、グラウンド線77A,77Bを備え、SPDT(1入力2出力)スイッチとして構成されたものである。固定部71は、図51および図52に示すように、境界層78を介して基板S1に接合している。可動部72は、図49および図50に表れているように、可動ランド部72aおよび梁部72b,72cを有し、スリット79を介して固定部71に囲まれている。梁部72b,72cは、同方向に延び、当該延び方向に離隔して可動ランド部72aを間に配し、且つ、可動ランド部72aおよび固定部71を連結する。すなわち、可動部72は、両持ち構造で固定部71に支持されている。また、梁部72b,72cは、固定部71に対する可動ランド部72aの回転変位の軸心Axを規定する。信号線73は、図50によく表れているように、可動ランド部72a上、梁部72b上、および固定部71上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部72a上において、信号線74Aと接触可能な接点部73aおよび信号線74Bと接触可能な接点部73bを有する。接点部73a,73bは、例えば図50の平面視において、軸心Axを間に配するように可動ランド部72a上にて離隔している。また、信号線73は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線74Aは、図51に示すように、固定部71上に立設されており、且つ、信号線73に対向する部位を有する。信号線73に対向する部位において、信号線74Aは、信号線73に向かって延出する突起部たる接点部74aを有する。また、信号線74Aは、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の第1の回路に接続されている。信号線74Bも、固定部71上に立設されており、且つ、信号線73に対向する部位を有する。信号線73に対向する部位において、信号線74Bは、信号線73に向かって延出する突起部たる接点部74bを有する。また、信号線74Bは、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の第2の回路に接続されている。駆動線75Aは、図50によく表れているように、可動ランド部72a上、梁部72c上、および固定部71上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部72a上において、駆動電極部75aを有する。駆動線75Bは、可動ランド部72a上、梁部72c上、および固定部71上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部72a上において、駆動電極部75bを有する。駆動電極部75a,75bは、例えば図50の平面視において、軸心Axを間に配するように可動ランド部72a上にて離隔している。駆動線76Aは、図52に示すように、駆動電極部75aと対向する駆動電極部76aを有して固定部71上に立設されている。また、駆動線76Aは、図49に示すように信号線73,74Aに沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線76Aはグラウンド線である)。駆動線76Bは、図52に示すように、駆動電極部75bと対向する駆動電極部76bを有して固定部71上に立設されている。また、駆動線76Bは、図49に示すように信号線73,74Bに沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線76Bはグラウンド線である)。グラウンド線77Aは、図49に示すように信号線73,74Aに沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。グラウンド線77Bは、信号線73,74Bに沿う形状を有し、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。固定部71、可動部72、信号線73,74A,74B、駆動線75A,75B,76A,76B、およびグラウンド線77A,77Bの各々に関する他の構成は、第1の実施形態における固定部11、可動部12、信号線13,14、駆動線15,16、およびグラウンド線17の各々に関して上述したのと同様である。このようなスイッチング素子X7は、第1の実施形態に係るスイッチング素子X1の製造方法と同様の手法によって製造することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X7において、駆動線75Aに駆動電圧を印加すると、駆動線75Aの駆動電極部75aと駆動線76A(グラウンド接続されている)の駆動電極部76aとの間には静電引力が発生し、可動部72は、図53(a)に示すように信号線73の接点部73aが信号線74Aの接点部74aに当接するまで、動作ないし弾性変形する(梁部72b,72cは捩れる)。このようにして、スイッチング素子X7の第1の閉状態が達成される。第1の閉状態においては、信号線73,74Aが接続され、信号線73,74A間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号の第1のオン状態を達成することができる。
第1の閉状態にあるスイッチング素子X7において、駆動線75Aに対する電圧印加を停止することによって駆動電極部75a,76a間に作用する静電引力を消滅させると、可動部72ないし梁部72b,72cはその自然状態に復帰し、信号線73の接点部73aは、信号線74Aの接点部74aから離隔する。このようにして、スイッチング素子X7の開状態が達成される。
また、スイッチング素子X7において、駆動線75Bに駆動電圧を印加すると、駆動線75Bの駆動電極部75bと駆動線76B(グラウンド接続されている)の駆動電極部76bとの間には静電引力が発生し、可動部72は、図53(b)に示すように信号線73の接点部73bが信号線74Bの接点部74bに当接するまで、動作ないし弾性変形する(梁部72b,72cは捩れる)。このようにして、スイッチング素子X7の第2の閉状態が達成される。第2の閉状態においては、信号線73,74Bが接続され、信号線73,74B間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号の第2のオン状態を達成することができる。
第2の閉状態にあるスイッチング素子X7において、駆動線75Bに対する電圧印加を停止することによって駆動電極部75b,76b間に作用する静電引力を消滅させると、可動部72ないし梁部72b,72cはその自然状態に復帰し、信号線73の接点部73bは、信号線74Bないし接点部74bから離隔する。このようにして、スイッチング素子X7の開状態が達成される。
スイッチング素子X7は、以上のようにして、SPDTスイッチとして機能することができる。
スイッチング素子X7は、部分的に構造を共通にする二つのSPST(1入力1出力)スイッチからなる。一方のSPSTスイッチ(第1スイッチ)は、接点部73a、信号線74Aないし接点部74a、および駆動線75A,76Aを伴うものであり、他方のSPSTスイッチ(第2スイッチ)は、接点部73b、信号線74Bないし接点部74b、および駆動線75B,76Bを伴うものである。
スイッチング素子X7の第1スイッチにおいては、接点部73a,74aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線73,74A間の通過および非通過が選択される。すなわち、第1スイッチは、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このような第1スイッチでは、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。また、第2スイッチにおいては、接点部73b,74bの開閉によって、例えば高周波信号の信号線73,74B間の通過および非通過が選択される。すなわち、第2スイッチは、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このような第2スイッチでは、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。このような第1および第2スイッチを含むSPDTスイッチたるスイッチング素子X7は、SPDTスイッチとして、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X7においては、可動ランド部72a上、梁部72c上、および固定部71上にわたる駆動線75A,75B、並びに、固定部71上の駆動線76A,76Bは、いずれも、信号線73,74A,74Bとは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X7においては、信号線73,74A,74Bと駆動線75A,75B,76A,76Bとは電気的に分離されている。このようなスイッチング素子X7では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X7は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X7では、図49の平面視において、信号線73,74Aのなす第1信号線路は駆動線76A(グラウンド線)およびグラウンド線77Aの間や、グラウンド線77A,77B間に配され、且つ、駆動線76Aおよびグラウンド線77A,77Bは当該第1信号線路に沿った形状を有する。すなわち、第1信号線路(信号線73,74A)およびグラウンド線(駆動線76A,グラウンド線77A,77B)は、コプレナー型線路をなす。また、図49の平面視において、信号線73,74Bのなす第2信号線路は駆動線76B(グラウンド線)およびグラウンド線77Bの間や、グラウンド線77A,77B間に配され、且つ、駆動線76Bおよびグラウンド線77A,77Bは当該第2信号線路に沿った形状を有する。すなわち、第2信号線路(信号線73,74B)およびグラウンド線(駆動線76B,グラウンド線77A,77B)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線73,74A,74Bからの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X7は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部75a,76aや駆動電極部75b,76bが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。また、スイッチング素子X7では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線73および駆動線75A,75Bが部分的に厚肉部を有してもよい。
図54から図58は、本発明の第8の実施形態に係るスイッチング素子X8を表す。図54は、スイッチング素子X8の平面図である。図55は、スイッチング素子X8の一部省略平面図である。図56から図58は、各々、図54の線LVI−LVI、線LVII−LVII、および線LVIII−LVIIIに沿った断面図である。
スイッチング素子X8は、基板S2と、固定部81(図55にて省略)と、可動部82(図55にて省略)と、信号線83,84と、駆動線85,86と、グラウンド線87とを備える。
基板S2は、その表面に信号線84、駆動線86、およびグラウンド線87がパターン形成されるものであり、例えばガラスやGaAsよりなる。
固定部81は、図56に示すように基板S2に接合しており、例えば酸化シリコンまたはポリシリコンよりなる。また、本実施形態では、固定部81は、基板S2とともに本発明における固定部をなす。
可動部82は、図54によく表れているように可動ランド部82aおよび梁部82b,82cを有し、図56から図58に示すように基板S2から離隔する。梁部82b,82cは、固定部81および可動部82を連結し、当該固定部81および可動部82の間において本実施形態では平行に延びて、並列している。すなわち、可動部82は、片持ち構造で固定部81に支持されている。可動部82について図56から図58に示す厚さT2は例えば15μm以下である。また、可動部82について、図54に示す長さL3は例えば200〜400μmであり、長さL4は例えば300〜500μmである。このような可動部82は、例えば酸化シリコンまたはポリシリコンよりなる。
信号線83は、図54によく表れているように、可動ランド部82a上、梁部82b上、および固定部81上にわたって設けられ、且つ、図56および図58に示すように、信号線84に向かって可動ランド部82aを貫通して信号線84と接触可能な突起部たる接点部83aを有する。信号線83の厚さは例えば0.5〜5μmである。また、信号線83は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線83は、所定の導電材料よりなり、例えば、Mo下地膜とその上のAu膜とからなる積層構造を有する。このような信号線83は、本発明における第1信号線である。
信号線84は、例えば図56に示すように、基板S2上に設けられており、且つ、信号線83に対向する部位を有する。信号線83に対向する部位において、信号線84は、信号線83と接触可能な接点部84aを有する。信号線84の厚さは例えば0.5〜5μmである。また、信号線84は、所定の配線(図示略)を介してスイッチング対象の所定の回路に接続されている。信号線84は、所定の導電材料よりなり、例えば、Mo下地膜とその上のAu膜とからなる積層構造を有する。このような信号線84は、本発明における第2信号線である。
駆動線85は、図54によく表れているように、可動ランド部82a上、梁部82c上、および固定部81上にわたって設けられ、且つ、可動ランド部82a上において、駆動電極部85aを有する。駆動電極部85aは、本発明における可動駆動電極部である。駆動線85の厚さは例えば0.5〜5μmである。駆動線85の構成材料としては、信号線83の構成材料と同一のものを採用することができる。このような駆動線85は、本発明における第1駆動線である。
駆動線86は、図57に示すように、基板S2上に設けられており、且つ、駆動線85の駆動電極部85aと対向する駆動電極部86aを有する。駆動電極部86aは、本発明における固定駆動電極部である。駆動線86の厚さは例えば0.5〜5μmである。また、駆動線86は、図54に示すように信号線83,84に沿って延び、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている(従って、駆動線86はグラウンド線でもある)。駆動線86の構成材料としては、信号線84の構成材料と同一のものを採用することができる。このような駆動線86は、本発明における第2駆動線である。
グラウンド線87は、図54に示すように信号線83,84に沿って延び、所定の配線(図示略)を介してグラウンド接続されている。グラウンド線87の構成材料としては、信号線84の構成材料と同一のものを採用することができる。
以上のような構造を有するスイッチング素子X8において、駆動線85に駆動電圧を印加すると、駆動線85の駆動電極部85aと駆動線86(グラウンド接続されている)の駆動電極部86aの間には静電引力が発生し、可動部82は、信号線83の接点部83aが信号線84の接点部84aに当接するまで動作ないし弾性変形する。このようにして、図59に示すような、スイッチング素子X8の閉状態が達成される。閉状態においては、信号線83,84が接続され、信号線83,84間を電流が通過することが許容される。このようなスイッチオン動作により、例えば高周波信号のオン状態を達成することができる。
一方、閉状態にあるスイッチング素子X8において、駆動線85に対する電圧印加を停止することによって駆動電極部85a,86a間に作用する静電引力を消滅させると、可動部82はその自然状態に復帰し、信号線83ないし接点部83aは、信号線84ないし接点部84aから離隔する。このようにして、図56および図58に示すような、スイッチング素子X8の開状態が達成される。開状態においては、信号線83,84が電気的に分離され、信号線83,84間を電流が通過することは阻まれる。このようなスイッチオフ動作により、例えば高周波信号のオフ状態を達成することができる。
スイッチング素子X8においては、信号線83は、可動ランド部82a上、梁部82b上、および固定部81上にわたって設けられ且つ可動部82上ないし可動ランド部82a上において接点部83aを有し、信号線84は、接点部83aに対向する接点部84aを有し、接点部83a,84aの開閉によって、例えば高周波信号の信号線83,84間の通過および非通過が選択される。すなわち、スイッチング素子X8は、単一の開閉箇所(単一接点)を具備するものである。このようなスイッチング素子X8では、従来のスイッチング素子Z2に関して上述したようなスティッキング不良は生じにくい。したがって、スイッチング素子X8は、長い接点開閉寿命を実現するのに適する。
スイッチング素子X8においては、駆動線85は、可動ランド部82a上、梁部82c上、および固定部81上にわたって設けられ且つ可動ランド部82a上において駆動電極部85aを有し、駆動線86は、駆動電極部85aに対向する駆動電極部86aを有し、駆動電極部85a,86a間への駆動電圧の印加によって、駆動電極部85a,86a間に静電引力が生じて、駆動電極部85aが接合している可動ランド部82aが駆動電極部86a側へと動作ないし弾性変形する。駆動線85は信号線83とは別体として設けられており(駆動線85は、信号線83が通過する梁部82bとは異なる梁部82cを通過して、可動ランド部82aから固定部81まで引き回されている)、且つ、駆動線86は信号線84とは別体として設けられている。すなわち、スイッチング素子X8においては、信号線83,84と駆動線85,86とは電気的に分離されているのである。このようなスイッチング素子X8では、従来のスイッチング素子Z1に関して上述したような、信号線から駆動線への信号漏出は生じにくい。このようなスイッチング素子X8は、挿入損失を低減するのに適し、また、優れた高周波特性を得るのに適する。
スイッチング素子X8では、図54の平面視において、信号線83,84のなす信号線路は駆動線86(グラウンド線)およびグラウンド線87の間に配され、且つ、駆動線86およびグラウンド線87は当該信号線路に沿った形状を有する(当該信号線路、駆動線86、およびグラウンド線87は、平行に配されている)。すなわち、信号線路(信号線83,84)および二本のグラウンド線(駆動線86,グラウンド線87)は、コプレナー型線路をなす。コプレナー型線路の採用は、信号線83,84からの信号漏出を抑制するうえで好ましい。
スイッチング素子X8では、スイッチング素子X1の第1変形例における可動部12上の信号線13および駆動線15に関して上述したのと同様に、可動部82上の信号線83および駆動線85について、対称的なパターン形状を採用してもよい。スイッチング素子X8は、スイッチング素子X1の第2変形例が具備するのと同様に、駆動時において駆動電極部85a,86aが当接して短絡するのを防止するためのストッパ部20(突起部20aを伴う)を具備してもよい。スイッチング素子X8では、スイッチング素子X1の第3変形例における信号線13,14が梁部12b上に接点部13a,14aを有するのと同様に、信号線83,84について、梁部82b上に接点部83a,84aが位置するように設けてもよい。また、スイッチング素子X8では、スイッチング素子X1の第4変形例における信号線13および駆動線15が部分的に厚肉部13a,15aを有するのと同様に、信号線83および駆動線85が部分的に厚肉部を有してもよい。
図60から図63は、スイッチング素子X8の製造方法を、図56の一部および図58の一部に相当する断面の変化として表す。
本方法においては、まず、図60(a)に示すように、基板S2上に導体膜201を形成する。例えば、スパッタリング法により、基板S2上にMoを成膜し、続いてその上にAuを成膜する。Mo膜の厚さは例えば50nmであり、Au膜の厚さは例えば500nmである。
次に、図60(b)に示すように、フォトリソ法により導体膜201上にレジストパターン202,203,204を形成する。レジストパターン202は、信号線84に対応するパターン形状を有する。レジストパターン203は、駆動線86に対応するパターン形状を有する。レジストパターン204は、グラウンド線87に対応するパターン形状を有する。
次に、図60(c)に示すように、レジストパターン202〜204をマスクとして利用して導体膜201に対してエッチング処理を施すことにより、基板S2上に、信号線84、駆動線86、およびグラウンド線87を形成する。
次に、図61(a)に示すようにレジストパターン202〜204を除去した後、図61(b)に示すように、信号線84、駆動線86、グラウンド線87を覆うようにして基板S2上に犠牲層205を形成する。犠牲層材料としては例えばポリイミドを採用することができる。犠牲層205を形成するための手法としては、例えばスピンコーティング法を採用することができる。形成される犠牲層205の厚さは例えば5μmである。また、犠牲層材料としては酸化シリコンを採用してもよい。
次に、図61(c)に示すように、犠牲層205をパターニングする。具体的には、フォトリソ法により犠牲層205上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して犠牲層205に対してエッチング処理を施す。
次に、図62(a)に示すように、固定部81および可動部82を構成するための材料膜206を、犠牲層205上および基板S2上にわたって形成する。例えば、CVD法によって酸化シリコンまたはポリシリコンを5μmの厚さに成膜することにより、材料膜206を形成することができる。
次に、図62(b)に示すように、材料膜206をパターニングする。具体的には、フォトリソ法により材料膜206上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して材料膜206に対してエッチング処理を施す。本工程にて、固定部81および可動部82が形成されることとなる。
次に、図62(c)に示すように、犠牲膜205において凹部205aを形成する。具体的には、フォトリソ法により犠牲層205上および材料膜206上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して犠牲層205に対して所定の深さまでエッチング処理を施す。エッチング手法としては、例えば反応性イオンエッチング(RIE)を採用することができる。凹部205aは、信号線83の接点部83aたる突起部を形成するためのものである。
次に、図63(a)に示すように導体膜207を形成する。例えば、スパッタリング法によって、Moを200nmの厚さに成膜した後、その上にAuを500nmの厚さに成膜することにより、導体膜207を形成することができる。
次に、図63(b)に示すように、導体膜207をパターニングする。具体的には、フォトリソ法により導体膜207上に所定のレジストパターンを形成した後、当該レジストパターンをマスクとして利用して導体膜207に対してエッチング処理を施す。本工程にて、信号線83および駆動線85が形成されることとなる。
次に、図63(c)に示すように、犠牲層205を除去する。除去手法としては、例えば酸素プラズマアッシングを採用することができる。本工程にて、可動部82が基板S2からリリースされる。以上のようにして、スイッチング素子X8を適切に製造することができる。
本発明の実施形態に係る以上のスイッチング素子X1〜X8は、可変移相器の一部を構成するスイッチとして使用することができる。また、スイッチング素子X1〜X8は、LSIを電気的に検査するための半導体テスタの具備するRF回路切替えスイッチとして使用することもできる。
図64は、本発明の第9の実施形態に係る通信機器300の部分構成を表す。通信機器300は、アンテナ310と、送受信切替えスイッチ320と、受信回路部330と、送信回路部340と、ベースバンド部350とを備え、時分割通信方式を採用し且つ複数の周波数帯域で送受信可能な例えば携帯電話などの無線通信機器として構成されたものである。
送受信切替えスイッチ320は、通信機器300の通信時において、アンテナ310および受信回路部330が接続された状態と、アンテナ310および送信回路部340が接続された状態とを、高速で切替えるためのものである。切替え速度は、例えば0.1〜10μsecである。この高速切替えによって、時分割通信方式が実現可能とされる。このような送受信切替えスイッチ320は、SPDT(1入力2出力)スイッチである上述のスイッチング素子X7により構成される。スイッチング素子X7における例えば図49に示される信号線73はアンテナ310と電気的に接続され、信号線74Aは受信回路部330と電気的に接続され、信号線74Bは送信回路部340と電気的に接続される。
受信回路部330は、アンテナ310から取り込まれた所定周波数の信号を処理(増幅、周波数変換、復調など)するための回路構成を有し、その一部として複数のバンドパスフィルタ331、複数のバンド切替えスイッチ332,333、およびワイドバンドローノイズアンプ334を含み、ベースバンド部350と接続されている。複数のバンドパスフィルタ331は、各々、所定の周波数帯域にある信号の通過を許容するように構成されている。通過が許容される周波数帯域は、複数のバンドパスフィルタ331間において異なる。このような複数のバンドパスフィルタ331は、所望のシステムの周波数帯域を選択するためのものである。バンド切替えスイッチ332は、各バンドパスフィルタ331の入力端側(アンテナ310側)に設けられている。バンド切替えスイッチ333は、各バンドパスフィルタ331の出力端側(ワイドバンドローノイズアンプ334側)に設けられている。所定の一のバンドパスフィルタ331を間に配する一組のバンド切替えスイッチ332,333が閉状態をとることによって、受信回路部330において当該一のバンドパスフィルタ331が選択されることとなる。このようなバンド切替えスイッチ332,333は、各々、上述のスイッチング素子X1〜X6,X8のいずれかによって構成される。ワイドバンドローノイズアンプ334にて、一のバンドパスフィルタ331を通過した信号の強度が増幅される。
送信回路部340は、アンテナ310から送信すべき信号を生成するための回路構成を有し、その一部として発振回路(図示略)、複数のパワーアンプ341、複数のバンドパスフィルタ342、および複数のバンド切替えスイッチ343を含み、ベースバンド部350と接続されている。各パワーアンプ341は、送信信号を必要な出力まで増幅するためのものである。各バンドパスフィルタ342は、所望のシステムの周波数帯域を選択するためのものである。バンド切替えスイッチ343は、各パワーアンプ341の出力端側(アンテナ310側)に設けられ、所望のシステムの周波数帯域に適応するために通信機器300を切り替えるためのものである。所定の一のバンド切替えスイッチ343が閉状態をとることによって、送信回路部340において所定の一組のパワーアンプ341およびバンドパスフィルタ342が選択されることとなる。このようなバンド切替えスイッチ343は、上述のスイッチング素子X1〜X6,X8のいずれかによって構成される。
以上のようなアンテナ310、送受信切替えスイッチ320、受信回路部330、および送信回路部340を具備することによって、通信機器300は、時分割通信方式において複数の異なる周波数帯域を利用する通信システムに対応可能なマルチバンド通信機器として稼働することができる。
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)固定部と、
可動ランド部、並びに、当該可動ランド部および前記固定部の間を連結する第1梁部および第2梁部を有する、可動部と、
前記可動ランド部上、前記第1梁部上、および前記固定部上にわたって設けられ、且つ、前記可動ランド部上において可動接点部を有する、第1信号線と、
前記可動接点部に対向する固定接点部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第2信号線と、
前記可動ランド部上、前記第2梁部上、および前記固定部上にわたって設けられ、且つ、前記可動ランド部上において可動駆動電極部を有する、第1駆動線と、
前記可動駆動電極部に対向する固定駆動電極部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第2駆動線と、を備えるスイッチング素子。
(付記2)固定部と、
可動ランド部、並びに、当該可動ランド部および前記固定部の間を連結する第1梁部および第2梁部を有する、可動部と、
前記第1梁部上および前記固定部上にわたって設けられ、且つ、前記第1梁部上において可動接点部を有する、第1信号線と、
前記可動接点部に対向する固定接点部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第2信号線と、
前記可動ランド部上、前記第2梁部上、および前記固定部上にわたって設けられ、且つ、前記可動ランド部上において可動駆動電極部を有する、第1駆動線と、
前記可動駆動電極部に対向する固定駆動電極部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第2駆動線と、を備えるスイッチング素子。
(付記3)前記可動部は、固定部に対して片持ち構造で支持されている、付記1または2に記載のスイッチング素子。
(付記4)前記可動部は、前記固定部に対して両持ち構造で支持されている、付記1または2に記載のスイッチング素子。
(付記5)前記可動部は、前記可動ランド部および前記固定部の間を連結する第3梁部を更に有し、
前記可動ランド部上、前記第3梁部上、および前記固定部上にわたって設けられ、且つ、前記可動ランド部上において前記可動駆動電極部から離隔した追加可動駆動電極部を有する、第3駆動線と、
前記追加可動駆動電極部に対向する追加固定駆動電極部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第4駆動線と、を更に備え、
前記第1信号線の前記可動接点部は、前記可動駆動電極部および前記追加可動駆動電極部の離隔方向において当該可動駆動電極部および追加可動駆動電極部の間に位置する、付記1から3のいずれか一つに記載のスイッチング素子。
(付記6)前記第1梁部、前記第2梁部、および前記第3梁部は、前記可動ランド部および前記固定部の間において並列して延び、且つ、前記第1梁部は前記第2梁部および前記第3梁部の間に位置する、付記5に記載のスイッチング素子。
(付記7)前記第2梁部および前記第3梁部は、前記可動ランド部および前記固定部の間において並列して延び、且つ、前記第1梁部は、前記第2および第3梁部とは反対の側において前記可動ランド部および前記固定部を連結する、付記5に記載のスイッチング素子。
(付記8)前記第1信号線は、前記可動ランド部上において追加可動接点部を有し、
前記追加可動接点部に対向する追加固定接点部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第3信号線と、
前記可動ランド部上、前記第2梁部上、および前記固定部上にわたって設けられ、且つ、前記可動ランド部上において前記可動駆動電極部から離隔した追加可動駆動電極部を有する、第3駆動線と、
前記追加可動駆動電極部に対向する追加固定駆動電極部を有し、且つ、前記固定部に対して固定されている、第4駆動線と、を更に備え、
前記追加可動接点部は、前記可動駆動電極部および前記追加可動駆動電極部の離隔方向に前記可動接点部から離隔し、
前記可動ランド部は前記第1梁部と前記第2梁部との間に位置して当該第1および第2梁部は当該可動ランド部の揺動動作の軸心を規定し、
前記軸心は、前記可動駆動電極部および前記追加可動駆動電極部の離隔方向において当該可動駆動電極部および前記追加可動駆動電極部の間であり且つ前記可動接点部および前記追加可動接点部の間を延びる、付記1に記載のスイッチング素子。
(付記9)少なくとも前記第1信号線および前記第2信号線に沿う形状を有する第1グラウンド線と、前記第1グラウンド線とは反対の側において少なくとも前記第1信号線および前記第2信号線に沿う形状を有する第2グラウンド線と、を更に備える、付記1から8のいずれか一つに記載のスイッチング素子。
(付記10)前記第1駆動線は、前記可動部上における前記第1信号線のパターン形状と合同のパターン形状を前記可動部上において一部に有する、付記1から9のいずれか一つに記載のスイッチング素子。
(付記11)前記可動ランド部における前記可動接点部が設けられた側に対向するストッパ部を更に備える、付記1から10のいずれか一つに記載のスイッチング素子。
(付記12)前記第1信号線は、前記第1梁部上において厚肉部を有する、付記1から11のいずれか一つに記載のスイッチング素子。
(付記13)前記第1駆動線は、前記第2梁部上において厚肉部を有する、付記1から12のいずれか一つに記載のスイッチング素子。
(付記14)付記1から13のいずれか一つに記載のスイッチング素子を備える、通信機器。