JP4533984B2 - 加熱装置及びサセプタの温度を増加させる方法 - Google Patents

加熱装置及びサセプタの温度を増加させる方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に基板のハンドリングと基板のプロセスをするチャンバ、特にこのようなチャンバ内にある基板支持体を加熱することに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス基板は特に、アクティブマトリックスのテレビジョン映像表示装置及びコンピュータ情報画像表示装置のような用途に使用されている。各ガラス基板はそれぞれ100万以上の薄膜トランジスタを収容する多数のディスプレイモニタを形成できる。
【0003】
ガラス基板には例えば550x650mmなる寸法を与えることができる。しかし、基板上により多くの表示画像が形成できるよう、あるいはより大きな表示画像が作成できるよう650x830mm及びこれ以上のような一層大きな基板サイズに向かう傾向がある。サイズが大きくなるにつれてプロセスシステムの容量には、より大きな要求が課されることになる。
【0004】
大型ガラス基板のプロセスには、例えば化学気相堆積(CVD)プロセス、物理気相堆積(PVD)プロセス又はエッチングプロセスの実行を含む数多くの連続したステップの実行がしばしば含まれる。ガラス基板を処理するシステムにはこれらプロセスを実行するため一つ又はそれ以上のプロセスチャンバを含めることができる。
【0005】
プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)はガラス基板上に電子材料から成る層を堆積させるため基板のプロセスに広く適用されるもう一つのプロセスである。PECVDプロセスにおいて、基板は一対の平行なプレート電極を備えた真空堆積チャンバ内にセットされる。基板は通常、下部電極としても機能するサセプタ上に載せられる。堆積チャンバの内部には上部電極としても機能するガス吸入マニフォールドから反応体ガスの流れが供給される。プラズマを反応体ガス中に形成させるに十分なRF電力を発生する二つの電極間に高周波(RF)電圧が印加される。プラズマは反応体ガスを分解させ、基板本体の表面に目標とする材料から成る層を堆積させる。他の反応体ガスをチャンバの内部に流すことによって第一層上に別な電子材料から成る付加的な層を堆積できる。各反応体ガスはプラズマに曝され、その結果、目標とする材料から成る層の堆積に至る。
【0006】
大型ガラス基板のプロセスに関連する幾つかの問題が基板の独特な熱特性のために生じる。例えば、ガラスの比較的低い熱伝導性は基板の均一な加熱又は冷却を一層困難にする。特に、大面積、薄型基板の端部近傍での熱損失は基板の中央部近くにおけるものよりも大きくなる傾向があり、その結果、基板全体に亘り不均一な熱勾配が生じる。従って、サイズに結びついたガラス基板の熱特性は、プロセスした基板表面の異なる部分に形成される電子構成要素に対し均一な特性を得ることを一層難しくする。その上、基板の不良熱伝導性のため、基板を急速、均一に加熱又は冷却することが一層難しく、そのために高処理量を達成するには特別な挑戦が必要となる。
【0007】
大型の基板全体に亘ってより均一な温度が得られるように、複数の加熱エレメントを備えたサセプタが使用されてきた。例えば、いくつかのサセプタには内側加熱エレメントと外側加熱エレメントが含まれている。しかし、複数の加熱エレメントを使用すると、時には加熱時にサセプタが変形してしまうことがある。変形をもたらす一つの原因は内側、外側加熱エレメント相互間に発生する可能性がある温度差である。温度差又は温度ギャップが大き過ぎると、サセプタ内部の熱応力がサセプタを変形に至らしめる可能性があり、ある場合には破壊さえもたらすことがあり得る。
【0008】
【課題を解決するための手段】
通常、一つの態様にあっては、基板支持体を加熱する方法には基板支持体の第一及び第二加熱エレメントに対しそれぞれの最終温度設定値を確定するステップが含まれる。第一及び第二加熱エレメントの温度差が予め決められた所定の値△Tを初期段階で超過すると、温度差はその所定の値以下にされる。次いで、加熱エレメントの温度は所定の加熱速度Rに従いそれぞれの各最終温度設定値TF1、TF2まで上げられる。更に、第一及び第二加熱エレメントは温度制御がなされ、加熱エレメントの温度がそれぞれの各最終温度設定値まで上昇する間に第一及び第二加熱エレメントの温度相互の差が所定の値△T以上にならないようになっている。
【0009】
通常、各加熱エレメントの最終温度設定値は同じである必要はない。加熱エレメントの温度制御には第一加熱エレメントに対する第一中間温度設定値を設定するステップと、第二加熱エレメントに対し第二中間温度設定値を設定するステップを含めることができる。第二中間温度設定値は第一中間温度設定値の現在値と、所定の値△Tによって決まる。次いで、第一及び第二加熱エレメントの温度は所定の遅延期間に亘りそれぞれの各中間温度設定値に向けて上げられる。遅延期間の最終点で、新規の中間温度設定値を確定し、第一及び第二加熱エレメントの少なくとも一方の温度がその各最終温度設定値の所定の数値以内に収まるまでそのプロセスを繰り返すことができる。
【0010】
一部の実施では、第二加熱エレメントに適用する第二中間温度値は第一中間温度設定値の現在値及び所定の値△Tの和に等しくなるように設定する。第一中間温度設定値の値は第一加熱エレメントの現在温度と、所定の加熱速度Rに従って決めることができる。例えば、第一中間温度設定値は第一加熱エレメントの現在温度と、所定の加熱速度Rと所定の遅延期間の積で表される値との和に等しく設定することができる。
【0011】
他の態様にあっては、基板ハンドリング装置には基板プロセスチャンバと、そのチャンバの内部に配した基板支持体が含まれる。基板支持体には基板支持体を加熱する第一及び第二加熱エレメントと、前記の技術に従い加熱エレメントの温度を制御する制御装置が含まれる。
【0012】
一部の実施にあっては、第一及び第二加熱エレメントはそれぞれ基板支持体の内部に埋め込んだ内側、外側加熱エレメントである。更に、加熱エレメントには異なる熱容量をもたせることができる。例えば一つの実施によれば、第二加熱エレメントは第一加熱エレメントの加熱能力より大きな加熱能力を有する。
【0013】
本明細書に記載する技術は、加熱エレメントを二つだけ備えた基板支持体に限定するものではない。寧ろ、その技術は三つ以上の加熱エレメント又は三つ以上の加熱ゾーンを備えた基板支持体の加熱に適用できる。
【0014】
更に、各種の実施において、加熱エレメントに対する一つ又はそれ以上の最終温度設定値、所定の加熱速度R及び所定の値△Tはユーザが選択でき、それによって異なるシステム又は構成に対し容易に変更できる融通性のある技術が提供される。
【0015】
各種の実施には、一つ又はそれ以上の以下に述べる利点が含まれる。各加熱エレメントの中間温度設定値を増大させる速度は例えば、加熱エレメントの容量の限界内で、所定の加熱速度Rと同じ程度になるように設計する。加熱エレメントが現在の中間温度設定値に近づく度に中間温度設定値を増大することができ、それによって比較的高いデューティサイクルを維持する。制限した温度ギャップを加熱エレメント相互間で維持し、中間温度設定値を最終温度設定値に向けて増大すると、加熱能力が大きな加熱エレメントから加熱能力が小さな加熱エレメントへの熱伝達が発生する。従って、加熱能力の大きな加熱エレメントはそれ自身の加熱だけのために使用されてきた場合のデューティサイクルよりも高率のデューティサイクルで稼動する。言い換えれば、能力が大きな加熱エレメントのパワーは能力の小さな加熱エレメントに近い基板支持体領域の温度上昇に用いられる。
【0016】
その上、中間温度設定値相互間の差を所定の値に制限することによって、加熱エレメント相互間の温度差が所定の値△Tを超えようとする可能性が低くなる。所定の値△Tが注意深く選択されれば、次ぎにその低下がまた基板支持体が変形し破壊する確度を実質的に軽減することができる。
【0017】
本発明の他の特徴と利点は以下の詳細な説明、付属図面及び請求の範囲から明らかになろう。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1を参照すると、プラズマ強化化学気相堆積装置10には上部壁14を貫通する開口部と、開口部内部に第一電極又はガス入口マニフォールド16を備えた堆積チャンバ12が含まれる。あるいはそれに代わって、上部壁14は上部壁内面に電極16を隣接させたソリッド構造にすることができる。例えば平板状のサセプタ18の如き基板支持体はチャンバ12の内部で第一電極16に平行な広がりを有する。サセプタ18はアルミニウムで形成し、一層の酸化アルミニウムで被覆することができる。サセプタ18の内部に埋め込んでいるのは、第一又は内側加熱エレメント46と第二又は外側加熱エレメント48(図2)であり、これらは例えば加熱コイルとして形成できる。一部の実施にあっては、加熱エレメント46、48はこれらがサセプタ又は他の基板支持体に熱を授受できるのであれば、サセプタ18の内部に埋め込む必要はない。
【0019】
加熱エレメント46、48の加熱能力は同一にすることができるが、一つの実施において、外側加熱エレメント48は比較的大きな加熱能力を有しているが、これに対し内側加熱エレメント46の加熱能力は比較的小さい。例えば、図に記載した実施では、約40キロワット(kW)が外側加熱エレメント48に供給され、約20キロワット(kW)が内側加熱エレメント46に供給される。外側加熱エレメント48により大きな電力を供給すれば、サセプタ18の外周近傍では定型的に一層大きくなる熱損の補正に役立てることができる。しかし、他の実施にあって、内側加熱エレメント46に外側加熱エレメントよりも一層大きな電力を供給し、内側、外側加熱エレメント46、48の役割を逆転させることができる。加熱エレメント46、48に異なる加熱能力を与えるため異なる電源を用いることができる。あるいはそれに代わって、共通の電源を用いてもよく、異なる材料で加熱エレメントを製作することによって、加熱エレメント46、48の加熱能力を異なるものにすることができる。いずれの加熱エレメントにより大きな加熱能力を与えるべきかの選択は特に、加熱エレメント46、48が加熱しようとするサセプタ18上のそれぞれのゾーンのサイズによって決まる。いずれにしても、加熱エレメント46、48に異なる加熱能力を与えることは、650mmx830mm及びこれより大きな寸法のガラス基板を処理する上では、ガラスの熱特性はもとよりガラス基板のサイズが大きいが故に、特に重要なことになり得る。
【0020】
サセプタ18はそれが第二電極として機能するよう接地接続し、チャンバ12の底部壁22を垂直に貫通するシャフト20(図1)の端部に装着する。シャフト20は垂直方向に移動自由であり、サセプタ18が第一電極16に向かう方向と、遠ざかる方向に垂直移動ができるようにしている。
【0021】
離昇プレート24はサセプタ18と、サセプタに実質上平行なチャンバ12の底部壁22との間に水平な広がりを有し、垂直に移動ができる。離昇ピン26は離昇プレート24から垂直上方に突起している。離昇ピン26はサセプタ18にあるリフト穴28を貫通して伸びることができるよう位置決めされ、サセプタの厚さよりも僅かに大きな長さを有する。図1には二本の離昇ピン26のみが記載されているが、離昇プレート24の周囲には付加的な離昇ピンを定間隔に配してもよい。
【0022】
ガス出口30はチャンバ12の側壁32を貫通して伸び、チャンバの排気をするシステム(図には示さず)に接続される。ガス吸入パイプ42はガス吸入マニホールド16の内部に伸び、ガススイッチングネットワークを介して各種ガスの供給源(図には示さず)に接続される。第一電極16はRF電源36に接続される。搬送機構(図には示さず)を設置してロードロックドアから基板38を堆積チャンバ12の内部に移動できるようにし、そのチャンバ内では基板をサセプタ18上に搬送ができる(図1、図3)。搬送機構は、処理した基板をチャンバから取り出すためにも使用される。
【0023】
基板38をサセプタ18上へ転送する前に、サセプタは目標温度、例えば約400℃まで予熱される。以下に詳しく述べるように、コンピュータ又は他のプロセッサのような温度制御装置50(図4)が加熱エレメント46、48の温度を制御する。制御装置50はソフトウエアによってプログラム操作され、以下に説明する機能を実行する構成である。熱電対52は加熱エレメント46、48の温度測定に使用することができ、制御装置50に接続して測定した温度情報を制御装置に供給する。
【0024】
ソフトウエアによって、ユーザは内側、外側加熱エレメント46、48の温度に対する最終温度設定値TF1、TF2を含むいくつかの変数の数値を入力できるようになる。ユーザが決定した変数の数値は制御装置50に接続した例えばキーボード54又は他の入力装置を使用して入力できる。加熱エレメント46、48に対する最終温度設定値TF1、TF2は互いに異なるもので差し支えない。異なる設定値を与えるとサセプタ18の一エリヤから他のエリヤへの熱流を以下に詳しく述べるように更に正確に制御できるようになる。このような熱流はガラス基板のサイズが大きく、熱特性が比較的劣っている基板の補正に望ましことがある。
【0025】
ソフトウエアはまた、加熱エレメント46、48の温度が上昇する概算速度(℃/分)を決定する加熱速度Rの値をユーザが選択できるようにもする。一つの代表的な実施例にあって、Rは10℃/分に設定される。システムがある加熱速度Rによって過熱したり、さもなければ損傷を受けるようであれば、ソフトウエアのインターロック機能によってそのような値Rの適用を防止する。最大速度を超過する値のRがユーザによって選択されると、システムは稼動が停止されるか、あるいは加熱速度Rに対する最大デフォルト値が適用されるようにすることができる。
【0026】
一部の実施にあっては、ユーザはまた、内側加熱エレメント46の測定温度T1と、外側加熱エレメント48の測定温度T2との間の差△Tに対しての最大許容値も入力できる。しかし他の実施では、△Tの値はソフトウエアに予備設定されており、ユーザによって決定はされない。いずれにしても、△Tの値はサセプタ18を加熱する前に決定される。一つの代表的実施例においては、△Tの値は20℃に設定されるが、サセプタ18の特有な構造と、実行しようとするプロセスによっては他の値も適用できる。ユーザが決定した値は記憶装置56に記憶される。
【0027】
図5A、図5Bを参照すると、ユーザが最終温度設定値TF1、TF2及び加熱速度Rの値を含むユーザ決定変数の数値を入力すると、これらの数値は記憶装置56から読み取られる(ステップ100)。△Tの数値がユーザによって設定されると、その数値も記憶装置から検索される。各種ブールタイプと他の変数が初期設定される(ステップ102)。例えば、ブールフラッグFは初期段階では“偽”に設定される。内側加熱エレメント46の温度が最終温度設定値TF1以下の所定の数値TSよりも小さければ、即ちT1<TF1−TSなる関係にあれば、フラッグFの状態は“真”に切り替わる。例えば一実施形態にあっては、所定の数値TSは5℃である。それ故、最終温度設定値TF1が400℃に設定されているとすると、フラッグFは内側加熱エレメント46の温度が395℃以下であれば“真”に切り替わる。更に、△Tの数値がユーザによって設定されなければ、ステップ102で△Tの数値も初期設定されることになろう。
【0028】
次いで、内側加熱エレメント46の温度T1又は外側加熱エレメント48の温度T2がその各最終温度設定値TF1、あるいはTF2以上であるかどうかの決定が行われる(ステップ104)。システムが初めて稼動されるとき、両加熱エレメント46、48は通常、それぞれの最終温度設定値以下であろう。しかし、ステップ104での決定の応答が肯定であれば、そこで両加熱エレメント46、48は稼動を停止される(ステップ106)。制御装置50は所定の時間、例えば30秒待ち(ステップ108)、次いで、ステップ104に復帰し温度T1、T2をチェックする。制御装置50は両加熱エレメント46、48がそれぞれの各最終温度設定値TF1、TF2以下になるまでステップ104〜108で構成されるループを介し命令の反復を継続する。制御装置50は次いで加熱エレメント46、48に電源供給をできるようにして、それぞれを初期設定する(ステップ110)。
【0029】
次ぎに、制御装置50は加熱エレメント46、48の現在温度T1、T2の差が確実に最大許容差△Tを超えないようにするため予熱準備段階の操作を実行する。従って、T1−T2の値が△Tの数値を超えているかどうかについての決定が行われる(ステップ112)。その値が△Tを超過していなければ、即ち第一及び第二加熱エレメント46、48相互間の温度差が過大でなければ、制御装置50は、以下に説明するようにサセプタ18の温度を目標の最終温度設定値にまで上昇させる予備的なサセプタ加熱プロセスの実行へ進む。
【0030】
他方、ステップ112でT1とT2の差が△T以上であることが決定されると、より温度の高い加熱エレメント、例えば外側加熱エレメント48の稼動が停止され、残る加熱エレメント46が加熱される(ステップ114)。ステップ114の期間に中間温度設定値T1(INT)が内側加熱エレメント46の温度に対し確定されるが、それは下式で表される。
【0031】
1(INT)=T1+[R×(所定の遅延期間)
更に、ステップ114の期間に内側加熱エレメント46はRの値より最大限大きな速度で加熱することが許容される。例えば、一つの実施において、内側加熱エレメント46はRの値の二倍に等しい最大速度で加熱することが許容される。勿論、このステップの期間に内側加熱エレメントが加熱される実速度は加熱エレメントの物理的能力によって制限されることがある。制御装置50はそこで所定の遅延期間が経過するのを待つ(ステップ116)。所定の遅延期間は例えば30秒にすることができる。遅延期間にあって、内側加熱エレメント46の温度はT1(INT)の現在値以上になることは許されない。遅延期間の最終点で、制御装置50はステップ112に復帰しT−Tの値が△Tの値を超過しているかどうかを決定する。内側加熱エレメントの温度Tと外側加熱エレメントの温度T相互の差が△Tを超過しなくなるまで制御装置はステップ112〜116で構成するループの実行を継続する。制御装置50は次いで、サセプタ18の温度を目標の最終温度設定値まで上昇させる予備的なサセプタ加熱プロセスを実行する。
【0032】
制御装置50が実行するアルゴリズムは、加熱エレメントの温度差が確実に△Tを超えなくすることに役立つが、加熱エレメントの温度相互間に非ゼロギャップを維持すると、サセプタ18を一層高速に、一層効率的に加熱できるようにする熱流がサセプタ18のエリヤ間に発生し得ることになる。それ故、以下にさらに全体を説明するように、例えば加熱能力の大きい方の外側加熱エレメント48を使用し、内側加熱エレメント46による加熱を増強することができる。
【0033】
一般に、予備的なサセプタ加熱プロセスは、以下に説明するように、加熱エレメント46、48の温度相互の差を△T以下の値に維持しながらユーザが選択する速度Rに基づきサセプタ18をその最終温度まで可能な限り早く加熱できるように設計される。両加熱エレメントを稼動させ(ステップ118)、内側加熱エレメント46の温度T1がTF1−TS以下であるか、あるいは外側加熱エレメント48の温度T2がTF2−TS以下であるかについての決定が行われる(ステップ120)。両加熱エレメント46、48がそれぞれの各最終温度設定値に近ければ、即ち、ステップ120での決定の応答が否定であれば、両加熱エレメントの中間温度設定値T1(INT)、T2(INT)がそれぞれ最終温度設定値TF1、TF2に設定され、サセプタ18をその最終温度まで加熱ができるようになる(ステップ140)。次いで、予備的なサセプタ加熱プロセスが完了することになり、制御装置50は加熱エレメント46、48を制御してサセプタ温度を目標レベルに維持する。
【0034】
他方、ステップ120での決定の応答が肯定であれば、即ち、加熱エレメント46、48の少なくとも一方の温度がその各最終温度設定値に近くなければ、内側加熱エレメント46の温度T1がTF1−TS以下であるかどうかについての決定が行われる(ステップ124)。決定の応答が否定であれば、即ち内側加熱エレメント46の温度がその最終温度設定値TF1に近ければ、フラッグFがクリヤされて“偽”になり、内側加熱エレメント46に対する中間温度設定値T1(INT)は最終設定値TF1に設定される(ステップ126)。
【0035】
ステップ124での決定の応答が肯定であれば、即ち内側加熱エレメント46の温度Tがその最終温度設定値TF1に近くなければ、フラッグFは“真”にセットされる(ステップ128)。更に、内側加熱エレメント46の温度に対する中間温度設定値T1(INT)は内側加熱エレメントの現在温度T及び加熱速度Rによる値の和に等しく、即ちT1(INT) +[R×(所定の遅延期間)]に設定される。
【0036】
アルゴリズムがステップ126に、あるいはステプ128〜130に従っているかとは無関係に、制御装置50は三つの条件が満たされているか、どうかについての決定を行うまで進む(ステップ132)。第一に、フラッグFは“真”に設定しなければならない、即ち内側加熱エレメント46の温度T1はその最終温度設定値TF1よりも少なくともTSだけ低くしなければならない。第二に、外側加熱エレメント48の温度T2もその最終温度設定値よりも十分低くなくてはならない、即ちT2<TF2−TSにしなければならない。第三に、△Tと内側加熱エレメント46に対し確定した現在の中間温度設定値T1(INT)との和は外側加熱エレメントに対する最終温度設定値TF2以下でなければならない、即ち△T+T1(INT)<TF2でなければならない。この最後の条件はアルゴリズムがステップ136に進めば、外側加熱エレメント48が最終温度設定値TF2を超過するのを防止する上で役立つ。
【0037】
これら三条件の内一つ又はそれ以上が満たされないとき、外側加熱エレメント48の中間温度設定値T2(INT)はそこで最終温度設定値TF2に等しく設定される(ステップ134)。次いで制御装置50は所定の遅延期間が経過するのを待つ(ステップ138)。所定の遅延期間は例えば60秒にすることができるが、状況によっては他の遅延が適切であることもある。遅延期間の最終点で制御装置50はステップ120に復帰する。
【0038】
他方、ステップ132において三つの条件総てが満たされるとき、外側加熱エレメント48に対する中間温度設定値T2(INT)は下式に従い、ステップ136に示されるように設定される。
【0039】
2(INT)=T1(INT)+△T
次いで制御装置50は所定の遅延期間が経過するのを待つ(ステップ138)。所定の遅延期間は例えば60秒にすることができるが、状況によっては他の遅延が適切であることもある。遅延期間の最終点で制御装置50はステップ120に復帰する。
【0040】
一般に、ステップ138における遅延期間に亘り、内側加熱エレメント46の温度T1はT1(INT)の現在値を超過すべきではなく、外側加熱エレメント48の温度T2がT2(INT)の現在値を超えることは許されない。T1(INT)とT2(INT)をステップ136における方程式で表されるように相互依存させることで、加熱エレメント46、48の温度T1、T2相互の差が過大になる確度が大幅に軽減される。それ故、サセプタ18はその最終温度までユーザが選択する速度Rに従い、同時にサセプタが破損する可能性が実質的に軽減される方式で加熱できる。
【0041】
中間温度設定値T1(INT)、T2(INT)がそれぞれTF1、TF2に等しくなるよう、両加熱エレメント46、48の温度T1、T2がそれぞれの各最終温度設定値TF1、TF2に近づくまで、制御装置50はステップ120〜138で構成するループの実行を継続する。加熱エレメント46、48がそれぞれの各最終温度設定値TF1、TF2に到達すると、予備的なサセプタ加熱プロセスは完了し、制御装置50は加熱エレメント46、48を制御してサセプタ温度をその目標とする最終温度に維持する。次いで、基板は加熱とプロセスのためサセプタ18上に搬送することができる。
【0042】
実加熱速度は加熱エレメントの加熱能力や他の要因によって制限されることがあるが、加熱エレメント46、48の各々の中間温度設定値が増大する速度はユーザが選択する速度Rと同じ程度の大きさに設計する。加熱エレメント46、48が現在の中間温度設定値に接近する度に中間設定値は増大され、それによって比較的高率のデューティサイクルが維持される。加熱エレメント46、48相互間に限定した温度ギャップを維持し、中間温度設定値を定常的に増大すると加熱能力の大きなヒータ(例えば外側加熱エレメント48)から加熱能力の少ないヒータ(例えば内側加熱エレメント46)への熱伝導が生じる。従って、加熱能力の大きな加熱エレメントは、それ自身の加熱のみに使用するとした場合のデューティサイクルより高率のデューティサイクルで稼動する。即ち、容量の大きな加熱エレメントのパワーは容量の少ない加熱エレメントに近いサセプタの領域の温度上昇に用いられる。
【0043】
更に、上述で説明した実施形態では、二つの加熱エレメントを備えた基板支持体に関し解説してきたが、前述の技術は三つ以上の加熱エレメントを備えた基板支持体の加熱にも適用できる。このような構成にあって、温度の最も低い加熱エレメントを除き総ての加熱エレメントは前文に説明した外側加熱エレメントのように取り扱うことができるため、温度が最も低い加熱エレメントと他の加熱エレメントのどの一つとの間の温度差は所定の値△Tを超えることはない。
【0044】
これに加えて、前述の技術は加熱プラテンのようなサセプタ以外の基板支持体に関連して使用でき、またPECVD以外の技術を用いた基板ハンドリングシステムにも適用できる。例えば、当該技術は基板を加熱する広範な種類の基板ハンドリングシステムに組み入れることができる。当該技術は予熱チャンバ、あるいはロードロックチャンバのようなプロセスチャンバ以外のチャンバの内部にある基板支持体の加熱制御にも適用できる。その上、前述の技術はガラス以外の材料で製作した基板に対する基板支持体の加熱に適用できる。
【0045】
他の実施は、請求の範囲の範囲内に存在する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 代表的な熱堆積チャンバを図示したものである。
【図2】 図1に記載のチャンバに用いる代表的な基板支持体を図示したものである。
【図3】 図2に記載の基板支持体上にセットしたガラス基板を図示したものである。
【図4】 本発明による、図2に記載の基板支持体の温度を制御する制御システムを示す。
【図5A】 本発明による、図2に記載の基板支持体を加熱する方法を説明するフローチャートである。
【図5B】 本発明による、図2に記載の基板支持体を加熱する方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
10:プラズマ強化化学気相堆積装置、12:チャンバ、14:上部壁、16:電極(第一)、18:サセプタ、20:シャフト、22:底部壁、24:離昇プレート、26:離昇ピン、28:リフト穴、30:ガス排出口、32:側壁、36:RF電極、38:ガラス基板、42:ガス吸入パイプ、46:内側ヒータ、48:外側ヒータ。

Claims (12)

  1. サセプタの第一及び第二領域の各温度を第一及び第二最終温度までそれぞれ制御可能に増加させるための加熱装置であって、
    サセプタと、
    前記サセプタの第一及び第二領域に熱を供給するように前記サセプタの第一及び第二領域にそれぞれ接続される第一及び第二加熱エレメントと、
    第一設定温度の値及び第二設定温度の値を格納する記憶装置と、
    前記記憶装置に格納された前記第一及び第二設定温度の値を設定し、前記第一加熱エレメントの温度が前記第一設定温度以下であるかどうかに応じて前記第一加熱エレメントに電力を授受し、及び、前記第二加熱エレメントの温度が前記第二設定温度以下であるかどうかに応じて前記第二加熱エレメントに電力を授受する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、前記第一設定温度が前記第一最終温度になるまで、前記第一設定温度の前記格納された値を定期的に増加させ、
    前記制御装置が前記第一設定温度を増加させる度に、前記制御装置は、前記第二設定温度が前記第二最終温度になるまで、前記第一設定温度の現在値と所定の温度オフセット値との和に前記第二設定温度を設定する、加熱装置。
  2. 前記制御装置が前記第一設定温度を増加させる度に、前記制御装置は、前記第一加熱エレメントの現在温度と、所定の加熱速度と所定の遅延期間の積で表される値との和に前記第一設定温度を設定する、請求項1に記載の加熱装置。
  3. 前記第一加熱エレメントの温度と第二加熱エレメントの温度との間の温度差が所定の値を初期段階で超えている場合、前記制御装置は、前記温度差が前記所定の値より小さくなるまで、前記加熱エレメントのうち温度のより高い方の稼働を停止する、請求項1に記載の加熱装置。
  4. 前記サセプタの第一領域及び第二領域はそれぞれ内側領域及び外側領域である、請求項1に記載の加熱装置。
  5. サセプタの第一及び第二領域の各温度を第一最終温度及び第二最終温度までそれぞれ制御可能に増加させるための加熱装置であって、
    サセプタと、
    前記サセプタの第一及び第二領域に熱を供給するように前記サセプタの第一及び第二領域にそれぞれ接続されている第一及び第二加熱エレメントと、
    前記第一及び第二加熱エレメントを稼働させたり稼働を停止させる制御装置と、
    を備え、
    前記第一加熱エレメントの温度が初期段階で前記第一最終温度より小さく、前記第二加熱エレメントの温度が初期段階で前記第二最終温度より小さく、且つ前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の温度差が最大許容差を初期段階で超えている場合、前記制御装置は、前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の温度差が前記最大許容差に下がるまで、前記加熱エレメントのうち温度のより低い方の加熱エレメントを稼働させ且つ他方の加熱エレメントの稼働を停止させ、
    前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の温度差が前記最大許容差以下に下がった後、前記制御装置は、前記第一及び第二加熱エレメントの両方を稼働させ、前記第一及び第二加熱エレメントをそれぞれ前記第一最終温度及び前記第二最終温度に加熱せしめる、加熱装置。
  6. 前記制御装置が前記第一及び第二加熱エレメントの両方を稼働させた後、前記制御装置は、前記第一及び第二加熱エレメントを、所定の目標加熱速度を超えない各加熱速度で加熱させ、
    前記制御装置が前記第一及び第二加熱エレメントのうちの一方だけを稼働させている期間に亘り、前記制御装置は、その一方の加熱エレメントを、前記所定の目標加熱速度より大きい加熱速度で加熱させる、請求項に記載の加熱装置。
  7. サセプタの第一及び第二領域の各温度を第一及び第二最終温度まで制御可能に増加させる方法であって、
    前記第一及び第二領域に熱を供給するように第一及び第二加熱エレメントを前記第一及び第二領域にそれぞれ接続するステップと、
    第一設定温度及び第二設定温度を格納するステップと、
    前記第一加熱エレメントの温度が前記第一設定温度以下であるかどうかに応じて前記第一加熱エレメントに電力を授受するステップと、
    前記第二加熱エレメントの温度が前記第二設定温度以下であるかどうかに応じて前記第二加熱エレメントに電力を授受するステップと、
    前記第一設定温度の前記格納された値が前記第一最終温度になるまで、前記第一設定温度を定期的に増加させるステップと、
    前記第二設定温度の前記格納された値が前記第二最終温度になるまで、前記第一設定温度の現在値と所定の温度オフセット値との和に前記第二設定温度を定期的に設定するステップと、
    を含む方法。
  8. 前記第一設定温度の前記格納された値を定期的に増加させる前記ステップは、
    前記第一加熱エレメントの現在温度と、所定の加熱速度と所定の遅延期間の積で表される値との和に前記第一設定温度を定期的に設定するステップを含む、請求項に記載の方法。
  9. 前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の温度差が所定の値を初期段階で超えている場合、前記温度差が前記所定の値より小さくなるまで、前記第一及び第二加熱エレメントのうち温度のより高い方の加熱エレメントの稼働を停止するステップを更に含む、請求項に記載の方法。
  10. 前記サセプタの前記第一領域及び前記第二領域はそれぞれ内側領域及び外側領域である、請求項に記載の方法。
  11. サセプタの第一及び第二領域の各温度を第一最終温度及び第二最終温度までそれぞれ制御可能に増加させる方法であって、
    前記第一及び第二領域に熱を供給するように第一及び第二加熱エレメントをそれぞれ前記第一及び第二領域に接続するステップと、
    前記第一加熱エレメントの温度が初期段階で前記第一最終温度より小さく、前記第二加熱エレメントの温度が初期段階で前記第二最終温度より小さく、且つ前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の温度差が最大許容差を初期段階で超えている場合、前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の前記温度差が前記最大許容差に下がるまで、前記第一及び第二加熱エレメントのうち温度のより低い方の加熱エレメントを稼働させ且つ他方の加熱エレメントの稼働を停止させるステップと、
    前記第一加熱エレメントの温度と前記第二加熱エレメントの温度との間の温度差が前記最大許容差以下になった後に、前記第一及び第二加熱エレメントの両方を稼働させ、前記第一及び第二加熱エレメントをそれぞれ前記第一最終温度及び前記第二最終温度に加熱せしめるステップと、
    を含む方法。
  12. 前記第一及び第二加熱エレメントの両方を稼働させるステップは、
    前記第一及び第二加熱エレメントを制御して、所定の目標加熱速度を越えない加熱速度でそれぞれ加熱させるステップを更に含み、
    前記第一及び第二加熱エレメントのうち温度のより低い方の加熱エレメントを稼働させるステップは、
    その稼働させる加熱エレメントを制御して、前記所定の目標加熱速度より大きい加熱速度で加熱させるステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
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