JP4531718B2 - 鉛及び砒素無含有光学硼酸ランタンガラス - Google Patents

鉛及び砒素無含有光学硼酸ランタンガラス Download PDF

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Description

本発明は、鉛及び砒素無含有であり、かつ、好ましくはガドリニウム及びフッ素無含有である光学硼酸ランタンガラス、同ガラスの写像、投影、遠距離通信、光通信工学、移動励振及びレーザ技術分野における使用、及び前記分野の光学素子をそれぞれ実行する光学素子に関する。
近年、光学技術分野、さらにオプトエレクトニクス技術分野(写像、投影、遠距離通信、光通信工学、移動励振及びレーザ技術等の用途分野)における市場はより小型化の方向へと進んでいる。かかる傾向は、最終製品がより小型化され、必然的にこれら最終製品の構造部材及び部品のさらなる小型化が要求されていることに表れている。このことは、光学ガラスメーカーにとっては、最終製品量の増加にも拘らず未加工ガラスの需要量が明らかに減少することを意味している。同時に、ブロック及び/またはインゴットガラスから成るより小型の部品の製造に伴い、製品に比例して廃ガラスが顕著に増加し、また小型部品の加工には大型の構造部材に比べてより多くの作業経費を要することから、ガラスメーカーに対して再加工業者からの値上げ圧力も生じている。
今日まで常法であったブロックあるいはインゴットガラスからガラスを部分的に取り除いて光学部品を作製する方法に代わって、近年ではガラス溶融物から例えば塊状物あるいは球状物等の最終輪郭及び形状のそれぞれに可能な限り近いプレフォーム及びピルそれぞれを直接製造できる製造工程が重要となっている。例えば、再加工業者からは、再プレスのための最終形状に近いプレフォーム、所謂「精密塊状物」に対する要求が高まっている。通常、このような「精密塊状物」は、好ましくは既に部分化され及び光学部品の最終形状に近い外形をもつ、完全火炎研磨済みのフリーあるいはハーフフリー成形されたガラス部材を意味する。
かかる「精密塊状物」は、所謂「精密プレス」あるいは「精密成形」加工によって好ましくはレンズ、非球面レンズ等の光学素子へ加工することも可能である。かかる加工によれば、表面研磨のような外形あるいは表面のさらなる加工はもはや必要とされない。この方法によれば、より短い設置時間で柔軟な方法を用いて、(多数の小型材料部品上へ配置される)より少量の溶融ガラスにも対応可能である。単位時間当たりの部品数が比較的少なく、また通常外形が小さいため、加工品の価値は材料の価値だけから生ずるわけではない。プレス機を直ぐに設置できる状態のままで製品が得られなければならず、すなわち煩雑な後加工、冷却及び/または再加工が必要とされるべきではない。外形には高度な正確性が要求されるため、このようなプレス加工にはグレードの高い精密器具、そして高価な成形材料を用いることが求められる。かかる成形型の寿命によって製品及び製造された材料の利益性が大きく影響される。成形型の寿命にとって極めて重要な要因は可能な限り低い作業温度であるが、この温度はプレスされる材料の粘度がプレス加工に十分適する温度までしか低くすることができない。つまり、加工温度と、その加工温度におけるプレスされるガラスの転移温度Tg、及びプレス加工の利益性には直接的相関があるのである。ガラスの転移温度が低ければ低い程成形型の寿命は延びるので収益性も高くなる。そのため所謂「低Tgガラス」、すなわち融点及び転移温度の低いガラス、すなわち可能な限り低い温度において加工に十分適する粘度をもつガラスに対する需要がある。
さらに、溶融物の加工技術的観点から、「ショート」ガラス、すなわち比較的小さな温度変化によって一定粘度範囲内で大きく粘度が変化するガラスに対しても需要が伸びている。前記ショートガラスの利用は、溶融加工において熱成形時間、すなわち成形型を閉じている時間を短縮できる点で有利である。かかる時間の短縮化により、一方において生産を増加すること、すなわちサイクル時間を減ずることが可能である。他方、成形型も保護されるため、上述したように全体としての製造コストにも有利な影響が及ぶ。「ショート」ガラスにはさらに、冷却を対応するより粘度変化の小さいガラスの場合よりも速く行うことにより、結晶化し易いガラスでも加工できる利点がある。かかる利点により、後続の二次熱成形段階において問題を生じ得る前核形成を防止することが可能である。このことは、このようなガラスを繊維へと延伸できる可能性を示している。
また、ショートガラスは、上述された必要な特性をもつ他に十分な耐薬品性をもつ点においても望ましい材料である。
類似の光学状態あるいは同等な化学組成をもつガラスは先行技術において開示されているが、これらのガラスには大きな欠点がある。これらガラスの多くには、特に希土酸化物として590nmに弱いバンドをもつため内部透過性を低下させるGd、及び/または例えばTiO等の結晶化傾向を増大させる成分が高含量で含まれている。
US2003/0211929は、Tgが630℃より低い精密プレス製品用光学ガラスに関する。このTgに関する特性は極めて多量のB及びZnOを添加することによって得られる。あらゆる場合において、このガラスにはGdが少なくとも5モル%の割合で含まれている。
JP2003/201142には、同様に低Tgをもつ精密プレス製品用光学ガラスが開示されている。この引例においても、この特性は極めて多量のB及びZnOの添加によって得られている。あらゆる場合において、このガラスにはGdが少なくとも6重量%の割合で含まれている。
US2003/0191008には精密プレス技術用の高屈折率光学ガラスが含まれている。このガラスには、Nbが少なくとも30重量%という極めて高い含量で含まれている。Nbがこのように高含量で含まれることによりガラスの内部透過性が低くなっている。
JP2003/238198には、低Tgをもつ精密プレス製品用光学ガラスが開示されている。この低Tg特性はLiF及び/またはZnFの添加によって得られており、あらゆる場合において、成分としてフッ素が少なくとも9重量%の割合で含まれている。フッ素の含有は特にその強い揮発性ゆえに安定な溶融及び製造加工との関連において不利となる。
JP2003/300751には精密プレス製品用の低融点ガラスが開示されている。本引例では480〜580℃の低TgはBiの添加によって得られている。あらゆる場合においてBiが含まれるため、ガラスは着色され、ガラスの内部透過性が低下している。
JP2002/173336には、20〜32という低いアッベ数をもつ高散乱性の低融点リン酸ガラスが開示されている。
DE3534575には眼鏡レンズ用ガラスに関する記載があるが、いずれの場合にも着色成分が含まれている。なおこの引例では酸化ランタンは単なる任意成分として取り扱われている。
DE3605668には亜テルル酸塩ガラスに関する記載があるが、いずれの場合にも成分として毒性のある酸化テルルが含まれている。
DE10126554には屈折率が極めて高い硼珪酸ガラスが開示されている。
EP1236694A1、US2003/0100433及びUS2003/0211929には、鉛及びフッ素無含有の光学ガラスが開示されているが、あらゆる場合においてGdが含まれている。
JP60−221338には、あらゆる場合において成分として酸化リチウムが含まれ、及び酸化物1種の少なくとも一部がフッ素で置換えられたガラスに関する記載がある。
本発明は、望ましくかつ有利な光学特性(n/v)と低転移温度を同時に達成でき、さらに環境に対する配慮からPbO及びAs無含有であり、また好ましくはGd及びフッ素を成分として無含有である光学ガラスを提供することを目的とする。本発明に従ったガラスはさらに、精密プレスによって加工可能であり、また写像、投影、遠距離通信、光通信工学、移動励振及びレーザ技術の分野での使用に適さなければならず、及び1.75〜1.85の範囲内の屈折率n、35〜44のアッベ数、及び好ましくは560℃以下の可能な限り低い転移温度Tgを有するものでなければならない。これらガラスの溶融性及び加工適性もまた良好であり、さらにガラス集塊を連続的処理する方式での製造が可能となるように十分結晶化安定性でなければならない。粘度が107.6〜1013dPasの範囲内で可能な限り「ショート」なガラスが望ましい。所謂ショートガラスとは、一般的に10〜1013dPasの粘度範囲内で極めて急勾配な粘度曲線をもつガラスを意味する。本発明に従ったガラスに関して用語「ショート」を用いる場合には107.6〜1013dPasの粘度範囲内に必ず含まれる。
上記目的は、本願特許請求の範囲において限定された本発明の実施態様によって達成される。
特に本発明では、下記組成(酸化物としての重量%に基づく)から成り、屈折率nが1.75〜1.85の範囲内であり、かつ、アッベ数vが34〜44の範囲内である、鉛及び砒素無含有、さらに好ましくはガドリニウム及びフッ素無含有の光学ガラスが提供される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
SiO 0.5−8
10−25
ZnO 10−26
La 18−34
Ta >15−25
Nb 0.5−15
WO 0−10
Al 0−2
LiO 0−5
NaO 0−6
O 0−8
CsO 0−9
MgO 0−5
CaO 0−5
SrO 0−5
BaO 0−5
0−10
TiO 0−6
ZrO 0−11
HfO 0−6
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ΣB+ZnO 30−45
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Σアルカリ金属酸化物 0−10
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Σアルカリ土金属酸化物 0−8
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ΣAl,Y,WO,TiO, 0−15
ZrO,HfO,アルカリ土金属酸化物
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
慣用清澄剤 0−2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
好ましくは、含有される酸化物の総和、La+Ta+Nb+Y+ZrOは酸化物ベースで50重量%以上である。
また好ましくは、本発明ガラスには上記組成に含まれない成分は含まれない。
本発明に従ったガラスは、類似ガラス種である既知光学ガラスとアッベ数及び屈折率等において同一の光学的性状を有する。しかしながら、本発明ガラスは良好な溶融性及び加工適性、加工コストの低減による低製造コスト、さらに環境適合性において特徴付けられる。
特に、本発明によるガラスは例えば精密塊状物等の最終外形に近い加工、また正確な最終外形をもつ光学部品製造のための形板プレス加工(精密プレス)に適する。このため、好ましくは本発明に従ったガラスの粘度温度分布及び加工温度は、高感度な精密装置を用いた最終外形及び輪郭それぞれに近い熱成形も可能となるように適合される。
さらに、本発明に従ったガラスの結晶化安定性及び粘度温度分布を組み合わせることにより、ほぼ問題を生ずることなく、本発明ガラスに対して(さらなる)熱処理(プレス及び再プレスそれぞれ)を行うことが可能となる。
特に、本発明に従ったガラスの屈折率nは1.75〜1.85、好ましくは1.78〜1.83、特に好ましくは1.80〜1.81の範囲内であり、またアッベ数vは34〜44、好ましくは36〜43、さらに好ましくは39〜43、特に好ましくは40〜42の範囲内である。
本発明の一実施態様では、本発明に従ったガラスは560℃以下、好ましくは550℃以下の転移温度Tgを有する。
本発明において所謂「低Tgガラス」は、低転移温度をもつガラス、すなわち好ましくは転移温度が高くても560℃であるガラスを意味する。
本発明に従ったガラスは、好ましくは可能な限り「ショート」で、その粘度は107.6〜1013dPasの範囲内である。ここで「ショートガラス」は、比較的小さな温度変化において一定粘度範囲内で粘度が大きく変化するガラスを意味する。好ましくは、本発明ガラスの粘度が107.6から1013dPasまで減少する温度差ΔTは100°Kである。
図1には実施例10に従った本発明ガラスの粘度曲線が示されている。図1において、縦線はこのガラスが107.6から1013dPasまで変化する温度差ΔTを示している。この図においてΔTは542℃と637℃との差、すなわち95°Kである。
図2には実施例19に従った本発明ガラスの転移曲線が示されている。透過率が5%及び80%となる波長が示されている。これら波長からカラーコードは38/32となる。
本発明において「内部品質」は、ガラスに気泡、及び/またはすじ、及び/または類似の欠陥がそれぞれ可能な限り少なく含まれる程度を言い、このような欠陥が全く含まれないことが好ましい。
以下において、用語「X無含有」及び「成分X無含有」それぞれは、ガラスにこの成分Xが実質的に含まれないこと、すなわちこのような成分がガラス中に不純物としてのみ存在し、単一成分としてガラス組成中に加えられたものではないことを意味する。ここでXとは、例えばGd等の任意な成分である。
以下において特に説明がない限り、ガラス成分比に関するすべてのデータは酸化物をベースとした重量%で示されている。
本発明に従ったガラスの基本ガラス系は、所望の特性を本来的に備える硼酸ランタン系である。
本発明に従ったガラスは、ZnOを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、特に好ましくは少なくとも14重量%の割合で含み、さらにBを少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは17重量%の割合で含んで成ることから、溶融性の良好な低Tgガラスである。前記ZnOの含量は多くても26重量%、好ましくは多くても24重量%、特に好ましくは多くても22重量%である。ZnOは、107.6〜1013dPasの粘度範囲内における所望の粘度温度特性(「ショート」ガラス)に寄与している。
前記B含量は最大で25重量%であり、好ましくは多くても24重量%、特に好ましくは多くても23重量%である。Bの強い網状構造形成特性によってガラスの結晶化に対する安定性及び耐薬品性が増大される。しかしながら、この含量が25重量%を超えると、ガラスが「よりロング」となり本発明にとって好ましくなくなるため、B含量は25重量%を超えてはならない。また、溶融及び溶融進行過程において添加されたBの一部が揮発してガラス組成の正確な調整が困難となる場合がある。
ZnO及びB含量の総和は少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも33重量%、さらに好ましくは34重量%、特に好ましくは38重量%である。ZnO及びB含量を30重量%より低くまで減ずるとガラスの「低Tgガラス」としての特徴が失われてしまう。また、ZnO及びB含量の総和は多くても45重量%、好ましくは多くても42重量%、特に好ましくは多くても41重量%である。この総和を45重量%以上まで増加させると、屈折率が低下し過ぎてしまう。適切なZnO及びB含量の総和範囲は30〜45重量%、34〜42重量%、38〜41重量%、あるいは33〜41重量%である。
またこれらのガラスには、B及びSiOが網状構造形成剤として少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは2重量%含まれる。SiOの最大含量は8重量%、好ましくは7重量%、特に好ましくは6重量%である。SiO含量を8重量%以上まで増加させると転移温度が560℃以上まで高くなり、さらに屈折率の低下がひき起こされる。
本発明に従ったガラスにはLaが少なくとも18重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも21重量%、特に好ましくは少なくとも23重量%の割合で含まれる。このLaの含量は多くても34重量%、好ましくは多くても33重量%、特に好ましくは多くても32重量%に制限される。上記34重量%の上限を超えるとガラス粘度が高くなり過ぎるためこの上限を超えてはならない。またLaの下限含量は、高屈折率を確保するため20重量%以下となってはならない。
また、本発明に従ったガラスにはTaが少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも15.5重量%含まれる。Taの最大含量は25重量%、好ましくは多くても24重量%、特に好ましくは多くても20重量%である。上記25重量%の上限を超えるとガラスのコストが高くなり過ぎて経済的でなくなるため、この上限を超えてはならない。また、高屈折率及びアッベ数を同時に確保するため、Taの含量下限を15重量%以下としてはならない。
さらに、本発明に従ったガラスにはNbが少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは2重量%の割合で含まれる。Nbの最大含量は15重量%、好ましくは多くても10重量%、さらに好ましくは多くても8重量%、特に好ましくは多くても7重量%である。上記15重量%の上限を超えるとNbによってガラスに着色が付与されガラスの内部透過率が低下するため、前記上限は15重量%を超えてはならない。さらにNbの含量が15重量%以上になるとアッベ数の低下が大きくなり過ぎてしまう。また高屈折率を確保するため、Nbの最小含量は0.5重量%を下回ってはならない。
本発明ガラスにはWOを最大で10重量%、好ましくは5重量%の割合で混入可能である。WOには屈折率及びアッベ数を調整させる働きがある。本発明の特定の実施態様で最も好ましくはガラスにWOは含まれない。
また本発明ガラスには、Yを0〜最大10重量%まで、好ましくは9重量%まで、特に好ましくは8重量%まで含ませることが可能である。WOと同様に、Yには光学的性状を調整させる働きがある。
特に好ましくは、本発明ガラスにはTiO及びHfOは含まれない。これらの酸化物は0〜最大6重量%まで、好ましくは最大で3重量%まで含まれていてもよい。これら成分は高屈折率及び高散乱性に寄与する他、Tg及びガラス粘度の増大もひき起こす。さらにTiOは、UVにおける吸収によって透過率に、及び結晶化特性に負の影響を与える。
本発明ガラスは好ましくはZrO無含有であるが、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%含まれていてもよい。ZrOの最大含量は11重量%、好ましくは多くても10重量%、特に好ましくは多くても9重量%である。ガラス中にZrOが高含量含まれると強い失透が生ずるため、上記11重量%の上限を超えてはならない。
本発明に従ったガラスには、LiOがアルカリ金属酸化物として最大含量で5重量%、好ましくは多くても4重量%、さらに好ましくは3重量%含まれる。前記LiOの含量は2重量%、1重量%、あるいは0.1重量%等のさらに低い含量でも適する。適する含量範囲は例えば0.1〜4重量%である。なお、本発明ガラスは任意であるがLiO無含有であってもよい。
本発明に従ったガラスにはNaOが多くても6重量%、好ましくは多くても5重量%、特に好ましくは多くても4重量%含まれる。
また、本発明に従ったガラスにはKOが多くても8重量%、好ましくは多くても7重量%、特に好ましくは多くても6重量%含まれる。
本発明ガラスに酸化セシウムが含まれる場合、酸化セシウム含量は多くても9重量%、好ましくは多くても8重量%、さらに好ましくは多くても7重量%である。
本発明に従ったガラス中のアルカリ金属酸化物の総含量は0〜10重量%の範囲内である。好ましい総含量は多くても7重量%、特に好ましくは多くても6重量%である。前記多くても10重量%のアルカリ金属酸化物総含量を超えるとこのガラス系の屈折率が低下し過ぎるため、アルカリ金属酸化物はこの上限値を超えて含まれてはならない。アルカリ金属酸化物の添加により溶融特性が最適化される。すなわちこれら酸化物は融剤として働く。さらにこれら酸化物はTgの低下にも作用する。
粘度温度分布を柔軟に調節するため、本発明に従ったガラスに、任意であるが、MgO、CaO、SrO及び/またはBaOから選択されるアルカリ土金属(MO)を含ませることも可能である。前記MOの総量は多くても8重量%、好ましくは多くても5重量%、最も好ましくは多くても4重量%である。
本発明に従ったガラスにはAlが多くても2重量%、好ましくは多くても1.5重量%、特に好ましくは多くても1重量%含まれる。
光学ガラスとしての本発明に従ったガラスは好ましくは着色成分を含まず、及び/またはレーザ活性成分等の光学活性成分は含まれない。
特に、本発明に従ったガラスは、好ましくは例えばAg等のレドックス感受性成分、及び/または例えばTl、Te、Be及びAsの酸化物等の有毒かつ有害成分を無含有である。あらゆる場合において、本発明ガラスはPbO及び砒素無含有である。
本発明の一実施態様において、本発明ガラスは好ましくは本願特許請求の範囲に記載されていない他成分についても無含有である。すなわちこの実施態様にでは、本発明ガラスは実質的に本願特許請求の範囲に記載された成分から成る。ここで用語「実質的に〜から成る」は、他成分が不純物としては存在し、ガラス組成へ単一成分として意識的に添加されたものでないことを意味する。
本発明に従ったガラスには慣用の清澄剤を少量含有させることが可能である。添加する清澄剤の総量は多くても2.0重量%、より好ましくは多くても1重量%である。本発明に従ったガラスには清澄剤として下記成分中の少なくとも1種を(添加後のガラス組成における重量%で表示)含ませることができる。
Sb 0−1 及び/または
SnO 0−1 及び/または
SO 2− 0−1 及び/または
0−1
フッ素及びフッ素含有化合物は溶融及び溶融進行過程中に揮発しやすいため、ガラス組成の正確な調整が困難となる。そのため、本発明ガラスでは好ましくはフッ素も無含有とされる。
本発明はさらに、本発明に従ったガラスの写像、投影、遠距離通信、光通信工学、移動励振及びレーザ技術等の用途分野における使用にも関する。
本発明はまた、本発明に従ったガラスを含む光学素子にも関する。本発明ガラスの使用対象となる光学素子としては、特にレンズ、非球面レンズ、プリズム及び小型構造部材がある。なお、本発明では、用語「光学素子」には上記光学素子のプレフォーム、例えば塊状物、精密塊状物等も含まれる。
以下において一連の実施例を用いて本発明について詳細に説明する。但し本発明は下記実施例に限定されない。
実施例
実施例2における表2〜5には好ましいガラス組成範囲内における実施態様例が示されている。以下の実施例に記載されたガラスは実施例1において作製されたものである。
酸化物原料を秤量し、例えばSb等の清澄剤を前記原料へ加えてから、これらの混合物を十分に混合する。このガラス混合物を凡そ1150℃で溶融して連続状の溶融集塊を得てから清澄(1200℃)及び均質化する。ガラスは約1180℃の注入成形温度において注入成形して所望の寸法へと加工可能である。大量の連続状集塊中の温度を少なくとも凡そ100K低下させ、及び前記材料をプレス法によって最終外形に近い形状に加工できることが実験によって示された。
Figure 0004531718
本ガラスの特性を実施例10と同様に表3に示す。
本発明に従った実施例1〜26について表2〜5に示す。
本発明に従ったすべてのガラスは560℃以下のTgを有し、極めて良好な耐アルカリ性を示し、また加工性も良好である。本発明に従ったガラスのカラーコードは38/32までの数値が得られる。
Figure 0004531718
Figure 0004531718
Figure 0004531718
Figure 0004531718
実施例10に従った本発明ガラスの粘度曲線を示した図である。 実施例19に従った本発明ガラスの透過率曲線を示した図である。

Claims (10)

  1. 下記組成(酸化物ベースでの重量%)から成ることを特徴とする、1.75〜1.83の屈折率nd及び34〜44のアッベ数vdを有する鉛及び砒素無含有光学ガラス:
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    SiO 0.5−8
    10−25
    ZnO 10−26
    La 18−34
    Ta >15−25
    Nb 0.5−15
    WO 0−10
    Al 0−2
    LiO 0−5
    NaO 0−6
    O 0−8
    CsO 0−9
    MgO 0−5
    CaO 0−5
    SrO 0−5
    BaO 0−5
    0−10
    TiO 0−6
    ZrO 0−11
    HfO 0−6
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣB,ZnO 30−45
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    Σアルカリ金属酸化物 0−10
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    Σアルカリ土金属酸化物 0−8
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣAl,Y,WO,TiO, 0−15
    ZrO,HfO,アルカリ土金属酸化物
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    慣用清澄剤 0−2
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  2. La+Ta+Nb+Y+ZrOの総含量が酸化物ベースで50重量%を越えることを特徴とする請求項1項記載のガラス。
  3. 下記組成(酸化物ベースでの重量%)から成ることを特徴とする請求項1または2項記載のガラス:
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    SiO 1−7
    15−24
    ZnO 12−24
    La 23−33
    Ta 15.5−23
    Nb 1−8
    WO 0−5
    Al 0−1.5
    LiO 0.1−4
    NaO 0−5
    O 0−6
    CsO 0−8
    MgO 0−4
    CaO 0−4
    SrO 0−4
    BaO 0−4
    0−9
    TiO 0−3
    ZrO 0−10
    HfO 0−3
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣB,ZnO 34−42
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣLa,Ta,Nb, >50
    ,ZrO
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    Σアルカリ金属酸化物 0−7
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    Σアルカリ土金属酸化物 0−5
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣAl,Y,WO,TiO, 0−13
    ZrO,HfO,アルカリ土金属酸化物
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    慣用清澄剤 0−2
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  4. 下記組成(酸化物ベースでの重量%)から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス:
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    SiO 1−7
    15−23
    ZnO 12−24
    La 23−33
    Ta 15.5−23
    Nb 1−8
    WO 0−5
    Al 0−1.5
    LiO 0.5−4
    NaO 0−4
    O 0−4
    CsO 0−4
    MgO 0−4
    CaO 0−4
    SrO 0−4
    BaO 0−4
    0−9
    TiO 0−3
    ZrO 1−10
    HfO 0−3
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣB,ZnO 38−41
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣLa,Ta,Nb, >50
    ,ZrO
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    Σアルカリ金属酸化物 0−6
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    Σアルカリ土金属酸化物 0−4
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    ΣAl,Y,WO,TiO, 0−13
    ZrO,HfO,アルカリ土金属酸化物
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    慣用清澄剤 0−2
    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  5. 清澄剤として下記成分(重量%)の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス:
    Sb 0−1 及び/または
    SnO 0−1 及び/または
    SO 2− 0−1 及び/または
    F 0−1
  6. ガドリニウム及び/またはフッ素無含有であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス。
  7. 写像、投影、遠距離通信、光通信工学、移動励振及び/またはレーザ技術分野における請求項1〜6のいずれかに記載のガラスの使用。
  8. 光学素子への請求項1〜6のいずれかに記載のガラスの使用。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のガラスを含む光学素子。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載のガラスを精密プレスする工程を含む光学素子の製造方法。

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