JP5249697B2 - 光学ガラス - Google Patents

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本発明は、低温成形用光学部品に用いられる低ガラス転移温度で高屈折率の光学ガラスに関するものである。特に本発明は高精度モールド成形技術を用いたイメージセンサー機器用の非球面レンズに適した低ガラス転移温度で、かつ高屈折率の光学ガラスに関するものである。
従来のガラス組成物は、レンズのような光学機器に用いられていることが知られている(例えば、特許文献1参照)。レンズの小型化、軽量化の関心から、光学ガラスの屈折率(nd)を増加させることと、分散を減少させることが望まれてきた。高屈折ガラスは鉛のような重金属を含有させることで得られるが、環境保護の理由からこれらの元素を使うことは望まれていない。一般的に、重金属を含有させるとガラス転移温度(Tg)が上がる傾向があり、これによりレンズのプレス成形工程の条件を高温にする必要がある。
特に、高温成形条件で使用される金型は成形体が剥離し難いという問題があり、また、金型は熱により劣化し易く、さらに割れ易いという問題があり、レンズ製造に悪影響を及ぼす。例えば、ダイヤモンド様炭素(ダイヤモンドライクカーボン:DLC)皮膜を施したシリコンカーバイド製の金型表面が劣化すると、全体的なレンズ生産性が低下すると共に、成形金型の使用寿命を短くする。
しかしながら、従来は光学ガラスの熱物理学的性質より光学特性が重要視され要求されてきた。従って、従来の光学ガラスでは高屈性率が得られるものの、ガラス転移温度(Tg)が高いため、光学ガラスを成形する際の成形温度が高くなり、レンズ生産性が低く、ガラス成形金型の寿命が短いのが通常である。
一方、実際には、光学ガラスの熱物理的性質(ガラス転移温度(Tg))だけで、プレス成形工程を最適化できるものではない。すなわち、上記した特許文献1の光学ガラスでは、ガラス中にLiを必須成分として含有しており、このようなLiを含有する光学ガラスでは、高屈折率で、ガラス転移温度(Tg)を低くできるものの、成形体が金型に付着し、成形体が剥離し難く、その結果、金型の表面が劣化し、レンズ生産性が低下するという問題があった。
上記の観点から、本発明の対象はモールド成形非球面レンズに用いられるガラス組成物を提供することである。レンズ生産性改善と成形金型の使用寿命を伸ばすために、ガラス組成物としては、需要の高い高屈折率のもので、適切な熱物理学的性質(例えばガラス転移温度(Tg))を示すものを提供する。
特開2002−362938号公報
本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決するものである。特に、本発明は、例えば、鉛やビスマスなどの重金属を含有することなく、低いガラス転移温度(Tg)と高い屈折率(nd)を兼ね備え、レンズ生産性改善と成形金型の使用寿命を伸ばすことができる光学ガラスを提供することを目的とする。
本発明の第1の観点によれば、光学ガラスは、
Li 2 Oを含まず、成分および組成が
232035質量%
SiO21.5〜5質量
ZnOを6〜14質量
SrOを1.5〜8質量
La232040質量%
BaF21.5質量
fO2を0.1〜7.5質量%
CaOを1.5〜7質量
ZrF4を5質量%以下(但し、0を除く)
を満たし、前記成分の合計が少なくとも92.01質量%である。
本発明の第2の観点によれば、光学ガラスは、屈折率(nd)が1.60〜2.00であり、ガラス転移温度(Tg)が500〜600℃であることが望ましい。
本発明の第3の観点によれば、光学ガラスは、前記SrOが1〜9質量%であることが望ましく、屈折率(nd)が1.70より大きく、1.90以下であり、ガラス転移温度(Tg)が500〜600℃であることが望ましい。
本発明の第4の観点によれば、光学ガラスは、前記SrOが4〜9質量%であることが望ましく、HfO2が0.5〜7.5質量%であることが望ましく、屈折率(nd)が1.70より大きく、1.85以下であり、ガラス転移温度(Tg)が520〜600℃であることが望ましい。
本発明の第5の観点によれば、光学ガラスは、前記SrOが5〜9質量%であることが望ましく、HfO2が1.5〜7.5質量%であることが望ましく、ガラス転移温度(Tg)が520〜600℃であることが望ましい。
本発明の第6の観点によれば、光学ガラスは、前記SiO2が1〜5質量%であることが望ましく、SrOが5〜9質量%であることが望ましく、HfO2が1.5〜7.5質量%であることが望ましく、CaOが1.5〜7質量%であることが望ましく、ガラス転移温度(Tg)が520〜600℃であることが望ましい。
本発明の第7の観点によれば、光学ガラスは、前記SiO2が1〜5質量%であることが望ましく、ZnOが3〜15質量%であることが望ましく、SrOが5〜9質量%であることが望ましく、HfO2が1.5〜7.5質量%であることが望ましく、CaOが1.5〜7質量%であることが望ましく、ガラス転移温度(Tg)が520〜600℃であることが望ましい。
本発明の第8の観点によれば、光学ガラスは、前記B23が20〜40質量%であることが望ましく、SiO2が1〜5質量%であることが望ましく、ZnOが3〜15質量%であることが望ましく、SrOが5〜9質量%であることが望ましく、HfO2が1.5〜7.5質量%であることが望ましく、CaOが1.5〜7質量%であることが望ましく、ガラス転移温度(Tg)が530〜600℃であることが望ましい。
本発明によれば、高い屈折率(nd)を有するため、光学レンズの小型化、軽量化、高分解能化、広角化を達成できるとともに、Liを含有せずに低いガラス転移温度(Tg)を有するため、レンズ生産性改善と成形金型の使用寿命とを伸ばすことができるという効果がある。
ガラス組成は、B23やSiO2のようなガラスネットワークフォーマー(網目形成成分)の組合せを含むことが好ましい。本発明によると、B23は10〜40質量%であることが好ましい。さらには20〜40質量%であることが好ましい。このB23とLa23とで高屈折率低分散ガラスの基礎を形成する。また、SiO2は5質量%以下(0を含む)、好ましくは1〜5質量%である。これらのガラスネットワークフォーマー(網目形成成分)を組み合わせることは、ガラスの耐久性を向上するために重要である。
BaF2、BaO、およびCaOはネットワークモディファイヤー(網目修飾成分)としてガラス構造の結合性を弱め、ガラス転移温度(Tg)の低下をもたらす。特に、BaF2はBaとF2共にネットワークモディファイヤー(網目修飾成分)の機能をもっている。BaF2を含有することで、屈折率(nd)低下を抑制しつつ、ガラス転移温度(Tg)を下げることができる。さらに、ガラス転移温度(Tg)は、La23量を少なくしてBaF2添加量を増加させることにより低下する。これらネットワークモディファイヤー(網目修飾成分)を混合することは、ガラス転移温度(Tg)低下を与える混合イオン効果を促すためにも好ましい。この組合せにおいて、BaF2は少なくとも1質量%以上、BaOは5質量%以下(0を含む)、CaOは7質量%以下(0を含む)、好ましくは1.5〜7質量%である。
ZnOとSrOもネットワークモディファイヤー(網目修飾成分)である。これら成分もまた高屈折率化に寄与している。ZnOは15質量%以下(0を含む)、特に3〜15質量%であることが好ましい。また、SrOは9質量%以下(0を含む)であることが好ましい。これら成分の最大含有量は上述の量に限定されることが好ましい。それはこれらのタイプの成分の過度な量は、ガラスの溶融性に影響を与えるからである。
ZrO2、La23、ZrF4は屈折率(nd)を高くするが、個別で言えば、多量になるとガラス転移温度(Tg)を上昇させる傾向がある。しかしながら、La23とZrO2、およびZrF4のいずれかとの組合せでガラス転移温度(Tg)が上昇することなく高い屈折率(nd)をもたらすことを見出した。ZrO2は9質量%以下(0を含む)含有する。特にLa23はガラス転移温度(Tg)に重大な悪影響を及ぼさずに屈折率(nd)を上昇させることができる。La23については15〜45質量%含有する。ZrF4は5質量%以下(0を含む)含有する。
BaF2とHfO2の組合せは屈折率(nd)の向上をもたらすが、ガラス転移温度(Tg)の上昇傾向があるため、これら成分量は限定すべきである。上記の観点からHfO2は7.5質量%以下、特には5質量%以下であることが好ましい。HfO2は高価であることが知られており、一般的にガラス組成には使用されていない。本発明では少なくとも0.1質量%は必要である。BaF2は、上記の観点から1〜10質量%とされている。
Na2Oはネットワークモディファイヤー(網目修飾成分)であり、ガラス転移温度(Tg)の低下を助長することができるが、耐湿性の観点から、Na2Oは2質量%以下(0を含む)とされている。尚、同じアルカリ金属酸化物のうち、Li2Oについては、モールド成形中に蒸発し易く、金型に付着し、ガラスと金型の剥離性を悪化させるため、含有していない。
本発明の光学ガラスは、実質的に、B23を20〜35質量%、SiO2を1.5〜5質量%、ZnOを6〜14質量%、SrOを1.5〜8質量%、ZrO2を0〜8質量%、La23を20〜40質量%、BaF2を1.5〜9質量%、BaOを0〜4質量%、HfO2を0.1〜7.5質量%、CaOを0〜7質量%、ZrF4を0〜5質量%からなることが望ましい。
また、ガラス転移温度(Tg)は610℃以下、特には600℃以下であることが望ましい。さらに、屈折率(nd)が1.70より大きく、1.80以下であることが望ましい。このような低いガラス転移温度(Tg)や高い屈折率(nd)を兼ね備えるには、光学ガラスを前記した特定組成からなるよう構成することによって達成することができる。なお、前記ガラス転移温度(Tg)は、例えば後述するように、示差走査熱量計で測定して得られる値である。前記屈折率(nd)は、例えば後述するように、J.D.Woolam可変角度分光エリプソメーター(VASE)で測定して得られる値である。
本発明はここで、次の実例に関連付けて説明する。しかしながら、本発明の範囲はここに示した実例に限定されるものではない。
<実験手順>
(ガラス作製)
ガラスは、純度99.5%H3BO3と試薬用La23、ZnCO3、ZrO2、SrCO3、SiO2、BaF2、BaO、HfO2、CaO、ZrF4、Na2O、Y23を、表1に示すように調合した原料を溶融して得た。前記H3BO3は、B23換算して調合した。これと同様に、前記ZnCO3およびSrCO3は、それぞれZnO換算およびSrO換算して調合した。表1はLa23−ZnO−B23基ガラスの組成を示している。なお、表1中、組成比を示す数値の単位は質量%である。
ガラス作製について具体的に説明すると、1バッチ約50gのガラスは、ふた無しのPt/Rh坩堝で大気中1100〜1450℃で0.5〜1.5時間かけて溶融するのが好ましい。得られるガラスの組成は、原料の調合比や溶融条件を適宜調節することによって任意に調整することができる。本実施例では、前記調合により得られた原料を大気中1100〜1350℃で1時間かけて溶融した(表2中の溶融条件を参照)。
ガラスが得られた後、炉から取り出し、加熱した鋼鉄製の金型に流し込んだ。自由冷却した後、予め加熱しておいたアニール炉に移した。アニール温度は、類似の組成のガラス転移温度(Tg)から推測した。
サンプルはガラス転移温度(Tg)付近で1時間かけてアニールした。それから室温まで炉内で冷却を行った。5mm×5mm以上の一対の平行面を持つ四角柱状のプリズムに加工した後、前記平行面の光学研磨を行った。
(測定)
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC;TAQ10series)で測定した。加熱速度:10℃/分、N2流量:50ml/分をこの装置では使用した。ガラス転移温度(Tg)は、切片法を用いて決定し、その再現性は±3℃以内である。アルミナ皿で測定できるガラス転移温度(Tg)を本発明のガラス転移温度(Tg)は超えているので、白金皿を測定に用いた。
ガラスは平行面の片面を光学研磨で仕上げ、透過スペクトルをUV−VIS分光計(PERKIN ELMER Lambda900)を用いて波長範囲190〜3200nm、室温で測定を行った。なお、前記光学研磨は、円板状のセラミック研磨盤表面に、該研磨盤を回転数150rpmの範囲で回転させながら1μmのセラミック粒子を含む研磨液を吹き付けにより塗布した。そして、回転する該研磨盤表面に試料表面を押し付け、研磨盤表面と試料表面間に入り込む研磨液中の前記セラミック粒子の働きにより試料表面を鏡面加工した。
屈折率(nd)は、前記平行面の片面を光学研磨で仕上げたガラスにおいて、J.D.Woolam可変角度分光エリプソメーター(VASE)で測定した。そのデータは、少なくともガラス表面の異なる5点において、可視域の3つの異なる入射角で測定した。データはCauchy方程式にフィッティングさせナトリウムD線の屈折率(nd)と分散を測定した。
(結果)
実施した組成を表1に示し、溶融条件、アニール条件、外観、ガラス転移温度(Tg)、屈折率(nd)を表2に示した。なお、表2中、No.4の溶融条件は、原料を大気中1250℃で1時間かけて溶融した後、1300℃まで昇温したことを示す。表2中、外観の評価は、目視観察により行った。
Figure 0005249697
Figure 0005249697
ガラス転移温度(Tg)はSrとBa量やLa23と置換したBaF2の増加に伴い低下した。これはカルシウムとバリウムがネットワークモディファイヤー(網目修飾成分)として働き、ガラス構造の結合を弱めたためである。これらガラスのイオン性が増加すると、分散に対して明らかに効果がある。ガドリニウムの添加は、イオン混合効果によりガラス転移温度(Tg)低下に寄与している。
BaF2およびHfO2を含有していないNo.1は、一般的なLa23−ZnO−B23基ガラスの比較例の試料であり、ガラス転移温度(Tg)が640℃程度で、屈折率が1.72程度であることが知られている。つまり、このような組成からなるガラスは、屈折率は高いものの、ガラス転移温度(Tg)は高いことが知られている。HfO2を含有していないNo.2は比較例の試料であり、ガラス転移温度(Tg)が高いことがわかる。
UV−VIS分光計を用いて、透過スペクトルを測定した。No.1ガラスの透過スペクトルを図1に示した。500〜2300nmで吸収が起こっていることを確認した。
本発明では、特に好ましい様式を図表で示したが、請求項に定義された発明の精神や目的から離れないかぎり、技術的に効果がある種々の変化をとることができる。
ガラスNo.1の透過曲線である。

Claims (2)

  1. Li 2 Oを含まず、成分および組成が
    232035質量%
    SiO21.5〜5質量
    ZnOを6〜14質量
    SrOを1.5〜8質量
    La232040質量%
    BaF21.5質量
    fO2を0.1〜7.5質量%
    CaOを1.5〜7質量
    ZrF4を5質量%以下(但し、0を除く)
    を満たし、前記成分の合計が少なくとも92.01質量%であることを特徴とする光学ガラス。
  2. さらに、ZrO 2 を6.69〜7.32質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
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