本明細書および添付図面の記載により少なくとも以下の事項が明らかとなる。
媒体に対して液体を噴射する液体噴射部と、前記液体噴射部のノズル列からの液体の噴射を制御する噴射制御部と、前記液体噴射部と共に所定方向に移動可能な移動体と、を備え、前記液体噴射部と前記媒体との距離に応じて、前記移動体の移動する速度を変えることを特徴とする液体噴射装置。
このような液体噴射装置にあっては、印刷の途中でノズルと媒体との距離が異なってしまった場合であっても、メインインク滴とサテライトインク滴が、それぞれ媒体上に着弾したときに生じる位置のずれが同じになるようにすることできるようになる。
また、前記液体噴射部は、前記媒体に対して液体を噴射するとき、鉛直方向の速度の異なる2つの液体滴を噴射することが好ましい。
このような液体噴射装置にあっては、前記液体噴射部は、前記媒体に対して液体を噴射するとき、鉛直方向の速度の異なる2つの液体滴を噴射することができる。
また、前記液体噴射部と前記媒体との距離は、前記媒体の厚みによって変わることが好ましい。
このような液体噴射装置にあっては、前記液体噴射部と前記媒体との距離は、前記媒体の厚みによって変わる。
また、前記液体噴射部と前記媒体との距離は、前記媒体の端部の反りによって変わることが好ましい。
このような液体噴射装置にあっては、前記液体噴射部と前記媒体との距離は、前記媒体の端部の反りによって変わる。
また、前記液体噴射部と前記媒体との距離を変える調整機構を備えることが好ましい。このような液体噴射装置にあっては、前記液体噴射部と前記媒体との距離を変えることができる。
また、前記液体噴射部は、前記媒体の端部に余白を残さないように前記液体を噴射することが好ましい。このような液体噴射装置にあっては、前記液体噴射部は、前記媒体の端部に余白を残さないように前記液体を噴射することができる。
また、前記媒体に着弾しない前記液体を堆積するための溝部を備えることが好ましい。このような液体噴射装置にあっては、前記媒体に着弾しない前記液体を溝部に堆積することができる。
また、前記液体噴射部と前記媒体との距離が、通常の前記液体噴射部と前記媒体との距離よりも大きくなった場合、前記移動体の移動する速度を、通常の前記移動体の移動する速度よりも遅くすることが好ましい。
このような液体噴射装置にあっては、メインインク滴とサテライトインク滴が、それぞれ媒体上に着弾したときに生じる位置のずれが同じになるようにすることできるようになる。
また、前記媒体を搬送する搬送機構を備え、前記所定方向に移動する前記液体噴射部から前記液体を噴射して、前記所定方向に沿う複数のドットから構成されるラインを前記媒体に形成するライン形成動作と、前記搬送機構により前記媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことによって、前記ラインを媒体搬送方向に複数形成して画像を形成し、異なるライン形成動作によって形成される互いに隣接する2つのラインのうち一方のラインを形成するときの前記液体噴射部と前記媒体との距離が、他方のラインを形成するときの前記液体噴射部と前記媒体との距離と異なる場合、前記一方のラインを形成するときの前記移動体の移動する速度は、前記他方のラインを形成するときの前記移動体の移動する速度と異なることが好ましい。
このような液体噴射装置にあっては、異なるライン形成動作によって形成される互いに隣接する2つのラインのうち一方のライン上のメインインク滴とサテライトインク滴のずれを、他方のライン上のメインインク滴とサテライトインク滴のずれと同じになるようにすることできるようになる。
また、前記媒体を搬送方向に搬送する搬送機構を備え、前記液体噴射部は、前記搬送方向に沿って並ぶ複数のノズルを有し、前記所定方向に移動する前記複数のノズルから前記液体を噴射して、前記所定方向に沿う複数のドットから構成されるラインを前記媒体に形成するライン形成動作と、前記搬送機構により前記媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことによって、前記ラインを媒体搬送方向に複数形成して画像を形成し、あるラインを少なくとも2つのノズルで形成する場合であって、前記2つのノズルのうち一方のノズルがそのラインを形成するときの前記一方のノズルと前記媒体との距離が、他方のノズルがそのラインを形成するときの前記他方のノズルと前記媒体との距離と、異なる場合、前記一方のノズルがそのラインを形成するときの前記移動体の移動する速度は、前記他方のノズルがそのラインを形成するときの前記移動体の移動する速度と異なることが好ましい。
このような液体噴射装置にあっては、あるライン上のメインインク滴とサテライトインク滴のずれと同じになるようにすることできるようになる。
また、媒体に対して液体を噴射する液体噴射部と共に所定方向に移動可能な移動体を前記所定方向に移動させながら前記液体噴射部から前記媒体に対して前記液体を噴射する液体噴射方法であって、前記液体噴射部と前記媒体との距離に応じて、前記移動体の移動する速度を変えることを特徴とする液体噴射方法も実現可能である。
このようにして実現された印刷方法は、従来方法よりも優れた方法となる。
===印刷装置の概要===
本発明にかかる印刷装置の一実施形態として、プリンタ1と、コンピュータ1100とを備えた印刷システムを例にとり、その概要について説明する。
図1は、本実施形態にかかる印刷システム1000の外観構成を示した説明図である。この印刷システム1000は、プリンタ1と、コンピュータ1100とを備えている。コンピュータ1100は、表示装置1200と、入力装置1300と、記録再生装置1400とを有している。プリンタ1は、紙や布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ1100は、プリンタ1と電気的に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。表示装置1200は、ディスプレイを有し、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のユーザインタフェースを表示する。入力装置1300は、例えばキーボード1300Aやマウス1300Bであり、表示装置1200に表示されたユーザインタフェースに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバの設定等に用いられる。記録再生装置1400は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置1400AやCD−ROMドライブ装置1400Bが用いられる。
コンピュータ1100には、プリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、表示装置1200にユーザインタフェースを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタドライバは、インターネットを介してコンピュータ1100にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
===プリンタドライバ===
<プリンタドライバについて>
図2は、プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
コンピュータ1100では、コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ1102やアプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110などのコンピュータプログラムが動作している。
ビデオドライバ1102は、アプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110からの表示命令に従って、例えば、ユーザインタフェース等を表示装置1200に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム1104は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム1104のユーザインタフェースを介して、アプリケーションプログラム1104により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム1104は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ1110に画像データを出力する。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンタに出力する。ここで、印刷データとは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと画素データとを有するデータである。ここで、コマンドデータとは、プリンタに特定の動作の実行を指示するためのデータである。また、画素データとは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素に関するデータであり、例えば、ある画素に対応する紙上の位置に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)である。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・ラスタライズ処理などを行う。以下に、プリンタドライバ1110が行う各種の処理について説明する。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体Sに印刷する際の解像度に変換する処理である。例えば、媒体Sに画像を印刷する際の解像度が180×180dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データを180×180dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。以下、画像データを解像度変換処理したRGBデータをRGB画像データと呼ぶ。
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。なお、CMYKデータは、プリンタ1が有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGB画像データの階調値とCMYK画像データの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ1110が参照することによって行われる。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応するCMYKデータに変換される。なお、色変換処理後のデータは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。以下、RGB画像データを色変換処理したCMYKデータをCMYK画像データと呼ぶ。
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンタが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などを利用して、プリンタ1がドットを分散して形成できるように画素データを作成する。
プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理を行うとき、ディザ法を行う場合にはディザテーブルを参照し、γ補正を行う場合にはガンマテーブルを参照し、誤差拡散法を行う場合は拡散された誤差を記憶するための誤差メモリを参照する。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば180×180dpi)を有している。ハーフトーン処理されたデータは、例えば、各画素につき1ビット又は2ビットのデータから構成される。以下、ハーフトーン処理されたデータのうち、1ビットデータのものを2値データと呼び、2ビットデータのものを多値データと呼ぶ。
ラスタライズ処理は、マトリクス状の画像データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、印刷データに含まれる画素データとして、プリンタ1に出力される。
<プリンタドライバの設定について>
図3は、プリンタドライバのユーザインタフェースの説明図である。
このプリンタドライバのユーザインタフェースは、ビデオドライバ1102を介して、表示装置に表示される。ユーザは、入力装置1300を用いて、プリンタドライバの各種の設定を行うことができる。
ユーザは、この画面上から、印刷方式を選択することができる。例えば、ユーザは、印刷方式として、高速印刷方式又はファイン印刷方式を選択することができる。そして、プリンタドライバ1110は、選択された印刷方式に応じた形式になるように、画像データを印刷データに変換する。
また、ユーザは、この画面上から、印刷の解像度(印刷するときのドットの間隔)を選択することができる。例えば、ユーザは、この画面上から、印刷の解像度として180dpiや360dpiを選択することができる。そして、プリンタドライバ1110は、選択された解像度に応じて解像度変換処理を行い、画像データを印刷データに変換する。
また、ユーザは、この画面上から、印刷に用いられる印刷紙の種類を選択することができる。例えば、ユーザは、印刷紙として、普通紙や光沢紙を選択することができる。
印刷紙の種類が異なれば、インクの滲み方や乾き方も異なるため、印刷に適したインク量も異なる。そのため、プリンタドライバ1110は、選択された印刷紙の種類に応じて、画像データを印刷データに変換する。
また、ユーザは、この画面上から、印刷紙の余白形態を選択することができる。印刷紙の余白形態は縁無しと縁有りとがある。縁無しは、印刷紙の端部に余白を残さないように印刷する余白形態である。縁有りは、印刷紙の端部に余白を残すように印刷する余白形態である。印刷紙の余白形態が縁無しである場合と縁有りである場合については、後で図11、及び、図12を参照して詳しく説明する。
このように、プリンタドライバは、ユーザインタフェースを介して設定された条件に従って、画像データを印刷データに変換する。なお、ユーザは、この画面上から、プリンタドライバの各種の設定を行うことができるほか、カートリッジ内のインクの残量を知ること等もできる。
===印刷装置の構成===
<印刷装置の構成について>
次に、印刷装置の構成について図を参照して説明する。図4は、本実施形態のプリンタの全体構成のブロック図である。図5は、本実施形態のプリンタの全体構成の概略図である。図6は、本実施形態のプリンタの全体構成の横断面図である。図7Aは、本実施形態のプリンタのキャリッジが通常位置にあることを説明するための説明図である。図7Bは、本実施形態のプリンタのキャリッジが通常位置よりも鉛直上方にあることを説明するための説明図である。図7Cは、本実施形態のプリンタのキャリッジが通常位置にある場合と通常位置よりも鉛直上方にある場合とで、キャリッジの位置の違いを説明するための説明図である。
以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
本実施形態のプリンタ1は、図4に示すように、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、センサ群50、およびコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ1100から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60(噴射制御部)によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ1100から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を形成する。プリンタ1内の状況はセンサ群50によって監視されており、センサ群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。センサから検出結果を受けたコントローラは、その検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙など)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に所定の搬送量で媒体を搬送させるためのものである。すなわち、搬送ユニット20は、媒体を搬送する搬送機構(搬送手段)として機能する。搬送ユニット20は、図6に示すように、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。ただし、搬送ユニット20が搬送機構として機能するためには、必ずしもこれらの構成要素を全て必要とするわけではない。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された媒体をプリンタ1内に自動的に給紙するためのローラである。給紙ローラ21は、D形の断面形状をしており、円周部分の長さは搬送ローラ23までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて媒体を搬送ローラ23まで搬送できる。搬送モータ22は、媒体を搬送方向に搬送するためのモータであり、DCモータにより構成される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された媒体を印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の媒体を支持する。図6に示されるように、プラテン24には、溝部24a、及び、溝部24bが、それぞれ設けられている。溝部24aは、媒体の搬送されてくる搬送方向下流側に、キャリッジ31の移動方向に沿って直線状に設けられている。溝部24bは、媒体の搬送されてくる搬送方向上流側に、キャリッジ31の移動方向に沿って直線状に設けられている。溝部24a、及び、溝部24bがそれぞれ設けられている理由は、ユーザがプリンタドライバのユーザインタフェース上で印刷紙の端部に余白を残さないように印刷する余白形態を選択した場合に、媒体端部ぎりぎりの位置に吐出され媒体から外れて打ち捨てられるインクを堆積するためである。排紙ローラ25は、印刷が終了した媒体をプリンタ1の外部に排出するローラである。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、キャリッジ移動方向という)に移動させるためのものである。キャリッジユニット30は、図5に示すように、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)と、ヘッドと媒体との距離を変える調整機構としてのキャリッジ支持軸33と、ギヤ34と、キャリッジ支持軸移動モータ35とを有する。移動体としてのキャリッジ31は、往復移動可能である。(これにより、ヘッドがキャリッジ移動方向に沿って移動する。)また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。キャリッジモータ32は、キャリッジ31をキャリッジ移動方向に移動させるためのモータであり、DCモータにより構成される。さらに、キャリッジ31は、鉛直方向にも移動可能である。キャリッジ支持軸移動モータ35が回転すると、ギヤ34が回転される。ギヤ34の回転中心よりもずれた位置にキャリッジ支持軸33が結合している。したがって、キャリッジ支持軸移動モータ35によってギヤ34が回転されることによって、キャリッジ支持軸33は、鉛直方向に移動することになる。キャリッジ31は、キャリッジ支持軸33の移動と共に、鉛直方向に移動する。ここで、キャリッジ31が、鉛直方向に移動する様子について図7A、乃至、図7Cを参照して説明する。キャリッジ支持軸移動モータ35が回転しない状態では、キャリッジ31は、図7Aに示される位置にある。この状態からキャリッジ支持軸移動モータ35によってギヤ34が回転されることによって、キャリッジ支持軸33は、鉛直方向に移動することになる。そして、キャリッジ支持軸33の移動と共に、キャリッジ31も鉛直方向に移動することになる。図7Aに示される例においては、キャリッジ支持軸移動モータ35は、反時計回りに回転する。したがってギヤ34は、時計回りに回転することになる。図7Bに示される例においては、ギヤ34が回転する前のキャリッジ支持軸33の位置が点線にて示されている。そして、ギヤ34が回転した後のキャリッジ支持軸33の位置が実線にて示されている。図7Bに示されるように、ギヤ34が時計回りに回転されることによって、キャリッジ支持軸33は、鉛直上方に移動される。そして、キャリッジ支持軸33の移動と共に、キャリッジ31も鉛直上方に移動することになる。図7Cにおいては、図7Aに示されるキャリッジ31の位置は点線で示されている。そして、図7Bに示されるキャリッジ31の位置は実線で示されている。本実施の形態においては、このようにキャリッジ31の位置を鉛直方向に上下させることが可能である。
ヘッドユニット40は、媒体にインクを吐出(噴射)するためのものである。ヘッドユニット40は、液体噴射部としてのヘッド41を有する。ヘッド41は、本発明の色インク吐出部としてノズルを複数有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。このヘッド41は、キャリッジ31に設けられている。そのため、キャリッジ31がキャリッジ移動方向に移動すると、ヘッド41もキャリッジ移動方向に移動する。そして、ヘッド41がキャリッジ移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体に形成される。
センサ群50には、リニア式エンコーダ51(図5参照)、ロータリー式エンコーダ52(図6参照)、紙検出センサ53(図6参照)、紙幅センサ54(図6参照)等が含まれる。
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31のキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される媒体の先端の位置を検出するためのものである。この紙検出センサ53は、給紙ローラ21が搬送ローラ23に向かって媒体を給紙する途中で、媒体の先端の位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ53は、機械的な機構によって媒体の先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ53は紙搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは媒体の搬送経路内に突出するように配置されている。そのため、媒体の先端がレバーに接触し、レバーが回転させられるので、紙検出センサ53は、このレバーの動きを検出することによって、媒体の先端の位置を検出する。紙幅センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。紙幅センサ54は、光学センサであり、発光部から媒体に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、媒体の有無を検出する。そして、紙幅センサ54は、キャリッジ31によって移動しながら媒体の端部の位置を検出し、媒体の幅を検出する。また、紙幅センサ54は、状況に応じて、媒体の先端も検出できる。紙幅センサ54は、光学センサなので、紙検出センサ53よりも位置検出の精度が高い。
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニット(噴射制御部)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ1100とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
===ヘッド===
<ヘッドの構成について>
次に、ヘッドの構成について図8を参照して説明する。図8は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示したものである。ヘッド41の下面には、同図に示すように、複数の色インクのノズル群411Y、411M、411C、411Kが設けられている。本実施形態では、各色の色インク、即ち、イエロ(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)ごとに、それぞれイエロインクノズル群411Y、マゼンダインクノズル群411M、シアンインクノズル群411C、ブラックインクノズル群411Kとが設けられている。各ノズル群411Y、411M、411C、411Kは、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズル♯1〜♯180を複数個(本実施形態では180個)備えている。
さらに、本実施形態のヘッド41にあっては、各色のノズル群411Y、411M、411C、411Kの他に、クリアインクを媒体Sに向けて吐出するクリアインクノズル群412を備えている。このクリアインクノズル群412についても、各色のノズル群411Y、411M、411C、411Kと同様、クリアインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では180個)備えている。
各ノズル群411Y、411M、411C、411K、412の複数のノズル♯1〜♯180は、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、媒体Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。
各ノズル群411Y、411M、411C、411K、412のノズル♯1〜♯180は、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯180)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯180よりも搬送方向に下流側に位置している。また、紙幅センサ54は、紙搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯180とほぼ同じ位置にある。各ノズル♯1〜♯180には、各ノズル♯1〜♯180を駆動してインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。
<ヘッドの駆動について>
次に、ヘッドの駆動について図9、及び、図10を参照して説明する。図9は、ヘッドユニット40の説明図である。また、図10は、各信号のタイミングの説明図である。
ヘッドユニット40は、ヘッド41を有するとともに、ヘッド41を駆動するヘッド駆動回路42と、原駆動信号ODRVを発生する原駆動信号発生部43とを有する。なお、ヘッド41は、各色のノズル列を有するとともに、ノズル数分のピエゾ素子PZTと、各ピエゾ素子PZTに設けられた圧力室(不図示)とを有する。
ヘッド駆動回路42は、180個の第1シフトレジスタ421と、180個の第2シフトレジスタ422と、ラッチ回路群423と、データセレクタ424と、180個のスイッチSWとを有する。図中のかっこ内の数字は、部材(又は信号)が対応するノズルの番号を示している。このヘッド駆動回路は、シリアル伝送される印刷信号PRTに基づいて180個のピエゾ素子PZTをそれぞれ駆動し、各ノズルからインク滴を吐出するためのものである。このヘッド駆動回路42は、各色のノズル列毎に設けられている。
原駆動信号ODRVは、180個のピエゾ素子に対して共通に供給される信号である。この原駆動信号ODRVは、ノズルが一画素分の距離を横切る時間内に、第1パルスW1と第2パルスW2の2つの駆動パルスを有する。この原駆動信号ODRVは、印刷装置本体側に設けられた原駆動信号発生部43からケーブルを介して、ヘッド駆動回路42のスイッチSWにそれぞれ伝送される。
印刷信号PRT(i)は、ノズル♯iが担当する一画素に対して割り当てられている画素データに対応した信号である。本実施形態では、印刷信号PRT(i)は、一画素につき2ビットの情報を有する信号になっている。この印刷信号PRT(i)は、データセレクタ424からスイッチSW(i)に伝送される。
印刷信号PRTは、ノズル数分の印刷信号PRT(i)をシリアル伝送する信号である。このシリアル伝送される印刷信号PRTは、ヘッド駆動回路42に入力され、180個の2ビットデータである印刷信号PRT(i)にシリアル/パラレル変換される(後述)。
駆動信号DRV(i)は、ノズル♯iに対応して設けられているピエゾ素子PZT(i)を駆動する信号である。ピエゾ素子PZT(i)に駆動信号DRV(i)が入力されると、駆動信号DRV(i)の電圧変化に応じてピエゾ素子PZT(i)が変形する。ピエゾ素子PZT(i)が変形すると、圧力室の一部を区画する弾性膜(側壁)が変形し、圧力室内のインクがノズル♯iから吐出する。
第1制御信号S1は、ラッチ回路群423とデータセレクタ424に入力される。第2制御信号S2は、データセレクタ424に入力される。第1制御信号S1及び第2制御信号S2は、印刷信号PRT(i)が変化するタイミングを示すパルスを有する。
ヘッド駆動回路42にシリアル伝送された印刷信号PRTは、以下に説明するようにして、180個の2ビットデータである印刷信号PRT(i)にシリアル/パラレル変換される。まず、印刷信号PRTが180個の第1シフトレジスタ421に入力され、次に、180個の第2シフトレジスタ422に入力される。第1制御信号S1のパルスがラッチ回路群423に入力されると、各シフトレジスタの360個のデータがラッチ回路群423にラッチされる。第1制御信号S1のパルスがラッチ回路群423に入力されるとき、第1制御信号S1のパルスがデータセレクタ424にも入力される。データセレクタ424は、第1制御信号S1が入力されると、初期状態になる。初期状態のデータセレクタ424は、ラッチされる前には第1シフトレジスタ421に格納されていたデータをラッチ回路群423から選択し、印刷信号PRT(i)としてスイッチSW(i)にそれぞれ出力する。次に、第2制御信号S2のパルスにより、データセレクタ424は、ラッチされる前には第2シフトレジスタ422に格納されていたデータをラッチ回路群423から選択し、印刷信号PRT(i)としてスイッチSW(i)にそれぞれ出力する。このようにして、シリアル伝送される印刷信号PRTは、180個の2ビットデータに変換される。
印刷信号PRT(i)のレベルが「1」のとき、スイッチSW(i)は、原駆動信号ODRVの対応する駆動パルスをそのまま通過させて駆動信号DRV(i)とする。一方、印刷信号PRT(i)のレベルが「0」のとき、スイッチSW(i)は、原駆動信号ODRVの対応する駆動パルスを遮断する。この結果、印刷信号PRT(i)が「11」の場合、ピエゾ素子PZT(i)に駆動パルスW1及びW2が入力し、大ドットが形成される。また、印刷信号PRT(i)が「10」の場合、ピエゾ素子PZT(i)に駆動パルスW1が入力し、中ドットが形成される。印刷信号PRT(i)が「01」の場合、ピエゾ素子PZT(i)に駆動パルスW2が入力し、小ドットが形成される。つまり、印刷信号PRT(i)に応じた大きさのドットが用紙上に形成される。なお、印刷信号PRT(i)が「00」の場合、ピエゾ素子PZT(i)に駆動パルスが入力されないので、ドットは形成されない。
===縁無し印刷===
次に、縁無し印刷について図11、及び、図12を参照して説明する。本実施形態のプリンタ1にあっては、印刷紙の余白形態として、縁無しと縁有りとがある。縁無しは、印刷紙の端部に余白を残さないように印刷する余白形態である。縁有りは、印刷紙の端部に余白を残すように印刷する余白形態である。
図11は、余白形態が縁有りである場合における印刷領域Pと媒体Sとのサイズの関係を示したものである。同図に示すように、印刷領域Pは媒体S内に納まるように設定され、媒体Sの外周部、即ち左右両側縁部及び上下両側縁部には、余白が形成される。
プリンタドライバ1110は、ユーザによって余白形態が縁有りであることが選択された場合、アプリケーションプログラムから与えられた画像データに基づき、印刷領域Pが媒体Sに収まるように印刷データPDを生成する。ここで、印刷領域Pを媒体S内に納めることができないような画像データを処理する場合には、画像データにより表される画像の一部を印刷対象から除外したり、またその画像を縮小処理するなどして媒体Sに収まるようにすることもある。
一方、余白形態が縁無しである場合には、インクは、媒体Sから外れる領域にも吐出される。図12は、余白形態が縁無しである場合における印刷領域Pと媒体Sとのサイズの関係を示したものである。同図に示すように、余白形態が縁無しである場合には、印刷領域Pが媒体Sよりも大きくなるように設定される。媒体Sの周縁部、即ち左右両側縁部および上下両側縁部には、余白が形成されていない。
プリンタドライバ1110は、ユーザによって余白形態が縁無しであることが選択された場合、印刷領域Pが媒体Sからはみ出るような印刷データPDを生成することができる。ここで、印刷領域Pが媒体Sよりも小さくなるような画像データを処理する場合には、印刷領域Pが媒体S全体に行き渡るように印刷領域Pを拡大したりすることができる。これによって、縁の無い見栄えに優れた印刷を行うことができる。
===印刷処理===
<プリンタドライバの処理>
図13は、本実施形態の印刷方法を説明するためのフロー図である。以下に説明される各種の動作は、プリンタドライバ1110により行われる。すなわち、プログラムであるプリンタドライバ1110は、以下に説明される各種の機能を実行するためのコードを有する。
まず、プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラムから印刷命令を受ける(S101)。この印刷命令は、ユーザがアプリケーションプログラム上で印刷を指令することにより発せられる。この印刷命令には、例えばアプリケーションプログラム上で編集された画像データが含まれている。プリンタドライバ1110は、印刷命令の中に含まれている画像データを以下のように印刷データに変換し、プリンタ1に印刷データを出力する。
次に、プリンタドライバ1110は、画像データを180×180dpiの解像度のRGB画像データに変換する(S102:解像度変換処理)。なお、本実施形態における解像度変換処理後のRGB画像データは、256階調のRGBデータである。
次に、プリンタドライバ1110は、RGB画像データをCMYK画像データに変換する(S103:色変換処理)。本実施形態では、RGB画像データが180×180dpiの解像度なので、色変換処理後のCMYK画像データも180×180dpiの解像度になる。なお、本実施形態における色変換処理後のCMYK画像データは、256階調のCMYKデータである。
次に、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理を実行し、256階調のCMYK画像データを180×180dpiの解像度の多値データに変換する(S104:ハーフトーン処理)。本実施形態では、このハーフトーン処理により、各画素につき2ビットのデータが割り当てられた2ビットデータとして生成される。すなわち、ここでは、各画素が、「00」(ドットを形成しない)、「01」(小ドット)、「10」(中ドット)、「11」(大ドット)のいずれかのデータにより構成されたデータが生成される。
生成された2ビットデータ(多値データ)は、次に、プリンタドライバ1110によって、ラスタライズ処理される(ステップS105)。ラスタライズ処理は、生成された多値データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。そして、ラスタライズ処理が実行された印刷データは、プリンタ1に出力される(S106)。
===印刷動作について===
<プリンタの処理>
次に、プリンタ1が、実際に印刷を実行する処理について、図14、乃至、図17A、及び、図17Bを参照して説明する。図14は、プリンタ1が印刷を実行するときのフローチャートである。図15Aは、媒体の上端側を印刷することを説明するための説明図である。図15Bは、媒体の中央部を印刷することを説明するための説明図である。図15Cは、媒体の下端側を印刷することを説明するための説明図である。図16Aは、ノズルから押し出されたインクが柱状になることを説明するための説明図である。図16Bは、ノズルから押し出され柱状となったインクが表面張力によってメインインク滴とサテライトインク滴になることを説明するための説明図である。図17Aは、メインインク滴とサテライトインク滴が媒体に着弾したときのずれ量を説明するための説明図である。図17Bは、ノズルと媒体との距離が図17Aと異なる場合に、メインインク滴とサテライトインク滴が媒体に着弾したときのずれ量が図17Aと異なることを説明するための説明図である。
以下に説明される各処理は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
ステップS201において、コントローラ60は、コンピュータ1100からインターフェース部61を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ1100から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、以下に説明する各処理を実行する。なお、本実施の形態においては、印刷データに余白形態が縁無しであることを示すコマンドが含まれている。
ステップS202において、コントローラ60は、キャリッジ支持軸移動モータ35を回転させ、キャリッジ支持軸33を鉛直上方に移動させ、キャリッジの位置を鉛直上方に移動させる。これにより、ヘッド41は、鉛直上方の位置(図7Bに示される位置)に移動する。このように、ヘッド41を、鉛直上方の位置に移動させる理由は、印刷用紙の余白形態が縁無しであり、媒体上端側を排紙ローラ25と従動ローラとの間に挟まない状態で印刷を開始するためである。すなわち、媒体の上端側に反りがあり、その反りが最も大きい場合であっても、ヘッド41が媒体の上端側と接触しないようにするためである。図15Aに示される例においては、媒体の上端側の反りが最も大きい場合が、点線で示されている。媒体の上端側の反りが最も大きい場合、ヘッド41と媒体との距離は、ヘッド41が通常の位置(図7Aに示される位置)にあるときのヘッド41と媒体との距離と等しい。このため、媒体の上端側の反りが標準の場合、ヘッド41と媒体との距離は、ヘッド41が通常の位置(図7Aに示される位置)にあるときのヘッド41と媒体との距離よりも大きくなる。
ステップS203において、コントローラ60は、給紙処理を実行する。給紙処理とは、印刷すべき紙をプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラ60は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラ23まで送る。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。紙が印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド41の少なくとも一部のノズルは、紙と対向している。
ステップS204において、コントローラ60は、キャリッジ31を通常より低速で移動させながらヘッド41の所定のノズルからインクを吐出させる。ここでの所定のノズルとは、溝部24aと対向した部分に設けられているノズルのことである。キャリッジ31を通常より低速で移動させることの理由については、後にステップS209の処理を説明するときに、図16A、図16B、図17A、及び、図17Bを参照して説明する。
ステップS205において、コントローラ60は、搬送処理を実行する。搬送処理とは、紙をヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータ22を駆動し、搬送ローラ23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。
ステップS206において、コントローラ60は、媒体を排紙するか否かを判断する。ス テップS206において、コントローラ60が、媒体を排紙すると判断した場合、処理はステップS217に進む。ステップS206において、コントローラ60が、媒体を排紙しないと判断した場合、処理はステップS207に進む。
ステップS207において、コントローラ60は、媒体が所定量搬送されたか否かを判定する。ここでいう所定量とは、媒体上端側の反りがなくなる位置まで媒体が搬送される搬送量のことである。そして、プリンタ1の設計者、もしくは、プリンタ1の製造者は、この所定量を、プリンタ1の設計時に予め実験的に求めておき、プリンタ1の組立時にメモリ63に予めこの所定量を記憶させる。そして、コントローラ60は、ステップS207の処理を実行するときに、この所定量をメモリ63から読み出して処理を実行する。ステップS207において、コントローラ60が、媒体が所定量搬送されていないと判定した場合、処理はステップS204に戻る。そして、媒体上端側の印刷が終了するまで、ステップS204乃至ステップS207の処理が繰り返し実行される。ステップS207において、コントローラ60が、媒体が所定量搬送されたと判定した場合、処理はステップS208に進む。
ステップS208において、コントローラ60は、キャリッジ支持軸移動モータ35を回転させ、キャリッジ支持軸33を鉛直方向下向きに移動させ、キャリッジの位置を鉛直方向下向きに移動させる。これにより、ヘッド41は、鉛直下方の位置(図7Aに示される位置)に移動する。ヘッド41を鉛直下方の位置に移動させる理由は、媒体上端側の反りがなくなる位置まで媒体が搬送されているので、ヘッド41が媒体と接触する虞がないからである。また、ノズルと媒体との距離が大きくなってしまうと、ノズルの製造公差等の影響により、それぞれのノズルから吐出されるインク滴が媒体に着弾する位置のずれが大きくなってしまうからである。したがって、ステップS208において、コントローラ60は、ヘッド41を鉛直下方の位置に移動させる。
このように本実施の形態においては、媒体端部を印刷する場合には、媒体端部の反りが大きい場合であってもノズルが媒体と接触しないように、ノズルを鉛直上方の位置に移動させて印刷を実行する。そして、媒体の端部以外の部分を印刷する場合には、ノズルを鉛直下方の位置に移動させて印刷を実行する。このようにして、ノズルと媒体との距離が同じになるようにキャリッジ31を鉛直方向に移動させる。
しかしながら、印刷開始時に搬送されてきた媒体の上端側の反りが図15Aの実線で示されるように標準的な場合には、媒体上端側を印刷するときと、媒体中央部を印刷するときとで、ノズルと媒体との距離が異なってしまう。
ステップS209において、コントローラ60は、キャリッジ31を通常の速度で移動させながらヘッド41に設けられたノズルからインクを吐出させる。媒体上端側はすでに印刷されてしまっているので、ここでは、全てのノズルからインクを吐出して媒体の中央部を印刷する。ステップS209において、全てのノズルからインクを吐出して媒体の中央部を印刷する様子は、図15Bに示されるようになる。
ここで、図16A、図16B、図17A、及び、図17Bを参照して、ステップS204において、キャリッジを通常より低速で移動させながらノズルからインクを吐出させ、ステップS209において、キャリッジを通常の速度で移動させながらノズルからインクを吐出させることの理由について説明する。
図16Aに示されるように、コントローラ60がノズルからインクを吐出するとき、ノズルから押し出されたインクは、柱状になる。そして、ノズルから押し出され柱状となったインクは、図16Bに示されるように、比較的大きい球形のインク滴と比較的小さい球形のインク滴の2種類のインク滴になる。比較的大きい球形のインク滴をメインインク滴101と呼び、比較的小さい球形のインク滴をサテライトインク滴102と呼ぶことにする。そして、図17A、及び、図17Bに示すように、メインインク滴101とサテライトインク滴102は、媒体に落下する速度が異なる。すなわち、メインインク滴101が媒体に落下する速度Vmの方が、サテライトインク滴102が媒体に落下する速度Vsよりも速い。また、ノズルは、キャリッジ31によって移動されながら、インク滴を吐出する。したがって、メインインク滴101とサテライトインク滴102は、それぞれ鉛直下方の速度成分だけではなく、水平方向にキャリッジ31の移動速度VCRと同じ速度成分VCRを有することになる。
したがって、メインインク滴が媒体に着弾する位置と、サテライトインク滴が媒体に着弾する位置は異なることになる。メインインク滴が媒体に着弾する位置をメインドットと呼ぶ。そして、サテライトインク滴が媒体に着弾する位置をサテライトドットと呼ぶ。図17Aに示される例においては、メインドットとサテライトドットとの間隔は、ΔX1である。図17Bに示される例においては、メインドットとサテライトドットとの間隔は、ΔX2である。メインドットとサテライトドットとの間隔は、ノズルと媒体との距離に比例する。なぜなら、ノズルと媒体との距離が大きい場合は、ノズルと媒体との距離が小さい場合に比べて、メインインク滴が媒体に着弾してからサテライトインク滴が媒体に着弾するまでの時間差が大きい。そして、この時間差にサテライトインク滴の水平方向の速度を乗算した距離だけ、メインドットとサテライトドットとは、離れるからである。
メインインク滴が媒体に落下する速度Vm、サテライトインク滴が媒体に落下する速度Vs、キャリッジの移動速度VCR、及び、ノズルと媒体との距離PGを用いて、メインドットとサテライトドットとの間隔ΔXを表すと、ΔX=VCR×(PG/Vs−PG/Vm)で表される。
次に、図17A、及び、図17Bの場合について具体的に説明する。図17A、及び、図17Bに示される例において、メインインク滴が媒体に落下する速度Vmは、7.0(m/s)、サテライトインク滴が媒体に落下する速度Vsは、6.0(m/s)、キャリッジ31の移動速度VCRは、(0.5m/s)、サテライトインク滴の水平方向の速度成分VCRは、0.5(m/s)であるとする。この場合、図17Aに示される例において、ノズルと媒体との距離PG1が、1.0×10−3(m)であるとすると、メインドットとサテライトドットとの間隔ΔX1=1.2×10−5mである。一方、図17Bに示される例において、ノズルと媒体との距離PG2が、2.0×10−3(m)であるとすると、メインドットとサテライトドットとの間隔ΔX2=2.4×10−5mである。
このように、メインドットとサテライトドットとの間隔が媒体上端部と媒体中央部とで異なると、媒体に形成された印刷画像が均質にならず、画像に歪みが生じてしまう。
そこで、本実施の形態においては、キャリッジの移動速度を変えることで、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正する。すなわち、媒体上端側を印刷するときのノズルと媒体との距離が、媒体中央部を印刷するときのノズルと媒体との距離よりも大きくなる。したがって、キャリッジの移動速度が同じ場合、媒体上端側を印刷するときの方が、媒体中央部を印刷するときに比べ、メインドットとサテライトドットとの間隔が大きくなる。そこで、媒体上端側を印刷するときは、コントローラ60は、キャリッジを通常の速度よりも低速で移動させならノズルからインクを吐出させる。メインドットとサテライトドットとの間隔は、メインインク滴とサテライトインク滴がそれぞれ媒体に着弾するまでの時間差と、キャリッジの移動速度との積で決まる。したがって、ノズルと媒体との距離が大きくなり、メインインク滴とサテライトインク滴がそれぞれ媒体に着弾するまでの時間差が大きくなった場合には、キャリッジの移動速度を小さくすれば、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正することができる。
したがって、プリンタ1の設計者、もしくは、プリンタ1の製造者は、図15Aの実線で示されるように媒体上端側の反りが標準的な場合のノズルと媒体との距離が、媒体中央部を印刷するときのノズルと媒体との距離よりも大きくなる量をプリンタ1の設計時に予め実験的に求める。そして、ノズルと媒体との距離が異なることによりメインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正するためのキャリッジの移動速度をプリンタ1の組立時にメモリ63に記憶させる。そして、コントローラ60は、ステップS204の処理を実行するときに、この移動速度をメモリ63から読み出して処理を実行する。
ステップS210において、コントローラ60は、搬送処理を実行する。搬送処理とは、紙をヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータ22を駆動し、搬送ローラ23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。
ステップS211において、コントローラ60は、媒体を排紙するか否かを判断する。ステップS211において、コントローラ60が、媒体を排紙すると判断した場合、処理はステップS217に進む。ステップS211において、コントローラ60が、媒体を排紙しないと判断した場合、処理はステップS212に進む。
ステップS212において、コントローラ60は、媒体が所定量搬送されたか否かを判定する。ここでいう所定量とは、媒体下端側の反りを印刷する位置まで媒体が搬送される搬送量のことである。そして、プリンタ1の設計者、もしくは、プリンタ1の製造者は、この所定量を、プリンタ1の設計時に予め実験的に求めておき、プリンタ1の組立時にメモリ63に予めこの所定量を記憶させる。そして、コントローラ60は、ステップS212の処理を実行するときに、この所定量をメモリ63から読み出して処理を実行する。ステップS212において、コントローラ60が、媒体が所定量搬送されていないと判定した場合、処理はステップS209に戻る。ステップS212において、コントローラ60が、媒体が所定量搬送されたと判定した場合、処理はステップS213に進む。媒体下端側の反りを印刷する位置まで媒体が搬送された場合には、媒体とキャリッジとの位置関係は、図15Cに示されるようになる。
ステップS214において、コントローラ60は、キャリッジ支持軸移動モータ35を回転させ、ヘッド41を鉛直上方の位置(図7Bに示される位置)に移動させる。このように、ヘッド41を鉛直上方の位置に移動させる理由は、印刷用紙の余白形態が縁無しであり、媒体下端側を搬送ローラ23と従動ローラとの間に挟まない状態で印刷を開始するためである。すなわち、媒体の下端側に反りがあり、その反りが最も大きい場合であっても、キャリッジ31が媒体の下端側と接触しないようにするためである。図15Cに示される例においては、媒体の下端側の反りが最も大きい場合が、点線で示されている。
ステップS214において、コントローラ60は、キャリッジ31を通常より低速で移動させながらヘッド41の所定のノズルからインクを吐出させる。ここでの所定のノズルとは、溝部24bと対向した部分に設けられているノズルのことである。キャリッジ31を通常より低速で移動させることの理由については、ステップS209の処理を説明するときに説明したのと同じ理由である。
ステップS215において、コントローラ60は、搬送処理を実行する。搬送処理とは、紙をヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータ22を駆動し、搬送ローラ23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。
ステップS216において、コントローラ60は、媒体を排紙するか否かを判断する。ステップS216において、コントローラ60が、媒体を排紙すると判断した場合、処理はステップS217に進む。ステップS216において、コントローラ60が、媒体を排紙しないと判断した場合、処理はステップS214に戻る。
ステップS217において、コントローラ60は、排紙ローラ25を回転させて、媒体を排紙する。
ステップS218において、コントローラ60は、受信した印刷データの印刷が全て終了して、印刷処理を終了するか否かを判定する。コントローラ60が、受信した印刷データが残っており、印刷処理を継続すると判定した場合、処理はステップS203に戻る。コントローラ60が、受信した印刷データが残っていないと判定した場合、印刷処理を終了する。
===その他の実施の形態===
以上、一実施形態に基づき、本発明に係るプリンタ等の印刷装置について説明したが、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更または改良され得るとともに、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に係る印刷装置に含まれるものである。
また、本実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部または全部をソフトウェアによって置き換えてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアによって置き換えてもよい。
また、被印刷体は、媒体Sの他に、布やフィルムなどであってもよい。
本実施の形態においては、ノズルと媒体との距離が異なりメインドットとサテライトドットとの間隔が異なり、媒体に形成された画像に歪みが生じてしまう場合として、媒体の端部に余白を残さないように印刷する場合を例にとって説明した。すなわち、本実施の形態においては、媒体端部を印刷する場合には、媒体端部の反りが大きい場合であってもノズルが媒体と接触しないように、ノズルを鉛直上方の位置に移動させて印刷を実行する。そして、媒体の端部以外の部分を印刷する場合には、ノズルを鉛直下方の位置に移動させて印刷を実行する。このようにして、ノズルと媒体との距離が同じになるようにキャリッジを鉛直方向に移動させる。しかしながら、印刷開始時に搬送されてきた媒体の上端側の反りが標準的な場合には、媒体上端側を印刷するときと、媒体中央部を印刷するときとで、ノズルと媒体との距離が異なってしまう。そして、ノズルと媒体との距離が異なってしまうと、メインドットとサテライトドットとの間隔が異なってしまった。
しかしながら、ノズルと媒体との距離が異なりメインドットとサテライトドットとの間隔が異なるのは、上述した形態に限るものではない。例えば、図18A、及び、図18Bに示されるように媒体の厚みが異なる場合にも、ノズルと媒体との距離が異なりメインドットとサテライトドットとの間隔が異なる。この場合にも、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正するためにキャリッジの移動速度を変えることができる。媒体の厚みが異なる場合に、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正するためにキャリッジの移動速度を変えることについて、図18A、及び、図18Bを参照して説明する。
図18Aは、媒体が厚い場合に、ノズルと媒体との距離が小さくなることを説明するための説明図である。図18Bは、媒体が薄い場合に、ノズルと媒体との距離が大きくなることを説明するための説明図である。
図18Bに示されるように媒体が薄い場合のノズルと媒体との距離PG4は、図18Aに示されるように媒体が厚い場合のノズルと媒体との距離PG3よりも大きくなる。したがって、キャリッジの移動速度が同じ場合、図18Bに示されるメインドットとサテライトドットとの間隔ΔX4は、図18Aに示されるメインドットとサテライトドットとの間隔ΔX3よりも大きくなる。理由は、図14のステップS209の処理を説明するときに説明したので、ここでは説明を省略する。この場合にも、キャリッジの移動速度を変えることによって、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正することができる。すなわち、ユーザは、図3に示されるプリンタドライバのユーザインタフェースから印刷に用いられる印刷紙の種類を選択することができた。プリンタ1の設計者、もしくは、プリンタ1の製造者は、それぞれの印刷紙の厚みを予め実験的に求める。プリンタ1の設計者、もしくは、プリンタ1の製造者は、媒体の厚みの違いによってメインドットとサテライトドットとの間隔が異ならないように、それぞれの媒体に適したキャリッジの移動速度を求めておく。そして、プリンタ1の設計者、もしくは、プリンタ1の製造者は、それぞれの媒体に適したキャリッジの移動速度をプリンタ1の組立時にメモリ63に記憶させる。コントローラ60は、ノズルからインクを吐出して媒体に印刷をするときに、メモリ63から記憶されたキャリッジの移動速度を読み出し、媒体の厚みに応じた移動速度でキャリッジを移動させる。このようにすれば、媒体の厚みの違いによってメインドットとサテライトドットとの間隔が異ならないようにすることができる。
さらに、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを、キャリッジの移動速度を変えることで補正することが望ましい例について図19を参照して説明する。図19は、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを、キャリッジの移動速度を変えることで補正することが可能となる例について説明するための説明図である。
図19に示されるように、媒体の端部が反っている場合には、コントローラ60は、ヘッドが媒体に接触しないように、ヘッドを鉛直上方に移動する。そして、コントローラ60は、ノズル#1乃至#180のノズルからインクを吐出させて媒体に印刷をする。次に、媒体を搬送して、再びノズル#1乃至#180のノズルからインクを吐出させて媒体に印刷をする。このとき、媒体端部を印刷するときの#1ノズルと媒体との距離と、媒体が搬送された後のノズル#1と媒体との距離が同じになるように、ヘッドを媒体に近づける。なお、図19に示される例においては、ヘッドが移動しているように表されているが、実際には、媒体の方が移動されている。媒体の端部を印刷するときのノズル#1と媒体との距離PG5は、媒体が搬送され、次に媒体を印刷するときのノズル#1と媒体との距離PG5と等しい。しかしながら、媒体の端部を印刷するときのノズル#180と媒体との距離PG6は、媒体が搬送され、次に媒体を印刷するときのノズル#1と媒体との距離PG5よりも大きい。よって、キャリッジ移動速度が同じ場合、媒体の端部を印刷するときにノズル#180から吐出されるインクによって媒体上に形成されるキャリッジの移動方向に沿うドットライン上のメインドットとサテライトドットとの間隔は、次に媒体を印刷するときにノズル#1から吐出されるインクによって媒体上に形成されるキャリッジの移動方向に沿うドットライン上のメインドットとサテライトドットとの間隔よりも大きくなる。また、始めに媒体を印刷するときにノズル#180から吐出されるインクによって媒体上に形成されるドットラインと、次に媒体を印刷するときにノズル#1から吐出されるインクによって媒体上に形成されるドットラインとは、互いに隣接するドットラインである。このように、互いに隣接するドットライン上のメインドットとサテライトドットとの間隔が異なってしまうと、ドットラインの繋ぎ目で、媒体に印刷される画像が均質にならず画像に歪みが生じてしまう。
このような場合には、互いに隣接するドットライン上のメインドットとサテライトドットとの間隔の違いを補正するために、キャリッジの移動速度を変えることが有効である。すなわち、媒体の端部を印刷するときに、キャリッジの移動速度を通常の移動速度よりも遅くするか、もしくは、次に媒体を印刷するときに、キャリッジの移動速度を通常の移動速度より速くすれば、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを緩和することができる。
さらに、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを、キャリッジの移動速度を変えることで補正することが望ましい別の例について図20A、及び、図20Bを参照して説明する。図20Aは、媒体中央部を印刷することを説明するための説明図である。図20Bは、媒体下端側を印刷するときにヘッドを鉛直上方に移動させて印刷することを説明するための説明図である。また、図20A、及び、図20Bに示される例においては、オーバーラップ方式で印刷が実行される。
オーバーラップ方式とは、パス間の繋ぎ目のラインが、始めのパスを形成する複数のノズルのうち媒体搬送方向上流側のノズルから吐出されるインクによって形成されるドットと、次のパスを形成する複数のノズルのうち媒体搬送方向下流側のノズルから吐出されるインクによって形成されるドットとが交互に並ぶことによって形成される印刷方式である。つまり、パス間の繋ぎ目のラインが2つのノズル(上流側のノズルと下流側のノズル)により形成される。媒体搬送方向上流側のノズルとは、パスを形成する複数のノズルのうち、中央部(ノズル#90とノズル#91の中央部)より媒体搬送方向上流側に位置するノズルのことである。媒体搬送方向下流側のノズルとは、パスを形成する複数のノズルのうち、中央部(ノズル#90とノズル#91の中央部)より媒体搬送方向下流側に位置するノズルのことである。なお、ここでいうパスとは、ヘッドをキャリッジの移動方向に移動させながらノズル#1乃至#180から吐出されるインクによって媒体上に形成される複数のドットラインのことである。
図20Aに示される例においては、媒体の中央部よりもやや下端側を、ヘッド41のノズルからインクを吐出させて媒体に印刷をする(始めのパスを形成する)。
次に、媒体が搬送されて媒体下端側が印刷される。このとき、図20Bに示されるように、媒体下端側は、搬送ローラ23とその従動ローラから離れる。したがって、媒体下端部に反りがある場合でも、ヘッドと媒体とが接触しないように、ヘッド41は、鉛直上方に移動されている。この状態でヘッド41のノズルからインクを吐出させて媒体に印刷をする(次のパスを形成する)。この場合、パス間の繋ぎ目のラインは、始めのパスにおける媒体搬送方向上流部のノズルから吐出されるインクによって形成されるドットと、次のパスにおける媒体搬送方向下流部のノズルから吐出されるインクによって形成されるドットが交互に並ぶことによって形成される。例えば、媒体のA地点は、始めのパスにおける#170のノズルから吐出されるインクによって形成されるドットと、次のパスにおける#10のノズルから吐出されるインクによって形成されるドットが交互に並ぶことによって形成される。
このような印刷方法においては、A地点のラインは、図20Aに示されるようにノズル#170から吐出されるインクによって形成されるドットと、図20Bに示されるようにノズル#10から吐出されるインクによって形成されるドットとから構成される。ただし、図20Aに示されるようにノズル#170から吐出されるインクによってドットを形成するときのノズル#170と媒体との距離PG7は、図20Bに示されるようにノズル#10から吐出されるインクによってドットを形成するときのノズル#10と媒体との距離PG8と異なる。この場合、キャリッジの移動速度が同じだと、A地点のラインは、メインドットとサテライトドットとの間隔が異なる複数のドットから形成されることとなる。この場合には、A地点のラインの画質には悪影響がでることになる。
このような場合においては、メインドットとサテライトドットとの間隔の違いを、キャリッジの移動速度を変えることで補正することが望ましい。すなわち、図20Aに示される場合において、ヘッドの移動速度を通常の移動速度よりも速くするか、もしくは、図20Bに示される場合において、ヘッドの移動速度を通常の移動速度よりも遅くすれば、同じラインの中のメインドットとサテライトドットとの間隔の違いを緩和することができる。
<媒体について>
媒体については、前述した用紙として、普通紙やマット紙、カット紙、光沢紙、ロール紙、用紙、写真用紙、ロールタイプ写真用紙等をはじめ、これらの他に、OHPフィルムや光沢フィルム等のフィルム材や布材、金属板材などであっても構わない。すなわち、印刷対象となり得るものであれば、どのような媒体であっても構わない。