JP4518524B2 - クリーンベンチ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業テーブルの上方の作業空間を清浄空気空間とするクリーンベンチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、技術を提供する多くの職業には、職務遂行上の危険性を意味する職業的ハザードが存在すると云われ、特に医療関係の分野では薬物による人体への危険性、所謂ケミカル・ハザードが注目されている。例えば、薬剤師は一般輸液剤やケミカル・ハザードの虞がある抗悪性腫瘍薬等の毒性薬剤を取り扱う場合に、注射剤等を無菌的に混合調整することが必要となっている。このため、病棟や調剤薬局においては、集塵装置を備えた専用のスペース、清浄空気空間を備えたクリーンベンチ等を用意することが望ましいとされている。
【0003】
従来のクリーンベンチは、通気孔を有する作業テーブル、この作業テーブルの上方の作業空間を覆う箱体、この箱体の開口を開閉するシャッタ、作業空間内に空気を流通させる電動ファン、電動ファンからの空気を清浄化するフィルタ、作業空間内を照明する照明灯、作業空間内の空気を殺菌する殺菌灯等から構成されている。
【0004】
例えば、一般輸液剤を調合する際に使用するクリーンベンチの通常運転時には、通気孔と電動ファンを連通する通気路の外部空気取入口から外部の空気を取り入れ、作業空間の空気を比較的高い速度で外部にも流通させ、作業空間の無菌性を維持する。
【0005】
一方、ケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤を調合する際に使用するクリーンベンチの通常運転においては、外部の空気を取り入れず作業空間内の空気を外部に流出させることなく上述と同様な速度で流通させ、作業空間の無菌性と作業者の安全性を維持する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、狭い病棟や調剤薬局等では設置スペースに限度があるため、一般輸液剤を調合するためのクリーンベンチと、ケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤を調合するためのクリーンベンチとの双方を設置することは容易でないという問題がある。また、シャッタを閉めておいても組立上僅かな隙間が存在するため、無菌空間を調剤用として維持することが困難になっている。これに対し、調剤作業の合間や調剤作業前に作業空間を高い清浄度に維持しておけば、次の調剤作業をその高い清浄度で開始できるので、所謂保守運転を行うことが好ましいとされている。しかしながら、保守運転を行うときには、電動ファンが作動し続ける上に殺菌灯も点灯し続けるため、騒音が連続して発生する上に消費電力量も無視できないという問題がある。
【0007】
更に、一般輸液剤を調合するためのクリーンベンチと、ケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤を調合するためのクリーンベンチとを誤って使用した場合には、作業者がケミカル・ハザードに晒されるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、設置スペースを低減し、安全性を向上させ、騒音や消費電力を低減し得るクリーンベンチを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係るクリーンベンチは、通気孔を有する作業テーブルと、該作業テーブルの上方の作業空間を覆う箱体と、該箱体の開口を開閉するシャッタと、前記作業空間内に空気を流通させる電動ファンと、前記電動ファンからの空気を清浄化するフィルタとから成るクリーンベンチにおいて、前記通気孔と前記電動ファンを連通する通気路の外部空気取入口を開閉するダンパをスイッチ操作可能に設け、前記シャッタが閉じているときにのみ前記ダンパを開くことを可能とする回路を備えたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の断面図であり、作業者Wが調剤等の作業を行う作業テーブル1の上部は、作業者W側を開口とする箱体2により覆われている。作業テーブル1の開口側には通気孔3aが形成され、作業テーブル1の奥部には通気孔3bが形成されている。箱体2の内部は作業空間4とされており、箱体2の開口にはガラス等の透明体から成るシャッタ5が例えば上下動自在に設けられている。そして、箱体2の天板には照明灯6と殺菌灯7が設置されている。
【0011】
箱体2の天板の外側には排気路8が設けられており、この排気路8には排気孔8aが形成されている。箱体2の背板に形成された窓にはフィルタ9が設置され、このフィルタ9の一部は排気路8に配置されている。作業テーブル1の下方には電動ファン10が設置されており、作業テーブル1の通気孔3a、3bと電動ファン10は通気路11を介して連通され、電動ファン10とフィルタ9は通気路12を介して連通されている。
【0012】
ここで、殺菌灯7はシャッタ5の近傍に設置され、殺菌灯7からの光が作業者Wの目に直接入射することのないようにされていると共に、フィルタ9に悪影響を及ぼさないようにされている。
【0013】
また、フィルタ9は例えば濾紙を多数のプリーツ状に折り込んでリボンスペーサにより保持した構成とされている。なお、スペーサは金属製又は合成樹脂製とすることが可能であるが、合成樹脂製とすれば容積の低減やコストの削減が可能となる。フィルタ9は仕切壁によって2つの領域に分離され、電動ファン10からの空気を空気量Q1として作業空間4に循環する領域と、空気量Q2として排気路8に排出する領域とが与えられ、空気量Q1と空気量Q2の比Q1/Q2は5〜6とされている。
【0014】
また、通気路11の電動ファン10の近傍には、外部の空気を通気路11内に吸引する通気口11aが設けられており、通気口11aは例えばヒンジ状に支持されたダンパ13により開閉自在とされている。このダンパ13はダンパ駆動機構により駆動可能とされ、ダンパ駆動機構は切換スイッチにより操作可能となっている。
【0015】
更には、シャッタ5の位置を検出する位置センサ、照明灯6と殺菌灯7をシャッタ5の位置に基づいて制御する回路、ダンパ13の位置を検出する位置センサ、シャッタ5とダンパ13が開いているときに警告を発する手段、シャッタ5が閉じているときにのみダンパ13を開くことを可能とする回路、シャッタ5の位置に基づいて作業空間4を流通する空気量Q1を0.3〜0.6m/秒又は0.08〜0.15m/秒の速度で流通させるように、電動ファン10を制御する回路等が備えられている。
【0016】
そして、図2のフローチャート図に示すように、実施例に係るクリーンベンチは陰圧通常運転モード、陰圧保守運転モード、陽圧保守運転モード、及び陽圧通常運転モードで運転可能とされている。なお、陰圧とはダンパ13が閉じており、フィルタ9を通過した清浄空気が作業空間4内を流通した後に外部空間に流出しないような空気の流れの状態、即ち、作業空間4内を流通した空気が通気孔3aから電動ファン10に吸引されるときに外部空気も巻き込まれながら吸引されるような空気の流れの状態を称している。また、陽圧とはダンパ13が開いており、作業空間4内に外部空気が入り込まないように、作業空間4を流通した殆どの清浄空気が外部空間に流出するような空気の流れの状態を称している。
【0017】
(1)ステップ1では、シャッタ5が全閉であるか否かを判断する。全閉でないと判断した場合にはステップ2に進み、全閉と判断したときにはステップ3に進む。
【0018】
(2)ステップ2は陰圧通常運転モードであり、図1に示したようにシャッタ5は開いている反面でダンパ13は閉じており、作業空間4内の空気は作業者W側に流出することなく0.3〜0.6m/秒の速度で流通する。また、この陰圧通常運転モードでは照明灯6は点灯し殺菌灯7は消灯する。従って、この陰圧通常運転モードは空気の無菌性と作業者Wの安全性を維持し、ケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤の調合を可能とする。
【0019】
(3)ステップ3は陰圧保守運転モードであり、図3に示すようにシャッタ5が閉じて作業空間4内の空気は0.08〜0.15m/秒の速度で流通する。また、照明灯6が消灯し殺菌灯7が点灯する。この陰圧保守運転モードは空気の無菌性を維持する。
【0020】
(4)ステップ4において切換スイッチをオンにすると、陽圧保守運転モードになる。
【0021】
(5)ステップ5は陽圧保守運転モードであり、図4に示すようにダンパ13が開き、空気を通気口11aから吸入しながら循環する。その他は陰圧保守運転モードと同様となる。
【0022】
(6)ステップ6においてシャッタ5を開くと、ステップ7の陽圧通常運転モードになる。
【0023】
(7)ステップ7の陽圧通常運転モードでは、図5に示すように作業空間4内の空気は作業者W側に流出しながら0.3〜0.6m/秒の速度で流通する。同時に、ステップ8において例えば抗がん剤使用禁止等の警告を表示する。その他は陰圧通常運転モードと同様となる。従って、この陽圧通常運転モードはケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤の調合を禁止し、一般輸液剤の調合は可能とする。
【0024】
(8)ステップ7の陽圧通常運転を止め、ステップ9においてシャッタ5を閉じると、ステップ3の陰圧保守運転モードに戻る。
【0025】
このように、実施例では陰圧通常運転モード、陰圧保守運転モード、陽圧保守運転モード、及び陽圧通常運転モードの4種の運転モードを実施できるので、1台のクリーンベンチを用いて一般薬液剤の調合とケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤の調合が可能となり、狭い設置スペースに対応できる。
【0026】
また、運転開始時には必ず陰圧運転モードとなるように設定してあり、シャッタ5が全閉か否かに拘わらず、作業者Wに対するケミカル・ハザードが最も少ない状態で運転を開始できる。そして、シャッタ5が全閉でない場合には、全閉状態とするステップを経過させ、かつ切換スイッチを切換えないかぎり陽圧運転モードに移行しないような操作ステップを持たせ、同時に陽圧運転モードの際には警告表示をケミカル・ハザードの虞がある毒性薬剤調合禁止等の表示とすることにより、作業者Wのために最も安全な運転モードで運転できる。また、陰圧通常運転モードから陽圧通常運転モードに切換える場合、或いはその逆に切換える場合には、前述したように作業者Wに対するケミカル・ハザードが最も少ない状態である陰圧運転モードに一旦戻した後でなければ切換えることができないので、安全性が著しく向上する。
【0027】
更に、保守運転モード時には照明灯6が消灯し、電動ファン10は作業空間4内の空気を通常運転モードよりも低い速度で流通させるので、消費電力や騒音が低減する。また、シャッタ5を全閉して外部からの影響を遮断すると共に殺菌灯7が点灯するので、空気の無菌性が保持される。そして、殺菌灯7がシャッタ5の近傍に位置するので、殺菌灯7の光が作業者Wに直接入射する虞れはない。
【0028】
また、フィルタ9のリボンスペーサが合成樹脂製である場合でも、フィルタ9が殺菌灯7から離れているので、リボンスペーサが殺菌灯7の影響によって劣化することが少ない。従って、リボンスペーサ自体が発塵源となることはなく、殺菌灯7や位置センサに悪影響を及ぼす心配はない。更に、縦長に配置した1台のフィルタ9によって作業空間4に循環する空気と排気路8に排出する空気とを清浄化するので、従来と同様な作業空間4を確保した上でフィルタ9の部品点数と製造コストを削減できる。
【0029】
なお変形例として、図6に示すように排気孔8aにダンパ21を設けること、図7に示すようにフィルタ9’を天板側に有する箱体2’の排気孔8aにフィルタ22を設けること、そして図8に示すようにフィルタ22の出口にダンパ23を設けることが可能であることは云うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るクリーンベンチは、外部空気取入口を開閉するダンパをスイッチ操作可能に設けたので、スイッチ操作により少なくとも2種類の運転モードを選択することが可能となる。従来では、1台のクリーンベンチは1種類の運転モードしか持たず、2種類の運転モードを必要とする場合には2台のクリーンベンチを必要としたが、設置スペースを半減することができる。
【0031】
また、スイッチを操作しない限り他の運転モードに切換わることがないので、運転モードの誤りを防止でき、作業者がケミカル・ハザードに晒されることを防止できる。
【0032】
そして、作業空間を流通する空気を第1の速度よりも低い第2の速度で流通させるように電動ファンを制御する回路を備えれば、空気を低い速度で流通させることが可能となり、騒音と消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰圧通常運転モードを示す断面図である。
【図2】フローチャート図である。
【図3】陰圧保守運転モードを示す断面図である。
【図4】陽圧保守運転モードを示す断面図である。
【図5】陽圧通常運転モードを示す断面図である。
【図6】変形例の断面図である。
【図7】変形例の断面図である。
【図8】変形例の断面図である。
【符号の説明】
1 作業テーブル
2、2’ 箱体
3a、3b 通気孔
4 作業空間
5 シャッタ
9、9’、22 フィルタ
10 電動ファン
11、12 通気路
11a 通気口
13、21、23 ダンパ

Claims (5)

  1. 通気孔を有する作業テーブルと、該作業テーブルの上方の作業空間を覆う箱体と、該箱体の開口を開閉するシャッタと、前記作業空間内に空気を流通させる電動ファンと、前記電動ファンからの空気を清浄化するフィルタとから成るクリーンベンチにおいて、前記通気孔と前記電動ファンを連通する通気路の外部空気取入口を開閉するダンパをスイッチ操作可能に設け、前記シャッタが閉じているときにのみ前記ダンパを開くことを可能とする回路を備えたことを特徴とするクリーンベンチ。
  2. 前記作業空間を流通する空気を第1の速度又は該第1の速度よりも低い第2の速度で流通させるように前記電動ファンを制御する回路を備えた請求項1に記載のクリーンベンチ。
  3. 前記シャッタが開いたときに前記作業空間を流通する空気を前記第1の速度で流通させるように前記電動ファンを制御する回路を備えた請求項2に記載のクリーンベンチ。
  4. 前記シャッタを開くと共に前記ダンパを閉じた状態で空気を前記第1の速度で流通させる第1の運転モードと、前記シャッタを開くと共に前記ダンパを開いた状態で空気を前記第1の速度で流通させる第2の運転モードとを備えた請求項に記載のクリーンベンチ。
  5. 前記シャッタを閉じると共に前記ダンパを閉じた状態で空気を前記第2の速度で流通させる第3の運転モードと、前記シャッタを閉じると共に前記ダンパを開いた状態で空気を前記第2の速度で流通させる第4の運転モードとを備えた請求項に記載のクリーンベンチ。
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