JP5080963B2 - 検体輸送用保管庫 - Google Patents

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Description

本発明は、検体保管庫に関する。
近年、我が国の医療提供体制は、国民皆保険制度の下で整備されてきており、一方で少子高齢化の進行、高度医療の普及、国民の健康意識の向上などにより、医療費の増大が懸念されている。そのため、保険制度以外の医療サービスへの移行が望まれており、すなわち、健康予防を自己の費用で実施するプライベート検診が普及してきている。
このような医療体制の現状から、郵送健診といった、より簡易で予防的な検査が望まれている。現在、普及が予想される郵送健診において、検体は郵便又は宅配便により、医療機関や検査センターに輸送されている。
人又は動物の血液、尿、体液等は感染性の可能性が高く、バイオハザードの配慮が必要なことは明らかであるが、現状、他の郵便物、他の宅配物と混在して、保管、輸送されている。
また、輸送は温度管理がされていない輸送手段が使用されることが一般的で、夏場の温度上昇により、腐敗、変性し、目的とする検査結果に影響を与える可能性がある。
また、郵便物や宅配での輸送は、セキュリティーに課題があり、万が一盗難にあった場合、感染性の拡大を引き起こす可能性や個人情報(遺伝子情報)漏洩など、深刻な事態を引き起こす可能性がある。
現状において、輸送や検体を回収することを目的とした検体保管庫は、簡易な保冷箱を利用し、個人の裁量の範囲で、セキュリティーが確保されており、感染性の高い検体の輸送を規制する何らかの規制が実施されると予想される。
一方、エイズ検査等の普及は、感染の拡大により、一層推進する必要があり、郵送健診等手軽に、検査希望者自身が実施できる検査は、社会的に普及する必要がある。
従って、本発明の課題は、郵送又は宅配等の検体輸送における上記の各種課題を解決することのできる検体輸送用保管庫、具体的には、検体に変性を与えず、バイオハザードの観点から検体と外部を完全に遮断することができる検体保管庫を提供することにある。
前記課題は、本発明による、検体出入口が閉じている状態で温度制御可能、且つ、気密性を有する保管室、前記保管室に検体を出し入れするための検体出入口、前記検体出入口が開放されたときに外気を保管室内に吸引することのできる吸引手段、前記保管室内を滅菌可能な滅菌用ランプを備え、検体出入口が閉じた後、前記滅菌用ランプの照射を一定時間実施することを特徴とする、検体保管庫により解決することができる。
本発明の検体保管庫の好ましい態様によれば、前記吸引手段が、検体出入口が閉じている状態では保管室内を陰圧にすることのできる手段であるか、あるいは、検体出入口が開放されている状態では外気を保管室内部に吸引し、検体出入口が閉じられた直後に吸引を停止し、保管室内を陰圧にすることのできる手段である。
本発明の検体保管庫の別の好ましい態様によれば、除菌フィルターを通して、保管室内の空気を外部に排出することのできる排気手段を有する。
本発明の検体保管庫の更に別の好ましい態様によれば、検体出入口の面積が、検体出入口設置面の全体面積の1/2以下である。
本発明の検体保管庫の更に別の好ましい態様によれば、検体出入口に加え、取出し専用の検体取出し口を有する。
本発明の検体保管庫の更に別の好ましい態様によれば、保管室内の気密度が、バイオハザードクラスIIに対応する。
本発明によれば、保管室内の温度を制御することができるため、検体の変性を抑制することができる。また、本発明によれば、バイオハザードの観点から、検体と外部とを完全に遮断することができる。
本発明の検体保管庫の保管対象は、特に限定されるものではないが、バイオハザードの恐れのある検体の保管に特に適している。このような検体としては、例えば、人又は動物由来の感染性又はその疑いのある検体、例えば、血液、尿、糞便、体液、臓器等を挙げることができる。
以下、本発明の具体的態様を示す図面に沿って、本発明の検体保管庫を説明する。図1は、検体を投入及び取り出すための兼用の検体出入口を一箇所設けた自動車輸送用の検体保管庫の一態様を模式的に示す斜視図である。図2は、図1と同様に、兼用の検体出入口を一箇所設けた自動車輸送用の検体保管庫の別の一態様の内部構造を模式的に示す説明図である。図3は、兼用の検体出入口に加え、取出し専用の検体取出し口を有する一時保管用の検体保管庫の一態様を模式的に示す斜視図である。
図1〜図3に示す検体保管庫10は、温度制御可能で、且つ、気密性を有する保管室1と、その外装部9とを含む。外層部9には、検体出入口2、排気部5、温度表示部6、キーボード7、電源部8が設けられており、更に、図3では、検体出入口2の反対側の面に検体取出し口2aが設けられている。前記検体取出し口は、不特定多数の者が検体を投函し、投函した検体が内部に設置されたバイオハザード袋又はバイオハザード箱に多数集まった検体を一度に取り出す場合に使用される。
外層部9の内部には、検体出入口2を開放した際に外気を保管室内に吸引することのできる吸引手段3、保管室内を滅菌するための滅菌用ランプ4が設けられており、所望により、検体12を保持することのできる検体ラック11を設けることができる。また、検体出入口2の開閉を感知するセンサー21を設けることもできる。
検体保管庫の外装部は、充分な強度を有する材料、例えば、強化プラスティック、金属(例えば、アルミ等)から形成することができる。内部の保管室は、温度制御可能で、且つ、気密性を有する限り、その構造や材料は特に限定されるものではないが、例えば、断熱材(例えば、発砲スチロール等)を用いると、温度制御の点から好ましい。
保管室の温度制御は、冷蔵庫や冷凍庫と同じ原理により実施することができ、好ましくは2℃〜20℃又は/及び0℃〜−100℃、より好ましくは3℃〜15℃又は/及び0℃〜−80℃に制御される。
温度制御は、通常の電源で可能であり、郵便や宅配業者により運ばれる場合は、自動車用バッテリーを電源とし、温度制御をすることができる。検体が温度変化に強い場合は、例えば、氷、ドライアイス、液体窒素でラフな管理をすることもできる。
保管室内に投入した検体の滅菌は、保管室内に設けた滅菌用ランプ、例えば、紫外線(UV)ランプにより実施することができる。UVランプとしては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプが一般的に使用される。検体出入口(及び検体取出し口;以下、検体出入口の開閉に関する説明では、特に断らない限り、検体出入口及び検体取出し口の両方を意味するものとする)が閉まっている場合には、一定時間照射し、保管室内を滅菌化する。本発明においては、紫外線照射と検体出入口の閉鎖とがリンクされている。検体出入口閉鎖時の紫外線照射時間は、例えば、紫外線の強度、保管室の大きさ、開放頻度などを考慮に入れ、保管室内の浮遊する菌体の滅菌数を測定することにより適宜決定することができる。例えば、細菌の中で、最も紫外線に対して強いとされている枯草菌が100%死滅するのに必要な照射量は、36,000μw/cmであるので、通常36,000μw/cm以上の照射量が必要であり、好ましくは53,000μw/cm以上の照射量が必要である。なお、検体出入口を開放した場合には、紫外線照射が停止状態にあることが好ましいが、紫外線照射の状態で検体出入口を開放させることもできる。近年、パルスドキセノン等、紫外線をパルス的に照射するUVランプも開発され、滅菌時間が短縮されつつある。
検体出入口を開放した際に外気を保管室内に吸引することのできる前記吸引手段として、検体出入口が閉じられている状態では、保管室内を陰圧とすることができる吸引手段を用いることができる。また、検体出入口が開放されている状態では外気(保管庫外の空気)を保管室内部に吸引し、検体出入口が閉じられた直後に吸引を停止し、保管庫内を陰圧にすることのできる吸引手段を用いることもできる。
検体出入口を開放し、外気を吸引する場合、バイオハザードで汚染された庫内の空気を排出しないように、排気部が設けられている。検体出入口を開放し、吸引された外気は保管室内に吸引され、除菌フィルター[例えば、ヘパ(HEPA)フィルター]を通して外部に排気する機構を有している。
本発明の検体保管庫は、温度制御を容易にするため、検体出入口が開放された場合、極力少ない空気を吸引するように工夫されている。吸引量を少なく済む理由は、既に庫内が滅菌されており、入り口付近の空気は滅菌されており、弱い吸引でも菌体が飛散した空気を排出する可能性がないためである。これを確実にするため、検体出入口は、その設置面全体の面積の1/2以下にすることが好ましく、検体の挿入の操作性とのバランスから、開口部の大きさが決定され、これらの工夫により庫内の温度制御を達成している。
保管室内は、バイオハザードクラスIIに対応する気密性が確保されており、その試験方法は、バイオハザード対応の安全キャビネット等の規定JIS K 3800:2005(JACA/JSA)を準用することができる。JIS K3800に規定の安全キャビネット性能は、以下のとおりである。
5.1 密閉度 8.1の試験によって、a) 〜 d)のいずれかによる。
a) 8.1.1の正圧維持法によって、30分後の内圧低下が10%以内。
b) 8.1.2の石けん法によって、漏れによる石けんの発泡を認めない。
c) 8.1.3のハロゲンガス法によって、漏れ量が1×10-5 cm3/s以下。
d) 負圧プリナムに囲まれていない正圧汚染プリナムをもつクラスIIキャビネットは、8.1.3によるハロゲンガス法によって、漏れ量が5×10-7 cm3/s以下とする。
5.2 HEPAフィルタの透過率 8.2の試験によって、HEPAフィルタの最大透過率は0.01%以下でなければならない。
5.3 送風機の性能 8.12の試験によって、20%の静圧上昇による送風処理風量の低下は、回転制御せずに25%以内でなければならない。
5.4 気流バランス 8.3の作業者の安全性試験、試料保護試験及び試料間の相互汚染防止試験(11)によって、クラスIIキャビネット内で発生したエーロゾルはクラスIIキャビネット外に漏出してはならない、外部の汚染物は作業空間に流入してはならない、同時に作業空間内の相互汚染があってはならない。
[注(11):形式検査済機種として同等に製作されたクラスIIキャビネットの個別検査では、平均吹出し風速及び平均流入風速が、8.4の風速試験で5.5に適合すれば、8.3の気流バランス試験で5.4に適合したものとみなす。]
5.4.1 作業者の安全性 8.3.2 b)及び8.3.2 h)の条件下に8.3.2の試験を行い、次の各項について連続5回適合しなければならない。
a) 6台のインピンジャの捕集液から得られるコロニ数の合計が10個以下。
b) 試験開始後30分間に捕集するスリットサンプラのコロニ数の合計は試験ごとに5個以下。
c) 陽性対照平板のコロニ数は300個以上。
5.4.2 試料保護 8.3.3 b)及び8.3.3 h)の条件下に8.3.3の試験を行い、次の各項について連続3回適合しなければならない。
a) 寒天平板に捕集されるコロニ数の合計は試験ごとに5個以下。
b) 陽性対照平板のコロニ数は300個以上。
5.4.3 試料間の相互汚染防止 8.3.4の試験を行い、次の各項について左右それぞれ連続3回適合しなければならない。
側面から平板の中心が360 mm以上離れた位置の寒天平板に捕集されるコロニ数の合計は、試験ごとに2個以下。
5.5 風速
5.5.1 吹出し風速 8.4.2の試験によって行い、次による。
a) 吹出し風速が一定になるよう設計されたクラスIIキャビネットでは、各点の測定値が平均吹出し風速の ± 20%以内。平均吹出し風速は選定風速値(9)の ± 0.025 m/s以内。
b) 前面開口部から後壁に向かって吹出し風速にこう配ができるように設計されたクラスIIキャビネットでは、各領域内の各点の測定値は各領域の平均吹出し風速の± 20%以内。各領域の平均吹出し風速は選定風速値(9)の ± 0.025 m/s以内。
5.5.2 流入風速 8.4.3の試験によって行い、次による。
a) 全面開口部からの平均流入風速は、クラスIIタイプAキャビネットでは0.40 m/s以上、クラスIIタイプBキャビネットでは0.50 m/s以上。
b) 平均流入風速が選定風速値(9)の ± 0.025 m/s以内。
5.5.3 間口当たり平均排気風量 8.4.4の間口1 m当たりの平均排気風量は、クラスIIタイプAキャビネットでは0.070 m3/s以上、クラスIIタイプBキャビネットでは0.100 m3/s以上とする。
5.6 気流方向 気流方向は、次による。
a) 8.5 a)の試験によって、煙は滑らかに下に流れなければならない。煙の流れない部位又は上向きに流れる部位があってはならない。
b) 8.5 b)の試験によって、煙は滑らかに下に流れなければならない。煙の流れない部位又は上向きに流れる部位があってはならない。煙がクラスIIキャビネットから漏出してはならない。
c) 8.5 c)の試験によって、一度クラスIIキャビネット内に入った煙はクラスIIキャビネットから漏出してはならない。また、作業空間に漏入してはならない。
d) 8.5 d)の試験によって、クラスIIキャビネット外に煙が漏出してはならない。また、吹出し流に乱れを生じるような内向きの流入気流があってはならない。
5.7 温度上昇 8.6の試験によって、室温とクラスIIキャビネット内部の温度差は4時間連続運転後8.5°C以内とする。
5.8 騒音 8.7の試験によって、騒音レベルは67 dB(A)以下とする。
5.9 照度 8.8の試験によって、平均照度は750 〜 1600 lxとする。ただし、使用者との事前協議がある場合にはこの限りではない。
5.10 振動 8.9の試験によって、作業台の3方向(X, Y, Z)に対する振動変位は5 μm RMS以下とする。
参考 RMS (root mean square) は、振動正弦波の面積平均値で、
RMS値 = 0.707 × PEAK値
ここに、PEAK値は、正弦波の高さ(片側)
として計算される。
5.11 安定度・強度
5.11.1 転倒及び傾き 8.10.1及び8.10.4の試験によって、後部の脚部の床からの持上がりは1.6 mm以下とする。
5.11.2 ねじれ 8.10.2の試験によって、前面上端の前方向及び横方向の変位は1.6 mm以下とする。
5.11.3 作業台のひずみ 8.10.3の試験によって、作業台に恒久的ひずみが残らないこととする。
5.12 シンクの容量と漏水量 シンクの容量は4 L以上とする。8.11の試験によって、1時間放置後、目視で確認できる漏水がないこととする。
5.13 漏れ電流・保護接地回路の抵抗 漏れ電流は250 μA以下、保護接地回路の抵抗は0.15 Ω以下とする。
本発明の検体保管庫には、所望に応じて、検体出入口及び検体取出し口に盗難防止用鍵を設けることができる。このような鍵を設けることにより、セキュリティーを強化することができる。
本発明の検体保管庫は、例えば、検体の保管、輸送の用途に適用することができる。
本発明の検体保管庫の一態様である自動車輸送用の検体保管庫を模式的に示す斜視図である。 本発明の検体保管庫の別の一態様である自動車輸送用の検体保管庫の内部構造を模式的に示す説明図である。 本発明の検体保管庫の更に別の一態様である一時保管用の検体保管庫を模式的に示す斜視図である。
符号の説明
10・・・検体保管庫;
1・・・保管室;2・・・検体出入口;3・・・吸引手段;4・・・滅菌用ランプ;
5・・・排気部;6・・・温度表示部;7・・・キーボード;8・・・電源部;
9・・・外層部。

Claims (7)

  1. 検体出入口が閉じている状態で20℃以下に温度制御可能、且つ、気密性を有する保管室、前記保管室に検体を出し入れするための検体出入口、前記検体出入口が開放されたときに外気を保管室内に吸引することのできる吸引手段、前記保管室内を滅菌可能な滅菌用ランプを備え、検体出入口が閉じた後、前記滅菌用ランプの照射を一定時間実施することを特徴とする、検体輸送用保管庫。
  2. 前記吸引手段が、検体出入口が閉じている状態では保管室内を陰圧にすることのできる手段である、請求項1に記載の検体輸送用保管庫。
  3. 前記吸引手段が、検体出入口が開放されている状態では外気を保管室内部に吸引し、検体出入口が閉じられた直後に吸引を停止し、保管室内を陰圧にすることのできる手段である、請求項1又は2に記載の検体輸送用保管庫。
  4. 除菌フィルターを通して、保管室内の空気を外部に排出することのできる排気手段を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検体輸送用保管庫。
  5. 検体出入口の面積が、検体出入口設置面の全体面積の1/2以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検体輸送用保管庫。
  6. 検体出入口に加え、取出し専用の検体取出し口を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検体輸送用保管庫。
  7. 保管室内の気密度が、バイオハザードクラスIIに対応する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の検体輸送用保管庫。
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