JP4517535B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、耐久性を低下させずに耐轍ワンダリング性を改善するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、ライトトラックなどの重荷重車両に用いられる空気入りラジアルタイヤとして、図2に示すようなものがある。図2においてはビード部11、11間に2層のカーカス層12が装架され、その両端部12aがビード部11に埋設されたビードコア13の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド部14のカーカス層12の外側には、2層のベルト層15が設けられている。なお、CLはタイヤセンターラインである。
【0003】
このような構成の空気入りラジアルタイヤは、高い荷重が加わった際に剛性が低いバットレス部16が大きな曲げ変形を受け易い。その変形により、轍路を走行した際にその路面の低い方にタイヤが流れて車両が振られる轍ワンダリング現象を引き起こし、耐轍ワンダリング性が劣るという問題があった。
【0004】
そこで、上記問題の対策として、図3に示すように、カーカス層12の折り返し部12bをバットレス部16まで延在させると共に、そのバットレス部16で内側に隣接するカーカス層から離間させるようにして、ベルト層15の内側まで延設するようにした空気入りラジアルタイヤの提案がある。このような構成の採用により、バットレス部16の剛性を高くして曲げ変形を受け難くし、それによって耐轍ワンダリング性を向上している。
【0005】
しかしながら、上記提案の空気入りラジアルタイヤは、ベルト層15の端部に応力集中を招き易く、特に偏平比が0.85以下のタイヤでは、ベルト層15の端部に高い応力集中を招いて端部剥離が発生し易くなり、耐久性が大きく低下するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐久性を低下させることなく耐轍ワンダリング性を向上させることが可能な空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、少なくとも1層のカーカス層の両端部を左右のビード部におけるビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げると共に、トレッド部において前記カーカス層の外側に少なくとも2層のベルト層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、偏平比が0.85以下であり、重荷重車両に用いられる空気入りラジアルタイヤであって、少なくとも1層のカーカス層の折り返し部を、その巻き上げ高さがタイヤ断面高さHの70%以上となるようにタイヤ径方向外側に延在させる一方、タイヤ断面高さHの50%以上の位置から次第に内側に隣接するカーカス層から離間させ、このように離間させた折り返し部のエッジが前記内側に隣接するカーカス層からそのカーカス層のカーカスコードの直径dの2倍以上離れるようにし、さらに前記離間させた折り返し部のエッジと最大幅のベルト層のエッジとの間の距離Lを5mm以上にしたことを特徴とする。
【0008】
このようにカーカス層の折り返し部をタイヤ断面高さHの70%以上となるように延在させる一方、タイヤ断面高さHの50%以上の位置から次第に離間して折り返し部のエッジを内側に隣接するカーカス層からそのカーカスコードの直径dの2倍以上離れるようにすることで、バットレス部の曲げ剛性を効果的に増大させることが可能になるので、高い荷重が加わっても大きな曲げ変形がバットレス部に生じ難くなる。その結果、轍路を走行した際にその路面の低い方にタイヤが流れて車両が振られる轍ワンダリング現象の発生が抑制され、耐轍ワンダリング性の向上を図ることができる。
【0009】
また、折り返し部のエッジと端部剥離が発生し易いベルト層のエッジとの距離を5mm以上確保することで、そのベルト層のエッジに応力が集中するのを回避することができるので、端部剥離に起因する耐久性の低下を招くことがない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について図に示す実施形態を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明の空気入りラジアルタイヤの一例を示し、1はトレッド部、2はバットレス部、3はサイドウォール部、4はビード部、CLはタイヤセンターラインである。
【0012】
図1において、左右のビード部4、4間に内側カーカス層5Aおよび外側カーカス層5Bの2層のカーカス層が装架され、その両端部がビード部4におけるビードコア6の廻りに、ビードフィラー7を挟み込むようにしてタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド部1の外側カーカス層5Bの外周側には2層のベルト層8が配置されている。トレッド面1Aには、タイヤ周方向に延びる複数の主溝9が設けられている。
【0013】
内側カーカス層5Aおよび外側カーカス層5Bは、それぞれ、例えばナイロンコードなどの有機繊維コードをカーカスコードとして用いており、そのカーカスコードのタイヤ周方向に対する角度が略90°になっている。外側カーカス層5Bは、その折り返し部5bがビード部4内にあるのに対して、内側カーカス層5Aは、その折り返し部5aがタイヤ径方向外側に向けてバットレス部2まで延在している。
【0014】
折り返し部5aは、タイヤ断面高さHの70%以上、好ましくは75%〜80%となるように延在する(折り返し部5aの断面高さh≧0.7H)一方、タイヤ断面高さHの50%以上、好ましくは60%〜65%の位置から次第に内側に隣接する外側カーカス層5Bから離間し、折り返し部5aのエッジxが内側に隣接する外側カーカス層5Bからそのカーカスコードの直径dの2倍以上離れるようにしてある(エッジxとカーカス層5Bとの間の距離t≧2d)。ここで、“タイヤ断面高さ”とは、1999年版のJATMAに規定される正規リム、正規内圧におけるタイヤにおいて、リム外径相当位置からトレッド面までの最大長さをいう。
【0015】
折り返し部5aがタイヤ断面高さHの70%よりタイヤ径方向内側にあったり、折り返し部5aのエッジxが内側に隣接する外側カーカス層5Bからそのカーカスコードの直径dの2倍以上離れていないと、バットレス部2の曲げ剛性を効果的に高めることができない。エッジxと外側カーカス層5Bとの間の距離tは、好ましくは外側カーカス層5Bのカーカスコードの直径dの3倍〜5倍であるのがよい(3d≦t≦5d)。
【0016】
また、折り返し部5aのエッジxと最大幅のベルト層8A(2層のベルト層8における内側のベルト層)のエッジyとの間の距離Lを5mm以上、好ましくは6mm〜10mmとしている。エッジx,yの間の距離Lが5mm未満になると、ベルト層8Aのエッジyに応力集中を招き易くなるため、ベルト層の端部剥離が発生し易くなる。
【0017】
このように本発明では、内側カーカス層5Aの折り返し部5aをタイヤ断面高さHの70%以上となるようにしてバットレス部2まで延在させ、かつタイヤ断面高さHの50%以上の位置から次第に離間してt≧2dにすることにより、バットレス部2の曲げ剛性を効果的に高めることができるので、高い荷重が加わってもバットレス部2が曲げ変形を受け難くなる。従って、轍路を走行した際にその路面の低い方にタイヤが流れて車両が振られる轍ワンダリング現象が起こり難くなり、耐轍ワンダリング性を改善することができる。
【0018】
また、折り返し部5aのエッジxと最大幅のベルト層8Aのエッジyとの間を5mm以上離すようにしたので、最大幅のベルト層8Aのエッジyに応力集中を招き易くなることがない。従って、ベルト層端部の剥離が発生し難く、耐久性を損なうことがない。
【0019】
本発明において、上記実施形態では、カーカス層を2層もうけた例を示したが、1層あるいは3層以上設けたタイヤであってもよく、少なくとも1層のカーカス層を有するものであればよい。
【0020】
また、カーカス層の折り返し部を上記のようにバットレス部2まで延在する場合、少なくとも1層のカーカス層の折り返し部をバットレス部2まで延設するようにすればよい。
【0021】
ベルト層8は、上記実施形態では2層設けた例を示したが、それ以上の複数層配設したタイヤであってもよい。
【0022】
本発明は、特に偏平比が0.85以下で、重荷重車両に用いられる重荷重用空気入りラジアルタイヤに好ましく適用することができる。
【0023】
【実施例】
タイヤサイズを205/70R16 111/109L LTで共通にし、h=0.77H、t=4.3d、L=7mmにした図1の本発明タイヤと、この本発明タイヤにおいてt=0にした図4の比較タイヤ、及び図2の従来タイヤ1(h=0.6H)と図3の従来タイヤ2とをそれぞれ作製した。従来タイヤ2では、カーカス層の折り返し部が内側のベルト層の内側まで延在している。
【0024】
これら各試験タイヤをリムサイズ5 1/2Kのリムに装着し、空気圧を600kPa にして、以下に示す測定条件により、キャンバースラスト、耐轍ワンダリング性、耐久性の評価試験を行ったところ、表1に示す結果を得た。
【0025】
キャンバースラスト:
各試験タイヤをコーナリング試験機に装着し、荷重10.7kNの条件下でキャンバー角1°の時の横力を測定し、その結果を従来タイヤ1を100とする指数値で評価した。この値が大きい程、横力が大きく、傾斜路面を登り易く(低い方に流れ難く)なる。
【0026】
耐轍ワンダリング性:
各試験タイヤを積載量2tのライトトラック(定積積載)に装着し、轍路テストコースにおいて、テストドライバーによるフィーリングテストを実施し、その結果を5点満点で評価した。この値が大きい程、耐轍ワンダリング性が優れている。
【0027】
耐久性:
各試験タイヤをドラム耐久試験機に装着し、JIS D4230に規定された条件で走行した後、6時間毎に荷重を8%、速度を5km/h増加させ、タイヤ故障が発生するまでの走行距離を測定し、その結果を従来タイヤ1を100とする指数値で評価した。この値が大きい程、耐久性が優れている。
【0028】
【表1】
表1から明らかなように、本発明タイヤは、耐久性を低下させることなく耐轍ワンダリング性を改善できることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
上述したように本発明は、カーカス層の折り返し部を上記のように特定してバットレス部に延設するようにしたので、耐久性を損なうことなく耐轍ワンダリング性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りラジアルタイヤの一例のタイヤ子午線方向断面図である。
【図2】従来の空気入りラジアルタイヤの一例のタイヤ子午線方向半断面図である。
【図3】従来の空気入りラジアルタイヤの他の例のタイヤ子午線方向半断面図である。
【図4】実施例で用いられた比較タイヤのタイヤ子午線方向半断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 バットレス部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5A 内側カーカス層
5B 外側カーカス層
5a,5b 折り返し部
6 ビードコア
8 ベルト層
CL タイヤセンターライン
H タイヤ断面高さ
h 折り返し部の断面高さ
x,y エッジ
Claims (2)
- 少なくとも1層のカーカス層の両端部を左右のビード部におけるビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げると共に、トレッド部において前記カーカス層の外側に少なくとも2層のベルト層を配置した空気入りラジアルタイヤにおいて、
偏平比が0.85以下であり、重荷重車両に用いられる空気入りラジアルタイヤであって、少なくとも1層のカーカス層の折り返し部を、その巻き上げ高さがタイヤ断面高さHの70%以上となるようにタイヤ径方向外側に延在させる一方、タイヤ断面高さHの50%以上の位置から次第に内側に隣接するカーカス層から離間させ、このように離間させた折り返し部のエッジが前記内側に隣接するカーカス層からそのカーカス層のカーカスコードの直径dの2倍以上離れるようにし、さらに前記離間させた折り返し部のエッジと最大幅のベルト層のエッジとの間の距離Lを5mm以上にした空気入りラジアルタイヤ。 - 前記カーカス層が2層であり、これらのカーカス層の両端部が左右のビード部におけるビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げられていて、内側のカーカス層の折り返し部が前記離間させた折り返し部となる請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
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