JP4516332B2 - 温度管理媒体、温度管理媒体の凝固点の調整方法、温度管理媒体の使用方法 - Google Patents

温度管理媒体、温度管理媒体の凝固点の調整方法、温度管理媒体の使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、冷凍保存された被検温体が保存温度よりも高い温度に晒されたかどうかを色変化によって表示する示温剤等の温度管理媒体と、その使用方法と凝固点の調整方法に関する。
近年、冷凍又は冷蔵した状態で荷物を配送する需要が一段と増加し、これらの荷物を配達先まで予め決められた低温に保ちながら運搬する宅配便等の配送手段が広く普及している。
このような配達手段においては、例えば集荷元の冷凍・冷蔵施設から配送車へ荷物を積み込む場合や、配送車間で荷物を積み替える場合、あるいは配送車から荷物を取り出し配達先へ配達する場合に、冷凍・冷蔵状態を保つべき荷物が、直射日光による高温雰囲気や室温雰囲気に曝される場合がある。
また、製造後、無事に冷凍・冷蔵状態を保ちながら配達先に届けられた荷物についても、その荷物は冷凍・冷蔵状態が維持されることが求められる。
例えば、荷物の中身が食品や医薬品であれば、内容物の変質や雑菌の繁殖等が発生し、その本来の品質が損なわれる恐れがあり、極端な場合は食中毒や医療事故等を誘発しかねない。
このような温度管理が求められるものとしては、食品や医薬品の他に、化学関係や写真関係で用いられる各種薬品等が挙げられる。
食品や医薬品等の被検温体が所定の温度範囲内で保存されているかどうか、すなわち温度管理が正常に行われているか否かを簡便に確認する手段として、以下に示す温度管理媒体が提案されている。
(1)温度管理媒体として乳化液が用いられ、この乳化液が密封容器に充填されてなる温度管理ラベルが開示されている(特許文献1参照。)。
前記乳化液として、脂溶性色素を溶解した炭素数7〜15の高級アルコールの1種又は2種以上と、水と、乳化剤として非イオン系界面活性剤とが混合、乳化されたものが用いられている。
乳化液は、凝固点以下の温度に晒されて凝固した後に融解すると、乳化粒子が粗大化し、高級アルコールの油相と水相とに分離して、高級アルコールに溶解された色素の色を呈することになる。
このため、温度管理用インジケータが色素の濃い色調を有しているかどうか確認することによって、被検温体が保存温度の許容範囲よりも低い温度に晒されたかどうか容易に確認できる。この保存温度管理用インジケータは、例えば、脂肪乳剤等のように、室温以下で、かつ氷結しない温度で保存する必要のある被検温体の温度管理を行うために利用できる。
(2)ポリオレフィン・フィルムと、水溶性染料を含有する白色系油性インキを印刷したポリオレフィン・フィルムとが、その間に、寒天水性ゲルを含浸したポリオレフィン不織布が挟み込まれた状態で重ね合わされてなる冷凍食品の温度表示用シートが開示されている(特許文献2参照。)。
この温度表示用シートでは、冷凍食品(被検温体)が保存温度よりも高い温度に晒された際、寒天水性ゲルが解け、この寒天水性ゲル中の水が不織布の微細な孔を通って白色系油性インキの印刷面に達し、水溶性染料が溶解して白色系油性インキ印刷面が着色するようになっている。
このため、温度表示用シートの白色系油性インキ印刷面が着色しているかどうか視認することによって、温度表示用シートが貼付された被検温体が保存温度よりも高い温度に晒されたかどうか容易に確認できる。
(3)第一ラベル用シートと、第二ラベル用シートとが、その間に多孔質シートが挟み込まれた状態で重ね合わされてなり、第一ラベル用シートの多孔質シートと接する面に有機キレート発色剤を含有する粘着剤層が備えられ、また第二ラベル用シートの多孔質シートと接する面に、前記有機キレート発色剤と反応して発色し得る金属化合物を含有する粘着剤層が備えられた温度管理ラベルが開示されている(特許文献3参照。)。
前記温度管理ラベルにおいて、第一ラベル用シートの粘着剤層、第二ラベル用シートの粘着剤層、多孔質シートの少なくとも1つにパラフィン類、アルコール類等の温度制御剤が含有されている。この温度制御剤は、所望の温度になると流動する性質を有しており、温度制御剤と共に有機キレート発色剤又は金属化合物が多孔質シート内を移動し、有機キレート発色剤と金属化合物とが混ざり合って発色するようになっている。
このため、温度管理ラベルが発色しているかどうか視認することによって、温度管理ラベルが貼付された被検温体が保存温度よりも高い温度に晒されたかどうか容易に確認できる。
特開昭57−37227号公報 特開平7−49656号公報 特開平7−286914号公報
上述した従来の方法には、以下に示すような問題点があった。
乳化液,寒天水性ゲル,温度制御剤等の構成成分は、製造条件によって主成分や不純物等の含有量が変化し、これにより温度管理ラベルの色変化が確認される温度が変化してしまい、被検温体が、保存温度から外れた温度、すなわち品質が悪化する温度に晒されたかどうか精度良く確実に検知できない場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、所定の温度よりも高くなると確実に色変化し、これにより冷凍食品等の被検温体の保存温度が品質を損なう高温状態になったか否かの温度履歴を精度良く確実に視認又は検知できる温度管理媒体と、その使用方法と凝固点の調整方法を提供することを目的とする。
本発明に係る温度管理媒体は、水、油脂混合物大豆レシチンから構成された乳化液を含有する温度管理媒体であって、前記乳化液が、ブドウ糖の添加量が20質量%のブドウ糖水溶液100質量部に対して、0.5質量%の大豆レシチンを含有し、カプリル酸トリグリセライドと2−エチルヘキサン酸トリグリセライドの混合比が質量比で8:2である油脂混合物300質量部を添加してなることを特徴としている。
この温度管理媒体では、2成分の油脂からなる油脂混合物と、添加剤として糖類が含有された水溶液と、リン脂質を含む脂質混合物から構成されている。
乳化液の凝固点(融点)は、その構成成分の油脂混合物と水溶液の凝固点(融点)や、油脂と水溶液の混合比によって左右されるが、油脂混合物では、その油脂の種類や混合比を調整することによって、油脂混合物の凝固点(融点)を調整できる。また、水溶液では、その添加剤の種類や添加量を調整することによって、添加剤による凝固点降下を利用して水溶液の凝固点(融点)を調整できる。
このように油脂混合物と水溶液の凝固点(融点)を個々に調整できる構成であるため、精度良く乳化液の凝固点(融点)を調整できる。
本発明に係る温度管理媒体の凝固点の調整方法は、水、油脂混合物大豆レシチンから構成された温度管理媒体の凝固点の調整方法であって、水溶液の凝固点が前記温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、水にブドウ糖を溶解してブドウ糖水溶液を作製し、油脂混合物の凝固点が前記温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、カプリル酸トリグリセライドと2−エチルヘキサン酸トリグリセライドを、これらの混合比が質量比で8:2となるように混合して油脂混合物を作製し、前記油脂混合物に対して、大豆レシチンを0.5質量%溶解して、前記ブドウ糖水溶液と、前記大豆レシチンを含有する油脂混合物とを混合して乳化液とすることを特徴としている。
乳化液の構成成分の油脂混合物と水溶液の凝固点(融点)が、それぞれ温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、油脂混合物と水溶液を個々に調整した後に、これら油脂混合物と水溶液を混合することによって、乳化液の凝固点が正確に温度管理媒体の凝固点の設定値となる乳化液を容易に作製できる。
本発明に係る温度管理媒体の使用方法は、前述した温度管理媒体の使用方法であって、温度管理媒体を、その乳化液の凝固点以下に冷却して凝固させた後に、前記温度管理媒体を、温度管理を行う被検温体又は被検温雰囲気に配することを特徴としている。
乳化液は、その凝固点以下の温度域では、凝固し乳白色を呈する。これに対して、一度凝固した乳化液は、その温度が凝固点よりも高い温度域になると、融解して透明又は半透明の油(油脂)相と水相とに相分離する。
このため、温度管理媒体が、乳白色を呈しているか、又は油相と水相に相分離した状態であるかを検知することによって、被検温体の保存温度が、温度管理媒体を構成する乳化液の凝固点よりも高い温度になったか否かの温度履歴を確認できる。
前記したように、まず、温度管理媒体を、その乳化液の凝固点以下に冷却して凝固させた後に、温度管理媒体として用いることによって、被検温体の保存温度が、温度管理媒体を構成する乳化液の凝固点よりも高い温度になると、確実に相分離し、温度履歴を容易かつ確実に確認できる。
本発明によると、温度管理媒体を構成する乳化液は、その構成成分の化学種や混合比を調整することによって凝固点(融点)を精度良く調整できるようになっている。このため、乳化液の凝固点(融点)が、被検温体の保存温度の許容範囲の上限値となるように乳化液を作製でき、このような乳化液を含有する温度管理媒体では、被検温体の品質を損なう温度となった際、凝固した乳化液が確実に溶融し油相と水相に相分離した状態となるため、被検温体の保存温度が品質を損なう高温状態になったか否かの温度履歴を精度良く確実に確認できる。
本発明の温度管理媒体の凝固点の調整方法によると、凝固点が正確に温度管理媒体の凝固点となる乳化液を容易に作製できる。
本発明の温度管理媒体の使用方法によると、被検温体の保存温度が、温度管理媒体を構成する乳化液の凝固点よりも高い温度になると、確実に相分離するため、温度履歴を容易かつ確実に確認できる。このため、乳化液の凝固点が、被検温体の保存温度の許容範囲の上限値となるように調整された乳化液を用い、温度管理媒体が相分離しているかどうか確認することによって、被検温体がその品質を損なう温度となったかどうかの温度履歴を容易かつ確実に確認できる。
以下、実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明に係る温度管理媒体が密封容器に封止された状態の一例を示す模式図である。この温度管理媒体は、乳化液1を含有している。
乳化液1は、水と、油脂と、乳化剤としてのリン脂質を含む脂質混合物とが混合、乳化されたものである。この乳化液1の乳化形態は、水中に油脂が乳化粒子(分散粒子)となって均一に分散している状態(以下、水中油滴型又はO/W(Oil in Water)型と言う。)又は、油脂中に水が乳化粒子(分散粒子)となって均一に分散している状態(以下、油中水滴型又はW/O(Water in Oil)型と言う。)のいずれであっても良い。
油脂と水の割合(油脂:水)は、5:95〜95:5が好ましく、更に好ましくは80:20〜40:60である。これにより、安定な乳化形態が得られ、温度管理媒体の長期使用が可能となる。
乳化液1を構成する水としては、特に限定されないが、後述するリン脂質を含む脂質混合物に対する影響を考慮すると、電解質をほとんど含有していないイオン交換水や蒸留水が好適である。この水には添加剤として糖類又は水溶性高分子が溶解されている。
前記添加剤の種類や添加量を調整することによって、添加剤による凝固点降下により水溶液の凝固点を調整できる。
なお、添加剤として糖類と共に水溶性高分子が水に溶解されていても構わない。
前記糖類としては、例えば、フルクトース(果糖),グルコース(ブドウ糖),ガラクトース,マンノース等の単糖類、麦芽糖,ショ糖,ラクトース,セルビオース等の2糖類、スタキオース,ラフィノース等のオリゴ糖類、ペクチン,ガラクタン,デンプン,アミロース,ブルラン,アラビアガム,ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸ナトリウム,カルボキシメチルキチン等の多糖類等が挙げられる。
特に、添加剤による凝固点降下によって乳化液1の凝固点を調整することを考慮すると、分子量既知の単糖類や2糖類が好適である。
前記水溶性高分子としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース等)、ゼラチン、ポリアクリル酸サミド、ポリオキシエチレンオキサイド、ポリオキシプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、イソブテン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテル等が挙げられる。
一般に水溶性高分子は、その重合度が大きくなると粘性が高くなり、乳化が困難となる傾向にあることから、分子量100,000以下の水溶性高分子を使用することが好ましい。
また、乳化液1には、2成分以上の油脂が含有されている。
前記油脂としては、トリアシルグリセロール(TAGと略称する),ジアシルグリセロール(DAGと略称する),モノアシルグリセロール(MAGと略称する)等が挙げられ、凝固点(融点)が0℃近傍又は0℃以下のものが用いられる。
具体例としては、前記油脂からなり、凝固点(融点)が0℃近傍又は0℃以下のオリーブ油,コーン油等の天然の食用油や化学合成された食用油等が挙げられる。
前記油脂として、単一成分から構成された食用油が2種以上混合されたものが好ましい。
2成分以上から構成された食用油は、製造条件等によって構成成分の混合比が変動し、食用油の凝固点(融点)が変化する場合がある。
これに対して単一成分から構成された食用油は、その凝固点(融点)がほとんど変動しない。このため、単一成分から構成された食用油を2種以上混合して油脂混合物を作製する際、食用油の凝固点(融点)を参考にして食用油の混合比等を調整して、所望の凝固点(融点)を有する油脂混合物を作製できる。
また、食用油は、人体の健康上、安全性が高いため、油脂として好ましく用いられる。
乳化液1を構成するリン脂質を含む脂質混合物としては、大豆レシチン,卵黄レシチン,魚介類由来のレシチン等が挙げられる。
前記大豆レシチンは天然の乳化剤であり、抗酸化作用,離型作用,分散作用,起泡・消泡作用,保水作用,蛋白質・澱粉との結合作用,チョコレートの粘度低下作用等多岐にわたる性質を兼ね備えている。
大豆レシチンに含まれるリン脂質は、その分子中に、2つの脂肪酸基と、リン原子を含む極性基(親水基)とを有する。前記大豆レシチンに含まれるリン脂質の一例としては、ホスファチジルコリン(Phosphatidylcholine:略称PC)、ホスファチジルエタノールアミン(Phosphatidylethanolamine:略称PE)、ホスファチジルイノシトール(略称PI)、ホスファチジン酸(略称PA)が挙げられる。
大豆レシチンの製造方法としては、大豆を抽出した大豆粗油を濾過後、約2%の温水を加え攪拌し、ガム状となって油相から分離したものを乾燥する方法が挙げられる。
また、前記卵黄レシチンとしては、鶏卵等の卵黄の脂質等が挙げられる。鶏卵の卵黄は水分48%、蛋白質16%、脂質33%から構成されているが、この脂質中に30%含まれる成分がリン脂質である。
卵黄の脂質は中性脂肪65%、リン脂質30%、コレステロール4%から構成されている。卵黄レシチン中に含まれるリン脂質は、通常、ホスファチジルコリン(PC)70〜80%、ホスファチジルエタノールアミン(PE)10〜15%、スフィンゴミエリン(Sphingomyelin:SPM)1〜3%、リゾホスファチジルコリン(Lysophosphatidylcholine:LPC)1〜2%からなる。
前記リン脂質を含む脂質混合物は、食用として利用され無毒である。
リン脂質を含む脂質混合物の乳化液1中の含有量は、油脂に対して0.1質量%〜30質量%が好ましく、更に好ましくは0.5質量%〜10質量%である。これにより水と油脂とを乳化させることができる。
乳化液1は、通常、図1に示されたように、密封容器2等に封入され、低温履歴インジケータ,温度管理ラベル,温度表示用シート等の温度管理媒体として用いられる。
なお、乳化液1を密封容器2等に封入する場合、相分離によって体積の変動が生じてもその影響を受けないようにするために、例えば空気等の気体を密封容器2内に封入しておいても構わない。
また、乳化液1が液状ではなく高粘度物状等の形態をなす場合には、密封容器2は必ずしも要しない。
密封容器2としては、乳化液1が相分離した様子を光学的に確認できる材質からなるものが好ましく、ガラスやプラスチック、あるいは食して無害な材料が好適である。食して無害な材料としては、例えばプルラン、オブラート、ガム、アメ等が挙げられる。その形態としては、例えば管状、板状、球状、フィルムから構成された袋状等が挙げられる。
なお、乳化液1が相分離した様子を確認するだけであれば、油相11と水相12の境界付近のみ透明な材質から構成され、他の部分は光学的に不透明な金属等の材質から構成された密封容器であっても構わない。
特に、密封容器2としては、柔軟性、変形性に富む材質から構成されたフィルムが重ね合わされてなる袋状の容器が好ましく、これにより被検温体の外形に沿って貼付することができ、さらには外力が加わった際に密封容器2自身が柔軟に変形してその影響を回避することが可能となる。
なお、密封容器2を容易に被検温体に貼付できるように、粘着物からなる接着シートを密封容器2に備えても構わない。
また、食して無害な材料からなる密封容器2を用いた場合、密封容器2の中身である乳化液1も誤飲して影響のない材料であるため、例えば食品や薬品等の被検温体と共に、同じ包装内に並べて同梱できる。
乳化液1は、凝固点以下の温度に晒されると、凝固するが、液体状態と同じ乳白色を呈する。この凝固した状態の乳化液1が凝固点(融点)よりも高い温度に晒されて融解すると、乳化粒子が粗大化し、図1(b)に示されたように、透明又は半透明の油(油脂)相11と水相12とに相分離する。乳化液1は、一旦、油相11と水相12とに分離した状態となると、再び凝固点以下の温度に晒されても図1(a)に示された乳化状態とはならない。
このため、目視やセンサ等の光学的手段を用いて、温度管理媒体が、乳白色を呈しているか、又は油相11と水相12に相分離した状態であるかを視認又は検知することによって、被検温体の保存温度が、温度管理媒体を構成する乳化液1の凝固点(融点)よりも高い温度になったか否かの温度履歴を確認できる。
温度履歴媒体では、前記したように、その色が変化する凝固点が、乳化液1の凝固点(融点)となるため、乳化液1の凝固点(融点)が、例えば被検温体の品質を損なう温度等の所望の温度となるように、乳化液1の構成成分の化学種を適宜選択し、またその混合比を調整することによって、温度管理媒体の凝固点を調整できる。
温度管理媒体の凝固点、すなわち乳化液1の凝固点(融点)を調整する方法について以下に詳細に説明する。
水溶液の凝固点(融点)が温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、糖類又は水溶性高分子の種類と添加量を選択して水に溶解し水溶液を作製する。
ここで、温度管理媒体の凝固点の設定値とは、被検温体の品質を損なう温度、すなわち保存温度の許容範囲の上限値を言う。
また、油脂混合物の凝固点が温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、油脂(成分)の種類と混合比を選択して2成分以上の油脂を混合し、油脂混合物を作製する。
そして、糖類又は水溶性高分子が溶解された水溶液と、油脂混合物と、リン脂質を含む脂質混合物とを混合し、乳化液1を得る。
次に温度管理媒体の使用方法について説明する。
温度管理媒体を用いる際、まず、前述したように乳化液1の凝固点が、被検温体の保存温度の許容範囲の上限値となるように調整された乳化液1を用意する。
この乳化液1が密封容器2に封入された温度管理媒体を、その乳化液1の凝固点以下に冷却して凝固させる。そして、凝固した状態の温度管理媒体を、温度管理を行う被検温体又は被検温雰囲気に配する。
そして、温度管理媒体が、乳白色を呈しているか、又は油相11と水相12に相分離した状態であるかを確認することにより、被検温体や被検温雰囲気が、温度管理媒体を構成する乳化液1の凝固点よりも高い温度、すなわち被検温体の品質を損なう温度になったか否かの温度履歴を確認できる。
温度管理媒体が、乳白色を呈しているか、又は油相11と水相12に相分離した状態であるかを視認又は検知する方法としては、目視やセンサ等の光学的手段を用いた方法が適用できる。
また、予め密封容器2に識別記号や文字等を描いておき、乳化液1が相分離した際に水相12を通して識別記号や文字等の情報を読み取る方法や、予め密封容器2に鏡面を設けておき、乳化液1が相分離した際に水相12を透過した反射光を捉えて識別する方法等が適用でき、これにより相分離が生じたか否かを正確にかつ定量的に確認できる。
本発明の温度管理媒体では、乳化液1が、2成分以上の油脂と、添加剤として糖類又は水溶性高分子とを含有しており、2成分以上の油脂からなる油脂混合物と、添加剤として糖類又は水溶性高分子が含有された水溶液と、リン脂質を含む脂質混合物から構成されている。
油脂混合物は、その油脂の種類や混合比を調整することによって、油脂混合物の凝固点(融点)を調整できる。また、水溶液では、その添加剤の種類や添加量を調整することによって、添加剤による凝固点降下を利用して水溶液の凝固点(融点)を調整できる。
このように油脂混合物と水溶液の凝固点(融点)を個々に調整できるようになっており、精度良く乳化液1の凝固点(融点)を調整できる。
凝固点(融点)が所望の値に精度良く調整された乳化液1を含有する温度管理媒体では、被検温体の品質を損なう温度となった際、凝固した乳化液1が確実に溶融し油相11と水相12に相分離した状態となるため、被検温体の保存温度が品質を損なう高温状態になったか否かの温度履歴を精度良く確実に確認できる。
本発明の温度管理媒体の凝固点の調整方法によると、乳化液1の構成成分の油脂混合物と水溶液の凝固点(融点)が、それぞれ温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、油脂混合物と水溶液を個々に調整した後に、これら油脂混合物と水溶液を混合することによって、乳化液1の凝固点が正確に温度管理媒体の凝固点の設定値となる乳化液1を容易に作製できる。
本発明の温度管理媒体の使用方法によると、まず、温度管理媒体を、その乳化液1の凝固点以下に冷却して凝固させた後に、温度管理媒体として用いることによって、被検温体の保存温度が、乳化液1の凝固点よりも高い温度になると、確実に相分離する。
このため、乳化液1の凝固点が、被検温体の保存温度の許容範囲の上限値となるように調整された乳化液1を用い、温度管理媒体が相分離しているかどうか確認することによって、被検温体がその品質を損なう温度となったかどうかの温度履歴を容易かつ確実に確認できる。
以下、本発明を、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(試験例1)
ブドウ糖水溶液の凝固点(融点)が−15℃となるようにブドウ糖の添加量を調整して、凝固点(融点)が−15℃のブドウ糖水溶液を100g作製した。このブドウ糖水溶液の濃度は、20質量%であった。
油脂として、カプリル酸トリグリセライドからなる食用油(融点−5℃、ココナードRK、花王社製)と、2−エチルヘキサン酸トリグリセライドからなる食用油(融点−30℃、エキセパールTGO、花王社製)を用いた。
これら油脂を種々の混合比で混合して油脂混合物を調整し、この油脂混合物の凝固点と油脂の混合比との関係を求めた。この関係をもとにして、油脂混合物の凝固点(融点)が−15℃となる混合比を算出すると、混合比(カプリル酸トリグリセライド:2−エチルヘキサン酸トリグリセライド)が8:2であることがわかった。
カプリル酸トリグリセライドと2−エチルヘキサン酸トリグリセライドとを混合比8:2で混合し、油脂混合物300gを作製した。
この油脂混合物に対して、リン脂質を含む脂質混合物として大豆レシチンを0.5質量%溶解して、0.5質量%の大豆レシチンが溶解された油脂を300g用意した。
なお、大豆レシチンの量は油脂に対する質量%である。
前記ブドウ糖水溶液100gに対して、0.5質量%の大豆レシチンが溶解された油脂混合物300gを徐々に加えながら、混練装置(T.K.ロボミックス、特殊機化工業製)を用いて、12000rpm、5分間、常温にて混練することにより乳化させ、凝固点が−15℃の乳化液(温度管理媒体)1を作製した。
乳化液(温度管理媒体)1をガラス瓶に入れ、冷凍庫(−15℃以下)に4時間以上静置した後、乳化液1を冷凍庫から取り出し、室温雰囲気にて静置した。
また、乳化液1をガラス瓶に入れ、室温で1日静置したものの状態と、室温で1週間静置したものの状態を目視で観察し安定性を調べた。
−15℃以下に4時間以上静置された乳化液1は凝固しており、乳白色を呈していた。
この凝固した状態の乳化液1は、室温雰囲気にて静置された後、その温度が−15℃よりも高くなると、融解して油相11と水相12とに相分離した。
この乳化液1は、凝固点が−15℃の温度管理媒体として使用でき、例えば、密封容器2に封入して低温履歴インジケータとし、この低温履歴インジケータを被検温体に貼付して用いることができる。特に、温度管理媒体が乳白色を呈しているか又は油相11と水相12とに相分離しているか視認することによって、被検温体が−15℃よりも高い温度に晒されたかどうかを正確に確認できる。
また、乳化液(温度管理媒体)1をその凝固点(−15℃)以下に冷却して凝固させた後に、温度管理媒体として用いることによって、乳化液1の凝固点よりも高い温度になると、確実に油相11と水相12とに相分離し、温度履歴を容易かつ確実に確認できる。
また、乳化液1は、室温で1週間静置しても相分離しておらず、安定に乳化状態を維持でき、優れた長期安定性を有することがわかった。
(試験例2)
試験例1と同様にして乳化液(温度管理媒体)1を製造した。
冷凍庫の内部温度を−10℃に設定し、乳化液1の凝固点よりも高い温度とした。この冷凍庫内に乳化液1を4時間以上静置した後、乳化液1を冷凍庫から取り出し、室温(25℃)にて約30分静置した。そして、乳化液1の状態を目視で観察した。
−10℃に4時間以上静置された乳化液1は凝固していなかった。また、−10℃に4時間以上静置された乳化液1を室温(25℃)に静置しても、乳化液1は相分離しなかった。
試験例1,2のように、本発明の温度管理媒体は、被検温体が許容範囲内の保存温度で保存されていたものが、許容範囲の上限よりも高い温度に曝されたかどうかを確認するためのものであって、既に許容範囲の上限よりも高い温度にある被検温体には使用できない。
本発明に係る温度管理媒体は、冷凍保存又は冷蔵された被検温体が、その品質を損なう高温度状態に晒されたかどうかを色変化によって表示でき、例えば低温履歴インジケータ,温度表示用シート,温度管理ラベル等に適用できる。
本発明に係る温度管理媒体が密封容器に封止された状態の一例を示す模式図であり、(a)は凝固点以下の状態であり、(b)は凝固点(融点)よりも高い温度に晒された状態である。
符号の説明
1‥‥乳化液。

Claims (3)

  1. 水、油脂混合物大豆レシチンから構成された乳化液を含有する温度管理媒体であって、
    前記乳化液が、ブドウ糖の添加量が20質量%のブドウ糖水溶液100質量部に対して、0.5質量%の大豆レシチンを含有し、カプリル酸トリグリセライドと2−エチルヘキサン酸トリグリセライドの混合比が質量比で8:2である油脂混合物300質量部を添加してなることを特徴とする温度管理媒体。
  2. 水、油脂混合物大豆レシチンから構成された温度管理媒体の凝固点の調整方法であって、
    水溶液の凝固点が前記温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、水にブドウ糖を溶解してブドウ糖水溶液を作製し、
    油脂混合物の凝固点が前記温度管理媒体の凝固点の設定値となるように、カプリル酸トリグリセライドと2−エチルヘキサン酸トリグリセライドを、これらの混合比が質量比で8:2となるように混合して油脂混合物を作製し、
    前記油脂混合物に対して、大豆レシチンを0.5質量%溶解して、
    前記ブドウ糖水溶液と、前記大豆レシチンを含有する油脂混合物とを混合して乳化液とすることを特徴とする温度管理媒体の凝固点の調整方法。
  3. 請求項1に記載の温度管理媒体の使用方法であって、
    温度管理媒体を、その乳化液の凝固点以下に冷却して凝固させた後に、前記温度管理媒体を、温度管理を行う被検温体又は被検温雰囲気に配することを特徴とする温度管理媒体の使用方法。
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