JP2009210348A - 乳化物及び該乳化物を有した温度管理媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】分子量の高い油脂を含有した乳化物であっても、白濁化が抑制され、透過性の高い乳化物を提供し、かつそれを利用した温度管理媒体を提供すること。
【解決手段】乳化物は水、油脂、乳化剤、及び糖類、から少なくともなり、透明または半透明の外観を呈し、温度管理媒体として利用した場合、前記乳化物は所定温度の冷却により凝固し透過性が失われ、温度変化を識別することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は乳化物に係り、より詳しくは、光透過性の高い乳化物と、該乳化物を備えた温度管理媒体とに関する。
近年、不飽和脂肪酸を含有する油脂類の活性が注目を集めており、そのためにこれらの油脂類は健康食品、あるいは栄養補助食品、飼料、医薬品など広範囲で利用されている。このように不飽和脂肪酸が利用される際、油脂は水と共に含有され乳化物を形成することが多いが、白濁による透明感の低下といった問題がある。この白濁に関して、トコフェロールや香料といった低分子のものは、可溶化により防ぐことはできるが、比較的分子量の高いトリグリセライドを主要成分とする食品油脂では、同様に可溶化により白濁を抑制することは困難である。
このトリグリセライドのような比較的分子量の高い油脂を含有した乳化物を利用した一例として、例えば特許文献1には、凝固した乳化物を溶融した際に生じる水と油脂との相分離を利用した温度管理媒体が記載されている。この温度管理媒体においては、乳化物が所定温度以下にて凝固し、乳化物が再び所定温度を超える温度に昇温すると融解して相分離が生じる。一旦、乳化物に相分離が生じたら二度と元の乳化物には戻らないことから、この相分離した状態を光学的に識別することで、この温度管理媒体が貼付された対象物が、設定した以上の高温に曝されたか否かの温度履歴を判別することができる。
特開2006−153701号公報
しかしながら、上記温度管理媒体をなす乳化物は、凝固する前と後とで共に白濁しているため、その透過性の差が小さく、該乳化液の凝固の有無を目視で確認することは困難であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、分子量の高い油脂を含有した乳化物であっても、白濁化が抑制され、透過性の高い乳化物を提供することを第一の目的とする。
また、凝固する前の乳化物は高い透過性を有し、かつ該乳化物が凝固する前と後での透過性の差が大きく、簡便に目視で乳化物の凝固を確認できる温度管理媒体を提供することを第二の目的とする。
本発明の請求項1に記載の乳化物は、水、油脂、乳化剤、及び糖類、から少なくともなり、前記乳化物は透明または半透明の外観を呈することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の乳化物は、請求項1において、前記乳化物の520nmの波長に対する常温での反射率が14.3%以上30.4%以下であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の乳化物は、請求項1または2において、前記糖類は、単糖類、二糖類、多糖類、及び糖アルコールからなる群から選ばれる1種または2種以上の糖類であることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の乳化物は、請求項3において、前記水100質量部に対する前記単糖類の濃度が20質量部以上400質量部未満であることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の乳化物は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記油脂はトリアシルグリセロールを少なくとも含むことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の乳化物は、請求項1〜5にいずれかおいて、前記乳化剤がリン脂質であることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の温度管理媒体は、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化物を備え、該乳化物は昇温により融解し、相分離する温度管理媒体であって、前記乳化物は、請求項1〜6のいずれかに記載の乳化物であることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の温度管理媒体は、請求項7において、前記乳化物の凝固前と凝固後との反射率の差が20%以上50%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、糖類が添加されたことで乳化物の反射率が低減され、透過性の高い乳化物を得ることができる。
また、温度管理媒体に該乳化物を適用することで、凝固前では高い透過性を有し、凝固後には透過性が大きく低下するため、簡便に目視で該乳化物の凝固を確認することが可能となる。
本発明の乳化物は、水、油脂、乳化剤及び糖類から概略構成されている。また、該乳化物は透明または半透明の外観を呈する。
乳化物は、水、油脂およびリン脂質を含む脂質混合物と糖類とから構成され、リン脂質を含む脂質混合物が界面活性剤として機能し、水が分散媒(連続相)をなして、油脂が分散相(不連続相)をなす水中油滴型(Oil in Water型:O/W型)エマルションである。または、分散媒(連続相)が油脂で、分散相(不連続相)が水をなす油中水滴型(Water in Oil型:W/O型)エマルションである。
乳化物において、水と油脂の割合(水:油)は、適宜調整されるが、5:95(wt:wt)〜95:5(wt:wt)が望ましく、10:90(wt:wt)〜60:40(wt:wt)が好ましく、15:85(wt:wt)〜30:70(wt:wt)が特に好ましい。
乳化物を構成する水としては、特に限定されず、いかなる水でも用いられるが、乳化剤への影響を考慮すると、イオン交換水や蒸留水が好適に用いられる。
油脂としては、融点が0℃以上または0℃以下であり、かつ、室温(約25℃)付近にて界面活性剤を用いて水と糖類と共に乳化物を構成するものが挙げられる。このような油脂としては、例えば、トリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、モノアシルグリセロール(MAG)などの油脂を主成分とする食用油脂が挙げられる。本発明の乳化物では、これらの油脂から選択される1種または2種以上を適宜用いることができる。
油脂に脂肪酸エステルなどを混合することで、乳化物の粘性、流動性、融点などを調節することができる。またTAGなどの油脂を乳化物中に均一に分散させることができる。このような脂肪酸エステルとしては、例えばステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸アミル、ミリスチン酸ペンチル、ミリスチン酸ヘキシル、ミリスチン酸ヘプチル、ミリスチン酸イソブチル、ミリスチン酸t−ブチル、ミリスチン酸イソアミル、ミリスチン酸t−アミル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸ブチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸アミル、オレイン酸ペンチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸t−ブチル、オレイン酸イソアミル、オレイン酸t−アミル、オレイン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸t−ブチル、ステアリン酸イソアミル、ステアリン酸t−アミル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、パルチミン酸ブチル、パルチミン酸イソプロピル、パルチミン酸メチル、パルチミン酸エチル、パルチミン酸プロピル、パルチミン酸アミル、パルチミン酸ペンチル、パルチミン酸ヘキシル、パルチミン酸ヘプチル、パルチミン酸イソブチル、パルチミン酸t−ブチル、パルチミン酸イソアミル、パルチミン酸t−アミル、パルチミン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸アミル、ラウリン酸ペンチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ヘプチル、ラウリン酸イソブチル、ラウリン酸t−ブチル、ラウリン酸イソアミル、ラウリン酸t−アミル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、などが挙げられる。
乳化剤としては、リン脂質を含む脂質混合物が挙げられ、例えば、レシチンおよびリゾレシチンを主成分とするものを用いるのが好ましい。
レシチンは、乳化物において、水または油脂のいずれか一方を他方に微粒子状に分散させるための界面活性剤として機能する。レシチンとしては、下記の一般式(1)で表される大豆レシチン、下記の一般式(5)〜(8)で表される卵黄リン脂質を含む卵黄レシチン、魚介類由来のレシチンなどが挙げられる。
Figure 2009210348
上記の一般式(1)中、R1、R2は飽和および不飽和炭化水素から構成される。また、Aは塩基を表している。
例えば、Aが下記の式(2)で表される塩基の場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルコリン、Bが下記の式(3)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルエタノールアミン、Aが下記の式(4)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルイノシトール、Aが水素原子である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンは、ホスファチジン酸である。
Figure 2009210348
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Figure 2009210348
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大豆レシチンは、上記の一般式(1)に示すように、2つの脂肪酸残基と、1つの塩基を有している。大豆レシチンは天然の乳化剤であり、抗酸化作用、離型作用、分散作用、起泡・消泡作用、保水作用、蛋白質・澱粉との結合作用、チョコレートの粘度低下作用など多岐にわたる性質を兼ね備えている。また、大豆レシチンは、大豆を抽出した大豆粗油を濾過後、約2%の温水を加え攪拌し、ガム状となって油相から分離したものを乾燥することにより得られる。さらに、大豆レシチンは、安価で大量供給が可能であり、精製度合いによって様々な状態で得ることができるという特徴を備えているので、使用条件によって種類を選択できる。
卵黄レシチンは、鶏卵の卵黄は水分48%、蛋白質16%、脂質33%からなるが、この脂質中に30%含まれる成分がリン脂質である。また、卵黄の脂質は中性脂肪65%、リン脂質30%、コレステロール4%から構成されている。また、卵黄リン脂質は、上記の一般式(5)のホスファチジルコリン(Phosphayidylcholine)70〜80%、上記の一般式(6)のホスファチジルエタノールアミン(Phosphatidylethanolamine)10〜15%、上記の一般式(7)のスフィンゴミエリン(Sphingomyeline)1〜3%、上記の一般式(8)のリゾホスファチジルコリン(Lysophosphatidylcholine)1〜2%から構成されている。
リゾレシチンは、上記のようなレシチンと同様に、乳化物において、水または食用油脂のいずれか一方を他方に微粒子状に分散させるための界面活性剤として機能する。リゾレシチンとしては、上記の一般式(1)で表される大豆レシチン、上記の一般式(5)〜(8)で表されるレシチンなどをリゾ化して、レシチンから脂肪酸が1個取れた構造をなすものが挙げられる。ここで、リゾ化とは、酵素であるPhospholipaseA2を用いて、レシチンが持つグリセリン基の第二位の脂肪酸残基を脱離させることをいう。
また、リゾレシチンは、天然の乳化剤であり、抗酸化作用、離型作用、分散作用、起泡・消泡作用、保水作用、蛋白質・澱粉との結合作用、チョコレートの粘度低下作用など多岐にわたる性質を兼ね備えている。
乳化物において、乳化剤として用いるリン脂質等を含む脂質混合物の配合量は、油分100質量部に対して、0.1質量部以上、40質量部以下が好ましく、1質量部以上、20質量部以下がより好ましい。
乳化剤の配合量が、油分100質量部に対して、0.1質量部未満では、乳化し難い。一方、乳化剤の配合量が、油分100質量部に対して、40質量部を超えると、水に油分および乳化剤が分散し難くなり、うまく乳化しない。
また、乳化剤としてレシチンとリゾレシチンを用いる場合は、レシチンとリゾレシチンの配合割合は、20:80(wt:wt)〜80:20(wt:wt)が好ましく、70:30(wt:wt)〜30:70(wt:wt)がより好ましい。
乳化物には、水との親和性が高い糖類が含有されている。糖類としては単糖類や、スクロース、マルトース、ラクトース、などの二糖類の他に三糖類や多糖類、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ソルビトールなどの糖アルコールなどを用いることができるが、特に単糖類が好ましく、例えば、フルクトース、グルコース、キシロース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシルロース、リブロースなどが挙げられ、これらの中から1つを選択して用いても良いし、複数を混合して用いてもよい。
糖類の配合量としては、水100質量部に対して20質量部以上400質量部未満が好ましい。
糖類の配合量が、水100質量部に対して20質量部未満では、乳化物の反射率を十分に小さくすることができず、該乳化物の白濁化を抑制することが困難である。一方、糖類の配合量が、水100質量部に対して400質量部以上であると、水に油分および乳化剤が分散し難くなり、乳化物を得ることが困難となる。
また、乳化物には、その凝固点や粘度等を所望の範囲に調整するために、水溶性高分子を配合してもよい。水溶性高分子の種類、配合量などを変えることにより、乳化物の融点や凝固点、粘度等を所望の範囲に調整することができる。
このような水溶性高分子としては、例えばアルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ゼラチン、ポリアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンオキサイド、ポリオキシプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、イソブテン−無水マレイン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテルなどが挙げられる。水溶性高分子は、重合度が大きくなると粘性が高くなり、乳化が困難となる傾向にあることから、重量平均分子量100,000以下のものを使用するのが好ましい。
また、着色料などを乳化物に添加してもよい。着色料としては、食して無害な天然着色料が好ましく、例えばマリーゴールド、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、アルラレッドAC(赤色40号)、ニューコクシン(赤色102号)、フロキシン(赤色104号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、タートラジン(黄色4号)、サンセットイエローFCF(黄色5号)、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)など、従来公知のものを用いることができる。このような着色料を添加することで、同時に複数の乳化物を使用した際に、個々の、あるいはグループごとに乳化物を識別することができると共に、デザイン性の高い乳化物を提供することができる。
本発明の乳化物は、乳化物を作成する際に、水に着色料(青色1号)を加え、油脂にマリーゴールドを加えて緑色とし、厚さ約2mmの透明容器に封入して黒色の測定台上で520nmの光に対する反射率を測定した際、図1に示すようにその反射率は14.3%〜30.4%である。このように乳化物は低い反射率を有しているため、透過性に優れた特徴を有している。そのため、例えば化粧品や医薬部外品等に用いれば、デザイン性の高い商品を提供することができる。
次に、この乳化物の製造方法の一例を説明する。
まず、油脂に乳化剤を溶解して油脂の混合液(油脂混合液)を調整する。
なお、油脂を2種以上用いる場合、予めこれらを混合した後、この油脂の混合物に乳化剤を溶解する。
次いで、攪拌しながら、所定の濃度に調整した糖水溶液に油脂混合液を少しずつ加えて、油脂を糖水溶液に微粒子状に分散させることで、本発明の乳化物が得られる。
また、必要に応じて着色剤等を糖水溶液や油脂に混入してもよい。
図2は、本発明の乳化物を温度管理媒体に適用した際の図である。図2(a)は密閉容器内に収容された乳化物を、(b)は密閉容器内に収容された乳化物が水相と油相に相分離した状態をそれぞれ表している。
図2中、符号10は温度管理媒体、11は乳化物、12は密閉容器、13は水相、14は油相をそれぞれ示している。この実施形態の温度管理媒体10は、乳化物11と、密閉容器12とから概略構成されており、乳化物11が密閉容器12内に収容され、この密閉容器12が密閉されてなるものである。
この実施形態の温度管理媒体10は、密閉容器12内における乳化物の相分離を利用したものである。すなわち、温度管理媒体10は、例えば室温(約23℃)近傍にて乳化物11が安定かつ均一な透明の液体であり、乳化物11が所定温度、例えば、−60℃〜20℃にて凝固して透過性が低減し、乳化物11が再び所定温度を超える温度(乳化物11を構成する油脂、乳化剤の融点を超える温度)に昇温することにより相分離して、透明な水相13と、不透明な油相14とに相分離して、一旦、相分離したら二度と元の乳化物11には戻らない(不可逆)ことを利用したものである。このように乳化物11の透過性、及び相分離した状態を、例えば目視やセンサにより光学的に識別することで、温度管理媒体10が所定の温度で冷却されて起動したか否かを、また、この温度管理媒体10が具備された荷物が設定した以上の高温に曝されたか否かを容易に判別できる。
乳化物11を構成する油脂としては、一旦、所定温度、例えば、−60℃〜20℃に曝された後、再び所定温度を超える温度に昇温することにより水と相分離するものが挙げられる。このような油脂としては、例えば上述した、トリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、モノアシルグリセロール(MAG)などの油脂を主成分とする食用油脂が挙げられる。乳化物11では、これらの油脂から選択される1種または2種以上が、目的とする温度管理媒体1の作動温度(乳化物11が凝固する温度)範囲に応じて適宜用いられる。また、融点が0℃以上の油脂と、融点が0℃以下の油脂とを適宜の割合で混合して用いるか、あるいは、融点が0℃以上の油脂または融点が0℃以下の油脂のいずれか一方を適宜用いることにより、温度管理媒体10の作動温度範囲を所望の温度範囲に制御することができる。
なお、本発明では、所定温度とは、−60℃以上、+20℃以下の範囲の温度をいう。
また、上述したレシチンとリゾレシチンの配合比、あるいは水溶性高分子の種類や配合量などを変えることでも、温度管理媒体10の作動温度範囲を制御することが可能である。
密閉容器12としては、乳化物11を収容する部分(空間)を有し、乳化物11が凝固して反射率が上昇して透過性が低下(反射率が増加)した様子、及び乳化物11が相分離した様子を光学的に確認できる透明な材質からなるものが好ましく、ガラスやプラスチック、あるいは食して無害な材料が好適に用いられる。食して無害な材料としては、例えば、プルラン、オブラート、ガム、アメなどが挙げられる。その形態としては、例えば管状、板状、フィルム状、球状などが挙げられる。なお、透過性が低下した様子、または相分離を確認するだけならば、密閉容器12を、乳化物11が相分離してなる水相13と油相14の境界付近のみ透明な材質とし、他は不透明な金属などからなる構成としてもよい。
特に、密閉容器12として可撓性のフィルム状のものを用いた場合、荷物などの対象物の外形に沿って温度管理媒体10を貼付することができるばかりでなく、温度管理媒体10に外力が加えられた際に密閉容器12自体が柔軟に変形してその影響を回避することができるので望ましい。
また、乳化物11の相分離によって、密閉容器12内に収容されている液体の体積が変動してもその影響を受けないようにするために、例えば、乳化物11とともに空気や不活性ガスなどの気体を密閉容器12内に封入しておいてもよい。
本発明の温度管理媒体10において、乳化物11の凝固前と凝固後とでの反射率の差は、20%以上50%以下である。このように、反射率、すなわち透過性が大きく異なることから、乳化物11が凝固したか否かを目視で容易に確認することができる。ゆえに、取り扱い性に優れている。従来の温度管理媒体では、所定温度で冷却した際に、乳化物の凝固前と凝固後とでは反射率の差、すなわち透過性の違いが小さかったため、凝固の有無を目視で判断することが難しかった。そのため、確実に乳化物が凝固し温度管理媒体が起動したとされるまでに数時間を必要とした。これに対し、本発明の温度管理媒体10では、乳化物11が凝固した際の透過性(反射率)の変化が大きいために乳化物11の凝固が目視で認識でき、簡便に、かつ確実に温度管理媒体10が起動したか否かをすばやく判別することが可能となる。
本発明の乳化物11を適用した温度管理媒体10は、所定の温度に冷却して乳化物11が凝固した際に、反射率が増加し、透過性が失われるものである。また、乳化物11の相分離を利用したものである。この透過性の変化及び相分離後に透明となる水相13の性質を利用する技術としては、目視あるいはセンサで乳化物11や水相13を確認する際に、乳化物11や水相13の向こう側に識別記号や文字を配置してその下地の情報を読み取ったり、または鏡面を設けることによって反射光を捉えて識別したりすることで、乳化物11に凝固が生じたか否か、相分離が生じたか否かを正確にかつ定量的に確認することも可能である。
更に本発明の乳化物11は、人体に悪影響を及ぼすことのない、水、油脂、乳化剤を含む脂質混合物から構成されているから、乳化物11が皮膚、食品、薬品に付着し、その結果、乳化物11が体内に入っても、健康を害することはない。よって、温度管理媒体10は、食品や薬品などのパッケージに貼付あるいは塗布して用いても、事故が発生するおそれがない、安全性が極めて高い乳化物11である。よって、本発明は、従来使用するものが難しかった分野も含めて幅広い分野において活用可能である。
<実施例1>
トリアシルグリセロールとしてニッコールトリファットC−24(商品名、融点20〜26℃、日光ケミカル社製)30gと、トリアシルグリセロールとしてココナードRK(商品名、融点:−5℃、花王社製)30gと、ステアリン酸ブチル(融点20℃、炭素数20、関東化学社製)35gと、ミリスチン酸ブチル(融点5℃、炭素数18、和光純薬工業社製)5gとマリーゴールド0.1gとを混合し、これらの混合液を調整した。
次いで、この混合溶液に、粉レシチン(商品名;SLP−ホワイト、辻製油社製)0.5gと、ペーストリゾレシチン(商品名;SLP−ペーストリゾ、辻製油社製)1.63gを溶解して、油分混合液を調整した。
次いで、30wt%に調整したフルクトース(関東化学社製)の糖水溶液30gに、色素として青色1号を0.1g加え、この糖水溶液を攪拌しながら、油分混合液102.13gを少しずつ加えた。油分混合液を全量加えた後、乳化機により400rpmで5分間、室温にて、糖水溶液と油分混合液の混合物を攪拌することにより乳化させた。乳化後すぐに、この乳化物の一部をとり、粒子径分布測定装置を用いて平均粒子径を算出した。また、この乳化物0.4g〜0.6gを20×20mmのポリエチレン製軟包材に充填して密封し、実施例1の乳化物を作製した。
<実施例2>
上記で作製した実施例1において、糖水溶液の濃度を50wt%としたこと以外は実施例1と同様に作製し、これを実施例2の乳化物とした。
<実施例3>
上記で作製した実施例1において、糖水溶液の濃度を60wt%としたこと以外は実施例1と同様に作製し、これを実施例3の乳化物とした。
<比較例1>
上記で作製した実施例1において、糖水溶液の濃度を0wt%、すなわち水としたこと以外は実施例1と同様に作製し、これを比較例1の乳化物とした。
<比較例2>
上記で作製した実施例1において、糖水溶液の濃度を80wt%としたこと以外は実施例1と同様に作製したが、乳化物を得ることができなかった。
上記で得られた実施例1〜3、及び比較例1〜2の乳化物を反射率測定機により520nmの反射率を測定した。なお、背景は黒色とした。表1に、各乳化物の組成と520nmの反射率を示す。また、図1に、実施例における反射率を測定したグラフを示す。
Figure 2009210348
表1及び図1より、実施例の乳化物では、520nmの波長の光に対する反射率が30.1%〜14.3%と、低い値を示し、透明性に優れている乳化物を得られたことが確認された。また、糖濃度が60%以下であれば、濃度の上昇に伴い乳化物を構成するミセルの粒径が小さくなるとともに、反射率も低下することが観察された。
次に、実施例1〜3、及び比較例1〜2の乳化物において、1℃で30分間保冷した際の520nmの光に対する反射率を同様に測定した。この結果を表2、及び図3に示す。
Figure 2009210348
表2及び図3より、1℃で30分間保冷すると、実施例及び比較例のどの乳化物においても520nmの光に対する反射率の増加が観察された。また、糖濃度が増加するにしたがい、保冷の前後における反射率の差分が大きくなることが観察された。
また、フルクトースに変え、グルコース、スクロース、キシリトールのそれぞれを用いた際にも、同様な結果が得られた。
本発明の乳化物は、透明性に優れ、所定温度での保冷の前後でその透明度が変化することから食品や薬品等の温度管理の状況を把握することにも利用できる。
本発明の乳化物における反射率を示したグラフである。 本発明の乳化物を適用した温度管理媒体を模式的に示した図である。 実施例と比較例とにおける反射率を示したグラフである。
符号の説明
10 温度管理媒体、11 乳化物、12 密閉容器、13 水相、14 油相。

Claims (8)

  1. 水、油脂、乳化剤、及び糖類、から少なくともなり、前記乳化物は透明または半透明の外観を呈することを特徴とする乳化物。
  2. 前記乳化物の520nmの波長に対する常温での反射率が14.3%以上30.4%以下であることを特徴とする請求項1に記載の乳化物。
  3. 前記糖類は、単糖類、二糖類、多糖類、及び糖アルコールからなる群から選ばれる1種または2種以上の糖類であることを特徴とする請求項1または2に記載の乳化物。
  4. 前記水100質量部に対する前記糖類の濃度が20質量部以上400質量部未満であることを特徴とする請求項3に記載の乳化物。
  5. 前記油脂はトリアシルグリセロールを少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の乳化物。
  6. 前記乳化剤がリン脂質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の乳化物。
  7. 常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化物を備え、該乳化物は昇温により融解し、相分離する温度管理媒体であって、
    前記乳化物は、請求項1〜6のいずれかに記載の乳化物であることを特徴とする温度管理媒体。
  8. 前記乳化物の凝固前と凝固後との反射率の差が20%以上50%以下であることを特徴とする請求項7に記載の温度管理媒体。
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