JP4816932B2 - 温度履歴記録用酸性乳化状組成物および温度履歴記録用インジケーター - Google Patents

温度履歴記録用酸性乳化状組成物および温度履歴記録用インジケーター Download PDF

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Description

本発明は、凍結の際に解乳化を生じ、解乳化後の解凍により視認可能となるように油層分離を視覚的に判別できる乳化状組成物、非凍結、凍結もしくは解凍の履歴を記録する温度履歴記録用インジケーター、これを装着した輸送用伝票および温度管理体、並びに被輸送物品の非凍結、凍結もしくは解凍の履歴判別方法及び物品の物流方法に関する。
近年、流通の多様化により様々な温度帯での輸送が可能となり、また宅配システムの充実と汎用化が進み、個人レベルで常温、チルド、冷凍の各温度帯での配送を選択できるようになった。流通(物流)システムの近代化により、確かに輸送や保管中の温度管理の精度は向上したが、小口配送の複雑化により各流通間をつなぐ過程の管理は未だ充分とは言えない。また、最終的に配送された荷物が、受け取った側の温度管理の不徹底により、衛生上、健康上被害を被るケースも充分想定できる。
食品の例を挙げると、冷凍食品が一度解凍され、再凍結した状態で家庭に届けられた場合、物性上の著しい変化がない限り、多くはこれに気付かず食すことになり、食品衛生上極めて危険である。また、医薬品の例をとると、経静脈的に投与される脂肪乳剤は、凍結させると乳化が壊れ、油滴が会合するため、誤って注射すると患者の生命に関わることになる。また、物性変化が著しく視覚的に判別できたとしても、流通(物流)業者の不備か受け取った側の不備か判別できず、配送に伴うトラブルの原因となりうる。
このように、物流における荷物は、例えば、生産あるいは加工工場段階、保存倉庫段階(常温、冷蔵あるいは冷凍)、配送業者倉庫段階、問屋倉庫段階、小売業倉庫段階、小売業店頭陳列ケース段階、最終消費者冷蔵庫段階のそれぞれに置かれ、更に、各段階間を移送する際に一時的に運搬車両の荷物室(冷凍室、冷蔵室)にも置かれる。従って、荷物の物流には、多数の段階が存在しており、ある物流段階から別の物流段階へ荷物を移動させる際に、荷物が好ましくない温度に晒されることが懸念される。例えば、荷物によっては冷蔵あるいは常温流通させる必要があるのに誤って凍結してしまったり、凍結状態を維持しなければならないのに解凍してしまったり、最初の凍結、解凍の後に再凍結してしまったりすることがある。特に、冷凍トラックで荷物を運搬する場合、荷物の積み卸し作業時に10〜20分程度かかることもあるため、凍結状態を維持したい荷物が解凍してしまう場合がある。このため、宅配ルートで冷凍荷物を配送する場合、通常、荷物は−20℃で冷凍されていることを考慮して、その荷物の積み卸しの際に、解凍しない時間として、10℃の環境下で5分、20℃の環境下で3分という時間が求められているが、包装された荷物を見て、それがどのような温度履歴を有しているかは解らないというのが現状である。
そこで、非凍結、凍結もしくは解凍の履歴が記録され、その記録内容が視覚的に判別可能な温度履歴記録用インジケーターの可能性について検討したところ、以下の特許文献1〜4が発見された。即ち、不可逆変化により温度管理の可否を表示する表示具として、特許文献1には、ブラインを特定形状に加工し、透明容器に封入する技術が開示され、特許文献2には、マイクロカプセル化された色素を用いる技術が開示されている。しかし、特許文献1及び2に開示の技術には非常に高度な技法が必要であり、しかも高コストであるため汎用化は困難である。また、引用文献3には、乳化物による冷凍食品の解凍検知具が開示されているが、乳化物の詳細は記載されておらず、物流における荷物の温度管理不備を判別するに適した温度や時間の条件と乳化物の組成については触れられていない。特許文献4には、−12℃で混合することにより得たクリーム状組成物を−2℃に昇温した後−10℃に保持すると、クリーム状組成物が水層の固体と油層の固体とに分離することが記載されているが、このクリーム状組成物は−12℃に冷却することにより得られるものであるため、常温での使用が不可能となり、使用や保管の態様に大きな制約を受けるため、実用的とは言い難い。
特公昭50−39583号公報 特公昭50−39584号公報 特開昭52−20887号公報 特公平2−31809号公報
本発明の目的は、凍結していない(非凍結)という履歴、凍結していたという履歴、若しくは解凍したという履歴を記録する温度履歴記録用インジケーターに用いるための乳化状組成物であって、凍結の際に解乳化を所定時間内に生じさせ、解乳化後に解凍を所定時間内に生じさせることにより視認可能な油層分離を生ずる温度履歴記録用乳化状組成物及び当該温度履歴記録用インジケーターを提供することである。また、本発明の目的は、この温度履歴記録用インジケーターを装着した輸送用伝票および温度管理体、並びに荷物の非凍結、凍結もしくは解凍の履歴判別方法及び荷物の物流方法を提供することである。
本発明者等は、上記目的を達成すべく、乳化物の組成と解乳化の条件について、鋭意研究した結果、配合する油脂の組成、pH、酸度、食塩濃度、粘度等の各条件を検討した中で、最も重要な条件が、融点が25℃以下のパーム油を使用することであることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、凍結の際に解乳化を生じ、解乳化後の解凍により視認可能な油層分離を生ずる温度履歴記録用乳化状組成物であって、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂(パーム油を除く)及び融点25℃以下のパーム油を含有する温度履歴記録用乳化状組成物を提供する。
また、本発明は、上述の温度履歴記録用乳化状組成物が、内容物可視性容器に封入されてなる温度履歴記録用インジケーター、及びこの温度履歴記録用インジケーターが装着された輸送用伝票または温度管理体を提供する。
更に、本発明は、上述の温度履歴記録用インジケーターを、輸送用伝票に装着し、該インジケーターの油層分離の有無により、該輸送伝票の付された被輸送物品の非凍結、凍結もしくは解凍の履歴を判別する方法を提供する。
また、本発明は、上述の輸送用伝票を物品に装着した後、該物品を物流させ、所定の物流段階で、輸送用伝票に装着された温度履歴記録用インジケーターに封入された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が生じているか否かを判別する、物品の物流方法を提供する。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、凍結の際に解乳化を所定時間内に生じさせ、解乳化後に解凍を所定時間内に生じさせることにより視認可能な油層分離が生ずる。従って、温度履歴記録用乳化状組成物を内容物可視性容器に封入することにより、非凍結、凍結もしくは解凍の履歴を記録する温度履歴記録用インジケーターとして使用することができる。
以下、本発明について説明する。なお、本発明において、「%」は「質量%」を意味する。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、凍結の際に解乳化を生じ、解乳化後の解凍により視認可能な油層分離を生ずる温度履歴記録用乳化状組成物であって、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂(パーム油を除く)及び融点25℃以下のパーム油を含有するものである。
本発明において、「凍結の際」とは、温度履歴記録用乳化状組成物を単に凍結させたという意味ではなく、解乳化が生じるように凍結させた際のことを意味する。即ち、温度履歴記録用乳化状組成物の常温での乳化状態は水中油型の油層分離の認められないクリーム状を呈している。これが一度冷凍状態に保管されると凍結し、水相と油滴とがそれぞれ凍結し、構成成分が結晶(例えば針状結晶)成長する。それが乳化ミセルを破壊して解乳化を生じさせる。従って、結晶成長してミセルが破壊されるには、ある程度の時間が必要となる。このような解乳化を生じさせるように、ある時間幅で凍結させることを「凍結の際」と言い現している。なお、凍結により解乳化の状態となっても、この時点では凍結状態にあるため油脂分離は生ぜず、視覚的には判別不可能である。次に、これが常温またはチルド温度帯におかれて解凍もしくは融解した際に、油層分離が発現し、視覚的判別が可能となるのである。また、完全な油層分離が発生しない場合であっても、微小な油層分離が生じればクリームが変色し、視覚的に判別可能である。
図1は、温度履歴記録用乳化状組成物の凍結前の状態、即ち、水相に微少油滴が乳化した状態を示している。この温度履歴記録用乳化状組成物を−20℃で7時間凍結すると、図2に示すように、油滴の輪郭がぼやけてくる。この状態(凍結したままの状態)をマクロ的に観察すると、凍結前の状態と変化がないように見える。しかし、すでに解乳化が生じており、その状態が凍結により強制的に固定されているに過ぎない。従って、図2の温度履歴記録用乳化状組成物を解凍し始めると、図3に示すように油滴が凝集し始め、更に図4に示すように油相が大きくなっていくのである。このことが、「解乳化後の解凍により視認可能な油層分離を生ずる」ということの意味である。また、「解凍」という用語は、凍結した温度履歴記録用乳化状組成物を、例えば、5℃、10℃、20℃の温度雰囲気中に置くことを意味する。その際、凝固もしくは結晶化したパーム油を含む植物油脂は、通常、融解して液状化する。この液状化により油層分離が生ずる。なお、図1〜図4において、それぞれの図の右下隅のスケールの幅は10μmの長さを示している。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、以上説明した特性を有し、そのような特性を実現するための構成として、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂(パーム油を除く)及びパーム油を使用する。
本発明において、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂(パーム油を除く)とは、植物油脂のトリグリセライドにリノール酸やリノレン酸の不飽和脂肪酸を含有する精製油脂であり、例えば菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油等が挙げられる。中でも、油層分離が明瞭に判別できるという観点から、一般的な冷凍条件である−20℃台において使用する場合には菜種油が好ましい。更に低温領域である−30℃台において使用する場合は大豆油が好ましい。なお、パーム油を除く植物油脂中の不飽和脂肪酸の割合は、少なすぎると解乳化に要する時間が長くなるので、好ましくは少なくとも80質量%以上である。
本発明において、パーム油とは、パーム椰子より得られた油を精製したものをいう。特に本発明において、パーム油の融点は25℃以下、好ましくは18℃以下、更に好ましくは12℃以下である。この理由は、融点が25℃を超えるパーム油を用いると、良好な乳化状態が得られず、温度履歴記録用インジケーターとして実際の使用に不都合となるからである。なお、パーム油として、融点の異なる2種以上のパーム油を混合使用することもできる。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物における、前述の植物油脂とパーム油との合計油脂含量は、少なすぎると解乳化が生じにくく、不適当な流通、保管条件におかれても油層分離が発現せず、温度履歴を記録する目的を達しない場合があり、多すぎる場合は逆に解乳化が起き易く、適正な流通、保管条件から逸脱する度合いが軽微であっても油層分離が発生し、実用的な温度履歴記録材としては適さない場合があるからであり、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは60〜70質量%である。
また、植物油脂とパーム油の質量比率は、2/1〜50/1が好ましく、3/1〜6/1がさらに好ましい。この比率から外れる場合、凍結に時間を要する場合があり、冷凍状態におかれた場合であっても解乳化が生じにくい傾向がある。本発明の酸性乳化状組成物を5cm四方の樹脂フィルムの袋に実質上ヘッドスペースを含まないよう5g充填し、密封後、−20℃で保管した場合、植物油脂とパーム油の比率が2/1〜50/1の場合、10時間以内に凍結し、解乳化が生じ、また、10℃で5分では融解しないが20分以内には融解し、20℃で3分では融解しないが10分以内には融解する。また植物油脂とパーム油の比率が3/1〜6/1の場合、5〜6時間程度で凍結し、解乳化が生じ、また、10℃で3分では融解しないが10分以内には融解し、20℃で2分では融解しないが5分以内には融解する。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物には、解乳化して油層分離が生じた際に、その油層分離を視覚的に明瞭に確認できるよう、着色材を添加することもできる。例えば黄色を呈するβカロチン等を添加することにより、油層分離を視覚的に明瞭とすることができる。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物のpHは5以下が好ましく、さらに好ましくは4以下である。これよりpHが高い場合には微生物的に不安定であるため常温保管に適さず、常温保管するためには高温高圧殺菌を施すか、強力な防腐剤を添加する必要があり、乳化状態に悪影響を与えるからである。更に、微生物的安定性を付与するために、本発明の温度履歴記録用乳化状組成物に食塩を添加するのが好ましい。但し、pHが低過ぎる場合や食塩濃度が高過ぎる場合には、乳化状態に悪影響を与える傾向がある。酸性度合いは、酢酸換算で酸度が好ましくは0.5〜1質量%である。また、食塩濃度は、好ましくは1.5〜4質量%に調整するのが好ましい。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、その乳化状態を形成維持するために、通常、水を10〜40質量%含有する。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水を使用することができる。その他、本発明の効果を損なわない範囲でエタノール、グリセリンなどの水混和性有機溶媒を含有してもよい。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物においては、その経時的pH変動を小さく抑えるため、pH安定剤を用いることができる。pH安定剤には、クエン酸塩やリン酸塩等が例として挙げられる。中でもグルタミン酸Na等、食品添加物に規定されているものを用い、また他の原料を食品として許可されたもののみを用いることにより、万が一摂食しても健康上安心できるものとすることができる。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は油脂を含有する乳化状組成物であるため、乳化剤等、乳化機能を有する組成物を含むことができる。乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステル等が例として挙げられるが、上記と同様の理由でショ糖脂肪酸エステルやレシチン等食品添加物を用いることができる。また、鶏卵等鳥類の卵黄や蛋白、乳蛋白、大豆蛋白等の蛋白性食品を使用することもできる。特に乳化作用の大きい卵黄が好ましい。ただし卵黄の量が多過ぎると、油層分離が視覚的に不明瞭となる場合があり、添加量を5質量%超えないようにすることが好ましい。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物の粘度は、低すぎると乳化状態を安定に保つことが困難であり、ハンドリング性が低下し、高すぎると乳化状組成物の調製や充填等ハンドリングが困難となるので、好ましくは70〜400Pa・s、より好ましくは150〜250Pa・sである。
このような粘度範囲のクリーム状を呈するよう調製するために、本発明の温度履歴記録用乳化状組成物には、澱粉、加工澱粉、湿熱処理澱粉、デキストリン、糖アルコール等の糖類、ヘミセルロースやパルプ等の食物繊維類、蛋白食品素材である鶏卵等の卵白等を添加することができる。特に、卵白は上記糖類や食物繊維類に比べ、少量の添加で乳化状組成物にボディー感を付与することが可能であるため好ましい。その使用量を5質量%を超えないようにすることが好ましい。これは、多過ぎると調製やハンドリングが困難となるからである。なお、卵白としては、乾燥卵白を水戻しして用いることもできる。
さらに、本発明の温度履歴記録用乳化状組成物には、その乳化状態を安定にするために増粘安定剤を添加することができる。増粘安定剤としては例えば、CMC−Na等の高分子化合物等が挙げられる。食品添加物では、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、結晶セルロース等が例に挙げられるが、中でもキサンタンガムが乳化安定性の点で好ましい。この場合、配合量は、少なすぎると乳化状態を安定に保つことが困難であり、ハンドリング性が低下し、多すぎると乳化状組成物の調製や充填等ハンドリングが困難となるので、好ましくは0.001〜0.1質量%である。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、以下に説明するように製造することができる。
まず、使用する清水と、乳化剤もしくは卵黄、さらに使用する場合はpH調整剤(酸味料、酢酸、醸造酢等)、食塩、pH安定剤、乳化安定剤、糖類もしくは卵白等を混合し、ホバートミキサー等で混合し、均一な混合液を調製する。得られた混合液を攪拌しながら、この混合液に不飽和植物油脂とパーム油を混合した油脂を少量ずつ、乳化されているのを確認しながら添加する。油脂を添加し終わったら油脂が分離しない程度まで攪拌を続け、粗乳化物を得る。この場合、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂(パーム油を除く)と融点25℃以下のパーム油を2/1〜50/1の比率で、その総和が全質量の40〜80%となるよう配合し、乳化することが好ましい。更に、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂とパーム油を3/1〜6/1の比率で、その総和が全質量の60〜70%となるよう配合し、酢酸換算の酸度が0.5〜1質量%、かつ食塩濃度が1.5〜4質量%となるよう調製し、それを乳化することがより好ましい。
次に、得られた粗乳化物を高速ミキサーに移し、高速攪拌させることにより乳化物の粒子形を極小とし、安定な温度履歴記録用乳化状組成物を得る。さらにこれを攪拌機能付き脱気装置に移し、真空状態で攪拌することにより、温度履歴記録用乳化状組成物を脱気することが好ましい。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、常温温度区に保管されている場合には常に油層分離の認められないクリーム状を呈している。これが一度凍結すると解乳化した状態となる。解乳化しても凍結したままであれば視認できるような油脂分離は生じない。次に、これが常温またはチルド温度帯におかれ、解凍もしくは融解すると不可逆的に油層分離が発現し、その分離した油層を視認することが可能となる。完全な油層分離が生じない場合であっても、微小な油層分離が生じればクリームが変色し、視認可能である。このような現象を利用することにより、以下に説明するように、温度履歴記録用乳化状組成物の温度履歴を把握することができる。
常温温度区において、温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できない場合、この温度履歴記録用乳化状組成物が未だ凍結したことがないことを示している。また、同じく常温温度区において、温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できる場合、この温度履歴記録用乳化状組成物が冷凍温度区にかつて保管されて凍結し解乳化し、その後に解凍したということを示している。
また、冷凍温度区において、温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できない場合、この温度履歴記録用乳化状組成物が凍結したままで一度も解凍したことがないということを示している。また、同じく冷凍温度区において、温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できる場合、油層分離は不可逆的に生ずるから、この温度履歴記録用乳化状組成物がかつて冷凍温温度区に保管されて凍結し解乳化し、その後に解凍し、そして再凍結されたということを示している。
なお、本発明の温度履歴記録用乳化状組成物の凍結の際の解乳化速度、解凍の際の油層分離速度については、温度履歴記録用乳化状組成物の使用目的に応じた速度であることが望まれる。例えば、凍結する必要のない常温流通・保存品が凍結してしまったことを記録するためには、極力短時間で凍結して解乳化する必要がある。解乳化に時間がかかりすぎると、常温流通・保存品が凍結変性しているにも拘わらず、温度履歴記録用乳化状組成物が解凍したときに油層分離が生じず、温度履歴が記録されていない状態となり、凍結変性を確認できないことになるからである。
また、冷凍品が解凍された履歴を、実用上適切に記録するためには、適切な温度条件および時間において温度履歴記録用乳化状組成物が解凍(融解)し、油層分離が発現する必要がある。温度履歴記録用乳化状組成物の解凍するまでの時間が長過ぎると、冷凍品がかつて解凍され再凍結された場合、温度履歴記録用乳化状組成物が油層分離を生じず、温度履歴が記録されていない状態となり、解凍を確認できないことになる。逆に、温度履歴記録用乳化状組成物の融解時間が短過ぎると、冷凍品に影響ない極短い時間、必要に迫られ常温やチルド温度区に置かれる過程においても、温度履歴記録用乳化状組成物が油層分離を発現し、全く問題ない冷凍品を誤って、かつて解凍されたものと判定してしまうことになるからである。
従って、本発明品の温度履歴記録用乳化状組成物は、5cm四方の樹脂フィルム(例えば、ナイロン(15μm厚)/ポリエチレン(50μm厚))の袋に実質上ヘッドスペースを含まないようその5gを充填し、密封後−20℃で保管した場合、植物油脂とパーム油の比率が2/1〜50/1の場合、10時間以内に凍結し、解乳化が生じ、また、10℃で5分では融解しないが20分以内には融解し、20℃で3分では融解しないが10分以内には融解する。また植物油脂とパーム油の比率が3/1〜6/1の場合、5〜6時間程度で凍結し、解乳化が生じ、また、10℃で3分では融解しないが10分以内には融解し、20℃で2分では融解しないが5分以内には融解する。また、5℃においては30分、好ましくは1時間置かれても融解しないものである。
以上説明した本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、用途に応じ、内容物を視覚的に確認できる、全部もしくは一部が透明または半透明の樹脂製フィルムの袋やプラスティック容器等の内容物可視性容器に、実質的に空気を含まないよう満量充填し、密封することにより、非凍結、凍結もしくは解凍の温度履歴を記録する温度履歴記録用インジケーターとして好ましく使用できる。このような内容物可視性容器としては、樹脂フィルムからなる平袋であって、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、内容物を視認できるように透明であるものが挙げられる。
温度履歴記録用インジケーターに使用する容器の種類や容量は、用途に応じたものを使用することができる。ただし、容器は、全部もしくは一部が透明または半透明である必要がある。油層分離を視覚的に判別するからである。容器の材質は特に定めないが、冷凍状態に置かれることを考慮し、耐冷凍性を有するものが好ましい。また乳化状組成物が凍結した際破損しない程度の強度を有するものが好ましい。さらに内容物の酸化や水蒸気の蒸散を考慮して、適度なガスバリヤ性を有する材質であることが好ましい。例えば、ナイロン(Ny)/ポリエチレン(PE)やシリカ蒸着のラミネート材等を材料とした樹脂製フィルムが挙げられる。前述の理由でポリエチレンテレフタレート(PET)蒸着ラミネートフィルム(PET/Ny/PE)が好ましい。他の好ましい樹脂フィルムの具体例としては、Ny(通常5〜40μm厚)/PE(ヒートシール層(通常20〜100μm厚))の2層構造の樹脂フィルムや、PET(通常5〜40μm厚)/Ny(通常5〜40μm厚)/PE(通常20〜100μm厚)の3層構造の樹脂フィルムが挙げられる。
温度履歴記録用インジケーターに使用する容器の形態や種類は、特に定めるものではないが、フィルムを張り合わせた袋状容器、可撓性プラスティック容器またはガラスや硬質プラスティック等の成形容器等が挙げられる。また、上記インジケーターの大きさは、特に定めるものではないが、視覚的に判別可能である条件を満たすには、インジケーターの温度履歴記録材としての乳化状組成物の質量は0.3g以上あるのが好ましく、0.5g以上がさらに好ましい。例えば、温度履歴を判別する目的物が宅配される程度、つまり質量30kg以内程度である場合、インジケーターの温度履歴記録材としての乳化状組成物の質量は0.5〜1gあればよく、さらに大きな目的物である場合、乳化状組成物の質量を増加させることができる。また、同程度の質量のインジケーター複数個を、異なった場所に装着することもできる。
図5に、温度履歴記録用インジケーターの別の態様を示す。このインジケーター50は、2枚の透明樹脂フィルムの周囲がシールされ、内容物として温度履歴記録用乳化状組成物51が封入された平袋52と、平袋52を挟むように配置された表面保護部材53と裏面保護部材54とを有しており、表面保護部材53と裏面保護部材54の互いに対向する面の周縁部に配された接着剤(図示せず)により、図6に示すように一体化した構造となっている。ここで、表面保護部材53には、外部から平袋52を観察可能とする開口部55が設けられている。従って、この開口部55から、平袋52に収容された温度履歴記録用乳化状組成物を観察することにより、温度履歴記録用インジケーター50の温度履歴を知ることができる。開口部の形状には特に制限はない。
また、表面保護部材53と裏面保護部材54とは、それぞれケント紙や板紙、プラスチックシートなどから形成することができる。プラスチックシートとして、ヒートシール性プラスチックシートを用いた場合には、接着剤を用いずにヒートシールにより図6に示すような構造とすることもできる。
更に、裏面保護部材54の平袋52側表面に、温度履歴記録用乳化状組成物が解乳化した後の解凍により生じる油層分離の視認性を向上させるような着色や模様を印刷しておくことが好ましい。着色は、温度履歴記録用乳化状組成物と元々の色と明確に区別できる色に着色することが好ましい。例えば、温度履歴記録用乳化状組成物の色が白〜淡黄色である場合には、注意を喚起する意味でも赤に着色することが好ましい。また、市松模様や「不良」等の文字を印刷することもできる。着色部と模様とを組あわせてもよい。また、着色や模様の印刷の領域は、裏面保護部材54の平袋52側表面の全面に施してもよく、あるいは開口部55に対応する領域の少なくとも一部にのみに施してもよい。このように、裏面保護部材54の平袋52側表面に着色や模様が印刷される等、油層分離の視認性の向上が図られている場合、表面保護部材53を省略してもよい。
また、温度履歴記録用インジケーターの更に別の態様としては、表面保護部材53や裏面保護部材54を使用せずに、図5の平袋52に相当する構成において、平袋の片面が内容物を視認できるように透明であり、他面に温度履歴記録用乳化状組成物が解乳化した後の解凍により生じる油層分離の視認性を向上させるような着色及び/又は模様が印刷されているものが挙げられる。この場合には、平袋を構成する樹脂フィルムに直接印刷を施すことになるが、印刷が温度履歴記録用乳化状組成物と直接接しないようにすることが好ましい。例えば、樹脂フィルムとして、ナイロン/ポリエチレンの2層構造の樹脂フィルムを用いた場合、ナイロンのいずれかの面に印刷できるが、印刷の耐擦過性を考慮するとポリエチレン側のナイロン表面に印刷することが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/ポリエチレンの3層構造のフィルムを用いた場合、ナイロンのいずれかの面もしくはポリエチレンテレフタレートのいずれの面にも印刷できるが、ポリエチレンテレフタレートの最外層に印刷する場合には、耐擦過性に優れた印刷を行うことが好ましい。
これらの温度履歴記録用インジケーターにおいては、常温温度区において、温度履歴記録用インジケーターに内封された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できない場合、この温度履歴記録用インジケーターが未だ凍結したことがないという履歴があることを示している。また、同じく常温温度区において、温度履歴記録用インジケーターに内封された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できる場合、この温度履歴記録用インジケーターが冷凍温度区にかつて保管されて凍結し解乳化し、その後に解凍したという履歴があることを示している。
また、冷凍温度区において、温度履歴記録用インジケーターに内封された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できない場合、この温度履歴記録用インジケーターが凍結したままで一度も解凍したことがないという履歴があることを示している。また、同じく冷凍温度区において、温度履歴記録用インジケーターに内封された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が確認できる場合、油層分離は不可逆的に生ずるから、この温度履歴記録用インジケーターがかつて冷凍温温度区に保管されて凍結し解乳化し、その後に解凍し、そして再凍結されたという履歴があることを示している。
上述した効果を有する本発明の温度履歴記録用インジケーターを輸送用伝票に装着することにより、インジケーターの油層分離の有無により、輸送荷物の温度履歴を判別することができる。従って、この態様は、輸送伝票の付された荷物の非凍結、凍結もしくは解凍の履歴を判別する方法として有用である。
輸送用伝票とは、物品を輸送する業者が、送付先や差出人氏名を管理するため、被輸送物品(配送品)に貼付するための伝票であり、従って被輸送物品が送付先に配達される過程において、つまり輸送、保管されている間は被輸送物品に貼付された状態に置かれるものをいう。例えば、郵便局や宅配業者の小荷物配送伝票や荷札を挙げることができる。また、装着されるインジケーターの大きさや形状、種類は特に定めるものではない。しかし、輸送用伝票の性質上、伝票の大きさに適した大きさ、厚さであることが好ましい。汎用される伝票に装着するのであれば、上限4cm四方、または直径であり、厚さ5mm以下であるのが好ましい。さらには上限2cm四方または直径であり、厚さ3mm以下であることが実際使用する上で好ましい。また、視覚容易性を考慮すると下限3mm四方、または直径、厚さ2mm以上であることが好ましい。
なお、本発明の輸送伝票に装着されるインジケーターの材質については、被輸送物品に貼付され、輸送されることを考慮し、途中で破損しない程度の強度が要求される。従って、フィルムを張り合わせた袋状容器、可撓性プラスティック容器または硬質プラスティック等の成形容器であって、耐冷凍性および取扱上破損しない程度の強度を有するものが好ましい。一般的なガラス等は強度の点で使用場面が限定される。
本発明の温度履歴記録用インジケーターは、前述したような輸送伝票に装着する以外にも、温度管理体として使用することができる。温度管理体とは、温度管理条件や取扱注意等の温度管理情報を付したラベル、タグ等であり、物品に取付け、物品と共に流通するものであり、例えば、「冷凍」や「冷凍温度−20℃」などの温度管理情報が表面に付されたものである。装着されるインジケーターの大きさや形状については、前述の輸送用伝票の場合と同様である。従って、本発明の温度履歴記録用インジケーターを装着した温度管理体を管理対象物に付せば、管理対象物の温度履歴を管理することができる。
以上説明した温度履歴記録用インジケーターを装着した輸送用伝票又は温度管理体は、、物品が凍結した履歴があるか否か、凍結したままであるか、解凍した履歴があるか否かを判別する、物品の物流方法に好ましく適用できる。即ち、そのような輸送用伝票又は温度管理体を物品に装着した後、物品を物流させ、所定の物流段階で、輸送用伝票又は温度管理体に装着された温度履歴記録用インジケーターに封入された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が生じているか否かを判別すれば、物品が凍結した履歴があるか否か、凍結したままであるか、解凍した履歴があるか否かを判別することができる。
次に、本発明を実施例及び試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、温度履歴記録用乳化状組成物の粘度についてはB型粘度計((株)東京計器社)を用いて、No.6のローター、2rpmの条件にて測定した。
実施例1
表1の配合にて温度履歴記録用乳化状組成物を以下に説明するように調製した。
Figure 0004816932
まず、清水をミキサー(キッチンエイド社製、ホバートミキサー)に入れ、攪拌しながら菜種油とパーム油以外の原料を順次投入し、均一に溶解するまで高速攪拌した(攪拌時間:2分間)。完全に溶解したら尚攪拌を続けながら、菜種油とパーム油をゆっくり投入し、クリーム状の粗乳化物を調製した。このときパーム油の温度は融点以上とし、液状にしておいた。
次に、この粗乳化物を高速ミキサー(三洋電機社製、家庭用ミキサー)に移し、攪拌することで精乳化を行った(攪拌時間:1分間)。得られた乳化物を攪拌機能付き脱気釜に入れ、バキュームをとりながら攪拌を行った。0.09MPa程度の真空度が得られたら徐々にバキュームを解除し、常圧に戻った段階で脱気釜から乳化物を取り出し、本発明の温度履歴記録用乳化状組成物を得た。温度履歴記録用乳化状組成物は、薄いタマゴ色を呈し、滑らかなクリーム状の乳化物であり、分析した結果、pH4.0、酢酸換算の酸度0.7質量%、食塩濃度2質量%、粘度220Pa・sであった。
実施例2
表2配合にて温度履歴記録用乳化状組成物を、実施例1と同様の操作にて調製した。得られた温度履歴記録用乳化状組成物は淡黄色を呈し、滑らかなクリーム状の乳化物であり、分析した結果、pH3.8、酢酸換算の酸度0.8質量%、食塩濃度2質量%、粘度180Pa・sであった。
Figure 0004816932
実施例3
表3の配合にて温度履歴記録用乳化状組成物を、実施例1と同様の操作にて調製した。得られた温度履歴記録用乳化状組成物は淡黄色を呈し、滑らかなクリーム状の乳化物であり、分析した結果、pH4.1、酢酸換算の酸度0.7質量%、食塩濃度3質量%、粘度280Pa・sであった。












Figure 0004816932
実施例4
表4の配合にて温度履歴記録用乳化状組成物を、実施例1と同様の操作にて調製した。ただし乳化剤の合計HLBは11となるよう調整した。得られた温度履歴記録用乳化状組成物は淡黄色を呈し、滑らかなクリーム状の乳化物であり、分析した結果、pH3.6、食塩濃度3質量%、粘度250Pa・sであった。
Figure 0004816932
実施例5
表5の配合にて温度履歴記録用乳化状組成物を、実施例1と同様の操作にて調製した。得られた温度履歴記録用乳化状組成物は白色を呈し、滑らかなクリーム状の乳化物であり、分析した結果、pH3.6、食塩濃度3質量%、粘度100Pa・sであった。











Figure 0004816932
試験例1
実施例1で得られた温度履歴記録用乳化状組成物5gを、ナイロン(15μm厚)・ポリエチレン(50μm厚)のラミネートフィルム製の袋(5cm四方)に充填し、空気を含まないよう密封シールした。これを−20℃で冷凍保管したところ、4時間で凍結状態となった。その後、これを20℃に保存した結果、5分で解凍され、油層分離が発現し、視覚的に明瞭に確認できた。
試験例2
実施例1の菜種油とパーム油の配合量を表6のように変更し、試験例1に準じ試験を行った。凍結に要した時間を表6に示す。
Figure 0004816932
表6より、実施例1の配合において、菜種油とパーム油の配合比率(菜種油/パーム油)を変更した結果、いずれの配合においても温度履歴記録材として許容される10時間以内で凍結状態となることが確認できた。中でも配合比率2〜50では6時間以内に、さらに配合比率3〜6においては4時間以内で凍結することが確認できた。
実施例6
2cm四方のシートの中心部分を直径10mm、深さ5mmの円柱状の窪みを有するよう成形された透明樹脂製シート(PET製)に、実施例1で得た温度履歴記録材としての酸性乳化状組成物を約0.4g充填し、アルミ製シートにて熱シールを行い、密封することにより温度履歴記録用インジケーターを得た。
得られた温度履歴記録用インジケーターを紙箱入り冷凍食品の箱表面に貼付し、この冷凍食品を−20℃で5時間保存後、20℃室温下に60分保管し、再度−20℃で10時間保存した。冷凍食品は凍結状態であり、外観上は不変であったが、インジケーターに封入された温度履歴記録材としての乳化状組成物は油層分離しており、一度解凍されたことが視覚的に判別できた。
実施例7
2cm四方のPET蒸着ラミネートフィルムシートを2枚重ねて3方にシールを施した透明樹脂製袋に、実施例1で得た温度履歴記録用乳化状組成物を約1g充填し、ヘッドスペースを極力無くした状態で密封シールすることにより温度履歴記録用インジケーターを得た。
得られた温度履歴記録用インジケーターを脂肪乳剤の外箱表面に貼付し、この脂肪乳剤を−30℃で10時間保存し凍結させ、25℃の室温下で24時間解凍した。外箱に貼付されたインジケーターを観察したところ、温度履歴記録材としての乳化状組成物は顕著な油層分離は認められなかったものの色調が変化しており、一度凍結し、解凍されたことが視覚的に判別できた。なお、脂肪乳剤を目視観察したところ、外観上正常品と区別がつかないが、顕微鏡で観察したところ、そのミセルの粒子径は凍結変性により拡大し、通常0.3μm以下のところ、数μmのものが多数認められた。この状態は人体に注射すると微細な血管を閉塞する危険性を有し、脂肪乳剤としては不適格なものであった。
実施例8
実施例6および7にて得られた温度履歴記録用インジケーターを、宅配便に用いる輸送用伝票に装着し、常温輸送、チルド輸送、冷凍輸送のそれぞれの輸送用荷物の天面もしくは側面に貼付に貼り付けたところ、輸送用荷物が送り先に届けられる過程においてインジケーターが荷物に添付された状態にあり、輸送時、保管時いずれの過程において温度履歴を確認することができた。従って、温度履歴記録用インジケーター装着輸送用伝票は、常温輸送、チルド輸送、冷凍輸送いずれの温度区においても破損することなく、インジケーターとしての機能を果たすものであった。
実施例9
実施例1で得られた温度履歴記録用乳化状組成物5gを、ナイロン(15μm厚)・ポリエチレン(50μm厚)のラミネートフィルム製の袋(5cm四方)に充填し、空気を含まないよう密封シールした。この袋の片面に、赤色に着色した5cm四方の厚紙を接着剤で貼り付け、温度履歴記録用インジケーターを得た。これを−20℃で冷凍保管したところ、4時間で凍結状態となった。その後、これを20℃に保存した結果、5分で解凍され、油層分離が発現し、厚紙の赤色を視認できた。
実施例10
実施例1で得られた温度履歴記録用乳化状組成物5gを、一方の片面が透明で且つ他方の片面に白赤の千鳥格子模様が印刷されたナイロン(15μm厚)・ポリエチレン(50μm厚)のラミネートフィルム製の袋(5cm四方)に充填し、空気を含まないよう密封シールし、温度履歴記録用インジケーターを得た。これを−20℃で冷凍保管したところ、4時間で凍結状態となった。その後、これを20℃に保存した結果、5分で解凍され、油層分離が発現し、ナイロンに印刷された赤白の千鳥格子模様を一方の片面側から視認できた。
本発明の温度履歴記録用乳化状組成物は、凍結の際に解乳化を生じ、解乳化後の解凍により視認可能な油層分離が生ずる。従って、温度履歴記録用乳化状組成物を内容物可視性容器に封入することにより、非凍結、凍結もしくは解凍の履歴を記録する温度履歴記録用インジケーターとして使用することができる。非凍結、凍結もしくは解凍という温度履歴を管理する必要のある物品の物流に好ましく適用できる。
温度履歴記録用乳化状組成物の凍結前の状態を示す図である。 図1の温度履歴記録用乳化状組成物を−20℃で7時間凍結した状態を示す図である。 図2の温度履歴記録用乳化状組成物を解凍しはじめた状態を示す図である。 図3の温度履歴記録用乳化状組成物を完全に解凍(融解)させた状態を示す図である。 本発明の温度履歴記録用インジケーターの一例を示す図である。 本発明の温度履歴記録用インジケーターの一例を示す図である。
符号の説明
50 温度履歴記録用インジケーター
51 温度履歴記録用乳化状組成物
52 平袋
53 表面保護部材
54 裏面保護部材
55 開口部

Claims (17)

  1. 凍結の際に解乳化を生じ、解乳化後の解凍により視認可能な油層分離を生ずる温度履歴記録用乳化状組成物であって、不飽和脂肪酸を含有する植物油脂(パーム油を除く)及び融点25℃以下のパーム油を含有する、温度履歴記録用乳化状組成物。
  2. 前記植物油脂及びパーム油を合計で40〜80質量%含有し、且つ前記植物油脂とパーム油との質量比率が2/1〜50/1である請求項1記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  3. pHが5以下である請求項1又は2記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  4. 酢酸換算の酸度が0.5〜1質量%であり且つ食塩濃度が1.5〜4質量%である請求項3記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  5. 粘度が70〜400Pa・sである請求項1〜4のいずれかに記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  6. 卵黄及び卵白をそれぞれ5質量%を超えないように含有している請求項1〜4のいずれかに記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  7. キサンタンガムを含有している請求項1〜6のいずれかに記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  8. 5cm四方の透明樹脂フィルムの袋に実質的にヘッドスペースが生じないように5g充填して密封した場合に、−20℃で10時間保管という条件の凍結の際に解乳化を生じ、解乳化後の10℃以上で30分保管という条件の解凍により視認可能な油層分離が生ずる請求項1〜7のいずれかに記載の温度履歴記録用乳化状組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の温度履歴記録用乳化状組成物が、内容物可視性容器に封入されてなる温度履歴記録用インジケーター。
  10. 該内容物可視性容器が、樹脂フィルムからなる平袋であって、該樹脂フィルムの少なくとも一部が、内容物を視認できるように透明である請求項9記載の温度履歴記録用インジケーター。
  11. 平袋の両面の樹脂フィルムが透明であり、更に、該平袋を挟むように配置された表保護部材と裏面保護部材とを有し、表面保護部材には、外部から平袋を観察可能とする開口部が設けられている請求項10記載の温度履歴記録用インジケーター。
  12. 裏面保護部材の平袋側表面に、温度履歴記録用乳化状組成物が解乳化した後の解凍により生じる油層分離の視認性を向上させるような着色及び/又は模様が印刷されている請求項1記載の温度履歴記録用インジケーター。
  13. 該内容物可視性容器が樹脂フィルムからなる平袋であって、該平袋の片面が内容物を視認できるように透明であり、他面に温度履歴記録用乳化状組成物が解乳化した後の解凍により生じる油層分離の視認性を向上させるような着色及び/又は模様が印刷されている請求項9記載の温度履歴記録用インジケーター。
  14. 請求項10〜13のいずれかに記載の温度履歴記録用インジケーターが装着された輸送用伝票。
  15. 請求項10〜13のいずれかに記載の温度履歴記録用インジケーターが装着された温度管理体。
  16. 請求項10〜13のいずれかに記載の温度履歴記録用インジケーターを輸送用伝票に装着し、該インジケーターの油層分離の有無により、該輸送伝票の付された被輸送物品の非凍結、凍結もしくは解凍の履歴を判別する方法。
  17. 請求項14記載の輸送用伝票又は請求項15の温度管理体を物品に装着した後、該物品を物流させ、所定の物流段階で、輸送用伝票又は温度管理体に装着された温度履歴記録用インジケーターに封入された温度履歴記録用乳化状組成物に油層分離が生じているか否かを判別する、物品の物流方法。
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