JP4514886B2 - 紙幣束投出装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は紙幣束投出装置に係り、特に、紙幣束を立位姿勢で整列収納し、その収納部から紙幣束を1束ずつ投出する紙幣束投出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の概略構成を示す斜視図、図7は、従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の縦断側面図、図8は、従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の縦断正面図である。
【0003】
従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置は、紙幣束を投出するのみならず、硬貨を所定枚数ずつ包装した棒金をも投出することができる貨幣投出装置であるが、紙幣束投出装置の従来の構成を説明するために適当であるので、従来例として採用した。即ち、従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置は、機体1内に、紙幣束と棒金とを収納し、紙幣束及び棒金の払出しをすることができる。
【0004】
機体1は直方体状のものであり、内部に紙幣束収納部2と、これに隣接して棒金収納部3とが常時は前傾状態となるように配置され、これら収納部の前部側に機体1内を昇降するエレベータ4が配設されている。このエレベータ4の最上昇位置に対応する機体1の上部前面1Aと上面1Bとが交差する個所に貨幣払出口5が開口されており、この払出口5は前面シャッタ6及び上面シャッタ7により開閉自在とされている。また、機体1の前面は、扉1Cにより開閉自在とされ、機体1内への紙幣束及び包装貨幣の収納、その他内部の点検保守等が機体1の前面側から行うことができるようになっている。
【0005】
紙幣束収納部2は、図示の例では3種類の紙幣束、即ち、万円券、五千円券、千円券の紙幣束用として、3個の収納カセット8がセットされるようになっており、棒金収納部3は、5種類の硬貨、即ち、500円、100円、50円、10円、5円の棒金用として、各2段ずつ計10個の収納カセット9がそれぞれセットされるようになっている。
【0006】
図7には、従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の紙幣束収納カセット側の縦断側面が示されており、各紙幣束収納カセット8は、各支持部材10上にそれぞれ支持されるようになっている。各支持部材10の前後方向略中央部は、機体1に固設された軸支部材12に軸支された軸13によりそれぞれ枢支され、この軸13より前方及び後方で各支持部材10が連結板14,15により軸13の上下間隔と等しい間隔をおいて遊動的に連結されている。そして、前部側の連結板14には、機体1との間に引張りバネ16が掛けられて上方へ付勢されており、後部側の連結板15には、上下のダンパ17,18が機体1との間に連結されている。各支持部材10は、収納カセット8,9の挿脱時にこれをガイドするガイド部10Bを備えている。
【0007】
図6におけるエレベータ4は、図7及び図8に示すように、上面と前面側上半部とが開放された箱形状のエレベータ本体20と、このエレベータ本体20の前面にガイド部21,21によって上下動自在に取付けられて前面側上半部を閉鎖し得る大きさを有する可動の前面板23とから構成されており、エレベータ本体20の一側部の軸受部24が、機体1内に設立されたガイドロッド25に嵌合して昇降自在に片持ち支持され、他側部は機体1に沿って設けられた断面コの字状を有するガイドレール26に嵌合するガイドローラ27によって昇降が円滑になされるように構成されている。エレベータ4の左右両側には、ループ状に配設されるワイヤロープ28,28の両端が固定されている。このワイヤロープ28,28は、機体1内に設置されたエレベータ昇降用モータMにより回転するプーリ29に左右からそれぞれ巻き掛けられ、中間プーリ30,31,32を経由して機体1内上方のプーリ33、下方のプーリ34(一方側のみ図示)に掛け回され、エレベータ4に上下から到達してこれに固定されている。従って、モータMの回転により左右のワイヤロープ28を均等に回動してエレベータ4を昇降させることができる。そして、エレベータ4の後部上方には、エレベータ4内に向けて下り傾斜する案内板35が設けられており、この案内板35の下部位置に紙幣束収納カセット8の前端から紙幣束を1束ずつ繰り出してエレベータ4内に取り込む紙幣束取込機構36が設けられている。
【0008】
しかし、上記従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置には、紙幣束を投出する際に、投出しようとする紙幣束が正しい金種の紙幣束であるかどうかを、紙幣束投出前に予め確認するための手段が備えられていない。従って、同一金種ごとに紙幣束が収納される紙幣束収納カセット8に誤って異なる金種の紙幣束が収納された場合、誤った金種の紙幣束がそのまま投出されてしまうという問題点があった。
【0009】
このような問題点を考慮して、紙幣束を投出する際に、投出しようとする紙幣束が正しい金種の紙幣束であるかどうかを、紙幣束投出前に予め確認するための手段が備えられている従来の紙幣束投出装置について、以下に説明する。
【0010】
従来の第2の構成に係る紙幣束投出装置を含む紙幣入出金処理装置の構成は、特開平11−238162号公報に記載されている。この紙幣入出金処理装置は、例えば銀行等の金融機関の営業店において現金管理システムとして使用されるものである。
【0011】
この紙幣入出金処理装置における施封・小束支払機103は、上部に小束支払用の出金扉124をもち、この扉が開くことにより出金された小束の取り出しが可能となっている。出金扉124の近傍には、紙幣入出金部の占有ランプと同様の占有ランプ125が配されている。出金扉124の上部には、施封帯交換用の帯セット扉126があり、施封帯の交換はこの扉116を開けて行われる。出金扉124の下方には、損金庫取り出し扉127が配され、後述する損金庫を取り出し可能となっている。
図9は、上記特開平11−238162号公報に記載されている紙幣入出金処理装置に含まれる従来の第2の構成に係る紙幣束投出装置としての機能を有する施封・小束支払機の内部構成を示した縦断側面図である。
【0012】
この施封・小束支払機は、小束の入金も可能であるが、ここでは小束の入金についての説明は省略し、小束の出金について説明する。
【0013】
小束の出金は、まず出金したい金庫183の搬送シャッタ機構182a,182bを開き、小束プッシャ機構180を金庫183内へ押し込む。このとき金庫183内の小束は小束プッシャ機構180により上方へ押し込まれ、ストッパ機構184が回動可能となる。
【0014】
回動可能となったストッパ機構184は、図示しない駆動機構により金庫183内へ回動して固定される。その後、小束プッシャ機構180を上方へ引き上げると金庫183内の小束は金庫バックアップ機構185によって押し上げられ、小束プッシャ機構180の上端位置まで上昇する。
【0015】
上端まで移動した小束は、ピッカ機構181を駆動することにより、最上部に位置する小束のみがピッカ機構181に引っかけられて小束搬送路179内に導入される。導入された小束は、搬送路179上のドライブローラに駆動されて搬送路内を移動することになる。
【0016】
小束搬送路179に移された小束は、搬送路内を移動して搬送路出口からエレベータ187内に落下する。エレベータ187内に出金すべき小束がすべて入るとエレベータ187は上昇を開始し、出金位置まで移動する。エレベータ187が出金位置に停止すると小束出金扉124が開き、押し出し機構189が作動して小束が取り出せるようになる。エレベータ187内から小束が取り出されると、図示しないセンサにより小束無しが検知され、出金扉124を閉めて取引が終了するようになっている。
【0017】
次に、小束の金種判別機能について説明する。小束搬送路179の出口付近には、反射型の金種判別センサ133が配されていて、出金及びその他業務での束放出時に小束搬送路179の出口を通過する小束の表面の複数箇所を金種判別センサ133によって検知する。その反射パターンを鑑別することにより出金及び放出束の金種を判別することができる。
【0018】
図10は、従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置の概略構成を示す斜視図である。この従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置の詳細は、特開平1−131983号公報に記載されている。従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置も、紙幣束のみならず棒金をも投出することができる貨幣束処理装置であるが、紙幣束を投出する際に、投出しようとする紙幣束が正しい金種の紙幣束であるかどうかを、紙幣束投出前に予め確認するための手段が備えられている紙幣束投出装置の従来の構成を説明するために適当であるので、従来例として採用した。
【0019】
図10に示すように、従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置においては、機体201内部の上下方向に配置された複数の収納箱202に紙幣束203がそれぞれ収納され、破線で示す複数のカセットケース204に包装硬貨205がそれぞれ収納されている。
【0020】
収納箱202及びカセットケース204の前方には、2本のエレベータガイド軸206が立設され、これらのエレベータガイド軸206に沿ってエレベータ207が上下動するようになっている。上昇駆動の際には、エレベータ207は、カセットケース204の1段に相当する距離ごとに移動するようになっている。
【0021】
エレベータ207は、紙幣収納部207aと硬貨収納部207bとに二分され、所望の金種の収納箱202やカセットケース204の前に停止することにより、これらの収納箱202やカセットケース204から放出される紙幣束203や包装硬貨205を受け取る。そして、エレベータ207に受け取られた紙幣束203又は包装硬貨205は、機体201最上部に設けられた取り出し口(図示せず)から取り出される。
【0022】
図11は、図10に示した従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置における収納箱202の前面部の構成を示す斜視図である。
【0023】
収納箱202に収納された最前列紙幣束203は、ガイド兼バーコードリーダ支持部221により抑止されており、放出ブロック222により下方から上方に押し上げられて収納箱202からエレベータ207に放出される。
【0024】
紙幣束203の帯封には、その紙幣束203の金種を示すバーコード203aが記載されている。バーコード203aは、ガイド兼バーコードリーダ支持部221の上面中央部に配置されたバーコードリーダ223により読み取られる。これにより、収納箱202からエレベータ207に放出される紙幣束203の金種を識別することができる。
【0025】
図12は、図10に示した従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置の変形例におけるエレベータ207の構成を示す斜視図である。
【0026】
図11に示した例においては、バーコードリーダ223がガイド兼バーコードリーダ支持部221の上面中央部に設けられていたが、図12に示した変形例においては、エレベータ207内部にバーコードリーダ251a,251bが設けられている。具体的には、エレベータ207の紙幣収納部207aに紙幣束用バーコードリーダ251aが設けられており、硬貨収納部207bに硬貨用バーコードリーダ251bが設けられている。そして、紙幣束203,包装硬貨205がエレベータ207の紙幣収納部207a,硬貨収納部207bに収納される際に、バーコードリーダ251a,251bにより紙幣束203,包装硬貨205のバーコード203a,205aを読み取ることにより、紙幣束203,包装硬貨205の金種を識別することができる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の第2及び第3の構成に係る紙幣束投出装置には、それぞれ以下のような問題点があった。
【0028】
先ず、従来の第2の構成に係る紙幣束投出装置においては、出金及び放出束の金種を判別するための金種判別センサ133が小束搬送路179の出口付近に配設されているので、紙幣束が小束金庫183から繰り出されて小束搬送路179の出口付近まで搬送されてきてからでなければ、金種判別センサ133による紙幣束の金種の判別を行うことができない。
【0029】
従って、従来の第2の構成に係る紙幣束投出装置においては、出金しようとした紙幣束の金種が誤りであると判別された場合、その紙幣束をもとの小束金庫183に戻すと、その後の紙幣投出処理に支障が生ずるため、誤った金種と判別された紙幣束を収納するための損券金庫190を設けなければならない。その結果、損券金庫190の分だけ装置の容積が大きくなり、装置の製造コストも増加するという問題点があった。
【0030】
損券金庫190を設けずに、金種が誤りであると判別された紙幣束を、判別された金種に対応した小束金庫183に戻すという処理も考えられる。しかし、金融機関等には高度の信用が要求されるため、このような場合は、金種が誤りであると判別された紙幣束を人間の目で確認することが望ましく、装置の自動処理により小束金庫183に戻すという処理は望ましくない。
【0031】
従来の第2の構成に係る紙幣束投出装置において、以上のような各問題点を回避するため、紙幣束を小束金庫183から繰り出す前に、繰り出そうとする紙幣束の金種を予め判別しようとすると、複数の小束金庫183と同数の金種判別センサ133を各小束金庫183の出入口近傍に配設する必要がある。従って、やはり装置が高価になってしまうという問題が発生することになる。
【0032】
一方、従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置においては、紙幣束の金種を識別するために、紙幣束の帯封にその紙幣の金種を示すバーコードを印刷しておくことが必要である。従って、バーコード印刷装置を紙幣束投出装置の内部又は外部に設ける必要があるので、そのバーコード印刷装置の設置費用がかかり、さらに、印刷用インクの補充や印字ヘッドの清掃等のメンテナンスが必要であることから、印刷装置の保守点検のための経費も負担しなければならないという問題点があった。
【0033】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、紙幣束収納カセットから紙幣束を繰り出す前に紙幣束の金種を識別することが可能な構成の紙幣束投出装置を安価に提供することである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る紙幣束投出装置によれば、複数の紙幣束を金種ごとに、最前列紙幣束の中央部を露出させるように、略前後方向に収納する複数の金種別紙幣束収納カセットが略上下方向に配置された紙幣束収納部と、投出しようとする紙幣束の金種及び束数の指定を設定する投出指定設定手段と、上記各金種別紙幣束収納カセットの前面側に対向して、上記各金種別紙幣束収納カセットの高さに移動し、紙幣束を取り込む紙幣束収納部を有するエレベータと、上記エレベータに配設され、上記エレベータが位置する高さの上記金種別紙幣束収納カセットの上記最前列紙幣束中央部を撮像する撮像カメラと、上記撮像カメラが撮像した上記最前列紙幣束中央部のすかし部分の有無、並びに、すかし部分の位置及び形状に基づき、投出を指定されたいずれかの紙幣束の金種と、最前列紙幣束の金種とが一致するかどうかを識別する金種識別手段と、上記エレベータに配設され、上記金種識別手段が金種の一致を識別した場合のみ、上記エレベータが位置する高さの上記金種別紙幣束収納カセットの上記最前列紙幣束を1束だけ繰り出して上記エレベータの上記紙幣束収納部に取り込む紙幣束取込機構と、上記エレベータの収納部に取り込まれた紙幣束を投出する紙幣束投出口とを備えたことを特徴とし、この構成により、投出を指定されたいずれかの紙幣束の金種と、紙幣束収納カセットの最前列紙幣束の金種とが一致するかどうかを、紙幣束収納カセットから紙幣束を繰り出す前に確認できるので、信頼性の高い紙幣束投出装置を安価に提供することができる。
【0035】
上記金種識別手段により識別される上記最前列紙幣束中央部の図柄は、すかし部分の有無、並びに、すかし部分の位置及び形状であるものとすると、全金種の紙幣を識別することができる。
【0036】
上記金種識別手段が金種の不一致を識別した場合に、紙幣束収納エラーを報知する収納エラー報知手段をさらに備えたものとすると、装置の信頼性の高さを確保することができる。一例として、上記収納エラー報知手段は、紙幣束収納エラーを視覚的に表示する収納エラー表示手段であるものとするとよい。
【0037】
上記撮像カメラは、上記各金種別紙幣束収納カセットの前面側に対向する上記エレベータの対向面に配設されたものとするとよい。また、上記撮像カメラは、上記最前列紙幣束中央部を照射する照明手段が併設されたCCDカメラ、又は、赤外線カメラであるものとするとよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る紙幣束投出装置の実施の一形態について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図1は、本発明に係る紙幣束投出装置の構成を示した説明図である。本発明に係る紙幣束投出装置は、前述した従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置に改良を加えたものである。従って、発明に関連する部分以外の部分についての詳細な説明は省略する。
【0040】
本発明に係る紙幣束投出装置の機体1は、図1(a)に示すように、通常は直方体状のものであり、内部に複数の紙幣束収納カセット8からなる紙幣束収納部2が常時は前傾状態となるように配置され、これら収納部の前部側に機体1内を昇降するエレベータ4が配設されている。各収納カセット8の前面側の最前列紙幣束に対向するエレベータ4の対向面部には、収納カセット8の前端側から紙幣束を1束ずつ繰り出してエレベータ4内に取り込む紙幣束取込機構36が設けられている。このエレベータ4の最上昇位置に対応する機体1の上面手前側に貨幣払出口5が開口されており、この払出口5はシャッタにより開閉自在とされている。貨幣払出口5の後方側には、各種操作の内容及びアイコン等を表示し、アイコン上に接触することにより各種操作コマンドを入力することが可能な表示操作パネル80が設けられている。また、機体1の前面は、扉により開閉自在とされ、機体1内への紙幣束の装填、その他内部の点検保守等が機体1の前面側から行うことができるようになっている。
【0041】
紙幣束収納部2は、図示の例では3種類の紙幣束、即ち、万円券、五千円券、千円券の紙幣束用として、3個の収納カセット8がセットされるようになっている。必要に応じて、二千円券用の収納カセットを増設してもよい。以下の説明では、万円券、五千円券、二千円券、千円券の紙幣束用の4個の収納カセットがセットされているものとする。
【0042】
尚、従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置と同様に、棒金収納部を設けてもよい。
【0043】
本発明に係る紙幣束投出装置の最大の特徴点は、図1(a)及び図1(b)に示すように、各収納カセット8の前面側の最前列紙幣束に対向するエレベータ4の対向面部に、最前列紙幣束中央部を撮像することにより最前列紙幣束の金種を識別する金種識別用撮像カメラ99を設けた点にある。
【0044】
上述のように、各収納カセット8の前面側の最前列紙幣束に対向するエレベータ4の対向面部には、紙幣束取込機構36が設けられている。しかし、紙幣束取込機構36は、エレベータ4の対向面部の左右両端部近傍に設けられた2本のアームを主要部として構成されているものであるので、金種識別用撮像カメラ99は、紙幣束取込機構36の2本のアームの間の中央部領域に配設することができる。
【0045】
各収納カセット8の前面側の構成は、図1(c)に示すように、最前列紙幣束(例えば千円券)1000の前面、少なくとも後述の撮像範囲Pが露出された状態となるようにする。紙幣束の帯封1001は、通常、紙幣の中央部より左右いずれかにずれた位置に取り付けられるので、後述するように、金種識別用撮像カメラ99により紙幣中央部を撮像し、紙幣中央部の図柄を分析することにより、その紙幣の金種を識別することができる。
【0046】
金種識別用撮像カメラ99としては、例えばCCDカメラを用いる。暗室状態でも紙幣束前面の撮像を可能とするため、金種識別用撮像カメラ99には、紙幣束前面を照射する照明手段を併設するとよい。あるいは、照明手段を併設する代わりに、金種識別用撮像カメラ99として赤外線カメラを用いてもよい。
【0047】
図2は、本発明に係る紙幣束投出装置の概略構成を示したブロック図である。
【0048】
本発明に係る紙幣束投出装置は、紙幣束収納部2と、エレベータ機構4と、最前列紙幣束1000の表面を撮像する撮像手段(撮像カメラ)99と、撮像カメラ99により撮像された紙幣中央部の図柄を分析することにより、その紙幣の金種を識別する識別手段と、紙幣束収納部2の収納カセットの最前列紙幣束を繰り出してエレベータ内に取り込む紙幣束取込機構36と、装置全体の制御を行う本体制御部97とから構成されている。
【0049】
次に、本発明に係る紙幣束投出装置が、金種識別用撮像カメラ99により撮像された紙幣中央部の図柄を分析することにより、その紙幣の金種を識別する原理について説明する。
【0050】
図3は、二千円券、万円券、千円券、五千円券の撮像範囲及びすかし部分のレイアウトを示した平面図である。
【0051】
本発明に係る紙幣束投出装置の金種識別用撮像カメラ99は、各紙幣の表面又は裏面の中央部の撮像範囲Pを撮像する。二千円券、万円券、千円券、五千円券は、撮像範囲Pにおけるすかし部分の有無、並びに、すかし部分の位置及び形状によって識別することができる。
【0052】
二千円券2000のすかし部分2000tは、図3(a)に示されるように、紙幣中央部より左又は右にずれた位置に配置されている。従って、二千円券2000のすかし部分2000tは、撮像範囲Pの左側領域又は右側領域に含まれることになる。
【0053】
万円券10000のすかし部分10000tは、図3(b)に示されるように、紙幣中央部に配置され、撮像範囲Pの中央領域に含まれることになる。また、万円券10000のすかし部分10000tの形状はほぼ円形であり、縦/横比が約1になる。
【0054】
千円券1000のすかし部分1000tは、図3(c)に示されるように、紙幣中央部に配置され、撮像範囲Pの中央領域に含まれることになる。また、千円券1000のすかし部分1000tの形状は楕円形であり、縦/横比が1より大きくなる。
【0055】
五千円券5000のすかし部分5000tは、図3(d)に示されるように、紙幣左端部又は右端部に配置されている。従って、五千円券5000のすかし部分5000tは、撮像範囲Pにはほとんど含まれない。
【0056】
以上のような各金種の紙幣におけるすかし部分の位置及び形状から、二千円券及び五千円券は、すかし部分の位置のみで他の金種の紙幣と区別して識別することができる。万円券及び千円券については、すかし部分の位置のみで区別することは困難であるが、すかし部分の円形又は楕円形の縦/横比を計測して算出することにより、万円券と千円券とを区別して識別することができる。
【0057】
図4は、本発明に係る紙幣束投出装置における紙幣束投出動作の手順を示したフローチャートである。
【0058】
図4を参照して、本発明に係る紙幣束投出装置における紙幣束投出動作の手順について説明する。
【0059】
最初に、投出する紙幣束の金種及び束数の指定を設定する(ステップS1)。この設定は、機体1に設けられた表示操作パネル80を操作することにより行う。
【0060】
設定の終了後、指定された金種の紙幣束が収納されている収納カセット8の前面にエレベータ4を移動させる(ステップS2)。
【0061】
エレベータ4の移動後、指定された金種の紙幣束が収納されている収納カセット8の最前列紙幣束の前面を撮像する(ステップS3)。
【0062】
紙幣束前面の撮像後、最前列紙幣束の金種を識別する(ステップS4)。金種の識別は、上記原理に基づき行うが、詳細な手順については後述する。
【0063】
最前列紙幣束の金種の識別後、識別された金種が指定された金種と一致しているかどうかを判断する(ステップS5)。
【0064】
金種が一致しない場合は、収納カセット8に誤った金種の紙幣束が収納されているということであり、その紙幣束を人手によって除去しない限り、指定された金種の紙幣束をエレベータ4内に取り込むことができないということである。従って、この場合は、例えば表示操作パネル80に、「収納エラー」を表示するとともに、「係員をお呼び下さい」という案内を表示する(ステップS6)。
【0065】
一方、金種が一致した場合は、紙幣束取込機構36により収納カセット8の前端側から最前列紙幣束を1束だけ繰り出してエレベータ4内に取り込む(ステップS7)。
【0066】
エレベータ4がその前面に現在位置している収納カセット8の前端側から最前列紙幣束を1束だけ繰り出してエレベータ4内に取り込んだ後、同一金種の紙幣束をさらに繰り出して取り込む必要があるかどうか、即ち、当該収納カセット8からさらに紙幣束を繰り出して取り込む必要があるかどうかを、最初に指定された紙幣束の金種及び束数と、既に繰り出して取り込んだ紙幣束の金種及び束数とに基づき判断する(ステップS8)。
【0067】
判断の結果、同一金種の紙幣束をさらに繰り出して取り込む必要がある場合、即ち、当該収納カセット8からさらに紙幣束を繰り出して取り込む必要がある場合は、上記ステップS3からステップS8をさらに繰り返す。
【0068】
一方、判断の結果、同一金種の紙幣束をさらに繰り出して取り込む必要がない場合、即ち、当該収納カセット8からさらに紙幣束を繰り出して取り込む必要がない場合は、全金種の紙幣束について全束数の繰り出し及び取り込みが終了しているかどうか、即ち、他の金種の紙幣束を他の収納カセット8から繰り出して取り込む必要があるかどうかを、最初に指定された紙幣束の金種及び束数と、既に繰り出して取り込んだ紙幣束の金種及び束数とに基づき判断する(ステップS9)。
【0069】
判断の結果、他の金種の紙幣束を他の収納カセット8から繰り出して取り込む必要がある場合は、上記ステップS2からステップS9をさらに繰り返す。
【0070】
一方、判断の結果、全金種の紙幣束について全束数の繰り出し及び取り込みが終了している場合、即ち、他の金種の紙幣束を他の収納カセット8から繰り出して取り込む必要がない場合は、エレベータ4を払い出し口5へ移動させ、シャッタを開放して紙幣束を投出し(ステップS10)、一連の紙幣束投出動作を終了する。
【0071】
最後に、金種の識別の手順について説明する。金種の識別は、前述した原理に従い、各金種紙幣のすかし部分の位置及び形状に基づいて行う。
図5は、金種の識別の手順を示したフローチャートである。
【0072】
先ず、識別対象紙幣の撮像範囲Pにすかし部分が含まれているかどうかを判断する(ステップS41)。撮像範囲Pにすかし部分が含まれていない場合は、その識別対象紙幣の金種は五千円券であると識別する。
【0073】
撮像範囲Pにすかし部分が含まれている場合は、すかし部分が撮像範囲Pの中央部に位置しているかどうかを判断する(ステップS42)。すかし部分が撮像範囲Pの中央部に位置していない場合は、その識別対象紙幣の金種は二千円券であると識別する。
【0074】
すかし部分が撮像範囲Pの中央部に位置している場合は、すかし部分の形状が円形であるか楕円形であるかを判断する(ステップS43)。この判断は、すかし部分の円形又は楕円形の縦/横比を計測して算出することにより行う。
【0075】
すかし部分の形状が円形ではなく楕円形である場合には、その識別対象紙幣の金種は千円券であると識別する。一方、すかし部分の形状が楕円形ではなく円形である場合には、その識別対象紙幣の金種は万円券であると識別する。
以上で、総ての金種の識別が終了する。
【0076】
【発明の効果】
本発明に係る紙幣束投出装置によれば、複数の紙幣束を金種ごとに、最前列紙幣束の中央部を露出させるように、略前後方向に収納する複数の金種別紙幣束収納カセットが略上下方向に配置された紙幣束収納部と、投出しようとする紙幣束の金種及び束数の指定を設定する投出指定設定手段と、上記各金種別紙幣束収納カセットの前面側に対向して、上記各金種別紙幣束収納カセットの高さに移動し、紙幣束を取り込む紙幣束収納部を有するエレベータと、上記エレベータに配設され、上記エレベータが位置する高さの上記金種別紙幣束収納カセットの上記最前列紙幣束中央部を撮像する撮像カメラと、上記撮像カメラが撮像した上記最前列紙幣束中央部の図柄に基づき、投出を指定されたいずれかの紙幣束の金種と、最前列紙幣束の金種とが一致するかどうかを識別する金種識別手段と、上記エレベータに配設され、上記金種識別手段が金種の一致を識別した場合のみ、上記エレベータが位置する高さの上記金種別紙幣束収納カセットの上記最前列紙幣束を1束だけ繰り出して上記エレベータの上記紙幣束収納部に取り込む紙幣束取込機構と、上記エレベータの収納部に取り込まれた紙幣束を投出する紙幣束投出口とを備えたので、投出を指定されたいずれかの紙幣束の金種と、紙幣束収納カセットの最前列紙幣束の金種とが一致するかどうかを、紙幣束収納カセットから紙幣束を繰り出す前に確認できるので、信頼性の高い紙幣束投出装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る紙幣束投出装置の構成を示した説明図。
【図2】本発明に係る紙幣束投出装置の概略構成を示したブロック図。
【図3】二千円券、万円券、千円券、五千円券の撮像範囲及びすかし部分のレイアウトを示した平面図。
【図4】本発明に係る紙幣束投出装置における紙幣束投出動作の手順を示したフローチャート。
【図5】金種の識別の手順を示したフローチャート。
【図6】従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の概略構成を示す斜視図。
【図7】従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の縦断側面図。
【図8】従来の第1の構成に係る紙幣束投出装置の縦断正面図。
【図9】従来の第2の構成に係る紙幣束投出装置としての機能を有する施封・小束支払機の内部構成を示した縦断側面図。
【図10】従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置の概略構成を示す斜視図。
【図11】図10に示した従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置における収納箱202の前面部の構成を示す斜視図。
【図12】図10に示した従来の第3の構成に係る紙幣束投出装置の変形例におけるエレベータ207の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
1 機体
2 紙幣束収納部
4 エレベータ
5 払い出し口
8 紙幣束収納カセット
36 紙幣束取込機構
80 表示操作パネル
97 本体制御部
98 識別手段
99 金種識別用撮像カメラ

Claims (6)

  1. 複数の紙幣束を金種ごとに、最前列紙幣束の中央部を露出させるように、略前後方向に収納する複数の金種別紙幣束収納カセットが略上下方向に配置された紙幣束収納部と、
    投出しようとする紙幣束の金種及び束数の指定を設定する投出指定設定手段と、
    前記各金種別紙幣束収納カセットの前面側に対向して、前記各金種別紙幣束収納カセットの高さに移動し、紙幣束を取り込む紙幣束収納部を有するエレベータと、
    前記エレベータに配設され、前記エレベータが位置する高さの前記金種別紙幣束収納カセットの前記最前列紙幣束中央部を撮像する撮像カメラと、
    前記撮像カメラが撮像した前記最前列紙幣束中央部のすかし部分の有無、並びに、すかし部分の位置及び形状に基づき、投出を指定されたいずれかの紙幣束の金種と、最前列紙幣束の金種とが一致するかどうかを識別する金種識別手段と、
    前記エレベータに配設され、前記金種識別手段が金種の一致を識別した場合のみ、前記エレベータが位置する高さの前記金種別紙幣束収納カセットの前記最前列紙幣束を1束だけ繰り出して前記エレベータの前記紙幣束収納部に取り込む紙幣束取込機構と、
    前記エレベータの収納部に取り込まれた紙幣束を投出する紙幣束投出口と、
    を備えたことを特徴とする紙幣束投出装置。
  2. 前記金種識別手段が金種の不一致を識別した場合に、紙幣束収納エラーを報知する収納エラー報知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項に記載の紙幣束投出装置。
  3. 前記収納エラー報知手段は、紙幣束収納エラーを視覚的に表示する収納エラー表示手段であることを特徴とする請求項に記載の紙幣束投出装置。
  4. 前記撮像カメラは、前記各金種別紙幣束収納カセットの前面側に対向する前記エレベータの対向面に配設されたものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の紙幣束投出装置。
  5. 前記撮像カメラは、前記最前列紙幣束中央部を照射する照明手段が併設されたCCDカメラであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の紙幣束投出装置。
  6. 前記撮像カメラは、赤外線カメラであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の紙幣束投出装置。
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