JP4514317B2 - 露光装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、フォトリソグラフィ工程に用いられる露光装置に係り、特に微細周期構造を持つスケール等の加工に適用して有用な露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体集積回路等の微細加工技術に適用される露光方法として、縮小投影露光、電子ビーム(EB)露光等が一般に用いられている。また、回折格子等の微細な繰り返しパターンの加工に適した露光法としては、レーザ光等のコヒーレント光を用いた光波干渉露光(ホログラフィック露光)がある。これは、レーザ出力光を2光波に分岐し、それぞれの光波を露光に適したビーム径になるうに拡大コリメートした後に交差させて、その公差領域に生じる干渉縞を利用してワークを露光するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のホログラフィック露光法には、次のような問題があった。
▲1▼平行波面の露光ビームは、光強度がガウシアン分布を有する。このため、広範囲を均一に露光するためには、ビーム径を必要な露光範囲以上にまで大きく拡大することが必要になる。その結果、長尺のスケール等の露光装置を作るには、光学部品が高価になり、場合によっては光学部品の製造が困難である。
▲2▼ビーム径を拡大することにより、そのビーム径内で空気屈折率変動等の環境変動による光路長変化が生じるため、均一な周期構造の露光が難しく、また均一な周期構造を露光するためには安定した環境が必要となる。
▲3▼更に、▲1▼との関連で広範囲の均一露光のためにはレーザ出力光の一部しか使用できないことから、長い露光時間が必要となり、フォトレジストの安定性や選択性が問題になる。露光時間を短くするために光量を大きくしようとすると、光源が高価なものとなってしまう。
▲4▼ホログラフィック露光に限らず、他の露光法でも同様であるが、長尺の繰り返しパターンを露光する際につなぎ露光を行うと、周期構造の不均一性が生じる。
【0004】
この発明は、上記事情を考慮してなされたもので、小さい単位露光領域の重ね合わせにより長尺範囲の均一露光を可能とした露光装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る露光装置は、露光すべきワークを搭載するステージと、前記ワークに対して光強度分布がガウシアン分布を持つ光ビームを照射する露光用光源と、前記ワークのある範囲を均一露光するために前記ステージをステップ的に駆動して、前記露光用光源からの光ビームによる複数回の露光をオーバラップさせるステージ駆動装置と、を備え、前記露光用光源は、コヒーレント光源と、このコヒーレント光源の出力光ビームを2分岐する分岐光学系と、この分岐光学系により2分岐された出力光ビームをそれぞれのビーム径を拡大してコリメートすると共に所定角度で交差させることにより、前記ワーク上に周期パターンを露光する干渉縞を発生させる二つのコリメートレンズ系とを有し、前記ステージ駆動装置は、前記ワークのある範囲で露光強度分布が一定になるように前記ステージをステップ的に駆動して、複数回の露光をオーバラップさせるものであり、且つ前記複数回の露光における干渉縞をつなぎ合わせるべく各露光内の干渉縞を走査制御する干渉縞走査制御手段を有することを特徴とする。
【0006】
この発明によると、光強度がガウシアン分布を持つ露光光ビームの径を大きくすることなく、その様な露光光ビームをオーバラップさせながら多重露光することにより、広い範囲にわたって均一露光を行うことが可能になる。露光光ビーム径をそれほど大きくする必要がないから、露光光学系の構成は簡単で且つ安定性の高いものとなる。
【0007】
特にこの発明をホログラフィック露光に適用した場合には、露光用光源は、コヒーレント光源と、このコヒーレント光源の出力光ビームを2分岐する分岐光学系と、この分岐光学系により2分岐された出力光ビームをそれぞれのビーム径を拡大してコリメートすると共に所定角度で交差させることにより、ワーク上に周期パターンを露光する干渉縞を発生させる二つのコリメートレンズ系とを備えて構成される。そして、ステージ駆動装置は、ワークのある範囲で露光強度分布が一定になるようにステージをステップ的に駆動して、複数回の露光をオーバラップさせる。
【0008】
そして、ステージ駆動による複数回の各露光の干渉縞を重ね合わせ、つなぎ合わせるために、干渉縞走査制御を行う。具体的には、干渉縞走査制御手段として、分岐光学系により2分岐される出力光ビームの光路長差を可変して露光干渉縞を走査するための光路長差可変用アクチュエータと、ワークに照射される干渉縞の位相、周期及び強度を検出する干渉縞検出器と、ステージの移動距離を測定する測長器と、干渉縞検出器及び測長器の出力に基づいて光路長差可変用アクチュエータを制御して露光干渉縞を走査し安定化させるコントローラとを備える。
この様に、均一露光のためのステージのステップ駆動と、各干渉縞露光について前回露光の干渉縞履歴に重ね合わせる干渉縞の走査制御とを行うことにより、長尺の周期構造パターンを均一に露光することが可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施例を説明する。
図1は、この発明の実施例によるホログラフィック露光装置の構成を示している。この露光装置の露光用光源は、コヒーレント光源としてのレーザ光源1と、その出力光ビームA0を2分岐する分岐光学系4と、この分岐光学系4により2分岐された出力光ビームA1,A2をそれぞれのビーム径を拡大してコリメートすると共に所定角度で交差させることにより、ワーク9上に周期パターンを露光する干渉縞を発生させる二つのコリメートレンズ系5,6とを備えて構成されている。
【0010】
ミラー2a〜2fは、光ビームの光路を偏向する光路偏向デバイスである。レーザ光源1は、直線偏光レーザであって、その出力光ビームA0は、ミラー2a,2bにより光路が偏向されて、分岐光学系4に入る。ミラー2a,2bの間に配置されたインターロックシャッター3は、安全目的のシャッターであり、必ずしも必要ではない。
【0011】
ミラー2bにより光路偏向された出力光ビームは、1/2波長板41を通って偏光ビームスプリッタ42に入り、一つの直線偏光成分が分岐光ビームA2として取り出され、他方は透過する。偏光ビームスプリッタ42を透過した成分は、更に偏光ビームスプリッタ43及び1/4波長板44を通り、ミラー35で反射されて同じ光路を戻る。このとき、1/4波長板44の往復により位相が90°回転して、偏光ビームスプリッタ43により、先の分岐光ビームA2と同じ偏光成分の分岐光ビームA1が得られる。
【0012】
この分岐光学系4の端部のミラー45は、小型のPZTを用いたリニアアクチュエータ46に取り付けられている。このアクチュエータ46は、フリンジ(干渉縞)走査用である。即ち、分岐光ビームA1,A2のうち、一方の分岐光ビームA1の光路長をこのアクチュエータ36により微小変化させることによって、二つの分岐光A1,A2の干渉による干渉縞を走査することを可能としている。
【0013】
二つの分岐光ビームA1,A2は、それぞれミラー2f,2eにより光路偏向されて、コリメートレンズ系5,6に入射される。コリメートレンズ系5は、入射マイクロレンズ51とピンポールからなる空間フィルタ52及びコリメートレンズ53を有し、マイクロレンズ51でビーム径を拡大した後、コリメートレンズ53でコリメートされた光ビームA3を得る。コリメートレンズ系6も同様に、入射マイクロレンズ61とピンポールからなる空間フィルタ62及びコリメートレンズ63を有し、マイクロレンズ561でビーム径を拡大した後、コリメートレンズ63でコリメートされた光ビームA4を得る。
【0014】
これらのコリメートレンズ系5,6は、その光軸が2θの角度で交差するように配置され、二つの分岐光ビームA1,A2から得られる拡大されたコリメート光ビームA3,A4を2θの角度で交差させる。これにより、ワーク9の上部で二つの光ビームA3,A4の干渉による干渉縞が生成され、これがワーク9に露光光として照射されることになる。
なお、分岐光学系4及び二つのコリメートレンズ系5,6の部分は、一点鎖線で示したように安定化チャンバ7に収容されて、分岐後の光路の安定化、露光光の安定化が図られる。
【0015】
コリメータレンズ系6側の光路偏向用ミラー2eは、PZTを用いたアクチュエータ64に取り付けられている。このアクチュエータ64は、干渉縞周期補正用である。即ちこのアクチュエータ64により、コリメータレンズ系6に入射する光ビームの角度を微小角度変化させ、これにより、二つの光ビームA3,A4の交差角2θを微小角度δθだけ変化させて、干渉縞周期を変化させることを可能としている。
【0016】
ワーク9は、ステージ10に搭載されている。ワーク9の上部には露光用シャッタ8が設けられている。ステージ10は図では省略したレールに沿って、ステージ駆動回路14により図の矢印x方向にステップ的に駆動されるようになっている。
【0017】
露光照射位置の近傍には、干渉縞の位相、周期及び強度を検出するための干渉縞検出器12が配置されている。具体的には、干渉縞検出器12は、ワーク9の上部に浮いた状態で固定されている。干渉縞検出器12で検出された干渉縞位相データ等はコントローラ16に送られる。また、ワーク9の位置を測定する測長器13が設けられ、その測定データもコントローラ16に送られる。そしてコントローラ16は、干渉縞検出器12の検出データ及び、測長器13により測定されるワーク静止後の位置データに基づいて、アクチュエータ46を制御することにより、2分岐光ビームの光路長差を制御する。即ち、x方向のステージ10のステップ移動に伴う各露光における干渉縞の走査と安定化制御を行って、干渉縞露光のつなぎ合わせを行う。
【0018】
ステージ10にはまた、PZTからなる角度補正用アクチュエータ11が設けられ、またワーク9の真直度(ピッチング角度)を検出する角度測定器15が設けられている。コントローラ16は、角度測定器15の出力を監視して、ステップ&リピートによる各露光に先立って、ワーク9が一定の姿勢を保持するようにアクチュエータ11を制御する。
【0019】
更にコントローラ16は、干渉縞検出器12の出力を監視して、干渉縞周期の変動に対して、アクチュエータ64を制御して露光角の調整による干渉縞周期の調整を行う。
またコントローラ16は、露光干渉縞の重ね合わせ(干渉縞走査)とは独立に、均一露光分布のためのステージ10のステップ駆動の制御を行う。具体的には、照射露光分布(設計値又は測定値)に対して、積算露光強度分布が一定になるような移動量でステージ10をステップ駆動することになる。
【0020】
図2は、二つのコヒーレントなコリメート光A3,A4の交差により干渉縞が形成される様子を示している。レーザ光源1の波長をλ、光波A3,A4の交差角を上述のように2θとし、屈折率をnとすると、干渉縞周期Pは、P=λ/(2nsinθ)で表される。得られる干渉光強度はガウシアン分布を有する。この様な干渉光を、重ね合わせ干渉縞位相と、ステップ露光時間を制御しながら、重ね合わせ後の露光エネルギー分布が一定になるようにステージを移動することにより、スケールの長尺露光が可能になる。
【0021】
具体的な露光工程では、ステージ10のステップ駆動と共に、露光シャッター8の開閉制御が行われる。即ち、コントローラ16は、干渉縞検出器12により検出される干渉縞が安定状態にあることを確認して、露光シャッター8を開いて、露光エネルギーがある値になるまで露光をする。そして、露光シャツター8を閉じてステップ露光を終了し、ステージ10を一定距離送る。以下、同様の動作の繰り返しとなる。
【0022】
図3は、そのようなつなぎ露光による干渉光強度(エネルギー)分布を示している。即ち、ガウシアン分布を有する干渉露光光a1,a2,a3,…を一定の送り移動量で送りながら多重露光することにより、トータルの露光光強度bは、ある範囲Lで均一になる。この範囲Lが、スケール等の周期構造デバイスの有効長に達するように繰り返し露光を行うことによって、長尺の周期構造の露光が可能になる。
【0023】
以上のようにこの実施例によると、ガウシアン分布を有する干渉露光光を重ね合わせて露光することにより、長尺の周期構造デバイスに対し均一な露光強度で露光することが可能になる。
しかも単位露光領域は小さいから、光学系を小さいものとすることができ、露光装置を小型で低コスト且つ安定性の高いものとすることができる。
また、単位露光光の重ね合わせを利用するので、レーザ光源が小さいものでもトータルとして大きな露光強度が得られるから、露光時間の短縮が図られ、また光源の選択性が高いものとなる。
更に、干渉縞のつなぎ露光に際して、光路長を制御して干渉縞走査による露光の安定化制御を行い、露光角の安定化制御を行うことで、高性能の周期構造デバイスを作ることが可能になる。
【0024】
この発明は上記実施例に限られない。例えば、露光角制御、或いは真直度制御等は、本質的ではなく、光学系やワークの駆動機構が安定に作られていれば、必要がない。
また実施例では干渉露光を説明したが、この発明はこれにも限定されない。即ち干渉露光に限らず、単位の露光光がガウシアン分布を持つ場合にこれをつなぎ合わせて均一な多重露光を行うことは、例えば通常の縮小投影露光装置にも適用することが可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、光強度がガウシアン分布を持つ露光光ビームの径を大きくすることなく、その様な露光光ビームをオーバラップさせながら多重露光することにより、広い範囲にわたって均一露光を行うことが可能になる。露光光ビーム径をそれほど大きくする必要がないから、露光光学系の構成は簡単で且つ安定性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例による露光装置の構成を示す図である。
【図2】 同実施例による干渉縞露光の原理を示す図である。
【図3】 同実施例による長尺露光の露光強度分布を示す図である。
【符号の説明】
1…レーザ光源、2a〜2f…光路偏向ミラー、4…分岐光学系、5,6…コリメートレンズ系、7…安定化チャンバ、8…シャッタ、9…ワーク、10…ステージ、11…アクチュエータ、12…干渉縞検出器、13…測長器、14…ステージ駆動回路、15…角度測定器、16…コントローラ。

Claims (5)

  1. 露光すべきワークを搭載するステージと、
    前記ワークに対して光強度分布がガウシアン分布を持つ光ビームを照射する露光用光源と、
    前記ワークのある範囲を均一露光するために前記ステージをステップ的に駆動して、前記露光用光源からの光ビームによる複数回の露光をオーバラップさせるステージ駆動装置と、
    を備え
    前記露光用光源は、コヒーレント光源と、このコヒーレント光源の出力光ビームを2分岐する分岐光学系と、この分岐光学系により2分岐された出力光ビームをそれぞれのビーム径を拡大してコリメートすると共に所定角度で交差させることにより、前記ワーク上に周期パターンを露光する干渉縞を発生させる二つのコリメートレンズ系とを有し、
    前記ステージ駆動装置は、前記ワークのある範囲で露光強度分布が一定になるように前記ステージをステップ的に駆動して、複数回の露光をオーバラップさせるものであり、且つ
    前記複数回の露光における干渉縞をつなぎ合わせるべく各露光内の干渉縞を走査制御する干渉縞走査制御手段を有する
    ことを特徴とする露光装置。
  2. 前記干渉縞走査制御手段は、
    前記分岐光学系により2分岐される出力光ビームの光路長差を可変して露光干渉縞を走査するための光路長差可変用アクチュエータと、
    前記ワークに照射される干渉縞の位相、周期及び強度を検出する干渉縞検出器と、
    前記ステージの移動距離を測定する測長器と、
    前記干渉縞検出器及び測長器の出力に基づいて前記光路長差可変用アクチュエータを制御して露光干渉縞を走査し安定化させるコントローラと
    を有することを特徴とする請求項記載の露光装置。
  3. 前記ステージの角度変動を検出する角度検出器と、前記ステージの角度補正を行う角度補正用アクチュエータとを有し、
    前記コントローラは、露光制御に先立って前記角度検出器の出力に基づいて前記角度補正用アクチュエータを制御する
    ことを特徴とする請求項記載の露光装置。
  4. 前記二つのコリメートレンズ系の一方に、出力光ビームの交差角を調整して干渉縞周期を補正するための干渉縞周期補正用アクチュエータが設けられていることを特徴とする請求項記載の露光装置。
  5. 前記分岐光学系及び二つのコリメートレンズ系は、安定化チャンバに収容されていることを特徴とする請求項記載の露光装置。
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