JP4514253B2 - マーキングフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、屋外および屋内の広告ステッカー類や表示用ステッカー類などに使用されるマーキングフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
マーキングフィルムは、一般に、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを基材層として、目的に応じて基材層に顔料を練り込んで着色したり、あるいは基材層の片側面に印刷、塗装を施して塗膜層を形成し、反対面に用途に応じて適当な感圧および/または感熱接着剤を塗布して粘着剤層を形成し、さらに粘着剤層を保護する目的で剥離紙等の剥離材を貼り合わせて構成されており、使用時には、この剥離材層を剥離して粘着剤層を所定の箇所に貼り付ける。マーキングフィルムは、屋外で使用されることが多く、看板、広告塔、シャッター、ショーウインドウ等に用いられる広告ステッカー類;自動車、二輪車等の車両やモーターボート等の船舶に用いられる装飾用ストライプステッカー類;交通標識、道路標識、案内板等に用いられる表示用ステッカー類等の用途に用いられる。このため、マーキングフィルムは耐候性を有し、且つ三次曲面に貼り付けるための適度な柔軟性を有することが必要である。
【0003】
従来のマーキングフィルムはポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを基材層としているために、焼却廃棄する際には塩化水素ガスやダイオキシンが発生するので、簡単な焼却設備では処理できず、さらには焼却設備の耐久性を低下させるという問題があった。そのため最近では、簡単な焼却設備で処理できる低環境負荷型のマーキングフィルムへの要望が高まって来ている。例えば特開平8−157780号公報記載のマーキングフィルムはポリオレフィン系樹脂フィルムを基材層としたものであり、焼却廃棄することが可能である。
【0004】
しかしながら、上記公開公報には、基材層のポリオレフィン系樹脂フィルムについては何ら規定がなされておらず、基材層として例えば市販のポリオレフィン系樹脂フィルムを使用して作製されたマーキングフィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを基材層としたマーキングフィルムに較べ、柔軟性、三次曲面への施工性という点で難点があり、実際の使用には供し得ない。
【0005】
また、上記公開公報には、オレフィン支持基材への酸化チタン量が規定されているが、この規定範囲では、高隠蔽性が要求される用途においては隠蔽効果が不十分である場合が多く、被着体の文字や模様が透けて見え、好ましくない。また、酸化チタン等の無機フィラーの配合量を増すと、フィルムが裂け易くなる問題が生じる。これは施工段階で、小さなノッチがフィルムに入っただけで取扱中にフィルムが裂けることとなり、フィルムが実使用において非常に使いにくいものとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記実状に鑑み、塗膜層の強度を最適なものとすることにより塗膜層と基材層との密着性を向上させたマーキングフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を行った結果、塗膜層を上下2層とし、上塗膜層の厚みを下塗膜層の厚み以上とし、かつ上下塗膜層の抗張力を特定することにより、塗膜層と基材層との密着性を向上させることができる上に、フィルム物性のバランスを良好なものとすることができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明によるマーキングフィルムは、アクリル系樹脂塗料、ウレタン系樹脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料またはフッ素系樹脂塗料から選ばれる樹脂塗料からなる上塗膜層、下塗膜層、合成樹脂基材層、粘着剤層が順次積層されてなるマーキングフィルムにおいて、上塗膜層と下塗膜層の厚みが下塗膜層厚≦上塗膜層厚であり、かつ上塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が0.2〜0.6kgf/15mmであり、下塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が上塗膜層のそれより50〜200%大きいことを特徴とするものである。
【0009】
上記マーキングフィルムの層構成を図1に示す。
【0010】
以下、本発明によるマーキングフィルムの構成層についてそれぞれ詳しく説明をする。
【0011】
まず、合成樹脂基材層についてであるが、同基材層用のフィルムとしては一般的な各種フィルムの使用が可能である。その中でも焼却処理が容易に行えるポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを使用することが好ましい。
【0012】
基材層用のポリオレフィン系樹脂の好適な例は、軟質ポリプロピレン系樹脂(以下、PP系樹脂と略記する)20〜100重量%とその他のポリオレフィン系樹脂0〜80重量%からなり、軟質PP系樹脂は重量平均分子量(Mw)80,000〜500,000を有し、かつクロス分別法による10℃以下の溶出量が45〜80重量%、10℃を越え70℃以下での溶出量が5〜35重量%、70℃を越え95℃以下での溶出量が1〜30重量%、95℃を越え125℃以下での溶出量が3〜35重量%であるものである。上記組成にさらに酸化チタンをPP系樹脂100重量部に対し50〜300重量部添加することもできる。
【0013】
このPP系樹脂フィルムは、非常に柔軟で隠蔽性があり、かつ適度な引き裂き性を有する基材層を形成することができ、マーキングフィルムの三次曲面施工性、引き裂き性が著しく改良されるので特に好ましい。引き裂き性の良好な引き裂き強度は100〜400g/16枚である。また基材層用フィルムは単層であっても多層であっても構わない。
【0014】
基材層用PP系樹脂の好適な例は、プロピレン−エチレン共重合体またはプロピレン−α−オレフィン共重合体である。この樹脂は下記の方法で製造することができる。まず、第一段階として、チタン化合物触媒およびアルミニウム化合物触媒の存在下においてプロピレンモノマーおよび必要に応じてプロピレン以外のα−オレフィンモノマーを用いて重合を行い、第一のPP系ポリオレフィンを得る。ついで、第二段階として上記チタン化合物触媒の存在下において第一段階で生成したチタン含有PP系ポリオレフィンとプロピレン、エチレンまたはそれ以外のα−オレフィンとを共重合させて、第二のPP系ポリオレフィンを得る。以下同様にして目的に応じて多段階の共重合反応を行い得る。上記第一段階で生成する第一のPP系ポリオレフィンの好適な例は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体である。
【0015】
基材層の材料樹脂として好ましいものは、重量平均分子量が80,000〜500,000、より好ましくは200,000〜400,000の範囲にあるPP系樹脂である。PP系樹脂の重量平均分子量は、例えばWATERS社製高温GPC(150CV)で測定され得る。PP系樹脂の重量平均分子量が80,000未満ではフィルム強度が不十分であり、500,000を超えると充分な柔軟性が得られないことがある。
【0016】
本発明において、PP系樹脂を特定するための指標として採用されているクロス分別クロマトグラフィ法は、以下に示すとおりである。
【0017】
先ず、PP系樹脂を140℃あるいはPP系樹脂が完全に溶解する温度のo−ジクロロベンゼンに溶解し、次いで、この溶液を一定速度で冷却し、予め用意しておいた不活性担体の表面に薄いポリマー層を生成させる。この時、PP系樹脂成分は、結晶性の高い順、および分子量の大きい順にポリマー層として生成する。次に、温度を連続的または段階的に上昇させ、順次溶出した成分の濃度を検出して、成分分布(結晶性分布)を測定する。これは温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation ;TREF) と呼ばれる方法である。同時に、順次溶出した成分を高温型GPC (Size Exclusion Chromatograph; SEC)により分析して、分子量および分子量分布を測定する。本発明では、上述した温度上昇溶離分別部分と高温型GPC部分の両者をシステムとして備えているクロス分別クロマトグラフ装置(三菱化学社製CFC−T150A型)が使用される。
【0018】
基材層用のPP系樹脂においては、上記クロス分別法による0℃以上10℃以下の樹脂溶出量は全PP系樹脂量の45〜80重量%である。この溶出量が45重量%未満では得られたフィルムが柔軟性に欠け、80重量%を超えるとフィルムとして充分な強度が得られない。
【0019】
10℃を越え70℃以下での樹脂溶出量は全PP系樹脂量の5〜35重量%である。この溶出量が5重量%未満では得られたフィルムが柔軟性に欠け、35重量%を超えるとフィルムが変形回復性に劣る。
【0020】
70℃を越え95℃以下での樹脂溶出量は全PP系樹脂の1〜30重量%である。この溶出量が1重量%未満では得られたフィルムが変形回復性に劣り、30重量%を超えるとフィルムとしての強度が得られない。
【0021】
最後に上記クロス分別法の95℃を越え125℃以下での樹脂溶出量は全PP系樹脂量の3〜35重量%である。この溶出量が3重量%未満ではフィルムとしての充分な強度が得られず、35重量%を超えるとフィルムが柔軟性に劣る。
【0022】
基材層を構成するPP系樹脂において、クロス分別法による各温度域での溶出量が上記範囲内にあることは、得られたフィルムの弾性率、強度、延性などの物性を制御する上で非常に重要である。
【0023】
一般的なPP系樹脂では応力−歪み曲線をとると、低伸張時の応力の立ち上がりが急であり、20〜30%伸張すると降伏し、その後100%伸張程度までは応力がほとんど増加しない。つまり、応力−歪み曲線において歪みに対する応力がほぼ一定となる。このような樹脂をマーキングフィルムに適用すると、例えば曲面貼りの際にフィルムを強く引張るとフィルムが延びきってしまう恐れがある。しかしながら、上記のようなPP系樹脂をマーキングフィルムに適用することにより、柔軟性に富んだフィルムが得られる。
【0024】
通常、ポリマーブレンドの場合、柔軟性と伸縮性を向上させるにはブレンドするゴム成分の分子量を上げるのが1つの方法である。本発明に用いられるPP系樹脂の場合、このゴム成分にあたるのは上記第二段階以降の反応で生成する成分(α−オレフィン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体)であり、これらの成分は分子量が高いため、溶融粘度が高い。このゴム成分は上記の多段階重合法を用いることによりPP系樹脂中に微分散させることができる。しかし、通常の押出機などを用いたブレンド法では、このように分子量の高いゴム成分を用いると、溶融粘度が高いため、本発明で用いられるPP系樹脂のような微分散モルフォロジーを有する樹脂を作製できない。さらに、従来の反応により得られるPP系ブロック共重合体のような樹脂では、共重合されるエチレン、α−オレフィンなどのブロック成分は、主成分であるPPに対して、その製造プロセス上、約50重量%程度含有させるのが限界であり、通常その含有量は30重量%までである。このためPP系樹脂において可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂のような柔軟性を実現するのは非常に困難であった。
【0025】
しかし、上記のような多段階重合法を用いれば、前記共重合体成分を約80〜95重量%まで含有させることが可能となり、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂と同様の物性を有するPP系樹脂が得られる。
【0026】
このような柔軟なPP系樹脂としては、トクヤマ社製の「PER」、およびモンテルJPO社製の「キャタロイ」、三菱化学社製の「ゼラス」、住友化学社製の「エクセレン」などが挙げられ、これらはいずれも本発明に用いられる。また低密度ポリエチレンや中・高密度ポリエチレンやポリプロピレンにエチレン−プロピレンゴムやスチレン系エラストマーを配合したものなども使用できる。
【0027】
基材層に隠蔽性を持たせるために、PP系樹脂100重量部に対して顔料、例えば酸化チタンを50〜300重量部配合することが好ましい。酸化チタンの配合量が50重量部より少ないと、充分な隠蔽性が得られないことがあり、300重量部より多いと樹脂剛性が高すぎるためにフィルムの成形ができず、またコスト的に不経済となる嫌いがある。酸化チタンはルチル型、アタナーゼ型いずれにおいてもほぼ同様の効果を発揮する。好適にはそれ自身に耐候性があり、樹脂分散性の良い、平均粒径の小さいルチル型酸化チタンが用いられる。
【0028】
本発明ではまた、顔料の樹脂への分散性を高める手法として汎用されているマスターバッチ化などにより、基材層用樹脂に顔料を混和しておくことが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン系基材層に耐候性を付与するために従来ポリオレフィン系樹脂に配合しているヒンダードアミン化合物を添加しても良い。具体的には以下のものが例示できる。
【0030】
1) 2,2,4,4−テトラメチルピペリジル−4−ベンゾエート
2) ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
3) トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ホスファイト
4) 1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチルスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン
5) 1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブタン
6) 1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソスピロ[4,5]デカン
7) トリ(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−アミン
8) 4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
9) 4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
10) 4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
11) 4−フェニルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
【0031】
本発明の基材層用の樹脂には、また、他の汎用添加剤(帯電防止剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、有機フィラー)を配合することも好ましい。
【0032】
基材層の厚みは全層合わせて20〜150μm、好ましくは40〜60μmである。20μm未満ではフィルム自体が柔らかすぎるために施工困難および強度不足となり、150μmを超えると逆に固くなり、3次曲面等の被着体への追従性が劣ることがある。
【0033】
基材層用のフィルムは、基材層用の樹脂に上記のような添加物を配合した後、従来より用いられているTダイ法やインフレーション法等により配合物を製膜することにより得ることができる。得られた基材層フィルムは一般に表面張力が小さいため、コロナ処理等の表面改質処理により塗膜層や粘着剤層の密着性を向上させるのが望ましい。
【0034】
つぎに、塗膜層についてであるが、本発明の上下塗膜層用の樹脂塗料としては耐候性の良好なアクリル系樹脂塗料、ウレタン系樹脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料またはフッ素系樹脂塗料が使用可能である。塗膜の厚みとしては10〜40μmが好適である。塗料としては塗料樹脂100重量部に対して顔料を5〜200重量部含むものが好ましい。塗膜層が10〜40μmの一層だけからなるものであると、同層が透けて基材層の下地が見えることにより、目的とする色と塗工した色が違うといった問題や、わずかな塗膜厚みの差異により塗工面の均一性が得られないといった問題が起きる。
【0035】
そこで、塗膜層を上下2層からなるものとし、基材層にまず下塗膜層を塗工し、下塗膜層の上にこれと同系色の上塗膜層を塗工し、基材層と上塗膜層との色差(α)と、下塗膜層と上塗膜層との色差(β)を、β<α/2の関係が成立するようにする。これにより下地基材層が透けて見えるのを防止でき、目的とする色調および均一な外観が得られる。上下塗膜層に配合する顔料は一般に用いられる耐候性の良い有機顔料が好適である。
【0036】
また、本発明では、上塗膜層と下塗膜層の厚みを下塗膜層厚≦上塗膜層厚とし、かつ上塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力を0.2〜0.6kgf/15mmとし、下塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力を上塗膜層のそれより50〜200%大きくすることにより、塗膜層と基材層との密着性を向上させることができる上に、フィルム物性のバランスを良好なものとすることができることを見出した。
【0037】
上塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が0.2kgf/15mmより低いと、フィルム全体のモジュラスが低く腰が無くなり、作業性が低下し、また0.6kgf/15mmより大きくなると、フィルム全体の抗張力が高くなると共に引き裂き強度が低下し、小さなノッチからもフィルムの破断が発生し作業性が低下する。
【0038】
また、下塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力を上塗膜層のそれより50%未満大きくしたのでは、塗膜層と基材層との密着性の向上効果が充分でなく、200%を超えて大きいと、フィルム全体が硬くなり、作業性が低下する。
【0039】
層厚50μmにおける2%伸長時抗張力の調整方法としては、塗料の軟化剤の部数を調整する方法、硬化剤の種類を調整する方法、塗料主剤の樹脂のガラス転移温度(Tg)を調整する手法等を使用することができる。
【0040】
また、上塗膜層と下塗膜層の厚みに関しては、フィルム全体の物性および耐候性の観点より、上塗膜層厚が下塗膜層厚に等しいかより大きい。下塗膜層の厚みは好ましくは1〜15μmである。下塗膜層の厚みが薄いと下地の透けを防止する効果が小さくなり、目的とする色の調色および均一な外観を得ることが難しくなる。また上下塗膜層の全厚が60μmを越えるとフィルムの3次曲面等の被着体への追従性が劣ることとなる。
【0041】
上下塗膜層はグラビアコーター、コンマコーター、リバースコーター、ナイフコーター、スプレーガン、スクリーン印刷等により樹脂塗料を塗工することにより形成される。
【0042】
つぎに、粘着剤層についてであるが、同層に使用する粘着剤としてはアクリル樹脂系、ゴム系の粘着剤いずれでも良いが、マーキングフィルムは屋外での使用が前提となっていることから、耐候性の高いアクリル系が良好である。アクリル系粘着剤層の主成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては炭素数2〜12のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、好ましくは炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが用いられ、具体的には、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。これらは、単独、または組み合わせて用いることができる。粘着性と凝集性のバランス等から、通常ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−50℃以下の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、(メタ)アクリル酸エチル等の低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを併用するのが好ましい。
【0043】
また、これらのビニルモノマー以外にこれらと共重合可能なモノマーが共重合されても構わない。このような共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその無水物や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。
【0044】
粘着剤は、溶媒中で重合した溶剤型アクリル粘着剤であっても、水中で重合したエマルジョン系粘着剤であっても、また、モノマー混合物に紫外線照射した塊状重合型粘着剤であってもよい。粘着剤層の厚さは20〜50μmが好ましい。マーキングフィルムは、一般に、粘着剤をリバースコート法等により定量的な塗工法により剥離材に塗布し、加熱乾燥させた後、片側面に塗膜層が形成された基材層の反対面に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0045】
マーキングフィルムの粘着剤層を保護するための剥離材層は特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン塗布型剥離紙が使用できる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例によって限定されるものではない。実施例および比較例で用いた酸化チタンおよび塗料軟化剤の基材層および塗膜層中の添加量を表1に示す。
【0047】
<実施例1>
両外層用樹脂としてメルトインデックス(3.9g/10分)のホモPP樹脂を用い、中間層用材料として、重量平均分子量200,000、クロス分別法による各温度での溶出量が10℃以下で69重量%、10℃を越え70℃以下で11重量%、70℃を越え95℃以下で2重量%、95℃を越え125℃以下で18重量%であるPP系樹脂(トクヤマ社製)に、該中間層樹脂100重量部に対して酸化チタン60重量部を配合してなる配合物を用い、これらを多層Tダイ押出機にて厚さ50μm(両外層厚:各8μm、中間層厚:34μm)になるようにサンドイッチ状に製膜し、インラインにて両面コロナ処理(42dyn/cm)を施した。得られたフィルムを基材層とし、その片側面に下塗膜層を形成し、さらに下塗膜層の上にこれと同系色の上塗膜層を形成した。
【0048】
上下塗膜層の形成は次ぎのように行った。上塗膜層用塗料組成物として、ウレタン系樹脂塗料「プラニットU#700」(大日本塗料社製)100重量部に、硬化剤「コロネート2094」(日本ポリウレタン社製)6.5重量部と、塗料軟化剤「Autoハイフレックス」(大日本塗料社製)10重量部を添加し、さらに、シアニンブルーを添加して青色に着色した塗料組成物を得た。また、下塗膜層用塗料組成物として、塗料軟化剤の添加量を5重量部とした点を除いて、上塗膜層のもの同じ塗料組成物を得た。そして、基材層の片側面に下塗膜層用塗料組成物をグラビアコーターで厚み3μmで塗工して下塗膜層を形成し、その上に上塗膜層用塗料組成物をスプレーガンコーターで厚み20μmで塗工して上塗膜層を形成した。
【0049】
この段階で上塗料層および下塗料層の50μm厚み時の2%伸長時抗張力を下記の方法で測定した。
【0050】
塗料を50μm厚みで塗工して得られた塗膜を15mm幅にカットし、得られた塗膜試験片をオリエンテック社製のテンシロン「UCT−500」を用いてチャック間隔100mmにセットし、200mm/minの速度で引張り、2%伸長時の抗張力を求めた。得られた値は下記の通りである。
【0051】
Figure 0004514253
【0052】
基材層における塗膜層の反対面に粘着剤層、およびその上に剥離材層を形成した。粘着剤層は、2液架橋型アクリル系粘着剤をコンマコーターにてドライ厚み40μmとなるようにシリコーン塗布型剥離紙に塗工して形成した。これを基材層の塗膜層積層面の反対面に積層した。
【0053】
<実施例2>
酸化チタンの添加量を100重量部とし、上塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量を11重量部にした以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0054】
Figure 0004514253
【0055】
<実施例3>
両外層用樹脂としてメルトインデックス(3.9g/10分)のホモPP樹脂を用い、中間層用材料として、重量平均分子量250,000、クロス分別法による各温度での溶出量が10℃以下で48重量%、10℃を越え70℃以下で19重量%、70℃を越え95℃以下で5重量%、95℃を超え125℃以下で28重量%であるPP系樹脂(モンテルJPO社製)に酸化チタンを樹脂100重量部に対し60重量部配合してなる配合物を用い、これらを多層Tダイ押出機にて厚さ50μmになるようにサンドイッチ状に製膜し、インラインにて両面コロナ処理(42dyn/cm)を施した。得られたフィルムを基材層とし、上塗膜層用塗料組成物および下塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量をそれぞれ7重量部および3重量部にした以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0056】
Figure 0004514253
【0057】
<実施例4>
両外層用樹脂としてメルトインデックス(3.9g/10分)のホモPP樹脂を用い、中間層用材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(三菱化学社製:EVA20E)50重量部とエチレン−プロピレンゴム(三井化学社製:タフマーP−0280)50重量部との機械的手法によるブレンド樹脂に酸化チタンを樹脂100重量部に対し60重量部配合してなる配合物を用い、これらを多層Tダイ押出機にて厚さ50μmになるようにサンドイッチ状に製膜した。得られたフィルムを基材層とし、下塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量を4重量部にした以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0058】
Figure 0004514253
【0059】
<実施例5>
この実施例はポリ塩化ビニル系樹脂製のマーキングフィルムの製造例を示す。
ポリ塩化ビニル樹脂(鐘淵化学社製「PSH−10」)100重量部に、可塑剤(旭電化社製「P−300」)35重量部、安定剤(旭電化社製「AC−110」)10重量部、白色顔料(大日精化社製「VT−771」)45重量部、および溶剤(三菱化学社製「ソルベッソ」)80重量部を添加し、オルガノゾルを作製した。このゾルをアルキッド樹脂コーティング工程紙上にコンマコーターにて塗布し乾燥し、厚み60μmのフィルムを得た。乾燥条件は180℃×7分とした。得られたフィルムを基材層とした以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0060】
Figure 0004514253
【0061】
<実施例6>
塗膜層用の樹脂塗料をフッ素系樹脂塗料である「デュフロン」(日本ペイント社製)に変更し、酸化チタンの添加量を80重量部とし、上塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量を9重量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0062】
Figure 0004514253
【0063】
<比較例1>
実施例1における上塗膜層用塗料組成物を用いて塗膜層をスプレーガンコーターで厚み25μmで1回塗りした以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0064】
2%伸長時抗張力 0.35kgf/15mm
【0065】
<比較例2>
下塗膜層の厚みをスプレーガンコーターで15μmにし、上塗膜層の厚みをグラビアコーターで5μmにしたこと以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0066】
Figure 0004514253
【0067】
<比較例3>
上塗膜層用塗料組成物および下塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量をいずれも10重量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0068】
Figure 0004514253
【0069】
<比較例4>
上塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量を30重量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0070】
Figure 0004514253
【0071】
<比較例5>
上塗膜層用塗料組成物および下塗膜層用塗料組成物中の塗料軟化剤の添加量をそれぞれ5重量部および1重量部にしたこと以外は実施例1と同様の方法にてマーキングフィルムを得た。実施例1と同様にして求めた2%伸長時抗張力は下記の通りであった。
【0072】
Figure 0004514253
【0073】
性能評価試験
上記実施例および比較例で得られたマーキングフィルムに対し、下記項目について評価試験を行った。この結果を表2に示す。
【0074】
<3次曲面施工性>
マーキングフィルムを図2に示す2次曲面を有するコルゲート板(1) の山部(1a)に接着させ、次に谷部(1b)へ専用の施工ベラにて押し込んだ。これを23℃で3日間放置した後、フィルム浮き状態を下記基準で評価し、3次曲面施工性の代用評価とした。
【0075】
○…適度な柔軟性を持ち、曲面被着体への施工において問題ない
△…フィルムモジュラスが適当でないために、曲面被着体への施工が若干困難である
×…フィルムモジュラスが適当でないために、曲面被着体への施工ができない
【0076】
<シート作業性>
マーキングフィルムを1000mm×2000mmのアクリル板に平貼りするときの作業性を下記基準で評価した。
【0077】
○・・・フィルムは適度な柔軟性を持ち、貼り作業性は良好である
△・・・シート抗張力が適当でない(やや柔らかい若しくはやや硬い)ため、貼り作業性が若干困難である
×・・・シート抗張力が適当でない(非常に柔らかい若しくは非常に硬い)ため、貼り作業性が著しく悪い
【0078】
<引き裂き性>
JIS K−7128エルメンドルフ法にてマーキングフィルムの引き裂き性を評価した。フィルム厚みはポリ塩ビニルフィルムの厚み60μmに換算した。
200〜400(gf/16枚)が最適数値である。
【0079】
<経時塗膜密着性>
マーキングフィルムを大日本プラスチック社製「スーパーUVテスター」で300時間曝露し、その後同フィルムにカッターで1mm角クロスカットを100個入れ、セロテープ剥離試験を実施し、密着性を評価した。
【0080】
密着性=剥離数/100(少ない方が良好、0が最良)
【表1】
Figure 0004514253
【0081】
【表2】
Figure 0004514253
表2から判るように、実施例のマーキングフィルムはいずれの項目においても良好な結果を示した。
【0082】
【発明の効果】
本発明によるマーキングフィルムは、上塗膜層と下塗膜層の厚みが下塗膜層厚≦上塗膜層厚であり、かつ上塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が0.2〜0.6kgf/15mmであり、下塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が上塗膜層のそれより50〜200%大きいものであるので、塗膜層の強度が最適なものとなり、これにより塗膜層と基材層との密着性を向上させることができる上に、フィルム物性のバランスを良好なものとすることができる。
【0083】
また、基材層をポリオレフィン系樹脂からなるものにすることにより、その使用済みフィルムは埋め立て廃棄の必要が無く、簡単な焼却設備において焼却処理することができる。このようなマーキングフィルムは低環境負荷型の製品として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】マーキングフィルムの層構成を示す断面図である。
【図2】コルゲート板の断面図である。
【符号の説明】
1:コルゲート板
1a:山部
1b:谷部

Claims (4)

  1. アクリル系樹脂塗料、ウレタン系樹脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料またはフッ素系樹脂塗料から選ばれる樹脂塗料からなる上塗膜層、下塗膜層、合成樹脂基材層、粘着剤層が順次積層されてなるマーキングフィルムにおいて、上塗膜層と下塗膜層の厚みが下塗膜層厚≦上塗膜層厚であり、かつ上塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が0.2〜0.6kgf/15mmであり、下塗膜層の50μm厚みにおける2%伸長時抗張力が上塗膜層のそれより50〜200%大きいことを特徴とするマーキングフィルム。
  2. 上記基材層の合成樹脂が軟質ポリプロピレン系樹脂20〜100重量%とその他のポリオレフィン系樹脂0〜80重量%からなり、軟質ポリプロピレン系樹脂は重量平均分子量80,000〜500,000を有し、かつクロス分別法による10℃以下の溶出量が45〜80重量%、10℃を越え70℃以下での溶出量が5〜35重量%、70℃を越え95℃以下での溶出量が1〜30重量%、95℃を越え125℃以下での溶出量が3〜35重量%である請求項1に記載のマーキングフィルム。
  3. 下塗膜層の厚みが1〜15μmであり、上下塗膜層の全厚が60μm以下である請求項1に記載のマーキングフィルム。
  4. 上記ウレタン系樹脂塗料からなる上塗膜層を形成する樹脂塗料100重量部に対して軟化剤7〜11重量部を含む請求項1に記載のマーキングフィルム。
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