JP4510973B2 - 水性塗料組成物、配合法 - Google Patents
水性塗料組成物、配合法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性塗料用組成物および耐汚染性を減少させることなく塗膜表面に優れた鮮映性を付与することのできる塗料用樹脂組成物、水性塗料用塗膜鮮映化剤および水性塗料組成物の配合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗料の分野においても、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水溶性あるいは水分散樹脂への転換が試みられている。しかし、水系塗料は溶剤系塗料に比べ、塗膜性能が劣る傾向にあった。
【0003】
こういった状況下、水系塗料においても溶剤系塗料と同様の塗膜物性が要求され、特に耐汚染性といった高度な性能付与の要求が高い。
【0004】
耐汚染性付与については、水系塗料でもシリケート化合物を配合することにより塗膜表面を親水化し、雨水等で汚れ物質を除去する方法が知られている(特開平8−259892)。
【0005】
また、耐汚染性をさらに向上させる方法として、反応性シリコン化合物を加水分解させる化合物を添加する方法が開発されている(特開平8−259892)。
【0006】
しかしシリケート化合物を配合することにより、耐汚染性は改良されるものの、水系塗料独特の曇りが発生する、すなわち塗膜の鮮映性が低下する傾向にあった。特に触媒として有機金属化合物や酸性有機化合物を添加する場合は、鮮鋭性が低下し、塗膜表面にはじき等が発生する場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、耐汚染性に優れるとともに、塗膜表面に優れた鮮映性を付与しうる水性塗料組成物および水性塗料用塗膜鮮映化剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点について鋭意研究を重ねた結果、以下の方法により上記の課題を達成するに至った。
1)水性塗料を構成する塗料用樹脂組成物であって、
(A)水性樹脂分散体、
(B)一般式(1)
【0009】
【化5】
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表せるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物、
(C)酸性有機化合物((C−1)成分という)および塩基性化合物((C−2)成分という)
を含有してなる塗料用樹脂組成物であり、かつ(C−1)成分と(C−2)成分の酸/塩基当量比が、1/0.01から1/3である塗料用樹脂組成物。
2)前記(B)成分が、乳化された状態であることを特徴とする1)記載の塗料用樹脂組成物。
3)前記(B)成分が、テトラアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物であることを特徴とする1)または2)に記載の塗料用樹脂組成物。
4)前記(C−1)成分が、硫酸化合物、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物、燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の塗料用樹脂組成物。
5)前記(C−1)成分が一般式(2)で表される燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の塗料用樹脂組成物。
【0010】
【化6】
(式中のXは、アルコキシル基、アルキル基、アラルキル基、アリール基より選ばれる1価の炭化水素基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、aは1または2の整数である。)
6)前記(C−1)成分が、一般式(2)で表される燐酸化合物であり、かつ一般式(2)におけるXが炭素数4以上のアルコキシル基であることを特徴とする5)に記載の塗料用樹脂組成物。
7)前記(C−2)成分の塩基性化合物がアンモニアあるいはアミン類であることを特徴とする1)〜6)のいずれか一項に記載の塗料用樹脂組成物。
8)請求項1に記載の水性塗料組成物が、エナメル塗料であることを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の塗料用樹脂組成物。
9)(A)水性樹脂分散体、
(B)一般式(1)
【0011】
【化7】
(式中、R1はじかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、 R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表せるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
を含有する塗料用組成物に配合するための塗料用塗膜鮮映化剤であって、(C)酸性有機化合物(C−1)および塩基性化合物(C−2)を含有し、かつ(C−1)成分と(C−2)成分の酸/塩基当量比が1/0.01から1/3である塗料用塗膜鮮映化剤。
10)前記(C−1)酸性有機化合物が、硫酸化合物、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物、燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする9)記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
11)前記(C−1)成分が、一般式(2)で表される燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする10)に記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
【0012】
【化8】
(式中のXは、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基より選ばれる1価の炭化水素基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、aは1または2の整数である。)
12)前記(C−1)成分が、一般式(2)で表される燐酸化合物であり、かつXが炭素数4以上のアルコキシル基であることを特徴とする11)に記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
13)前記(C−2)成分の塩基性化合物がアンモニアあるいはアミン類であることを特徴とする10)〜12)のいずれか一項に記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
14)請求項10に記載の(A)成分が、アクリル樹脂系水性塗料である11)〜13)のいずれか一項に記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
15)(A)および(B)成分を含有する塗料組成物を予め作成したあと、前記(C−1)成分および(C−2)成分の混合物および/または反応物を別途、その塗料組成物に添加することを特徴とする1)〜9)のいすれか一項に記載の水性塗料の配合方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、水性塗料を構成する塗料用樹脂組成物であって、
(A)水性樹脂分散体、
(B)一般式(1)
【0014】
【化9】
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表せるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物、
(C)酸性有機化合物((C−1)成分という)および塩基性化合物((C−2)成分という)
を含有してなる塗料用樹脂組成物であり、かつ(C−1)成分と(C−2)成分の酸/塩基当量比が、1/0.01から1/3である塗料用樹脂組成物を用いることで水性塗料独特の塗膜表面の曇りのない鮮映性の高い塗膜を与え、かつ低汚染性を付与することが可能である。
【0015】
塗膜の鮮映性は、20度の光沢値を測定することで評価できる。
塗膜の光沢は、JIS Z 8741で規定されているように、入射角85度、60度、20度の光沢度が測定される。塗膜表面の曇り、すなわち鮮鋭性は、85度や60度といった入射角の大きい光沢度の測定では、区別し難く、より厳しい条件の入射角の小さい20度の光沢度を測定することで、鮮映性の差が区別できる。すなわち塗膜表面の曇り等の鮮映性を評価する場合には、塗膜の20度の光沢度の測定が有効な方法であり、鮮映性に劣る塗膜の20度光沢値は大きく低下する。したがって本発明の目的とする鮮映性に優れた塗膜とは、20度の光沢度が優れた物である。
【0016】
本明細書において20度の光沢値とは、以下の方法で測定することにより得られる光沢値である。すなわち組成物を、エナメル化された塗料としてガラス板等の平滑な基材に塗布し、その後塗膜を常温で乾燥し得られた塗膜の入射角20°光沢値を光沢計で測定する。
【0017】
本発明における(A)成分の水性樹脂分散体としては、特に限定はなくスチレン−ブタジエンゴムラテックス、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレン系ラテックス、ブチルゴムラテックス、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル共重合体エマルジョン、アクリル共重合体エマルジョン、アクリル−スチレン重合体エマルジョン、ポリスチレンエマルジョン、ポリアミドエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、アルキド樹脂エマルジョン、シリコン系樹脂エマルジョン、フッ素樹脂エマルジョン、アミノ樹脂エマルジョン、メラミン樹脂エマルジョン、ポリイソブチレン樹脂エマルジョン、ポリウレタン樹脂エマルジョン等およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。またこれらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
本発明における(B)一般式(1)
【0018】
【化10】
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、 R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表せるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物としては、たとえば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケート、テトラ−i−ブチルシリケート、テトラ−t−ブチルシリケート、MSi51、ESi28、ESi40(以上コルコート(株)製)などのテトラアルキルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリ−sec−オクチルオキシシラン、メチルトリブトキシシラン、AFP−1(信越化学(株)製)などのトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物;などがあげられる。
【0019】
前記(B)成分は、乳化状態で使用することが好ましい。(B)成分は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性の乳化剤いずれを用いても乳化可能であるが、シリコン化合物の安定性、乾燥塗膜の耐水性、耐久性などの点からノニオン系乳化剤を使用するのが好ましい。乳化物の分散安定性の点から、アニオン系乳化剤を併用することもできる。
【0020】
ノニオン系乳化剤としては、特に限定はなく、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンラウレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエートなどのグリセリン脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノセスキオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレートなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類などがあげられる。
【0021】
また、フッ素系あるいはシリコン系ノニオン乳化剤も使用することができ、フッ素系ノニオン乳化剤としては、たとえば、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド変性ポリアルキレンオキシドのようなノニオン性パーフルオロアルキル含有ポリオキシエチレンオキシドなどがあげられる。具体的な例としては、EFTOP EF−121、EF−122A、EF−122B、EF−122C、EF−122A3、EF−301、EF−303、EF−305(以上、新秋田化成(株)製)、MERGAFAC F−142D、F−144D、F−171、F−172、F−173、F−177、F−183、F−184、F−815(以上、大日本インキ化学工業(株)製)などがあげられる。
【0022】
シリコン系ノニオン乳化剤としては、たとえば、ポリジメチルシロキサンの片末端およびまたは両末端および/または側鎖をポリアルキレンオキシド変性したノニオン系ポリアルキレンオキシド変性ポリジメチルシロキサンなどがあげられる。具体的な例としては、SILWET L−77、L−720、L−722、L−7001、L−7002、L−7602、L−7604、L−7605、L−7607N、Y−7006、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2120、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164FZ−2165、FZ−2166、FZ−2171(以上、日本ユニカー(株)製)、KF−351、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−907、X−22−6008、X−22−811、X−22−812(以上、信越化学工業(株)製)、PS071、PS072、PS073、PS074(以上、チッソ(株)製)、TAF4200、TEA4300(以上、東芝シリコーン(株)製)、SH3748、SH3749、SH3771、SH8400、SF8410、SF8700(以上、トーレ・シリコーン(株)製)などがあげられる。
【0023】
アニオン系乳化剤としては、通常使用される物であれば特に限定はなく、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;Newcol−723SF、Newcol−707SN、Newcol−707SF、Newcol−740SF、Newcol−560SN(以上日本乳化剤(株)製)等の(ポリ)オキシエチレン基を含むアニオン系乳化剤;FTOP EF−102、EF−103、EF−104、EF−105、EF−112、EF−123A、EF−123B、EF−306A、EF−501、EF−201、EF−204(以上、新秋田化成(株)製)などのフッ素系乳化剤;カルボキシル基含有ポリジメチルシロキサンを塩基で中和したシリコン系乳化剤などがあげられる。
【0024】
これらの乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、シリコン化合物100重量部に対して0.05〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部である。0.05重量部未満では安定なシリコン化合物の乳化物が得られない場合がある。50重量部を越えると塗膜外観や耐水性の低下などの問題が発生する場合がある。
【0025】
また、アニオン系乳化剤を併用する場合には、全乳化剤中のアニオン系乳化剤の割合は、30重量部以下、好ましくは、20重量部以下である。30重量部を超えると、安定なシリコン化合物の乳化物を得ることが難くくなる傾向にあり、分離し易くなったり、乳化条件が限定されたりする傾向にある。
【0026】
乳化後の混合物のpHは特に限定はないが、乳化物の安定性の点から、pHを6〜10に保つのが好ましい。
【0027】
pH調製の方法あるいは順序については特に限定しないが、シリコン化合物の乳化の早い段階で行うことが望ましい。pH調製が遅くなるとそれだけ加水分解が進行するおそれがある。pH調製には、一般に使用するアルカリを用いれば良く、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、各種アミンなどがあげられる。
【0028】
また配合するシリコン化合物の安定性の点より、pH調整後に緩衝剤でpHを維持することが好ましい。pH維持は、一般に使用される緩衝剤が使用可能である。
【0029】
塗膜への親水性付与の効果が大きいということから、(B)成分は前記テトラアルキルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物を使用することが好ましい。更には、前記テトラアルキルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物のアルキル部の50%以上が炭素数3以上であることが好ましい。それらの具体例としては、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケート、テトラ−i−ブチルシリケート、テトラ−t−ブチルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物、あるいはこれらの化合物とテトラメチルシリケートあるいはテトラエチルシリケートを混合し加水分解縮合させることによってアルキル部の50%以上が炭素数3以上である(B)成分を得ることができる。その他、テトラメチルシリケートあるいはテトラエチルシリケートを加水分解縮合させる際に炭素数3以上のアルコールを混合し、エステル交換反応させることでも目的とするアルキル部の50%以上が炭素数3以上である(B)成分を得ることができる。
【0030】
前記(B)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(B)成分の配合割合は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜30重量部である。1重量部未満では得られる塗膜の親水性が十分ではない傾向にあり、100重量部を越えると塗膜外観やクラックなどの問題が発生する傾向にある。
【0031】
本発明における(C)成分としては、酸性有機化合物(C−1)成分が必須である。従って、塩基性化合物と反応し塩を形成することができる。(C−1)成分は水へ難溶であるものがより好ましい。さらに水への溶解度が2%以下であることが好ましい。水溶性が高いと、塗膜鮮映化の効力が少ない傾向にある。
【0032】
また(C−1)成分は、硫酸化合物、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物、燐酸化合物等から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0033】
硫酸化合物としてはラウリル硫酸等が挙げられ、スルフォン酸化合物としてはベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルフォン酸、ナフタレンスルフォン酸等が挙げられる。カルボン酸化合物の例としては、カプロン酸、n−ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等のアルキル基を有するもの、ハロゲン化アルキル基を有するもの等が挙げられる。燐酸化合物としては、ラウリル燐酸等のアルキル燐酸、ジブチルフォスフェート、ジ−2―エチルヘキシルホスフェート等の酸性燐酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテル燐酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸が挙げられる。
(C−1)成分としては、一般式(2)で示される燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、
【0034】
【化11】
(式中のXは、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基より選ばれる1価の炭化水素基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、aは1または2の整数である。)その具体例としてはジブチルホスフェート、2―エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2―エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート等の酸性燐酸エステル化合物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル燐酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテル燐酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテル燐酸等のポリオキシエチレンアルキルリン酸化合物が挙げられる。なかでも一般式(2)におけるXが炭素数4以上にアルコキシル基である燐酸化合物がより好ましい。具体例としては、ジブチルホスフェート、2―エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2―エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート等の酸性燐酸エステル化合物が挙げられる。さらには2―エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2―エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートなどのXが炭素数8以上のものがより好ましい。
【0035】
これらの酸性有機化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0036】
本発明における(C)成分のもう一つの必須成分は(C−2)成分は、塩基性化合物である。従って、酸と反応し塩を形成するような一般の塩基性化合物が使用可能である。
【0037】
具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム等の無機系の塩基性化合物や、アンモニア水溶液、1級アミン、2級アミン、3級アミン等が挙げられる。
(C−2)成分としては、アンモニア、アミンが好ましく、それらの具体例としては、アンモニア水溶液、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン化合物、エタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、モルホリン、ベンジルアミン、アニリンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0038】
なかでも有機系の塩基性化合物は、水に可溶のものが好ましい。なかでも25℃における水への溶解度が10g/100gH2O以上のものが好ましい。例えば、アンモニア水溶液、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、エタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のものがよい。
【0039】
前記(C−1)成分および(C−2)成分は混合物あるいは反応物として用いることができる。これらは直接混合あるいは反応させてもよいが、溶剤を用いて混合、反応させることが好ましい。使用する溶剤としては、これらの混合、反応物を溶解することが可能であれば制限はないが、水系塗料に配合するため水へ可溶の溶剤が好ましい。例えばエタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、親水基含有有機化合物および水そのものがある。上記溶媒は揮発性溶剤が少ないことが好ましいため、これらの混合物あるいは反応物を水へ溶解あるいは分散させることがより好ましい。
【0040】
これら(C−1)成分と(C−2)成分の混合あるいは配合割合としては、(C−2)成分を(C−1)成分に対し0.01当量以上、3当量以下が好ましい。さらに好ましくは0.1当量以上、2当量以下が好ましい。(C−2)成分の量が0.01当量未満である場合は、塗膜鮮鋭性への改良の効果が少なくなる傾向にあり、3当量を超える場合は塗料の化学的安定性が低下する傾向にある。
【0041】
(A)成分、(B)成分、(C)成分を含有する樹脂組成物は、必要に応じて、通常塗料に用いられる顔料(二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリンなどの白色顔料、カーボン、ベンガラ、シアニンブルーなどの有色系顔料)や造膜剤、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤などの通常の塗料用成分として使用される添加剤を適宜加えてエナメル化された水性塗料として用いることもできる。
【0042】
本発明における塗料用樹脂組成物は、エナメル化された塗料として用いることで、特に本発明の効果である鮮映性の高い塗膜を得る優れた効果を発揮する。
【0043】
また本発明においては、予め(A)成分を含有するエナメル化された塗料組成物を作成したのち、(B)成分、(C−1)成分と(C−2)成分の混合物あるいは反応物を、前記エナメル化された塗料組成物に別途添加する方法、あるいは(A)成分および(B)成分を含有するエナメル化された塗料組成物を作成したのち、(C−1)成分と(C−2)成分の混合物あるいは反応物を、前記エナメル化された塗料組成物に別途添加する方法により、塗料配合することができる。好ましくはこれらエナメル化された塗料組成物を塗装する前に(C−1)成分と(C−2)成分の混合物あるいは反応物を添加し、よく攪拌した後塗装することが好ましい。
【0044】
(A)成分および(B)成分を含有するエナメル化された塗料組成物を作成したのち、(C−1)成分と(C−2)成分の混合物あるいは反応物を配合する形態をとることで、(C−1)成分と(C−2)成分の混合物あるいは反応物を上記塗料用塗膜鮮映化剤として利用することが可能である。
【0045】
本発明では市販されている水性塗料に(B)成分、(C−1)成分および(C−2)成分を添加することが可能であり、その塗料の基本的な塗膜物性を低下させることなく塗膜の鮮映性を改良できる。
【0046】
本発明の組成物は、例えば建築内外装用、メタリックベースあるいはメタリックベース上のクリアーなどの自動車用、アルミニウム、ステンレスなどの金属直塗用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、石綿スレート、アスベストボード、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート、硅酸カルシウム板、タイル、レンガなどの窯業系直塗用、ガラス用、天然大理石、御影石等の石材用の塗料あるいは上面処理剤として用いられる。
【0047】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0048】
【実施例】
本発明の組成物の調製方法と製造方法を実施例に基づき説明する。
(A)成分の製造:
水性樹脂分散体の製造法方について説明する。撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水33重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製:3%希釈)2.5重量部、酢酸アンモニウム0.15重量部、ロンガリット0.05重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.04重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。表1に示す組成の混合物5重量部滴下して30分間初期重合を行った。表1の残り95重量部およびn−ドデシルメルカプタン0.4重量部にアクアロンHS0515(第一工業製薬(株)製:有効成分15%)10.25重量部、アクアロンRN−30(第一工業製薬(株)製:20%希釈)3.5重量部および脱イオン水42.5重量部を加え乳化したモノマーを、3時間かけて等速追加した。同時にロンガリット0.4重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.3重量部をモノマー追加時に分割投入した。この後、1時間後重合を行い、樹脂固形分が50重量%のエマルジョンを得た。
【0049】
【表1】
(B)成分の調整
B−1およびB−2:
エチルシリケートの部分加水分解縮合物(ESi−48:コルコート(株)製)30重量部をポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム5重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3重量部とを混合し、1000rpm以上で高速攪拌しながら、ゆっくりと脱イオン水を62重量部を加えて、乳化物(B−1)を作成した。
【0050】
テトラエトキシシラン100重量部にイソプロピルアルコール300重量部混合し、70℃に昇温し1N塩酸水溶液を0.1重量部添加し3時間攪拌した。その後、温度を室温へ下げ水酸化ナトリウムでpH7付近へ中和し、さらに溶剤を減圧除去して、イソプロピルアルコールでエステル交換されたシリケート化合物を得た。このシリケート化合物をB−1と同様の方法にて乳化し、乳化物(B−2)を得た。
【0051】
(A)成分および(B)成分を含む塗料組成物および水性塗料の作成
前述のごとく作成した(A)成分および(B)成分を表2の重量部に従い混合し十分に攪拌し(A)成分および(B)成分の混合物分散体AB−1〜5を得た。次に表3に示す顔料ペーストを用い、表4の塗料化の配合方法に従い塗料化し、(A)成分および(B)成分を含む白エナメル塗料組成物AB−1E〜5Eを得た。(B)成分を含まないAB−6についても同様に塗料化しAB−6Eとした。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
(C−1)成分および(C−2)成分の混合物の作成
表5に従い、脱イオン水に(C−2)成分を配合し、攪拌しつつ(C−1)成分を徐々に滴下し、目的の(C−1)成分および(C−2)成分の混合物C1〜4を作成した。
【0055】
さらにDP8R20重量部をイソプロピルアルコール80重量部に溶解したものを作成した。またジブチルスズジラウレート(DTL)10重量部、TD−10014(日本乳化剤(株)製の界面活性剤)4重量部、TD−1006(日本乳化剤(株)製の界面活性剤)6重量部、プロピレングリコール10重量部を配合、攪拌し、徐々に脱イオン水70重量部を添加することでDTL乳化物を得た。
【0056】
【表5】
[評価方法]
1.試料配合方法
表6、表7の配合に従い、(C)成分を前述で得たAB−1E〜6Eに対し塗装前に別途添加し、手攪拌したのちガラス板へアプリケーターにて塗装した。得られたガラス板を常温にて2週間養生し、目的の塗膜を得た。
2.耐汚染性
折り曲げ曝露板を用い、45度面および垂直面の雨筋および非筋部の汚れを確認した。汚染性は、曝露初期のL*a*b*表色系で表される明度を色彩色差計(ミノルタ(株)製:CR300)で測定し、大阪府摂津市で北面向き屋外曝露を3カ月実施した。曝露前後の明度差の絶対値(ΔL値)を汚染性の尺度とした。なお、数値の小さい方が耐汚染性に優れ、数値の大きい方が汚れていることを示す。
3.塗膜の親水性
親水性は、接触角測定機(協和界面科学(株)製:CA−S150型)を用い、上記で得た塗膜の室温養生2週間後、室温養生2週間後にさらに水浸漬2週間後の接触角を測定した。さらに、耐汚染性の評価で用いた折り曲げ曝露板の大阪府摂津市での屋外曝露3カ月後の接触角を測定することにより評価した。数値が小さいほど親水性が高いことを示す。
4.白エナメルの鮮映性とはじき
目視にて塗膜表面の曇りすなわち鮮鋭性を評価し、以下の5段階で評価した。また、塗膜表面にはじきが発生していないか確認した。
【0057】
5:塗膜表面に曇りがない。
【0058】
4:塗膜表面に曇りがほとんどなし。
【0059】
3:塗膜表面が少し曇っている。
【0060】
2:塗膜表面が曇っている。艶が少ない。
【0061】
1:塗膜表面が艶びけしている。
4.白エナメル光沢
上記方法にて塗料をガラス板に塗布し、常温で14日間放置した後に入射角20°および60°の光沢値を光沢計Multi-Gloss 268(ミノルタ(株)製)で測定した。光沢値は、3回測定した値の平均値を得た。
【0062】
以上の結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【発明の効果】
本発明は(A)水性樹脂分散体と、(B)一般式(1)
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、 R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表せるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物、酸性有機化合物(C−1)成分および塩基性化合物(C−2)を含有してなる塗料用樹脂組成物であって、(C−1)成分と(C−2)成分の酸/塩基当量比が、1/0.01から1/3である塗料用樹脂組成物を用いることで水性塗料独特の塗膜表面の曇りのない鮮映性の高い塗膜を与え、かつ低汚染性を付与することが可能である。
【0066】
【符号の説明】
なし
Claims (11)
- 水性塗料を構成する塗料用樹脂組成物であって、(A)水性樹脂分散体、(B)一般式(1)
- 前記(B)成分が、乳化された状態であることを特徴とする請求項1記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記(B)成分が、テトラアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記(C−1)成分が一般式(2)で表される燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料用樹脂組成物。
- 前記(C−1)成分が、一般式(2)で表される燐酸化合物であり、かつ一般式(2)におけるXが炭素数4以上のアルコキシル基であることを特徴とする請求項4に記載の塗料用樹脂組成物。
- 請求項1に記載の水性塗料が、エナメル塗料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料用樹脂組成物。
- (A)水性樹脂分散体、(B)一般式(1)
- 前記(C−1)成分が、一般式(2)で表される燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項7記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
- 前記(C−1)成分が、一般式(2)で表される燐酸化合物であり、かつXが炭素数4以上のアルコキシル基であることを特徴とする請求項8に記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
- 請求項7に記載の(A)成分が、アクリル樹脂である請求項7〜9のいずれか一項に記載の水性塗料用塗膜鮮映化剤。
- (A)および(B)成分を含有する塗料組成物を予め作成したあと、前記(C−1)成分および(C−2)成分の混合物および/または反応物を別途、その塗料組成物に添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性塗料の配合方法。
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