JP4256606B2 - 水性2液塗料用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐汚染性、耐水性、耐候性、貯蔵安定性に優れた水性塗料用組成物に関する。特に2液用塗料として、低汚染性を維持したまま、優れた貯蔵安定性を付与することのできる水生塗料用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗料の分野においても、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水溶性あるいは水分散樹脂への転換が試みられている。しかし、水系塗料は溶剤系塗料に比べ、塗膜性能が劣る傾向にある。
【0003】
こういった状況下、水系塗料においても溶剤系塗料と同様の塗膜物性が要求され、特に耐汚染性といった高度な性能付与の要求が高まっている。
【0004】
耐汚染性付与については、水系塗料でも例えばテトラアルコキシシランやトリアルコキシシランなどのアルコキシシラン化合物を配合することにより塗膜表面を親水化し、雨水等で汚れ物質を除去する方法が知られている(特開平8−259892)。
【0005】
また、耐汚染性をさらに向上させる方法として、上記アルコキシシラン化合物を部分的に加水分解縮合させた化合物を添加する方法も開発されている(特開平8−259892)。
【0006】
また特定のポリアルコキシシロキサン化合物の乳化物を使用することにより耐汚染性と貯蔵安定性を両立させた方法も知られている(WO98/36016)。 しかしながら顔料、分散剤等を配合した実用塗料として見た場合、まだ十分な貯蔵安定性が確保されているとはいえず、また汚染性のレベルも溶剤系に比べると十分とはいえない。
【0007】
現状では、実用的には1液用塗料としてのみならず、2液用塗料としても十分な貯蔵安定性を保持したまま、優れた耐汚染性を示すものがなく、その開発が待ち望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐汚染性を維持したまま、水性2液用塗料として十分な貯蔵安定性を示すエマルション組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点について鋭意研究を重ねた結果、以下の方法により上記の課題を達成するに至った。
1)A液が(A)成分を含む組成物であって、B液が(B)成分を含む組成物からなる水性2液用塗料組成物であって、
(A)成分として
加水分解性基の加水分解縮合触媒を含有する(メタ)アクリル系樹脂エマルション、
(B)成分として
一般式(1)
【0010】
【化5】
(式中、R1はエチル基、R2は炭素数3〜4のアルキル基であり、0.7≦X≦1.2、 z/(y+z)=0.1〜0.5)
で表されるテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物のエマルション、
を含む水性2液塗料用組成物。
2)前記(メタ)アクリル系樹脂エマルションを乳化重合により作成する時の一成分として、一般式(2)
【0011】
【化6】
(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、X1はハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基またはアミノ基、aは0〜2の整数を示す。(ただし、R3およびX1がそれぞれ2つ以上の場合には、それらは同一または相異なる。))で表わされるシリル基を含有するビニル系モノマーを含むことを特徴とする1)記載の水性2液塗料用組成物。
3)前記(メタ)アクリル系樹脂エマルションを乳化重合により作成する時の一成分として、一般式(3)
【0012】
【化7】
(式中、R4は水素またはメチル基、R5は炭素数2から20のアルキレン基、nは0〜8の整数を示す)で表されるビニル系モノマーを含むことを特徴とする1)記載の水性2液塗料用組成物。
4)前記加水分解縮合触媒が、錫系化合物、酸性有機化合物と塩基性化合物の混合物または反応物、より選ばれる少なくとも一種である1)〜3)記載の水性2液塗料用組成物。
5)前記酸性有機化合物が、硫酸化合物、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物、燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする1)〜3)記載の水性2液塗料用組成物。
6)前記酸性有機化合物が以下の一般式(4)で表されるリン酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする1)〜3)記載の水性2液塗料用組成物。
【0013】
【化8】
(式中のX2は、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基より選ばれる1価の炭化水素基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、aは1または2の整数である)。
7)前記塩基性化合物がアンモニアあるいはアミン類であることを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載の水性2液塗料用組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のA液とB液の2液からなる水性塗料において、A液が(A)成分を含む組成物であって、B液が(B)成分を含む組成物からなる水性2液用塗料組成物について詳細に説明する。
【0015】
(A)成分として、加水分解性ケイ素基の加水分解縮合触媒を含有する(メタ)アクリル系樹脂エマルションを使用する2液用の塗料用組成物である。
【0016】
(A)成分の(メタ)アクリル系樹脂エマルションを製造する方法には特に限定がなく、通常の乳化重合が、容易にエマルションを得ることができるという点から好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル系単量体には特に限定がなく、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル系単量体に加え、物性調整のために他のビニル系単量体を共重合することも可能である。他のビニル系単量体としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンなどのフッ素含有ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸、またはこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩;無水マレイン酸などの酸無水物またはこれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するアルコールとのハーフエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、またはこれらの塩酸、酢酸塩;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシスチレン、アロニクスM−5700(東亜合成化学工業(株)製)、PlaccelFA−1、PlaccelFA−3、PlaccelFA−4、PlaccelFM−1、PlaccelFM−4(以上、ダイセル化学工業(株)製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上、日本触媒化学工業(株)製)、ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーAP−400、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上、日本油脂(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350などのブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400などのブレンマーPMEシリーズ、ブレンマーAE−350などのブレンマーAEシリーズ(以上、日本油脂(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などのポリオキシエチレン鎖を有する親水性ビニル系単量体;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトンアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;東亜合成化学工業(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他のビニル系単量体;旭電化工業(株)製のLA87、LA82、LA22などの重合型光安定剤、重合型紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0018】
これらモノマーの種類は、得られる硬化性樹脂組成物の目的とする物性に応じて選択すればよい。これらの中で、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性単量体を用いた場合には、得られる樹脂エマルションの機械的安定性が低下することなく、また、得られる組成物を用いて形成された塗膜の耐水性、光沢などが向上するので好ましい。なお、前記親水性単量体の鎖中におけるオキシエチレンの繰返しの数に特に限定はないが、3〜30であることが好ましい。
【0019】
かかるポリオキシエチレン鎖を有する親水性単量体の使用量は、重合成分全量100部に対して0.1〜10部、さらには0.2〜6部となるように調整することが好ましい。使用量が0.1部未満である場合には、エマルションの機械的安定性や、得られる塗料用樹脂組成物を用いて形成された塗膜の光沢が低下するようになる傾向があり、また10部を超える場合には、塗膜が軟化し、汚れが付着しやすくなり、また耐水性が低下する傾向がある。
【0020】
前記(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、架橋構造を有することで塗膜の耐汚染性、機械的特性、耐水性等を向上させることができる。このような架橋構造を導入する方法の1つとして、一般式(2)
【0021】
【化9】
で表わされるシリル基を含有するビニル系モノマーを使用することができる。
【0022】
一般式(2)のR3としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基が挙げられ、R3が2個存在するときはそれらは同じでも異なっていてもよい。R3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、フェニル基、o−,m−、p−トルイル基、ベンジル基、等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性の点からメチル基が好ましい。
【0023】
X1としてはハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基またはアミノ基が挙げられ、X1が2個以上存在するときは、それらは同じでも異なっていてもよい。X1の中では、原料の入手容易性と取扱いの容易さから、アルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基としては特に限定はなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等が挙げられる。
【0024】
アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体の具体例を挙げるならば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等である。
【0025】
一般式(2)で表わされる架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、重合成分全量100部に対して、0.1〜10部、好ましくは0.5〜5部の範囲であるのが好ましい。0.1部未満である場合には、得られる組成物を用いて形成された塗膜の耐水性および耐候性が劣る傾向があり、また10部を超える場合には、得られる塗膜が脆くなる傾向がある。
【0026】
また前記(メタ)アクリル系樹脂エマルションに架橋構造を導入する方法として、上記シリル基を含有するビニル系モノマーに換えて、または併用して、一般式(3)
【0027】
【化10】
(式中、R4は水素またはメチル基、R5は炭素数2から20のアルキレン基、nは0〜8の整数を示す)で表されるビニル系モノマーを使用することもできる。
【0028】
具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサメチレンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが挙げられ、使用量は、重合成分全量100部に対して、0.1〜10部、好ましくは0.5〜5部の範囲であるのが好ましい。0.1部未満である場合には、得られる組成物を用いて形成された塗膜の耐水性および耐候性が劣る傾向があり、また10部を超える場合には、得られる塗膜が脆くなる傾向がある。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、通常の方法を採用することで得ることができるが、エマルションの粒子径および安定性を考慮すると乳化重合法が好ましい。
【0030】
前記乳化重合法には特に限定がなく、たとえばバッチ重合法、モノマー滴下重合法、乳化モノマー滴下重合法などの各種乳化重合法の中から適宜選択して採用することができるが、本発明においては、特に製造時のエマルションの安定性を確保する上で、モノマー滴下重合法および乳化モノマー滴下重合法が好ましい。
【0031】
乳化重合に際しては、通常用いられるイオン性または非イオン性の界面活性剤を特に限定なく用いることができる。
【0032】
イオン性界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアリルエーテルサルフェート、オクチルフェノキシエトキシエチルスルホネート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;イミダゾリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイドなどのアンモニウム塩などが代表例として挙げられるが、これらの中では、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0033】
また、非イオン性界面活性剤としては、たとえばポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレン類;L−77、L−720、L−5410、L−7602、L−7607(以上、ユニオンカーバイド社製)などのシリコーンを含む非イオン系の界面活性剤などが代表例として挙げられる。
【0034】
本発明においては、界面活性剤として1分子中に重合性二重結合を有する反応性界面活性剤を用いることができ、特に分子内にポリオキシエチレン基を有する反応性界面活性剤を用いた場合には、得られる塗料用組成物を用いて形成された塗膜の耐水性が向上する。
【0035】
かかる反応性界面活性剤の具体例としては、たとえばアデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N(以上、旭電化工業(株)製)、Antox−MS−60(日本乳化剤(株)製)、アクアロンRN−20、RN−30、RN−50、HS−10、HS−20、HS−1025(以上、第一工業製薬(株)製)などが挙げられる。
【0036】
前記界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、重合成分全量100部に対して10部以下、好ましくは0.5〜8部である。かかる界面活性剤の使用量が10部を超える場合には、得られる樹脂組成物を用いて形成された塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
【0037】
重合開始剤としては、通常に使用されるラジカル開始剤を使用することができるが、重合をより安定に行なうために、重合開始剤としてレドックス系触媒を用いることができる。また、重合中の混合液の安定性を保持し、重合を安定に行なうためには、温度は70℃以下、好ましくは40〜65℃である。
【0038】
前記レドックス系触媒としては、たとえば過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムと酸性亜硫酸ナトリウムまたはロンガリットとの組み合わせ、過酸化水素とアスコルビン酸との組み合わせ、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物と酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどとの組み合わせなどが挙げられる。特に、有機過酸化物と還元剤との組み合わせが好ましい。
【0039】
前記重合開始剤の使用量は、重合成分全量100部に対して0.01〜10部、好ましくは0.05〜5部である。かかる重合開始剤の使用量が0.01部未満である場合には、重合が進行しにくくなることがあり、10部を超える場合には、生成する重合体の分子量が低下する傾向がある。
【0040】
また、重合開始剤の触媒活性を安定的に付与するために、硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート化剤を用いてもよい。かかるキレート化剤の使用量は、重合成分全量100部に対して0.0001〜1部、好ましくは0.001〜0.5部である。
【0041】
重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤の添加も可能である。連鎖移動剤としては公知のもの、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン系化合物、クロロホルム、四塩化炭素等の有機ハロゲン化物、スルフィドベンゼン、イソプロピルベンゼン、塩化第二鉄等が挙げられる。
【0042】
前記(メタ)アクリル樹脂エマルション中の樹脂固形分濃度は、20〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%となるように調整する。かかる樹脂固形分濃度が70重量%を超える場合には、系の濃度が著しく上昇するため、重合反応に伴なう発熱を除去することが困難になったり、重合器からの取り出しに長時間を要するようになる傾向がある。また、樹脂固形分濃度が20重量%未満である場合には、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂量が少なく、経済面で不利となる上、塗膜形成の際に膜厚が薄くなってしまい、性能劣化を起こしたり塗装作業性の点で不利となる傾向がある。
【0043】
なお、本発明に用いられるエマルションは、平均粒子径が0.02〜1.0μm程度が好ましい。 さらに塗料としての外観性、作業性の点から0.05〜0.5μm程度が好ましい。
【0044】
本発明の(A)成分は、上記(メタ)アクリル系樹脂エマルションに、加水分解縮合触媒を混合したものである。
【0045】
加水分解縮合触媒としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例示するならば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレート、オクチル酸錫などの錫系化合物;アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系化合物;イソプロピルトリステアロイルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタン系化合物;テトラ−n−ブトキシジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、アルコキシジルコニウムとアセチルアセトンまたはアセト酢酸エステルの反応物等のジルコニウム系化合物;プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、グリシジルメタクリレート、グリシドール、アリルグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、油化シェルエポキシ(株)製のカーデュラE、エピコート828、エピコート1001等のエポキシ化合物とリン酸および(または)酸性モノリン酸エステルとの付加物等が挙げられる。
【0046】
また、加水分解縮合触媒として、酸性有機化合物と塩基性化合物の混合物または反応物を用いることもできる。
【0047】
酸性有機化合物としては、硫酸化合物、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物、リン酸化合物等から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0048】
硫酸化合物としてはラウリル硫酸等が挙げられ、スルフォン酸化合物としてはベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルフォン酸、ナフタレンスルフォン酸等が挙げられる。カルボン酸化合物の例としては、カプロン酸、n−ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等のアルキル基を有するもの、ハロゲン化アルキル基を有するもの等が挙げられる。
【0049】
酸性有機化合物としては、特に一般式(4)で表されるリン酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0050】
【化11】
(式中のX2は、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基より選ばれる1価の炭化水素基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、aは1または2の整数である)。
【0051】
なかでも一般式(4)におけるX2が炭素数4以上のアルコキシ基である燐酸化合物がより好ましい。具体例としては、ジブチルホスフェート、2―エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2―エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート等の酸性燐酸エステル化合物が挙げられる。さらには2―エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2―エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェートなどのX2が炭素数8以上のものがより好ましい。
【0052】
これらの酸性有機化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0053】
塩基性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム等の無機系の塩基性化合物や、アンモニア水溶液、1級アミン、2級アミン、3級アミン等が挙げられる。
【0054】
これらのうち、アンモニア、アミンが好ましく、それらの具体例としては、アンモニア水溶液、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミン化合物、エタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、モルホリン、ベンジルアミン、アニリンおよびその誘導体等が挙げられる。 さらにはアミノ基含有樹脂を使用することもできる。
【0055】
前記酸性有機化合物と塩基性化合物は混合物あるいは反応物として用いることができる。これらは直接混合あるいは反応させてもよいが、溶剤を用いて混合、反応させることが好ましい。使用する溶剤としては、これらの混合、反応物を溶解することが可能であれば制限はないが、水系塗料に配合するため水へ可溶の溶剤が好ましい。例えばエタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、親水基含有有機化合物および水そのものがある。
上記溶媒は揮発性溶剤が少ないことが好ましいため、これらの混合物あるいは反応物を水へ溶解あるいは分散させることがより好ましい。
【0056】
上記、加水分解縮合触媒は触媒としての効率の点から、錫系化合物、酸性有機化合物と塩基性化合物の混合物または反応物が好ましい。
【0057】
加水分解縮合触媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その使用量は(A)成分の(メタ)アクリル系樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常0.01〜20重量部がこのましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。0.01部未満であると加水分解縮合が十分進行せず、20部を超えると、塗膜の外観が低下する傾向がある。
【0058】
加水分解縮合触媒は、(メタ)アクリル系樹脂エマルションの重合時に添加してもよいし、重合後に添加してもよい。さらには塗料化の際に添加することもできる。また、加水分解縮合触媒はそのままの形で添加してもよいし、適切な界面活性剤を用いて乳化した後、添加してもよい。
【0059】
本発明における(B)成分であるテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物のエマルションは、一般式(1)
【0060】
【化12】
(式中、R1はエチル基、R2は炭素数3〜4のアルキル基であり、0.7≦X≦1.2、 z/(y+z)=0.1〜0.5)
で表される。(B)成分は本発明の塗料用組成物を用いて得られる塗膜に親水性を付与し、耐汚染性を発現せしめる機能を有するとともに、優れた貯蔵安定性を示す。
【0061】
一般に親水性を付与するテトラアルコキシシランとしては、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート等の部分加水分解縮合物が知られているが、これらを使用した場合、水性2液用塗料として十分な貯蔵安定性が得られず, 安定した耐汚染性を示すことができない。 またテトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケートのような炭素数の大きいアルコキシシランのみを使用した場合には、反応性が悪く、貯蔵安定性は改良されるものの、十分な耐汚染性が得られない。 またこれらの混合物でも安定した耐汚染性と貯蔵安定性を確保することはできていない。 本発明では、アルコキシシランとして、エチルとプロピル及び/またはブチルを併用することによりこれらの課題を解決した。プロピル及び/またはブチルの使用量は一般式(1)中のz/(y+z)が、0.1〜0.5が好ましく、0.2〜0.4がさらに好ましい。 プロピル及びブチルはいずれの異性体も使用できるが、特にイソプロピル、ターシャリーブチルが好ましい。さらにこれらテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を乳化してエマルションにすることにより2液用塗料組成物として十分な貯蔵安定性、及び光沢等すぐれた塗膜特性を確保することができる(B)成分を得ることができる。
【0062】
これらx,y,zは、1H−NMR分析法によりSi原子に結合しているメチレンあるいはメチンのピークより定量し、y,zを算出することができる。また(B)成分のシリカ分析あるいはGPCによる分子量測定により、xを算出可能である。
【0063】
さらにはこの(B)成分を含むB液の組成物を(A)成分を含むA液と分ける事により、十分な貯蔵安定性を確保できる。 A液に塗料化に必要な顔料、分散剤等を添加することにより、B液には(B)成分のほか何も添加しないか、もしくは(B)成分の安定性を妨げない添加剤のみを使用することにより、耐汚染性を維持したまま、貯蔵安定性の優れた、2液用塗料組成物を得ることができる。
【0064】
(B)成分のエマルションを得る方法としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性の乳化剤いずれを用いても乳化可能であるが、(B)成分の安定性、乾燥塗膜の耐水性、耐久性などの点からノニオン系乳化剤を使用するのが好ましい。乳化物の分散安定性の点から、アニオン系乳化剤を併用することもできる。
【0065】
ノニオン系乳化剤としては、特に限定はなく、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンラウレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエートなどのグリセリン脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノセスキオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレートなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類などがあげられる。
【0066】
また、フッ素系あるいはシリコン系ノニオン乳化剤も使用することができ、フッ素系ノニオン乳化剤としては、たとえば、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド変性ポリアルキレンオキシドのようなノニオン性パーフルオロアルキル含有ポリオキシエチレンオキシドなどがあげられる。具体的な例としては、EFTOP EF−121、EF−122A、EF−122B、EF−122C、EF−122A3、EF−301、EF−303、EF−305(以上、新秋田化成(株)製)、MERGAFAC F−142D、F−144D、F−171、F−172、F−173、F−177、F−183、F−184、F−815(以上、大日本インキ化学工業(株)製)などがあげられる。
【0067】
シリコン系ノニオン乳化剤としては、たとえば、ポリジメチルシロキサンの片末端およびまたは両末端および/または側鎖をポリアルキレンオキシド変性したノニオン系ポリアルキレンオキシド変性ポリジメチルシロキサンなどがあげられる。具体的な例としては、SILWET L−77、L−720、L−722、L−7001、L−7002、L−7602、L−7604、L−7605、L−7607N、Y−7006、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2120、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164FZ−2165、FZ−2166、FZ−2171(以上、日本ユニカー(株)製)、KF−351、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−907、X−22−6008、X−22−811、X−22−812(以上、信越化学工業(株)製)、PS071、PS072、PS073、PS074(以上、チッソ(株)製)、TAF4200、TEA4300(以上、東芝シリコーン(株)製)、SH3748、SH3749、SH3771、SH8400、SF8410、SF8700(以上、トーレ・シリコーン(株)製)などがあげられる。
【0068】
アニオン系乳化剤としては、通常使用される物であれば特に限定はなく、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;Newcol−723SF、Newcol−707SN、Newcol−707SF、Newcol−740SF、Newcol−560SN(以上日本乳化剤(株)製)等の(ポリ)オキシエチレン基を含むアニオン系乳化剤;FTOP EF−102、EF−103、EF−104、EF−105、EF−112、EF−123A、EF−123B、EF−306A、EF−501、EF−201、EF−204(以上、新秋田化成(株)製)などのフッ素系乳化剤;カルボキシル基含有ポリジメチルシロキサンを塩基で中和したシリコン系乳化剤などがあげられる。
【0069】
これらの乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、シリコン化合物100重量部に対して0.05〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部である。0.05重量部未満では安定なシリコン化合物の乳化物が得られない場合がある。50重量部を越えると塗膜外観や耐水性の低下などの問題が発生する場合がある。
【0070】
また、アニオン系乳化剤を併用する場合には、全乳化剤中のアニオン系乳化剤の割合は、30重量部以下、好ましくは、20重量部以下である。30重量部を超えると、安定なシリコン化合物の乳化物を得ることが難くなる傾向にあり、分離し易くなったり、乳化条件が限定されたりする傾向にある。
【0071】
乳化後の混合物のpHは特に限定はないが、乳化物の安定性の点から、pHを6〜10に保つのが好ましい。
【0072】
pH調製の方法あるいは順序については特に限定しないが、シリコン化合物の乳化の早い段階で行うことが望ましい。pH調製が遅くなるとそれだけ加水分解が進行するおそれがある。pH調製には、一般に使用するアルカリを用いれば良く、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、各種アミンなどがあげられる。
【0073】
また配合するシリコン化合物の安定性の点より、pH調整後に緩衝剤でpHを維持することが好ましい。pH維持は、一般に使用される緩衝剤が使用可能である。
【0074】
前記(B)成分中のテトラアルコキシシランの部分縮合加水分解物の固形分濃度は、5〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%となるように調整する。かかる固形分濃度が50重量%を超える場合には、系の濃度が著しく上昇するため、安定性が悪くなる等の問題を起こす可能性があり、5重量%未満である場合には、(A)成分に対する使用量が多くなってしまい、塗膜形成の際に膜厚が薄くなってしまう等、性能劣化を起こしたり塗装作業性の点で不利となる傾向がある。
【0075】
前記(B)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(B)成分の配合割合は、(A)成分の樹脂固形分100部に対して1〜50部(固形分)、好ましくは3〜20部である。1重量部未満では得られる塗膜の親水性が十分ではない傾向にあり、50重量部を越えると塗膜外観やクラックなどの問題が発生する傾向にある。
【0076】
(A)成分の(メタ)アクリル系樹脂エマルションは、必要に応じて、通常、塗料に用いられる顔料(二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリンなどの白色顔料、カーボン、ベンガラ、シアニンブルーなどの有色系顔料)や造膜剤、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤などの通常の塗料用成分として使用される添加剤を適宜加えてエナメル化された水性塗料として用いることもできる。(B)成分中にも必要に応じて塗料化のための添加剤を使用することができるが、(B)成分の貯蔵安定性を確保するため、(A)成分にのみいれるのが好ましい。
【0077】
本発明の組成物は、例えば建築内外装用、メタリックベースあるいはメタリックベース上のクリアーなどの自動車用、アルミニウム、ステンレスなどの金属直塗用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、石綿スレート、アスベストボード、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート、硅酸カルシウム板、タイル、レンガなどの窯業系直塗用、ガラス用、天然大理石、御影石等の石材用の塗料あるいは上面処理剤として用いられる。
【0078】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0079】
【実施例】
【0080】
【製造例1】
(A)成分の製造:
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水33重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製:3%希釈)2.5重量部、酢酸アンモニウム0.15重量部、ロンガリット0.05重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.04重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。表1のモノマー混合物のうち5重量部を滴下して30分間初期重合を行った。表1の残り95重量部のモノマー混合物に、アクアロンHS0515(第一工業製薬(株)製:有効成分15%)10.25重量部、アクアロンRN−30(第一工業製薬(株)製:20%希釈)3.5重量部および脱イオン水42.5重量部を加え乳化したモノマーを、3時間かけて等速追加した。同時にロンガリット0.4重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.3重量部をモノマー追加時に分割投入した。この後、1時間後重合を行い、樹脂固形分が50重量%の樹脂エマルション(a−1〜a−4)を得た。
【0081】
【表1】
別途容器に脱イオン水77.6重量部に28%アンモニア水を2.4重量部添加し、攪拌しつつジ−2−エチルヘキシルホスフェート(大八化学(株)製DP−8R)20重量部を徐々に滴下し、加水分解縮合触媒を得た(C-1)。
【0082】
この加水分解縮合触媒を上記樹脂エマルション(a−1〜a−4)100重量部に対して、8重量部添加して(A)成分を得た。 次に、表2に示す顔料ペーストを用い、表3の塗料化の配合方法に従いエナメル化し2液用塗料のA液を作成した(A−1〜A−4)。
【0083】
また加水分解縮合触媒としてジブチル錫ジラウレート(C−2)0.8重量部を上記樹脂エマルション(a−3)100重量部に添加して(A)成分を得、同様に表2に示す顔料ペーストを用い、表3の塗料化の配合方法に従いエナメル化し同様にA液を作成した(A−5)。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
(B)成分として表4に示すテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物(B−1〜B−5)30重量部をポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム5重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3重量部とを混合し、1000rpm以上で高速攪拌しながら、ゆっくりと脱イオン水を62重量部を加えて、エマルション(固形分濃度30%)化した。これを上記A−1〜A−5に添加し、十分に混合し最終塗料を得、下記に示す評価を実施した(表5、表6)。
【0086】
【表4】
また上記樹脂エマルション(a−3)100重量部に対し、B−3〜B−5のエマルションを16重量部添加、攪拌し(AB)成分エマルションを得、上記同様に表2に示す顔料ペーストを用い、表3の塗料化の配合方法に従いエナメル化し同様にABエナメル塗料を作成した(AB1〜3)。このABエナメル塗料100重量部に対し、別途(C−1)を4重量部添加し、攪拌し最終塗料を得、同様に評価した。(表6)
【0087】
【実施例1〜10及び比較例1〜11】
「評価方法」
1.耐汚染性
折り曲げ曝露板(アルミ板)にエポキシ系中塗り塗料を塗装し、1日室温で養生後、各塗料をスプレー塗装した。この試験板の45度面および垂直面の雨筋および非筋部の汚れを確認した。汚染性は、曝露初期のL*a*b*表色系で表される明度を色彩色差計(ミノルタ(株)製:CR300)で測定し、大阪府摂津市で北面向き屋外曝露を3カ月実施した。曝露前後の明度差の絶対値(ΔL値)を汚染性の尺度とした。なお、数値の小さい方が耐汚染性に優れ、数値の大きい方が汚れていることを示す。また、筋が目視で確認できないものは、筋無しとして評価した。
2.塗膜の親水性
親水性は、接触角測定機(協和界面科学(株)製:CA−S150型)を用い、上記で得た塗膜の室温養生2週間後、室温養生2週間後にさらに水浸漬2週間後の接触角を測定した。さらに、耐汚染性の評価で用いた折り曲げ曝露板の大阪府摂津市での屋外曝露3カ月後の接触角を測定することにより評価した。数値が小さいほど親水性が高いことを示す。
3.貯蔵安定性
(A)成分をエナメル化したA液、及び(B)成分であるB液を別々に密閉して、50℃オーブン中、4週間放置した。また(A)成分、(B)成分を混合したAB液も同様に貯蔵した。これら貯蔵後のものを使用して上記評価を同様に実施した。
【0088】
以上の結果を表5、表6に示す。
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
実施例1〜10より明らかなように、本発明の組成物を用いて得られる塗膜は、塗膜の親水性の尺度である接触角は40〜65°の小さい値を示し、親水化の効果が現れている。これに相応して耐汚染性試験における−ΔL値も小さく、また雨筋も認めれらない。また貯蔵後の特性も初期値を十分に保持しており、貯蔵安定性にも優れている。
【0091】
【発明の効果】
本発明は、水性2液用塗料組成物であって、耐汚染性と優れた貯蔵安定性を示す。
Claims (7)
- A液が(A)成分を含む組成物であって、B液が(B)成分を含む組成物からなる水性2液用塗料組成物であって、(A)成分として加水分解性ケイ素基の加水分解縮合触媒を含有する(メタ)アクリル系樹脂エマルション、(B)成分として一般式(1)
前記(メタ)アクリル系樹脂エマルションにおける(メタ)アクリル系樹脂が、一般式(2)
- 前記加水分解縮合触媒が、錫系化合物、酸性有機化合物と塩基性化合物の混合物または反応物、より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性2液塗料用組成物。
- 前記酸性有機化合物が、硫酸化合物、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物、燐酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項4記載の水性2液塗料用組成物。
- 前記塩基性化合物がアンモニアあるいはアミン類であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の水性2液塗料用組成物。
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