JP4618865B2 - シリコン化合物が包含された樹脂エマルション、その製造方法、および該樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、建築内外装、自動車、家電用品、プラスチックなどに塗装される用途において好適に使用され、特に耐汚染性、耐候性、耐水性、耐薬品性、塗膜外観などの塗膜性能が優れ、かつ貯蔵安定性が良好な水性塗料に好適に使用される樹脂エマルション、その製造方法および該樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、塗料の分野においても、公害対策および省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水溶性あるいは水分散性樹脂への転換が試みられている。しかし、水性塗料により形成された塗膜は、溶剤系塗料を用いて形成した塗膜に比べ、一般的に性能が劣るという欠点を有していた。
【0003】
この欠点を改良するために種々の提案がなされており、例えば、架橋性官能基として加水分解性シリル基を有する重合体エマルションを水性塗料に応用する技術(特開平3−227312)、カルボキシル基とヒドラジル基の反応により粒子間の架橋を導入した水性塗料に関する技術(特開平5−59305)、あるいは溶剤系で高性能を示すフッ素樹脂を水性化した水分散型フッ素樹脂塗料に関する技術(特開平5−25421)が開示されている。これにより、耐候性、耐水性、耐薬品性の点では、ある程度の改善がなされるものの、水性化したことによる問題も生じており充分とは言えない。
【0004】
一方、耐汚染性については、水性塗料においても、例えばシリケートに代表されるシリコン化合物を乳化して配合することにより塗膜表面を親水化し、雨水等により汚染物質を除去する技術(特開平8−259892)が開示されている。これにより耐汚染性は改良されるものの、シリコン化合物は加水分解性基を有するため水性媒体中での安定性が乏しく、従って安定な乳化物を得ることは容易ではなく、更にこれらを配合したエマルション組成物およびそれを用いて形成した水性塗料は貯蔵安定性が劣る傾向にあった。
【0005】
これに対し、エマルションの貯蔵安定性を高めるため、シリコン化合物を混合したラジカル重合性単量体をミクロ懸濁重合する技術(特開2000−34308)が開示されている。しかし、ミクロ懸濁重合法により、水性塗料用の樹脂エマルションとして適した0.1〜0.3μm程度まで平均粒径を微細化することは容易ではなく、特に工業的規模においては経済的でない。更に、ミクロ懸濁重合では物性発現に重要な重合体粒子のモルフォロジー制御が困難であり、またエマルションの粒子径分布が非常にブロードであるため、含有される粗大粒子の影響により塗膜外観などの塗膜物性が低下するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術が有する上記問題点を解決し、耐候性、耐水性、耐薬品性、塗膜外観に優れ、また貯蔵安定性を低下させることなく耐汚染性が付与された水性塗料に好適に使用され、更に経済的に工業生産が可能で、かつ粒子径分布がシャープな樹脂エマルション、その製造方法および該樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐汚染性、耐候性、耐水性、耐薬品性、塗膜外観、および貯蔵安定性に優れた水性塗料に好適に使用される樹脂エマルションを効率良く製造するために鋭意検討を重ねた結果、水性媒体中に分散された種粒子に、重合性単量体、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物を吸収させた後、あるいは吸収させながら重合を行う製造方法、それから得られた樹脂エマルション、および該樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物により、前述の課題を解決し得ることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち請求項1の製造方法においては、水性媒体中に分散された種粒子(A)0.1〜100重量部の存在下に、重合性単量体(B−1)0〜99.9重量部((A)と(B−1)の合計量は100重量部)、一般式(1)
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、または炭素数1〜10のアシル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)0.1〜400重量部、乳化剤および/または水溶性高分子化合物(B−3)0〜300重量部、および水0.1〜4000重量部からなる混合物に機械的剪断を加えることによって形成した乳化液(B)を添加し、種粒子(A)に重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)を吸収させた後、または吸収させながら重合を行うことを特徴とするシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物が包含された重合体粒子(C)よりなる樹脂エマルションを得る。
【0009】
請求項2の製造方法においては、請求項1に記載の製造方法により製造した重合体粒子(C)よりなる樹脂エマルション100重量部(固形分換算、(B−2)含む)の存在下に、重合性単量体(D−1)5〜2000重量部、乳化剤および/または水溶性高分子化合物(D−2)0〜200重量部、および水0〜10000重量部からなる混合物(D)を添加して重合することを特徴とする芯/外殻構造を有する複層重合体粒子(E)からなる樹脂エマルションを得る。
【0010】
請求項3の製造方法においては、請求項1および2に記載の前記種粒子(A)が重合体粒子であるものとする。
【0011】
請求項4の製造方法においては、請求項1〜3に記載の前記乳化液(B)の形成において、重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)の合計量100重量%に対して、混合する水量が100重量%以下であるものとする。
【0012】
請求項5の製造方法においては、請求項1〜4に記載の前記一般式(1)
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアシル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)が、平均縮合度2〜50であるものとする。
【0013】
請求項6の製造方法においては、請求項1〜5に記載の前記一般式(1)
(R1O)4-aSiR2 a (1)
で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)において、式中R1は同じかまたは異なり炭素数が3以上である割合が50%以上であるアルキル基あるいはアシル基、、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数であるものとする。
【0014】
請求項7の製造方法においては、請求項1〜6に記載の前記重合性単量体(B−1)および(D−1)が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ハロゲン化ビニル系単量体、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体、酢酸ビニル、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能性単量体およびこれらと共重合可能なその他の単量体から選ばれた1種または2種以上の単量体からなるものとする。
【0015】
請求項8においては、請求項1〜7に記載の前記重合性単量体(B−1)および/または重合性単量体(D−1)が、一般式(2)
−Si(X1 3-b)(R3 b) (2)
(式中、R3は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、X1は同じかまたは異なりハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基、bは0〜2の整数。)で表されるシリル基を有する単量体を0.1〜50重量%含有するものとする。
【0016】
請求項9においては、請求項1〜8に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂エマルションとする。
【0017】
請求項10においては、請求項9に記載の樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物とする。
【0018】
請求項11においては、請求項9に記載の樹脂エマルションおよび硬化触媒(F)を含有してなる水性塗料用樹脂組成物とする。
【0019】
請求項12においては、請求項11に記載の硬化触媒(F)が、有機錫化合物、有機チタネート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、リン酸またはリン酸エステル類、リン酸エステル類または有機カルボン酸類と有機アミン類の混合物または反応物から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂エマルション、その製造方法、および該樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物について詳細に説明する。
【0021】
本発明における水性媒体中に分散された種粒子(A)としては、例えば、乳化重合、懸濁重合、ミクロ懸濁重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、水系分散重合などの水系重合法により重合された重合体粒子、樹脂パウダーを分散剤などと共に水媒体中で再分散した樹脂粒子、樹脂を溶液に溶解あるいは溶液重合した樹脂溶液を水媒体中に分散した樹脂溶液粒子、マクロモノマー類、油溶性モノマー類、炭化水素類、高級アルコール類、有機溶剤類、各種オイル物質などの油性物質を水媒体中に分散した油滴粒子、水溶性高分子化合物類あるいは乳化剤ミセルなどが適しており、乳化液(B)中の重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)を吸収できるものであれば特に制限無く、1種または2種以上を組み合せて使用できる。ただし、本発明による樹脂エマルションは、水性塗料用樹脂組成物に好適に使用され得るため、有機溶剤、油性成分類などは系中にできる限り含まれない方が望ましく、特に引火性物質は含まれない方が望ましい。また本発明の樹脂エマルションの平均粒子径は、主に種粒子(A)により制御されるため、種粒子(A)は、できる限り煩雑な工程、生産エネルギーなどを必要とせず粒子径を容易に制御でき、かつ粒子径分布がシャープとなることが望ましい。更に、重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)の吸収量を制御し易くするために、例えば、種粒子(A)が系中に多量に存在しても物性に悪影響しないことが望ましい。以上の観点から、種粒子(A)としては、ポリマー粒子であることが好ましく、更には前記水系重合法、特に粒子径制御が容易であることから乳化重合法により重合された重合体粒子であることがより好ましい。種粒子(A)がポリマー粒子である場合の樹脂組成には特に制限が無く、必要に応じて各種官能性基なども含有することができる。種粒子(A)の使用量は、0.1〜100重量部が好ましく、更には1〜50重量部が好ましい。0.1重量部より少ないと、後述する重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその加水分解縮合物(B−2)を吸収するのが困難になるため好ましくない。
【0022】
本発明における乳化液(B)の調製に用いる重合性単量体(B−1)としては特に制限は無く、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン系単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびこれらの酸無水物などのエチレン性不飽和カルボン酸系単量体、酢酸ビニル、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能性単量体、およびブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPMEシリーズ、ブレンマーAEシリーズ(以上、日本油脂(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などのポリオキシエチレン鎖を有するビニル系単量体、AS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5(以上、東亜合成化学(株)製)などのマクロモノマー、(メタ)アクリルアミドなどの共重合可能なその他の単量体などがあげられる。また必要に応じて、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどの連鎖移動剤を任意の添加量で使用することもできる。これら重合性単量体(B−1)として例示の化合物は、1種または2種以上を併用して好適に使用することができ、得られる樹脂エマルションの目的とする物性、樹脂構造、取扱いの容易さあるいは価格などに応じて適宜選択することができる。重合性単量体(B−1)の使用量(種粒子(A)との合計量が100重量部)は、0〜99.9重量部が好ましく、更には50〜99重量部がより好ましい。使用量が99.9重量部を超えると相対的に種粒子(A)の使用量が少なくなり、重合性単量体(B−1)およびシリコン化合物および/またはその加水分解縮合物(B−2)を吸収するのが困難になる傾向がある。
【0023】
更に、重合性単量体(B−1)中に、前記一般式(2)で示されるシリル基を有する単量体を含有することができる。式中R3としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基があげられ、R3が2個以上存在する時は、それらは同じでも異なっていても良い。R3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、フェニル基、o−,m−,p−トルイル基、ベンジル基などがあげられる。これらの中でも、原料の入手容易性の点からメチル基が好ましい。X1としてはハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基またはアミノ基があげられ、X1が2個以上存在する時は、それらは同じでも異なっていても良い。これらの中では、原料の入手容易性と取扱いの容易さから、アルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基としては特に制限は無く、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などがあげられる。アルコキシシリル基を含有した単量体の中でも特に、取扱いの容易さ、価格、および反応副生成物が生じない点からアルコキシシリル基含有ビニル系単量体を用いることが好ましい。具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシランなどがあげられる。これらのシリル基を有する単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができる。なお、前記シリル基を有する単量体は、重合性単量体(B−1)中に0.1〜50重量%の範囲で含有されることが好ましく、更には1〜30重量%の範囲で含有されることが好ましい。含有量が0.1重量%より少ないと、得られる樹脂エマルションを用いて調製した水性塗料用樹脂組成物よりなる塗膜の耐水性および耐候性に対する改良効果が小さくなる傾向があり、また含有量が50重量%を超えると樹脂エマルションの安定性が低下する傾向がある。
【0024】
一方、乳化液(B)の調製に用いるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)は、前記一般式(1)で表される。式中R1は同じかまたは異なっても良く、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアシル基から選ばれることが好ましい。R2は同じかまたは異なっても良く、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれることが好ましい。aは0〜2の整数であることが好ましく、更には0〜1の整数であることがより好ましい。具体例としては、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラi−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラi−ブチルシリケート、テトラtert−ブチルシリケート、MSi51、ESi28、ESi40(以上、コルコート(株)製)などのテトラアルキルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリ−sec−オクチルオキシシラン、メチルトリブトキシシラン、AFP−1(信越化学(株)製)などのトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物などがあげられる。中でも塗膜への耐汚染性付与の効果が大きいことから、(B−2)成分は前記テトラアルキルシリケートおよび/またはトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物を使用することが好ましく、その平均縮合度は2〜50の範囲であることが好ましい。また(B−2)成分は、水媒体中での安定性を高めるために、前記一般式(1)におけるR1が、炭素数が3以上である割合が50%以上であるアルキル基あるいはアシル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基から選ばれたシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物であることが好ましい。それらの具体例としては、例えば、テトラn−プロピルシリケート、テトラi−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラi−ブチルシリケート、テトラtert−ブチルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物、あるいはこれらの化合物とテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケートを混合し加水分解縮合させることによってアルキル部の炭素数が3以上である割合が50%以上である(B−2)成分を得ることができる。その他、テトラメチルシリケートあるいはテトラエチルシリケートを加水分解縮合させる際に炭素数が3以上のアルコールを混合し、エステル交換反応させることでも目的とする(B−2)成分を得ることができる。前記(B−2)成分は、1種または2種以上を併用して用いることができる。また前記(B−2)成分は、前記種粒子(A)および前記重合性単量体(B−1)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜400重量部、より好ましくは1〜200重量部の範囲で使用される。使用量が0.1重量部未満では、該樹脂エマルションから得られる塗膜の耐汚染性が不充分となり、400重量部を超えると重合体粒子中に(B−2)成分を包含することが困難になる傾向がある。
【0025】
乳化液(B)の調製に用いる乳化剤および/または水溶性高分子化合物(B−3)については特に限定は無く、公知のノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性のものを使用でき、更には反応性あるいは非反応性のものを使用できる。ただし、前記一般式(1)のシリコン化合物および/または前記一般式(2)のシリル基の安定性、塗膜の耐水性、耐久性などの点からはノニオン系の乳化剤が好ましく、また乳化液の乳化安定性の点からはアニオン系の乳化剤を使用するのが好ましい。具体的には、例えば、ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類などがあげられる。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、(ジ)アルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸塩類、脂肪酸塩類、サルコシン酸塩類、(ジ)アルキルリン酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩類などがあげられる。カチオン系乳化剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類などがあげられ、両性乳化剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどがあげられる。また反応性乳化剤の具体例として、例えば、アデカリアソープシリーズのSE−10N、SE−20N、NE−10、NE−20、NE−30、NE−40(以上、旭電化工業(株)製)、エレミノールシリーズのJS−2、RS−30(以上、三洋化成工業(株)製)、ラテムルシリーズのS−180A、S−120A(以上、花王(株)製)、アクアロンシリーズのBC−05、BC−10、BC−20、HS−10、HS−20、RN−10、RN−20、RN−30、RN−50、KH−10(以上、第一工業製薬(株)製)、Antox−MS−60、RF−751、RMA−500シリーズ、RMA−1120(以上、日本乳化剤(株)製)などがあげられる。水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸塩類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプンなどがあげられる。前記(B−3)成分は、前記一般式(1)のシリコン化合物および/または前記一般式(2)のシリル基の安定性を損なわなず、かつ充分な乳化安定性が得られるように1種または2種以上を併用して用いることができる。また前記(B−3)成分の使用量は、前記(B−1)成分および(B−2)成分の合計量0.1〜499.9重量部に対して0〜300重量部が好ましく、更には0〜200重量部の範囲であることがより好ましい。前記(B−1)成分あるいは(B−2)成分が自己乳化性を有するものであれば、特に前記(B−3)成分を用いる必要はなく、また300重量部を超える場合は該樹脂エマルションを用いて形成した水性塗料の消泡性、得られる塗膜の耐水性、耐久性が劣る傾向がある。
【0026】
乳化液(B)の調製に用いる水量は、前記(B−1)成分および(B−2)成分の合計量0.1〜499.9重量部に対して0.1〜4000重量部の範囲内であることが好ましい。更には、前記(B−1)成分と前記(B−2)成分の合計量100重量%に対して、混合する水量が100重量%以下であることが好ましい。水量が0.1重量部より少ないと乳化が困難になる傾向があり、4000重量部を超えると乳化液(B)の有効成分濃度が減少するため得られる樹脂エマルションの固形分濃度が減少する。また用いる水量が、前記(B−1)成分と前記(B−2)成分の合計量より少ない方が得られる塗膜の外観がやや優れる場合があり好ましい。
【0027】
乳化液(B)は、前記重合性単量体(B−1)に前記シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)を溶解した溶液(a)と、水に前記乳化剤および/または水溶性高分子化合物(B−3)を溶解した溶液(b)を混合し、この混合液に機械的剪断を加えることで調製する。乳化分散装置としては特に限定はなく公知のものが使用可能で、例えば、ホモミキサー、超音波分散装置、遠心分散ポンプなどを使用できる。更には高度の剪断エネルギーを有する高圧ホモジナイザー、タービン型ミキサーなども使用できる。乳化液(B)調製時の乳化分散が不充分であると、重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその加水分解縮合物(B−2)を種粒子(A)に吸収させることが困難になる傾向がある。このため、樹脂エマルションあるいはそれから得られる水性塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性が劣り、また塗膜外観などの塗膜物性が低下する傾向がある。乳化分散装置およびその運転条件などについては、必要とする機械的剪断力が、前記(B−1)成分、(B−2)成分および(B−3)成分の種類およびその使用量、あるいは乳化液(B)の設定有効成分濃度などにより異なるため一概に規定できないが、得られる塗料、塗膜物性と生産コストなどを勘案して選択すればよい。
【0028】
乳化液(B)のpHについては特に限定しないが、前記一般式(1)のシリコン化合物および/または前記一般式(2)のシリル基の安定性の点から、pHを5〜10、更には6〜9の範囲に保つのが好ましい。この範囲外では縮合が起り易くなり、特にpH5未満では加水分解が促進されるため、縮合が速く進行する。またpH10を超えると不安定になるだけでなく作業上の問題も生じる。
【0029】
上記により調製した乳化液(B)を種粒子(A)が分散した水性媒体中に添加すると、重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)が水媒体中を拡散して種粒子(A)に吸収される。この理由は必ずしも明らかでないが、機械的剪断により微細に乳化された乳化液(B)は、種粒子(A)の水性分散媒中に添加され熱力学的に不安定となり、エマルションが崩壊して前記(B−1)および(B−2)成分が種粒子(A)に吸収されると推定する。乳化液(B)の添加方法には特に限定は無いが、例えば、一括添加して、前記(B−1)および(B−2)成分を種粒子(A)に完全に吸収させた後で重合を開始しても良いし、あるいは間欠および連続添加して、前記(B−1)および(B−2)成分を種粒子(A)に吸収させながら徐々に重合を進めても良い。ただし、重合による発熱抑制、新粒子の発生抑制、および重合体粒子のモルフォロジー制御の観点から、乳化液(B)は間欠あるいは連続添加して徐々に重合を進め、それに伴い前記(B−2)成分が重合体粒子中に包含されるのが好ましい。
【0030】
上記の重合は、公知の重合法により実施できる。例えば、▲1▼油溶性重合開始剤を種粒子(A)中に存在させ、前記(B−1)および(B−2)成分を完全に吸収した後、あるいは吸収しながら重合する方法、▲2▼通常の乳化重合法により重合する方法があげられる。
【0031】
▲1▼の方法においては、公知の油溶性重合開始剤を使用できる。具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ系化合物があげられ、これらの水に対する溶解度が低い重合開始剤を1種または2種以上を組み合せて使用できる。更に、上記油溶性重合開始剤を種粒子(A)中に存在させる方法としては、例えば、油溶性モノマー類、炭化水素類、高級アルコール類、有機溶剤類、各種オイル物質などの1種または2種以上を混合した油性物質に上記の油溶性重合開始剤を溶解し、この油性溶液を水、乳化剤および/または水溶性高分子化合物などと混合した後、前記乳化分散装置により目的粒径まで微分散する方法があげられる。特に、油溶性モノマー類を用いて種粒子(A)を形成すると、重合により種粒子(A)をポリマー化できるため好ましい。
【0032】
一方、▲2▼における通常の乳化重合法としては公知の手法が使用できる。具体的には、重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシアセテートなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物を1種または2種以上を組み合せて好適に使用できる。更に、必要に応じて、例えば、硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/エチレンジアミン四酢酸塩、硫酸第一鉄/グルコース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウムなどの混合物を還元剤として併用し、レドックス重合系とすることができる。還元剤の併用は、重合温度を低くできることから特に好ましい。上記乳化重合に用いる重合開始剤は、乳化液(B)中に加えて種粒子(A)の水性分散媒中に添加しても良いし、乳化液(B)とは別々に、一括、間欠あるいは連続的に添加しても良い。
【0033】
なお、上記の中では、得られる重合体粒子(C)の粒子径分布、モルフォロジー制御、作業の簡便さ、生産コストなどが優れることから、▲2▼の通常の乳化重合法により重合を行うことがより好ましい。
【0034】
前記重合性単量体(B−1)を重合するための重合開始剤の使用量は、(B−1)成分100重量%に対して、通常0.005〜10重量%が好ましく、更には0.01〜5重量%が好ましい。重合開始剤の量があまりにも少ない場合は、重合速度が遅くなり、生産効率が悪くなる傾向があり、またあまりにも多い場合は、重合発熱の抑制が困難になり、更には残存する重合開始剤のために塗膜の耐候性が低下する傾向がある。
【0035】
更に必要に応じて、上記により製造した重合体粒子(C)を芯とし、1以上の重合体外殻を有する芯/外殻構造の複層重合体粒子(E)を形成することができる。前記一般式(1)のシリコン化合物を包含した重合体粒子(C)の外層を更に重合体層で被覆することにより、得られる樹脂エマルションおよびそれから調製される水性塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する傾向がある。また、芯/外殻構造とすることで、例えば、各相の樹脂組成、設定Tg、設定分子量、共重合する官能基の種類などを適宜設定できるため、目的とする物性を発現するための樹脂設計の自由度が拡大する。
【0036】
本発明における混合物(D)の調製に用いる重合性単量体(D−1)としては特に制限は無く、例えば、重合性単量体(B−1)として先に例示した化合物について1種または2種以上を併用して同様に用いることができる。また必要に応じて、連鎖移動剤として先述した化合物も使用することができる。更に、重合性単量体(D−1)中に、前記一般式(2)で示されるシリル基を有する単量体として先に例示した化合物の1種または2種以上を同様に含有することができる。
なお、前記シリル基を有する単量体は、重合性単量体(D−1)中に0.1〜50重量%の範囲で含有されることが好ましく、更には1〜30重量%の範囲で含有されることが好ましい。含有量が0.1重量%より少ないと、得られる樹脂エマルションを用いて調製した水性塗料よりなる塗膜の耐水性および耐候性に対する改良効果が小さくなる傾向があり、また含有量が50重量%を超えると樹脂エマルションの安定性が低下する傾向がある。
【0037】
重合性単量体(D−1)の使用量は、前述した重合体粒子(C)よりなる樹脂エマルション100重量部(固形分換算、(B−2)成分含む)に対し、5〜2000重量部、更には10〜1000重量部であることが好ましい。(D−1)成分の使用量が5重量部より少ないと、重合体外殻が重合体粒子(C)を充分に被覆できなくなり、また使用量が2000重量部を超えると、複層重合体粒子(E)中におけるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)の存在比率が低下するため、得られる塗膜の耐汚染性が低下する傾向がある。
【0038】
混合物(D)の調製に用いる乳化物および/または水溶性高分子化合物(D−2)としては、乳化液(B)の調製に用いる乳化物および/または水溶性高分子化合物(B−3)として先に例示した化合物と同様に、公知のノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性のものを使用でき、更には反応性あるいは非反応性のものを使用できる。(D−2)成分の使用量は、前記(D−1)成分5〜2000重量部に対し0〜200重量部が好ましく、更には0〜150重量部がより好ましい。使用量が200重量部を超えると、該樹脂エマルションを用いて形成した水性塗料の消泡性、得られる塗膜の耐水性、耐久性が劣る傾向がある。
【0039】
混合物(D)の調製に用いる水量としては、前記(D−1)成分5〜2000重量部に対し0〜10000重量部が好ましく、更には0〜6000重量部が好ましい。水量が10000重量部を超えると、混合液(D)の有効成分濃度が減少するため、得られる樹脂エマルションの固形分濃度が減少する。
【0040】
混合物(D)はその各成分が分離しないように、乳化あるいは攪拌しながら重合体粒子(C)よりなる樹脂エマルション中へ添加することが好ましい。また混合物(D)は、前記(D−2)成分および水を使用せず、重合性単量体(D−1)をニート添加することもできる。
【0041】
混合物(D)の重合については、公知の重合法により実施できるが、特に乳化物(B)の重合について先に例示した▲1▼油溶性重合開始剤を重合体粒子(C)中に存在させ、前記(D−1)成分を完全に吸収あるいは吸収しながら重合する方法、▲2▼通常の乳化重合法により重合する方法により好適に実施できる。中でも、得られる複層重合体粒子(E)の粒子径分布、モルフォロジー制御、作業の簡便さ、生産コストなどが優れることから、▲2▼の通常の乳化重合法により重合を行うことが望ましい。通常の乳化重合法としては、公知の手法を用いることができるが、その詳細は先の説明を参照されたい。
【0042】
本発明の製造方法により得られる樹脂エマルションは、被覆剤として好適であり、特に水性塗料用樹脂組成物として好適に用いられる。これにより得られた塗膜は優れた性能を発現するが、特に、前記一般式(1)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)の存在が耐汚染性の発現に有効に作用する。
【0043】
その効果発現のメカニズムは、塗膜形成過程において、(B−2)成分が塗膜表面に局在化し、加水分解・縮合することで塗膜表面に硬度と親水性が付与される。塗膜表面の硬度向上により、塗膜に傷が付きにくくなって汚染が防止され、更に塗膜表面の親水化により、降雨などによる洗浄効果が発現し、より一層優れた耐汚染性が達成されると推測する。
【0044】
上記の効果は、前記シリコン化合物が重合体粒子中に包含されている水性媒体中において、その加水分解・縮合が抑制されることで効率良く発現する。重合体粒子中において、前記シリコン化合物が加水分解されシラノール基が生成すると、シリコン化合物の親水性があがることにより、重合体粒子中に包含されにくくなる恐れがある。また重合体粒子中でシリコン化合物の縮合が進行すると、シリコン化合物が高分子量化し、更には重合体粒子中でIPN構造が形成されるため、塗膜形成時にシリコン化合物がブリードアウト、つまり表面に局在化しにくくなり、耐汚染性が悪化する傾向がある。
【0045】
これに対し、前記シリコン化合物を重合体粒子中に包含し、水性媒体および/または加水分解促進物質との接触を最小限にすることで、水性媒体中における前記シリコン化合物の安定性を向上する。これにより、樹脂エマルションおよびそれから調製される水性塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性が高まる効果が発現される。
【0046】
また上記により前記シリコン化合物を水性媒体中に微分散することが可能になるため、塗膜外観にもプラスに作用する。
【0047】
更に本発明における水性塗料用樹脂組成物は、本発明の樹脂エマルションに加えて硬化触媒(F)を含有することができる。前記シリコン化合物の加水分解・縮合は室温でも進行するが、反応を促進したい場合は、硬化触媒を配合することが好ましい。硬化触媒(F)の具体例としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸またはリン酸エステル類、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメタクリレート、グリシドール、アクリルグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、油化シェルエポキシ(株)製のカーデュラ(E)、エピコート828、エピコート1001などのエポキシ化合物とリン酸および/または酸性モノリン酸エステルとの付加反応物、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネートなどの有機チタネート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸無水物、パラトルエンスルホン酸などの酸性化合物、ヘキシルアミン、ジー2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ドデシルアミンなどのアミン類、これらのアミンと酸性リン酸エステルとの混合物または反応物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物などがあげられる。上記硬化触媒(F)は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、その使用量は、前記シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)、更には前記一般式(2)で表されるシリル基を有する単量体の合計量100重量%に対して、0.01〜50重量%が好ましく、更には0.1〜20重量%がより好ましい。使用量が0.01重量%以下では反応性が低下し、50重量%を超えると塗膜外観が低下する傾向にある。前記硬化触媒の配合方法については特に制限はなく、ニートで添加しても良いし、予め乳化して乳化物として添加しても良い。
【0048】
本発明で得られる水性塗料用樹脂組成物に、必要に応じて、通常塗料、コーティング剤などの用途に使用される各種の添加剤を配合してもさしつかえない。添加剤としては特に制限はなく、例えば、顔料、充填剤、可塑剤、成膜助剤、湿潤・分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、凍結防止剤、抗菌剤、抗かび剤、粘着付与剤、防錆剤などを適量使用することができる。
【0049】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、例えば、建築内外装用、メタリックベースあるいはメタリックベース上のクリアーなどの自動車用、アルミニウム、ステンレス、銀などの金属直塗用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、石綿スレート、アスベストボード、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート、珪酸カルシウム板、タイル、レンガなどの窯業系直塗用、ガラス用、天然大理石、御影石などの石材用の塗料あるいは上面処理剤として好適に用いられる。
【0050】
【実施例】
次に具体的な実施例をあげて説明するが、これらはいずれも例示的なものであり、本発明の内容を何ら限定するものではない。
【0051】
なお、以下の製造例、実施例、比較例における平均粒子径および粒子径分布(変動係数(CV値):100×(標準偏差/重量平均粒子径))の測定は、マイクロトラック粒度分析計Model9230UPA(日機装(株)製)により行った。また重合転化率は、樹脂エマルションに重合禁止剤を添加した後、120℃の熱風乾燥器で1時間乾燥して樹脂固形成分量を求め、(樹脂固形成分量/仕込み成分量)で算出し百分率で表示した。
製造例1:種粒子(A)
攪拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度計および試薬投入口を備えたガラス製反応容器に、水90重量部、酢酸アンモニウム0.30重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製:固形分)0.15重量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら50℃に昇温した。その後、表1に示す組成の重合性単量体混合物100重量部のうち10%およびn−ドデシルメルカプタン0.5重量部を一括添加し、続いてt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2重量部を添加した。3分攪拌した後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.14重量部、硫酸第一鉄7水和物0.0028重量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.0112重量部を仕込んで1時間重合を行った。得られた種粒子の平均粒子径は85nm、CV=11%、重合転化率は98%であった。また樹脂エマルションの固形分濃度は10.5%であった。
【0052】
【表1】
製造例2:種粒子(A)
製造例1に記載のNewcol−707SFの使用量を0.6重量部に変更した以外は全く同様にして重合を行った。得られた種粒子の平均粒子径は53nm、CV=13%、重合転化率は98%であった。また樹脂エマルションの固形分濃度は10.9%であった。
製造例3:シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)
テトラエトキシシラン100重量部にイソプロピルアルコール300重量部を混合し、70℃に昇温した。次いで1N塩酸水溶液を0.1重量部添加し、3時間攪拌した。その後、温度を室温へ下げ、水酸化ナトリウムでpH7付近へ中和し、さらに溶剤を減圧除去して、イソプロピルアルコールでエステル交換されたエチル/イソプロピル=2/8のシリケート部分加水分解縮合物を得た。
製造例4:シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)
製造例3で調製したエチル/イソプロピル=2/8のシリケート部分加水分解縮合物30重量部を、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム5重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3重量部と混合し、ディスパーで1000rpm以上で高速攪拌しながら、ゆっくりと水62重量部を加えて、シリケート部分加水分解縮合物の乳化物を調製した。
製造例5:硬化触媒(F)
水77.6重量部を反応容器に仕込み、これに28%アンモニア水溶液2.4重量部を添加した後、攪拌しながらDP−8R(ジ2−エチルヘキシルホスフェート:大八化学(株)製)20重量部を徐々に添加し、硬化触媒を調製した。なお上記操作は、発熱を除去するために反応容器を冷却しながら行った。
実施例1:重合体粒子(C)からなる樹脂エマルション
表1に示す組成の重合性単量体混合物100重量部のうち残り90%に、n−ドデシルメルカプタン0.45重量部、製造例3に記載のシリケート部分加水分解縮合物20重量部を溶解し、溶液(a)を調製した。一方、水54重量部に、BC05(第一工業製薬(株)製)1.46重量部、RN30(第一工業製薬(株)製)0.66重量部、Newcol−1020(日本乳化剤(株)製)6重量部を溶解し、溶液(b)を調製した。次いで、溶液(a)と溶液(b)を混合し、この混合液にT.K.Auto Homomixer(特殊機化工業(株)製)により9,000rpmの回転数で5分間機械的剪断を与え、高濃度の乳化液を調製した。続いて、50℃に保持された製造例1記載の種粒子10重量部からなる樹脂エマルションの存在下、上記乳化液を2時間30分かけて連続滴下した。更に、これとは別にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.14重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2重量部を各々3回に分割して1時間毎に添加した。乳化液の滴下終了後、50℃で1時間保持し、重合を完結させた。得られた重合体粒子の平均粒子径は198nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=12%とシャープな粒子径分布を有していた。また重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は47.1%であった。
実施例2:重合体粒子(C)からなる樹脂エマルション
実施例1において用いた種粒子を、製造例2に記載の種粒子に変更した以外は全く同様にして重合体粒子からなる樹脂エマルションを調製した。得られた重合体粒子の平均粒子径は120nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=13%とシャープな粒子径分布を有していた。また重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は47.2%であった。
実施例3:重合体粒子(C)からなる樹脂エマルション
実施例1記載の乳化液の調製に用いるシリケート部分加水分解縮合物をエチルシリケートの部分加水分解縮合物ESi−48(コルコート(株)製)に変更した以外は、全く同様に重合体粒子からなる樹脂エマルションを調製した。得られた重合体粒子の平均粒子径は197nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=14%とシャープな粒子径分布を有していた。重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は47.0%であった。
実施例4:重合体粒子(C)からなる樹脂エマルション
実施例1記載の乳化液の調製において、用いるシリケート部分加水分解縮合物を80重量部に増加し、また水量を150重量部、Newcol−1020を24重量部まで増加した以外は、全く同様にして重合体粒子からなる樹脂エマルションを調製した。得られた重合体粒子の平均粒子径は225nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=16%とシャープな粒子径分布を有していた。重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は46.2%であった。
実施例5:重合体粒子(C)からなる樹脂エマルション
実施例1記載の乳化液の調製において、使用する水量を130重量部に増加してO/W型乳化液を作成した以外は、全く同様にして重合体粒子からなる樹脂エマルションを調製した。この際の乳化液の平均粒子径は2.3μmで、CV=51%と非常にブロードな粒子径分布を有していた。得られた重合体粒子の平均粒子径は194nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=13%とシャープな粒子径分布を有していた。重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は36.8%であった。
比較例1:重合体粒子(C)からなる樹脂エマルション
実施例1記載の乳化液の調製における乳化分散を、スターラー攪拌による乳化方法に変更した以外は全く同様にして重合体粒子からなる樹脂エマルションを調製した。得られた重合体粒子の平均粒子径は189nmであり、CV=26%であった。重合転化率は99%であり、樹脂エマルションの固形分濃度は45.0%であったが、重合安定性が低下しスケールが乾燥重量で2%程度発生した。また樹脂エマルション上部にオイル状物質が分離していた。
実施例6:複層重合体粒子(E)からなる樹脂エマルション
表1に示す組成の重合性単量体混合物100重量部、n−ドデシルメルカプタン0.05重量部、水60重量部、BC05(第一工業製薬(株)製)1.62重量部、およびRN30(第一工業製薬(株)製)0.74重量部を混合し、この混合液を1時間スターラー攪拌し乳化物を調製した。乳化液を光学顕微鏡で観察した結果、10〜100μm程度の粗大でブロードな液滴が存在していることを確認した。続いて、50℃に保持された実施例1記載の重合体粒子100重量部からなる樹脂エマルションの存在下、上記乳化液を2時間30分かけて連続滴下した。更に、これとは別にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.17重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.24重量部を各々3回に分割して1時間毎に添加した。乳化液の滴下終了後、50℃で1時間保持し、重合を完結させた。得られた複層重合体粒子の平均粒子径は240nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=11%とシャープな粒子径分布を有していた。また重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は52.9%であった。
実施例7:複層重合体粒子(E)からなる樹脂エマルション
実施例6に記載の複層重合体粒子の調製において、重合体粒子として実施例3に記載の重合体粒子100重量部に変更する以外は、全く同様にして樹脂エマルションを得た。得られた複層重合体粒子の平均粒子径は242nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=13%とシャープな粒子径分布を有していた。また重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は52.8%であった。
実施例8:複層重合体粒子(E)からなる樹脂エマルション
実施例6に記載の複層重合体粒子の調製において、重合体粒子として実施例5に記載の重合体粒子100重量部に変更する以外は、全く同様にして樹脂エマルションを得た。得られた複層重合体粒子の平均粒子径は237nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=15%とシャープな粒子径分布を有していた。また重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は45.1%であった。
比較例2:シリコン化合物を含まない樹脂エマルション
実施例1記載の乳化液の調製において、シリケート部分加水分解縮合物を使用しない以外は全く同様にして重合体粒子からなる樹脂エマルションを調製した。得られた重量体粒子の平均粒径は182nmであり、CV=11%とシャープな粒子径分布を有していた。更に実施例6記載の複層重合体粒子の製造において、重合体粒子として上記で調製した重合体粒子100重量部を使用した以外は、全く同様にして樹脂エマルションを調製した。得られた複層重合体粒子の平均粒子径は230nmとほぼ理論通りに成長しており、CV=10%とシャープな粒子径分布を有していた。また重合転化率は99%以上であり、樹脂エマルションの固形分濃度は50.7%であった。
比較例3:シリコン化合物をブレンドした樹脂エマルション
比較例2に記載のシリコン化合物を含まない複層重合体粒子200重量部よりなる樹脂エマルションに、製造例3に記載のエチル/イソプロピル=2/8のシリケート部分加水分解縮合物20重量部を混合し、ディスパーを用いて600rpmで1時間攪拌して、シリコン化合物をブレンドした樹脂エマルションを得た。
比較例4:シリコン化合物をブレンドした樹脂エマルション
比較例2に記載のシリコン化合物を含まない複層重合体粒子200重量部よりなる樹脂エマルションに、製造例4に記載のエチル/イソプロピル=2/8のシリケート部分加水分解縮合物の乳化物をシリコン化合物成分で20重量部を混合し、ディスパーを用いて600rpmで1時間攪拌した。これにより、シリコン化合物をブレンドした樹脂エマルションを得た。
実施例9:水性塗料用樹脂組成物
実施例1に記載の樹脂エマルションに、造膜助剤、表2の成分からなる顔料ペースト、凍結防止剤、消泡剤、および増粘剤を、表3に示した配合法に従って添加し、塗料化した。これにより、白エナメル水性塗料用樹脂組成物を得た。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
実施例10〜13:水性塗料用樹脂組成物
実施例9に記載の水性塗料用樹脂組成物の調製において、樹脂エマルション種を変更した以外は全く同様にして、実施例10〜13の水性塗料用樹脂組成物を得た。なお、実施例2の樹脂エマルションを用いた水性塗料用樹脂組成物は実施例10、同様に実施例6の樹脂エマルションを用いた組成物は実施例11、実施例7の樹脂エマルションを用いた組成物は実施例12、実施例8の樹脂エマルションを用いた組成物は実施例13とする。
実施例14:水性塗料用樹脂組成物
実施例9に記載の水性塗料用樹脂組成物の調製において、実施例4に記載の樹脂エマルションおよび比較例2に記載の樹脂エマルションを等量混合した混合樹脂エマルションを用いた以外は全く同様にして水性塗料用樹脂組成物を調製した。
比較例5〜8:水性塗料用樹脂組成物
実施例9に記載の水性塗料用樹脂組成物の調製において、樹脂エマルション種を変更した以外は全く同様にして、比較例5〜8の水性塗料用樹脂組成物を得た。なお、比較例1の樹脂エマルションを用いた水性塗料用樹脂組成物は比較例5、同様に比較例2の樹脂エマルションを用いた組成物は比較例6、比較例3の樹脂エマルションを用いた組成物は比較例7、比較例4の樹脂エマルションを用いた組成物は比較例8とする。
[物性評価方法]
実施例9〜14および比較例5〜8に記載の水性塗料用樹脂組成物に対して、製造例5に記載の硬化触媒を、シリコン化合物が包含された樹脂固形分100重量%に対してDP−8R成分が2重量%となるように配合した後手攪拌し、塗装に供した。その後、塗板を23℃にて2週間養生し、評価に用いる目的の塗膜を得た。
1.耐汚染性
折り曲げ曝露板(アルミ板)にエポキシ系中塗り塗料を塗装し、1日23℃で養生後、各塗料をエアースプレー塗装した。この試験板について、大阪府摂津市で北面向き屋外曝露を3ケ月実施し、45°面の汚れを確認した。汚染性は、曝露初期のL*a*b*表色系で表される明度を色彩色差計(ミノルタ(株)製:CR300)で測定し、曝露後との明度差の絶対値(ΔL値)を求めることで、その尺度とした。なお、数値の小さい方が耐汚染性に優れ、数値の大きい方が汚れていることを示す。
2.塗膜の親水性
ガラス板にアプリケーターにて塗装した塗膜を評価に用いた。塗膜の親水性は、塗膜を23℃で2週間養生後、水に2週間浸漬し、充分乾燥した後、接触角測定機(協和界面科学(株)製:CA−S150型)を用いて、接触角を測定することでその尺度とした。数値が小さい方が親水性が高いことを示す。
3.塗膜外観
ガラス板にアプリケーターにて塗装した塗膜を評価に用いた。塗膜外観は、光沢計(ミノルタ(株)製:Multi−Gloss268)により、入射角20°および60°の際の塗膜光沢値を測定することで、その尺度とした。数値が大きい方が塗膜外観が優れることを示す。また、目視により、塗膜の鮮鋭性、はじきなどを確認した。
4.耐温水性
背面および側面がシールされたスレート板にシリコン系プライマーを塗装し、その上に各塗料をエアースプレー塗装した。耐温水性は、塗板を40℃の温水に28日間浸漬した後、試験前後の塗膜の光沢値(入射角60°)を比較し、初期値に対する光沢保持率(%)を評価することで、その尺度とした。
5.耐薬品性
背面および側面がシールされたスレート板にシリコン系プライマーを塗装し、その上に各塗料をエアースプレー塗装した。耐薬品性は、塗板を水酸化カルシウム飽和水溶液に23℃で28日間浸漬した後、試験前後の塗膜の光沢値(入射角60°)を比較し、初期値に対する光沢保持率(%)を評価することで、その尺度とした。
6.耐候性
背面および側面がシールされたスレート板にシリコン系プライマーを塗装し、その上に各塗料をエアースプレー塗装した。耐候性は、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い3000時間の試験(63℃でカーボンアーク光照射120分中12分間シャワーリングする条件)を実施し、試験前後の塗膜の光沢値(入射角60°)を比較し、初期値に対する光沢保持率(%)を評価することで、その尺度とした。
7.エナメルの貯蔵安定性
実施例9〜14および比較例5〜8において調製した水性塗料用樹脂組成物を50℃で1ケ月保存し、3記載の塗膜外観を同様に評価した。
[物性評価結果]
上記により物性を評価した結果を表4および表5に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
実施例9〜14より明らかなように、本発明の水性塗料用樹脂組成物を用いて得られる塗膜は、優れた耐汚染性、塗膜外観、耐水性、耐薬品性、耐候性を示し、かつ貯蔵安定性も良好である。
【0057】
これに対し、比較例5および比較例7は、前記シリコン化合物を重合体粒子中に包含あるいは水性媒体中で微分散できてないため、貯蔵安定性および塗膜外観が不良であり、また比較例6は前記シリコン化合物を含有しないため、塗膜の接触角が低下せず、耐汚染性が不良である。一方、比較例8は、前記シリコン化合物を水性媒体中で微分散できるため塗膜外観は良好であるが、前記シリコン化合物を重合体粒子中に包含できないため、貯蔵安定性が劣る。
[重合体粒子の観察]
本発明における重合体粒子において前記シリコン化合物が包含されているかを明らかにするために、重合体粒子の断面を透過型電子顕微鏡によって観察した。具体的には、実施例1で得られた重合体粒子よりなる樹脂ラテックスをエポキシ樹脂包埋後、OsO4−RuO4染色し、これから超薄切片を作成して検鏡した。その結果、重合体粒子中に前記シリコン化合物が包含されていることを確認した。
【0058】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる樹脂エマルション、および該樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物は、これを被処理物に塗布した場合、その塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐薬品性、外観などで優れた塗膜物性を発現することができる。また該樹脂エマルションおよびそれを含有してなる水性塗料用樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れる。更に、該樹脂エマルションは粒子径分布がシャープであり、簡便な操作で効率良く生産できる。
Claims (10)
- 水性媒体中に分散された種粒子(A)0.1〜100重量部の存在下に、重合性単量体(B−1)0〜99.9重量部((A)と(B−1)の合計量は100重量部)、一般式(1)
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアシル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)0.1〜400重量部、乳化剤および/または水溶性高分子化合物(B−3)0〜300重量部、および水0.1〜4000重量部からなる混合物に機械的剪断を加えることによって形成した乳化液(B)を添加し、種粒子(A)に重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)を吸収させた後、または吸収させながら重合を行うことを特徴とするシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物が包含された重合体粒子(C)よりなる樹脂エマルションの製造方法(ただし、前記(B−2)が、平均縮合度2〜50であり、前記重合性単量体(B−1)が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ハロゲン化ビニル系単量体、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体、酢酸ビニル、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能性単量体およびこれらと共重合可能なその他の単量体から選ばれた1種または2種以上の単量体からなる)。 - 請求項1に記載の製造方法により製造した重合体粒子(C)よりなる樹脂エマルション100重量部(固形分換算、(B−2)含む)の存在下に、重合性単量体(D−1)5〜2000重量部、乳化剤および/または水溶性高分子化合物(D−2)0〜200重量部、および水0〜10000重量部からなる混合物(D)を添加して重合することを特徴とする芯/外殻構造を有する複層重合体粒子(E)からなる請求項1記載の樹脂エマルションの製造方法(ただし、前記重合性単量体(D−1)が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ハロゲン化ビニル系単量体、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体、酢酸ビニル、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能性単量体およびこれらと共重合可能なその他の単量体から選ばれた1種または2種以上の単量体からなる)。
- 前記種粒子(A)がポリマー粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂エマルションの製造方法。
- 前記乳化液(B)の形成において、重合性単量体(B−1)並びにシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)の合計量100重量%に対して、混合する水量が100重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂エマルションの製造方法。
- 一般式(1)
(R1O)4-aSiR2 a (1)
で表されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B−2)において、式中R1は同じかまたは異なり炭素数が3以上である割合が50%以上であるアルキル基あるいはアシル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂エマルションの製造方法。 - 前記重合性単量体(B−1)および/または重合性単量体(D−1)が、一般式(2)
−Si(X1 3-b)(R3 b) (2)
(式中、R3は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、X1は同じかまたは異なりハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基、bは0〜2の整数。)で表されるシリル基を有する単量体を0.1〜50重量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂エマルションの製造方法。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂エマルション。
- 請求項7に記載の樹脂エマルションを含有してなる水性塗料用樹脂組成物。
- 請求項7に記載の樹脂エマルションおよび硬化触媒(F)を含有してなる水性塗料用樹脂組成物。
- 前記硬化触媒(F)が、有機錫化合物、有機チタネート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、リン酸またはリン酸エステル類、リン酸エステル類または有機カルボン酸類と有機アミン類の混合物または反応物から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項9に記載の水性塗料用樹脂組成物。
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