JP5577049B2 - 水性塗料用樹脂組成物を用いた建築外装塗膜の製造方法 - Google Patents

水性塗料用樹脂組成物を用いた建築外装塗膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建築内外装、屋根、窯業系建材、自動車、家電用品、プラスチックなどに対する各種塗装の水性塗料として好適に用いられる、親水性表面を形成し得る水性塗料用樹脂組成物に関する。
近年、塗料の分野においても、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水溶性あるいは水分散樹脂への転換が試みられている。しかし、水性塗料は溶剤系塗料に比べ、塗膜性能が劣る傾向にあった。こういった状況下、水性塗料においても溶剤系塗料と同等の塗膜物性が要求され、特に耐汚染性といった高度な性能付与が要求されている。
塗料への耐汚染性付与方法としては、塗料中に加水分解性のシリコン化合物、特にオルガノシリケートを配合する方法が知られている(特許文献1)。この方法により形成した親水性塗膜は、油性の汚染物質の付着を抑制、さらに付着した汚染物質を降雨等の水滴で洗い流すことが可能であり、耐汚染性を発現する。また、上記方法の水性塗料への適用にあたり、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を併用することで耐汚染性を向上させることも知られている(特許文献2)。
しかしながら、上記方法の水性塗料への適用は、加水分解性のシリコン化合物を必然的に水を含有する水性塗料に添加することから、塗料中でシリコン化合物の加水分解・縮合が進行し、最終的に反応性が消失、耐汚染性が損なわれることとなり、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を併用すれば、さらに問題となる。このため、塗装においてシリコン化合物および/またはアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を含む組成物を塗装開始時に添加し、シリコン化合物の反応性が消失する以前に完了させる、2液型の塗料形態とせざるを得ず、操作の煩雑さに欠点を有していた。
WO1994/06870号公報 特開2005−15676号公報
本発明が解決しようとする課題は、1液型の塗料形態も可能な安定性と良好な耐汚染性を示す、シリコン化合物による親水性表面を形成し得る水性塗料用樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、合成樹脂エマルジョン、シリコン化合物および光酸発生剤を含有する水性樹脂組成物が通常の塗料の貯蔵条件である暗所での安定性を有する1液型の組成物となり得ること、得られる塗膜が通常の被塗物の使用条件である屋外暴露、その他の光暴露により優れた親水性表面を形成し得ることを見出した。
すなわち、
1).
(I)合成樹脂エマルジョン
(II)下記一般式(1)で示されるシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)
(III)光酸発生剤
を含有する水性塗料用樹脂組成物、
2).
前記(II)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物が、オルガノシリケート(下記一般式(2)で示される化合物および/またはその部分加水分解縮合物)および/またはその変性物
(R3O)4Si (2)
(式中、R3は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基である1)に記載の水性塗料用樹脂組成物、
3).
前記(II)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物をノニオン系界面活性剤および/またはアニオン系界面活性剤を用いて水性媒体中に分散して得られる乳化物として添加する1)または2)に記載の水性塗料用樹脂組成物、
4).
前記(I)合成樹脂エマルジョンが、アルコキシシリル基含有単量体単位を有するアクリル系樹脂エマルジョンである1)〜3)のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物、
5).
さらに(IV)酸により活性化するアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を含有する1)〜4)のいずれか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物、
6).
(IV)酸により活性化するアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物が酸性リン酸化合物の塩である5)に記載の水性塗料用樹脂組成物、
7)
(III)光酸発生剤が、有機ハロゲン化合物である1)〜6)の何れか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物、
8)
(III)光酸発生剤が、ハロゲン含有トリアジン化合物、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィンである1)〜7)の何れか1項に記載の水性塗料用樹脂組成物、
9)
1)〜8)の何れか1項に記載の(I)、(II)、(III)および必要に応じて(IV)を含有してなる一液型水性塗料用樹脂組成物、
に関する。
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、貯蔵安定性が高く1液型の塗料形態が可能である。また本発明の組成物は、通常の被塗物の使用条件である屋外暴露、その他の光暴露により優れた親水性を有する塗膜形成し得る。
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
(I)合成樹脂エマルジョン
本発明に使用可能な合成樹脂エマルションとしては、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、ふっ素樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、アルキド樹脂エマルジョン、メラミン樹脂エマルジョンなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。これらの中でコスト、樹脂設計の自由度の高さなどからアクリル系樹脂エマルジョンが有利である。
アクリル系樹脂エマルジョンは、(A)アクリル系単量体、(B)(A)と共重合可能な単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
(A)アクリル系単量体はアルキルまたはアラルキル基を有するメタアクリレートおよび/またはアクリレートであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが上げられる。尚、(メタ)アクリレートとは、本明細書中ではメタアクリレートおよび/またはアクリレートを表すこととする。
この中で、炭素数3以上、12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体を用いれば、安定な乳化重合が可能となるとともに、塗膜の耐候性などの耐久性の点で好ましく、特に、分岐アルキル基および/または環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体、たとえばiso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートが好ましい。
単量体総量中の(A)成分の量は特に限定されないが、単量体の総量100重量部に対して50〜99重量部が塗膜の耐候性などの耐久性の点で好ましい。さらに好ましくは、80〜99重量部である。
(B)(A)と共重合可能な単量体は、(A)とは異なり、これらと共重合可能なものであれば、特に限定はされない。その具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクスM−5700(東亜合成化学(株)製)、placcelFA−1、placcelFA−4、placcelFM−1、placcelFM−4(以上、ダイセル化学(株)製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上日本触媒化学(株)製)、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上日本油脂(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、ビニルメチルエーテル、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
さらに、親水性を有するビニル系単量体も使用可能である。使用可能な親水性基を有するビニル系単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に限定はないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては日油(株)製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、AP−550、AP−800、700PEP−350B、10PEP−550B、55PET−400、30PET−800、55PET−800、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400、50POEP−800B、50AOEP−800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC−A、MTG−A、130A、DPM−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、EHDG−A、日本乳化剤(株)製MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、Antox MS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820、新中村化学工業(株)製NK−ESTER M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LAなどがあげられる。
また、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体を使用することも可能である。この場合、生成した粒子内部に架橋を有する構造となり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
また、トリフルオロ(メタ)アクリレート、ペンタフルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどのふっ素含有ビニル系単量体を使用することにより高度な撥水・撥油を付与することも可能である。
また、ダイアセトンアクリルアミド、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有ビニル系単量体を用い、ヒドラジンおよび/またはヒドラジド基を含有する化合物を配合することにより、架橋性を付与することも可能であり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
単量体総量中の(B)成分の量は特に限定されないが、単量体の総量100重量部に対して(B)成分が0.1〜50重量部含まれていることが、経済性、架橋性などの機能付与、エマルジョンの安定性の点で好ましい。親水性を有するビニル系単量体について、さらに好ましくは、0.5〜3重量部である。
さらに(C)成分としてアルコキシシリル基含有単量体を用いれば、塗膜の耐水性、耐候性などの耐久性向上、(II)のシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物による耐汚染性効果を向上させることから好ましい。
(C)アルコキシシリル基含有単量体は、
45 (3-b)Si(OR6b (3)
(式中、R4は重合性二重結合を有する1価有機基、R5は炭素数1〜4のアルキル基、R6は炭素数1〜4のアルキル基、bは1〜3)で示される有機ケイ素化合物で、アルコキシ基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニルシラン類;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランなどのアクリルシラン類などがあげられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。
(C)成分の使用量は特に限定されないが、単量体の総量100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量部用いることによって、組成物の貯蔵時の架橋、過度の架橋による脆化を抑制し、耐久性を向上させることができる。
(C)成分のR6の炭素数は、アルコキシシリル基の加水分解・縮合の反応性と反比例し、炭素数が増えるにつれ反応性は低下する傾向がある。エマルジョン中での安定性を考慮すれば、2〜4が好ましく、上記具体例のなかでγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。また、コア/シェル型エマルジョンとした(I)において、コア部にR6の炭素数の低い(C)成分(たとえばメトキシシリル基を有するγ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン)、シェル部にR6の炭素数の高い(C)成分(たとえばエトキシシリル基を有するγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン)を用いれば、コア部に緩やかな架橋構造が導入され、柔軟性を損なうことなく、シェル部の安定化された反応性とともに耐水性、塗膜強度を向上させることができる。
(C)成分を用いる場合、(A)成分に炭素数4以上のアルキル基および/又はシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルを単量体の総量100重量部中に60重量部以上使用するとエマルジョン中のアルコキシシリル基の安定性が大きく向上する。
(B)成分に、水酸基含有ビニル系単量体および/またはポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体を単量体の総量100重量部中に0.5〜20重量部用いると、(C)成分、(II)のシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物のアルコキシシリル基の安定性を向上させ、さらにエマルジョンの機械的安定性、化学的安定性を向上させることができる。なかでも、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が特に有効である。
次にアクリル系樹脂エマルジョンの製造方法について説明する。
(A)、(B)成分からなる単量体混合物を公知の乳化重合法、たとえばバッチ重合法、モノマー滴下重合法、乳化モノマー滴下重合法などにより重合して得られる。
また、コア/シェル型エマルションの製造は、コア部をなす単量体混合物を公知の乳化重合法で重合し、得られたコア成分の水性分散液の存在下に、シェル部をなす単量体混合物を公知の乳化重合法で重合し、シェル成分を導入する。なお、コア部、シェル部各成分内の重合は、何回かに分割して行ってもよい。
乳化重合に際しては、通常用いられるアニオン系またはノニオン系の界面活性剤を用いることができる。
乳化重合に用いる水性媒体としては、水を必須成分として含有していればよく、他の有機溶剤を含有していても構わない。他の有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤;プロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、(株)チッソ製CS−12などのエステル系溶剤があげられるが、エマルジョンの重合時の安定性や環境の観点から有機溶剤は含有しない方が好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレンアリールエーテルサルフェート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレン鎖を有する硫酸エステル;ラウリルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;ラウリルサルフェートなどの硫酸エステル;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸などのアルキルスルホコハク酸などおよびそれらの塩があげられる。
アニオン系界面活性剤の中和カチオン種は種々選択できるが、アルカリ金属、たとえばナトリウムまたはカリウムイオンを用いた界面活性剤を用いれば、(II)シリコン化合物、(C)成分の安定性を向上させることができる。
また、ノニオン系界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレン鎖を有するもの;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの水酸基を有するもの;信越化学工業(株)製KF−351、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−907、X−22−6008、X−22−811、X−22−812、東レ・ダウコーニング社製SH3748、SH3749、SH3771、SH8400、SF8410、SF8700などの片末端および/または両末端および/または側鎖をポリアルキレンオキシドで変性したポリオルガノシロキサンであるシリコーン系界面活性剤などがあげられる。
本発明においては、界面活性剤として1分子中に不飽和基を有する、いわゆる反応性乳化剤を用いることが組成物およびこれを用いた水性塗料での泡立ち抑制、得られる塗膜の耐水性、耐候性の点で好ましい。また、特に分子内にポリオキシアルキレン基を有する反応性乳化剤を用いた場合には、機械的安定性を向上させることができる。
かかる反応性乳化剤の具体例としては、たとえば、(株)ADEKA製アデカリアソープSR−05、SR−10、SR−20、SR−1025、SR−2025、SR−3025,SR−10S、NE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10、SE−20、SE−10S、ER−10、ER−20、ER−30、ER−40)、日本乳化剤(株)製Antox−MS−60、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、第一工業製薬(株)製アクアロンKH−05、KH−10、RN−20、RN−30、RN−50、RN−2025、HS−10、HS−20、HS−1025、BC05、BC10、BC0515、BC1025、三洋化成工業(株)製エレミノールJS−2、JS−20、RS−30、花王(株)製ラテムルS−180、S−180A、PD−104、PD−420、PD−430などがあげられる。
前記界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。界面活性剤の総使用量は、単量体全量100重量部に対して有効成分量として10重量部以下、好ましくは0.5〜8重量部である。
重合開始剤としては、特に限定はなく、アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの無機過酸化物;クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系などの公知の重合開始剤を挙げることができる。それらの中でも重合をより安定に行なうために、重合開始剤としてレドックス系を用いることが望ましい。また、重合中の混合液の安定性を保持し、重合を安定に行なうためには、温度は70℃以下、好ましくは40〜65℃であり、塩基および/または緩衝剤を用いてpHは5〜9に調整することが好ましい。
前記レドックス系に用いる開始剤として、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレートなどがあげられ、これらに組み合わせる還元剤としては、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット(Bruggamann Chemical US製、Sodium formaldehyde sulfoxylate)、Bruggolite FF−6(Bruggamann Chemical US製、2−hydroxy−2−sulfinate−acetic−acid di−sodium salt、Sodium sulfite、2−hydroxy−2−sulfonate−acetic−acid di−sodium salt混合物)、二酸化チオ尿素、L−アスコルビン酸などがあげられる。特に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物とロンガリット、Bruggolite FF−6または二酸化チオ尿素との組み合わせが好ましい。
なお、還元剤は、環境への配慮からホルムアルデヒド発生のないBruggolite FF−6、二酸化チオ尿素が特に好ましい。
前記重合開始剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.01〜10部、好ましくは0.05〜5重量部である。かかる重合開始剤の使用量が0.01重量部未満である場合には、重合が進行しにくくなることがあり、10重量部を超える場合には、生成する重合体の分子量が低下する傾向がある。
また、重合開始剤の触媒活性を安定的に付与するために、硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート化剤を用いてもよい。かかるキレート化剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部である。
重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤の添加も可能である。連鎖移動剤としては公知のもの、たとえば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン系化合物、クロロホルム、四塩化炭素等の有機ハロゲン化物、スルフィドベンゼン、イソプロピルベンゼン、塩化第二鉄等が挙げられる。かかる連鎖移動剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部である。
エマルジョンの安定性を保持するため、重合完了後に塩基および/または緩衝剤によりpHを6〜10に保つのが好ましい。この調整、維持は、塩基および/または緩衝剤は、一般に使用されるものであれば、特に限定されないが、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;アンモニア、有機アミン類など、緩衝剤としては、たとえば炭酸水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸塩またはカルボン酸塩があげられる。
これらのpH調整剤、緩衝剤において、アルカリ金属を含むものを用いれば、(II)シリコン化合物、(C)成分の安定性を向上させることができ、炭酸水素ナトリウムの使用がより好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョン中の樹脂固形分濃度は、20〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%となるように調整する。かかる樹脂固形分濃度が70重量%を超える場合には、系の粘度が著しく上昇するため、重合反応に伴なう発熱を除去することが困難になったり、重合器からの取り出しに長時間を要するようになる傾向がある。また、樹脂固形分濃度が20重量%未満である場合には、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂量が少なく、経済面で不利となるとともに、得られる塗膜の膜厚が薄くなるなど、塗装作業性、塗膜性能低下の点で不利となる。
本発明のアクリル系樹脂エマルジョンは、平均粒子径が0.02〜1.0μm程度が好ましい。平均粒子径は、重合初期に仕込む界面活性剤の量で調整することが可能である。
(II)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
本発明における(II)成分であるシリコン化合物は、一般式(1)で示される。
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0〜2の整数。)
シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物としては、たとえば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケート、テトラ−i−ブチルシリケート、テトラ−t−ブチルシリケートなどのテトラアルキルシリケート類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類などのシランおよび/またはこれらのシランから選択される1種または2種以上の部分加水分解縮合物があげられる。また、これらは1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。
上記のシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物の中で、下記一般式(2)で示される化合物および/またはその部分加水分解縮合物であるオルガノシリケートおよび/またはその変性物が塗膜に親水性を付与し、耐汚染性を発現せしめる効果に優れることから好ましい。
(R3O)4Si (2)
(式中、R3は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基)
オルガノシリケートとしては、たとえば上記のテトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケート、テトラ−i−ブチルシリケート、テトラ−t−ブチルシリケートなどテトラアルキルシリケート類、これらから選択される1種または2種以上の部分加水分解縮合物があげられる。
オルガノシリケートのR3は、炭素数が多い、また分岐のあるもので加水分解・縮合の反応性が低下し、組成物の貯蔵安定性および耐汚染性とを考慮すれば、炭素数2〜4のアルキル基が好ましい。また、R3として、短鎖アルキル(たとえばエチル)と長鎖または分岐アルキル(たとえばi−プロピル)の2種以上の選択により反応性に幅を持たせ、貯蔵安定性および耐汚染性の双方を向上させることもできる。
また、部分加水分解縮合物とすれば、耐汚染性を向上させることができる。その縮合度は2〜20、好ましくは3〜15である。
また、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルなどの水酸基を含有する親水性のポリエーテルをエステル交換反応等により導入すること、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどの親水性基含有シラン化合物を共縮合することなどで親水性基を導入する変性により、水性媒体中での分散性を向上させることもできる。
(II)の添加方法は、特に限定されないが、(I)または(I)を用いた水性塗料組成物に直接添加、たとえば特開平8−259892号公報に記載される乳化物としての添加、特開平9−221611号公報に記載される(II)とγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどの親水性基含有シラン化合物を共縮合することなどによる水溶化を行ったのちの添加、WO1999/05228号公報に記載されるポリオキシアルキレン基を有する(II)の変性物としての添加、特開平8−337754号公報に記載される水溶性又は自己乳化型の(ブロック)イソシアネート基含有化合物および/またはカルボジイミド化合物などと(II)の混合物としての添加、特開2002−138123号公報に記載される(II)を包含させた(I)合成樹脂エマルジョンの使用などがあげられる。
上記の(II)の添加方法の中で、乳化物としての添加、特に(II)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物をアニオン系界面活性剤および/またはノニオン系界面活性剤を用いて水性媒体中に分散して得られる乳化物としての添加は、水性塗料組成物での貯蔵安定性、得られる塗膜の外観などを向上させる点で好ましい。
この乳化物に用いる水性媒体は、水を必須成分として含有していればよく、他の有機溶剤を含有していても構わない。他の有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤;プロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、(株)チッソ製CS−12などのエステル系溶剤があげられるが、乳化物の安定性や環境の観点から有機溶剤は含有しない方が好ましい。
また、アニオン系界面活性剤のアニオンとしては、たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレンアリールエーテルサルフェート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレン鎖を有する硫酸エステル;ラウリルサルフェートなどの硫酸エステル;ラウリルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸などのスルホン酸;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸などのアルキルスルホコハク酸;アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステルなどがあげられる。
アニオン系界面活性剤の中和カチオン種は、種々選択できるが、アルカリ金属、好ましくはナトリウムまたはカリウムイオンを用いれば、乳化物および水性塗料組成物での(II)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物の安定性を向上させることができる。
また、ノニオン系界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレン鎖を有するもの;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの水酸基を有するもの;信越化学工業(株)製KF−351、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−907、X−22−6008、X−22−811、X−22−812、東レ・ダウコーニング社製SH3748、SH3749、SH3771、SH8400、SF8410、SF8700などの片末端および/または両末端および/または側鎖をポリアルキレンオキシドで変性したポリオルガノシロキサンであるシリコーン系界面活性剤;アセチレングリコール系界面活性剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アクリルアミド共重合体などの水溶性高分子系などがあげられる。
これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の使用量は、シリコン化合物100重量部に対して有効成分量として0.05〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部である。0.05重量部未満では安定な乳化物が得られず、貯蔵安定性も低下する。50重量部を越えると得られる塗膜の外観や耐水性の低下などの問題が発生する。
この乳化物は、pHを6〜10に保つのが好ましい。この範囲外では、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物の加水分解・縮合が起こりやすくなり貯蔵安定性が低下する傾向がある。特に、pH6未満では加水分解が促進されるため、縮合が速く進行する。また、pH10を超えると不安定になるだけでなく作業上の問題も生じる。
pHの調整、維持の方法あるいは順序については、特に限定しないが、乳化物作製時点から行うことが好ましい。pHの調整に用いる酸、塩基、pHの維持に用いる緩衝剤は、一般に使用されるものであれば、特に限定されないが、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;アンモニア、有機アミン類など、緩衝剤としては、たとえば炭酸水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸塩またはカルボン酸塩があげられる。これらのpH調整剤、緩衝剤において、アルカリ金属を含むものが好ましく、炭酸水素ナトリウムの使用がより好ましい。
この乳化物中のシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物の固形分濃度は、5〜60重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。固形分濃度が60重量%を超える場合には、(II)の粘度が上昇、乳化安定性を損なう等の問題が生じる可能性があり、5重量%未満の場合には、得られる塗膜の膜厚が薄くなるなど、塗装作業性、塗膜性能低下の点で不利となる。
乳化物の作製は、上記の各成分と水性媒体を一般的な乳化方法により乳化することによる。乳化方法としては、シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物と界面活性剤を混合、これに水をゆっくりと添加し、油中水型乳化物から水中油型乳化物に相反転させる、いわゆる転相乳化法;各成分を混合後、また予備乳化後にディスパー、高圧ホモジナイザーなどで機械的に微分散する方法などがあげられる。
(II)の添加量は、(I)合成樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対し、1〜50重量部、好ましくは3〜20重量部となる量である。1重量部未満では得られる塗膜の耐汚染性が十分ではない傾向にあり、50重量部を越えると塗膜外観の低下やクラックなどの問題が発生する傾向にある。
(III)光酸発生剤
本発明における(III)成分である光酸発生剤は、光暴露により酸を発生する化合物であり、たとえばトルエンスルホン酸などの強酸または四フッ化ホウ素などのスルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩またはセレニウム塩などのオニウム塩類;鉄−アレン錯体類;シラノール−金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類などのスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類など、特開平5−134412号公報に示される放射線の照射により酸を発生する化合物があげられる。
上記の光酸発生剤の中で、イオン性を有しないスルホン酸誘導体、有機ハロゲン化合物類は、特に(I)合成樹脂エマルジョンがイオン性界面活性剤で分散安定性を付与している場合において、組成物の安定性への影響が小さい点で好ましい。スルホン酸誘導体としては、たとえば米国特許第4618564号公報に示されるベンソイントシレート、ニトロベンジルトシレート、コハク酸イミドトシルスルホネートなどのスルホン酸エステル類;米国特許第4540598号公報、特開平6−67433号公報に示されるα−(4−トシルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニドなどのオキシムスルホネート類;特開平6−348015号公報に示されるトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼンなど;特開昭64−18143号公報に示される9,10−ジアルコキシアントラセンスルホン酸ニトロベンジルエステルなど;N−(p−ドデシルベンゼンスルホニルオキシ)−1,8−ナフタルイミドなどがあげられる。有機ハロゲン化合物類としては、たとえば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどの特開昭55−32070号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭63−238339号公報に示されるハロゲン含有トリアジン化合物;特開平2−304059号公報に示される2−ピリジル−トリブロモメチルスルホンなどのハロゲン含有スルホン化合物;トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートなどのハロゲン化アルキルリン酸エステル;2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジンなどのハロゲン含有へテロ環状化合物;1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィンなどのハロゲン含有炭化水素化合物などがあげられる。
(III)の添加方法は、特に限定されないが、たとえば(II)に溶解させて添加する、成膜助剤または溶剤に溶解させて添加する、(III)が固体の場合には粉末として添加する、エマルジョン形態の(III)を添加するなどがあげられる。
(III)の添加量は、生成する酸の発生量、発生速度に応じて調整が必要だが、(I)合成樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対し、0.05〜30重量部、好ましくは3〜20重量部となる量である。0.05重量部未満では生成する酸が不足し、得られる塗膜の耐汚染性が十分ではない傾向にあり、30重量部を越えると塗膜外観の低下や着色などの問題が発生する傾向にある。
上記(I)〜(III)から得られた組成物は、暗所での安定性を有する1液型の組成物とすることができ、さらに塗膜の光暴露により(III)から生じた酸が(II)の加水分解・縮合反応の触媒となり、優れた親水性表面を形成することが可能である。
この親水性をさらに向上させるため、さらに(IV)酸により活性化するアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物の添加を行うことができる。(IV)成分は、酸性ではアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進するが、塩基性ではこの活性が抑制されているものであり、たとえば(III)に該当するものを除く硫酸化合物、スルホン酸化合物、カルボン酸化合物、リン酸化合物などの酸性有機化合物のエステルまたは塩などがあげられる。具体例としては、t−ブチル(メタ)アクリレート共重合体などのt−ブチルエステル類;アルキルホスホン酸、酸性リン酸エステルなどのナトリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ金属、アルカリ土類金属塩などがあげられる。
上記の酸性有機化合物のエステルまたは塩の中で、酸性リン酸化合物の塩は、塗膜の表面親水性向上および組成物の安定性への影響が小さい点で好ましい。酸性リン酸化合物の塩としては、たとえばモノ−2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホネートなどのアルキルホスホン酸;ジブチルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステルなどのナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などがあげられる。
(IV)の添加量は、(III)の添加量、(III)から生成する酸の発生量、発生速度に応じて調整が必要だが、(I)合成樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対し、0.05〜20重量部、好ましくは1〜10重量部となる量である。0.05重量部未満ではアルコキシシリル基の加水分解・縮合の反応促進が不足し、得られる塗膜の耐汚染性が向上作用が十分ではない傾向にあり、20重量部を越えると塗膜耐水性の低下などの問題が発生する傾向にある。
水性塗料用樹脂組成物の作製
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、(I)合成樹脂エマルジョン、(II)シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物、(III)光酸発生剤、必要であれば(IV)加水分解・縮合を促進する化合物を、任意の順番で加え混合することにより得られる。混合方法は、一般的な混合方法を使用することができ特に限定されない。
本発明の水性塗料用樹脂組成物の配合形態については、全ての配合物を配合した1液型の配合形態が可能である。本発明の水性塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性は良好で、全ての配合物を配合し、遮光した密閉状態で、室温もしくは50℃28日間安定であり、得られる塗膜の物性の低下は起こらない。
得られた組成物には、必要に応じて、通常塗料に用いられる顔料、たとえば二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、カーボン、弁柄、黄土、シアニンブルーなど、成膜助剤、たとえばベンジルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのグリコールエステル類など、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、防腐剤、凍結防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの通常塗料に用いられる添加剤を添加することもできる。
本発明の組成物は、例えば建築内外装用、メタリックベースあるいはメタリックベース上のクリアーなどの自動車用、アルミニウム、ステンレスなどの金属直塗用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、石綿スレート、アスベストボード、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート、硅酸カルシウム板、タイル、レンガなどの窯業系直塗用、ガラス用、天然大理石、御影石等の石材用の塗料あるいは上面処理剤として用いられる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(アクリル系樹脂エマルジョンの合成例)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、初期仕込みとして脱イオン水160重量部、Newcol−707SN(日本乳化剤(株)製:有効成分30%、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)0.35重量部、5%炭酸水素ナトリウム水溶液0.25重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。昇温後、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.5重量部、20%Bruggolite FF−6水溶液0.28重量部、0.10%硫酸第一鉄・7水和物と0.40%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの混合水溶液0.35部を添加し、1段目として2−エチルヘキシルアクリレート16.04重量部、ブチルメタクリレート33重量部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン0.94重量部の混合物50重量部にアデカリアソープSR−10S((株)ADEKA製:有効成分100%、ポリオキシエチレン−1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エチルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)0.75重量部、アデカリアソープER−20((株)ADEKA製:有効成分75%、ポリオキシエチレン−1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エチルエーテル)0.47重量部、および脱イオン水20重量部を加え乳化したモノマー乳化液を200分かけて等速追加した。その間、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.55重量部および2.5%Bruggolite FF−6水溶液0.43重量部を3回に分けて添加した。モノマー乳化液追加終了後、1時間後重合を行った。さらに、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.25重量部、2.5%Bruggolite FF−6水溶液0.55重量部および0.10%硫酸第一鉄・7水和物と0.40%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの混合水溶液0.35部を添加し、2段目としてメチルメタクリレート9.25重量部、ブチルメタクリレート37重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン0.5重量部、ポリオキシエチレン鎖を有するビニル系単量体であるブレンマーPE−200(日油(株)製)3重量部、n−ドデシルメルカプタン0.25重量部の混合物50重量部にアデカリアソープSR−10S 0.75重量部、アデカリアソープER−20 0.47重量部、および脱イオン水20重量部を加え乳化したモノマー乳化液を200分かけて等速追加した。その間、7%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.6重量部および2.5%Bruggolite FF−6水溶液0.85重量部を4回に分けて添加した。モノマー乳化液追加終了後、1.5時間後重合を行った。得られたエマルジョンに5%炭酸水素ナトリウム水溶液5.5部を添加後、脱イオン水で固形分50%に調整しアクリル系樹脂エマルジョン(I−1)を得た。得られたエマルジョンは、日機装(株)製動的光散乱法粒子径測定機MICROTRAC UPA MODEL9340−UPAによる体積平均粒子径が200nmであった。
(シリコン化合物の乳化物の製造例1)
室温にて、縮合度5〜6のテトラ−n−プロピルシリケート部分加水分解縮合物30重量部とネオコールSW−C(第一工業製薬(株)製:有効成分70%、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩)10重量部を攪拌しながら、脱イオン水を60重量部を滴下して、有効固形分濃度30%のシリコン化合物(II−1)の乳化物を得た。
(シリコン化合物の乳化物の製造例2)
室温にて、縮合度5〜6のテトラエチルシリケート部分加水分解縮合物30重量部とネオコールSW−C(第一工業製薬(株)製:有効成分70%、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩)10重量部、ハイテノールXJ−630S(第一工業製薬(株)製:有効成分30%、ポリオキシアルキレンデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)5重量部を混合し、攪拌しながら、脱イオン水を55重量部を滴下して、有効固形分濃度30%のシリコン化合物(II−2)の乳化物を得た。
(シリコン化合物の乳化物の製造例3)
室温にて、縮合度5〜6、エチル基/i−プロピル基が8/2 mol/molであるテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物30重量部とポリオキシエチレンラウリル硫酸エステルナトリウム塩5重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3重量部を混合し、1000rpm以上で高速攪拌しながら、ゆっくりと脱イオン水を62重量部加えて、有効固形分濃度30%のシリコン化合物(II−3)の乳化物を得た。
(水性樹脂組成物の製造例)
アクリル系樹脂エマルジョン(I−1)100重量部に、シリコン化合物の乳化物の製造例1〜3のシリコン化合物(II−1)〜(II−3)の乳化物16.7重量部{(I)の固形分100重量部に対し、(II)のシリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物10重量部}を加え、室温下、攪拌機により30分混合した。この混合物に表1に示す光酸発生剤(III−1)〜(III−5)の溶液、懸濁液または水分散液を添加、混合して水性樹脂組成物A〜Kを得た。
Figure 0005577049
実施例1〜6、比較例1、2
水性樹脂組成物A〜C、Iに表2に示す添加剤を室温、攪拌下で加えクリアー塗料を得た。これらを6ミルのアプリケーターを使用してガラス板上に塗装し、表2に示す露光、養生を行って塗板を作製した。これらの塗板の露光、養生完了時の水接触角(初期)および室温で14日水浸漬し、室内で約6時間乾燥後の水接触角(水浸漬後)の測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005577049
実施例7、8、比較例3、4
実施例7、8は、水性樹脂組成物D、Eに表3に示す添加剤を室温、攪拌下で加えクリアー塗料を得た。これらを密閉容器に入れ、直射日光の当たらない条件下で表3に示す貯蔵を行った後、6ミルのアプリケーターを使用してガラス板上に塗装し、表3に示す露光、養生を行って塗板を作製した。比較例3、4は、水性樹脂組成物I、Jに表4に示す成膜助剤を室温、攪拌下で加えてクリアー塗料とし、これらにアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物である加水分解縮合触媒を加えて混合し、混合後30分後もしくは1日後に塗装を行う、2液形態とした。これらの塗板の露光、養生完了時の水接触角(初期)および室温で7日水浸漬し、室内で約6時間乾燥後の水接触角(水浸漬後)の測定を行った。結果を表3、表4に示す。
Figure 0005577049
Figure 0005577049
実施例9、10、比較例5、6
水性樹脂組成物F、Kに表5に示す添加剤を室温、攪拌下で加えクリアー塗料を得た。これらを密閉容器に入れ、直射日光の当たらない条件下で表5に示す貯蔵を行った後、6ミルのアプリケーターを使用してガラス板上に塗装し、表5に示す露光、養生を行って塗板を作製した。比較例6は、比較例5のクリアー塗料に室温でアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物である加水分解縮合触媒を加えて混合、30分後に塗装を行う、2液形態とした。これらの塗板の露光、養生完了時の水接触角(初期)および室温で14日水浸漬し、室内で約6時間乾燥後の水接触角(水浸漬後)の測定を行った。結果を表5に示す。
Figure 0005577049
実施例11、12、比較例7、8、9
水性樹脂組成物D、Iに表6に示す顔料ペースト、表7に示す添加剤を室温、攪拌下で加え白エナメル塗料を得た。比較例8は、比較例7の白エナメル塗料に室温でアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物である加水分解縮合触媒を加えて混合、30分後に塗装を行う、2液形態とした。比較例9は、市販の1液水系アクリル塗料である亜細亜工業(株)製ネオグロスG−80(白)をそのまま用いた。厚さ4mm、幅40mm、長さ150mmのJIS A5430スレート板に関西ペイント(株)製アレスゴムタイルシーラーを室温下エアスプレーで塗装、1日乾燥し、これに白エナメル塗料を室温下、塗装間隔24時間でエアスプレー2回塗装(塗布量合計約0.3Kg/m2)、直射日光の当たらない室内で室温下、7日養生を行って塗板を作製した。これらの塗板を兵庫県高砂市内で南面45°で固定し、屋外暴露を行った。この際の養生完了時の水接触角(初期)および各暴露期間での水接触角、各暴露期間での耐汚染性、養生完了時の光沢の測定を行った。結果を表7に示す。
Figure 0005577049
Figure 0005577049
実施例13、14、15、16比較例10、11
水性樹脂組成物E、G、H、Jに表6に示す顔料ペースト、表8に示す添加剤を室温、攪拌下で加え白エナメル塗料を得た。比較例11は、比較例10の白エナメル塗料に室温でアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物である加水分解縮合触媒を加えて混合、30分後に塗装を行う、2液形態とした。厚さ4mm、幅40mm、長さ150mmのJIS A5430スレート板に関西ペイント(株)製アレスゴムタイルシーラーを室温下エアスプレーで塗装、1日乾燥し、これに白エナメル塗料を室温下、塗装間隔24時間でエアスプレー2回塗装(塗布量合計約0.3Kg/m2)、直射日光の当たらない室内で室温下、7日養生を行って塗板を作製した。これらの塗板を兵庫県高砂市内で南面45°で固定し、屋外暴露を行った。
さらに、上記方法にて作成した白エナメル塗料を遮光密閉下50℃に静置した。10日間静置後の塗料を使用して、同様の方法にて塗板を作成し、屋外曝露を実施した。この際の養生完了時の水接触角(初期)および各暴露期間での水接触角、各暴露期間での耐汚染性、養生完了時の光沢の測定を行った。結果を表8に示す。
Figure 0005577049
なお、測定は下記の方法によった。
・水接触角
協和界面科学(株)製接触角測定機CA−S150を使用し、純水の接触角を測定した。値が低いほど表面親水性が高く、耐汚染性に優れることを示し、70°以下であれば実際の屋外暴露試験での耐汚染性の効果が顕著となる傾向がある。特に水浸漬後の値は、降雨後の状態を想定しており、この値が低いことは、表面親水性の耐久性、持続性が高く、長期にわたる耐汚染性の効果が顕著となる傾向がある。
・耐汚染性
ミノルタ(株)製測色計CR−300を使用し、暴露開始前と各暴露期間でL*、a*、b*値を測定し、各暴露期間でのL*と暴露開始前のL*から明度差(ΔL)を算出した。値が大きい(0に近い)ほど汚染物質の付着による色相変化が小さく、耐汚染性に優れることを示す。
・光沢
ミノルタ(株)製光沢計Multi−Gloss268を使用し、入射角60°の光沢値を測定した。値が高いほど外観に優れることを示す。
実施例1〜6は、塗膜の水浸漬後の水接触角が室内養生で84°以上であるが、UV照射または屋外暴露を行った後では室内養生に対して10°程度低下し、露光による表面親水化の効果が認められた。特に(IV)成分としてジ−2−エチルヘキシルホスフェートのナトリウム塩を用いる実施例4〜6は、露光時の水浸漬後の水接触角がより低く、親水性向上が認められた。
比較例1、2は、(III)成分を含有しておらず、露光の有無によらず塗膜の水浸漬後の水接触角が82°以上となり、表面親水性が十分ではなかった。
実施例7、8は、クリアー塗料の室温5日貯蔵後で、塗膜の水浸漬後の水接触角が室内養生で76°以上であるが、UV照射を行った後で10°程度低下し、比較例3、4の(III)成分を含有せず、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を塗装時に添加する2液形態の塗装時間30分での水浸漬後の水接触角と同等となり、露光による表面親水化の効果が認められた。さらに、クリアー塗料の50℃、28日貯蔵後でも同様の水接触角挙動となっており、表面親水性の貯蔵安定性が良好であった。
比較例3、4は、(III)成分を含有せず、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を塗装時に添加する2液形態であるが、塗膜の水浸漬後の水接触角が塗装時間30分では73°以下となるが、塗装時間1日では83°以上となり、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物である通常の加水分解縮合触媒の添加では表面親水性の貯蔵安定性が十分ではなかった。
実施例9、10は、クリアー塗料の室温1日貯蔵後で、塗膜の水浸漬後の水接触角が室内養生では、比較例5の(III)成分を含有しないものと同等の78°であるが、UV照射を行った後で10°程度低下し、比較例6の(III)成分を含有せず、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を塗装時に添加する2液形態での水浸漬後の水接触角と同等の67°以下となり、露光による表面親水化の効果が認められた。さらに、クリアー塗料の室温、28日貯蔵後でも同様の水接触角挙動となっており、表面親水性の貯蔵安定性が良好であった。
実施例11、12は、白エナメル塗料の塗板の屋外暴露において、水接触角が期間に応じて低下し、耐汚染性が比較例8の(III)成分を含有せず、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を塗装時に添加する2液形態と同等であり、実使用条件の暴露による表面親水化、耐汚染性付与の効果が認められた。
比較例7は、(III)成分を含有せず、塗板の屋外暴露で水接触角の低下が小さく、耐汚染性が比較例9の市販の1液水系アクリル塗料と同等であり悪く、表面親水化、耐汚染性付与の効果が十分ではなかった。
実施例13、14、15、16は、白エナメル塗料の塗板の屋外暴露において、水接触角が期間に応じて低下し、耐汚染性が比較例11の(III)成分を含有せず、アルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を塗装時に添加する2液形態と同等であり、実使用条件の暴露による表面親水化、耐汚染性付与の効果が認められた。
さらに50℃で10日間保存後の塗料を使用しても、曝露により表面の親水化および耐汚染性の効果が認められた。
比較例10は、(III)成分を含有せず、塗板の屋外暴露で水接触角の低下が小さく、耐汚染性が悪く、表面親水化、耐汚染性付与の効果が十分ではなかった。
比較例11は、初期の表面親水化および耐汚染性の効果は良好なものの、50℃で10日間保存した後には、何れの効果も確認できなかった。
以上のように本発明の水性樹脂組成物は、1液型の塗料形態においても良好な表面親水性およびその貯蔵安定性を有していることが確認され、耐汚染性に優れた塗膜を与える水性樹脂組成物として有用であることが確認された。

Claims (7)

  1. (I)下記一般式(3)で示されるアルコキシシリル基含有単量体単位を有するアクリル系樹脂エマルジョン
    4 5 (3-b) Si(OR 6 b (3)
    (式中、R 4 はγ−(メタ)アクリロキシ基、R 5 は炭素数1〜4のアルキル基、R 6 は炭素数1〜4のアルキル基、bは1〜3を表す。)
    (II)下記一般式()で示されるテトラアルキルシリケートの部分加水分解縮合物の乳化物
    (R O) Si (2)
    (式中、R は同じかまたは異なり、炭素数2〜4のアルキル基を表す。)
    (III)光酸発生剤
    を含有する水性塗料用樹脂組成物を塗布し屋外暴露することによる建築外装塗膜の製造方法。
  2. 前記(II)のテトラアルキルシリケートの部分加水分解縮合物の乳化物がノニオン系界面活性剤および/またはアニオン系界面活性剤を用いて水性媒体中に分散して得られる乳化物である、請求項1に記載の建築外装塗膜の製造方法。
  3. さらに(IV)酸により活性化するアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物を含有する請求項1または2に記載の建築外装塗膜の製造方法。
  4. (IV)酸により活性化するアルコキシシリル基の加水分解・縮合を促進する化合物が酸性リン酸化合物の塩である請求項に記載の建築外装塗膜の製造方法。
  5. (III)光酸発生剤が、有機ハロゲン化合物である請求項1〜の何れか1項に記載の建築外装塗膜の製造方法。
  6. (III)光酸発生剤が、ハロゲン含有トリアジン化合物、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、または塩素化ポリオレフィンである請求項1〜の何れか1項に記載の建築外装塗膜の製造方法。
  7. 水性塗料用樹脂組成物が一液型水性塗料用樹脂組成物である、請求項1〜6の何れか1項に記載の建築外装塗膜の製造方法。
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