JP5139632B2 - 水性塗料組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高い耐汚染性を発現し、その効果を塗料可使時間の間、維持することが可能な水性塗料用組成物の製造方法に関する。
近年、塗料の分野においても、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水溶性あるいは水分散性樹脂への転換が試みられている。しかし、水性塗料は溶剤系塗料に比べ、塗膜性能が劣る傾向にあった。このような状況下、水性塗料においても溶剤系塗料と同等の塗膜物性が要求され、特に耐汚染性といった高度な性能付与が要求されている。
また、塗料への耐汚染性付与方法としては、塗料中にオルガノシリケートを配合する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
この方法により、形成した塗膜の親水性が向上し、油性の汚染物質の付着防止に効果があり、また、付着した汚染物質を降雨等の水滴で洗い流すことが可能である。しかしながら、上記方法を水性塗料に適用した場合、オルガノシリケートの水性塗料への混和性が悪く、表面光沢が低下するという問題があった。
これに対して、オルガノシリケートの水性塗料への混和性を改良する方法として、オルガノシリケートと乳化剤の混合物を添加する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
この方法により、水性塗料との混和性は改善され、表面光沢の極端な低下は解決された。しかし、オルガノシリケートは加水分解しやすく、加水分解が進んだオルガノシリケートを含む塗料を塗布した場合、塗膜の耐汚染性が得られない問題があった。耐汚染性が発現するかどうかは塗布前の塗料を見ただけでは区別が付かず、オルガノシリケートを配合した後の経過時間で経験的に推測することが行われていた。しかし、塗料の種類によってこの時間はかなり違うのが実状である。
本願は、オルガノシリケートの加水分解を防いで塗料の可使時間を保持し、耐汚染性が発現しなくなった塗料は使用できない、あるいは使用するのをためらう様な状態とすることを特徴としたものである。
WO94/06870号公報 特開平10−17850号公報
本発明が解決しようとする課題は、可使時間内の塗膜表面親水性を維持しつつ、表面親水性能が低下した塗料では、その使用が困難な状態となる水性塗料組成物の製造方法を提供することである。
分子内に加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有するエマルション、アミン化合物、オルガノシリケート化合物、有機金属化合物を組み合わせた塗料組成物を用いることで、ポットライフが特定時間保持でき、耐汚染性を安定的に付与できる方法を見出した。
すなわち本願は、
・主鎖が実質的にビニル系重合体からなる合成樹脂エマルション(A)とアミン化合物(B)からなる主材に対して、一般式(1)で示されるオルガノシリケート化合物またはその部分加水分解縮合物(C)、有機金属化合物(D)およびポリオキシアルキレン基含有化合物(E)を配合してなる水性塗料用組成物の製造方法。
Si−(OR)・・・・一般式(1)
(式中、Rは同じかまたは異なり炭素数1〜4のアルキル基である) (請求項1)。
・前記エマルション(A)100重量部に対して、オルガノシリケート化合物またはその部分加水分解縮合物(C)を0.1から100重量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用組成物の製造方法(請求項2)。
・前記エマルション(A)が分子内に加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する合成樹脂であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法(請求項3)。
・前記有機金属化合物(D)が有機錫化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法(請求項4)。
・前記アミン化合物(B)がアルカノールアミン化合物または3級アミン化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法(請求項5)。
・前記有機金属化合物(D)が一般式(2)で示される含硫黄有機錫化合物であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
(R)(R)Sn(S−R)(S−R)・・・一般式(2)
(式中、R、Rは同じかまたは異なり炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐したアルキル基、R、Rは直鎖あるいは分岐した炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基から選ばれる炭化水素基である)(請求項6)。
・さらに必要に応じて、(F)カルボジイミド化合物が配合されてなる請求項1〜6いずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法(請求項7)。
・前記(C)成分と(D)成分と(E)成分および/または(F)成分を予め混合してなる混合物を前記(A)および(B)成分からなる組成物に配合してなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。(請求項8)。
本発明の製造方法で得られる耐汚染性水性塗料組成物は、優れた耐汚染性および高い光沢を有する塗膜を形成することができる。また、可使時間の間は、混合直後と同様に塗膜表面親水性を維持することが可能で、一方、ポットライフ24時間後には塗料が使用をためらうような状態となり、上記特性の発現程度が劣る塗料を用いない様にすることが可能となる。
塗料の塗布作業では朝の作業前に一日の必要塗料の量を予測し、触媒その他の混合を行うことが通常行われている。まれに前日調合して残った塗料を使うと、オルガノシリケートの加水分解が進んで、耐汚染性が異なる部分がでて美観上問題となる場合があった。本願発明はこの様な問題を未然に防ぐことが可能である。
本願は、オルガノシリケートの急速な加水分解・縮合を防いで塗料の可使時間を保持し、加水分解・縮合が進みすぎ、耐汚染性が発現しないあるいは耐汚染性能が低くなった塗料は使用できない、あるいは使用するのをためらう様な状態とすることができる。
この様な状況となるには、塗装作業手順からみて、作業当日朝に調合した塗料をその日一日は安定的に使用でき、翌日には使わないようにすればよいので、調合後の安定性期間の目安としては、24時間が目安として考えられる。なるべくなら20時間、あるいは15時間が好ましい。
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
(合成樹脂エマルジョン)
本発明の合成樹脂エマルション(A)成分は、その主鎖が実質的にビニル系単量体及び必要に応じてその他単量体を共重合した主鎖からなる。
ここで、「主鎖がビニル系共重合体鎖からなる」とは、ビニル基、ビニリデン基のように、重合性炭素炭素二重結合を化合物あるいは重合性二重結合を有する化合物と他の化合物との共重合体ブロックがビニル系共重合体(A)の主鎖を構成していることを意味する。
前記加水分解性基と結合したケイ素基の加水分解性基は、ハロゲン基、アルコキシ基等がある。その中で、反応の制御の簡便さからアルコキシ基が有用である。
前記合成樹脂エマルション(A)成分は、たとえば重合性二重結合および炭素原子に結合した加水分解性シリル基を含有する単量体(a)、その他の単量体(b)を重合することによって製造することができる。
加水分解性シリル基を含有する単量体としては、取扱いの容易さ、価格の点および反応副生成物が生じにくい点から、アルコキシシリル基含有ビニル系モノマーが好ましい。アルコシキシシリル基含有ビニルモノマーの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよいし、また2種以上を併用しても良い。
水性塗料にした場合の貯蔵安定性の点からγ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシランが特に好ましい。
加水分解性シリル基含有単量体は、全単量体100重量部中に0.1〜50重量部用いて共重合されることが望ましい。0.1重量部未満では耐水性、耐久性が低下し、50重量部を越えるとエマルジョンが不安定となり、0.5〜20重量部がより好ましい。
上記のように得られたアルコキシシリル基含有アクリル系エマルジョンは、本発明のアルコキシシラン化合物の加水分解・縮合を促進する化合物(D)成分が混合された場合、架橋反応が進行し、耐水性・耐候性が良好な塗膜となる。
その他の単量体(b)としては、特に限定はないが、具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボニルメタクリレートなどの(メタ)アクリレート系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亜合成化学(株)製)、placcelFA−1、placcelFA−4、placcelFM−1、placcelFM−4(以上、ダイセル化学(株)製)、HE−10、HE−20、HP−10、HP−20(以上、(株)日本触媒製)、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーNKH−5050、ブレンマーGLM(以上日本油脂(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物、ビニルメチルエーテル、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
更に、エマルジョンの安定性を向上させることが可能な親水性を有するビニル系単量体も使用可能である。使用可能な親水性基を有するビニル系単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム、2−スルホエチルメタクリレートアンモニウム、ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を有するビニル系単量体に限定はないが、ポリオキアルキレン鎖を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては日本油脂(株)製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、AP−400、AP−550、AP−800、700PEP−350B、10PEP−550B、55PET−400、30PET−800、55PET−800、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、PME−100、PME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400、50POEP−800B、50AOEP−800B、AEP、AET、APT、PLE、ALE、PSE、ASE、PKE、AKE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、共栄社化学(株)製ライトエステル130MA、041MA、MTG、ライトアクリレートEC−A、MTG−A、130A、DPM−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、EHDG−A、日本乳化剤(株)製MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、MPG130−MA、Antox MS−60、MPG−130MA、RMA−150M、RMA−300M、RMA−450M、RA−1020、RA−1120、RA−1820、新中村化学工業(株)製NK−ESTER M−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、LA、三洋化成(株)製エレミノールRS−30などがあげられる。
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートなどの重合性の不飽和結合を2つ以上有する単量体を使用することも可能である。この場合、生成した粒子内部に架橋を有する構造となり、形成した塗膜の耐水性が向上する。
本発明に使用できる合成樹脂エマルジョンは、通常の方法を採用することで得ることができるが、エマルジョンの粒子径および安定性を考慮すると乳化重合法が好ましい。
前記乳化重合法には特に限定がなく、たとえばバッチ重合法、モノマー滴下重合法、乳化モノマー滴下重合法などの各種乳化重合法の中から適宜選択して採用することができるが、本発明においては、特に製造時のエマルジョンの安定性を確保する上で、モノマー滴下重合法および乳化モノマー滴下重合法が好ましい。
乳化重合に際しては、通常用いられるイオン性または非イオン性の界面活性剤を用いることができる。
イオン性界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアリルエーテルサルフェート、オクチルフェノキシエトキシエチルスルホネート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルサルフェートなどのポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;イミダゾリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイドなどのアンモニウム塩などが代表例として挙げられるが、これらの中では、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤が好ましい。
また、非イオン性界面活性剤としては、たとえばポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレン類;L−77、L−720、L−5410、L−7602、L−7607(以上、ユニオンカーバイド社製)などのシリコーンを含む非イオン系の界面活性剤などが代表例として挙げられる。
本発明においては、界面活性剤として1分子中に重合性二重結合を有する反応性界面活性剤を用いることが耐水性、耐候性の点で好ましい。また、特に分子内にポリオキシアルキレン基を有する反応性界面活性剤を用いた場合には、機械的安定性を向上させることができる。
かかる反応性界面活性剤の具体例としては、例えば、旭電化工業(株)製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、SR−10、SR−20、SR−1025、NE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N)、日本乳化剤(株)製Antox−MS−60、RMA−1120、RMA−564、RMA−568、RMA−506、第一工業製薬(株)製アクアロンKH−05、KH−10、RN−20、RN−30、RN−50、RN−2025、HS−10、HS−20、HS−1025、BC05、BC10、BC0515、BC1025、三洋化成工業(株)製エレミノールJS−2、エレミノールRS−30、花王(株)製ラテムルS−180、S−180A、PD−104、PD−420、PD−430などが挙げられる。
なかでも、環境への配慮から、非アルキルフェノール系のものが望ましい。
前記界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、単量体全量100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.5〜8重量部である。
重合開始剤としては、特に限定はないが、重合をより安定に行なうために、重合開始剤としてレドックス系を用いることが望ましい。また、重合中の混合液の安定性を保持し、重合を安定に行なうためには、温度は70℃以下、好ましくは40〜65℃であり、pHは5〜9に調整することが好ましい。
前記レドックス系に用いる開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられ、これらに組み合わせる還元剤としては、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、Bruggolite FF−6(BruggamannChemicalUS製)、二酸化チオ尿素、L−アスコルビン酸などがあげられる。特に、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物とロンガリット、Bruggolite FF−6または二酸化チオ尿素との組み合わせが好ましい。
なお、還元剤は、環境への配慮からホルムアルデヒド発生のないBruggoliteFF−6、二酸化チオ尿素が特に好ましい。
前記重合開始剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.01〜10部、好ましくは0.05〜5重量部である。かかる重合開始剤の使用量が0.01重量部未満である場合には、重合が進行しにくくなることがあり、10重量部を超える場合には、生成する重合体の分子量が低下する傾向がある。
また、重合開始剤の触媒活性を安定的に付与するために、硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート化剤を用いてもよい。かかるキレート化剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.5重量部である。
重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤の添加も可能である。連鎖移動剤としては公知のもの、例えば、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプタン系化合物、クロロホルム、四塩化炭素等の有機ハロゲン化物、スルフィドベンゼン、イソプロピルベンゼン、塩化第二鉄等が挙げられる。
合成樹脂エマルジョン中の樹脂固形分濃度は、20〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%となるように調整する。かかる樹脂固形分濃度が70重量%を超える場合には、系の濃度が著しく上昇するため、重合反応に伴なう発熱を除去することが困難になったり、重合器からの取り出しに長時間を要するようになる傾向がある。また、樹脂固形分濃度が20重量%未満である場合には、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂量が少なく、経済面で不利となる。
なお、本発明に用いられる合成樹脂エマルジョンは、平均粒子径が0.02〜1.0μm程度が好ましい。平均粒子径は、重合初期に仕込む乳化剤の量で調整することが可能である。
(アミン化合物)
本発明における(B)成分であるアミン化合物としては、特に制限はないが、可使時間と塗膜親水性の観点から、塩基性度のあまり高くないものが良く、3級アミン化合物やアルカノールアミン化合物が好ましく、特にオルガノシリケートとの混和性、相溶性からアルカノールアミン化合物が好ましい。塩基性度の高いアミン化合物の場合には、オルガノシリケート化合物の縮合反応が急激に進行し、可使時間と塗膜親水性のバランスが崩れることがある。アルカノールアミン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分はオルガノシリケート化合物(C)100重量部に対し、0.01〜20重量部配合することができ、好ましくは0.05〜20重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。配合量が0.01重量部未満では例えば翌日までのように時間経過しても塗料をゲル化させることが困難であり、20重量部を超えると塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
(オルガノシリケート)
本発明で使用可能なオルガノシリケート化合物(C)としては、加水分解性珪素基を含有する化合物であり、下記一般式(1)として現される化合物又はその部分分解縮合物である。
Si−(OR)・・・・一般式(1)
(式中Rは同じか又は異なり炭素数1〜4のアルキル基である)
具体的化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン及びそれらの部分加水分解・縮合物が例示できる。中でもメチルシリケート51、エチルシリケート45、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート(株)製)、シリケート45、シリケート40(以上、多摩化学工業(株)製)が望ましい。上記化合物は1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。
また、同一分子中に異なったアルコキシシリル基を含有するオルガノシリケートも使用可能である。例えば、メチルエチルシリケート、メチルプロピルシリケート、メチルブチルシリケート、エチルプロピルシリケート、プロピルブチルシリケートなどである。これら置換基の比率が0〜100%の間で任意に変更可能である。また、これらのシリケートの部分加水分解・縮合物も使用可能であると記述したが、縮合度は1〜20程度が好ましい。更に好ましい縮合度の範囲は、3〜15である。
上記オルガノシリケート化合物ではアルコキシシリル基の炭素数は1〜4の化合物を例示しているが、炭素数が少なくなるほど反応性が向上することは一般的に知られている。水性塗料へ添加した場合、炭素数が小さいオルガノシリケート、例えば、メチルシリケートを用いた場合、反応性が高く、塗料のゲル化までの時間、すなわち、ポットライフが短くなる。これに対し、炭素数が大きいブチルシリケートを用いた場合、耐汚染性付与率が低下し、ポットライフが長くなる。この耐汚染性とポットライフのバランスを考えると、アルコキシシリル基のアルキル部は炭素数が1と炭素数が2、3又は4が混在している場合、炭素数が2と炭素数が3又は4が混在していることが好ましく、平均として炭素数1.5〜2.8が好ましい。即ち、メチルシリケートとエチルシリケートの等モル混合物もしくは同一分子中にメチル基とエチル基を同数有するシリケートは炭素数1.5と計算できる。
(有機金属化合物)
本発明における(D)成分である有機金属化合物の具体例としては、例えば、エチルアセトアセテ−トアルミニウムジイソプロピレ−ト、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネ−トビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセチルアセテ−トアルミニウムジイソプロピレ−トなどの有機アルミ化合物;有機錫化合物;有機チタネート化合物;有機亜鉛化合物等の有機金属化合物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
なかでも親水性の発現しやすさから有機錫化合物がよく、例えば、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレ−トオキサイドがある。また、分子内にS原子有する錫化合物としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−トなどが挙げられる。
更に、ジブチル錫チオグリコレート、ジブチル錫ビスイソノニル3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ビス2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジメチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジメチル錫ビス(オクチルチオグルコール酸エステル)塩などが接触角とポットライフのバランスがとりやすく好ましい。
特に、水中での安定性およびポットライフ後の塗料を用いても接触角が低下するという点から、
成分が一般式(2)で示される含硫黄有機錫化合物
(R)(R)Sn(S−R)(S−R)・・・一般式(2)
(式中、R、Rは同じかまたは異なり炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐したアルキル基、R、Rは直鎖あるいは分岐した炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基などの炭化水素基である)であることが好ましく、具体的にはジブチル錫ビスドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ビスドデシルメルカプチドなどが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(D)成分はオルガノシリケート化合物(C)100重量部に対し、0.05〜20重量部配合することができ、好ましくは0.05〜10重量部、更に好ましくは0.1〜10重量部である。配合量が0.05重量部未満では、耐汚染性付与の効果が低く、20重量部を超えると配合物の安定性が低下する。水性塗料に添加した場合に(D)の存在量が多くなり、塗膜の耐候性が低下する。
(ポリオキシアルキレン基含有化合物)
本発明におけるポリオキシアルキレン基含有化合物(E)は、親水性基部位として機能し、前記(C)および(D)成分を水性塗料中に均一に分散するができる。
ポリオキシアルキレン基の具体例としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロックまたはランダム結合したポリオキシアルキレン基、前記ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシアルキレン基に、さらにオキシオキシブチレン基がブロックまたはランダム結合で含まれている基などが挙げられる。
さらに、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、種々の有機基を併せ持つ化合物を使用でき、その具体例を以下に例示する。
水酸基を含有する化合物の具体例としては、各種付加量のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール誘導体やプロノン102、プロノン201等プロノンシリーズに代表されるブロック型(以上、日本油脂(株)製)、ユニオールDA−400、ユニオールDB−400、ユニオールDB−530(以上、日本油脂(株)製)等のビスフェノールA誘導体等が挙げられる。
エーテル基を含有する化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールオレイルエーテルやポリエチレングリコールジメチルエーテル等の各種ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられる。
エステル基を含有する化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールモノオクチルエステルやポリプロピレングリコールモノステアリルエステル、ポリプロピレングリコールジステアリルエステル等のポリアルキレングリコールアルキルエステル等が挙げられる。
アリル基を含有する化合物の具体例としては、ユニオックスPKA−5006やユニオールPKA−5014、ユニオールPKA−5017(以上、日本油脂(株)製)等の各種ポリアルキレングリコールアリルエーテルが挙げられる。
(メタ)アクリル基を含有する化合物の具体例としては、ブレンマーPPシリーズやブレンマーPMEシリーズ、ブレンマーPDEシリーズ(以上、日本油脂(株)製)等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
(ブロック)イソシアネート基を含有する化合物の具体例としては、バイヒジュール3100、バイヒジュール2336、バイヒジュールLS2150/l、バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、バイヒドロールTPLS2153(以上、住化バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD−220、タケネートWD−240、タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−726、タケネートWD−730、タケネートWB−700、タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920(以上、三井武田ケミカル(株)製)、アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210、アクアネート120(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、デュラネートWB40−100、デュラネートWB40−80D、デュラネートWT20−100、デュラネートWT30−100(以上、旭化成(株)製)等が挙げられる。
エポキシ基を含有する化合物の具体例としては、デナコールEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−301、EX−313、EX−314、EX−321、EX−211、EX−810、EX−811、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−921、EX−931、EX−145、EX−171、EX−701(以上、ナガセケムテックス(株)製)、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト80MF、エポライト100MF(以上、共栄社化学(株)製)、SR−NPG、SR−16H、SR−TMP、SR−TPG、SR−4PG、SR−2EG、SR−8EG、SR−8EGS、SR−GLG、SR−DGE、SR−4GL、SR−4GLS(以上、阪本薬品工業(株)製)、エピオールBE−200、G−100、E−100、E−400、E−1000、P−200、NPG−100、TMP−100、エピオールOH(以上、日本油脂(株)製)等が挙げられる。
オキサゾリン基を含有する化合物の具体例としては、(株)日本触媒製エポクロスWS−500、K−2010E、K−2020E、K−2030E、K−1010E、K−1020E、K−1030E(以上、(株)日本触媒製)等が挙げられる。これらは、水溶液またはエマルジョンとして市販されているため、脱水して使用するのが望ましい。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリオキシアルキレン基含有化合物の使用量は、オルガノシリケート化合物(A)100重量部に対し、5〜300部、更には10〜150部が好ましい。
5重量部未満では、耐汚染性付与組成物が水性塗料中に均一に分散せず、形成した塗膜の光沢値が低下し、また、300重量部以上用いた場合、形成した塗膜の初期タック、硬度が低下する傾向がある。
(カルボジイミド基含有化合物)
本発明における(F)成分であるカルボジイミド基含有化合物を配合した場合には、塗膜の外観性、光沢を更に向上させることができる。(F)成分としては、例えば、特開平8−59303号記載の水溶性又は自己乳化型カルボジイミド化合物などがあげられる。
これらは、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート等の多官能イソシアネート類の1種または2種以上を脱二酸化炭素縮合反応させることにより、カルボジイミド化し、末端の残存イソシアネート基を親水性基で封止したものである。
封止する親水基としては、アルキルスルホン酸塩の残基、ジアルキルアミノアルコールの残基の四級塩、アルコキシ基末端を封鎖されたポリオキシアルキレンの残基などがあげられる。
なお、これらは、例えば、日清紡績(株)製カルボジライトV−02、V−04、V−06、V−02−L2、E−01、E−02、E−03、E−04、E−05などがある。
また、水を含まないものとしてV−02B、V−04B、Elastostab H01などがある。
本発明の耐汚染性付与組成物中には反応性官能基とオルガノシリケートとを共存させるため水を含まない方が好ましく、水を含有している場合はこれらを脱水して用いるか、または水を含まないものを用いるのが望ましい。
(F)成分を使用する場合には、オルガノシリケート化合物(A)100重量部に対し、好ましくは0.3〜50重量部以下配合することができ、更に好ましくは0.5〜30重量部以下であり特には上限は25重量部が好ましい。50重量部を超えると塗膜の初期タック、硬度が低下する。0.3重量部以下であると塗膜の光沢が向上しがたい傾向がある。
(脱水剤)
オルガノシリケートに脱水作用があるため、通常、汚染付与組成物中では脱水剤は必要としないが、特に水との反応性が高いオルガノシリケートや水溶性および/または水分散製硬化剤を用いる場合には、脱水剤を配合することが好ましい。
脱水剤としては、例えば、オルソ蟻酸トリメチル、オルソ蟻酸トリエチルもしくはオルソ蟻酸トリブチル等のオルソ蟻酸トリアルキル;オルソ酢酸トリメチル、オルソ酢酸トリエチルもしくはオルソ酢酸トリブチル等のオルソ酢酸トリアルキル;またはオルソほう酸トリメチル、オルソほう酸トリエチル、オルソほう酸トリブチル等のオルソほう酸トリアルキル等のオルソカルボン酸エステル。
また、ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、などのイソシアネート類があるが、好ましくは、ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネートまたはp−クロロフェニルイソシアネートなどのような、種々のモノイソシアネート類などである。
本発明の合成樹脂エマルジョンに、必要に応じて、通常塗料に用いられる顔料(二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリンなどの白色顔料、カーボン、ベンガラ、シアニンブルーなどの有色系顔料)が使用できる。二酸化チタンは顔料のなかでも最も使用量が多く重要である。アルミナ、ジルコニアにより表面処理された二酸化チタンを用いることにより光沢、耐候性が向上する。また、造膜助剤、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの通常の塗料用成分として使用される添加剤を配合することもできる。
(塗料用組成物の配合方法)
本発明における塗料用組成物の配合方法としては、合成樹脂エマルション(A)とアミン化合物(B)からなる水性塗料にオルガノシリケート化合物(C)と有機金属化合物(D)およびポリオキシアルキレン基含有化合物(E)を添加すればよいが、予め(C)成分と(D)成分および(E)成分を混合した後に、塗装直前に水性塗料に添加する方法がよい。この方法では塗料を塗布した際の塗膜の物性変化が少なくて好ましい。また、(C)成分と(D)成分、(E)成分を混合する際に、さらに(F)成分を配合しておくことが特に好ましい。この方法であれば、安定して優れた耐汚染性と高い光沢を有する塗膜を形成させることが可能である。
上記(C)、(D)、(E)および(F)成分を混合する場合、単純に混合・撹拌するだけでも可能であるが、物性に影響を与えない程度に加熱することでも対処可能である。100℃以上の高温にした場合や水分が混入した場合は、(C)成分の縮合反応の進行し増粘・ゲル化する可能性もある。また、ゲル化しないまでも水性塗料に添加し形成した塗膜の耐汚染性低下・光沢低下等の機能低下する場合があり、注意が必要である。
本発明の耐汚染性が付与された水性塗料は、例えば建築内外装用、メタリックベースあるいはメタリックベース上のクリアーなどの自動車用、アルミニウム、ステンレスなどの金属直塗用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、石綿スレート、アスベストボード、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート、硅酸カルシウム板、タイル、レンガなどの窯業系直塗用、ガラス用、天然大理石、御影石等の石材用の塗料あるいは上面処理剤として用いられる。また、直塗用だけでなく、水系あるいは溶剤系プライマー上、アクリルゴム上、複層仕上塗材のトップコート、可とう形改修用仕上塗材のトップコート、コンクリート等の無機系基材に水系あるいは溶剤系浸透性吸水防止材上の塗装にも用いられる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(アルコキシシリル基含有アクリルエマルジョンの合成例1)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水164重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製:有効成分30%)1.0重量部、炭酸水素ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。昇温後、表1(A−1)のコア部に示すモノマー混合物のうちの20重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.14重量部、Bruggolite FF−6 0.2重量部を添加し、30分間初期重合を行った。上記モノマー混合物の残り180重量部にアデカリアソープSR−1025(旭電化工業(株)製:有効成分100%)11.4重量部、アデカリアソープER−20(旭電化工業(株)製:有効成分75%)1.8重量部および脱イオン水67.3重量部を加え乳化したモノマー乳化液とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.17重量部を150分かけて等速追加した。
追加終了後、1時間後重合を行った。さらに、表1(A−1)のシェル部に示すモノマー混合物200重量部にアデカリアソープSR−1025 12.6重量部、アデカリアソープER−20 2.0および脱イオン水74.7重量部を加え乳化したモノマー乳化液とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2重量部を160分かけて等速追加した。追加終了後、1時間後重合を行った。得られた合成樹脂のエマルジョンに炭酸水素ナトリウム1.1重量部を添加後、脱イオン水で固形部50%に調整した(A−1)。
(アルコキシシリル基含有アクリルエマルジョンの合成例2)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水200重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製)1.0重量部、炭酸水素ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。昇温後、表1(A−2)のコア部に示すモノマー混合物のうちの20重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.14重量部、Bruggolite FF−6 0.2重量部を添加し、30分間初期重合を行った。上記モノマー混合物の残り260重量部にアデカリアソープSR−1025(旭電化工業(株)製:有効成分100%)16.4重量部、アデカリアソープER−20(旭電化工業(株)製:有効成分75%)2.6重量部、および脱イオン水97.2重量部を加え乳化したモノマー乳化液とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.22重量部を210分かけて等速追加した。
追加終了後、1時間後重合を行った。さらに、表1(A−2)のシェル部に示すモノマー混合物120重量部にアデカリアソープSR−1025 7.6重量部、アデカリアソープER−20 1.2重量部、および脱イオン水45重量部を加え乳化したモノマー乳化液とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.14重量部を、110分かけて等速追加した。追加終了後、1時間後重合を行った。得られた合成樹脂のエマルジョンに炭酸水素ナトリウム1.1重量部を添加後、脱イオン水で固形部50%に調整した(A−2)。
Figure 0005139632
(塗料の作成)
合成した樹脂エマルジョンを用い、表2の顔料ペーストを用いて、表3に示す配合処方(重量部)で塗料を作製した。(AS−1〜5)。
Figure 0005139632
Figure 0005139632
(硬化剤配合物の製造方法1〜3)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた容器に表4に示す成分を(E)、(C)、(D)の順序で撹拌しながら、投入した(表4中のその他成分を用いる場合には、(E)成分の後に投入した)。投入終了後、30分撹拌し、表4の硬化剤配合物CT−1〜4を得た。
Figure 0005139632
シリケート45: エチルシリケート部分加水分解縮合物(シリカ残量比率45%)(多摩化学工業(株)製)
エチルシリケート40: エチルシリケート部分加水分解縮合物(シリカ残量比率40%)(コルコート(株)製)
ユニオールDB−530:ポリプロピレングリコールビスフェノールAエーテル(日本油脂(株)製)
ユニオックスPKA−5006:メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(日本油脂(株)製)
SR−TPG: ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業(株)製)
カルボジライトV−04B: 水溶性ポリカルボジイミド(日清紡積(株)製)
(物性評価)
・塗膜の作製
表3に示す配合にて作製した水性塗料に表4の硬化剤配合物(CT−1〜4)を添加、攪拌し、添加攪拌後すぐ、3時間後、6時間後の塗料をそれぞれ6ミルのアプリケーターでガラス板に塗装し、7日間室温で養生した。表5に物性評価結果を示す。
・塗膜の水接触角の測定
耐汚染性の指標となる塗膜の水接触角を接触角測定機(協和界面科学(株)製:CA−S150型)を用い測定した。評価は、上記作製サンプルを養生後、水に7日間浸漬後に実施した。
尚、24時間後の接触角については以下を表す。
×:塗装できず
−:塗膜にゲル化物が発生し、充分な塗膜が作成できず
・ポットライフ24時間後の塗料状態
上記塗料にアルミホイルを軽くかぶせ、室温にて24時間放置した。放置後の塗料の状態を目視にて観察した。
A:ゲル化している状態
B:増粘が激しく、流動性がほとんどない状態
C:変化がない、あるいはやや増粘した状態であるが、塗装が可能な状態
・60°光沢
上記養生サンプル(添加後すぐ)の60°光沢を光沢計Multi Gross268((株)ミノルタ製)にて測定した。
Figure 0005139632
本発明の水性塗料組成物の製造方法で得られる塗膜は、優れた耐汚染性を有し、且つ、ポットライフ24時間後には塗料が実質的に使用をためらうような状態となる。また、例えば実施例で示されているように、ポットライフ6時間後においても水接触角が上昇することなく、親水性を保持した塗膜を形成する。形成した塗膜は耐水性、耐候性、付着性を向上させることができる。

Claims (8)

  1. 鎖がビニル系重合体からなる合成樹脂エマルジョン(A)であって、pHが5〜9の重合中の混合液から得られる合成樹脂エマルジョン(A)とアミン化合物(B)からなる主材に対して、一般式(1)で示されるオルガノシリケート化合物またはその部分加水分解縮合物(C)、有機金属化合物(D)およびポリオキシアルキレン基含有化合物(E)を配合してなる水性塗料用組成物の製造方法。
    Si−(OR)・・・・一般式(1)
    (式中、Rは同じかまたは異なり炭素数1〜4のアルキル基である)
  2. 前記エマルジョン(A)100重量部に対して、前記オルガノシリケート化合物またはその部分加水分解縮合物(C)を0.1から100重量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
  3. 前記エマルジョン(A)が分子内に加水分解性基に結合したケイ素基を少なくとも1つ有する合成樹脂であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
  4. 前記有機金属化合物(D)が有機錫化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
  5. 前記アミン化合物(B)がアルカノールアミン化合物または3級アミン化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
  6. 前記有機金属化合物(D)が一般式(2)で示される含硫黄有機錫化合物であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
    (R)(R)Sn(S−R)(S−R)・・・一般式(2)
    (式中、R、Rは同じかまたは異なり炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐したアルキル基、R、Rは直鎖あるいは分岐した炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基から選ばれる炭化水素基である)
  7. さらに、カルボジイミド化合物(F)が配合されてなる請求項1〜6いずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
  8. 前記(C)成分と前記(D)成分と前記(E)成分とを予め混合してなる混合物を、前記(A)成分に前記(B)成分を混合してなる組成物に配合することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の水性塗料用組成物の製造方法。
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