JP2000273395A - 無機質コーティング剤と塗装品 - Google Patents

無機質コーティング剤と塗装品

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JP2000273395A
JP2000273395A JP8056899A JP8056899A JP2000273395A JP 2000273395 A JP2000273395 A JP 2000273395A JP 8056899 A JP8056899 A JP 8056899A JP 8056899 A JP8056899 A JP 8056899A JP 2000273395 A JP2000273395 A JP 2000273395A
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coating film
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inorganic
inorganic coating
coating agent
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JP8056899A
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Masahiro Fukiage
昌宏 吹擧
Kazuo Seto
和夫 瀬戸
Kazuyuki Hirano
和志 平野
Okuo Kuwaguchi
億雄 鍬口
Shinichiro Miki
慎一郎 三木
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Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 耐候性、ならびに有機質塗膜と無機質塗膜と
の密着性向上 【解決手段】 式(R1 m Si(OR2 4-m (R1 は各々メチル基、エチル基又はフェニル基、R2
はC1〜8アルキル基、mは0〜2)で表されるケイ素
化合物及び/又はその部分加水分解物を主成分とするケ
イ素アルコキシド系組成物もしくは、 (a)式 (R3 n SIX4-n (R3 はC1〜8炭化水素基、Xは加水分解性基、nは
0〜3)で表される加水分解性オルガノシランを、有機
溶媒及び/又は水に分散されたコロイド状シリカ中で部
分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリ
ゴマー溶液と、 (b)式 (R4 d Si(OH)e (4-d-e)/2 (R4 はC1〜8炭化水素基を表0.2≦d≦2.0、
0.0001≦e≦3、d+e<4)で表されるポリオ
ルガノシロキサンと、(c)硬化触媒の3成分に、カー
ボン粉末が配合されている無機質コーティング剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、無機質コ
ーティング剤と塗装品に関するものである。さらに詳し
くは、この出願の発明は、耐候性に優れているととも
に、有機質の下地層が基材であっても、耐候性が良好
で、密着性に優れた塗装品とすることのできる新しい無
機質コーティング剤とこれを用いた塗装品に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、屋根瓦や外装材、あるいは内装材
等の建築材等においては、窯業系基材や樹脂系基材等の
表面に塗料を塗布して塗装品とする場合には、塗料とし
ては一般的に有機系のものが用いられてきている。しか
しながら、有機系の塗料では、光や雨水による劣化等の
理由から耐候性や耐腐食性等の面で充分な性能が得られ
ないことから、近年では、無機質のコーティング剤を用
いることが検討されてきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような事情から、
これまでにも、各種の素材や組成物を用いた無機質コー
ティング剤が提案され、実用化もされ始めている。そし
て、これらの無機質コーティング剤の多くのものは、そ
の物自体としては耐候性や耐腐食性が比較的良好であ
る。
【0004】しかしながら、従来の無機質コーティング
剤の場合には、下地としての基材や塗膜が有機質である
場合には、無機質コーティング剤による塗膜を通じて紫
外線が作用し、有機質の下地に変質、劣化を生じさせ、
塗装品としての耐候性や寿命を損なうという問題があっ
た。このような問題に有効に対処するものとして、この
出願の発明者らは、特有なケイ素アルコキシド系組成物
に、酸化チタン微粉末等の紫外線吸収剤を配合した新し
い無機質コーティング剤を提案した(特開平9−249
822号公報)。
【0005】この新しい無機質コーティング剤は従来の
ものに比べて優れた耐候性を塗装品に与えるものである
ことが確認されている。だが、この出願の発明者らにと
っては、紫外線吸収剤の配合においては依然として多く
の未検討の課題があった。たとえば紫外線吸収剤として
の酸化チタン微粉末や有機系吸収剤は比較的安価であっ
て、配合のための取扱いが必ずしも容易でなく、塗装品
の色調の自由度の点でも改善が求められているからであ
る。また、無機質コーティング剤においては、この出願
の発明者らの提案したものを含めて、従来、下地の有機
塗膜との密着性の向上も重要な課題になっていた。
【0006】そこで、この出願の発明は、以上のとおり
の従来技術を踏まえ、下地が有機質の基材や塗膜であっ
ても、塗装品全体としての耐候性に優れるとともに、比
較的安価に提供でき、色調の自由度を拡げることがで
き、しかも下地有機層との密着性にも優れた塗装品を可
能とすることのできる、新しい無機質コーティング剤
と、これを用いた塗装品を提供することを課題としてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして第1には、 一般式(R1 m Si(OR2 4-m (式中、R1 は各々メチル基、エチル基又はフェニル基
を表し、R2 は各々炭素数1〜8のアルキル基を表す。
mは0、1又は2である。)で表されるケイ素化合物及
び/又はその部分加水分解物を主成分とするケイ素アル
コキシド系組成物に、カーボン粉末が配合されているこ
とを特徴とする無機質コーティング剤を提供する。
【0008】また、第2には、(a)一般式 (R3
n SiX4-n (式中、R3 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
の1価の炭化水素基を表し、Xは加水分解性基を表す。
nは0〜3の整数である。)で表される加水分解性オル
ガノシランを、有機溶媒及び/又は水に分散されたコロ
イド状シリカ中で部分加水分解してなる、オルガノシラ
ンのシリカ分散オリゴマー溶液と、 (b)平均組成式 (R4 d Si(OH)e
(4-d-e)/2 (式中、R4 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
の1価の炭化水素基を表し、dおよびeはそれぞれ0.
2≦d≦2.0、0.0001≦e≦3、d+e<4の
関係を満たす数である。)で表される、分子中にシラノ
ール基を含有するポリオルガノシロキサンと、(c)硬
化触媒の、(a)、(b)、(c)の3成分を必須成分
として含有するケイ素アルコキシド系組成物に、カーボ
ン粉末が配合されていることを特徴とする無機質コーテ
ィング剤を提供する。
【0009】そして、第3には、一般式 (R3 n
iX4-n (式中、R3 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
の1価の炭化水素基を表し、Xは加水分解性基を表す。
nは0〜3の整数である。)で表される加水分解性オル
ガノシランにカーボン粉末が分散されているペーストが
ケイ素アルコキシド系組成物に混合されることでカーボ
ン粉末が配合されていることを特徴とする前記第1また
は第2の発明の無機質コーティング剤を提供する。
【0010】さらに、この出願の発明は第4には、基材
もしくは有機質の層の上に前記のいずれかの無機質コー
ティング剤による塗膜が形成されていることを特徴とす
る塗装品を提供する。第5には、有機質の層は、アクリ
ルエマルジョン塗料による塗膜であって、アクリルエマ
ルジョン塗料は、メチルメタクリレートおよびブチルア
クリレートを樹脂主成分とし、塗膜のゲル分率が30%
以下であることを特徴とする前記塗装品を、第6には、
有機質の層は、アクリルエマルジョン塗料による塗膜で
あって、アクリルエマルジョン塗料は、メチルメタクリ
レートおよびブチルアクリレートを樹脂主成分とし、塗
膜のTg(ガラス転移温度)が50℃以下であることを
特徴とする前記いずれかの塗装品を、そして、第7に
は、有機質の層は、アクリルエマルジョン塗料による塗
膜であって、アクリルエマルジョン塗料は、メチルメタ
クリレートおよびブチルアクリレートを樹脂主成分と
し、上塗りの無機質コーティング剤との接触角が40度
以下であることを特徴とする前記いずれかの塗装品をも
提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】この出願の発明は以上のとおりの
特徴を有するものであるが、以下にその実施の形態につ
いて説明する。 <1>無機質コーティング剤 この出願の発明においては、前記第1の無機質コーティ
ング剤並びに第2の無機質コーティング剤のいずれにお
いてもケイ素アルコキシド系組成物は、この出願の発明
者らがすでに提供している特開平9−249822号公
報記載のものと同様のものである。ただし、このケイ素
アルコキシド系組成物にカーボン粉末を配合することは
この出願の発明において初めて創案されたことである。
【0012】まず、第1の無機質コーティング剤を構成
するケイ素アルコキシド系組成物(以下、(A)とす
る)について説明する。このケイ素アルコキシド系組成
物(A)は、 一般式(R1 m Si(OR2 4-m …(I) (式中、R1 は各々メチル基、エチル基又はフェニル基
を表し、R2 は各々炭素数1〜8のアルキル基を表す。
mは0、1又は2である。)で表されるケイ素化合物と
その部分加水分解物のうち少なくとも一方を主成分とす
るものであり、例えば次の(i)、(ii)、(iii)の化
合物を主成分とする混合物を適当な溶剤で希釈し、硬化
剤及び触媒を必要量添加して加水分解及び縮重合させて
得ることができる。重量平均分子量Mwがポリスチレン
換算で500〜3000で、且つ分子量分布Mw/Mn
(Mnは数平均分子量)が1.1〜3.0であるものが
望ましい。より好ましくはMw=600〜3000で且
つMw/Mn=1.2〜1.8である。重量平均分子量
及び分子量分布がこの範囲より小さいときには、縮重合
の際の硬化収縮が大きくなり、焼き付け後に塗膜にクラ
ックが発生し易くなる傾向がある。また重量平均分子量
及び分子量分布がこの範囲より大きいときには、反応が
遅過ぎて硬化し難いか、硬化しても柔らかい塗膜になっ
たり、塗膜のレベリング性が非常に悪いものになったり
する傾向がある。 (i):一般式(I)においてm=0で示されるケイ素
化合物及びコロイド状シリカ20〜200重量部 (ii):一般式(I)においてm=1で示されるケイ素
化合物100重量部 (iii):一般式(I)においてm=2で示されるケイ素
化合物0〜80重量部 これらのケイ素化合物としては後述の、第2の無機質コ
ーティング剤にも用いられる(II)式におけるアルコキ
シシラン類を用いることができる。また成分(i)のコ
ロイド状シリカ(コロイダルシリカ)は微粒子シリカ成
分を水、メタノール等の有機溶剤またはこれらの混合溶
剤中に分散して使用するが、それらがコロイド状である
限り、その粒径や溶剤種等は特に制限されるものではな
い。尚、成分(i)のコロイド状シリカの配合量は分散
媒も含む重量部である。
【0013】ケイ素アルコキシド系組成物(A)に必要
に応じて用いられる前記の硬化剤としては、特に限定さ
れるものではないが、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等の
無機酸や、蟻酸、酢酸、クロロ酢酸等の有機酸の希薄溶
液等の酸性触媒、あるいは後述する塩基性触媒を単独で
又は2種以上を併用して使用することができる。また前
記成分(i)としてコロイド状シリカを用いる場合は、
コロイド状シリカが酸性を示すのでこれが触媒となり、
酸性触媒として何も入れなくともよい。
【0014】ケイ素アルコキシド系組成物(A)に必要
に応じて用いられる前記の触媒としては塩基性触媒が使
用される。この塩基性触媒としては、特に限定されるも
のではないが、たとえばトリエタノールアミン等のアミ
ン類;γーアミノプロピルトリエトキシシラン,N−
(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメ
トキシシラン等のアミノシラン類;無機酸(たとえば塩
酸、硝酸、リン酸等)又は有機酸(たとえば蟻酸、酢
酸、プロピオン酸等)のアンモニア、トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン等の塩、ある
いは無機酸又は有機酸の塩と第4級アンモニウム塩との
複分解塩等を例示することができる。これらの種類や添
加量については何等限定されない。
【0015】ケイ素アルコキシド系組成物(A)には前
記の成分の他に、必要に応じて、コロイド状シリカ以外
の充填剤(例えばアルミナゾル、ヒュームドシリカ等の
無機充填剤)、着色剤、希釈溶剤、増粘剤、界面活性剤
等の種々の添加剤を1種以上配合することができる。こ
の希釈溶剤としては特に限定されないが、たとえばメタ
ノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)等の
アルコール類:エチレングリコール、メチルセロソル
ブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソル
ブ類などを挙げることができ、これらを1種あるいは2
種以上を併せて使用することができる。
【0016】ケイ素アルコキシド系組成物(A)は、そ
のpH値を3.8〜6.0に調整することによって前記
の分子量の範囲内で安定して使用することができる。p
H値がこの範囲外にあると、ケイ素アルコキシド系組成
物(A)は安定性が悪くなり、コーティング剤を調製し
た後の使用できる期間が限られることがある。ここで、
pH値調整方法は特に制限されないが、たとえばケイ素
アルコキシド系組成物(A)の原料混合時にpH値が
3.8未満となった場合は、アンモニア等の塩基性試薬
を用いて前記所定範囲内のpH値に調整すればよく、p
H値が6.0を超えた場合は、塩酸等の酸性試薬を用い
て前記所定範囲内に調整すればよい。またpH値によっ
ては、分子量が小さいまま逆に反応が進まず、前記の分
子量範囲に到達させるのに時間がかかる場合は、ケイ素
アルコキシド系組成物(A)を加熱して反応を促進させ
るようにしてもよく、酸性試薬でpH値を下げて反応を
進めた後、塩基性試薬で所定のpH値に戻すようにして
もよい。
【0017】上記のようにpH値を調整した場合、また
は調整しない場合でも、使用に至るまでの間、または少
なくとも使用時に、ケイ素アルコキシド系組成物(A)
に塩基性触媒を添加すれば縮合反応を促進し、塗膜中の
架橋点を増やすことができるので、安定して耐クラック
性の良い塗膜を得ることができるものである。また、架
橋反応を促進することによって、硬化時間を短縮し、あ
るいは硬化温度を下げることができるために、経済的で
ある。
【0018】次に、第2の無機質コーティング剤に用い
られるケイ素アルコキシド系組成物(以下、(B)とす
る)について説明する。このケイ素アルコキシド系組成
物(B)は、 (a)一般式 (R3 n SiX4-n ………(II) (式中、R3 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
の1価の炭化水素基を表し、Xは加水分解性基を表す。
nは0〜3の整数である。)で表される加水分解性オル
ガノシランを、有機溶媒と水のうち少なくとも一方に分
散されたコロイド状シリカ中で、X1モルに対し0.0
01〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解して
得られるオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液
と、 (b)平均組成式(R4 d Si(OH)e (4-d-e)/2 ……(III) (式中、R4 は各々同一又は異種の置換もしくは非置換
の炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表し、(R4 中の
5〜50重量%がフェニル基であることが好ましい)、
dおよびeはそれぞれ0.2≦d≦2.0、0.000
1≦e≦3、d+e<4の関係を満たす数である。)で
表される、分子中にシラノール基を含有するポリオルガ
ノシロキサンと、(c)硬化触媒の、(a)、(b)、
(c)の3成分を必須成分として含有するものであり、
(a)成分においてシリカを固形分として5〜95重量
%含有し、かつ加水分解性オルガノシランの少なくとも
50モル%がn=1のオルガノシランであり、(a)成
分1〜99重量部に対して(b)を99〜1重量部(両
者の合計量を100重量部とする)配合するのが好まし
い。
【0019】ケイ素アルコキシド系組成物(B)に用い
られる(a)成分のシリカ分散オリゴマーは、被膜形成
に際して硬化反応に預かる官能性基としての加水分解性
基Xを有するベースポリマーの主成分である。これは、
有機溶媒あるいは水、もしくはこれらの混合溶液に分散
したコロイド状シリカに、前記一般式(II)式で表され
る加水分解性オルガノシランの1種又は2種以上を加
え、コロイド状シリカ中の水あるいは別途添加された水
により加水分解性オルガノシランを部分加水分解するこ
とで得られる。
【0020】前記一般式(II)で表される加水分解性オ
ルガノシラン中のR3 としては、炭素数1〜8の置換又
は非置換の1価の炭化水素基、たとえばメチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル
基、ヘプチル基、オクチル基などのアルキル基;シクロ
ペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル
基;2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基な
どのアラルキル基;フェニル基、トリル基などのアリー
ル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;クロロ
メチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフ
ルオロプロピル基などのハロゲン置換炭化水素基;γ−
メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル
基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メ
ルカプトプロピル基などの置換炭化水素基等を例示する
ことができる。これらの中でも合成の容易さ、あるいは
入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基及び、フェ
ニル基が好ましい。
【0021】前記一般式(II)中の加水分解性基Xとし
ては、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノ
キシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基などが挙げ
られる。これらの中でも入手の容易さ及びシリカ分散オ
リゴマー溶液(a)を調製し易いことからアルコキシ基
が好ましい。このような加水分解性オルガノシランとし
ては、上記一般式(II)中のnが0〜3の整数である、
モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−の各官能性のアルコキ
シシラン類、アセトキシシラン類、オキシムシラン類、
エノキシシラン類、アミノシラン類、アミノキシシラン
類、アミドシラン類などが挙げられる。これらの中でも
入手の容易さ及びシリカ分散オリゴマー溶液(a)を調
製し易いことからアルコキシシラン類が好ましい。
【0022】一般にシランカップリング剤とよばれるオ
ルガノシラン化合物もアルコキシシラン類として用いる
ことができる。これらの一般式(II)の加水分解性オル
ガノシランのうち、50モル%以上がn=1で表される
3官能性のものであることが好ましい。より好ましくは
60モル%以上であり、最も好ましくは70モル%以上
である。n=1の3官能性のものが50モル%未満で
は、十分な塗膜硬度を得ることが難しいと共に、乾燥硬
化性が劣り易くなるものである。
【0023】(a)成分で使用するコロイド状シリカと
しては、水分散性あるいはアルコールなどの非水系の有
機溶媒分散性コロイド状シリカを使用することができ、
前述のケイ素アルコキシド系組成物(A)に用いられる
コロイド状シリカと同様のものを使用することができ
る。一般にこのようなコロイド状シリカは固形分として
のシリカを20〜50重量%含有しており、この値から
シリカ配合量を決定できる。
【0024】水分散性コロイド状シリカを使用する場
合、固形分以外の成分として存在する水は(a)成分の
加水分解に用いることができる。水分散性コロイド状シ
リカは通常水ガラスから作られるが、このようなコロイ
ド状シリカは市販品を容易に入手することができる。ま
た有機溶媒分散性のコロイド状シリカは、前記水分散性
コロイド状シリカの水を有機溶媒と置換することで容易
に調製することができる。このような有機溶媒分散性コ
ロイド状シリカも水分散性コロイド状シリカと同様に市
販品を容易に入手することができる。
【0025】(a)成分中のコロイド状シリカは、ケイ
素アルコキシド系組成物(B)の硬化被膜の硬度を高く
するために必須のものである。(a)成分中においてコ
ロイド状シリカは、シリカ固形分として5〜95重量%
の範囲で含有されるのが好ましい。より好ましくは10
〜90重量%、最も好ましくは20〜85重量%の範囲
である。含有量が5重量%未満であると所望の被膜硬度
が得られず、また95重量%を超えるとシリカの均一分
散が困難となり、(a)成分にゲル化等の不都合を招来
するおそれがある。
【0026】(a)成分のオルガノシランのシリカ分散
オリゴマーは、通常、一般式(II)の加水分解性オルガ
ノシランを水分散性コロイド状シリカまたは有機溶媒分
散性コロイド状シリカの少なくとも一方の中で部分加水
分解して得ることができる。加水分解性オルガノシラン
に対する水の使用量は、加水分解性基X1モルに対して
水0.001〜0.5モルが好ましい。水の使用量が
0.001モル未満であると充分な部分加水分解物を得
ることができず、また水の使用量が0.5モルを超える
と部分加水分解物の安定性が悪くなるおそれがある。部
分加水分解する方法は特に限定されないものであり、加
水分解性オルガノシランとコロイド状シリカとを混合し
て必要量の水を添加配合すればよく、このとき部分加水
分解反応は常温で進行するが、部分加水分解反応を促進
させるために60〜100℃に加温するようにしてもよ
い。さらに部分加水分解反応を促進させる目的で、塩
酸、酢酸、ハロゲン化シラン、クロロ酢酸、クエン酸、
安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グ
ルタル酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トル
エンスルホン酸、シュウ酸などの無機酸や有機酸を触媒
として用いてもよい。
【0027】(a)成分のオルガノシランのシリカ分散
オリゴマーは、長期的に安定した性能を得るために、液
のpH値を2.0〜7.0の範囲に、より好ましくはp
H2.5〜6.5の範囲に、さらにより好ましくはpH
3.0〜6.0の範囲に調整するのがよい。pH値がこ
の範囲外であると、特に水の使用量がX1モルに対し
0.3モル以上のときに(a)成分の長期的な性能低下
が著しくなることがある。(a)成分のpH値がこの範
囲外にあれば、この範囲より酸性側のときにはアンモニ
ア、エチレンジアミン等の塩基性試薬を添加してpH値
を調整すればよく、この範囲より塩基性側のときには塩
酸、硝酸、酢酸等の酸性試薬を用いてpH値を調整すれ
ばよい。この調整の方法は特に限定されるものではな
い。
【0028】ケイ素アルコキシド系組成物(B)で用い
る(b)成分のシラノール基含有ポリオルガノシロキサ
ンは、平均組成式が上記(III)式で表されるものであ
り、(III)式中のR4 としては、上記(II)式中のR3
と同じものを例示することができるが、R4 中の5〜5
0重量%はフェニル基である。フェニル基が5重量%未
満では塗膜の伸びが低下しクラックが発生し易くなり、
50重量%を超えると硬化が遅くなり過ぎてしまうおそ
れがある。この他のR4 は好ましくは炭素数1〜4のア
ルキル基、ビニル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ
−メタクリロキシプロピル基、γ−アミノプロピル基、
3,3,3−トリフルオロプロピル基などの置換炭化水
素基、より好ましくはメチル基およびエチル基のアルキ
ル基である。また(III)式中、d及びeはそれぞれ0.
2≦d≦2.0、0.0001≦e≦3、d+e<4の
関係を満たす数であり、dが0.2未満又はeが3を超
えると、硬化被膜にクラックを生じるなどの不都合があ
り、またdが2を超え4以下の場合又はeが0.000
1未満であると、硬化がうまく進行しないものである。
【0029】このような(III)式のシラノール基含有ポ
リオルガノシロキサンは、たとえば、メチルトリクロロ
シラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロ
シラン、ジフェニルジクロロシラン、もしくはこれらに
対応するアルコキシシランの1種もしくは2種以上の混
合物を公知の方法により大量の水で加水分解することに
よって得ることができる。シラノール基含有ポリオルガ
ノシロキサンを得るために、アルコキシシランを用いて
公知の方法で加水分解した場合、加水分解されないアル
コキシ基が微量に残ることがある。つまりシラノール基
と極微量のアルコキシ基が共存するようなポリオルガノ
シロキサンが得られることがあるが、このようなポリオ
ルガノシロキサンを用いても差支えない。
【0030】またこのような(b)成分のシラノール基
含有ポリオルガノシロキサンの分子量は700〜200
00が好ましい。ここでいう分子量は、GPC(ゲルパ
ーミエーションクロマトグラフィー)測定による標準ポ
リスチレン換算による重量平均分子量であり、700未
満の場合、形成された塗膜の硬化性が遅く、またクラッ
クが発生し易くなり、20000を超える場合、顔料を
添加されたケイ素アルコキシド系組成物(B)から形成
された塗膜に光沢がなく、また平滑性も悪くなるおそれ
がある。
【0031】ケイ素アルコキシド系組成物(B)で用い
る(c)成分の硬化触媒は、上記の(a)成分と(b)
成分との縮合反応を促進し、被膜を硬化させるものであ
る。このような触媒としては、アルキルチタン酸塩、オ
クチル酸錫およびジブチル錫ジラウレート、ジオクチル
錫ジマレート等のカルボン酸の金属塩; ジブチルアミン
−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタ
ノールアミンアセテート等のアミン塩;酢酸テトラメチ
ルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;
テトラエチルペンタミン等のアミン類;N−β−アミノ
エチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−
β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキ
シシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トル
エンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウ
ムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウ
ム化合物、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒、テトラ
イソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チ
タニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化
合物、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラ
ン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン
等があるが、これらの他にも(a)成分と(b)成分と
の縮合反応に有効なものであれば特に制限されない。
【0032】(a)成分と(b)成分の配合割合は、
(a)成分1〜99重量部に対して(b)成分99〜1
重量部であり、好ましくは(a)成分5〜95重量部に
対して(b)成分95〜5重量部、より好ましくは
(a)成分10〜90重量部に対して(b)成分90〜
10重量部である(但し、(a)成分と(b)成分の合
計量100重量部)。(a)成分が1重量部未満である
と常温硬化性に劣ると共に十分な被膜硬度が得られな
い。逆に(a)成分が99重量部を超えると硬化性が不
安定で且つ良好な被膜が得られないおそれがある。
【0033】また(c)成分の硬化触媒の添加量は、
(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して
0.0001〜10重量部であることが好ましい。より
好ましくは0.0005〜8重量部であり、最も好まし
くは0.0007〜5重量部である。硬化触媒(c)の
添加量が0.0001重量部未満であると常温で硬化し
ない場合があり、また硬化触媒(c)の添加量が10重
量部を超えると被膜の耐熱性や耐候性が悪くなる場合が
ある。
【0034】上記のように精製されるケイ素アルコキシ
ド系組成物(A)あるいは(B)には顔料やフィラーを
添加してもよい。添加する顔料種としては、カーボンブ
ラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブ
ルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料
や、酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、炭酸カルシウ
ム、アルミナ、酸化鉄赤、複合金属酸化物等の無機顔料
がよく、これらの群から選ばれる1種もしくは2種以上
を組み合わせて使用することができる。なかでも、耐候
性を向上させるには無機顔料が好ましい。またフィラー
としてはシリカ粉や硫酸バリウム等を用いることができ
るものであり、上記に列挙する群から選ばれる1種もし
くは2種以上を組み合わせて使用することができる。顔
料やフィラーの粒径は特に限定されないが、平均粒径で
0.01〜4μm程度が好ましい。
【0035】顔料の添加量は顔料の種類により隠蔽性が
異なるので特に限定されないが、無機顔料の場合、樹脂
固形分100重量部に対して15〜80重量部の範囲が
好ましい。15重量部未満の場合は隠蔽性を十分に得る
ことができず、また80重量部を超えると塗膜の平滑性
が悪くなるおそれがある。顔料の分散は通常の方法でお
こなうことができ、またその際に分散剤、分散助剤、増
粘剤、カップリング剤等を使用することが可能である。
【0036】そして、この出願の発明においては、上記
のケイ素アルコキシド系組成物(A)または(B)にカ
ーボン粉末が配合されることによって前記第1または第
2の無機質コーティング剤が構成されることになる。配
合されるカーボン粉末は、紫外線による作用を防御する
のに欠かせないものである。カーボン粉末そのものにつ
いては、市販品をはじめとするカーボンブラックやグラ
ファイト粉末等の各種のものでよく、比較的安価なもの
として入手されるものであってよい。
【0037】カーボン粉末は、無機質コーティング剤に
おいて30μm以下の平均粒径のものとして配合される
ようにするのが望ましい。より好ましくは10μm以下
である。30μmを超える平均粒径の場合には、カーボ
ン粉末の均一分数が難しく、また、所要の耐紫外線効果
が充分に得られないことになる。このため、均一分散処
理が可能な範囲で、30μm以下、さらには10μm以
下となるようにできるだけ小さな平均粒径のものとす
る。
【0038】また、カーボン粉末の配合割合について
は、ケイ素アルコキシド系組成物の固形分に対する重量
比として、一般的にはカーボン粉末が3重量%以上30
重量%以下とするのが適当である。より好ましくは5重
量%以上20重量%以下である。一般的に、たとえば無
機質コーティング剤の塗布量を10g/m2 程度とした
場合、3重量%未満の配合では充分な紫外線カットの効
果を得ることは難しく、一方、30重量%を超える場合
には、カーボン粉末の配合によって黒色あるいはその近
似色となった無機質コーティング塗膜の光沢が失われる
傾向にあり、また、強度等の性能も低下するため適当で
はない。
【0039】カーボン粉末の配合が均一分散として行わ
れるようにするには、あらかじめカーボンのペーストを
用意し、このものを前記のケイ素アルコキシド系組成物
に混合することが有効でもある。すなわち、前記(a)
のオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に用いる
一般式(R3 n SiX4-n で表される加水分解性オル
ガノシランには微粒子カーボン粉末を容易に分散させる
ことができ、この分散液は長期貯蔵安定性にも優れてい
ることが、発明者等によって見いだされている。そこで
この加水分解性オルガノシランにカーボン粉末を添加し
て分散させたペースト状態で使用することが有効とな
る。加水分解性オルガノシランにカーボン粉末を直接添
加する他に、(R3 n SiX4-n の加水分解性オルガ
ノシランをコロイド状シリカ中で部分加水分解して調製
した(a)のオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶
液にカーボン粉末を添加して分散させるようにしてもよ
く、カーボン粉末を分散させたこのシリカ分散オリゴマ
ー溶液をケイ素アルコキシド系組成物(A)あるいは
(B)に添加することによって、この発明の無機質コー
ティング剤を調製することができる。
【0040】上記の分散はサンドミルやボールミル、ペ
イントシェーカーなど一般的な混合装置を用いておこな
うことができる。またこの際に耐候性が落ちないレベル
で添加助剤やフィラーを添加してもよい。また、この発
明の無機質コーティング剤には、さらに所望により、従
来より知られている有機系あるいは無機系の紫外線吸収
剤を添加してもよい。
【0041】紫外線吸収剤としては、2(2′ヒドロキ
シ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベン
ゾトリアゾール系化合物や、2,4−ジヒドロキシベン
ゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物などの有機系紫
外線吸収剤や、微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンなど
の無機系紫外線吸収剤を用いることができるものであ
り、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤とを併用
することもできる。 <2>塗装品 上記のとおりの、ケイ素アルコキシド系組成物(A)あ
るいは(B)にカーボン粉末を配合して調製されるこの
発明のコーティング剤は、通常の塗布方法で塗装をおこ
なうことができる。たとえば刷毛塗り、スプレー、浸
漬、フロー、ロール、カーテン、ナイフコート等の各種
の塗布方法を採用することができる。また有機溶媒で希
釈して使用することもでき、希釈割合は特に制限はなく
必要に応じて希釈割合を決定すればよい。塗布被膜の厚
みは特に制限されないものであり、0.1〜100μm
程度であればよいが、塗膜が長期的に安定して密着し、
クラックやハガレが発生しないようにするためには1〜
80μmの範囲が好ましい。なお、焼き付けは、ケイ素
アルコキシド系組成物(A)を用いた無機質コーティン
グ剤の場合で50〜250℃、ケイ素アルコキシド系組
成物(B)を用いた無機質コーティング剤の場合で5〜
250℃程度が好ましい。さらに限定しないが、必要で
あればプライマー層を下地に設けてもよい。
【0042】そして、この発明の無機質コーティング剤
を塗布することにより得られるこの発明の塗装品におい
ては、下地としては、基材であってもよいし、あるいは
有機質の塗膜であってもよい。図1は、このような塗装
品の構成例を示したものである。図1(a)は窯業系な
ど無機質の基材(1)の表面にエポキシ塗料などで有機
塗膜(2)を設け、この上にこの発明の前記無機質コー
ティング剤を塗装して無機質塗膜(3)を設けた塗装品
を示すものであり、図1(b)はポリカーボネートなど
合成樹脂の有機質の基材(1)の表面に無機質コーティ
ング剤を塗装して無機質塗膜(3)を設けた塗装品を示
すものである。無機質塗膜(3)はその下の有機塗膜
(2)あるいは有機質の基材(1)などの上に塗膜とし
て形成されることになる。
【0043】また無機質塗膜(3)とその下の有機質の
層の間に接着剤の役目をするプライマーを設けてもよ
い。このプライマーは有機・無機のいずれでもよい。こ
のように有機質の層の上に無機質コーティング剤による
無機質塗膜(3)を設けて作製される塗装品にあって
は、無機質コーティング剤による無機質塗膜(3)は耐
候性等が優れているのは勿論であるが、無機質コーティ
ング剤には、カーボン粉末が配合してあるので、紫外線
は無機質塗膜(3)においてカットされ、無機質塗膜
(3)の下の有機質の層に紫外線が作用することを防ぐ
ことができ、有機質の層が耐候性の低い材質であっても
紫外線劣化することを防いで、塗装品の耐候性を高める
ことができるものである。
【0044】無機質コーティング剤の塗装を行なう基材
は各種のものであってよい。この発明の無機質コーティ
ング剤を塗装することによって上記のように塗装品の耐
候性を高めることができるので、窯業系基材の外装材、
金属系基材の外装材、樹脂系基材の外装材から選ばれれ
る外装材のように、屋外で使用され耐候性を特に高く要
求される外装材の基材に塗装するのが好適である。この
ような基材としては無機質のものであっても、有機質の
ものであっても、いずれでもよい。窯業系基材の外装材
は、瓦や外壁材等の用途に使用されるものである。窯業
系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無
機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬
化させて作製されるものであり、水硬性膠着材として
は、特に限定されるものではないが、たとえばポルトラ
ンドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カル
シウム、石膏等から選ばれたものの一種あるいは複数種
を用いることができる。また無機充填剤としてはフライ
アッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を、繊維質材料として
はパルプ、合成繊維、アスベスト等の無機繊維や、スチ
ールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるい
は複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や
注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行なう
ことができ、成形の後、必要に応じてオートクレープ養
生、蒸気養生、常温養生を行なって、外装材として使用
される窯業系基材を作製することができる。
【0045】上記のように作製される窯業系基材の外装
材の表面には、溶剤系、水溶性あるいはエマルジョン系
のシーラーにより目止めを行ない、基材表面への吸い込
みのばらつきを調製するようにしてもよい。使用される
シーラーとしては、特に限定されるものではないが、ア
クリル系やラテックス系のものを使用することができ
る。このシーラーの上には意匠性や耐久性の向上のため
に、アクリル系やラテックス系の有機塗膜を形成するよ
うにしてもよい。
【0046】金属系基材の外装材は、外壁材、瓦、エク
ステリア用品、雨樋等の用途に使用されるものであり、
金属系基材の材質は、アルミニウム、鉄、ステンレスな
どで形成することができる。この金属系基材の外装材の
表面には、塗膜密着性向上のために、脱脂処理や酸化被
膜形成処理等を行なうようにしてもよい。また防錆性の
向上や意匠性の向上のために、金属系基材の外装材の表
面にエポキシ系、ウレタン系、アクリル系のプライマー
など有機塗膜による有機層を設けるようにしてもよい。
【0047】樹脂系基材の外装材は、窓枠やサッシ、雨
樋等の用途に使用されるものであり、樹脂系基材の材質
はアクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS系樹脂な
どを用い、インジェクション成形や押出成形などで成形
して作製することができる。樹脂系基材の外装材の表面
には、塗膜密着性や意匠性の向上のために、エポキシ
系、ウレタン系、アクリル系の有機塗膜による有機層を
設けるようにしてもよい。
【0048】窯業系基材の外装材、金属系基材の外装
材、樹脂系基材の外装材の上には、最外層の塗膜として
上記の無機質コーティング剤による無機質塗膜を形成す
ることができるが、窯業系基材の外装材や金属系基材の
外装材や樹脂系基材の外装材の表面には、上記のように
必要に応じて有機塗膜等による有機層を一層以上設ける
ようにしてもよい(勿論有機層を設けていなくともよ
い)。
【0049】このように窯業系基材の外装材、金属系基
材の外装材、樹脂系基材の外装材の上に無機質コーティ
ング剤による無機質塗膜を設けて作製される塗装品にあ
っては、無機質コーティング剤による無機質塗膜は耐候
性等が優れているのは勿論であるが無機質コーティング
剤にはカーボンが配合してあるので、紫外線は無機質塗
膜においてカットされ、無機質塗膜の下の基材に紫外線
が作用することを防ぐことができ、基材が耐候性の低い
材質であっても紫外線劣化することを防いで、塗装品の
耐候性を高めることができるものである。
【0050】アクリル系エマルジョン等の有機層を1層
ないし3層施し、この有機層の上にこの発明の、無機質
コーティング剤による無機質塗膜を形成することができ
るが、密度が0.4〜2.6g/cm3 程度の窯業系基
材を用いる場合、窯業系基材はポーラスが状態になって
いるために塗料の吸い込みにばらつきが生じる。そこで
窯業系基材の外装材の表面にはアクリル系エマルジョン
等の有機層を施して目止めをし、無機質塗膜を均一に形
成できるようにすることが望ましい。
【0051】ステンレス基材の雨樋等の場合には、表面
にアクリルシリコーン系プライマーを施し、この上にこ
の発明の無機質コーティング剤によるクリヤーな無機質
塗膜を形成することができる。ステンレス基材の雨樋等
には塗膜との密着性向上のために脱脂処理や酸化被膜形
成処理等を施してあってもよい。アクリルシリコーン系
プライマーを施しておくことによって、無機質塗膜の密
着性を高めることができると共に基材の防錆性を向上さ
せることができ、またデザイン性を高めることもでき
る。
【0052】樹脂基材の雨樋等の上に上記の無機質コー
ティング剤によるクリヤーな無機質塗膜を形成すること
もできる。この場合樹脂系基材の雨樋の表面に、塗膜密
着性や意匠性の向上のために有機塗膜による有機層を設
けるようにしてもよい。そして、この発明においては、
下地としての有機層に対しての無機質コーティング剤に
よる塗膜密着性の向上のための手段として、前記の第5
〜7の発明の技術手段が提供される。
【0053】すなわち、この発明の無機質コーティング
剤は、有機質の層の表面に対して塗装される。そしてこ
の場合の有機質の層は、アクリルエマルジョン塗料によ
る塗膜であって、アクリルエマルジョン塗料は、メチル
メタクリレート(MMA)およびブチルアクリレート
(BA)を樹脂主成分としていることである。また、ア
クリルエマルジョン塗料による塗膜は、少なくとも次の
いずれかの要件を具備していることである。
【0054】 塗膜の有機溶剤に対するゲル分率が3
0%以下であること。 塗膜のTg(ガラス転移温度)が50℃以下である
こと。 上塗りの無機質コーティング剤との接触角が40度
以下であること。 以上のとおりの有機質膜を形成し、その表面にこの発明
の前記のとおりの無機質コーティング剤の塗装を施した
塗装品の場合には、耐候性とともに無機質コーティング
剤による塗膜密着性も極めて優れたものとなる。
【0055】前記のように有機溶剤に対する塗膜のゲ
ル分率を低いものとすることは、塗膜が有機溶剤に侵さ
れやすいものとすることを意味している。つまり、ここ
でのゲル分率は、耐溶剤性の指標としてあり、たとえば
具体的には、塗膜のゲル分率は、塗布後に乾燥(120
℃、4分間)した塗膜をアセトンに5時間浸漬した後の
残存した重量割合として示されるものである。
【0056】有機塗膜と無機質塗膜との構成において有
機塗膜のゲル分率、すなわち耐溶剤性が低いことは、上
塗りの無機質コーティング剤中の有機溶剤が有機塗膜と
の界面で有機塗膜を膨潤溶解させ、有機塗膜と無機質塗
膜との間が融着して強固な物理的密着が得られ、経時的
変化にも強い状況となることを意味している。
【0057】この発明においては、以上のような有機塗
膜のゲル分率は、30%以下となるようにしている。よ
り好ましくは、0%、あるいはその近似の値となるよう
にすることで、前記の無機質コーティング剤による無機
質塗膜の強い密着性を得るようにしている。有機溶剤に
対するゲル分率を低くすることは、前記アクリルエマル
ジョン塗料における樹脂成分の組成とその割合を調整す
ることによって可能とされる。
【0058】アクリルエマルジョン塗料では、前記のと
おり、メチルメタクリレート(MMA)とブチルアクリ
レート(BA)とを樹脂主成分、すなわち樹脂成分のう
ちの50重量%以上を占めるようにするが、この主成分
の割合と、メチルメタクリレート(MMA)とブチルア
クリレート(BA)との相互の割合の調整が行なわれる
ようにする。前記のゲル分率を低くするためには、一般
的には主成分としてのメチルメタクリレート(MMA)
とブチルアクリレート(BA)の割合を、重量比として
MMA/BA=1〜2とすることが適当であり、より好
ましくはMMA/BA=1.1〜1.6とすることが考
慮される。メチルメタクリレート(MMA)の割合が重
量比で3を超える場合にはゲル分率の30%以下への低
下は期待できず、実質的な密着性の向上の効果は得られ
ない。一方、重量比が1未満となる場合には、逆に塗装
品としての塗膜の強度、耐久性等が充分なものとならな
い傾向にある。
【0059】重量比MMA/BA=1.1〜1.6の範
囲においては、ゲル分率が実質的に0になり、優れた密
着性が得られることになる。また樹脂主成分としてのメ
チルメタクリレート(MMA)とブチルアクリレート
(BA)の樹脂成分全体に占める割合は60重量%以上
とするのが適当である。他成分としてのアクリレート、
あるいはメタクリレート等の配合が可能とされる。
【0060】なかでも、ゲル分率の低下のために効果的
な配合成分としては、シクロヘキシルメタクリレート
(CHMA)が例示される。このものは、全樹脂成分の
うちの10重量%以上40重量%以下で配合されるのが
効果的である。また、この発明の無機質コーティング剤
による無機質塗膜を形成し、下層としての有機質層との
密着性を向上させるためには、有機質層を、アクリルエ
マルジョン塗料による塗膜とし、そのガラス転移温度:
Tgが50℃以下とすることが有効である。
【0061】Tgを50℃以下の低いレベルにすること
により、塗膜が軟化して無機質塗膜との界面が融着状態
となりやすくし、結果的に物理的に強固な密着性を有す
る塗装品が得られるものとする。アクリルエマルジョン
塗料による塗膜としてこのようなTgの低いものは、前
記ゲル分率の場合と同様に樹脂主成分としてのメチルメ
タクリレート(MMA)とブチルアクリレート(BA)
の割合を調整することにより可能とされる。Tgの低下
は、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)の配
合、さらにはシリコーン成分の配合によっても効果的な
ものとなる。
【0062】そしてまた、この発明場合には、アクリル
エマルジョン塗料による塗膜の上塗り無機質コーティン
グ剤による塗膜に対する接触角を40℃以下と小さくす
ることによっても有機質層としての塗膜と無機質塗膜と
の間の密着性を向上させることができる。無機質塗膜に
対する接触角が小さいということは、濡れ性が良いこ
と、すなわち、有機塗膜に対して無機質コーティング剤
を均一に塗布することができ、しかも有機塗膜中の水抜
け等により生成したポアー(細孔)等にも無機質コーテ
ィング剤が侵入し、アンカリング効果が得られて安定化
し、密着性が良好となることを意味している。
【0063】このように接触角を小さくするためには、
前記と同様にアクリルエマルジョン塗料の組成を調整す
るとともに、シリコーン成分の配合が効果的でもある。
このシリコーン成分は、有機塗膜のTgを低くするため
にも有効に使用されるものであるが、より好ましくは、
このシリコーン成分としては、前記のとおりのこの発明
の無機質コーティング剤に用いたものと同様のものとす
ることが考慮される。Tgの低下、そして以上のとおり
に接触角を小さなものとするためシリコーン成分をアク
リルエマルジョン塗料に配合する場合には、その割合
は、全樹脂成分のうちの割合として、5重量%以上20
重量%以下とするのが適当である。5重量%未満の場合
には実質的な効果が得られないし、一方20重量%を超
える場合には前記のゲル分率が大きなものとなって、か
えって密着性を阻害することになる。
【0064】アクリルエマルジョン塗料により有機塗膜
する場合、この発明の以上のとおりの樹脂成分のエマル
ジョンに対する割合は、特に限定されることはないが、
水媒体との比率として、一般的には70〜96重量%、
より適当には85〜95%とすることが考慮される。エ
マルジョンには乳化剤、分散剤が適宜に配合される。低
分子乳化剤、そして反応型乳化剤が好ましくは使用され
る。ただ塗膜密着性の観点からはフリーソープとして密
着不良の要因となる低分子乳化剤の使用を抑えるのが望
ましいことから、低分子乳化剤は50%未満、反応型乳
化剤50%以上の割合とするのが望ましい。
【0065】また、エマルジョンには顔料をはじめ、鉱
物油系の消泡剤や、造粘剤、パラフィン系等の撥水剤等
を適宜に配合することができる。樹脂成分以外のものの
配合については、エマルジョン全体について5%重量以
下の割合となるようにするのが好ましい。アクリルエマ
ルジョン塗料により有機塗膜を形成し、その上に無機質
コーティング剤を塗布することにより得られるこの発明
の塗装品においては、無機質コーティング剤に配合され
ているカーボンによって、有機塗膜に対する紫外線の作
用を遮断し、塗膜としての耐候性を優れたものとすると
ともに、有機塗膜とその上の無機質塗膜との密着性も優
れたものとする。耐久性に優れ、寿命の長い塗装品が提
供されることになる。
【0066】そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく
この出願の発明について説明する。もちろん、この出願
の発明は以下の例によって限定されるものではない。ま
た以下においては、特に説明がない限り、「%」は「重
量%」を、「部」は「重量部」を示している。
【0067】
【実施例】〔ケイ素アルコキシド系組成物(A)の調
製〕メチルトリメトキシシラン100部、テトラエトキ
シシラン20部、イソプロピルアルコールオルガノシリ
カゾル(触媒化学化成工業株式会社製「OSCAL14
32〕、SiO2 含有量30%)150部、ジメチルジ
メトキシシラン40部及びイソプロピルアルコール10
0部を混合し、さらに水200部を添加して攪拌し、こ
れを60℃の恒温槽中で分子量Mwを1200に調整す
ることによって、ケイ素アルコキシド系コーティング剤
(A)を調製した。
【0068】〔ケイ素アルコキシド系組成物(B)の調
製〕(a)成分の調製 攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー及び温度計を取
り付けたフラスコ中にイソプロピルアルコール分散コロ
イダルシリカゾル(日産化学工業社製「IPA−S
T」、粒子径10〜20μm、固形分30%、H2
0.5%)100部、メチルトリメトキシシラン68
部、ジメチルメトキシシラン18部、水2.7部、無水
酢酸0.1部を投入し、攪拌しながら80℃の温度で約
3時間かけて部分加水分解反応を行ない、そして冷却す
ることによって(a)成分を得た。このものは室温で4
8時間放置したときの固形分が36%であった。
【0069】この(a)成分調製条件は次の通りとし
た。 ・加水分解性基X1モルに対する水のモル数 …0.1 ・(a)成分のシリカ分含有量 …40.2% ・n=1の加水分解性基含有オルガノシランのモル% …77モル%(b)成分の調製 攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロール及
び温度計を取り付けたフラスコに水1000部、アセト
ン50部を計り取り、その混合溶液中にメチルトリクロ
ロシラン59.7部(0.4モル)、ジメチルジクロロ
シラン51.6部(0.4モル)、フェニルトリクロロ
シラン42.3部(0.2モル)をトルエン200部に
溶解したものを攪拌下に滴下しながら加水分解した。滴
下40分後に攪拌を止め、反応液を分液ロートに移し入
れて静置した後、2層に分離した下層の塩酸水を分液除
去し、次に上層のオルガノポリシロキサンのトルエン溶
液を減圧ストリッピングにより残存している水、および
塩酸を過剰のトルエンと共に留去して除去し、平均分子
量3000のシラノール基含有オルガノポリシロキサン
のトルエン60%溶液を得た。このものはR4 中のフェ
ニル基量が14%である。
【0070】(a)成分、(b)成分および(c)成分
の調合 硬化触媒の(c)成分としてN−β−アミノエチル−γ
−アミノプロピルメチルジメトキシシランを用い、
(a)成分65部、(b)成分50部、(c)成分1部
の割合で混合して攪拌することによって、ケイ素アルコ
キシド系組成物(B)を調製した。
【0071】〔ペーストの調製〕メチルトリメトキシシ
ラン50部に対して平均粒径が20μmのカーボンブラ
ックを20部、カルボン酸系分散剤5部、希釈溶剤25
部添加して、デイスパーで約30分攪拌した。さらに1
mmビーズをして、分散機(一丸エンタープライズ社製
「ダイノーミル」流量25kg/hr ベッセル容量
1.5リットルで5回通し)で分散することによってカ
ーボンブラックミルベースを(C)を作成した。 (実施例1〜3)ケイ素アルコキシド系組成物(A)の
固形分に対してカーボンの量が重量比で8、16、24
%になるように、ミルベース(C)を添加して、軽く攪
拌することにより、カーボン入り無機質コーティング剤
を調整した。
【0072】一方アルマイト処理されたアルミニューム
の基材1の表面にエポキシ塗料を塗装し、80℃20分
間焼付処理することによって有機塗膜を形成し、さらに
この上に上記のカーボンブラック入りの無機質コーティ
ング剤を乾燥塗膜重量10g/m2 の塗布量で塗装し、
150℃20分間焼き付けてクリアーな無機質塗膜を形
成した。
【0073】(実施例4〜6)ケイ素アルコキシド系組
成物(B)の固形分に対してカーボンの量が重量比で
8、16、24%になるように、ミルベース(C)を添
加して、軽く攪拌することにより、カーボン入り無機質
コーティング剤を調整した。一方アルマイト処理された
アルミニュームの基材1の表面にエポキシ塗料を塗装
し、80℃20分間焼付処理することによって有機塗膜
を形成し、さらにこの上に上記のカーボンブラック入の
無機質コーティング剤を乾燥塗膜重量10g/m2 の塗
布量で塗装し、150℃20分間焼き付けてクリアーな
無機質塗膜を形成した。 (比較例1)ケイ素アルコキシド系組成物(A)の固形
分に対してカーボンの量が重量比で2%になるように、
ミルベース(C)を添加して、軽く攪拌することによ
り、カーボン入り無機質コーティング剤を調整した。
【0074】一方アルマイト処理されたアルミニューム
の基材1の表面にエポキシ塗料を塗装し、80℃20分
間焼付処理することによって有機塗膜を形成し、さらに
この上に上記のカーボンブラック入の無機質コーティン
グ剤を乾燥塗膜重量10g/m2 の塗布量で塗装し、1
50℃20分間焼き付けてクリアーな無機質塗膜を形成
した。 (比較例2)ケイ素アルコキシド系組成物(B)の固形
分に対してカーボンの量が重量比で2%になるように、
ミルベース(C)を添加して、軽く攪拌することによ
り、カーボン入り無機質コーティング剤を調整した。
【0075】一方アルマイト処理されたアルミニューム
の基材1の表面にエポキシ塗料を塗装し、80℃20分
間焼付処理することによって有機塗膜を形成し、さらに
この上に上記のカーボンブラック入の無機質コーティン
グ剤を乾燥塗膜重量10g/m2 の塗布量で塗装し、1
50℃20分間焼き付けてクリアーな無機質塗膜を形成
した。 (比較例3)ケイ素アルコキシド系組成物(B)の固形
分に対してカーボンの量が重量比で8%になるように、
溶剤系アクリル樹脂にカーボンを分散したもの( 大日精
化(株)FPGS−245S)を添加して、軽く攪拌す
ることにより、カーボン入り無機質コーティング剤を調
整した。
【0076】一方アルマイト処理されたアルミニューム
の基材1の表面にエポキシ塗料を塗装し、80℃20分
間焼付処理することによって有機塗膜を形成し、さらに
この上に上記のカーボンブラック入の無機質コーティン
グ剤を乾燥塗膜重量10g/m2 の塗布量で塗装し、1
50℃20分間焼き付けてクリアーな無機質塗膜を形成
した。
【0077】実施例1〜6及び比較例1〜3で得た塗装
板について、JIS K5400に準拠してサンシャイ
ンウエザオメーター試験を行なった。結果を表1に示
す。尚、光沢、測色は日本電色社製「Σ80」を用いて
行なった。
【0078】
【表1】
【0079】表1に見られるように、この発明の無機質
コーティング剤を用いた場合には、下層として有機質層
が存在する場合でも優れた耐候性が得られることがわか
る。ただ、塗布量10g/m2 の場合、2重量%のカー
ボン粉末が配合された無機質コーティング剤(比較例1
〜2)では、必ずしも充分な紫外線カットの作用が得ら
れていない。有機・無機界面で密着不良が懸念されるこ
とになる。
【0080】また、有機樹脂(アクリル樹脂)にカーボ
ンを分散させたもの(比較例3)では、耐候性が得られ
ないことがわかる。 (実施例7〜9)カーボンブラック8%配合の実施例1
の無機質コーティング剤を用い、抄造法により製造した
セメント系無機質板を基材として、その表面に表2の組
成のアクリルエマルジョン塗料を塗布して有機塗膜を形
成した後に、無機質コーティング剤を塗布して塗装品を
作製した。 (実施例10〜12)実施例7〜9において、無機質コ
ーティング剤として実施例5の16%カーボンブラック
配合のものを用いた。 (比較例4〜5)実施例7〜9と同様にして塗装品を作
製した。ただし、アクリルエマルジョン塗料の組成を表
2のように塗装した。
【0081】実施例7〜12、および比較例4〜5によ
り特に塗装品について、有機塗膜の耐溶剤性の(ゲル分
率)およびTgとともに、塗膜の2次密着性を評価し
た。その結果も表2に示した。なお、評価の方法は次の
とおりとした。 <ゲル分率>アクリルエマルジョン塗料を塗布後に乾燥
(120℃、4分間)した塗膜を、アセトンに5時間浸
漬し、残った重量割合を算定した。 <Tg(ガラス転移温度)>理論計算により算定した。 <温水風乾サイクル試験>有機塗膜を80g/m2 塗布
して140℃、5分間焼付した後に、乾燥塗膜重量7g
/m2 となるように無機質コーティング剤を塗布して1
40℃、10分間乾燥して得られたサンプルを8時間、
60℃の温水に浸漬し、その後16時間風乾する。これ
を1サイクルとする。 <2次密着性>セロテープ貼着による剥離テスト。JI
S 5400。
【0082】
【表2】
【0083】表2の結果に見られるように、耐溶剤性
(ゲル分率)が低い場合、並びにTgが50℃より低い
場合に、有機塗膜と無機質塗膜との層間密着性に優れた
塗装品が得られることがわかる。 (実施例13〜14)カーボンブラック16%配合の実
施例5の無機質コーティング剤を用いた。また、セメン
ト系無機質板を基材とし、その表面に表3の組成のアク
リルエマルジョン塗料を塗布した有機塗膜を形成し、そ
の後無機質コーティング剤を塗布して塗装品を得た。 (比較例6〜7)実施例13〜14において、アクリル
エマルジョン塗料の組成を表3のように変更して塗装品
を得た。
【0084】以上の実施例13〜14並びに比較例6〜
7の塗装品について、有機塗膜の接触角とともに、2次
密着性を評価した。その結果を表3に示した。
【0085】
【表3】
【0086】表3に見られるように、接触角が40度以
下となる場合に層間密着性に優れた塗装品が得られるこ
とがわかる。
【0087】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明では、前記のような組成のケイ素アルコキシド系組
成物(A)又は(B)にカーボン粉末を配合して無機質
コーティング剤を調製するようにしたので、耐候性等の
優れた無機質塗膜を形成することができるのは勿論のこ
と、無機質コーティング剤に配合されたカーボン粉末で
紫外線をカットして無機質塗膜の下の有機質の層に紫外
線が作用することを防ぐことができ、塗装品の耐候性を
高めることができる。しかも、カーボン粉末は、カーボ
ンブラック等の安価なものとして利用でき、また、黒色
系の光沢のある無機質塗膜を与えるので、塗装品として
経済性が良好で、しかも雨樋、瓦等において色調の自由
度が拡大されることになる。
【0088】そして窯業系基材等を用いた塗装品におい
ては、アクリルエマルジョン塗料を塗布して形成した有
機質の塗膜とその上の無機質コーティング剤による無機
質塗膜との間の密着性が、この発明のような組成のアク
リルエマルジョン塗料を用い、塗膜のゲル分率(耐溶剤
性)、Tg(ガラス転移温度)、そして接触角の調整に
よって極めて優れたものになる。塗装品の耐久性、寿命
は大きく向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)(b)は、各々、塗装品の構成例を示し
た断面図である。
【符号の説明】
1 基材 2 有機塗膜 3 無機質塗膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平野 和志 大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工 株式会社内 (72)発明者 鍬口 億雄 大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工 株式会社内 (72)発明者 三木 慎一郎 大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工 株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE03 CA13 CA32 DA06 DB12 DC02 EA02 EA05 EB22 EB42 EB52 EB53 EC03 EC30 4J038 CG141 CH031 DL031 GA15 HA026 HA096 HA176 JA16 JA39 JA47 JB08 JB11 JC13 JC31 JC35 JC38 KA04 KA20 MA07 MA08 MA10 MA12 MA13 NA03 NA12 PA19 PB05 PC02 PC04 PC08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(R1 m Si(OR2 4-m (式中、R1 は各々メチル基、エチル基又はフェニル基
    を表し、R2 は各々炭素数1〜8のアルキル基を表す。
    mは0、1又は2である。)で表されるケイ素化合物及
    び/又はその部分加水分解物を主成分とするケイ素アル
    コキシド系組成物に、カーボン粉末が配合されているこ
    とを特徴とする無機質コーティング剤。
  2. 【請求項2】 (a)一般式 (R3 n SiX4-n (式中、R3 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
    の1価の炭化水素基を表し、Xは加水分解性基を表す。
    nは0〜3の整数である。)で表される加水分解性オル
    ガノシランを、有機溶媒及び/又は水に分散されたコロ
    イド状シリカ中で部分加水分解してなる、オルガノシラ
    ンのシリカ分散オリゴマー溶液と、 (b)平均組成式 (R4 d Si(OH)e
    (4-d-e)/2 (式中、R4 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
    の1価の炭化水素基を表し、dおよびeはそれぞれ0.
    2≦d≦2.0、0.0001≦e≦3、d+e<4の
    関係を満たす数である。)で表される、分子中にシラノ
    ール基を含有するポリオルガノシロキサンと、(c)硬
    化触媒の、(a)、(b)、(c)の3成分を必須成分
    として含有するケイ素アルコキシド系組成物に、カーボ
    ン粉末が配合されていることを特徴とする無機質コーテ
    ィング剤。
  3. 【請求項3】 一般式 (R3 n SiX4-n (式中、R3 は各々置換もしくは非置換の炭素数1〜8
    の1価の炭化水素基を表し、Xは加水分解性基を表す。
    nは0〜3の整数である。)で表される加水分解性オル
    ガノシランにカーボン粉末が分散されているペーストが
    ケイ素アルコキシド系組成物に混合されることでカーボ
    ン粉末が配合されていることを特徴とする請求項1また
    は2の無機質コーティング剤。
  4. 【請求項4】 基材もしくは有機質の層の上に請求項1
    ないし3のいずれかの無機質コーティング剤による塗膜
    が形成されていることを特徴とする塗装品。
  5. 【請求項5】 有機質の層は、アクリルエマルジョン塗
    料による塗膜であって、アクリルエマルジョン塗料は、
    メチルメタクリレートおよびブチルアクリレートを樹脂
    主成分とし、塗膜のゲル分率が30%以下であることを
    特徴とする請求項4の塗装品。
  6. 【請求項6】 有機質の層は、アクリルエマルジョン塗
    料による塗膜であって、アクリルエマルジョン塗料は、
    メチルメタクリレートおよびブチルアクリレートを樹脂
    主成分とし、塗膜のTg(ガラス転移温度)が50℃以
    下であることを特徴とする請求項4または5の塗装品。
  7. 【請求項7】 有機質の層は、アクリルエマルジョン塗
    料による塗膜であって、アクリルエマルジョン塗料は、
    メチルメタクリレートおよびブチルアクリレートを樹脂
    主成分とし、上塗りの無機質コーティング剤との接触角
    が40度以下であることを特徴とする請求項4ないし6
    のいずれかの塗装品。
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