JP4508536B2 - リチウム電池用包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池、特に電解質(液体や固体電解質)を有するリチウム電池本体を包装するリチウム電池用包装体に関し、さらに詳しくは、リチウム電池本体の正極および負極の各々に接続されたリード電極を外側に突出した状態で挟持して熱接着したリード電極周縁熱接着部において、包装体の金属箔からなるバリアー層とリード電極との短絡を防止することができるリチウム電池用包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム電池とは、リチウム二次電池ともいわれ、電解質として固体高分子、ゲル状高分子、液体などからなり、リチウムイオンの移動で起電する電池であって、正極・負極活物質が高分子ポリマーからなるものを含むものである。リチウム二次電池の構成は、正極集電材(アルミニウム、ニッケル)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料)/電解質(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質)/負極活性物質層(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリルなどの高分子負極材料)/負極集電材(銅、ニッケル、ステンレス)からなるリチウム電池本体およびそれらを包装する外装体等からなる。リチウム二次電池は、その高い体積効率、重量効率から電子機器、電子部品、特に携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラなどに広く用いられている。
【0003】
前記リチウム電池の外装体としては、金属板や金属箔などをプレス成形加工し、円柱状や直方体状とした金属製の缶が生産性や品質の安定性から一般的に用いられているが、金属製の缶を用いた場合には電池自体の形状や意匠性において制約が多い上に、この金属製の缶からなる電池を搭載する電子機器、電子部品内の該電池収納部の形状や意匠性にも制約が課せられ、結果として電子機器や電子部品自体の形状が意図する形状にできないといった問題があり、電子機器や電子部品のさらなる小型化や軽量化の障害となっていた。また、他方において、金属製の缶からなる電池は電池が高温下で使用されて内部圧力が異常に高まった場合、爆発、発火が起こるまで外装体が耐えるために危険であるといった問題があった。
【0004】
そこで、柔軟性を有するために電子機器や電子部品の適当な空間に合わせた形状とすることができ、電子機器や電子部品自体の形状をある程度自由に設計することができ、さらなる小型化、軽量化を図ることができる、あるいは、熱接着部で密封されるために電池が高温下で使用されて内部圧力が異常に高まった場合、内部圧力を熱接着部が剥離して逃がすことができる安全弁として機能するために電池としての機能は失われるものの金属製缶からなる外装体に比べて爆発、発火の危険性を少なくすることができるなどの理由から、金属製の缶に替えて包装材を袋状等に加工した包装体が用いられるようになってきた。
【0005】
前記包装材としては、リチウム電池用としての必要な物性、すなわち、防湿性、密封性、耐突刺し性、絶縁性、耐熱・耐寒性、耐電解質性(耐電解液性)、耐腐蝕性(電解質の劣化や加水分解により発生するフッ酸に対する耐性)等が必要不可欠なものとして求められると共に加工性や経済性等から一般的には耐突刺し性や外部との通電を阻止するための基材層、防湿性を確保するためのアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層、密封性を確保するための熱接着性を有するオレフィン系樹脂からなる内層で構成される。
【0006】
ところで、リチウム電池においては、リチウム電池本体を包装材で密封する際に、リチウム電池本体の正極および負極の各々に接続された金属からなるリード電極を外部に突出させると共に包装材で前記リード電極を挟持した状態で熱接着することにより密封する必要があり、前記包装材の前記内層の少なくとも最内層に金属と良好な接着性を有するオレフィン系樹脂、たとえば、不飽和カルボン酸でグラフト変性したオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体、あるいは、金属架橋オレフィン樹脂などの酸変性オレフィン系樹脂を用いて熱接着することにより密封する手段が採られ、リード電極部の密封性を確かなものとしている。
【0007】
しかしながら、前記リード電極はリチウム電池の電気容量等に対応させて、50〜200μm程度の適宜の厚さのアルミニウム、ニッケル、あるいは、チタン等のロール状の金属板を5〜20mm程度の適宜の幅に切断してロール状となしたものを適宜の長さに裁断して用いられる。そして、後述するが、前記リード電極の両側部の空隙を前記内層で埋めて密封状態を確保するための熱と圧力と時間が必要となるが、これにより前記内層が加圧部の外に押出されて前記加圧部が薄肉となると共に、通常リード電極は切断および裁断時に3μm〜15μm程度の「ばり」が端面に発生しており、これが原因となり包装材のアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層と前記リード電極の「ばり」とが接触して短絡する虞があり、包装材で前記リード電極を挟持した状態で熱接着して密封する際の熱と圧力と時間の条件(ヒートシール条件)を厳密に管理する必要があるために結構煩雑な作業となっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、電池本体の正極および負極の各々に接続されたリード電極を外側に突出した状態で挟持して熱接着したリード電極周縁熱接着部において、包装体の金属箔からなるバリアー層とリード電極の「ばり」との短絡を防止することができ、ヒートシール条件の管理幅を広くすることができて作業性の向上と密封性の安定を図ることができるリチウム電池用包装体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明は、正極および負極の各々に接続されたリード電極を外部に突出した状態で挟持して周縁熱接着部で密封したリチウム電池用包装体において、該リチウム電池用包装体は熱接着性を有する内層と金属箔からなるバリアー層と基材層を少なくとも備え、前記内層は金属接着性を有するオレフィン系樹脂ないし前記内層の最内層が金属接着性を有するオレフィン系樹脂からなり、前記バリアー層が焼鈍処理されたアルミニウム箔からなると共に前記アルミニウム箔が鉄分を0.3〜9.0重量%含有したものであり、前記内層の少なくとも一つの層が充填剤を含有した充填剤含有層であることを特徴とするものである。また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載のリチウム電池用包装体において、前記アルミニウム箔がその両面を、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で化成処理した化成処理層を有することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1、2のいずれかに記載のリチウム電池用包装体において、前記充填剤含有層は、0.1〜20μmの範囲の平均粒径の充填剤をオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部含有していることを特徴とするものである。
【0011】
上記請求項1、2のいずれかに記載の構成とすることにより、電池本体の正極および負極の各々に接続されたリード電極を外側に突出した状態で挟持して熱接着したリード電極周縁熱接着部において、包装体の金属箔からなるバリアー層とリード電極の「ばり」との短絡を防止することができ、ヒートシール条件の管理幅を広くすることができて作業性の向上と密封性の安定を図ることができるリチウム電池用包装体とすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかるリチウム電池用包装体に用いる包装材の一実施例の層構成を図解的に示す図、図2は本発明にかかるリチウム電池用包装体の一形態を説明する図、図3は本発明にかかるリチウム電池用包装体の他の形態を説明する図、図4はリチウム電池のリード電極周縁熱接着部の短絡防止を図解的に説明する概念図であり、図中の1、1’は包装材、10は基材層、20は化成処理層、30はアルミニウム箔、40は接着層、50,51は内層、60は充填剤、Bはばり、Kは熱板、S,SSは周縁熱接着部、Tはリード電極、α,βはリチウム電池用包装体をそれぞれ示す。
【0013】
図1は本発明にかかるリチウム電池用包装体に用いる包装材の一実施例の層構成を図解的に示す図であって、包装材1は基材層10と化成処理層20を両面に設けたアルミニウム箔30の一方の面とを接着層40を介して積層し、前記アルミニウム箔の他方の面に、熱接着性を有するオレフィン系樹脂からなる内層50を積層したものであって、前記内層50を形成する前記オレフィン系樹脂には充填剤60が添加されている。
【0014】
まず、前記包装材1を用いたリチウム電池用包装体の形態について説明する。
リチウム電池用包装体の形態としては、たとえば、前記包装材1を製袋加工して周縁熱接着部Sで図2(a)に示すように袋状〔図2(a)上はピロータイプの包装袋であるが三方タイプ、四方タイプ等の包装袋であってもよい〕にして、リチウム電池本体の正極(図示せず)および負極(図示せず)との各々に接続されたリード電極Tを外側に突出した状態で収納すると共に電解質を収納した後に開口部を熱接着してリード電極周縁熱接着部SSで密封した図2(b)に示す袋タイプα、あるいは、前記包装材1を図3(a)に示すようにプレス成形して凹部を形成し、この凹部に前記リチウム電池本体の正極(図示せず)および負極(図示せず)との各々に接続されたリード電極Tを外側に突出した状態で収納すると共に別途用意したシート状の前記包装材1で前記凹部を被覆して三周縁を周縁熱接着部Sで熱接着し、その後に電解質を収納した後に開口部を熱接着してリード電極周縁熱接着部SSで密封した図3(b)に示す成形タイプβがある。
【0015】
次に、前記包装材1の前記基材層10について説明する。前記基材層10としては、前記アルミニウム箔30を保護し、特に突刺しのような外力に対する耐性を向上させ、前記アルミニウム箔30の穴開きや破断を防止することを目的として設けられる層であって、単層であっても複層であっても構わないが、特に単層である場合はそれ自体で上記目的を達成する必要があり、機械的強度に優れると共に少なくともリチウム電池とする際の熱接着温度(ヒートシール温度)に対する寸法安定性が求められ、これらを考慮すると二軸方向に延伸した、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステルフィルム、ないし、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドフィルムが適当であるが、本発明の包装材1を成形タイプβ(図3参照)とする場合には、二軸方向に延伸したポリエステルフィルムに比べて伸びが大きい二軸方向に延伸したポリアミドフィルムが好ましい。そして、前記基材層10を単層で形成する場合、少なくともその厚さは6μm以上が適当である。この理由としては、6μmより厚さが薄いと、それ自体にピンホールが存在する可能性があると共に外力に対する前記アルミニウム箔30の保護効果が減少し、特に成形タイプβ(図3参照)の場合には前記アルミニウム箔30にピンホールや破断が発生し易く成形不良を起こし易いからであり、より好ましくは12μm以上である。また、前記基材層10が単層であれ、複層であれ、25μmより厚い場合は外力に対する前記アルミニウム箔30の保護という点で顕著な効果が認められず、体積および重量エネルギー密度を低下させると共に、費用対効果の面からも使用しない方が望ましい。
【0016】
また、前記包装材1を成形タイプβ(図3参照)とする場合にあっては、プレス成形時に金型に対して前記包装材1が部分的に密着するのを防止して厚みムラ(厚みバラツキ)のない均一なプレス成形品を得る目的(プレス成形時の成形性を向上させる目的)で、たとえば、前記基材層10の表面に流動パラフィンなどの炭化水素系、ステアリン酸、エルカ酸などの脂肪酸系、ステアリルアミド、エルカ酸アマイドなどの脂肪酸アミド系、金属石鹸、天然ワックス、シリコーンなどの滑剤を適当な溶媒で溶液化するなどの塗布可能な状態にして、たとえば、グラビアコート法、ロールコート法、あるいは、パターン状に形成する場合にはグラビア印刷法等の周知の塗布法で滑剤層を形成してもよいものである。
【0017】
次に、前記アルミニウム箔30について説明する。前記アルミニウム箔30としては、外部から電池内部に特に水蒸気が浸入するのを防止するために設けられるものであって、水蒸気バリアー性の確保と加工時の加工適性を考慮すると、20〜80μmの厚さのものが適当である。20μmより厚さが薄い場合は、アルミニウム箔単体のピンホールが危惧され、水蒸気の浸入の危険性が高くなり、80μmより厚さが厚い場合は、アルミニウム箔のピンホールに顕著な効果が認められず、水蒸気バリアー性の更なる向上が期待できず、逆に体積および重量エネルギー密度を低下させると共に費用対効果の面からも使用しない方が望ましい。
【0018】
また、前記アルミニウム箔30は鉄分を0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%含有したものが鉄分を含有しないものと比較して延展性に優れると共に折り曲げに対するピンホールの発生が少なく、特にプレス成形時に偏肉のない均一な成形品が得られるために成形タイプβ(図3参照)とする場合の包装材1に鉄分を含有したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。なお、鉄含有量が0.3重量%未満ではピンホール発生の防止や延展性において効果が認められず、鉄含有量が9.0重量%超ではアルミニウム箔としての柔軟性が阻害されるために成形適性が低下する。
【0019】
また、前記アルミニウム箔30は冷間圧延で製造されるが、焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性、腰の強さ、硬さが変化するが、本発明に用いるアルミニウム箔は焼きなましをしていない硬質処理品よりも多少ないし完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウム箔がよい。また、柔軟性、腰の強さ、硬さを決めるアルミニウム箔の焼きなまし条件は、包装材1を袋タイプα(図2参照)として用いるのか、成形タイプβ(図3参照)として用いるのかにより適宜決めればよいものである。
【0020】
次に、前記アルミニウム箔30の両面に設ける前記化成処理層20について説明する。前記化成処理層20は、前記アルミニウム箔30と前記基材層10および前記内層50とを強固に接着させてプレス成形時のデラミネーションを防止すると共に、前記アルミニウム箔30の前記内層50側の面を電解液、あるいは、電解液の加水分解により発生するフッ酸から保護するために設けるものである。また、前記化成処理層20は、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、あるいは、ジルコニウム、チタン、リン酸亜鉛等の非クロム系(塗布型)化成処理等により前記アルミニウム箔30面に形成されるものである。なお、上記した化成処理の中では、連続処理が可能であると共に水洗工程が不要で処理コストを安価にすることができるという点から塗布型化成処理が最も好ましい。この塗布型化成処理は、たとえば、フェノールやポリアクリル酸等の水溶性高分子と3価クロム化合物とフッ化物とリン酸とからなるクロム系水性処理液、あるいは、フェノールやポリアクリル酸等の水溶性高分子とジルコニウム塩とからなる非クロム系水性処理液を用いて、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等の周知の塗布法でアルミニウム箔面に塗布し、乾燥する処理である。なお、前記乾燥条件は前記アルミニウム箔30の表面温度が170〜200℃以上に到達する条件で行って皮膜形成する。また、前記塗布型化成処理の前に、予めアルミニウム箔の前記塗布型化成処理を施す面に、たとえば、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の脱脂処理法で処理を施しておく方が、前記塗布型化成処理の機能を最大限に発現させると共に、長期間維持することができる点から好ましい。なお、前記アルミニウム箔30の前記基材層10側に設ける前記化成処理層20は、包装材1を袋タイプα(図2参照)とする場合にあっては、設けなくてもよいものである。
【0021】
次に、前記内層50について説明する。前記内層50としては、単層であっても複層であってもよいのであって、要するに少なくとも最内層が金属接着性を有するオレフィン系樹脂で形成されていればよいものである(図1上は金属接着性を有するオレフィン系樹脂の単層構成である)。この理由としては、リード電極T(図2、図3参照)と良好に接着してリチウム電池の密封性を確保するためである。金属接着性を有するオレフィン系樹脂としては、従来技術の項で説明した酸変性オレフィン系樹脂、すなわち、不飽和カルボン酸でグラフト変性したオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体、あるいは、金属架橋オレフィン樹脂などを用いることができるが、不飽和カルボン酸でグラフト変性したオレフィン樹脂がより好ましい。この理由としては、不飽和カルボン酸でグラフト変性したオレフィン樹脂はエチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体等の酸変性ポリオレフィンに比べて耐熱性に優れるからであり、また、金属架橋オレフィン樹脂は電解質に金属架橋オレフィン樹脂成分が溶出して電解質に悪影響を与える虞があるからである。
【0022】
前記内層50を複層とする場合の代表的な層構成を例示するならば、▲1▼(アルミニウム箔側)一般オレフィン系樹脂層/酸変性オレフィン系樹脂層、▲2▼(アルミニウム箔側)酸変性オレフィン系樹脂層/酸変性オレフィン系樹脂層、▲3▼(アルミニウム箔側)酸変性オレフィン系樹脂層/一般オレフィン系樹脂層/酸変性オレフィン系樹脂層、▲4▼(アルミニウム箔側)酸変性オレフィン系樹脂層/酸変性オレフィン系樹脂層/酸変性オレフィン系樹脂層等を挙げることができる。なお、層構成中の一般オレフィン系樹脂とは、エチレン系樹脂として、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン共重合体等を挙げることができ、また、プロピレン系樹脂として、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等を挙げることができる。
【0023】
前記内層50の総厚としては25μm以上あればよいのであるが、コストや
体積および重量エネルギー密度を考慮すると100μm以下、好ましくは30〜50μmである。25μより薄いと十分なヒートシール強度を得ることができないために、内容物の洩れや内圧上昇による破袋の虞が生じる。また、前記内層50を共押出しフィルムとする場合にあっては、最内層の厚さとしては、2μm以上、好ましくは5μm以上である。2μm未満であると十分なヒートシール強度が得られない。
【0024】
また、前記内層50の形成方法としては、前記アルミニウム箔30の前記化成処理層20面にTダイ押出機で加熱溶融した酸変性オレフィン系樹脂の単層あるいは上記した構成からなる複層(共押出し)を押出して積層することにより形成することができるし、また、酸変性オレフィン系樹脂の単層フィルムあるいは上記した構成からなる複層(共押出し)フィルムをサーマルラミネーション法、または、サンドイッチラミネーション法で積層することにより形成することができる。このとき、前記アルミニウム箔30の前記化成処理層20面には、必要に応じて適宜のアンカーコート剤等の易接着手段を施してもよいものである。
【0025】
次に、前記内層50に添加する充填剤60について説明する。前記充填剤60としては、平均粒径が0.1〜20μmの範囲のものであれば、無機系、有機系のいずれのものでも用いることができ、その含有量としては、オレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部である。この理由としては、充填剤の平均粒径が0.1μm未満の場合は、オレフィン系樹脂100重量部に対して充填剤を30重量部超含有させないとアルミニウム箔とリード電極の「ばり」との短絡を防止することができないばかりか、十分なヒートシール強度を得ることができない虞が生じ、また、充填剤の平均粒径が20μm超の場合は、オレフィン系樹脂100重量部に対して充填剤の含有量を0超5重量部未満に調節してもアルミニウム箔とリード電極の「ばり」との短絡を防止することができない虞と十分なヒートシール強度を得ることができない虞が生じるからであり、特に好ましくは前記充填剤60の平均粒径が0.5〜5.0μmの範囲のものであって、その含有量がオレフィン系樹脂100重量部に対して10〜20重量部である。
【0026】
そして、無機系充填剤としては、たとえば、炭素(カーボン、グラファイト)、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、シリコンカーバイト、酸化ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、また、有機系充填剤として、たとえば、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル架橋物、ポリエチレン架橋物等を挙げることができる。前記充填剤60の前記内層50を構成する樹脂への混合方法としては、予めバンバリーミキサー等で両者をメルトブレンドし、マスターバッチ化したものを所定の混合比にする方法、あるいは、前記内層50を構成する樹脂との直接混合方法のいずれであってもよい。
【0027】
また、前記充填剤60は、前記内層50が単層の場合には当然この層に添加されるが、前記内層50が複層の場合には、少なくとも一層に添加すればよいのであって、前記化成処理層20を設けた前記アルミニウム箔30との接着性、あるいは、リチウム電池とする際のリード電極Tとの接着性等を考慮すると、上記した複層の▲3▼、▲4▼の三層構成とし、この三層構成の中間層に添加するのが最も好ましい。
【0028】
また、前記接着層40としては、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて周知のドライラミネーション法で形成すればよい。前記ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができ、イソシアネート成分としては、TDI、MDI、HDI、PIDI、XDI等のジイソシアネートおよびこれらを出発原料とする変性体を挙げることができ、その厚さとしては2〜5μm、好ましくは3〜4μmである。
【0029】
図4はリチウム電池のリード電極周縁熱接着部の短絡防止を図解的に説明する概念図であって、たとえば、図3(b)に符号SSで示したリード電極周縁熱接着部の横断面の要部を図解的に示す図である。図4(a)に示すように対向する熱板K間に、たとえば、リチウム電池本体の正極(図示せず)に接続されたリード電極Tを挟持した図1に示す包装材1(包装材1の内層50同士を対向させて前記リード電極Tを挟持した包装材1)が挿設される。そして、所定温度に加熱された前記熱板Kを前記包装材1の端部の熱接着されるべき所定個所に所定時間、所定圧力で押圧することにより、加圧部(前記リード電極Tの存在する部分)の前記内層50が外(前記リード電極Tの存在しない部分)に押出されて薄肉となると共に、この押出された前記内層50により前記リード電極Tの両側部の空隙が埋められて密封状態が確保される。なお、図4においては、包装材1等の包装材は基本構成のみとし、化成処理層20と接着層40は省略した。
【0030】
ところが、図4(b)に示すように、前記内層50とは異なり、充填剤60が添加されていない内層51からなる包装材1’(前記内層51以外は包装材1に同じである)の場合には、従来技術の項で説明したように前記リード電極Tには通常切断および裁断時に3μm〜15μm程度の「ばりB」が端面に発生しているものであり、この「ばりB」が原因となって包装材1のアルミニウム箔30と前記リード電極Tの「ばりB」とが接触して短絡する虞があった。そのために、前記包装材1’で前記リード電極Tを挟持した状態で熱接着して密封する際の熱と圧力と時間の条件(ヒートシール条件)を厳密に管理する必要があり、結構煩雑な作業となっていた。
【0031】
しかしながら、前記充填剤60を添加した前記内層50からなる包装材1の場合には、図4(c)に示すように、前記充填剤60を添加した前記内層50は前記充填剤60が熱で溶融しないために、前記リード電極Tと前記包装材1のアルミニウム箔30との間に介在して、前記包装材1のアルミニウム箔30と前記リード電極Tの「ばりB」とが接触するのを防止するスペーサー(Spacer)として機能するために、短絡することを防止することができる。また、前記充填剤60を添加した前記内層50は、樹脂の見かけの溶融粘度を高くすることができ、熱接着時(ヒートシール時)に加圧部が薄肉となることを防止することができるために、前記包装材1のアルミニウム箔30と前記リード電極Tの「ばりB」との接触を一層防止することができる。また、前記内層50を前記充填剤60含有層としたことにより、上記で説明したような効果を奏する層とすることができるために、ヒートシール条件の管理幅を広くすることができて作業性の向上と密封性の安定を図ることができる。
【0032】
【実施例】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
まず、予め、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)して両面に化成処理層を有するアルミニウム箔(40μm厚さ)の一方の面と25μm厚さの二軸延伸ナイロンフィルムとを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介して貼合して第1積層体を作製した。
【0033】
実施例1
上記で作製した第1積層体の化成処理面に50μm厚さの不飽和カルボン酸でグラフト変性した不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレンフィルム(樹脂100重量部に対して平均粒径が1.0μmのカーボンを15重量部含有したもの)を前記化成処理面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合した中間積層体を作製し、その後に該中間積層体を180℃となるように再加熱して本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0034】
実施例2
不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレンフィルムの充填剤を平均粒径が10μmの架橋ポリエチレンとし、充填量を樹脂100重量部に対して5重量部とした以外は実施例1と同様にして本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0035】
実施例3
不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレンフィルムの充填剤を平均粒径が3μmの酸化アルミニウムとし、充填量を樹脂100重量部に対して10重量部とした以外は実施例1と同様にして本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0036】
次に、予め、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)して両面に化成処理層を有するアルミニウム箔(40μm厚さ)の一方の面と15μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介して貼合して第2積層体を作製した。
【0037】
実施例4
上記で作製した第2積層体の化成処理層面に3層共押出しフィルム〔不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(10μm)/ポリプロピレン層(10μm)/不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(10μm)〕を前記化成処理面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合した中間積層体を作製し、その後に該中間積層体を180℃となるように再加熱して本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。なお、上記した3層共押出しフィルムの中間層のポリプロピレン層を樹脂100重量部に対して平均粒径が0.5μmのカーボンを20重量部含有した層とした。
【0038】
実施例5
3層共押出しフィルムの中間層のポリプロピレン層を樹脂100重量部に対して平均粒径が5μmのフッ素樹脂を10重量部含有した層とした以外は実施例4と同様にして本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0039】
実施例6
3層共押出しフィルムの中間層のポリプロピレン層を樹脂100重量部に対して平均粒径が2μmのベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合体を10重量部含有した層とした以外は実施例4と同様にして本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0040】
次に、予め、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)して両面に化成処理層を有するアルミニウム箔(40μm厚さ)の一方の面と、予め6μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと15μm厚さの二軸延伸ナイロンフィルムとを2液硬化型ポリウレタン系接着剤で積層した積層体の前記二軸延伸ナイロンフィルム面とを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介して貼合して第3積層体を作製した。
【0041】
実施例7
上記で作製した第3積層体の化成処理層面に2層共押出しフィルム〔不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(20μm)/不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(10μm)〕を前記化成処理面が120℃となるように加熱して前記2層共押出しフィルムの20μmの層が化成処理層面に位置するようにサーマルラミネーション法で貼合した中間積層体を作製し、その後に該中間積層体を180℃となるように再加熱して本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。なお、上記した2層共押出しフィルムの前記化成処理層面側に位置する層を樹脂100重量部に対して平均粒径が5μmの酸化アルミニウムを10重量部含有した層とした。
【0042】
実施例8
2層共押出しフィルムの前記化成処理層面側に位置する層を樹脂100重量部に対して平均粒径が1μmの酸化チタンを20重量部含有した層とした以外は実施例7と同様にして本発明のリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0043】
比較例1
上記で作製した第1積層体の化成処理面に50μm厚さの不飽和カルボン酸でグラフト変性した不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレンフィルムを前記化成処理面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合した中間積層体を作製し、その後に該中間積層体を180℃となるように再加熱して比較例とするリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0044】
比較例2
上記で作製した第2積層体の化成処理層面に3層共押出しフィルム〔不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(10μm)/ポリプロピレン層(10μm)/不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(10μm)〕を前記化成処理面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合した中間積層体を作製し、その後に該中間積層体を180℃となるように再加熱して比較例とするリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0045】
比較例3
上記で作製した第3積層体の化成処理層面に2層共押出しフィルム〔不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(20μm)/不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン層(10μm)〕を前記化成処理面が120℃となるように加熱して前記2層共押出しフィルムの20μmの層が化成処理層面に位置するようにサーマルラミネーション法で貼合した中間積層体を作製し、その後に該中間積層体を180℃となるように再加熱して比較例とするリチウム電池用包装体に供する包装材を作製した。
【0046】
上記で作製した実施例1〜8、および、比較例1〜3の包装材を用いて、ヒートシール時の絶縁性(※1)およびヒートシール強度(※2)を下記する方法で評価並びに測定し、その結果を表1に纏めて示した。
【0047】
【表1】
※1:ヒートシール時の絶縁性
ニッケル製リード電極(巾:4mm、厚さ:100μm、ばり高さ:10μm)を図4(a)に示すように包装材で挟持し、190℃、1.0MPaの条件でヒートシールして、短絡するまでの時間を秒単位で表示した。
なお、表中の数値は5サンプルの平均値である。
※2:ヒートシール強度
包装材の内層(ポリプロピレン層)同士を対向させて、190℃、1.0MPa、3秒の条件でヒートシールし、テンシロンにて引張り速度50mm/分で測定し、その時の強度をN/15mm巾単位で表示した。なお、表中の数値は5サンプルの平均値である。
【0048】
表1からも明らかなように、本発明のリチウム電池用包装体は、十分に強いシール強度を得ることができて確実に密封することができると共に、包装体の金属箔からなるバリアー層とリード電極の「ばり」との短絡を防止することができ、ヒートシール条件の管理幅を広くすることができて作業性の向上を図ることができる。また、表1からも明らかなように、平均粒径が0.5μmで充填剤を20重量部含有させた実施例4、および、平均粒径が5.0μmで充填剤を10重量部含有させた実施例5が特に短絡防止に優れたものとすることができた。
【0049】
なお、今までの説明においては、金属箔からなるバリアー層をアルミニウム箔ということで説明してきたが、バリアー層はアルミニウム箔に限ることはなく、たとえば、ニッケルやステンレスなどの金属箔であってもよいものである。
【0050】
【発明の効果】
以上縷々説明したように、本発明のリチウム電池用包装体は、電池本体の正極および負極の各々に接続されたリード電極を外側に突出した状態で挟持して熱接着したリード電極周縁熱接着部において、包装体の金属箔からなるバリアー層とリード電極の「ばり」との短絡を防止することができ、ヒートシール条件の管理幅を広くすることができて作業性の向上と密封性の安定を図ることができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるリチウム電池用包装体に用いる包装材の一実施例の層構成を図解的に示す図である。
【図2】 本発明にかかるリチウム電池用包装体の一形態を説明する図である。
【図3】 本発明にかかるリチウム電池用包装体の他の形態を説明する図である。
【図4】 リチウム電池のリード電極周縁熱接着部の短絡防止を図解的に説明する概念図である。
【符号の説明】
1、1’ 包装材
10 基材層
20 化成処理層
30 アルミニウム箔
40 接着層
50,51 内層
60 充填剤
B ばり
K 熱板
S,SS 周縁熱接着部
T リード電極
α,β リチウム電池用包装体
Claims (3)
- 正極および負極の各々に接続されたリード電極を外部に突出した状態で挟持して周縁熱接着部で密封したリチウム電池用包装体において、該リチウム電池用包装体は熱接着性を有する内層と金属箔からなるバリアー層と基材層を少なくとも備え、前記内層は金属接着性を有するオレフィン系樹脂ないし前記内層の最内層が金属接着性を有するオレフィン系樹脂からなり、前記バリアー層が焼鈍処理されたアルミニウム箔からなると共に前記アルミニウム箔が鉄分を0.3〜9.0重量%含有したものであり、前記内層の少なくとも一つの層が充填剤を含有した充填剤含有層であることを特徴とするリチウム電池用包装体。
- 前記アルミニウム箔がその両面を、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で化成処理した化成処理層を有することを特徴とする請求項1記載のリチウム電池用包装体。
- 前記充填剤含有層は、0.1〜20μmの範囲の平均粒径の充填剤をオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜30重量部含有していることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のリチウム電池用包装体。
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