JP4507350B2 - 感光性ペーストおよびディスプレイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は隔壁の形成に用いる感光性ペーストに関するものであり、プラズマディスプレイパネル(PDP)、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電子放出素子(FED、フィールドエミッション)または蛍光表示管や有機電界発光素子(有機EL、エレクトロルミネッセンス)を用いた画像表示装置などに用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
軽い薄型のいわゆるフラットパネルディスプレイが注目されている。フラットパネルディスプレイとして液晶ディスプレイ(LCD)が盛んに開発されているが、これには画像が暗い、視野角が狭いといった短所がある。PDPや電子放出素子または蛍光表示管を用いた画像表示装置は、液晶ディスプレイに比べて明るい画像が得られると共に、視野角が広い、さらに大画面化、高精細化の要求に応えられることから、そのニーズが高まりつつある。
【0003】
電子放出素子には、熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子がある。冷陰極電子放出素子には電界放出型(FE型)、金属/絶縁層/金属型(MIM型)や表面伝導型などがある。このような冷陰極電子源を用いた画像形成装置は、それぞれのタイプの電子放出素子から放出される電子ビームを蛍光体に照射して蛍光を発生させることで画像を表示するものである。この装置において、前面ガラス基板と背面ガラス基板にそれぞれの機能を付与して用いるが、背面ガラス基板には、複数の電子放出素子とそれらの素子の電極を接続するマトリックス状の配線が設けられる。これらの配線は、電子放出素子の電極部分で交差することになるので絶縁するための絶縁層が設けられる。さらに両基板の間で耐大気圧支持部材として隔壁(スペーサ)が形成される。
【0004】
蛍光表示管(VFD)の構造と電気的動作機構は、CRTと異なりVFDでは数十Vの電圧による数十mAの低速電子流で蛍光体を励起する。このようなVFD素子を用いたディスプレイにおいても、発光領域を区切るため格子状などの隔壁が形成される。
【0005】
有機電界発光素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合して発光することを応用したものであるが、薄型化が可能であること、低駆動電圧下での高輝度発光が可能であること、蛍光材料を選ぶことにより多色発光が可能であることなどから注目されている。有機電界発光素子の作製においても、隔壁が形成される。
【0006】
PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に設けられた隔壁で仕切られた放電空間内で対向するアノード電極およびカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、この空間内に封入されているガスから発生する紫外線を放電空間内に塗布された蛍光体に当てることによって表示を行う。
【0007】
PDPにおける隔壁は、従来、絶縁ガラスペーストをスクリーン印刷法でパターン状に印刷して乾燥するという工程を繰り返して所定の高さにした後、焼成して形成していた。しかしながら、スクリーン印刷法では、特にパネルサイズが大型化した場合に、予め基板上に形成されている放電電極と絶縁ガラスペーストの印刷場所との位置合わせが難しく、位置精度が得られ難いという問題がある。しかも、所定の隔壁高さを得るため多数回の重ね合わせ印刷を行うことによって隔壁およびその側面エッジ部の波打ちや裾の乱れが生じ、高さの精度が得られないため、表示品質が悪くなり、また、作業性が悪く歩留まりも低いなどの問題点がある。またスクリーン印刷法では、PDPの大面積化、高解像度化に伴い要求される、高アスペクト比で高精細の隔壁が得られない。
【0008】
このような問題を改良する方法として、特開平6−295676号公報などで、感光性ペーストを用いてフォトリソグラフィ技術により隔壁を形成する方法が開示されている。しかし、従来は感光性ペーストの感度や解像度が低く、高アスペクト比で高精細な隔壁が得られなかった。
【0009】
一方、PDPの蛍光体層からの発光の効率を向上するために隔壁の反射率を高くしたいという要求がある。つまり、隔壁の光透過率が高く反射率が低いと、隔壁側面や隔壁間の底面に塗布されている蛍光体層から発光される表示光の反射が不足し、さらに、隣の隔壁間の蛍光体層の表示光の洩れ込みが起こり、輝度が高く、色純度の良好なディスプレイが得られない。これに対し、特公平6−44452号公報には、ガラス粉末とそれと異なる屈折率を有する充填材との混合物を用いた隔壁の形成を開示しているが、感光性ペーストとして要求される高い光透過率とは反するため、パターニング性が損なわれる。
【0010】
また、隔壁の気孔率が大きいと密着強度が低下するのに加えて、強度の不足、また、放電時に気孔から排出されるガス、水分の吸着による輝度低下などの発光特性低下の原因となる。パネルの放電寿命、輝度安定性などの発光特性を考慮すると、気孔率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、感光性ペーストを用いたフォトリソグラフィ法による隔壁形成は、良好なパターニング性を得るために光の透過性の高い感光性ペーストを用いることが必要である一方、その結果、得られる隔壁は反射率が低く良好な表示特性が得られないという問題点を有する。
【0012】
本発明の目的は、良好なパターニングが可能でコスト的にも有利なフォトリソグラフィ法により、輝度や色純度向上に寄与する反射率の高い白色隔壁の形成に用いられる感光性ペーストを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、ガラス転移点が400〜550℃、荷重軟化点が450〜600℃の範囲内である低融点ガラスおよびY,Ceの群から選ばれた金属のアルコキシド誘導体またはそれらの加水分解物もしくは重縮合物を含むことを特徴とする感光性ペーストである。
【0014】
また本発明は、上記の感光性ペーストを用いて隔壁を形成したことを特徴とするディスプレイである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をプラズマディスプレイの作製手順に従って説明する。但し本発明は、プラズマアドレス液晶ディスプレイならびに電子放出素子、蛍光表示管または有機電界発光素子を用いたディスプレイにおいても、好ましく適用される。
【0016】
プラズマディスプレイの背面板の基板には、ソーダガラスやプラズマディスプレイ用ガラス基板(旭硝子社製PD200など)を使うことができる。基板上に、導電性金属により電極を形成する。導電性金属としては、銀、銅、クロム、アルミニウム、ニッケル、金等を用いることができる。電極は幅20〜200μmのストライプ状に形成される。次いで電極を被覆するように誘電体層を好ましく形成する。
【0017】
次いで誘電体層上に、もしくは電極が形成された基板上に隔壁を形成する。隔壁は、本発明の感光性ペーストを塗布し、露光し、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して現像した後に焼成して形成する。
【0018】
本発明の感光性ペーストは、低融点ガラスを必須成分とする。低融点ガラスを用いることにより、露光時のパターニング性を阻害することがなく、また焼成により隔壁を形成することができる。
【0019】
低融点ガラス粉末は、隔壁が通常、ガラス基板上に形成されることを考慮し、ガラス転移点400〜550℃、荷重軟化点(屈伏点とも云う)450〜600℃であることが好ましい。荷重軟化点を450℃以上とすることで、ディスプレイ形成の後工程において隔壁が変形することがなく、軟化点を600℃以下とすることで、焼成時に溶融し強度の高い隔壁を得ることができる。また、低融点ガラスの平均屈折率は、感光性ペーストにおける感光性有機成分の平均屈折率との整合をとり、露光光の散乱を抑えるために、1.5〜1.65の範囲内とすることが好ましい。
【0020】
上記の特性を満たす低融点ガラス粉末は、酸化物換算表記で以下の様な組成である。
【0021】
酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウムのアルカリ金属酸化物のうち少なくとも1種を用い、その合計量が3〜15重量%、さらには3〜10重量%であることが好ましい。
【0022】
アルカリ金属酸化物は、ガラスの軟化点、熱膨張係数のコントロールを容易にするのみならず、ガラスの屈折率を低くすることができるため、感光性有機成分との屈折率差を小さくすることが容易になる。アルカリ金属酸化物の合計量が3重量%以上とすることでガラスの低融点化の効果を得ることができ、15重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持すると共に熱膨張係数を小さく抑えることができる。アルカリ金属としては、ガラスの屈折率を下げることやイオンのマイグレーションを防止することを考慮するならリチウムを選択するのが好ましい。
【0023】
酸化ケイ素の配合量は5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。酸化ケイ素は、ガラスの緻密性、強度や安定性の向上に有効であり、また、ガラスの低屈折率化にも効果がある。熱膨張係数をコントロールしてガラス基板とのミスマッチによる剥離などを防ぐこともできる。5重量%以上とすることで、熱膨張係数を小さく抑えガラス基板に焼き付けた時にクラックを生じない。また、屈折率を低く抑えることができる。30重量%以下とすることで、ガラス転移点、軟化点を低く抑え、ガラス基板への焼き付け温度を低くすることができる。
【0024】
酸化ホウ素は、鉛などの重金属を含有しないガラスにおいて低融点化のために必要な成分であり、さらに低屈折率化にも有効であり、20〜45重量%、さらには20〜40重量%の範囲で配合することが好ましい。20重量%以上とすることで、ガラス転移点、軟化点を低く抑えガラス基板への焼き付けを容易にする。また、45重量%以上とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。
【0025】
酸化バリウムおよび酸化ストロンチウムのうち少なくとも1種を用い、その合計量が2〜15重量%、さらには2〜10重量%であることが好ましい。これらの成分は、ガラスの低融点化、熱膨張係数の調整に有効であり、焼き付け温度の基板の耐熱性への適用、電気絶縁性、形成される隔壁の安定性や緻密性の点でも好ましい。2重量%以上とすることで低融点化の効果を得ることができると共に結晶化による失透を防ぐこともできる。また、15重量%以下とすることにより、熱膨張係数を小さく抑え、屈折率も小さく抑えることができる。またガラスの化学的安定性も維持できる。
【0026】
酸化アルミニウムはガラス化範囲を広げてガラスを安定化する効果があり、ペーストのポットライフ延長にも有効である。10〜25重量%の範囲で配合することが好ましく、この範囲内とすることでガラス転移点、軟化点を低く保ち、ガラス基板上への焼き付けを容易とすることができる。
【0027】
さらに、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムは、ガラスを溶融しやすくすると共に熱膨張係数を制御するために配合されることが好ましい。酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムは合計で2〜15重量%配合するのが好ましい。合計量が2重量%以上とすることで結晶化によるガラスの失透を防ぎ、15重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。
【0028】
また、上記の組成には表記されていないが、酸化亜鉛はガラスの熱膨張係数を大きく変化させることなく低融点化させる成分でありこれも配合されることが好ましい。多く配合しすぎると屈折率が大きくなる傾向にあるので、1〜20重量%の範囲で配合するのが好ましい。
【0029】
低融点ガラス粉末は、ペースト形成時の充填性および分散性が良好で、ペーストの均一な厚さでの塗布が可能であると共にパターン形成性を良好に保つためには、平均粒子径が1〜7μmであり、最大粒子径が40μm以下であることが好ましい。
【0030】
また本発明の感光性ペーストは、焼成後に白色に変化することが重要である。焼成後に白色に変化しないと、例えば露光時に高透過性を期して透明な感光性ペーストを使用しても焼成後にディスプレイの高輝度な表示特性を達成することができず、一方、焼成前から白色を呈する感光性ペーストを使用したら露光光まで反射してしまい良好なパターニング性を得ることができない。焼成後に呈する白色は、XYZ表色系におけるY値で60以上、さらには70以上、またさらには80以上であることが好ましい。
【0031】
焼成後に白色に変化するという特性は、焼成により白色の酸化物に変換する化合物を本発明の感光性ペーストに含有させることによって達成できる。
【0032】
本発明において、焼成により白色の酸化物に変換する化合物として、粒子径が0.003〜0.02μmの酸化物微粒子および分子オーダで透明な酸化物溶液を用いることができる。分子オーダで透明な溶液を感光性ペースト中に含有する場合は、ペースト中で均一に分散されるため露光時の高透過率が維持できるので好ましい。その結果、パターン形成性が損なわれることなく良好なパターン形成性が維持できる。また、透明な酸化物溶液を添加するとペースト中に均一に高分散することができるので焼成後に高反射率が得られる特徴がある。このような特徴を有する化合物として下記のものが挙げられる。
【0033】
このような化合物として、本発明の感光性ペーストは、Y,Ceの群から選ばれた少なくとも一種を含む。これらの化合物は熱分解・酸化されてそれぞれの酸化物、すなわち、イットリア、セリアとなって、白色に変化することができる。
【0034】
得られた隔壁が白色を呈し反射率を向上させるメカニズムは明らかではないが、次のように推定されている。すなわち、加えられた白色の酸化物に変換する化合物が焼成の過程で微細なサイズの酸化物に変換され、これらの微細酸化物粒子が粒子径0.3〜2μmの凝集粒子を構成し、この凝集粒子は母体となるガラスに対して高屈折率の成分であるため、この凝集粒子による散乱が顕著になり、隔壁の反射率を向上させ、蛍光体層からの発光の効率を向上するものである。凝集粒子として、より好ましいサイズは粒子径で0.5〜1.0μmである。ここでいう凝集粒子の粒子径は、イオンエッチング法で処理した試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて2万倍に拡大した観察写真を画像処理し、凝集粒子の見かけの面積と同面積の円に換算した際の直径をいう。50個の凝集粒子について観察・画像処理を行い、それらの平均値を凝集粒子の粒子径とした。
【0035】
これらの化合物は特に限定されるものではないが、上記の金属のアルコキシド誘導体類が用いられる。これらの化合物はそのまま感光性ペーストの構成成分として加えることができるが、一部、前加工を施した後で加えることも可能である。
【0036】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、t−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−ヘプトキシ基、n−オクトキシ基などを用いることができる。また、β−ジケトン類、β−ケト酸エステル類の具体例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ベンゾイルアセトアセテート、エチルベンゾイルアセテート、メチルベンゾイルアセテートなどが上げられる。
【0038】
金属アルコキシド類では、加水分解および重縮合を経て形成されたゲル状物が焼成工程で金属酸化物に変換してガラスやセラミックスになることが知られているが、これらの成分も類似の化学変化を経て、目的とする金属酸化物を形成するものと推定される。従って、前述したようにこれらの加水分解や重縮合過程を別途行ったものを感光性ペーストの構成成分として加えることも可能である。
【0039】
金属アルコシド類の溶液を感光性ペースト中に添加した場合、塗布膜を形成した後に80℃前後の温度を加えるとペーストがゲル化して現像不能となり、パターン形成ができなことがしばしば生じる。パターン形成ができなくなる詳細な機構は不明であるが、感光性ポリマー中のカルボキシル基やモノマーとアルコキシド中の金属イオンとが反応する結果、感光性ポリマーが現像液に溶解できなくなるためと推定される。
【0040】
また、金属アルコキシド溶液中の微量の水分を100ppm以下に除去することによって金属アルコキシドの加水分解を抑制することやアルコキシド溶液に対する安定な混合溶媒を選択することによって金属アルコシドの安定性を上げることができる(追加記載)。
【0041】
焼成により白色の酸化物に変換する酸化物の含有量は溶媒を除いた状態の感光性ペーストに対して3〜30重量%であることが好ましい。3重量%以上とすることで、添加による反射率向上の効果を得ることができる。また、30重量%以下とすることで、光透過を阻害せずパターニング性を保つことができる。また、30重量%を越えるとペーストの安定性が低下し、粘度が径時変化するようになり、膜厚の均一な塗布膜形成が難しくなる。より好ましくは、6〜30重量%である。
【0042】
感光性ペーストに配合される感光性有機成分としては、照射光を吸収して生起する重合および/または架橋反応などによって光硬化して溶剤に不溶になる型の感光性成分を用いることが好ましい。すなわち、感光性有機成分として、感光性モノマー、感光性または非感光性オリゴマーもしくはポリマーを好ましく用いることができる。
【0043】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましく、官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用される。特に多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物を有機成分中に10〜80重量%含有させたものが好ましい。多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物には多様な種類の化合物が開発されているので、それらから反応性、屈折率などを考慮して選択することが可能である。ガラス成分等の屈折率との整合のために感光性有機成分の屈折率を制御する方法として、屈折率が1.55〜1.8の感光性モノマーを採用する方法が簡便である。このような高い屈折率を有する感光性モノマーは、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環や硫黄原子を含有するアクリレートもしくはメタクリレートモノマから選択することができる。
【0044】
感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーは、光反応で形成される硬化物物性の向上やペーストの粘度の調整などの役割を果たすことから好ましく用いられる。感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーの好ましい態様は、炭素−炭素二重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られた炭素連鎖の骨格を有するものである。特に、分子側鎖にカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重量平均分子量2000〜6万、より好ましくは3000〜4万のオリゴマーましくはポリマーが用いられる。側鎖にカルボキシル基を有することにより、未露光部分のアルカリ水溶液に対する溶解性を得ることができる。このような側鎖にカルボキシル基などの酸基を有するオリゴマーもしくはポリマーの酸価は50〜140、好ましくは70〜120の範囲になるようにコントロールすることが好ましい。
【0045】
感光性オリゴマーもしくはポリマーを得るために、不飽和二重結合を導入するには、カルボキシル基を側鎖に有するオリゴマーもしくはポリマーに、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させるとよい。
【0046】
さらに、上記のようにカルボキシル基を側鎖に有するオリゴマーもしくはポリマーに不飽和二重結合を導入して感光性を付与するには、カルボキシル基とアミン系化合物との間で塩結合を形成させる方法を用いることもできる。例えば、ジアルキルアミノアクリレートやジアルキルアミノメタクリレートを反応させて塩結合を形成してアクリレートまたはメタクリレート基を感光性基とすることができる。エチレン性不飽和基数は、反応条件により適宜選択することができる。
【0047】
さらに、光重合開始剤を添加することにより、活性光線のエネルギー吸収能力を付与することができる。光重合開始剤には、1分子系直接開裂型、イオン対間電子移動型、水素引き抜き型、2分子複合系など機構的に異なる種類があり、それらから選択して用いられる。また、光重合開始剤の効果を補助するために増感剤を加えることもできる。
【0048】
以上の感光性有機成分の感光性ペーストに対する配合率は、10〜40重量%、さらには15〜35重量%が好ましい。感光性有機成分の量が少なすぎると、良好なパターニング性が得られにくい傾向にあり、多すぎると、焼成後に収縮率が大きくなり隔壁の形状制御が困難となる傾向にある。
【0049】
焼成時の隔壁の形状を安定させるために、フィラーを好ましく添加することができる。フィラーは、感光性ペーストにおける感光性有機成分や低融点ガラス等他の成分との平均屈折率の整合をとり、露光光の散乱を抑えるために、平均屈折率が1.45〜1.65の範囲内にあることが好ましい。フィラーの平均屈折率をこの範囲内とするためには、高融点ガラスおよびコーディエライトから選ばれた少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0050】
高融点ガラスとしては、ガラス転移点500〜1200℃、荷重軟化点550〜1200℃を有するものが好ましく、このような高融点ガラスは、酸化珪素および酸化アルミニウムをそれぞれ15重量%以上含有する組成を有するものが好ましく、これらの含有量合計が50重量%以上であることが必要な熱特性を得るのに有効である。高融点ガラスの組成はこれに限定されるものではないが、例えば以下のような酸化物換算組成のものを用いることができる。
酸化珪素 15〜50重量%
酸化ホウ素 5〜20重量%
酸化バリウム 2〜10重量%
酸化アルミニウム 15〜50重量%。
【0051】
コーディエライトの屈折率は1.58であり、低融点ガラス成分および感光性有機成分の平均屈折率と近似するので、本発明のフィラー成分として好適である。
【0052】
これらのフィラーの配合割合は無機微粒子中の30重量%以下であることが好ましい。より好ましくは20重量%以下である。
【0053】
フィラーの平均粒子径は1.5〜5μmであることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、粉末の凝集性が大きくなるため、ペーストへの充填・分散性が悪くなり、高精細なパターン形成が難しくなる傾向にある。また、フィラー成分は焼成工程で溶融することがないので、平均粒子径が大きすぎると、形成された隔壁の頂部の凹凸が大きくなりクロストークが発生する傾向にある。
【0054】
感光性ペーストの粘度は、有機溶媒により1万〜20万cps(センチ・ポイズ)程度に調整して使用される。使用される有機溶媒としては、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトンなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が挙げられる。焼成により白色の酸化物に変換する化合物を予め処理する際に用いた溶媒が感光性ペーストを形成する際の溶媒と異なる場合に、これらの混合溶媒系となってもよい。
【0055】
感光性ペーストには、この他に、紫外線吸収剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤その他の添加剤を加えることもできる。
【0056】
本発明のガラスペーストは、各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機などの混連・分散手段によって均質に混合・分散し作製する。
【0057】
このようなガラスペーストを基板上もしくは誘電体層上に塗布する。感光性ペーストを塗布する前に、塗布面の表面処理を行って接着性を向上させることが有効である。このような表面処理にはシラン系カップリング剤や金属アルコキシ化合物などが用いられる。
【0058】
感光性ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコータ法、ドクターブレード法などの一般的な方法で行うことができる。塗布厚さは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。
【0059】
塗布・乾燥した感光性ペースト膜にフォトマスクを介して露光を行って、隔壁パターンを形成する。露光の際、ペースト塗布膜とフォトマスクを密着して行う方法と一定の間隔をあけて行う方法(プロキシミティ露光)のいずれを用いても良い。露光用の光源としては、水銀灯やハロゲンランプが適当であるが、超高圧水銀灯が最もよく使用される。露光条件はペーストの塗布膜厚さによって異なるが、5〜30mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて20秒から5分間程度の露光を行う。
【0060】
現像は、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などにより行われる。本発明の感光性ペーストの好ましい態様として挙げた側鎖にカルボキシル基を有する感光性有機成分では、アルカリ水溶液での現像が可能になる。アルカリとしては、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去し易いので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがあげられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。アルカリ濃度が低すぎると可溶部が完全に除去され難くなる傾向にあり、アルカリ濃度が高すぎると、露光部のパターンが剥離したり、侵食したりする傾向にある。現像時の温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0061】
現像により形成された隔壁パターンは次に焼成炉で焼成し、有機成分を熱分解して除去し、同時に無機微粒子成分中の低融点ガラスを溶融させて無機質の隔壁を形成する。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の特性によって異なるが、通常は、空気中で焼成される。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
【0062】
バッチ式の焼成を行うには通常、隔壁パターンが形成されたガラス基板を室温から500℃程度まで数時間掛けてほぼ等速で昇温した後、焼成温度として設定された520〜590℃に30〜120分間で上昇させて、約15〜30分間保持して焼成を行う。焼成温度は用いるガラス基板のガラス転移点より低くなければならないので自ずから上限が存在する。焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると隔壁の形状にダレなどの欠陥が発生する傾向にある。
【0063】
このようにして得られた隔壁に挟まれたセル内に、赤、緑、青に発光する蛍光体ペーストを塗布してプラズマディスプレイパネル用の背面基板が構成される。この背面基板と前面基板とを張り合わせた後、封着、ガス封入し、駆動用のドライバーICを実装してプラズマディスプレイが作製される。
【0064】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、濃度(%)は特に断らない限り重量%である。
【0065】
(測定方法)
(1)全光線透過率、全光線反射率
島津製作所製の分光光度計(UV−3101PC)を用いて次のような条件で測定した。
試料厚み:50μm
試料セル:石英セル
スリット幅:7.5
測定速度:SLOW(約100nm/min)
光源:ハロゲンランプ
白板:BaSO4(サンプル側)
副白板:BaSO4(リファレンス側)
入射角:0度、8度
積分球:60φ積分球
積分球窓:入口窓 12(W)×20(H)mm
出口窓 12(W)×24(H)mm
ホトマル窓(球の下側) 16mmφ
PbSセル窓(球の上側)16mmφ
積分球の開口比率:12.9%
検出器:ホトマルおよびPbSセル
透過率測定の試料は、石英セル上に乾燥後厚みが50μmになるように感光性ペーストをスクリーン印刷法で塗布・乾燥し、試料の上に石英セルをのせて、調製した。全光線透過率は、入射角0度で入射した光の全透過光を測定した。反射率の測定に用いた試料は、透過率測定用試料を、570℃で15分間焼成した。厚さは約30μmとなった。全光線反射率は入射角8度で入射した光の全反射を測定した。
【0066】
(2)XYZ表色系の刺激値
光源色の3刺激値XYZは、JIS Z8701(XYZ表色系およびX10Y10Z10表色系による色の表示法)に規定された方法で求めることができる。
【0067】
測定には、スガ試験機(株)製のカラーコンピューターSM−7−CH(光学条件;45°照射,0°受光)を用いた。
【0068】
測定試料は、80mm角、厚さ1.3mmのソーダガラス基板上にそれぞれのガラスペーストを乾燥厚み50μmになるよう塗布し、これを570℃で15分間焼成して作製した。
【0069】
測定試料は、80mm角、厚さ1.3mmのソーダガラス基板上にそれぞれのガラスペーストを乾燥厚み50μmになるよう塗布し、これを実施例1、参考例1〜8および参考例13、14については、570℃で15分、参考例9〜12については、590℃で、15分焼成後の試料を用いた。
【0070】
この試料を用い、C光(北窓光)2度視野、基準として白色板(標準品として硫酸バリウム、X=91.06,Y=93.01,Z=106.90のものを使用)を用いて測定した。測定に先立ち、ソーダガラス基板のみに白色板を重ねて試料台において、零点合わせを行った。測定試料は12mmφの測定孔を有する試料台に焼成試料面を光照射方向にして置き、そのガラス基板側に白色板を重ねて置くようにした。測定試料の位置を変えて3点の
測定を行い平均値を測定値とした。
【0071】
(参考例1)まず以下の手順にて感光性ペーストを作製した。
【0072】
低融点ガラスとして、酸化物換算組成が、酸化リチウム6.8%、酸化ケイ素23%、酸化ホウ素33%、酸化バリウム4.5%、酸化アルミニウム19.5%、酸化亜鉛2.8%、酸化マグネシウム5.8%、酸化カルシウム4.6%のガラスを用いた。この低融点ガラスのガラス転移点は497℃、荷重軟化点は530℃、熱膨張係数は75×10-7/Kであった。ガラス成分は、予めアトラクターで微粉末とし、平均粒子径2.6μm、最大粒子径22μm、タップ密度0.75g/cc、屈折率1.59の非球状粉末として使用した。これを50重量部用意した。
【0073】
フィラーとして、酸化物換算組成が、酸化珪素38%、酸化ホウ素10%、酸化バリウム5%、酸化カルシウム4%、酸化アルミニウム36%、酸化亜鉛2%、酸化マグネシウム5%の高融点ガラス粉末を用いた。この高融点ガラス粉末のガラス転移点は652℃、荷重軟化点は746℃、熱膨張係数43×10-7/K、平均粒子径2.4μmで平均屈折率は1.59であった。これを12重量部用意した。
【0074】
焼成により白色の酸化物に変換する化合物としてテトラエトキシシランを用いた。これを酸化物に換算して10重量部となるよう用意した。
【0075】
以上の低融点ガラス、フィラーおよび化合物の合計72重量部に対して、0.06重量部のアゾ系有機染料スダンIVをアセトンに溶解し、分散剤を加えてホモジナイザーで均質に撹拌し、この溶液中にガラス粉末を添加して均質に分散・混合後、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを蒸発させ、150〜200℃の温度で乾燥した。
【0076】
一方、γ−ブチロラクトンに感光性ポリマーを40%溶液になるように混合し、撹拌しながら60℃まで加熱して全てのポリマーを溶解した。用いた感光性ポリマーは、メタクリル酸40%、メチルメタクリレート30%およびスチレン30%からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもので、その重量平均分子量は32,000,酸価は95であった。
【0077】
室温の感光性ポリマー溶液に、感光性モノマー(MGP400)、光重合開始剤(IC−369)、ゲル化防止剤(ベンゾトリアゾール)、分散剤(ノプコスパース)、重合禁止剤(ハイドロキノンモノメチルエーテル)および可塑剤(ジブチルフタレート)を加えて溶解させた。その後、この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0078】
溶剤を除いた有機成分の配合割合は、感光性ポリマー38%、感光性モノマー38%、光重合開始剤9.2%、ゲル化防止剤8.5%、分散剤1.6%、重合禁止剤0.5%、可塑剤4.2%である。
【0079】
前述の、低融点ガラス粉末とフィラーとテトラエトキシシランを混合して乾燥したものに有機ビヒクルを3本ローラで混合・分散して感光性ペーストを得た。感光性ペーストに含まれる各成分(重量部)は、低融点ガラス粉末50、フィラーを12、焼成後に酸化物に変換する化合物を酸化物換算で10,有機ビヒクルを35とした。無機材料中の低融点ガラス粉末、フィラーおよび白色酸化物換算の混合比率は69.4:16.7:13.9となる。
【0080】
この感光性ペーストの厚さ50μmの塗布膜は透明でその全光線透過率は78%であり、その塗布膜を570℃で15分間焼成した膜は白色でその全光線反射率は66%、XYZ表色系におけるY値は75であった。
【0081】
次いで、プラズマディスプレイパネルを作製した。
【0082】
100mm角ガラス基板上に電極層を形成した。平均粒径1.5μmの球状銀粉末および感光性有機成分を含む感光性銀ペーストを用いて、フォトリソグラフィ法により、ピッチ140μm、線幅40μmのストライプ状パターンを形成し、空気中で580℃、15分間焼成し、銀含有量97.5%、ガラスフリット量2.5%の電極層を形成した。この電極層の厚みは2.6μmであった。
【0083】
次にエチルセルロース5%のテルピネオール溶液30g、平均粒子径0.24μmのルチル型酸化チタン5g、ガラス粉末(酸化物表記の組成:酸化ビスマス67%、酸化ケイ素10%、酸化ホウ素12%、酸化アルミニウム3%、酸化亜鉛3%、酸化ジルコニウム5%)165gを混合・予備混練をした後、三本ローラにかけて誘電体ペーストを作製した。この誘電体ペーストを上記の電極層を形成したガラス基板上に、スクリーン印刷法で325メッシュのスクリーンを用いて乾燥厚み18μmになるように塗布した。続いて570℃で15分間焼成して厚み9μmの誘電体層を形成した。
【0084】
次に、本参考例の感光性ガラスペーストを、325メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により塗布した。塗布膜にピンホールなどの発生を回避するために塗布・乾燥を数回繰り返し行い、膜厚の調整を行った。途中の乾燥は80℃で10分間行った。その後、80℃で1時間保持して乾燥した。乾燥後の塗布膜厚さは180μmであった。
【0085】
続いて、140μmピッチ、線幅20μmのネガ用のクロムマスクを用いて、上面から20mW/cm2出力の超高圧水銀灯で露光量250mJ/cm2のプロキシミティ露光を施した。露光後のパターンを、35℃に保持したモノエタノールアミンの0.2%水溶液をシャワーで300秒間かけることにより現像し、その後、シャワースプレーにより水洗してガラス基板上にストライプ状の隔壁パターンを形成した。
【0086】
このようにして得られた隔壁パターンを空気中、570℃で15分間焼成して白色の隔壁を形成した。形成された隔壁の断面形状を電子顕微鏡で観察したところ、高さ135μm、隔壁中央部の線幅33μm、ピッチ140μmの良好な形状であった。
【0087】
次に、孔径150μmの吐出口を有する長さ3mmのニードルを5本、ピッチ420μmで先端に圧入したノズル(L/D=20)を用いて隔壁間に、赤色、緑色、青色に発光する蛍光体粉末を含有する蛍光体ペーストを塗布し、乾燥することにより蛍光体層を形成して、プラズマディスプレイパネル用の背面板を得た。
【0088】
次に、この背面板とプラズマディスプレイパネル用の前面板とを合わせ、封着、ガス封入し、駆動回路を接続してプラズマディスプレイを得た。このパネルに電圧を印加して表示を行い、全面点灯時の輝度を大塚電子社製の測光機MCPD−200を用いて測定したところ、輝度は410cd/m2であり、本発明の目的の表示特性を満足するものであった。
【0089】
(参考例2)焼成後に白色の酸化物となる化合物としてチタンアセチルアセトナートを用い、感光性ポリマーとしてダイセル化学社製のサイクロマーP(ACA210、酸価120,分子量28,000)を用いた以外は、参考例1を繰り返した。本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は70%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は75%、XYZ表色系におけるY値は80であった。
【0090】
この感光性ペーストを使用して隔壁を作成し、それを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が460cd/m2であった。
【0091】
(参考例3)焼成後に白色の酸化物となる化合物としてトリエトキシアルミニウムを用いた以外は、参考例1を繰り返した。本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は73%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は70%、XYZ表色系におけるY値は78であった。
【0092】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が440cd/m2であった。
【0093】
(参考例4)焼成後に白色の酸化物となる化合物としてジルコニウムアセチルアセトナートを用いた以外は、参考例2を繰り返した。本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は65%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は60%、XYZ表色系におけるY値は70であった。
【0094】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が360cd/m2であった。
【0095】
(参考例5)焼成後に白色の酸化物となる化合物としてセリウムアセチルアセトナートを用い、低融点ガラス、フィラーとセリア換算の混合比率を75:10:15とした以外は、参考例1を繰り返した。本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は74%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は62%、XYZ表色系におけるY値は68であった。
【0096】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が400cd/m2であった。
【0097】
(参考例6)低融点ガラスとして下記の酸化物換算組成および熱特性を有するものを用いた以外は参考例1を繰り返した。低融点ガラス粉末組成:酸化リチウム8.6%、酸化珪素20.1%、酸化ホウ素31%、酸化アルミニウム20.6%、酸化バリウム3.8%、酸化マグネシウム5.9%、酸化カルシウム4.2%、酸化亜鉛2.1%。ガラス転移点472℃、荷重軟化点515℃、熱膨張係数83×10−7/K、屈折率1.59。
【0098】
本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は73%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は65%、XYZ表色系におけるY値は75であった。
【0099】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が420cd/m2であった。
【0100】
(参考例7)高融点ガラスの代わりに平均粒子径2.5μmのコーディエライトを用いた以外は、参考例1を繰り返した。本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は76%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は65%、XYZ表色系におけるY値は74であった。
【0101】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が400cd/m2であった。
【0102】
(参考例8)チタンテトラアセチルアセトナートの代わりにテトラ−n−ブチルチタネートを用いて参考例2を繰り返した。本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は76%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は70%、XYZ表色系におけるY値は80であった。
【0103】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が460cd/m2であった。
【0104】
(実施例1)チタンテトラアセチルアセトナートの代わりにイットリウム(III)イソプロポキシドを用いて参考例2を繰り返した。本実施例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は73%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は66%、焼成膜のXYZ表色系におけるY値は70であった。
【0105】
この感光性ペーストを用いて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が400cd/m2であった。
【0106】
(参考例9)無機微粒子として参考例1と同じ低融点ガラス80重量部と高融点ガラス15重量部を使用し、焼成した後、白色の酸化物となる化合物として酸化チタン換算で5重量部を用いた。焼成した後、酸化チタンとなる成分は次のように処理して用いた。n−ブチルチタネートを、多価アルコール存在下に重縮合させたものを用いた。エチレングリコールと水との混合溶媒、n−ブチルチタネートを室温でアンモニア触媒を加えて2〜3時間撹拌処理したものを溶媒交換して用いた。
【0107】
感光性ペーストの構成成分は、参考例1と同じ感光性ポリマー15%、感光性モノマーとしては、MGP−400を7.2%、光重合開始剤(IC−369)3.6%、ゲル化防止剤(ベンゾトリアゾール)3.15%、分散剤(ノプコスパース:サンノプコ社製)0.5%、酸化防止剤(ハイドロキノンモノメチルエーテル)0.1%、フローノンSP−1000(共栄社化学社製)0.7%と無機成分70%である。溶媒にはγ−ブチロラクトンを用いた。
【0108】
本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は78%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は74%、XYZ表色系におけるY値は83であった。
【0109】
この感光性ペーストを用いて隔壁パターンを形成し、590℃、15分間の焼成を行った以外は参考例1に準じて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が460cd/m2であった。
【0110】
(参考例10)本参考例では、低融点ガラスとして参考例6で使用したものを、感光性ポリマーとしてサイクロマーP(ダイセル化学社製:ACA250、酸価70,分子量9,000)を、そして焼成した後、白色の酸化物に変換する化合物として、出発物質として四塩化チタンを使用し、これをイソプロピルアルコールとエチレングリコール中で処理して塩化水素を排出し、イソプロピルアルコールを除いた後、加水分解処理したものを用い、無機微粒子の構成を低融点ガラス75、高融点ガラス20、酸化物換算で焼成後白色酸化物となる化合物5とした以外は、参考例9を繰り返して感光性ペーストを形成した。
【0111】
本参考例の感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明でその全光線透過率は79%であり、焼成した膜は白色でその全光線反射率は74%、XYZ表色系におけるY値は84であった。
【0112】
この感光性ペーストを用いて、次のようにして格子状隔壁を形成した。
【0113】
ガラス基板上にストライプ状のアドレス電極(線幅50μm、厚さ3μm、ピッチ250μm)を形成し、この上に厚さ15μmの誘電体層を形成した後、上記の感光性ペーストを乾燥厚さ90μmになるように塗布乾燥した。乾燥後、ピッチ250μm、線幅30μmのストライプパターンを有するフォトマスクをアドレス電極と直交するような配置でセットして露光した。露光した後、上記の感光性ペーストをさらに塗布し乾燥して乾燥厚さ90μmの塗布膜を形成した。この塗布膜上に、ピッチ250μm、線幅30μmのストライプパターンを有するフォトマスクをアドレス電極と平行になるような配置でセットして露光した。
【0114】
露光後、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像し、さらに、580℃で15分間焼成することにより、ピッチ250μm、線幅20μm、高さ130μmの隔壁とピッチ250μm、線幅23μm、高さ60μmの補助隔壁を有する(格子状隔壁)ディスプレイ用部材を得ることができる。この部材の隣り合う隔壁間に蛍光体層を形成することでプラズマディスプレイ用背面板が作製される。このようにして得られたディスプレイは高い輝度490cd/m2を示した。
【0115】
(参考例11)本参考例では、焼成後に白色酸化物へ変換する化合物として参考例10と同様に四塩化チタンを出発物質として処理して形成したチタンアルコキシドにテトラエトキシシランを添加してチタンとケイ素の複合酸化物が形成される溶液を用いた。チタンとケイ素の配合比は80:20である。低融点ガラス/高融点ガラス/複合酸化物が75/20/5となるように配合し、参考例10に準じて感光性ペーストを調製した。
【0116】
この感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明で、その全光線透過率は77%であり、焼成した膜は白色で、その全光線反射率は73%、XYZ表色系におけるY値は82であった。
【0117】
この感光性ペーストを使用して参考例1に準じて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が450cd/cm2であった。
【0118】
(参考例12)焼成した後、白色の酸化物となる成分として参考例10で用いたものを配合し、高融点ガラスを用いず、低融点ガラスと白色の酸化物の配合比を90/10とした他は参考例9を繰り返した。
【0119】
この感光性ペーストの厚さ50μm塗布膜は透明で、その全光線透過率は76%であり、焼成した膜は白色で、その全光線反射率は70%、XYZ表色系におけるY値は80であった。
【0120】
この感光性ペーストを使用して参考例1に準じて作製したプラズマディスプレイパネルは、輝度が440cd/cm2であった。
【0121】
(参考例13)電子放出素子を用いたディスプレイは、電子放出素子を作製した電子源を固定する背面基板と、蛍光体層とメタルバックが形成された前面基板を封着して作製した。前面基板と背面基板との間には、支持枠と耐大気圧支持部材としての隔壁(スペーサー)を作製した。
【0122】
表面伝導型電子放出素子および電極間配線を形成した基板上に、参考例1で用いた感光性ペーストをスクリーン印刷により全面塗布・乾燥し、これを繰り返して乾燥厚みが約1.0mmの塗布膜を形成した。この塗布膜に、幅2mmのストライプ状の開口部を1cmピッチで有するフォトマスクを密着させて、出力15mW/cm2の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は1.2J/cm2とした。
【0123】
次に、2回目の感光性ペーストの塗布・乾燥を行って、最初と同様の厚みの2段目の塗布膜を形成し、今度は開口部幅1.6mmのフォトマスクを最初の露光部に対応するようにアライメントして同様に露光した。この手法を3段目まで繰り返し、3段目には幅1.2mmの開口部を有するフォトマスクを使用した。このように露光処理の終わった塗布膜を参考例1と同様の手段で現像・水洗して、断面が3段の雛壇状の高さ2.3mmのストライプ状の隔壁(スペーサー)パターンを形成した。これを空気中570℃で30分間焼成し、電子放出素子を用いたディスプレイ用の背面基板を得た。
【0124】
一方、ブラックマトリクスおよび3原色に発光する蛍光体層を形成しメタルバックを設けた前面基板を別途作成し、上記背面基板と封着して電子放出素子を用いたディスプレイを得た。得られたディスプレイは、白色隔壁の効果により輝度が向上した。
【0125】
(参考例14)ストライプ状にインジウム錫酸化物(ITO)透明電極膜がパターニングされたガラス基板に、参考例1で用いた感光性ペーストを塗布し、厚さ10μmの塗布膜を得た。ITO電極と直交するストライプ状のフォトマスクを用いて露光し現像して幅25μmの隔壁パターンを形成した。これを570℃で30分焼成して幅20μm、高さ7μmの隔壁を形成した。この基板を回転しながら、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を70nm、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体(Alq3)を55nm蒸着した後、基板の回転を止めて基板面に対して垂直な方向からアルミニウムを100nm蒸着した。全面に保護層として酸化ケイ素膜を形成して有機電界発光素子を得た。
【0126】
略記号の説明
MGP400:X2N-CH(CH3)-CH2-(OCH2CH(CH3))n-NX2
X:-CH2CH(H)-CH2O-CO-C(CH3)=CH2
n:2〜10
IC−369:Irgacure369(チバガイギー社製品)
2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1
【0127】
【発明の効果】
本発明によれば、感光性ペーストを用いたフォトリソグラフィ法による隔壁形成で良好なパターニング性を得ることができ、なおかつ、輝度や色純度向上に寄与する反射率の高い白色隔壁の形成することができる。
Claims (5)
- ガラス転移点が400〜550℃、荷重軟化点が450〜600℃の範囲内である低融点ガラスおよびY,Ceの群から選ばれた金属のアルコキシド誘導体またはそれらの加水分解物もしくは重縮合物を含むことを特徴とする感光性ペースト。
- 請求項1記載の感光性ペーストを用いて隔壁を形成したことを特徴とするプラズマディスプレイ。
- 請求項1記載の感光性ペーストを用いて隔壁を形成したことを特徴とするプラズマアドレス液晶ディスプレイ。
- 請求項1記載の感光性ペーストを用いて隔壁を形成したことを特徴とする電子放出素子を用いたディスプレイ。
- 請求項1記載の感光性ペーストを用いて隔壁を形成したことを特徴とする有機電界発光素子を用いたディスプレイ。
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