JP4214563B2 - 無機微粒子、感光性ペーストおよびプラズマディスプレイの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイやプラズマアドレス液晶ディスプレイの隔壁の作製に用いられる無機微粒子、感光性ペーストおよびプラズマディスプレイの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイパネル(以下PDPとする)は液晶ディスプレイに比べて高速の表示が可能であり、かつ大型化が容易であることから、OA機器および広報表示装置などの分野に浸透している。また、高品位テレビジョンの分野などの進展が非常に期待されている。
【0003】
このような用途の拡大に伴って、精細で多数の表示セルを有するカラーPDPが注目されている。PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に設けられた放電空間内で対向するアノードおよびカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、この放電空間内に封入されているガスから発生する紫外線を放電空間内に設けた蛍光体にあてることにより表示を行うものである。この場合、放電の広がりを一定領域におさえ、表示を規定のセル内で行わせると同時に、かつ均一な放電空間を確保するために隔壁(障壁、リブともいう)が設けられている。
【0004】
PDPにおける隔壁は、従来から、絶縁ガラスペーストをスクリーン印刷法でパターン状に印刷し乾燥するという工程を5〜10数回繰り返すことにより所定の高さにした後、焼成して形成されていた。しかしながら、スクリーン印刷法では、特にパネルサイズが大型化した場合に、予め基板上に形成されている放電電極と絶縁ガラスペーストの印刷場所との位置合わせが難しく、位置精度が得られ難いという問題がある。しかも、所定の隔壁高さを得るために多数回の重ね合わせ印刷を行うことによって隔壁およびその側面エッジ部の波打ちや裾の乱れが生じ、高さの精度が得られない欠点がある。また、隔壁が矩形や台形の断面形状にならない問題がある。このため、高精細の隔壁形成が難しく、表示品質が悪くなり、作業性が悪い、歩留まりが低いなどの問題点もある。
【0005】
さらにPDPの大面積化、高解像度化に伴い、このようなスクリーン印刷による方法では、高アスペクト比、高精細の隔壁の製造が技術的に困難となり、また、コスト的にも不利になってきている。
【0006】
この問題を改良する方法として、特開平1−296534号公報、特開平2−165538号公報、特開平5−342992号公報、特開平6−295676号公報では、感光性ペーストを用いてフォトリソグラフィ技術により隔壁を形成する方法が提案されている。さらに特開平8−50811号公報では、感光性ガラスペースト法を用いて、隔壁を1回の露光で形成する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、隔壁が白色であるため、PDP、プラズマアドレス液晶ディスプレイに用いる際にコントラストが不足するという問題があった。
【0007】
すなわち、絶縁ガラスペーストや感光性ペーストを用いてパターン加工された後、焼成されてPDP用隔壁が形成される。しかしながらこの隔壁が白色の場合、発光時に隔壁からの光反射があるために輝度向上に有効であるが、非発光時に隔壁上面からの外光反射のためにコントラストが低下するという問題があった。
【0008】
一方、特開平6−144871号公報、特開平8−17345号公報には、パターン解像度を向上させるために、黒色顔料を含んだ感光性ペーストを用いた隔壁の製造方法が提案されている。しかしながら、黒色顔料は光を吸収するため1回の露光で得られる硬化深さが不足し、多数回の露光が必要になる問題があった。さらに得られた隔壁の黒色度や、黒色によるコントラスト向上については何ら考慮されていない。
【0009】
また、コントラストを向上するために前面ガラス基板上に黒色隔壁を形成するパネル構造も提案されているが、前面ガラス基板と背面ガラス基板の隔壁の位置合わせを行う必要があることや前面ガラス基板の黒隔壁と背面ガラス基板の白隔壁を別々に形成する必要があるため、工程が複雑になる欠点があった。さらに、隔壁の形成方法としてスクリーン印刷法が用いられており、精度良く形成できないなどの問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、高アスペクト比かつ高精細な隔壁を有し、コントラストの優れた表示が可能なPDPを製造するための無機微粒子、感光性ペーストおよびPDPの製造方法を提供することをその目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80であり、かつ、焼成後の刺激値Yが5〜30である感光性ペースト用の無機微粒子であって、三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を酸化物換算重量比で4:3:3の割合で含む金属酸化物または酸化ニッケルと酸化コバルトを酸化物換算重量比で1:1の割合で含む金属酸化物を合計で3〜20重量%含むことを特徴とする無機微粒子によって達成することができる。
【0012】
また、上記無機微粒子を使用した本発明の感光性ペーストは、無機微粒子と感光性有機成分を含有する感光性ペーストであって、該無機微粒子が三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を酸化物換算重量比で4:3:3の割合で含む金属酸化物または酸化ニッケルと酸化コバルトを酸化物換算重量比で1:1の割合で含む金属酸化物を合計で3〜20重量%含み、厚み50μmの塗布膜を形成した場合のXYZ表色系における刺激値Yが20〜60であり、かつ、該塗布膜を焼成した後の刺激値Yが2〜20であることを特徴とする感光性ペーストである。
【0013】
上記無機微粒子および感光性ペーストを用いた本発明のPDPの製造方法は、三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を酸化物換算重量比で4:3:3の割合で含む金属酸化物または酸化ニッケルと酸化コバルトを酸化物換算重量比で1:1の割合で含む金属酸化物を合計で3〜20重量%含み、焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80であり、焼成後の刺激値Yが5〜30である無機微粒子と、感光性有機成分を含有する感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥することにより、XYZ表色系における刺激値Yが20〜60の塗布膜を形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングし、該パターンを焼成してXYZ表色系における刺激値Yが2〜20の隔壁を形成することを特徴とするPDPの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に述べる。
【0015】
上記したように高アスペクト比かつ高精細な隔壁を有するPDPを製造するために、隔壁パターンの形成にはフォトリソグラフィ法を用いるのが好ましい。すなわち、隔壁パターンを感光性ペースト塗布膜に紫外線等を照射して形成する方法である。
【0016】
従って感光性ペースト塗布膜の段階、さらに遡って感光性ペーストの主成分である無機微粒子および感光性有機成分は紫外線をよく透過する成分であることが好ましい。言い換えれば、無機微粒子、感光性ペースト塗布膜の段階では、白色または灰色であることが好ましい。その一方、PDPのコントラストを向上させるためには、隔壁は黒色であることが好ましい。
【0017】
そこで本発明は、無機微粒子の焼成前後のXYZ表色系における刺激値Yを特定の範囲とすることにより、該無機微粒子を含有する感光性ペーストの焼成前後の刺激値Yを、焼成前は光透過性を高く、焼成後は、光透過性を低く、言い換えれば黒色化することを可能とするものである。従って該感光性ペーストを基板上に塗布し、これを露光して隔壁パターンを形成、焼成することにより、たとえ、露光工程が一度であっても、高アスペクト比かつ高精細で、PDPのコントラスト向上に好適な黒色化した隔壁を形成することができる。
【0018】
本発明者らはコントラストの優れたPDPについて鋭意検討した結果、隔壁のXYZ表色系における刺激値Yを2〜20とすることが有効であることが判明した。刺激値Yが2未満では黒色度が高すぎて、ほとんど反射の影響がなくなり、表示特性が低下する。また、刺激値Yが20を越えると灰色を帯びるようになり、コントラストや色純度が低下する。さらに、3刺激値XYZをもとに、色度座標x、yを求めた場合のx、yの値はそれぞれ0.3〜0.36にすることによって、プラズマディスプレイの発光色の色純度を向上することができることが判った。
【0019】
そこでさらに研究を重ねた結果、XYZ表色系における刺激値Yが2〜20であり、色度座標x、yがそれぞれ0.3〜0.36である隔壁を形成するためには、隔壁を構成する無機微粒子の焼成後の刺激値Yが5〜30である必要があり、且つ上記刺激値Yを有すると共に高アスペクト比かつ高精細な隔壁を一度の露光で形成するために必要な、焼成前のペースト塗布膜の光透過性を維持するためには、焼成前の無機微粒子、感光性ペーストの刺激値Yが、それぞれ20〜80、20〜60である必要があることを見出した。
【0020】
無機微粒子、感光性ペーストの刺激値Yがそれぞれ80、60を越えると焼成後の隔壁の黒色度が不足し、PDPのコントラストが低下する。また、無機微粒子、感光性ペーストの刺激値Yが20未満では、ペースト塗布膜の紫外線透過率が低下し、塗布膜の下部までの光反応が十分に進行しないのでパターン形成性が低下する。特に無機微粒子の刺激値Yが30〜60であることが好ましい。
【0021】
また、焼成後の無機微粒子の刺激値Yが5未満であると、黒色度が高すぎてPDPの表示特性が低下し、刺激値Yが30を超えると灰色を帯びるようになり、PDPのコントラストや色純度が低下する。
【0022】
なお本発明において、光源色の3刺激値XYZおよびそれらから求められる色度座標x、yは、JIS Z8722(物体色の測定方法)、JIS Z8717(蛍光物体色の測定方法)、JIS Z8701(XYZ表色系およびX10Y10Z10表色系による色の表示方法)に規定される方法で求めた値とする。
【0023】
具体的には、以下の方法で無機微粒子の粉末、感光性ペースト塗布膜および塗布膜を焼成して形成された隔壁についてY値および色度座標x、yの測定を行った。
【0024】
まず隔壁を例として具体的な測定方法を示す。
【0025】
測定試料は、80mm角、厚さ1.3mmのソーダガラス基板上に感光性ペーストを乾燥厚み50μmに塗布し、これを580℃で30分間焼成して作製した。このベタ膜焼成試料を用い、C光(北窓光)2度視野、基準として白色板(標準品として硫酸バリウム、X=91.06、Y=93.01、Z=106.90のものを使用)を用いて測定した。測定に先立ち、ソーダガラス基板のみに白色板を重ねて試料台において、零点合わせを行った。測定試料は12mmφの測定孔を有する試料台に焼成試料面を光照射方向にして置き、そのガラス基板側に白色板を重ねて置くようにした。測定試料の位置を変えて3点の測定を行い平均値をY値の測定値とする。x、yの値は計算によって求められる。
【0026】
感光性ペースト塗布膜についての測定は、上記に準じて焼成前の状態で測定したものであり、無機微粒子については、透明な袋に無機微粒子を充填したものを塗布膜や隔壁層と同様に扱って測定した。
【0027】
刺激値や色度座標は、スガ試験機(株)製のカラーコンピューターSM−7−CH(光学条件 45゜照明、0゜受光)を用いて測定した。
【0028】
以下に、本発明の無機微粒子についてさらに述べる。
【0029】
本発明者らは、無機微粒子と感光性有機成分とを主成分とする感光性ペーストのパターン形成性について種々の研究を行ってきたが、シャープで形状の優れたパターンを形成するためには、パターン露光に用いる紫外線をできるだけ直進的に透過させることが必要であり、そのための有効な要因の一つは無機微粒子と感光性有機成分の平均屈折率を整合させることであることを見出している。
【0030】
この点から、本発明においては無機微粒子の主成分がガラス粉末であり、該ガラス粉末の平均屈折率が1.5〜1.7であることが好ましい。この範囲にあると感光性有機成分の平均屈折率1.45〜1.7との整合性が良好であり、所望の形状の隔壁パターンを容易に形成することができる。
【0031】
また、ガラス粉末は、焼成工程で焼結されて隔壁を形成するものであり、焼成はガラス基板上で行われるので、基板ガラスを変形させないことが必要な条件である。この点から、ガラス粉末のガラス転移点450〜550℃、軟化点500〜600℃であることが好ましい。これらの熱特性と上記の平均屈折率の範囲を共に満足するガラス粉末として、酸化物換算表記で以下の組成からなるものが好ましく挙げられる。
【0032】
酸化リチウム : 3〜15重量%
酸化珪素 :10〜30重量%
酸化ホウ素 :20〜40重量%
酸化バリウム : 2〜15重量%
酸化アルミニウム :10〜25重量%
上記組成において、酸化リチウムを3〜15重量%含有するガラス粉末を用いることによって、ガラス軟化点、熱膨張係数のコントロールが容易になるだけでなく、ガラスの平均屈折率を低くすることができる。添加量はペーストの安定性を向上させるためにも、15重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%である。
【0033】
酸化珪素は10〜30重量%の範囲で配合することが好ましく、10重量%未満の場合はガラス層の緻密性、強度や安定性が低下し、また、熱膨張係数が所望の値から外れ、ガラス基板とのミスマッチが起こり易い。30重量%を越えると、軟化点が高くなり、ガラス基板へ焼き付けにくくなる。
【0034】
酸化ホウ素は20〜40重量%の範囲で配合することが好ましい。40重量%を超えるとガラスの安定性が低下する。20重量%未満では強度の低下やガラスの安定性の低下が起こる。
【0035】
酸化バリウムは2〜15重量%で用いるが、2重量%未満ではガラス焼き付け温度および電気絶縁性を制御するのが難しくなる。また、15重量%を超えるとガラス層の安定性や緻密性が低下する。
【0036】
酸化アルミニウムは10〜25重量%で用いるが、歪み点を高めたり、ガラス組成の安定化やペーストのポットライフ延長のために添加される。10重量%未満ではガラス層の強度が低下し、25重量%を超えるとガラスの耐熱温度が高くなり過ぎてガラス基板上に焼き付けが難しくなる。また、緻密な絶縁層が600℃以下の温度で得られ難くなる。
【0037】
これらの成分の他に、酸化物表記で酸化亜鉛、酸化カルシウム、あるいは酸化マグネシウムが含まれてもよい。
【0038】
酸化亜鉛は、2〜15重量%の範囲で含まれることが好ましい。2重量%未満では、絶縁層の緻密性向上に効果がない。15重量%を越えると、ガラス基板上に焼き付けする温度が低くなり制御しにくくなり、また絶縁抵抗が低くなるので好ましくない。
【0039】
酸化カルシウムは、2〜13重量%の範囲で含まれることが好ましく、ガラスを溶融し易くすると共に熱膨張係数を制御するのに添加される。2重量%より少ないと、歪み点が低くなり過ぎる。
【0040】
酸化マグネシウムは、1〜15重量%の範囲で含まれることが好ましく、ガラスを溶融し易くすると共に熱膨張係数を制御するのに添加される。15重量%を越えるとガラスが失透し易くなり好ましくない。
【0041】
また、ガラス粉末中に、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどを含有することができるが、その量は5重量%未満であることが好ましい。酸化ジルコニウムは、ガラスの軟化点、転移点および電気絶縁性を制御するのに効果がある。
【0042】
本発明の無機微粒子は、上記したガラス転移点、軟化点を有するガラス粉末50〜90重量%と、フィラーとして高融点ガラスやセラミックス等を10〜50重量%含むことが好ましい。
【0043】
これらのフィラー成分の添加により、焼成時の収縮率が小さくなり、隔壁パターンの形状保持性や精度が向上する。さらに、これらのフィラー添加は、得られた隔壁の強度を維持する上で好ましい。フィラーが10重量%未満では、感光性ペーストで隔壁を形成する場合に、焼成収縮率を低くしたり、熱膨張係数を制御する効果がない。一方、フィラーの含有量が50重量%を越えると、焼成後の隔壁が緻密性の点で劣るものとなり、隔壁が低強度になり、隔壁が剥がれたり脱落するなどの欠陥が発生することがある。また、隔壁中に微量水分の吸着や有機成分が残留し、放電特性の低下を引き起こす原因となることがある。
【0044】
フィラーとしては、酸化チタン、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア、コーディエライト、ムライト、高融点ガラス粉末からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いることができる。中でも、高融点ガラス粉末が、組成の変更で平均屈折率、軟化点、熱膨張係数をコントロールすることが可能な点で好ましい。
【0045】
高融点ガラス粉末としては、軟化点550〜1200℃、さらに好ましくは650〜800℃のものが好ましく、酸化物換算表記で以下の組成からなるもが好ましい。
【0046】
酸化珪素 :15〜50重量%
酸化硼素 : 5〜20重量%
酸化アルミニウム :15〜50重量%
酸化バリウム : 2〜10重量%
特に高融点ガラス粉末中に、酸化珪素、酸化アルミニウムをそれぞれ15重量%以上含有することが好ましく、これらの含有量合計が高融点ガラス粉末中50重量%以上であることが、必要な熱特性をもたせるために有効である。
【0047】
さらに高融点ガラス粉末は、D10が0.4〜2μm、D50が1〜3μm、D90が3〜8μmおよび最大粒子径10μm以下であることが好ましい。ここでD10、D50、D90は、それぞれ粒径の小さい粉末から10体積%、50体積%(平均粒径)、90体積%の粉末の粒径である。
【0048】
高融点ガラス粉末の粒径分布が上記の範囲にあると、焼成収縮率を低くすることができ、かつ低気孔率の隔壁を作製する上で好ましい。
【0049】
高融点ガラス粉末として、上記した粒径より大きな粉末を用いると、気孔率が上昇するばかりでなく、隔壁頂部の凹凸が拡大し、誤放電を引き起こすことがあるため好ましくない。
【0050】
なお、高融点ガラス粉末は、例えば、所定の配合組成になるように混合し、900〜1400℃で溶融後、急冷し、ガラスフリットにしてから粉砕し、上記の粒度分布のものとして使用する。
【0051】
フィラー成分の屈折率は1.5〜1.8であることが好ましく、1.5〜1.68がより好ましい。フィラー成分の屈指率がこの範囲にあると感光性ペースト中の感光性有機成分の平均屈折率と整合しやすくなり、感光性ペーストの光線透過率向上(散乱や反射の防止)に寄与するので、高精度のパターン形成が容易になる。
【0052】
また、前記したガラス粉末の平均屈折率をn1、フィラー成分の屈折率をn2とした場合、−0.05≦n1−n2≦0.05の関係を満たしていることが好ましい。ガラス粉末とフィラー成分との屈折率差がこの範囲にあると、感光性有機成分との屈折率整合がより容易になり、隔壁パターン形成性が向上するので好ましい。
【0053】
上記したように本発明の特徴は、無機微粒子、感光性ペースト塗布膜の段階では、白色または灰色であり、隔壁パターンを焼成した後、十分な黒色度を示す隔壁を得ることができることにある。感光性ペースト塗布膜が白色または灰色であることは、パターン形成のために照射される紫外線を塗布膜の下部まで透過させて十分光硬化させるため必須の条件である。本発明の無機微粒子を含有する感光性ペースト塗布膜はこの条件を満足するものであり、また無機微粒子は、焼成前の感光性ペースト段階では白色または灰色を示すが、焼成後に黒色化する必要があり、このためには黒色顔料を含むことが好ましい。
【0054】
好ましい黒色顔料としては、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Ti、Coの金属もしくはそれらの酸化物が挙げられ、これらの少なくとも一種を合計で3〜20重量%含有することが好ましい。焼成後に黒色化する機構の詳細は明らかでないが、上記の金属もしくはそれらの酸化物の数種類が無機微粒子中に含有されると、無機微粒子の状態では、粉末状のため光が散乱されて白または灰色を呈するが、焼成される過程で無機微粒子中に含有する主として遷移金属元素からなる黒色顔料の電子状態(電子の価数)が変化する。このため、可視光を吸収するd電子のバンド状態が変化するようになり、黒色化すると推定される。さらに、焼成後に赤、緑、青にそれぞれに着色する3種類の黒色顔料を組み合わせて使用し、黒色隔壁をニュートラルブラックとすることが好ましい。
【0055】
黒色顔料として作用させるためには、ガラス粉末とフィラーとを混合して無機微粒子を製造する際に上記の黒色顔料を混ぜ込めばよい。また、ガラス粉末の製造過程で黒色顔料を加えて溶融して作製した粉末を用いることも好ましい。溶融混合した粉末の場合には、黒色顔料が均一かつ均質に溶解されるため、粉砕後のガラス粉末の粒度分布の制御が容易になる。また、黒色顔料の添加量も、粉末の状態でガラス粉末に混合させる場合に比べて少量で、均質なムラのない黒色隔壁が得られるので好ましい。
【0056】
単純な混合および溶融混合する上記金属もしくはその酸化物は、一種類でなく複数種を用いてもよいが、合計で3〜20重量%であることが、感光性ペーストの機能保持および得られる隔壁の黒色度をコントロールするのに優れているので好ましい。より好ましくは、5〜15重量%である。3重量%未満では、隔壁の黒色度が弱くなり、灰色に見え、コントラスト向上効果が少ない。また、20重量%より多いと、ガラスの軟化点が上昇したり、熱膨張係数をガラス基板と整合させるのが難しくなる。
【0057】
本発明の無機微粒子としては、平均屈折率1.5〜1.7であり、そのガラス転移点が450〜550℃、軟化点が500〜600℃の酸化リチウムを含有することを特徴とするガラス粉末と高融点ガラスまたはセラミックス類から選んだ少なくとも一種のフィラーとを含み、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Ti、Coの金属もしくはそれらの酸化物から選ばれた成分を合計で3〜20重量%含有するものが、特に好ましく挙げられる。
【0058】
また、本発明の無機微粒子は感光性ペースト用であるため、感光性有機成分の中に分散混合し使用される。従って、上記した条件に加え、感光性有機成分中に均一分散し、しかも充填性が良くなければパターン形成性の良好なペーストを得ることができない。そのため無機微粒子の粒径とその分布が重要な要件となる。
【0059】
本発明者らは、すでに、ガラス粉末の粒度分布を、縦軸を頻度(%)、横軸を粒径(μm)としたヒストグラムで示した時、粒度分布が少なくとも2つのピークを有するガラス粉末を感光性ペーストに用いることによって、ペーストの塗布膜を形成した際に膜中の光散乱が抑制され、全光線透過率が高く、優れたパターン特性を示す感光性ペーストを得ることができることを見出しており、このような粒度分布を満足することが好ましい。
【0060】
本発明の無機微粒子の主成分として使用されるガラス粉末は、例えば、調合原料の調製、溶融、粉砕、分級および乾燥の工程を経て作製される。ガラス粉末の粒度分布は、上記の粉砕、分級工程において制御される。粉砕は、ボールミル、ジェットミルなどの方法が用いられ、分級は、篩い分け、気流式分級などの乾式分級で行う。
【0061】
なお無機微粒子、ガラス粉末の粒度分布は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。例えば、マイクロトラック社製、粒度分布計HRA9320−X100を用いた場合の測定条件は次の通りである。
【0062】
試料量 :1g
分散条件 :精製水中で1〜1.5分間超音波分散。分散しにくい場合は0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中で行う。
【0063】
粒子屈折率:ガラスの種類により変更(リチウム系の場合、1.6)
溶媒屈折率:1.33
測定数 :2回
一般に、粉末は粒径が小さいものほど、凝集しやすく、ペースト中に均一に分散されず、塗布膜を形成した際、空隙ができやすくなるので光透過性が低くなり、所望のパターン特性が得られない。一方、粒径が大きすぎると、焼成温度によっては焼成後の隔壁の頂部に凹凸が生じ、封着時に前面板との間に隙間ができてクロストークが生じたりする。これらの問題点について鋭意検討の結果、ガラス粉末の平均粒径(D50)は1.5〜7μm、最大粒子径は7〜40μmであると凝集性が少なく、充填性がよいのでパターン形成性の優れたペーストを得ることが可能であり、さらに焼成後の隔壁頂部の凹凸や異物の問題がないため、高精細隔壁形成に適していることを見出した。
【0064】
平均粒径が1.5μm未満であると、粉末の凝集性が大きく、パターン形成性が低下する傾向がある。7μmより大きいと、焼成後の隔壁頂部の凹凸が大きくなるので放電時にクロストークが起きることがある。平均粒径は1.5〜7μm、好ましくは2〜6μmである。
【0065】
また、最大粒子径が7μm未満では、充填性が悪く、パターン形成性が低下する傾向がある。40μmを越えると焼成後の隔壁頂部の凹凸や放電空間内に異物が残る。最大粒子径は7〜40μm、より好ましくは10〜30μmであることが粉末の充填性や隔壁頂部の凹凸をコントロールするために好ましい。
【0066】
ガラス粉末のD10が0.5〜2μm、D90が4〜20μmであると、凝集性が少なく充填性のよいガラス粉末を得ることが出来る。D10が0.5μm未満であるとガラス粉末の凝集性が高く、凝集した微粒子間の空隙による散乱で高精細なパターンを得にくい。2μmを越えると、分級時の歩留まりが悪くなったり、焼成後の隔壁頂部の凹凸が大きくなるためクロストークが生じることがある。D10は0.5〜2μm、より好ましくは0.7〜1.5μmであることが粉末の凝集を抑制し、粉末の歩留まりが向上する点で好ましい。
【0067】
D90は4μm未満では、充填性が悪くなるため、パターン形成性が低下する傾向がある。20μmを越えると隔壁頂部の凹凸や放電空間に異物が残ることがある。D90は4〜20μm、好ましくは6〜15μmであることが、ガラス粉末の充填性や隔壁頂部の凹凸を抑制するために好ましい。
【0068】
また、ガラス粉末のタップ密度は0.6g/cc以上、より好ましくは0.65g/cc以上であると、充填性がよく、ペーストのパターン形成性が向上し、高精細の隔壁形成を行うことができる。タップ密度は、JIS Z2500(2045)に記載の通り、振動させた容器内の粉末の単位体積当たりの質量である本発明においては、タップ密度はTSUTSUI SCIENTIFIC INSTRUMENTS Co.A.B.D POWDER TESTERを用い、ガラス粉末を入れた100cc容器を5分間振動した後、ガラス粉末を摺り切り、100cc当たりの質量を測定して得た。
【0069】
本発明の無機微粒子は、例えば、上記したガラス粉末、フィラー、黒色顔料を適宜混合させることにより製造できる。
【0070】
次に感光性ペーストについて説明する。本発明の感光性ペーストは、上記した刺激値Yの条件を満足する無機微粒子と感光性有機成分からなり、隔壁パターンを形成し、それを焼成して隔壁を作成するために使用されるものである。感光性ペーストは、膜厚50μmの塗布膜のXYZ表色系における刺激値Yが20〜60であり、かつ該塗布膜を焼成した後の刺激値Yが2〜20である必要がある。感光性ペースト塗布膜のXYZ表色系における刺激値Yがこの範囲にあると紫外線の透過が妨げられず、露光量を500mJ/cm2以下に設定することができ、タクトタイムを下げることができる。得られた隔壁パターンの形状も優れている。
【0071】
上記したような焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80を示し、焼成後の刺激値Yが5〜30である本発明の無機微粒子を成分として含有することにより上記した感光性ペーストの刺激値Yの条件を容易に満足でき、XYZ表色系における刺激値Yが2〜20の隔壁を得ることができる。
【0072】
なおXYZ表色系における刺激値Yが20〜80の白〜灰色の無機微粒子とほぼ透明な感光性有機成分からなる感光性ペーストは、ペーストのパターン形成性を向上させるための微量添加成分などの影響を受け、このため感光性ペーストの刺激値Yが20〜60の範囲に変化する。刺激値Yが20未満では、紫外線が感光性ペーストの塗布膜により吸収されてしまい(光線透過率が低下する)下部まで十分に光硬化しない。このためパターン形成性が悪くなる。また、刺激値Yが60を越えると、焼成後の隔壁の黒色度が低下し、コントラスト改善効果が不十分となる。より好ましくは30〜50である。
【0073】
なお感光性ペーストの膜厚50μmの塗布膜の焼成後の刺激値Yが2〜20である必要性は、隔壁と同様であり、刺激値Yが2未満では黒色度が高すぎて、PDPの表示特性が低下する。また、刺激値Yが20を越えると灰色を帯びるようになり、PDPのコントラストや色純度が低下する。
【0074】
また、感光性ペーストの光線透過率が、ペーストのパターン形成性に重要な影響を及ぼすため、感光性ペーストは、膜厚50μmで測定した全光線透過率が30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。特に、パターン形成に重要な役割を有するg線波長領域で測定した全光線透過率が30%以上、より好ましくは50%以上であることが好ましい。
【0075】
さらに本発明の感光性ペーストは、膜厚50μmの塗布膜の全光線透過率が30%以上であることに加え、以下に述べる正規透過率が30%以上、さらには50%以上であることが好ましい。すなわち、感光性ペーストを透過する光線量が多いことが好ましく、さらにその透過する光線のうち直進的に透過する光の割合が高いことが好ましい。
【0076】
この要件を満足することが、高アスペクト比のパターン加工を行う上で重要である。このような全光線透過率を得るには、感光性ペーストを構成する無機微粒子および感光性有機成分に光線透過率の高い成分を用い、これを均質に混合することが重要である。さらに、無機微粒子と感光性有機成分それぞれの平均屈折率をできるだけ整合させることが必要である。
【0077】
なお光線透過率の測定は、分光光度計(島津製作所製、UV−3101PC)を用いて行った。測定条件は次の通りである。
【0078】
試料厚み:50μm
試料セル:石英
スリット幅:7.5nm
測定速度:SLOW(約100nm/min)
光源:ハロゲンランプ
測定波長:360〜850nm
白板:BaSO4(サンプル側)
副白板:BaSO4(リファレンス側)
入射角:0度
試料室:マルチパーパス大形試料室ユニット(島津製作所製PC-3100型)
積分球:60φ積分球
積分球窓:入口窓 12(W)×20(H)mm
出口窓 12(W)×24(H)mm
ホトマル窓(球の下側):16mmφ
PbSセル窓(球の上側):16mmφ
積分球の開口比率:12.9%
検出器:ホトマルおよびPbSセル
データ処理:MCB17JH20/PC9801
石英セル上に乾燥後厚みが50μmになるように感光性ペーストを塗布した後、試料の上から石英セルを乗せて、測定サンプルを調整する。上記の仕様・条件で、全光線透過率T1を測定した後、積分球の直進光を測定する部分(白板:出口窓に取り付ける部分)を取り外し、直進光の光を検出しないようにして、拡散透過率T2(散乱などによって直進せずに透過した光の割合)を測定した。全光線透過率(T1)から拡散透過率(T2)を差し引き、これを全光線透過率で除した値T3=(T1−T2)/T1を正規透過率(直進透過率ともいう)という。
【0079】
さらに本発明の感光性ペーストの膜厚50μmの塗布膜の表面での全反射率は10%以下であり、正規反射率が20%以上、より好ましくは50%以上が好ましい。
【0080】
塗布膜の反射率測定は、透過率測定と同じ分光光度計を用いて行う。ここで全反射率(Rt)は入射角8度で入射した光の全反射を測定したものである。さらに反射のうち、入射角0度で入射した拡散成分の反射率を測定し、これを拡散反射(Rd)とした。この時、(Rt−Rd)/Rt=Rnとして計算されるRnを正規反射率とした。100%反射板として硫酸バリウム板を用いた。
【0081】
すなわち正規反射率は全反射率から拡散成分を除いた割合である。感光性ペーストをパターニングする場合、露光光源から出た光は露光装置の反射板で調整されて平行光線として照射され、それが直進的にフォトマスクを通過して感光性ペースト塗布膜の表面に達する。入射光線の光路に沿って反射される光の割合が正規反射率である。照射された光の一部が表面で反射されることは避け難いが、塗布膜の表面および表層状態に起因する照射光の反射をできるだけ抑制し、反射する光はできる限り正規反射となることが好ましい。
【0082】
本発明の感光性ペーストは、塗布膜の全反射率が、特にg線波長領域の光で測定して10%以下であり、かつその正規反射率が20%以上であることがパターン形状を良好にするため好ましい。
【0083】
本発明の感光性ペーストを構成する感光性有機成分について説明する。
【0084】
本発明において感光性有機成分は、感光性モノマと感光性オリゴマもしくはポリマを主成分とし、光重合開始剤を含有するものであり、光開始ラジカル反応で露光された部分が現像液に不溶化するタイプであることが好ましい。
【0085】
感光性モノマとしては、活性な炭素−炭素二重結合を有する化合物が主として用いられるが、官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基などを有する単官能および多官能化合物が用いられる。中でも多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物を用いることが好ましい。
【0086】
また、感光性ペースト中には有機成分として、光反応で形成される硬化物の物性の向上やペーストの粘度の調整などの役割を果たすとともに、未露光ペーストの溶解性をコントロールする機能を有するオリゴマもしくはポリマが併用されることが一般的である。これらのオリゴマもしくはポリマは、炭素−炭素二重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られた炭素連鎖の骨格を有するものが用いられる。共重合するモノマとしては、不飽和カルボン酸などが有用であり、感光後に未露光部分をアルカリ水溶液で現像できる感光性ペーストとすることができる。こうして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸基を有するオリゴマもしくはポリマの酸価は50〜160、好ましくは70〜140の範囲になるようにコントロールするのが好ましい。
【0087】
感光性オリゴマもしくはポリマとして使用するには分子内にカルボキシル基と不飽和二重結合を含有する重量平均分子量2000〜6万のものが好ましい。より好ましくは、3000〜4万である。不飽和二重結合を導入するには、カルボキシル基を側鎖に有するオリゴマもしくはポリマに、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドを付加反応させる方法が適用される。アルカリ水溶液現像性のためのカルボキシル基数とオリゴマもしくはポリマを感光性にするエチレン性不飽和基数とは、反応条件により自由に選択することができる。
【0088】
上記のような感光性成分を含有する感光性ペーストを露光した場合、感光性成分が重合および架橋反応して現像液に不溶性となる。そのために活性ラジカルを発生してラジカル重合や架橋反応を開始する成分として光重合開始剤が添加される。さらに、光重合開始剤とともに増感剤を使用して、感度を向上させたり(化学増感)、反応に有効な光の波長範囲を拡大する(分光増感)ことができる。これらの光重合開始剤および増感剤は既知の化合物群から選択して使用できる。
【0089】
無機微粒子が多量に含まれる感光性ペーストでは、散乱光により起こる不要な光反応を抑制するために、紫外線吸収剤を添加することが形状の優れた隔壁パターンを得るために有効である。紫外線吸収剤には、350〜400nmの波長範囲に吸収極大を有する有機系染料が好ましく用いられる。具体的には、アゾ系染料、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびインドール系化合物の群から選ばれた少なくとも一種が好ましく挙げられる。
【0090】
具体例としては、アゾ系有機染料であるスダン(化学式C24H20N4O,分子量380.45)や、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、BONASORB UV−3901(オリエント化学社製)、BONASORB UA−3902(オリエント化学社製)、SOM−2−0008(オリエント化学社製)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0091】
これらの紫外線吸収剤の添加量は、感光性ペースト中に含有される無機微粒子に対して0.1〜2重量%が好ましい。0.1重量%未満では紫外線吸収剤の添加効果が十分でなく、2重量%を越えると感光性ペーストの感度が低下するので好ましくない。さらに上記の添加量の範囲であると、感光性ペーストの刺激値Yを本発明において必要な範囲にすることが容易である点からも好ましい。
【0092】
有機系染料は感光性ペーストの1成分として混合してもよいが、染料溶液で無機微粒子を処理して、無機微粒子に有機染料膜を予めコートしてこれを添加する方法も有効である。
【0093】
感光性ペーストには、上記の成分の他に必要に応じて、有機溶剤、増感剤、重合禁止剤、分散剤、安定剤、増粘剤などを加えることができる。
【0094】
また感光性ペーストは、有機溶媒により、ガラス基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整することができる。この時使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトンなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0095】
ペースト粘度は無機微粒子、感光性有機成分、有機溶媒、その他の添加剤などの添加割合で調整されるが、その範囲は1万〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えば、ガラス基板への塗布をスクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには5万〜20万cpsが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は1万〜2万cpsが好ましい。
【0096】
本発明の感光性ペーストは、例えば、無機微粒子、感光性モノマ、感光性オリゴマもしくはポリマ、光重合開始剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤および溶媒などの各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合分散し作製することができる。
【0097】
本発明の目的とする黒色を呈する隔壁は、隔壁パターン形成用感光性ペースト中の無機微粒子のサイズ・形状・粒度分布・含有量、黒色顔料の種類・添加量・添加方法、感光性有機成分中に含有される感光性モノマやポリマの種類・含有量および添加剤成分の種類・量などをバランスよく厳密に制御することによって得られるものである。焼成時の有機成分の蒸発性(脱バインダー性)、焼成収縮率が形成された隔壁の性状に微妙な影響を与えるので、無機微粒子、黒色顔料および有機成分を選択し、焼成条件を選ぶ必要がある。
【0098】
本発明の感光性ペーストは、PDPやプラズマアドレス液晶ディスプレイにおけるパターン形成用として好ましく用いることができる。
【0099】
次に本発明のPDPの製造方法について説明する。
【0100】
本発明のPDPの製造方法は、焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80であり、焼成後の刺激値Yが5〜30である無機微粒子と、感光性有機成分を含有する感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥することにより、XYZ表色系における刺激値Yが20〜60の塗布膜を形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングし、該パターンを焼成してXYZ表色系における刺激値Yが2〜20の隔壁を形成することを特徴とするものである。
【0101】
すなわち、上記した感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥した後、フォトリソグラフィ法でパターニングし、該パターンを焼成し隔壁を形成するPDPの製造方法である。
【0102】
感光性ペーストを用いた隔壁パターン形成と焼成による隔壁形成は次のように行われる。先ず、ガラス基板に感光性ペーストを塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコーター法、スリットダイ法、ドクターブレード法など一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーン印刷のスクリーンメッシュ、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。
【0103】
感光性ペーストを必要に応じて表面処理したガラス基板上または誘電体層を形成した上に塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィ技術で行われるように、フォトマスクを介して行われる。この際にフォトマスクを感光性ペーストの塗布膜表面に密着する方法あるいは一定の間隔をあけて行うプロキシミティー露光法のいずれを用いてもよい。露光に使用される活性光線は、紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプなどが使用される。超高圧水銀灯を光源とした平行光線を用いプロキシミティー露光機を用いるのが一般的である。露光条件は感光性ペーストの塗布厚みによって異なるが、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.5〜30分間露光を行う。
【0104】
露光後、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などが用いられる。現像液には、感光性ペースト中の有機成分、特に感光性オリゴマもしくはポリマが溶解可能な溶液を用いる。カルボキシル基を側鎖に有する感光性オリゴマもしくはポリマを選択することによりアルカリ水溶液での現像が可能になる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムの水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去し易いので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が完全に除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部のパターンを剥離させたり、侵食したりするおそれがある。現像時の温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0105】
感光性ペーストの塗布膜から露光・現像の工程を経て形成された隔壁パターンは次に焼成炉で焼成されて、有機成分を熱分解して除去し、同時に無機微粒子成分中のガラス粉末を溶融させて無機質の隔壁を形成する。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の特性によって異なるが、通常は、空気中で焼成される。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
【0106】
バッチ式の焼成を行うには通常、隔壁パターンが形成されたガラス基板を室温から500℃程度まで数時間掛けてほぼ等速で昇温した後、焼成温度として設定された560〜580℃に30〜40分間で上昇させて、15〜30分間保持して焼成を行う。焼成温度は用いるガラス基板のガラス転移点より低くなければならないので自ずから上限が存在する。焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると隔壁の形状にダレなどの欠陥が発生する。また、有機成分に含まれる感光性モノマ、感光性オリゴマもしくはポリマ、種々の添加剤の熱分解特性とガラス粉末成分の熱特性が不釣り合いになると、隔壁が褐色に着色したり、隔壁が基板から剥がれたりする欠陥が発生する。
【0107】
本発明のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80の無機微粒子を配合成分とした感光性ペーストを用いて、上記の隔壁パターン形成および焼成工程を経て形成された隔壁は、XYZ表色系における刺激値Yが2〜20であり、さらに色度座標x、yがそれぞれ0.3〜0.36を示す。
【0108】
基板上に形成された隔壁の側面および隔壁間の底部に蛍光体層を形成することによりPDP用基板を得ることができ、別途作成された前面ガラス基板と封着した後、放電ガスを封入し配線の実装を行うことによりPDPは製造される。
【0109】
このようにして得られたPDPは、コントラストの優れた表示を可能にする。
【0110】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。なお、濃度(%)は特に断らない限り重量%である。
【0111】
実施例1
ガラス粉末として組成(分析値)が、酸化リチウム8.6%、酸化珪素20.1%、酸化ホウ素31%、酸化バリウム3.8%、酸化アルミニウム20.6%、酸化亜鉛2.1%、酸化マグネシウム5.9%、酸化カルシウム4.2%のものを使用した。
【0112】
このガラス粉末のガラス転移点は472℃、軟化点は515℃であった。ガラス粉末の平均粒径は2.2μm、平均屈折率は1.59であった。
【0113】
フィラーとして、酸化珪素38.2%、酸化ホウ素9.2%、酸化バリウム5.1%、酸化カルシウム4.4%、酸化アルミニウム34.5%、酸化チタン2.1%、酸化マグネシウム4.8%からなり、ガラス転移点652℃、軟化点746℃の高融点ガラスを用いた。この高融点ガラスの平均粒径は2.5μm、最大粒子径は10.0μmであり、屈折率は1.58であった。
【0114】
無機微粒子として、ガラス粉末70%とフィラー成分の高融点ガラス30%の混合物に対して、三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)の混合粉末を合計で10%混合して用いた。これら黒色顔料成分の混合割合は、重量比で4:3:3であった。このような配合をした無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yはカラーコンピューターによる測定で45であった。また焼成後の粉末のY値は、10であった。
【0115】
ガラス粉末、フィラー成分としての高融点ガラスおよび黒色顔料粉末からなる無機微粒子に対して0.15%のアゾ系染料スダンIV(東京化成工業(株)製)をアセトンに溶解し、分散剤を加えてホモジナイザーで均質に撹拌し、この溶液に無機微粒子を添加して均質に分散・混合後、ロータリーエバポレーターを用いて150〜200℃の温度で乾燥し、アセトンを蒸発させた。
【0116】
一方、溶媒(γ-ブチロラクトン)中の感光性ポリマ(X−4007)を40%溶液になるように混合し、撹拌しながら60℃まで加熱し全てのポリマを均質に溶解した。ついで溶液を室温まで冷却し、このポリマ溶液55%に、感光性モノマ(MGP400)25%、光重合開始剤(IC−369)6%、安定剤(1,2,3−ベンゾトリアゾール)4%、分散剤(ノプコスパース092:サンノプコ社製)1%および重合禁止剤(HQME)0.14%を加えて溶解させた。その後、この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0117】
得られた有機ビヒクル65重量部に対して上記のようにガラス粉末、フィラー成分および黒色顔料を含有する無機微粒子70重量部を3本ローラで混合・分散して、感光性ペーストを調製した。
【0118】
この感光性ペーストを100mm角ガラス基板上に325メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷により均一に塗布した乾燥厚み50μmの塗布膜を作製し、全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yの測定を行った。それぞれの測定結果は次の通りであった。
【0119】
全光線透過率 35%
正規透過率 30%
全反射率 8%
正規反射率 20%
XYZ表色系における刺激値Y 40
この感光性ペーストをスクリーン印刷法により複数回均一に塗布して隔壁パターン形成のための乾燥厚み170μmの塗布膜を作製した。塗布膜のピンホールなどの発生を回避するため塗布する度に80℃、10分の乾燥を繰り返し、最終的には80℃、90分間の乾燥を行った。
【0120】
この塗布膜に、ストライプ状でピッチ150μm、線幅20μmのパターンを有するネガ型クロムマスクを100μmの間隔をおいて配置し、20mW/cm2出力の超高圧水銀灯で紫外線露光を行った。露光量は0.5J/cm2であった。
【0121】
次に、35℃に保持したモノエタノールアミンの0.2%の水溶液をシャワーで90秒間かけることにより現像し、その後、シャワースプレーを用いて水洗し、光硬化していないスペース部分を除去してガラス基板上にストライプ状の隔壁パターンを形成した。
【0122】
このようにして得られた隔壁パターンを空気中で560℃、30分間焼成したところ黒色隔壁が形成できた。形成された隔壁の断面形状を電子顕微鏡で観察したところ、高さ120μm、隔壁頂部の線幅30μm、ピッチ150μmであった。さきに、感光性ペースト塗布膜の特性を測定するために用いたベタ膜を焼成した試料を用いて測定した隔壁層のXYZ表色系における刺激値Yは5.5であった。
【0123】
電極、誘電体層および黒色隔壁が形成された基板上の隔壁間に、蛍光体層を塗布し、前面板と合わせて封着し、ガス封入し駆動回路を接続してプラズマディスプレイを作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行った。全面点灯時の輝度と消灯時の反射率からコントラスト比を測定した。コントラスト比は測光機MCPD−200(大塚電子社製)を用いて測定した。コントラスト比は200:1と優れたものであった。
【0124】
実施例2
実施例1を繰り返すが、用いる紫外線吸収剤をベンゾフェノン系化合物2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとし、無機微粒子に対して0.12%を用いた。この場合の感光性ペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0125】
全光線透過率 42%
正規透過率 30%
全反射率 8%
正規反射率 26%
XYZ表色系における刺激値Y 35
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは12であった。
【0126】
実施例3
実施例1を繰り返すが、フィラー成分として高融点ガラスの代わりにコーディエライト(平均粒径2μm、屈折率1.56)を用いた。この場合の無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは50であった。また、焼成後の粉末のY値は、25であった。
【0127】
この無機微粒子を実施例1と同様にして感光性ペーストに適用した時得られたペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0128】
全光線透過率 45%
正規透過率 32%
全反射率 7.5%
正規反射率 28%
XYZ表色系における刺激値Y 30
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは18であった。
【0129】
実施例4
酸化物換算組成で、酸化リチウム6.4%、酸化珪素15%、酸化ホウ素36%、酸化アルミニウム20%、酸化バリウム3.9%、酸化マグネシウム3.9%、酸化カルシウム3.4%、酸化亜鉛8.1%の組成を有し、ガラス転移点477℃、軟化点521℃のガラス粉末の作成段階で、酸化物換算重量比で4:3:3の割合で三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を合計15%となるように溶融混合して、黒色顔料成分を含有したガラス粉末を作成した。このガラス粉末80重量部にフィラーとしてアルミナ(平均粒径2.5μm、屈折率1.77)20重量部を混合して、無機微粒子を得た。無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは30であった。また、焼成後の粉末のY値は、20であった。
【0130】
この無機微粒子を用いて、実施例1と同様にして感光性ペーストを作製した。但し、紫外線吸収剤としてUvinul3039(BASFジャパン社製)0.5%とベーシックブルー7 0.05%(いずれも無機微粒子に対して)を使用し、これらは有機成分として感光性ペーストに混合して用いた。この感光性ペーストについて測定された全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0131】
全光線透過率 60%
正規透過率 45%
全反射率 8%
正規反射率 32%
XYZ表色系における刺激値Y 42
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは15であった。
【0132】
実施例5
実施例4において無機微粒子として、黒色顔料成分を含有するガラス粉末とフィラー成分との混合比率をそれぞれ85重量部と15重量部として、実施例4を繰り返した。無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは38であった。また焼成後の粉末のY値は、18であった。
この無機微粒子を用いた感光性ペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0133】
全光線透過率 55%
正規透過率 60%
全反射率 8%
正規反射率 25%
XYZ表色系における刺激値Y 32
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは12であった。
【0134】
実施例6
実施例4において無機微粒子として、黒色顔料成分を含有するガラス粉末とフィラー成分との混合比率をそれぞれ65重量部と35重量部として、実施例4を繰り返した。無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは50であった。また、焼成後の粉末のY値は、14であった。
【0135】
この無機微粒子を用いた感光性ペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0136】
全光線透過率 65%
正規透過率 55%
全反射率 7%
正規反射率 55%
XYZ表色系における刺激値Y 24
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは8であった。
【0137】
実施例7
実施例4において、黒色顔料成分を含有量を合計で10%となるように溶融混合したガラス粉末を作製して、それを使用する以外は実施例4を繰り返した。無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは60であった。また、焼成後の粉末のY値は、20であった。
【0138】
この無機微粒子を用いた感光性ペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0139】
全光線透過率 65%
正規透過率 50%
全反射率 8%
正規反射率 42%
XYZ表色系における刺激値Y 55
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは13であった。
【0140】
実施例8
実施例1において、加える黒色顔料として酸化ニッケルと酸化コバルト(酸化物換算重量比1:1)とを合計で10重量%用いる以外は実施例1を繰り返した。
【0141】
無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは31であった。また焼成後の粉末のY値は、15であった。
【0142】
この無機微粒子を用いた感光性ペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0143】
全光線透過率 55%
正規透過率 35%
全反射率 6.5%
正規反射率 25%
XYZ表色系における刺激値Y 28
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは10であった。
【0144】
実施例9
ガラス粉末として、酸化リチウム6.7%、酸化珪素22%、酸化ホウ素32%、酸化アルミニウム19%、酸化バリウム3.9%、酸化マグネシウム5.5%、酸化カルシウム4.1%、酸化亜鉛5.5%の組成を有し、ガラス転移点497℃、軟化点530℃のガラス粉末の作成段階で、酸化物換算重量比で4:3:3の割合で三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を合計15%となるように溶融混合して、黒色顔料成分を含有したガラス粉末を作成した。このガラス粉末80重量部にフィラーとしてアルミナ(平均粒径2.5μm、屈折率1.77)20重量部を混合して、無機微粒子を得た。無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは30であった。焼成後の粉末のY値は、12であった。
【0145】
実施例4と同様にして感光性ペーストを作製した。感光性ペーストの全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yは次の通りであった。
【0146】
全光線透過率 55%
正規透過率 45%
全反射率 7%
正規反射率 33%
XYZ表色系における刺激値Y 26
この様な特性を有する感光性ペースト塗布膜を用いて実施例1と同様にして隔壁を形成した。得られた隔壁のXYZ表色系における刺激値Yは7であった。
【0147】
比較例1
黒色顔料として、酸化ニッケルと酸化コバルト(酸化物換算重量比2:1)とを合計で6%用いた以外は実施例1と同じ実験を繰り返した。得られた無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yは焼成前後で、それぞれ60、40であった。
【0148】
次に実施例1と同様に塗布膜を作製し、全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yの測定を行った。それぞれの測定結果は次の通りであった。
【0149】
全光線透過率 75%
正規透過率 60%
全反射率 7%
正規反射率 52%
XYZ表色系における刺激値Y 55
次に、560℃で30分間、焼成後のベタ膜のXYZ表色系における刺激値Yは35であった。また、プラズマディスプレイのコントラスト比を測定したところ、30:1と低いものであった。
【0150】
比較例2
黒色顔料として、酸化コバルト、酸化クロム(III )、三二酸化鉄(酸化物換算重量比2.7:3.3:5)を合計で11%混合したものを用いた。
【0151】
次に実施例1と同じように焼成前後の無機微粒子のXYZ表色系における刺激値Yを測定したところ、それぞれ18、11であった。
【0152】
次に、実施例1と同様に塗布膜を作製し、全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yの測定を行った。それぞれの測定結果は次の通りであった。
【0153】
全光線透過率 1.5%
正規透過率 0.2%
全反射率 8%
正規反射率 0.4%
XYZ表色系における刺激値Y 15
次に、実施例1と同じように隔壁パターン形成を試みたが、隔壁層下部まで光が届かず、光硬化しないため、現像時に現像液に溶解した。このためパターン形成できなかった。
【0154】
比較例3
実施例9と同様のガラス組成物に、黒色顔料として、酸化ニッケルと酸化コバルト(酸化物換算重量比1:1)とを合計で2.5%となるようにして、実施例9と同様に溶融混合して、黒色顔料成分を含有したガラス粉末を作製した。焼成前後のガラス粉末のXYZ表色系におけるY値は、それぞれ85、45であった。 次に、実施例4と同様にして感光性ペーストを作製し、全光線透過率、全反射率、正規反射率およびXYZ表色系における刺激値Yの測定を行った。それぞれの測定結果は次の通りであった。
【0155】
全光線透過率 70%
正規透過率 65%
全反射率 10%
正規反射率 55%
XYZ表色系における刺激値Y 70
次に、560℃で30分間、焼成後のベタ膜のXYZ表色系における刺激値Yは30であった。また、プラズマディスプレイのコントラスト比を測定したところ、40:1と低いものであった。
【0156】
略記号の説明:
X−4007:
40%メタクリル酸、30%メチルメタクリレート、30%スチレンからなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させた重量平均分子量43,000、酸価95の感光性ポリマ。
【0157】
MGP400:X2N-CH(CH3)-CH2-(OCH2CH(CH3))n-NX2
ここでX=-CH2CH(OH)-CH2O-CO-C(CH3)=CH2
n=2〜10
IC−369:Irgacure369(チバガイギー社製品)
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1
HQME:ハイドロキノンモノメチルエーテル
【0158】
【発明の効果】
本発明の無機微粒子は、感光性ペースト用の無機微粒子であって、焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80であり、かつ、焼成後の刺激値Yが5〜30である。また、該無機微粒子と感光性有機成分とで構成される感光性ペーストは、厚み50μmの塗布膜を形成した場合のXYZ表色系における刺激値Yが20〜60であり、かつ、該塗布膜を焼成した後の刺激値Yが2〜20となる。このため、ペースト塗布膜の状態では光透過性や塗膜表面の反射率に優れ、露光工程を繰り返すことなく良好なパターンが形成できる。また隔壁パターンを焼成すると、黒色の隔壁を形成することができる。このため高アスペクト比、高精細の隔壁形成が可能なフォトリソグラフィ技術により、コントラストの向上したPDPを容易に製造できる。
Claims (8)
- 焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80であり、かつ、焼成後の刺激値Yが5〜30である感光性ペースト用の無機微粒子であって、三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を酸化物換算重量比で4:3:3の割合で含む金属酸化物または酸化ニッケルと酸化コバルトを酸化物換算重量比で1:1の割合で含む金属酸化物を合計で3〜20重量%含むことを特徴とする無機微粒子。
- 無機微粒子と感光性有機成分を含有する感光性ペーストであって、該無機微粒子が三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を酸化物換算重量比で4:3:3の割合で含む金属酸化物または酸化ニッケルと酸化コバルトを酸化物換算重量比で1:1の割合で含む金属酸化物を合計で3〜20重量%含み、厚み50μmの塗布膜を形成した場合のXYZ表色系における刺激値Yが20〜60であり、かつ、該塗布膜を焼成した後の刺激値Yが2〜20であることを特徴とする感光性ペースト。
- 前記感光性有機成分が、感光性モノマと感光性オリゴマもしくはポリマを主成分とし、光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項2に記載の感光性ペースト。
- 波長350〜400nmの領域に吸収極大値を有する紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の感光性ペースト。
- 紫外線吸収剤が、アゾ系染料、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびインドール系化合物の群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の感光性ペースト。
- 紫外線吸収剤を無機微粒子に対して0.1〜2重量%含有することを特徴とする請求項4または5に記載の感光性ペースト。
- プラズマディスプレイまたはプラズマアドレス液晶ディスプレイにおけるパターン形成用であることを特徴とする請求項2〜6いずれか1項に記載の感光性ペースト。
- 三二酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム(III)を酸化物換算重量比で4:3:3の割合で含む金属酸化物または酸化ニッケルと酸化コバルトを酸化物換算重量比で1:1の割合で含む金属酸化物を合計で3〜20重量%含み、焼成前のXYZ表色系における刺激値Yが20〜80であり、焼成後の刺激値Yが5〜30である無機微粒子と、感光性有機成分を含有する感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥することにより、XYZ表色系における刺激値Yが20〜60の塗布膜を形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングし、該パターンを焼成してXYZ表色系における刺激値Yが2〜20の隔壁を形成することを特徴とするプラズマディスプレイの製造方法。
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