JP3674261B2 - プラズマディスプレイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極が高精細、低抵抗かつ高接着強度を有し、表示画面のコントラストが高く、カラー表示の色純度の高いプラズマディスプレイに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイパネル(以下PDPと記載する)は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、かつ大型化が容易であることから、OA機器および情報表示装置などの分野に浸透している。また、高品位テレビの分野などでの進展が非常に期待されている。
【0003】
このような用途の拡大に伴って、PDPは微細で多数の表示セルを有するカラーPDPが注目されている。PDPは前面ガラス基板と背面ガラス基板を張合わせて構成されている。前面ガラス基板では、基板上にインジウム・錫酸化物(ITO)や酸化錫からなる透明電極が形成されている。透明電極は帯状に複数本形成されており、この隣り合う透明電極間に通常10kHz〜数10kHzのパルス状交流電圧を印加し表示用の放電を得るが、透明電極のシート抵抗は数10Ω/cm2と高いため、電気抵抗が数10kΩ程度になり、印加電圧パルスが十分に立ち上がらず駆動が困難になる。そこで通常は透明電極上に金属製のバス電極を形成して抵抗値をさげるようにしている。
【0004】
この前面ガラス基板では、透明電極およびバス電極を形成した後、全体を低融点ガラスからなる透明誘電体層によって被覆する。その後、保護層として酸化マグネシウムを電子ビーム蒸着法により形成する。前面ガラス基板に形成された誘電体は、放電のための電荷を蓄積するためのコンデンサーとしての役割を有している。
【0005】
一方、背面ガラス基板にはアドレス電極が形成され、その上に誘電体層を設けた後、隔壁が形成される。隔壁で仕切られたセル内にはそれぞれ赤、緑、青に発光する蛍光体が塗布される。このような構成の背面ガラス基板と上記の前面ガラス基板とを封着し、隔壁で仕切られた放電空間にHe−Xe,Ne−Xeなどのガスを封入して、PDPが製造される。
【0006】
このようにPDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に設けられた隔壁で仕切られた放電空間内で対向する電極間にプラズマ放電を生じさせ、この空間内に封入されているガスから発生する紫外線を放電空間内に塗布された蛍光体に当てることにより表示を行なうものである。この場合、ガラス基板上のアノード電極およびカソード電極は、複数本の線状電極を平行に配置されており、互いの電極が僅少な間隙を介して対向し、かつ互いの線状電極が交差する方向を向くように重ね合わせて構成されている。
【0007】
PDPの中で、蛍光体によるカラー表示に適した3電極構造の面放電型PDPは、互いに平行に隣接した一対の表示電極からなる複数の電極対とする複数のアドレス電極とを有する。ただし、背面ガラス基板には、光のクロストークを防ぎ放電空間を確保するために、隔壁が電極間のスペースに形成されている。
【0008】
これらの電極のうち前面ガラス基板の電極には、表示画面のコントラストを向上させるために黒色化する技術が要求されている。例えば、特開昭61−176035号公報および特開平4−272634号公報では、黒色化した銀ペーストをガラス基板に印刷法でパターン形成する方法が提案されている。印刷法では、電極パターンに対応するパターンを有するスクリーン印刷版を用いて銀ペーストなどの導電ペーストを印刷した後、焼成して電極が完成する。しかしながら、スクリーン印刷法では、パターン精度、スキーズの堅さや印刷速度などの印刷条件などの最適化を図っても、電極パターンの幅を60μm以下に細くすることが難しく、ファインパターン化には限界があった。また、スクリーン印刷法では、印刷版の精度は、製版の精度に依存するので、印刷版が大きくなるとパターンの寸法誤差が大きくなってしまうという欠点がある。このため30インチ以上の大面積のPDPの場合に、高精細なPDPの作製が技術的に困難となっている。
【0009】
また、銀ペーストの黒色化には、Ru(ルテニウム)、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)などの金属酸化物を銀と等量以上混合する方法が採られている。しかしながら、この方法では電極の抵抗値がかなり上がってしまうため、電極の厚膜化や、黒電極と通常の白い電極との2層構造化が必須となってくる。電極の厚膜化では電極の上に設ける誘電体層の表面平坦性が保証できなくなり、2層構造では製造工程が複雑になるという問題があった。このように、表示画面のコントラスト向上にはなお課題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表示画面のコントラストが高く、カラー表示の色純度の高いプラズマディスプレイを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマディスプレイは、基板上に電極を形成したプラズマディスプレイであって、該電極のXYZ表色系における刺激値Yが5〜40であり、かつ該電極が、Ru、Mn、Cr、FeおよびCoの群から選ばれた少なくとも1種の金属もしくはそれらの酸化物を合計で5〜15重量%含有することを特徴とするもので、本発明は次の好ましい実施態様を包含している。
【0012】
(a) 前記電極の色度座標値x,yの値がそれぞれ0.3〜0.36であること。
(b) 前記電極が、Ru、およびCoの群から選ばれた少なくとも1種の金属もしくはそれらの酸化物が特に好ましい。
【0013】
(c) 前記電極の材料が、Ag、Au、Pd、NiおよびPtの群から選ばれた少なくとも1種を含有すること。これらのうち、AgおよびNiの群から選ばれた少なくとも1種が特に好ましい。
【0014】
(d) 前記電極の厚みが、1〜5μmであること。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のプラズマディスプレイは、XYZ表色系における刺激値が5〜40であり、色度座標値x,yが好ましくはそれぞれ0.3〜0.36である電極を有するプラズマディスプレイである。このような特性を有する電極は、プラズマディスプレイパネルのコントラストを向上させる効果がある。
【0016】
本発明のプラズマディスプレイの電極の色として、刺激値Yを5〜40にすることによりプラズマディスプレイのコントラストを向上させることができる。刺激値Yが5より小さい場合は黒色度が高すぎて、放電時の反射が少なくなり、コントラストが低下するようになる。また、刺激値Yが40を超える場合は灰色を帯びるようになり、非放電時の反射が多くなってコントラストが低下したり、色純度が低下したりする。また、3刺激値XYZをもとに、色度座標値x,yを求めた場合のx,yの値は、それぞれ0.3〜0.36にすることによって、プラズマディスプレイの発光色の色純度を向上させることができる。
【0017】
光源色の3刺激値XYZおよびそれらから求められる色度座標x,yは、JIS Z8722(物体色の測定方法)、JIS Z8717(蛍光物体色の測定方法)、JIS Z8701(XYZ表色系およびX10Y10Z10表色系における色の表示方法)に規定された方法で求められる。
【0018】
これらの刺激値や色度座標を測定する装置としては、一般的に、カラーコンピューターが用いられるが、本発明で表示する値は、スガ試験機(株)製カラーコンピューターSM−7−CH(光学条件45゜照明、0゜受光)を用いて測定したものである。
【0019】
測定試料は、80mm角、厚さ2.6mmの高歪み点ガラス基板(旭硝子社製、PD−200)上に感光性導電ペーストをスクリーン印刷で10μmに塗布し、590℃で15分焼成して電極膜を作製する。この電極膜試料を用い、C光(北窓光)2度視野、基準として白色板(標準品として硫酸バリウム、X=91.06,Y=93.01,Z=106.90のものを使用)を用いて測定する。測定は、零点合わせ(測定孔に試料押さえ板をおいてチェック)−標準合わせ(測定孔に白色板をおいてチェック)を行なった後、12mmφの測定孔を有する試料台に電極膜試料面を光照射方向にして置き、そのガラス基板側に白色板を重ねて測定した。測定は位置を変えて3点の測定を行ない平均値を測定値とする。
【0020】
本発明の黒色を有する電極は、微細パターンの形成が可能で、薄膜で接着強度が高い電極パターンを与えるのに好適な感光性導電ペーストを用いて形成することができる。この感光性導電ペーストには、電極を黒色化するためのRu、Mn、Ni、Cr、Fe、Coの群から選ばれた少なくとも1種の金属またはその酸化物を付着・被覆させたAg、Au、Pd、NiおよびPtの群から選ばれた少なくとも1種を含有する導電性の金属粉末、ガラスフリットおよび感光性有機成分を主な成分として含有するものである。これらの金属の中で、Ru、Ni、Coの金属または酸化物は、黒色添加剤として低抵抗であるため電極の抵抗値を低く維持でき、また、感光性樹脂と相性が良くゲル化反応しにくいので特に好ましく用いられる。
【0021】
本発明の黒色を呈する電極は、導電ペースト中の導電粉末の粒子サイズ・形状・粒度分布・含有量、黒色化に用いる金属または金属酸化物の種類・添加量・添加方法、ガラスフリットの含有量や粒子サイズ・分布、感光性有機成分中に含有される感光性樹脂の種類・含有量および有機成分の種類・量などを厳密に制御することによって得られるものである。焼成時の有機成分の蒸発性(脱バインダー性)、焼成収縮率などが電極の特性に微妙に影響を与えるので、導電性粉末、黒色化のための金属またはその酸化物、ガラスフリットおよび有機成分を選択し、焼成条件を選ぶ必要がある。
【0022】
本発明で使用される導電性粉末、すなわち電極の材料は、Ag、Au、Pd、NiおよびPtの群から選ばれる少なくとも1種を含むもので、ガラス基板上に600℃以下の温度で焼き付けできる理論抵抗値の低い導体粉末である。これらのうち、特にAgおよびNiが好ましい。またこれらは、単独または2元系あるいは3元系の混合粉末として用いることができる。
【0023】
これらの導電性粉末の平均粒子径は、好ましくは0.5〜3.0μm、より好ましくは0.5〜2.0μmである。粒子径が0.5μm未満になるとパターン形成の際の光の透過性が悪くなり、電極の線幅60μm以下の微細パターンの形成が困難になる。また、3.0μmより大きくなるとペースト塗布膜表面が粗くなり、厚さ5μm以下の薄膜導体のパターン精度や厚さ・寸法精度が低下する。
【0024】
また本発明では、黒色電極の厚みが1〜5μmであることが好ましい。より好ましくは、1.5〜2.5μmである。特に、プラズマデディスプレイ用電極では、銀電極上に誘電体ガラス層を形成するが、電極厚みが5μmを越えると銀電極と誘電体層との熱膨張係数の不一致により、誘電体層中に亀裂が発生するようになる。また、誘電体層表面の平滑性が損なわれ、隔壁形成不良の原因となる。
【0025】
導電性粉末の比表面積は、0.35〜3.5m2/gであることが好ましく、0.8〜2.5m2/gであることがより好ましい。0.35m2/g未満では、電極パターンの精度が低下する。また、3.5m2/gを越えると粉末の表面積が大きくなり過ぎて、露光の際に紫外線が散乱され、ペースト塗布膜の下部までの光反応が十分に行われなくなり、断面形状不良や現像時に剥がれが生じたりして歩留まりが悪くなる。
【0026】
本発明で用いられる導電性粉末の形状は、特に限定されないが、より緻密な導体膜を形成した方が抵抗が低くなるので、タップ密度の大きな粒状または球状の粒子が好ましい。導電性粉末のタップ密度は、2.5〜5.5g/cm3、より好ましくは3.0〜4.5g/cm3の範囲である。タップ密度がこの範囲にあると露光に用いられる紫外線の透過率がよく、電極パターンの断面形状や精度が向上する。さらに、ペーストの塗布後の膜のレベリング性がよくなり、緻密な膜が得られる。
【0027】
導電性粉末の形状は、粒状、球状のものが好ましく使用できるが、単分散粒子で、凝集がなく、球状であることがより好ましい。この場合、球状とは球形率が90個数%以上が好ましい。球形率は、粉末を光学顕微鏡で300倍の倍率で撮影し、このうち計数可能な粒子を計数し、球形のものの比率を表すものである。球状であると、露光時に紫外線の散乱が少なくなり、高精度のパターンが得られる。
【0028】
本発明において導電性粉末は、好ましくはRu、Mn、Ni、Cr、FeおよびCoの群から選ばれた少なくとも1種の金属または金属酸化物を表面に化学メッキして使用される。すなわち、上記の金属または金属酸化物を、導電性粉末の表面に化学メッキした後、400〜500℃で30分〜数時間焼成することにより、導電性粉末の黒色化が可能となる。具体的には、所望の金属塩または金属錯体の水溶液に導電性粉末を分散しておき、この分散液に還元剤を添加して水溶液に溶解している金属成分を析出させ、その後焼成することにより析出した金属を酸化し、黒色とする。金属酸化物の添加量が少ない場合は、導電性粉末の表面に金属酸化物の粉末が均一に点々と付着する。添加量が多い場合は均一に被覆され、薄膜が形成される。この際、用いる導電性粉末の平均粒径は、0.5〜2μmであることが被覆の容易さから好ましい。
【0029】
付着または被覆するために好ましく用いられる金属塩または金属錯体は、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Coの塩または錯体であり、水溶性であれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン化物、シアン化物、硫酸塩、硝酸塩、アンミン錯体、ニトロシル錯体、カルボニル錯体、アクア錯体が好ましい。例えば、Ruの場合、2RuCl2(OH)・7NH3・3H2O、RuO2(NH3)2(OH)2、(NH4)2RuO4、Ru(NO)Cl2・H2O、Ru(NO)Br2・H2O、Ru(NO)I3などが好ましい。
【0030】
付着または被覆する金属または金属酸化物は、導電性粉末の5〜15重量%であることが、黒色度、パターン形成性、抵抗値、および焼結性が優れているので好ましい。5重量%未満では、白色に近づきY値が40以上になるため、コントラスト向上の効果がない。15重量%より多くなると、電極膜の比抵抗が高くなり過ぎ、また焼結性が低下する。このため緻密な膜が得られず、接着強度が低下するようになり好ましくない。また、黒色度が強くなり過ぎて、紫外線が下部まで到達しなくなり、パターン形成性が低下するので好ましくない。
【0031】
本発明のプラズマディスプレイ用電極を得るために用いられる感光性導電ペーストには、ガラス基板への接着性を高めるために0.5〜5重量%のガラスフリットを含有させることが好ましい。より好ましくは1〜3重量%であり、さらに好ましくは1〜2重量%である。PDPの電極の低抵抗化・薄膜化を図るにはガラスフリットの量は少ないほうが好ましい。ガラスフリットは電気絶縁性なので、含有量が5重量%を超えると電極の抵抗が増大したりするので好ましくない。また、ガラスフリットの量が多くなると、4μm以下の薄膜の導体では、導電粉末とガラスフリットの熱膨張係数の違いによる膜剥がれが起る。また0.5重量%未満では、電極膜とガラス基板との強固な接着強度が得られ難い。ガラスフリットを添加しなくとも電極パターンは基板に密着しているが、接着力が弱く振動、衝撃などで剥離しやすくなる。特に、ガラス基板などの低温焼成基板では600℃以下で焼成するため導電性粉末が完全に焼結せず、密着力が不足する。ガラスフリットは、電極と基板界面との接着力を高める効果を有するとともに、導電性粉末を焼結するための焼結助剤や導体抵抗を下げる効果があるため重要な成分である。
【0032】
ガラスフリットの軟化点は、焼成温度以下であることが必要である。ガラスフリットのガラス転移点および軟化点は、それぞれ400〜500℃、450〜550℃であることが好ましい。より好ましくは、それぞれが440〜500℃、460〜530℃である。ガラス転移点および軟化点がそれぞれ400℃、450℃未満では、ポリマやモノマなどの感光性有機化合物が熱分解する前にガラスの焼結が始まり、有機化合物の脱バインダーがうまくいかず、焼結後に残留炭素となり、電極剥がれの原因となり、緻密かつ低抵抗の導体膜が得られないので好ましくない。また、ガラス転移点、軟化点がそれぞれ500℃、550℃を超えるガラスフリットでは、600℃以下の温度で焼き付けるときに導体膜とガラス基板とで十分な接着強度や緻密な膜が得られない。
【0033】
ガラスフリットの粉末粒子径は、平均粒子径が0.5〜1.2μmおよびトップサイズが2.5μm以下であることが好ましい。平均粒子径0.5μm未満では、ガラスフリットの粒子サイズが小さくなり過ぎて紫外線が未露光部まで散乱され、導体膜のエッジ部・端部の光硬化が起こり、完全に現像できなくなる。このため、導体膜のパターンの切れ・解像度が低下する。平均粒子径およびトップサイズがそれぞれ1.2μmおよび2.5μmを超えると、粗大なガラスフリットと導電性粉末との熱膨張係数が異なることにより、特に4μm以下の薄膜では、導体膜の接着強度が低下するために膜剥がれが起る。また、粗大ガラスフリットが導体膜中に残留し、接着強度が低下する。
【0034】
ガラスフリットの50〜400℃の温度範囲での熱膨張係数α50〜400は、75〜90×10-7/Kであることが好ましい。電極が形成されるガラス基板の熱膨張係数は80〜90×10-7/Kなので、ガラスフリットのα50〜400がこの範囲にないと、ガラス基板上に焼き付けた導体膜が基板とガラスフリットとの熱膨張係数の違いによる膜剥がれが冷却時に起る。
【0035】
本発明のガラスフリットは酸化物換算表記で酸化ビスマスを好ましくは30〜95重量%含有するものである。より好ましいガラスフリットの酸化物換算表記での組成と添加量は、
酸化ビスマス 30〜85重量%
酸化珪素 5〜30重量%
酸化ホウ素 5〜20重量%
酸化ジルコニウム 3〜10重量%
酸化亜鉛 2〜20重量%
酸化アルミニウム 1〜 5重量%
であり、この組成範囲からなるものを80重量%以上含有し、かつアルカリ金属の酸化物を実質的に含有しないアルカリフリーのガラスフリットであることを特徴とする。実質的に含有しないとは、含んだとしても0.5重量%以下である。
このようなガラスフリット組成を用いることにより、感光性有機成分のゲル化反応を起し易い酸化鉛などを用いることなく好ましいガラスフリットを得ることができ、ゲル化反応によるペーストの粘度上昇やパターン形成ができない問題を回避でき、安定な導電ペーストを得ることができる。
【0036】
酸化ビスマスは30〜95重量%の範囲で配合することが好ましく、30〜85重量%がより好ましい。30重量%未満の場合は、導電ペーストをガラス基板上に焼き付けするときに、ガラス転移点や軟化点を制御するのに十分でなく、基板に対する導体膜の接着強度を高めるのに効果が少ない。また、95重量%を超えるとガラスフリットの軟化点が低くなり過ぎてペースト中のバインダーが熱分解する前にガラスフリットが溶融する。このためペーストの脱バインダー性が悪くなり、導体膜の焼結性が低下し、また基板との接着強度が低下するので添加量の上限を85重量%にすることがより好ましい。
【0037】
酸化珪素は5〜30重量%の範囲で配合することが好ましい。5重量%未満の場合は基板上に焼き付けた時の接着強度の低下やガラスフリットの安定性が低下し、また、30重量%より多くなると耐熱温度が上昇し、600℃以下でガラス基板上に焼き付けが難しくなる。
【0038】
酸化ホウ素は5〜20重量%の範囲で配合することが好ましい。酸化ホウ素は導電ペーストの電気絶縁性、接着強度、熱膨張係数などの特性を損なうことのないように焼き付け温度を550〜600℃の範囲に制御するために配合される。5重量%未満では密着強度が低下し、また20重量%を超えるとガラスフリットの安定性が低下する。
【0039】
酸化ジルコニウムは3〜10重量%の範囲で配合され、ガラスフリットの耐酸性を向上させる。すなわち、本発明のガラスフリット組成を用いるとガラスフリットが感光性有機成分と反応し、ペーストがゲル化反応を起し易くなるが、酸化ジルコニウムを添加するとゲル化が抑制される。3重量%未満ではゲル化を抑制するのに効果が少なく、10重量%を超えるとガラスの耐熱温度が高くなり過ぎてガラス基板上への焼き付けが難しくなる。
【0040】
酸化アルミニウムは1〜5重量%の範囲で配合される。酸化アルミニウムの添加がこの範囲にあるとペーストのゲル化に対する安定性、ガラスフリットの熱安定性、熱膨張係数、ガラス転移点、軟化点を制御できるので好ましい。
【0041】
酸化亜鉛は2〜20重量%の範囲で配合することが好ましい。2重量%未満では導電ペーストをガラス基板に焼き付ける時に、焼き付け温度を制御する効果が少ない。20重量%を超えるとガラスの耐熱温度が低くなり過ぎてガラス基板上への焼き付けが難しくなる。
【0042】
ガラスフリット粉末には、プラズマの放電特性を劣化させる酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化バリウムおよび酸化カルシウムなどのアルカリ金属酸化物および/またはアルカリ土類金属を実質的に含まないことが好ましい。ガラスフリット中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属と電極中の銀とが反応し、黄色化する問題がある。この原因として、銀がアルカリイオンあるいはアルカリ土類金属とイオン交換反応し、銀がコロイド化して黄変色すると推定されている。アルカリあるいはアルカリ土類金属酸化物が含有された場合でも0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0043】
また、ガラスフリット中に酸化チタンなどを含有することによって熱膨張係数、ガラス転移点、軟化点を制御できるが、その量は10重量%未満であることが好ましい。
【0044】
感光性導電ペーストには、感光性有機成分が必須である。感光性有機成分として、光不溶化型のものと光可溶化型のものがあり、いずれも使用可能であるが、本発明においては、取扱いの容易さや品質設計の容易さから光不溶化型が用いられる。分子内に不飽和基などを1つ以上有する官能性のモノマ、オリゴマ、ポリマを含有するタイプを用いるのが好ましい。すなわち、感光性有機成分には、感光性モノマ、感光性オリゴマおよび感光性ポリマのうち少なくとも1種から選ばれた感光性成分の他に、バインダー、光重合開始剤、増感剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、その他の添加剤を必要に応じて加えることができる。感光性有機成分および各種の有機成分からなる添加剤は、脱バインダー性と関連して電極の特性に影響を与えるので、有機成分の種類と量は、その熱分解性を考慮して選択することが重要である。
【0045】
感光性モノマとしては、活性な炭素−炭素二重結合を有する化合物が用いられるが、官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用される。多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物を有機成分中に10〜80重量%含有させることが好ましい。アクリレートまたはメタクリレート官能基を有する多官能化合物としては多様な種類の化合物が開発されているので、それらから反応性、現像性、熱分解性などを考慮して選択することが可能である。
【0046】
感光性導電ペーストを構成する感光性有機成分として、光反応で形成される硬化物の物性の向上やペーストの粘度の調整などの役割を果たすと共に、未露光部の溶解性をコントロールする機能を果たす成分として、オリゴマもしくはポリマが用いられる。これらのオリゴマもしくはポリマは、炭素−炭素二重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られた炭素連鎖の骨格を有するものである。共重合するモノマとしては、不飽和カルボン酸などが有用であり、感光後に未露光部分をアルカリ水溶液で現像できる感光性ペーストを与えることができる。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などがあげられる。
【0047】
このようにして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸基を有するオリゴマもしくはポリマの酸価は好ましくは30〜160、より好ましくは90〜120の範囲になるようにコントロールするのがよい。酸価が160を越えると、現像許容幅が狭くなる。また、酸価が309lより小さくなると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになる。
【0048】
本発明では、感光性オリゴマもしくはポリマ成分として、分子内にカルボキシル基と不飽和二重結合を含有する重量平均分子量500〜10万のオリゴマもしくはポリマを用いることが最も好ましい。より好ましくは、1万から5万である。不飽和二重結合を導入するには、上記のようなカルボキシル基を側鎖に有するオリゴマもしくはポリマに、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させる方法が適用される。アルカリ水溶液現像性のためのカルボキシル基数とオリゴマもしくはポリマを感光性にするエチレン性不飽和基数とは、反応条件により自由に選択することができる。
【0049】
感光性導電ペーストを構成するために、バインダー成分が必要な場合には、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、それらの共重合体などを用いることができる。
【0050】
本発明の感光性ペーストの有機成分は、感光性モノマ、感光性オリゴマもしくはポリマあるいは場合によりバインダーを含有するが、これらの成分はいずれも活性光線のエネルギー吸収能力はないので、光反応を開始するためには光重合開始剤や増感剤を加える必要がある。
【0051】
感光性ペーストによるパターン形成は、露光された部分の感光性成分(モノマ、オリゴマ、ポリマ)を重合および架橋させて現像液に不溶性にすることであり、用いられる感光性を示す官能基はラジカル重合性であるため、光重合開始剤は活性ラジカル種を発生するものから選んで用いられる。光重合開始剤には、1分子系直接開裂型、イオン対間電子移動型、水素引き抜き型および2分子複合系など機構的に異なる種類があるが、本発明の感光性ペーストでは主として、1分子系直接開裂型から選ばれた化合物が用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテルやα,α−ジメトキシ−α−モルフォリノアセトンフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトンフェノンなどが実用的に広く用いられる。また、過酸化物、ホスフィンオキシド、硫黄化合物およびハロゲン化合物なども公知であり、これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性成分に対して好ましくは0.1〜30重量%の範囲で添加され、より好ましくは、2〜20重量%である。
【0052】
光重合開始剤と共に増感剤を使用し、感度を向上させたり(化学増感)、反応に有効な波長範囲を拡大する(分光増感)ことができる。増感剤の作用機構にも種々のものがあるが、三重項増感剤と称されるものが最もよく使われる。それらの中には、炭化水素系化合物、アミノ・ニトロ化合物、キノン類、キサントン類、アンスロン類、ケトン類および有機色素類がある。これらの中には光重合開始剤としての作用を有するものも含まれている。本発明で用いる感光性ペーストでは、キサントン類から選ばれた化合物が好ましく使用されるが、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが例示される。これらは1種または2種以上使用することができる。
【0053】
増感剤を本発明の感光性ペーストに添加する場合、その添加量は感光性成分に対して通常0.1〜10重量%、より好ましくは2〜10重量%である。
【0054】
光重合開始剤および増感剤が、少なすぎると十分な感度が得られないが、多くすることによって感度を高めることは可能であるが、硬化した部分の重合度合が十分に高くならず、露光部の残存率が小さくなる恐れがあり、また、パターン間での不要な硬化が発生して残膜が形成されるなどの不都合が起る。光重合開始剤と増感剤を適量ずつ使用することが適度の感度で優れた形状を示すパターンを形成する上で重要である。
【0055】
感光性導電ペーストには、保存時の熱安定性を向上させるための熱重合禁止剤を添加することができる。用いられる熱重合禁止剤は一般的なものであり、ヒドロキノン、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどである。その添加量は、感光性導電ペースト中に、通常、0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。感光性導電ペーストには、必要に応じて可塑剤を加えること、ペーストの安定性を高めるために酸化防止剤を加えること、ペーストの塗布特性のために増粘剤を加えることなどができる。
【0056】
感光性導電ペーストの現像に際して、アルカリ水溶液を現像液に用いることが可能なことは、工程上好都合であるが、そのために存在するオリゴマもしくはポリマ中のカルボキシル基とペースト中のガラスフリットに微量存在する酸化カルシウム、酸化バリウム、二三酸化鉄、酸化マグネシウムなどとが反応し、ペーストを短時間にゲル化し、粘度が上昇したり、塊になってペーストの塗布ができなくなったりするという問題が起る。これはポリマのイオン架橋反応によるゲル化と推定されるが、このような反応を防止するために、悪い影響を与えない範囲で安定剤を添加してゲル化防止を図ることが好ましい。すなわち、ゲル化反応を引き起こす金属あるいは金属酸化物粉末との錯体形成あるいは酸官能基との塩形成などに効果のある化合物で粉末を表面処理し、感光性導電ペーストを安定化させる。そのような安定化剤としては、トリアゾール化合物が好ましく用いられる。トリアゾール化合物の中でも特にベンゾトリアゾールが有効である。
【0057】
ベンゾトリアゾールによるガラスフリット粉末の表面処理は、次のように行なわれる。すなわち、ガラスフリットに対し好ましくは0.2〜4重量%、より好ましくは0.4〜3重量%のベンゾトリアゾールを有機溶媒に溶解した後、ガラスフリット粉末を十分に浸すことができるように溶液中に3〜24時間浸漬する。その後、20〜30℃で自然乾燥して溶媒を蒸発させてトリアゾール処理を行なった後、50〜80℃で5〜12時間真空乾燥して処理粉末を作製する。
【0058】
感光性導電ペーストに含まれる微量水分も、ペーストのゲル化を促進する要因となる。これを防止するため、感光性有機成分として加えられるすべての成分を完全に脱水することが好ましい。水分の除去は、固体か液体かにより異なるが、真空乾燥、モレキュラーシーブ処理、ロータリーエバポレータなどで行う。さらに、ガラスフリットの場合は、150〜350℃で5〜15時間乾燥して水分を十分除去するとゲル化が防止できるので好ましい。
【0059】
感光性導電ペーストをガラス基板に塗布するときの粘度を、塗布方法に応じて調整するために、有機溶媒が使用される。この時使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトンなどがある。これらの有機溶媒は、単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0060】
感光性導電ペーストの好ましい組成範囲を例示すると、黒色化のための金属または金属酸化物を5〜25重量%が含有した導電性粉末80〜90重量%、ガラスフリット1〜3重量%、感光性モノマとポリマの合計量が19〜9重量%であり、光重合開始剤は感光性モノマとポリマの合計量に対して5〜20重量%となる。このような範囲の組成を有する感光性導電ペーストは、露光時において紫外線がよく透過し、光硬化の機能が十分に発揮され、現像時における露光部の膜強度が高くなり、微細な解像度を有する電極パターンが形成できる。焼成後の導体膜の接着強度が高くなるので好ましい。
【0061】
ペーストには、上記の導電性粉末、ガラスフリット、感光性有機成分の他に、必要に応じて増感剤、可塑剤、分散剤、安定化剤、チキソトロピー剤(増粘剤)、有機または無機の沈殿防止剤などを添加し、混合物のスラリーとする。所定の組成となるように調整されたスラリーはホモジナイザなどの攪拌機で均質に混合した後、3本ローラや混練機で均質に分散し、ペーストを作製する。
【0062】
ペーストの粘度は導電性粉末、ガラスフリットの組成・種類、感光性成分、チキソトロピー剤、有機溶媒、可塑剤などの添加割合で調整されるが、その範囲は、5千〜15万cps(センチ・ポイズ)である。例えば、ガラス基板への塗布をスクリーン印刷法やバーコータ、ローラコータ、アプリケータで1〜2回塗布して膜厚3〜10μmを得るには2千〜5万cpsが好ましい。より好ましくは、5千〜2万cpsである。
【0063】
感光性導電ペーストをガラス基板上に塗布する場合、塗布面と塗布膜との密着性を高めるために基板の表面処理を行なうとよい。表面処理液としては公知のシランカップリング剤や有機金属類を有機溶媒で希釈したものが用いられる。このような表面処理液をスピナーなどで基板上に均一に塗布した後、80〜140℃で10〜60分間乾燥することによって表面処理ができる。
【0064】
感光性導電ペーストを基板上に塗布した膜を、70〜120℃で20〜60分加熱し乾燥して溶媒類を蒸発させてから、フォトリソグラフィ法により、電極パターンを有するネガフィルムまたはクロムマスクなどのマスクを介して紫外線を照射して露光し、感光性導電ペーストを光硬化させる。
【0065】
露光に使用される活性光線は、紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯およびハロゲンランプなどが使用される。露光条件は感光性導電ペーストの塗布厚みによって異なるが、5〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜30分間露光を行なうことが好ましい。
【0066】
露光後、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行なうが、この場合、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などが用いられる。現像液には、感光性ペースト中の有機成分、特にオリゴマもしくはポリマが溶解可能な溶液が用いられる。本発明で用いられる感光性導電ペーストのオリゴマもしくはポリマは、カルボキシル基を側鎖に有することを特徴としているのでアルカリ水溶液で現像することができる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムの水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去し易いので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがあげられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が完全に除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部のパターンを剥離させたり、侵食したりするおそれがある。現像時の温度は、20〜50℃で行なうことが工程管理上好ましい。
【0067】
感光性導電ペーストの塗布膜から露光・現像の工程を経て形成された電極パターンは、次に焼成炉で焼成されて、有機成分を熱分解して除去し、同時にガラスフリットを溶融させてガラス基板との密着性を確保し電極が形成される。
【0068】
焼成は、例えば540〜600℃の温度で10〜60分間行なわれる。540℃未満では、焼成が不十分なために導体膜の緻密性が低下し、比抵抗が高くなり、また、ガラス基板との接着強度が低下するので好ましくない。600℃を超えるとガラス基板が熱変形し、パターンの平坦性が低下する。
【0069】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の濃度は断りのない場合は重量%である。
【0070】
[実施例1]
黒色化した導電性粉末として、粉末表面にRu換算で、7重量%になるように均一にRuO2を被覆した銀粉末を使用した。被覆前の銀粉末の特性は次のとおりである。単分散粒状、平均粒子径2.0μm、比表面積1.3m2/gおよびタップ密度4.15g/cm3であった。Ruの被覆は、Ag粉末を分散させた水溶液中にRuCl3を原料としたRuのキレート化合物を添加し、還元剤を加えてキレートを還元することによって行なった。このままでは不純物も多く、Ruが水酸化物の状態であるため、十分水洗し乾燥した後、400℃で2時間加熱処理をすることによって均一なRuO2被覆Ag粉末を得た。
【0071】
次に、RuO2を被覆した導電性粉末88重量部、ガラスフリット3重量部、感光性ポリマ(X−4007)8重量部、感光性モノマ(トリメチロールプロパントリアクリレート)5重量部、光重合開始剤(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1)2重量部、可塑剤(ジブチルフタレート)0.5重量部、チキソ剤(2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテートに溶解したSiO2(濃度15%))4重量部および溶媒(γ−ブチロラクトン)10重量部を溶解・混合・分散し3本ローラで均質に混練して黒色化した感光性銀ペーストを作製した。ペースト粘度は、8000cpsであった。
【0072】
ペーストに用いたガラスフリットの組成と特性は次のとおりである。
【0073】
ガラス成分(酸化物換算表記、%)は、酸化ビスマス(66.9)、酸化珪素(10.0)、酸化ホウ素(11.8)、酸化ジルコニウム(4.8)、酸化亜鉛(2.6)および酸化アルミニウム(2.8)のものを用いた。
【0074】
ガラス粉末の特性は、ガラス転移点455℃、軟化点484℃、平均粒子径(D50)0.8μm、D901.3μm、トップサイズ2.5μmおよびα50〜40082×10-7/Kであった。
【0075】
この感光性導電ペーストを25cm×35cm角のソーダガラス基板にスクリーン印刷法で塗布した。塗布は380メッシュのポリエステルスクリーン製印刷版を用い、厚み6μmの塗布膜を作製した。次に、塗布膜を80℃で80分間乾燥した。
【0076】
電極パターン(ストライプ状、ピッチ140μm、線幅40μm)を有するネガ型のフォトマスクを介して出力50mW/cm2の超高圧水銀灯で30秒間の紫外線露光を行なった。
【0077】
現像は、30℃のモノエタノールアミン0.2%水溶液のシャワーで行ない、露光されなかった部分を除去した。その後、純水のシャワーで現像液を洗い流し、80℃で20分間乾燥した。焼成は、250℃/時間の速さで昇温し、最高温度590℃、15分間保持して行なった。さらに、上記と同じ条件で、XYZ表色系の3刺激値測定用および比抵抗測定用電極試料を作製した。
【0078】
このようにして得られた電極は、膜厚が4.0μmであり、電極ラインの断面が矩形であり、Y値10、色度座標値x,yが0.31、0.33で、黒色度は高かった。また、比抵抗値は、15μΩ・cmであった。プラズマディスプレイとしてのコントラストは120:1であった。
【0079】
[実施例2]
被覆前の銀粉末として、単分散球状、平均粒子径1.4μm、比表面積1.1m2/gおよびタップ密度4.17g/cm3のものを用いた以外は実施例1と同様の操作を行なった。
【0080】
ペースト粘度は、6000cpsで、電極塗布厚みが4.0μm、焼成後の厚みが2.5μmであった。パターン形成性は良好で、電極ラインの断面は矩形であった。Y値は10であり、色度座標値x,yが0.31、0.33で、黒色度は高かった。比抵抗値は、15μΩ・cmであり、実用に耐えうるものであった。プラズマディスプレイとしてのコントラストは120:1であった。
【0081】
[実施例3]
被覆前の銀粉末として、単分散球状、平均粒子径1.4μm、比表面積1.1m2/gおよびタップ密度4.17g/cm3のものを用い、粉末表面にRu換算で、10重量%になるように均一にRuO2を被覆した銀粉末を使用した。その他は実施例1と同様の操作を行なった。
【0082】
ペースト粘度は、7500cpsで、電極塗布厚みが4.5μm、焼成後の厚みが2.8μmであった。パターン形成性は良好で、電極ラインの断面は矩形であった。Y値は8であり、色度座標値x,yが0.30、0.35で、黒色度は高かった。比抵抗値は、20μΩ・cmであり、実用に耐えうるものであった。プラズマディスプレイとしてのコントラストは150:1であった。
【0083】
[実施例4]
黒色化するための金属酸化物としてMnO27%を銀粉末表面に均一に被覆した以外は、実施例1と同様にして電極を作製した。ペースト粘度は、10000cpsであった。電極塗布厚みが5μm、焼成後の厚みが3.0μmであった。パターン形成性は良好で、電極ラインの断面は矩形であった。Y値は12であり、色度座標値x,yが0.31、0.32で、黒色度は高かった。比抵抗値は、18μΩ・cmであり、実用に耐えうるものであった。プラズマディスプレイとしてのコントラストは120:1であった。
【0084】
[実施例5]
被覆前の銀粉末として、単分散球状、平均粒子径1.4μm、比表面積1.1m2/gおよびタップ密度4.17g/cm3のものを用い、粉末表面にRu換算で、7重量%になるように均一にRuO2を被覆した銀粉末を使用した。さらにガラスフリットとして、次の組成と特性を有するものを用いた。その他は実施例1と同様にして電極を作製した。
【0085】
ガラス成分(酸化物換算表記、%)は、酸化ビスマス(47.9)、酸化珪素(7.0)、酸化ホウ素(14.3)、酸化亜鉛(15.4)および酸化バリウム(15.4)のものを用いた。
【0086】
ガラス粉末の特性は、ガラス転移点が469℃、軟化点が495℃、平均粒子径0.8μm、D901.5μm、トップサイズ3.0μmおよびα50〜40085×10-7/Kであった。
【0087】
上記のように導電性粉末およびガラスフリットの成分を変えた以外は実施例1を繰り返した。ペーストの粘度は6000cpで、電極の塗布厚みが4μm、焼成後の厚みが2.5μmであった。パターン形成性は良好で、電極ラインの断面は矩形であった。Y値は10であり、色度座標値x,yが0.31、0.33で、黒色度は高かった。比抵抗値は、10μΩ・cmであり、実用に耐えうるものであった。プラズマディスプレイとしてのコントラストは120:1であった。
【0088】
[実施例6]
黒色化した導電性粉末として、表面をRuO2 12%で被覆したニッケルを使用した。Ni粉末として、単分散で平均粒子径3.5μm、比表面積0.44m2/g、タップ密度4.66g/cm3のものを使用した。粉末を変えた以外は、実施例1と同様にして、電極の作製を行なった。ペースト粘度は10000cpで、塗布厚みが6μm、焼成後の厚みが3.5μmであった。
【0089】
パターン形成性は良好で、電極ラインの断面は矩形であった。Y値は7であり、色度座標値x,yは0.32、0.34であった。また、比抵抗値は、20μΩ・cmであり、実用できるレベルであった。プラズマディスプレイとしてのコントラストは150:1であった。
【0090】
[比較例1]
黒色化した導電性粉末として、粉末表面にRuO2を27%になるように均一に被覆した銀を使用した以外は、実施例3と同様にして電極を作製した。電極の塗布厚みは、5μmであった。この場合のパターン形成性は不良であった。Y値は3.0となり、黒色度が高くなりすぎた。また、比抵抗値も150Ω・cmであり、プラズマディスプレイとしての評価ができなかった。
【0091】
[比較例2]
黒色化した導電性粉末として、粉末表面にRuO2を3%になるように被覆した銀を使用した以外は、実施例3と同様にして電極を作製した。電極の塗布厚みは5μmであった。この場合のパターン形成性は良好であった。Y値は48となり灰色であった。プラズマディスプレイのコントラストは 50:1 であった。
【0092】
(略記号の説明)
X−4007:40%メタクリル酸、30%メチルメタクリレート、30%スチレンからなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加重合させた重量平均分子量16,000、酸価104のポリマ。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、XYZ表色系における刺激値Yが5〜40であり、色度座標値x,yがそれぞれ0.3〜0.36である電極が得られ、表示画面のコントラストが高く、カラー表示の色純度の高いプラズマディスプレイが得られる。
Claims (6)
- 基板上に電極を形成したプラズマディスプレイであって、該電極のXYZ表色系における刺激値Yが5〜40であり、かつ該電極が、Ru、Mn、Cr、FeおよびCoの群から選ばれた少なくとも1種の金属もしくはそれらの酸化物を合計で5〜15重量%含有することを特徴とするプラズマディスプレイ。
- 前記電極の色度座標値x,yの値がそれぞれ0.3〜0.36であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ。
- 前記電極が、Ru、およびCoの群から選ばれた少なくとも1種の金属もしくはそれらの酸化物を合計で5〜15重量%含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のプラズマデイスプレイ。
- 前記電極の材料が、Ag、Au、Pd、NiおよびPtの群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイ。
- 前記電極の材料が、AgおよびNiの群から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ。
- 前記電極の厚みが、1〜5μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマディスプレイ。
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