JP4453161B2 - 感光性ペースト、ディスプレイおよびプラズマディスプレイ用部材 - Google Patents

感光性ペースト、ディスプレイおよびプラズマディスプレイ用部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性ペーストに関するものであり、さらに感光性ペーストを用いたプラズマディスプレイパネル(PDP)、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電子放出素子または蛍光表示管を用いたディスプレイや有機電界発光素子(エレクトロルミネッセンス)を用いたディスプレイなどの画像表示装置、プラズマディスプレイ用部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
大きく重いブラウン管に代わる画像表示装置として、軽い薄型のいわゆるフラットパネルディスプレイが注目されている。フラットパネルディスプレイとして液晶ディスプレイ(LCD)が盛んに開発されているが、これには画像が暗い、視野角が狭いといった課題が残っている。この液晶ディスプレイに代わるものとして自発光型の放電型ディスプレイであるPDPや電子放出素子または蛍光表示管を用いた画像表示装置は、液晶ディスプレイに比べて明るい画像が得られると共に、視野角が広い、さらに大画面化、高精細化の要求に応えられることから、そのニーズが高まりつつある。
【0003】
電子放出素子には、熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子がある。冷陰極電子放出素子には電界放出型(FE型)、金属/絶縁層/金属型(MIM型)や表面伝導型などがある。このような冷陰極電子源を用いた画像形成装置は、それぞれのタイプの電子放出素子から放出される電子ビームを蛍光体に照射して蛍光を発生させることで画像を表示するものである。この装置において、前面ガラス基板(フェースプレートともいう)と背面ガラス基板(素子基板ともいう)にそれぞれの機能を付与して用いるが、背面ガラス基板には、複数の電子放出素子とそれらの素子の電極を接続するマトリックス状の配線が設けられる。これらの配線は、電子放出素子の電極部分で交差することになるので絶縁するための絶縁層(誘電体層)が設けられる。さらに両基板の間で耐大気圧支持部材として隔壁が形成される。電子放出素子を用いた画像表示装置は、平面でかつ明るく見やすいなどの利点を有している。
【0004】
蛍光表示管(VFD)の構造と電気的動作機構は、CRTと異なりVFDでは数十Vの電圧による数十mAの低速電子流で蛍光体を励起する。このようなVFD素子を用いたディスプレイにおいても、発光領域を区切るため格子状などの隔壁が形成される。
【0005】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合して発光する有機電界発光素子は、薄型、低駆動電圧下での高輝度発光、蛍光材料を選ぶことにより多色発光が特徴であり注目されている。有機電界発光素子の作製において、有機発光層のパターニング形成法として隔壁を作製し、これを活用する方法が用いられている。
【0006】
PDPは、液晶ディスプレイに比べて高速の表示が可能であり、かつ大型化が容易であることからOA機器および情報表示装置などの分野に浸透している。また、高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に設けられた隔壁で仕切られた放電空間内で対向するアノード電極およびカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、この空間内に封入されているガスから発生する紫外線を放電空間内に塗布された蛍光体に当てることによって表示を行うものである。
【0007】
プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイは、TFT−LCDのTFT(薄膜トランジスター)アレイ部分をプラズマチャネルに置き換えたもので、プラズマ部分以外は基本的にTFT−LCDと同じ構造である。また、プラズマ発生部分については、PDPにおける技術が適用されている。プラズマ発生部分は、高さ200μm程度、ピッチ480μm程度の隔壁で区切られている。
【0008】
これらの隔壁は、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、アディティブ(埋め込み)法、加圧成型法、型転写法、感光性ペースト法などの方法で形成される。スクリーン印刷法は、ガラスペーストをスクリーン印刷版によりパターン状に塗布する方法であり、隔壁形成の方法として最も一般的なものであるが、高精細で大画面を有するディスプレイへの適用には困難がある。サンドブラスト法はガラスペースト塗布膜上に形成したフォトレジストのパターンを利用して、ガラスペースト膜をサンドブラストして隔壁パターンを形成する。また、フォトレジストで形成した溝にガラスペーストを埋め込む方法やガラスペーストの塗布膜にパターンを有する金型を押し当てて隔壁パターンを形成する方法も提案されている。高精細で大面積化にも対応できる方法としてガラスペーストに感光性を付与して、紫外線などの活性光線を照射してパターニングを行う感光性ペースト法も開発されている。それぞれの隔壁形成方法は、目的とするディスプレイパネル用部材のサイズや隔壁パターンの精細度などにより選択して適用することができる。これらはいずれも隔壁パターンの形成方法であり、隔壁を得るには、さらに焼成工程を経ることが必要である。
【0009】
PDPの場合、蛍光体層からの発光効率を向上するため、特公平6−44452号公報では、ガラス粉末とそれと異なる屈折率を有する充填材との混合物を用いた隔壁の形成を提案されており、さらに、特開平8−138559号公報および特開平4−47639号公報には、形成された隔壁の表面または底面に、表示に必要な波長のみを反射し他は吸収する反射膜を形成する方法が提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公平6−44452号公報の方法は色純度や輝度の向上が十分でなく、また、このような組成物は、感光性ペーストを用いる隔壁形成法には不適切であった。さらに、特開平8−138559号公報および特開平4−47639号公報の方法は、反射率が未だ不十分であり、表示品質の向上は不十分であった。
【0011】
そこで、本発明者らは、隔壁を白色化し、反射率を高くしてディスプレイの輝度、色純度などの品質を高めることを検討した。隔壁の材料としては、ガラスやセラミックスなどからなる無機微粒子を用いており、隔壁の白色化により蛍光体層からの発光を反射し、輝度や色純度を向上させることができる。すなわち、隔壁を白色化して反射率を高めることにより、それぞれの蛍光体層の輝度が向上すると共に、隣の蛍光体層から発光する光を遮断することで、各発光色の色純度が向上するという効果が得られる。
【0012】
しかしながら、感光性ペーストを用いて得られる隔壁は、元来、光の透過性を高めた組成物を用いて隔壁パターンを形成することが必要であり、その結果、感光性ペーストのなかに含まれる無機粉末成分(ガラスおよびセラミックスを含む)と屈折率の異なる成分を添加するなどの手法を採用することが困難であり、得られた隔壁は白色度において十分でないことを見いだした。すなわち、隔壁の光透過率が高いため、隔壁側面や隔壁間の底面に塗布されている蛍光体層から発光される表示光の反射が不足し、さらに、隣の隔壁間の蛍光体層の表示光の洩れ込みが起こり、輝度が高く、色純度の良好なディスプレイが得られない。本発明者らは、感光性ペーストによる隔壁パターンの成形性を良好に維持しつつ同時に隔壁を用いたディスプレイの輝度を向上させることを目的として鋭意研究した。本発明の目的は、輝度の向上したディスプレイを提供可能な隔壁を形成するための感光性ペーストを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は無機微粒子と感光性有機成分とを6:4〜9:1の重量割合で含有する感光性ペーストであって、無機微粒子が低融点ガラス粉末50〜90重量%と、平均粒子径が0.003〜0.08μmであって、アルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリア、酸化錫およびシリカの群から選ばれた少なくとも一種を含むフィラーBを3〜50重量%含むことを特徴とする感光性ペーストであり、また該感光性ペーストを用いて形成した隔壁を有することを特徴とするPDP,PDLCディスプレイ、電子放出素子または蛍光表示管を用いたディスプレイまたは有機電界発光素子を用いたディスプレイであり、また該感光性ペーストを用いて形成した隔壁を有することを特徴とするプラズマディスプレイ用部材である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0015】
本発明の感光性ペーストは、無機微粒子と感光性有機成分を6:4〜9:1の重量割合で含有するものである。
【0016】
また、本発明の感光性ペーストは、厚み50μmの塗布膜を形成した場合の焼成前の全光線透過率が50%以上であり、その塗布膜を焼成した後の全光線反射率が50%以上であることが重要である。感光性ペースト塗布膜に対しては、隔壁パターンを形成するため紫外線を露光するが、その光はできるだけ多くを塗布膜底部まで透過させることが必須であり、塗布膜は光透過性が良好なことが必要条件である。その必要とされる全光線透過率は上記のように厚さ50μmの塗布膜で測定した値で50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上である。
【0017】
透過率測定において、全光線透過率(T1)から拡散透過率(T2)を差し引き、これを全光線透過率で除した値T3=(T1−T2)/T1を直進透過率として測定される。感光性ペーストの直進透過率は、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。
【0018】
さらに、感光性ペーストの厚さ50μmの塗布膜を焼成して得られた膜で測定した全光線反射率は50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。この焼成した膜の状態は、得られる隔壁の状態に相当する。隔壁はその側面および隔壁間の底部に形成されている蛍光体層からの発光を隔壁表面で反射して開口部からできるだけ多く放出して輝度を高めることが必要な役割の一つであり、また、発光が隣接する発光区域に洩れ出て色純度が低下するのを防止する役割をも有するため、反射率が高いことが効果的である。
【0019】
本発明でいう透過率および反射率は、いずれも島津製作所製の分光光度計(UV−3101PC)を用いて次のような条件で測定されたものである。
Figure 0004453161
【0020】
透過率測定の試料は、石英セル上に乾燥後厚みが50μmになるように感光性ペーストをスクリーン印刷法で塗布・乾燥したものであり、試料の上に石英セルをのせて、調製した。全光線透過率は、入射角0度で入射した光の全透過光を測定したものである。全光線透過率T1を測定した後、積分球の直進光を測定する部分(白板:出口窓にとりつける部分)を取り外し、直進する光を検出しないようにして拡散透過率T2(散乱などによって直進せずに透過した光の割合である)を測定する。T3は前述の式に従って算出される。
【0021】
反射率の測定に用いた試料は、透過率測定用試料を、570℃で15分間焼成した厚さ約30μmの膜である。全光線反射率は入射角8度で入射した光の全反射を測定したものである。
【0022】
本発明の感光性ペーストを構成する無機微粒子は、その粒度分布が、0.003〜0.08μmの範囲内にピークを有することが好ましい。これらの無機微粒子は、焼成工程で溶融する低融点ガラス粉末と焼成工程で溶融しないフィラーを含有するのが一般的であるが、それらの各成分を含めたものの粒度分布を測定した場合、0.003〜0.08μmの範囲内にピークを有するものであることが好ましい。より好ましくは0.005〜0.08μmの範囲内である。低融点ガラス粉末の粒度分布のピークは1.5〜6μmの範囲にあるものを使用した場合には、本発明で好ましく使用する無機微粒子の粒度分布は複数のピークを有するものとなる。
【0023】
低融点ガラス粉末などの粒度は、レーザー回折散乱法を利用した粒度分布計 (マイクロトラックHRA粒度分布計MODEL No.9320−X100)を用いて測定した。測定条件は下記の通り。
測定量 :1g
分散条件 :精製水中で1〜1.5分間超音波分散。分散しにくい場合は0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中で行う。
粒子屈折率:無機粉末の種類によって変更する。
溶媒屈指率:1.33
測定数 :2回。
【0024】
より微細な粒子の場合、体積分布出力の超微粒子測定装置であるマイクロトラックUPA150粒度分析計MODEL9340を用いて測定した。 本発明で使用する無機微粒子は、低融点ガラス粉末50〜90重量%と、平均粒子径0.003〜0.08μmのフィラーBが3〜50重量%と、さらに場合によっては30重量%以下の平均粒子径1.5〜4μmのフィラーAから構成されていることが好ましい。
【0025】
フィラーAは、焼成前の隔壁パターン形成性を保持し、焼成後の隔壁の強度を保持し、焼成収縮率を小さくする効果に加えて、形状保持率を高める効果がある。また、反射率を上げる効果もある。フィラーBは、特に反射率を一層高める効果がある。フィラーAだけでは、強度を保持しながら反射率を上げるには限界がある。フィラーAを多く添加し過ぎると、焼結温度が高くなりすぎて590℃以下の焼結が難しくなる。590℃より温度を上げるとガラス基板の耐熱性が悪くなり、基板の変形(歪み)が大きくなり、高精度な隔壁形成ができなくなる。フィラーAとフィラーBをバランスよく添加することが重要であり、フィラーAは0〜30重量%、フィラーBは3〜50重量%であることが好ましい。すなわち、低融点ガラス粉末と組み合わせて用いるフィラーとして、フィラーBのみを用いることが可能であるが、上記のようにフィラーAのみでは目的とする反射率を有する隔壁が得られないのでフィラーAと同時にフィラーBを配合することが好ましい。
【0026】
フィラーBは、反射率の高い酸化物粉末を用いることが好ましく、アルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリア、酸化錫およびシリカの群から選ばれた少なくとも一種が好ましく用いられる。特に、微粒子のフィラーは、細かい粒子であることから非常に凝集しやすく、ペースト中に均一に分散させるのには工夫が必要である。凝集が生じると紫外線光が底部まで透過・直進しなくなり、パターン形成性の低下が起こる。それを回避するために、フィラーを化学的な表面処理を行うことに加えて、粉末の合成段階において凝集を少なくすることが好ましい。
【0027】
感光性ペーストの無機微粒子を低融点ガラス成分とフィラー成分とから構成することにより、焼成収縮率の減少、形成された隔壁の強度向上、隔壁の不透明化などの効果が得られる。本発明では、フィラーAの平均粒子径が低融点ガラスの平均粒子径に比べて非常に微細であり、平均粒子径1.5〜5μmで平均屈折率1.45〜1.65を有するフィラーAと平均粒子径0.003〜0.08μmの微粉末のフィラーBを用いることによりさらに焼成収縮率の減少、形成された隔壁の強度向上、隔壁の不透明化などの著しい効果が得られる。
【0028】
本発明の感光性ペーストのパターニングにはフォトリソグラフィ技術が使用できる。この場合、ペーストの塗布膜の底部まで露光された紫外線光を透過させることが必要であり、さらにペースト膜内での紫外線光の散乱をできるだけ少なくすることが所望の形状の隔壁パターンを得るために必要である。このため、ペーストを構成する無機微粒子成分と感光性有機成分とは十分に混合・混練されて無機微粒子が均一に分散されていること、無機微粒子は凝集することなく単分散していること、用いる無機微粒子の屈折率と感光性有機成分の平均屈折率が整合していることなどの条件を満足する感光性ペーストを用いることが好ましい。
【0029】
感光性有機成分の平均屈折率に整合させる無機微粒子を構成する低融点ガラス成分の屈折率はガラス成分の配合により調整することが可能である。しかしながら、ペーストの塗布膜状態でできるだけ光線透過率を上げたいという要求と、焼成された後ではできるだけ光線反射率をあげるという要求とを両立させるフィラー成分を見出すことは難しかった。
【0030】
本発明は、この課題を露光される紫外線光の波長よりも小さい0.003〜0.08μmの平均粒子径を有するフィラーとしてアルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリア、酸化錫およびシリカの群から選ばれた少なくとも一種を用いるか、平均粒子径1.5〜4μmで平均屈折率が1.45〜1.65を示す高融点ガラスまたはコーディエライトから選んだ少なくとも一種のフィラーAと平均粒子径0.003〜0.08μmを有するアルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリア、酸化錫およびシリカの群から選ばれた少なくとも一種のフィラーBを用いることが好ましいことを見いだした。フィラーBとして酸化物フィラーを使用した場合は、白色度が高く、凝集の少ない微粒子であるので好ましく用いられる。これらのフィラー成分を感光性ペーストの中に均一分散したものを用いる場合、フォトリソグラフィ法で優れた形状の隔壁パターンを形成することができ、焼成後の全光線反射率が60%以上を示すことを本発明者らは見いだした。
【0031】
用いるフィラーBの平均粒子径は、0.003〜0.08μmが好ましく、より好ましくは0.005〜0.08μm、さらに好ましくは0.005〜0.05μm、とりわけ好ましくは0.005〜0.02μmである。0.003μm未満では、微細になりすぎて凝集しやすくなりペースト中に均一に充填・分散することが技術的に難しくなる。そのため、紫外線光が塗布膜の底部まで到達せずに途中で散乱されてしまい、パターン形成性が悪化する。一方、0.08μmを超える平均粒子径のフィラーを用いた場合には、フィラー粒子が大きくなり過ぎてパターン形成性が低下するようになり好ましくない。これらのフィラーの粒径が上記範囲にあると、露光光の波長である350〜420nmより小さいので、ペースト中に分散して存在してもパターン露光の妨げにならない。従って、フィラーBはペーストの塗布膜段階では、パターン形成に悪影響を与えることがなく、焼成後の隔壁の白色化に有効に作用する。このような微細な平均粒子径を有するフィラーBの添加による隔壁の反射率の向上効果の原因については、必ずしも明らかではないが、次のように推定される。すなわち、極微小の平均粒子径を有するフィラーBは焼成の工程で凝集して粒子径0.3〜2μmの凝集粒子を構成することが判明している。この凝集粒子は母体となるガラスに対して一般的に高屈折率のフィラーを使用しているために、このフィラーによる散乱が顕著になり、隔壁の反射率を向上させ、蛍光体層からの発光の効率を向上することができる。さらに機構は不明であるが、フィラーBは、ペースト中で均一に高分散していればいるほど焼成後の反射率がより向上することも見いだされている。凝集粒子として、より好ましいサイズは粒子径で0.5〜1.0μmである。ここでいう凝集粒子の粒子径は、イオンエッチング法で処理した試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて2万倍に拡大した観察写真を画像処理し、凝集粒子の見かけの面積と同面積の円に換算した際の直径をいう。50個の凝集粒子について観察・画像処理を行い、それらの平均値を凝集粒子の粒子径とした。また、同様にして対応箇所を50万倍に拡大して撮影し、その写真の画像処理から隔壁におけるフィラーBの平均粒子径を算出することができる。
【0032】
さらに、一部には、焼成後に隔壁が完全に緻密化されず微細な気泡などのボイドがフィラーA粒子間に均一な状態で存在し、かつ微細なフィラーBの粒子による散乱によって隔壁を白色化して反射率の向上効果を示すものと推定している。本発明におけるような照射光波長より微細な粒子を用いることはペースト塗布膜段階でのパターン露光での照射光の散乱を防止するのに有効であると考えられる。
【0033】
本発明の感光性ペーストは、低融点ガラス50〜90重量%とフィラー10〜50重量%からなる無機微粒子を用いることが好ましい。フィラー全体の量が10重量%未満の場合、全反射率を向上させる効果も焼成収縮率を低減する効果も十分でない。また、フィラー量が50重量%を越えると隔壁パターンの形状に不都合が生じると共に、形成された隔壁の強度が不十分になり好ましくない。フィラーを構成するフィラーBが、3重量%未満では、添加による反射率向上の効果が得られない。また、50重量%を越えるとパターン形成を阻害する効果が生じるので、所望の隔壁パターンの形成が得られない。また、焼結温度が高くなり、ガラス基板上では十分な密着力が得られず焼き付けが難しくなる。このことからフィラーBは、3〜50重量%の範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。フィラーのもう一方の成分フィラーAは、必要な場合に使用するが、低融点ガラスおよび感光性有機成分の平均屈折率と整合する屈折率を有する高融点ガラスとコーディエライトから選ばれたものが好ましく、パターン形成性を悪化させることが少ない。これらのフィラーA成分は焼成収縮率の低減および焼成後の形状保持の効果を有すると共に反射率向上にも寄与している。フィラーAとフィラーBが共存する場合、フィラーAを5〜30重量%とし、フィラーBを3〜20重量%とすることが好ましい。
【0034】
高融点ガラスとしては、ガラス転移点500〜1200℃、軟化点(本発明での軟化点は、厳密には荷重軟化点を意味する。粒度を調整したガラス粉末約50mgを白金セルに入れ、示差熱分析装置を用いて、アルミナ粉末を標準試料として、室温から20K/minで昇温して得られる加熱曲線から最初の吸熱の極小値の温度を軟化点とした。)550〜1200℃を有するものが好ましく、このような高融点ガラスは、酸化珪素および酸化アルミニウムをそれぞれ15重量%以上含有する組成を有するものが好ましく、これらの含有量合計が50重量%以上であることが必要な熱特性を得るのに有効である。これに限定されるものではないが、酸化物換算組成を示すと例えば以下のようになる。
酸化珪素 15〜50重量%
酸化ホウ素 5〜20重量%
酸化バリウム 2〜10重量%
酸化アルミニウム 15〜50重量%。
【0035】
高融点ガラスをフィラーAとして用いる場合、配合される低融点ガラスの平均屈折率と整合した平均屈折率を有するように組成配分を考慮することが好ましい。例えば、酸化珪素38重量%、酸化ホウ素10重量%、酸化バリウム5重量%、酸化アルミニウム36重量%で、その他の成分として酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムを少量づつ含有するガラス転移点625℃、軟化点746℃の高融点ガラスの平均屈折率は、1.59であり、これは本発明で好ましく使用される低融点ガラスの平均屈折率と同等である。フィラーAのもう一つの好ましい成分として挙げられるコーディエライトの屈折率は1.58であり、本発明の成分として好適である。
【0036】
感光性ペーストを構成する好ましい主成分である低融点ガラスは、ガラス転移点400℃〜550℃、軟化点450〜600℃であり、平均屈折率が1.5〜1.65であることを特徴とする。感光性ペーストを隔壁形成用として使用する場合、隔壁はガラス基板上に形成されるため低融点ガラスの軟化点は450〜600℃であることが好ましい。450℃以下では、ディスプレイ形成の後工程において隔壁が変形するという問題があり、600℃を越える場合には、焼成時に溶融せずに強度の低い隔壁になるという問題が生じる。フィラーの添加は焼成時の収縮率を低く制御できる役割もしている。このような温度特性を有する低融点ガラスとしては、従来、酸化鉛、酸化ビスマスを含有するガラスが用いられてきたが、これらの成分を含有するガラスは平均屈折率が1.7以上と高くなるため、平均屈折率が1.45〜1.65程度である感光性有機成分と屈折率を整合させることが難しくなる。従って、高アスペクト比かつ高精細な隔壁パターンを形成できない。本発明では、ガラス転移点および軟化点が上記の範囲にあり、平均屈折率が1.5〜1.65、より好ましくは1.5〜1.6の範囲にある低融点ガラスを用いることが好ましい。
【0037】
無機微粒子が有機成分中に分散・混合されている感光性ペーストの塗布膜を用いて高アスペクト比で高精細なパターンを形成する場合、構成成分の平均屈折率を整合させることが好ましい。構成成分の屈折率が異なる場合には、パターン間の不要な硬化などの障害が起こりやすい。光の散乱を抑制し、パターン形成に用いる活性光をペーストの塗布膜の底部まで透過させるには無機微粒子と感光性有機成分との屈折率の差を0.05以下にすることが望ましい。上記のように一般的な有機成分の平均屈折率は1.45〜1.65程度であり、屈折率を整合させるためには、ガラス粉末の平均屈折率を1.5〜1.65とすることが好ましい。 このような熱的特性および平均屈折率を満足する低融点ガラスの好ましい組成は、酸化物換算表記で以下のように示すことができる。
Figure 0004453161
【0038】
酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウムのアルカリ金属酸化物のうち少なくとも1種を用い、その合計量が3〜15重量%、さらには3〜10重量%であることが好ましい。
【0039】
アルカリ金属酸化物は、ガラスの軟化点、熱膨張係数のコントロールを容易にするのみならず、ガラスの屈折率を低くすることができるため、感光性有機成分との屈折率差を小さくすることが容易になる。アルカリ金属酸化物の合計量が3重量%以上とすることでガラスの低融点化の効果を得ることができ、15重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持すると共に熱膨張係数を小さく抑えることができる。アルカリ金属としては、ガラスの屈折率を下げることやイオンのマイグレーションを防止することを考慮するならリチウムを選択するのが好ましい。
【0040】
酸化ケイ素の配合量は5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。酸化ケイ素は、ガラスの緻密性、強度や安定性の向上に有効であり、また、ガラスの低屈折率化にも効果がある。熱膨張係数をコントロールしてガラス基板とのミスマッチによる剥離などを防ぐこともできる。5重量%以上とすることで、熱膨張係数を小さく抑えガラス基板に焼き付けた時にクラックを生じない。また、屈折率を低く抑えることができる。30重量%以下とすることで、ガラス転移点、軟化点を低く抑え、ガラス基板への焼き付け温度を低くすることができる。
【0041】
酸化ホウ素は、鉛などの重金属を含有しないガラスにおいて低融点化のために必要な成分であり、さらに低屈折率化にも有効であり、20〜45重量%、さらには20〜40重量%の範囲で配合することが好ましい。20重量%以上とすることで、ガラス転移点、軟化点を低く抑えガラス基板への焼き付けを容易にする。また、45重量%以上とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。
【0042】
酸化バリウムおよび酸化ストロンチウムのうち少なくとも1種を用い、その合計量が2〜15重量%、さらには2〜10重量%であることが好ましい。これらの成分は、ガラスの低融点化、熱膨張係数の調整に有効であり、焼き付け温度の基板の耐熱性への適用、電気絶縁性、形成される隔壁の安定性や緻密性の点でも好ましい。2重量%以上とすることで低融点化の効果を得ることができると共に結晶化による失透を防ぐこともできる。また、15重量%以下とすることにより、熱膨張係数を小さく抑え、屈折率も小さく抑えることができる。またガラスの化学的安定性も維持できる。
【0043】
酸化アルミニウムはガラス化範囲を広げてガラスを安定化する効果があり、ペーストのポットライフ延長にも有効である。10〜25重量%の範囲で配合することが好ましく、この範囲内とすることでガラス転移点、軟化点を低く保ち、ガラス基板上への焼き付けを容易とすることができる。
【0044】
さらに、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムは、ガラスを溶融しやすくすると共に熱膨張係数を制御するために配合されることが好ましい。酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムは合計で2〜15重量%配合するのが好ましい。合計量が2重量%以上とすることで結晶化によるガラスの失透を防ぎ、15重量%以下とすることでガラスの化学的安定性を維持することができる。
【0045】
また、上記の組成には表記されていないが、酸化亜鉛はガラスの熱膨張係数を大きく変化させることなく低融点化させる成分でありこれも配合されることが好ましい。多く配合しすぎると屈折率が大きくなる傾向にあるので、1〜20重量%の範囲で配合するのが好ましい。
【0046】
本発明の感光性ペーストは、無機微粒子と感光性有機成分とを6:4〜9:1の重量割合で含有するもので、その無機微粒子は低融点ガラス粉末50〜90重量%と平均粒子径0.003〜0.08μmのフィラーBが3〜50重量%と平均粒子径1.5〜4μmのフィラーAが0〜30重量%からなることが好ましい。この感光性ペーストにおいては、低融点ガラス成分とフィラーAの屈折率が感光性有機成分の平均屈折率と整合するように組成が決められることが好ましく、混入されるフィラーの平均粒子径は露光光の波長より微細であるため、露光光の透過率が高く、優れたパターン形成性を有し、少なくとも2種のフィラーの適当量の混入による効果で焼成して得られる隔壁は高い反射性を有することができる。
【0047】
本発明の好ましい感光性ペーストは次のようにして製造することができる。すなわち、低融点ガラス50〜90重量%、平均粒子径1.5〜4mで屈折率が1.45〜1.65であるフィラーAが0〜30重量%および平均粒子径0.003〜0.08μmのフィラーBが3〜50重量%からなる無機微粒子を用い、それぞれを感光性有機成分と混合・混練して感光性ペーストを得ることができる。このようにして作製した感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥した後、フォトリソグラフィ法でパターニングし、形成されたパターンを焼成することで隔壁を形成することができる。
【0048】
感光性ペーストは無機微粒子と感光性有機成分を必須成分とする。感光性有機成分としては、照射光を吸収して生起する重合および/または架橋反応などによって光硬化して溶剤に不溶になる型の感光性成分を用いることが好ましい。すなわち、感光性有機成分は、感光性モノマー、感光性または非感光性オリゴマーもしくはポリマーを主成分とし、光重合開始剤を含有することが好ましい。感光性有機成分には、必要に応じて紫外線吸収剤、重合禁止剤、増感剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤その他の添加剤を加えることもできる。
【0049】
感光性モノマーとしては、活性な炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましく、官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が使用できる。特に多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物を有機成分中に10〜80重量%含有させたものが好ましい。多官能アクリレート化合物および/または多官能メタクリレート化合物には多様な種類の化合物が開発されているので、それらから反応性、屈折率などを考慮して選択することが可能である。特に、屈折率1.55〜1.70を有する感光性モノマーを選んで含有させると感光性有機成分の平均屈折率を無機微粒子材料の屈折率に簡便に近づけることができる。このような高い屈折率を有する感光性モノマーとしては、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環や硫黄原子を含有するアクリレートもしくはメタクリレートモノマから選択することができる。
【0050】
超微細なフィラーBを用いる感光性ペーストにおいては、感光性モノマーの選択が微粒子の分散性を保持するために重要であり、これに限定されるものではないがエチレン性不飽和基を有するアミン化合物系のモノマーが好ましく用いられる。また、補助隔壁を形成するいわゆる格子状隔壁の形成や広幅を有する隔壁の形成においては、ウレタン結合部分を含有するエチレン性不飽和化合物からなるモノマーの併用が好ましい。(追加記載)
感光性有機成分として、光反応で形成される硬化物物性の向上やペーストの粘度の調整などの役割を果たす成分として感光性または非感光性オリゴマーもしくはポリマーが加えられる。
【0051】
これらのオリゴマーもしくはポリマーは、好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られた炭素連鎖の骨格を有するものから選択することができる。特に、分子側鎖にカルボキシル基と不飽和二重結合を有する重量平均分子量2000〜6万、より好ましくは3000〜4万のオリゴマーもしくはポリマーは、側鎖のカルボキシル基を有するので、感光後に未露光部分をアルカリ水溶液で現像できる感光性ペーストを与えることができる。このような側鎖にカルボキシル基などの酸基を有するオリゴマーもしくはポリマーの酸価は50〜150、好ましくは70〜120の範囲になるようにコントロールすることが好ましい。
【0052】
感光性オリゴマーもしくはポリマーを得るために、不飽和二重結合を導入するには、カルボキシル基を側鎖に有するオリゴマーもしくはポリマーに、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させるとよい。さらに、上記のようにカルボキシル基を側鎖に有するオリゴマーもしくはポリマーに不飽和二重結合を導入して感光性を付与するには、カルボキシル基とアミン系化合物との間で塩結合を形成させる方法を用いることもできる。例えば、ジアルキルアミノアクリレートやジアルキルアミノメタクリレートを反応させて塩結合を形成してアクリレートまたはメタクリレート基を感光性基とすることができる。エチレン性不飽和基数は、反応条件により適宜選択することができる。
【0053】
感光性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーは通常、いずれも活性光線のエネルギー吸収能力はないので、光反応を開始するためには、さらに、光重合開始剤が必要成分であり、場合によって光重合開始剤の効果を補助するために増感剤を加えることがある。光重合開始剤には、1分子系直接開裂型、イオン対間電子移動型、水素引き抜き型、2分子複合系など機構的に異なる種類があり、それらから選択して用いられる。
【0054】
感光性ペーストは、通常、無機微粒子、感光性モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光重合開始剤を基本成分とし、必要に応じてその他の添加剤および溶媒などの各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合・分散することにより製造することができる。感光性ペーストの粘度は、有機溶媒により1万〜20万cps(センチ・ポイズ)程度に調整して使用される。この時使用される有機溶媒としては、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトンなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が挙げられる。酸化物微粒子を高分散させる溶媒と感光性ポリマーやモノマを溶解する溶媒が異なる場合、これらの溶媒を混合して使用することによって酸化物微粒子の凝集を避けることができる。
【0055】
本発明の感光性ペーストは、PDP、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電子放出素子、蛍光表示管や有機電界発光素子を用いたディスプレイの隔壁形成に用いられるが、隔壁はガラス基板上に直接形成する場合もあるが、多くはガラス基板上の電極を被覆するように形成されている誘電体層の上に形成される。いずれの場合においても、感光性ペーストを塗布する前に、塗布面の表面処理を行って接着性を向上させることが有効である。このような表面処理にはシラン系カップリング剤や金属アルコキシ化合物などが用いられる。
【0056】
感光性ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコータ法、ドクターブレード法などの一般的な方法で行うことができる。塗布厚さは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成収縮率を考慮して決めることができる。
【0057】
次いで、塗布・乾燥した感光性ペースト膜にフォトマスクを介して露光を行って、隔壁パターンを形成する。露光の際、ペースト塗布膜とフォトマスクを密着して行う方法と一定の間隔をあけて行う方法(プロキシミティ露光)のいずれを用いてもよい。露光用の光源としては、水銀灯やハロゲンランプが適当であるが、超高圧水銀灯が最もよく使用される。超高圧水銀灯を光源として、プロキシミティ露光を行うのが一般的である。露光条件はペーストの塗布膜厚さによって異なるが、通常5〜60mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて20秒〜10分間露光を行う。
【0058】
露光後、露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法、スプレー法、ブラシ法などが用いられる。本発明で好ましく用いられる側鎖にカルボキシル基を有するオリゴマーもしくはポリマーを含有する感光性ペーストを使用した場合には、アルカリ水溶液での現像が可能になる。アルカリとしては、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去し易いので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがあげられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜0.8重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が完全に除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部のパターンを剥離させたり、侵食したりするおそれがある。現像時の温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0059】
感光性ペーストの塗布膜から露光・現像の工程を経て形成された隔壁パターンは次に焼成炉で焼成されて、有機成分を熱分解して除去し、同時に無機微粒子成分中の低融点ガラスを溶融させて無機質の隔壁を形成する。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の特性によって異なるが、通常は、空気中で焼成される。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
【0060】
バッチ式の焼成を行うには通常、隔壁パターンが形成されたガラス基板を室温から500℃程度まで数時間掛けてほぼ等速で昇温した後、焼成温度として設定された500〜590℃に30〜120分間で上昇させて、約15〜30分間保持して焼成を行う。このようにして隔壁を形成したプラズマディスプレイを得ることができる。これらの技術は、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電子放出素子、蛍光表示管および有機電界発光素子を用いたディスプレイにも、好ましく適用され、隔壁を形成したプラズマアドレス液晶ディスプレイや隔壁を形成した電子放出素子を用いたディスプレイを得ることができる。。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、組成比(%)、濃度(%)は特に断らない限り重量%である。
【0062】
実施例1
酸化物換算組成(分析値)が、酸化リチウム6.7%、酸化ケイ素22%、酸化ホウ素32%、酸化バリウム3.9%、酸化アルミニウム19%、酸化亜鉛2.2%、酸化マグネシウム5.5%、酸化カルシウム4.1%の低融点ガラス粉末Iを用いた。この低融点ガラス粉末Iのガラス転移点は497℃、軟化点は530℃、熱膨張係数は75×10-7/Kであった。低融点ガラス粉末成分は、予めアトラクターで微粉末とし、平均粒子径2.6μm、屈折率1.58の非球状粉末として使用した。この低融点ガラス粉末I100重量部に対して、0.08重量部のアゾ系有機染料スダンIVをアセトンに溶解し、分散剤を加えてホモジナイザーで均質に撹拌し、この溶液中に低融点ガラス粉末Iを添加して均質に分散・混合後、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを蒸発させ、150〜200℃の温度で乾燥し、低融点ガラス粉末混合物Iを製造した。
【0063】
一方、γ−ブチロラクトンに感光性ポリマーIを40%溶液になるように混合し、撹拌しながら60℃まで加熱して全てのポリマーを溶解した。ここで用いた感光性ポリマーIは、メタクリル酸40%、メチルメタクリレート30%およびスチレン30%からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもので、その重量平均分子量は43,000,酸価は95であった。室温の感光性ポリマー溶液に、次式(I)で示される感光性モノマー(”MGP400”)、光重合開始剤として”イルガキュア369”(チバガイギー社製、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)(”IC−369”)および増感剤として2,4−ジエチルチオキサントンを加えて溶解させた後、この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルIを製造した。
2N−CH(CH3)−CH2−(OCH2CH(CH3))n−NX2 (I)
(式中、Xは−CH2CH(OH)−CH2O−CO−C(CH3)=CH2を示し、nは2〜10の数を示す。)。
【0064】
フィラーBとして平均粒径0.012μmのシリカ粉末I(アエロジル社製、製品番号:200)を使用し、低融点ガラス粉末混合物Iおよびシリカ粉末Iと有機ビヒクルIを3本ローラで混合・分散して感光性ペーストIを得た。低融点ガラスとシリカ粉末Iの混合比率は80:20であった。感光性ペーストIに含まれる各成分の量(重量部)は、低融点ガラス粉末I56、シリカ粉末I(フィラーB)14、感光性ポリマーI19、感光性モノマー7.5、光重合開始剤2.4、増感剤2.4であった。 この感光性ペーストIを100mm角ガラス基板上に325メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷により塗布した。塗布膜にピンホールなどの発生を回避するために塗布・乾燥を数回繰り返し行い、膜厚の調整を行った。途中の乾燥は80℃で10分間行った。その後、80℃で1時間保持して乾燥した。乾燥後の塗布膜厚さは160μmであった。続いて、150μmピッチ、線幅20μmのネガ用のクロムマスクを用いて、上面から20mW/cm2出力の超高圧水銀灯でプロキシミティ露光した。露光量は1J/cm2であった。次に、35℃に保持したモノエタノールアミンの0.2%水溶液をシャワーで300秒間かけることにより現像し、その後、シャワースプレーを用いて水洗し、光硬化していないスペース部分を除去してガラス基板上にストライプ状の隔壁パターンを形成した。このようにして得られた隔壁パターンを空気中、560℃で30分間焼成して白色隔壁を形成した。形成された隔壁の断面形状を電子顕微鏡で観察したところ、高さ130μm、隔壁中央部の線幅30μm、ピッチ150μmであった。
【0065】
塗布膜の全光線透過率および焼成膜の全光線反射率を測定するため別途乾燥厚み50μmの塗布膜を形成し、さらにそれを焼成して測定用試料を作製した。これを用いて測定した本実施例の感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は52%で、焼成膜の全光線反射率は60%であった。
【0066】
このようにして電極、誘電体層および白色隔壁が形成された基板上に、スクリーン印刷法により、R、G、B発光の各蛍光体ペーストを塗布し蛍光体層を形成した。その後、乾燥、焼成工程を経て蛍光体層を形成した。R発光蛍光体には(Y,Gd)BO3:Eu、G発光蛍光体にはZnSiO4:Mn、そしてB発光蛍光体にはBaMgAl10O17:Euを用いた。蛍光体は、隔壁間の底面のみならず隔壁の側面にも塗布して、底面および側面に蛍光面を形成した。
【0067】
このようにして形成した背面ガラス基板を、別途作製したスキャン電極と誘電体層が形成された前面ガラス基板と合わせた後、封着し、ガス封入を行い、駆動回路を接合してプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行った。全面点灯時の輝度を大塚電子社製の測光機MCPD−200を用いて測定した。輝度は380cd/m2であった。
【0068】
実施例2
低融点ガラスとフィラーBの混合比を85:15とした以外は実施例1を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は65%、それを焼成した膜の全光線反射率は68%であった。実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は390cd/m2であった。
【0069】
実施例3
フィラーBとして平均粒子径0.03μmのジルコニア粉末(ナノテック社製)を用いた以外は、実施例1を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は58%、それを焼成した膜の全光線反射率は63%であった。実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は380cd/m2であった。
【0070】
実施例4
フィラーBとして平均粒子径0.013μmのアルミナ粉末(石原産業社製、製品番号:TTO−51)を用いた以外は、実施例1を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は56%、それを焼成した膜の全光線反射率は60%であった。実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は390cd/m2であった。
【0071】
実施例5
フィラーBとして平均粒子径0.021μmのチタニア粉末(デグサ社製、製品番号:P25)を用いた以外は、実施例1を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は58%、それを焼成した膜の全光線反射率は72%であった。実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は430cd/m2であった。
【0072】
実施例6
フィラーBとして平均粒子径0.015μmのジルコニア粉末(ナノテック社製)を用いた以外は、実施例1を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は54%、それを焼成した膜の全光線反射率は55%であった。実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は370cd/m2であった。
【0073】
実施例7
実施例1で用いたと同じ低融点ガラス粉末Iを使用した。フィラーAとして、酸化物換算組成が、酸化珪素38%、酸化ホウ素10%、酸化バリウム5%、酸化カルシウム4%、酸化アルミニウム36%、酸化亜鉛2%、酸化マグネシウム5%の高融点ガラス粉末Iを用いた。この高融点ガラス粉末Iのガラス転移点は652℃、軟化点は746℃、熱膨張係数43×10-7/K、平均粒子径2.4μmで平均屈折率は1.59であった。
【0074】
この低融点ガラス粉末Iおよび高融点ガラス粉末Iの合計量100重量部に対して、0.08重量部のアゾ系有機染料スダンIVをアセトンに溶解し、分散剤を加えてホモジナイザーで均質に撹拌し、この溶液中に低融点ガラス粉末Iおよび高融点ガラス粉末Iを添加して均質に分散・混合後、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを蒸発させ、150〜200℃の温度で乾燥しガラス粉末混合物IIを得た。
【0075】
一方、γ−ブチロラクトンに実施例1と同様の感光性ポリマーIを40%溶液になるように混合し、撹拌しながら60℃まで加熱して全てのポリマーを溶解した。室温の感光性ポリマー溶液に、感光性モノマーとして”MGP400”、光重合開始剤として”IC−369”、ゲル化防止剤としベンゾチアゾール(BT)、分散剤として”ノプコスパース”、重合禁止剤としてヒドロキノンモノエチルエーテル(HQME)および可塑剤としてジブチルフタレートを加えて溶解させた。その後、この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルIIを製造した。溶剤を除去した有機成分の配合割合は、感光性ポリマー38%、感光性モノマー38%、光重合開始剤9.2%、ゲル化防止剤8.1%、分散剤1.4%、重合禁止剤0.3%、可塑剤4.2%であった。
【0076】
フィラーBとして実施例1と同様の平均粒径0.012μmのシリカ粉末I(アエロジル社製、製品番号:200)を使用し、ガラス粉末混合物IIおよびシリカ粉末Iと有機ビヒクルIIを3本ローラで混合・分散して感光性ペーストIIを得た。感光性ペーストIIに含まれる各成分は、低融点ガラス粉末I50%、高融点ガラス粉末I(フィラーA)10%、シリカ粉末I(フィラーB)10%、感光性有機成分30%であった。低融点ガラス粉末I、高融点ガラス粉末Iおよびシリカ粉末Iの混合比率は71.4:14.3:14.3であった。
【0077】
この感光性ペーストIIを用いて実施例1と同様にして隔壁パターンの形成と焼成を行って隔壁の形成を行った。形成された隔壁の断面形状を電子顕微鏡で観察したところ、高さ135μm、隔壁中央部の線幅33μm、ピッチ150μmであった。
【0078】
塗布膜の全光線透過率および焼成膜の全光線反射率を測定するため別途乾燥厚み50μmの塗布膜を形成し、さらにそれを焼成して測定用試料を作製した。これを用いて測定した本実施例の感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は72%で、焼成膜の全光線反射率は75%であった。
【0079】
このようにして電極、誘電体層および白色隔壁が形成された基板上に、実施例1と同様にして蛍光体層を形成し、前面板と合わせた後、封着しガス封入し駆動回路を接続してプラズマディスプレイを作製した。このパネルに電圧を印加して表示を行った。全面点灯時の輝度を大塚電子社製の測光機MCPD−200を用いて測定した。輝度は440cd/m2であった。
【0080】
実施例8
フィラーBとして平均粒子径0.030μmのチタニア粉末(石原産業製、製品番号:TTO−55)を用い、実施例7を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は55%、それを焼成した膜の全光線反射率は80%であった。実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は450cd/m2であった。
【0081】
実施例9
フィラーBとして平均粒子径0.013μmのアルミナ粉末(デグサ社製、製品番号:アルミナC)を用い、実施例7を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は74%、それを焼成した膜の全光線反射率は75%であった。実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は440cd/m2であった。
【0082】
実施例10
フィラーBとして平均粒子径0.020μmのジルコニア粉末(ナノテック社製)を用い、実施例7を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は56%、それを焼成した膜の全光線反射率は70%であった。実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は400cd/m2であった。
【0083】
実施例11
フィラーBとして平均粒子径0.03μmのシリカ粉末(アエロジル社製、製品番号:50)を用い、低融点ガラス、高融点ガラスとフィラーBの混合比率を75:13:12とした以外は、実施例7を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は78%、それを焼成した膜の全光線反射率は75%であった。実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は430cd/m2であった。
【0084】
実施例12
低融点ガラス粉末として下記の酸化物換算組成および熱特性を有するものを用いた以外は実施例7を繰り返した。低融点ガラス組成(分析値):酸化リチウム8.6%、酸化珪素20.1%、酸化ホウ素31%、酸化アルミニウム20.6%、酸化バリウム3.8%、酸化マグネシウム5.9%、酸化カルシウム4.2%、酸化亜鉛2.1%。ガラス転移点472℃、軟化点515℃、熱膨張係数83×10-7/K、屈折率1.59。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は70%、それを焼成した膜の全光線反射率は72%であった。実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は420cd/m2であった。
【0085】
実施例13
高融点ガラスの代わりに平均粒子径2.5μmのコーディエライトを用いたほかは、実施例7を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は76%、それを焼成した膜の全光線反射率は74%であった。実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は430cd/m2であった。
【0086】
実施例14
電子放出素子を用いたディスプレイを、電子放出素子を作製した電子源を固定する背面基板と、蛍光体層とメタルバックが形成された前面基板を封着して作製した。前面基板と背面基板との間には、支持枠と耐大気圧支持部材としての隔壁を作製した。
【0087】
表面伝導型電子放出素子および電極間配線を形成した基板上に、実施例7で用いた感光性ペーストをスクリーン印刷により全面塗布・乾燥し、これを繰り返して乾燥厚みが約1.0mmの塗布膜を形成した。この塗布膜に、幅2mmのストライプ状の開口部を1cmピッチで有するフォトマスクを密着させて、出力15mW/cm2の超高圧水銀灯で紫外線露光した。露光量は1.2J/cm2とした。
【0088】
次に、2回目の感光性ペーストの塗布・乾燥を行って、最初と同様の厚みの2段目の塗布膜を形成し、今度は開口部幅1.6mmのフォトマスクを最初の露光部に対応するようにアライメントして同様に露光した。この手法を3段目まで繰り返し、3段目には幅1.2mmの開口部を有するフォトマスクを使用した。このように露光処理の終わった塗布膜を実施例7と同様の手段で現像・水洗して、断面が3段の雛壇状の高さ2.3mmのストライプ状の隔壁パターンを形成した。これを空気中560℃で30分間焼成し、電子放出素子を用いたディスプレイ用の背面基板を得た。
【0089】
一方、ブラックマトリクスおよび3原色に発光する蛍光体層を形成しメタルバックを設けた前面基板を別途作成し、上記背面基板と封着して電子放出素子を用いたディスプレイを得た。得られたディスプレイは、白色隔壁の効果によりディスプレイの輝度は、370cd/m2となり向上した。
【0090】
実施例15
ストライプ状にインジュウム錫酸化物(ITO)透明電極膜がパターニングされたガラス基板に、実施例1で用いた感光性ペーストを塗布し、厚さ10μmの塗布膜を得た。ITO電極と直交するストライプ状のフォトマスクを用いて露光し現像して幅25μmの隔壁パターンを形成した。これを焼成して幅20μm、高さ7μmの隔壁を形成した。この基板を回転しながら、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を700オングストローム、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体(Alq3)を550オングストローム蒸着した後、基板の回転を止めて基板面に対して垂直な方向からアルミニウムを1000オングストローム蒸着した。全面に保護層として酸化ケイ素膜を形成して有機電界発光素子を得た。電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は370cd/m2であった。
実施例16
低融点ガラス粉末、フィラーAおよびフィラーBの割合を75:20:5とした。低融点ガラス粉末は実施例1で用いたものと同じであり、フィラーAは実施例7で用いたものと同じである。フィラーBとしては、平均粒子径0.005μmの酸化チタン系微粒子ゾルを用いた。
【0091】
感光性ポリマーとしては感光性ポリマーIを用い、感光性モノマーとして実施例7と同じように“MGP−400”を用いた。
【0092】
感光性ペーストの構成成分は、感光性ポリマー15%、感光性モノマー7.2%、光重合開始剤(”IC−369”)3.6%、ゲル化防止剤(BT)3.15%、分散剤(”ノプコスパース”)0.5%、重合禁止剤(HQME)0.1%、”フローノンSP−1000”(共栄社化学社製)0.7%と無機成分70%である。
【0093】
このように配合した感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は78%、それを焼成した膜の全光線反射率は72%であった。この感光性ペーストを用いて、実施例1と同様にして隔壁を形成した。さらに同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は450cd/m2であった。
実施例17
感光性ポリマーとして”サイクロマーP”(ダイセル化学社製:ACA210、酸価120,分子量28,000)を用いた他は実施例16を繰り返した。この感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は80%、それを焼成した膜の全光線反射率は74%であった。作製されたプラズマディスプレイの全面点灯時の輝度は440cd/m2であった。
実施例18
フィラーBとして平均粒子径0.04μmの酸化チタン微粒子ゾルを用い、感光性ペーストにイミダゾリン系界面活性剤(花王社製:”ホモゲノールL−95”)を0.4%加えた他は実施例16を繰り返した。
この感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は78%、それを焼成した膜の全光線反射率は74%であった。作製されたプラズマディスプレイの全面点灯時の輝度は430cd/m2であった。
【0094】
比較例1
フィラーBとして平均粒子径0.24μmのシリカ粉末(石原産業社製、製品番号:CR−EL)を用いた以外は、実施例1を繰り返した。この場合の無機微粒子の粒度分布を測定しても0.003〜0.08μmの範囲内にはピークが存在しなかった。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は45%であり、隔壁パターンの形状が頭頂部に膨らみがあり、底部がくびれたものとなり、ディスプレイ用の隔壁として不都合であった。
【0095】
比較例2
フィラーBとして平均粒径0.15μmのアルミナ粉末を用いた以外は、実施例1を繰り返した。この場合の無機微粒子の粒度分布にも0.003〜0.08μmの範囲内にピークは存在しかった。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は38%であり、形成された隔壁パターンは頭頂部に膨らみがあり、底部がくびれたものとなり、ディスプレイ用の隔壁として不都合であった。
【0096】
比較例3
実施例1において、フィラーBとして平均粒子径2.5μmのコーディエライトを用いた。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は65%、それを焼成した膜の全光線反射率は20%であった。隔壁パターンの形成は良好に行われたが、焼成して得られた隔壁の全光線反射率が低く、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は220cd/m2であり、隣の発光の洩れが観測され、色純度の低下が認められた。
【0097】
比較例4
実施例1において、酸化物換算組成が、酸化珪素38%、酸化ホウ素10%、酸化バリウム5%、酸化カルシウム4%、酸化アルミニウム36%、酸化亜鉛2%、酸化マグネシウム5%の高融点ガラスをフィラーAとして用いた。この高融点ガラスのガラス転移点は652℃、軟化点は746℃、熱膨張係数43×10-7/K、平均粒子径2.4μmで平均屈折率は1.59であった。
【0098】
得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は70%、それを焼成した膜の全光線反射率は20%であった。隔壁パターンの形成は良好に行われたが、焼成して得られた隔壁の全光線反射率が低く、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は200cd/m2であり、隣の発光の洩れが観測され、色純度の低下があった。
【0099】
比較例5
フィラーBとして平均粒子径0.25μmのチタニア粉末(石原産業社製、製品番号:CR−EL)を用いた以外は、実施例7を繰り返した。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は18%であり、隔壁パターンの形状が頭頂部に膨らみがあり、底部がくびれたものとなり、ディスプレイ用の隔壁として不都合であった。
【0100】
比較例6
実施例7において平均粒径0.15μmのアルミナ粉末を用いたところ、形成された隔壁パターンは頭頂部に膨らみがあり、底部がくびれたものとなり、ディスプレイ用の隔壁として不都合であった。用いた無機微粒子の粒度分布において、0.003〜0.08μmの範囲にピークは存在しなかった。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は20%であった。
【0101】
比較例7
実施例7において低融点ガラス、高融点ガラス(フィラーA)とフィラーBとの混合比率を95:3:2として隔壁の形成を行った。良好な形状の隔壁が得られたが、塗布膜を焼成した膜の全光線反射率は45%しかなく、実施例7と同様にしてプラズマディスプレイを作製し、電圧を印加して表示を行ったところ、全面点灯時の輝度は280cd/m2であった。
【0102】
比較例8
実施例7において低融点ガラス、高融点ガラス(フィラーA)とフィラーBとの混合比率を40:45:15として隔壁の形成を行った。得られた感光性ペースト塗布膜の全光線透過率は35%、それを焼成した膜の全光線反射率は80%であった。隔壁形状が不良であり、隔壁強度も不足であった。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、隔壁パターンの形成性が良好であり、輝度および色純度の向上した隔壁が形成できる。 隔壁の材料としては、ガラスやセラミックスなどからなる無機微粒子が用いられており、隔壁の白色化により蛍光体層からの発光を反射し、輝度や色純度を向上させることができる。すなわち、隔壁を白色化して反射率を高めることにより、それぞれの蛍光体層の輝度が向上すると共に、隣の蛍光体層から発光する光を遮断することで、各発光色の色純度が向上するという効果が得られる。

Claims (11)

  1. 無機微粒子と感光性有機成分とを6:4〜9:1の割合で含有する感光性ペーストであって、無機微粒子が低融点ガラス粉末50〜90重量%と、平均粒子径が0.003〜0.08μmであって、アルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリア、酸化錫およびシリカの群から選ばれた少なくとも一種を含むフィラーBを3〜50重量%含むことを特徴とする感光性ペースト
  2. 無機微粒子がさらに平均粒子径1.5〜5μmであって、コーディエライトおよび高融点ガラス粉末から選ばれたフィラーAを30重量%以下含有することを特徴とする請求項記載の感光性ペースト。
  3. フィラーAの平均屈折率が1.45〜1.65であることを特徴とする請求項記載の感光性ペースト
  4. 高融点ガラス粉末が、ガラス転移点500℃〜1200℃、軟化点550〜1200℃であることを特徴とする請求項に記載の感光性ペースト。
  5. 高融点ガラス粉末が、酸化物換算表記で以下の組成からなることを特徴とする請求項に記載の感光性ペースト。
    酸化ケイ素 15〜50重量%
    酸化ホウ素 5〜20重量%
    酸化アルミニウム 15〜50重量%
    酸化バリウム 2〜10重量%
  6. 低融点ガラス粉末が、ガラス転移点400〜550℃、軟化点450〜600℃であることを特徴とする請求項記載の感光性ペースト。
  7. 低融点ガラス粉末の平均屈折率が、1.5〜1.65であることを特徴とする請求項記載の感光性ペースト。
  8. 低融点ガラス粉末が、酸化物換算表記で以下の組成からなることを特徴とする請求項記載の感光性ペースト。
    酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム 3〜15重量%
    酸化ケイ素 5〜30重量%
    酸化ホウ素 20〜45重量%
    酸化バリウムまたは酸化ストロンチウム 2〜15重量%
    酸化アルミニウム 10〜25重量%
    酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム 2〜15重量%
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の感光性ペーストを用いて形成した隔壁を有することを特徴とするディスプレイ。
  10. ディスプレイがプラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、電子放出素子を用いたディスプレイあるいは有機電界発光素子を用いたディスプレイである請求項記載のディスプレイ。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の感光性ペーストを用いて形成した隔壁を有することを特徴とするプラズマディスプレイ用部材。
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