発明者らは、セルピッチが狭く、細幅かつ高アスペクト比の隔壁パターンの形成について鋭意検討を行った結果、低軟化点ガラスを含む無機成分、紫外線硬化型感光性有機成分、式(1)で示される化合物ならびに式(1)で示される化合物以外の紫外線吸収剤であって、波長365nmにおける吸光係数が波長405nmにおける吸光係数および波長436nmにおける吸光係数よりも大きい紫外線吸収剤を含むことを特徴とする感光性ペーストによって達成されることを見出した。
(R1、R2はそれぞれ水素又は炭素数1〜3の有機基を示す。)
感光性ペーストとは、塗布、乾燥を行った後の塗膜に対し活性光線を照射することによって、照射部分が光架橋、光重合、光解重合、光変性などの反応を通し化学構造が変化して現像液による現像が可能になるようなペーストをいう。本発明では特に、活性光線の照射により照射部分が現像液に不溶となり、しかる後現像液によって非照射部分のみを除去することによってパターン形成を行うことが可能なネガ型感光性ペーストを指す。また、ここで言う活性光線とはこのような化学反応を起こさせる250〜1100nmの波長領域の光線を指し、具体的には超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外光線、ハロゲンランプなどの可視光線、ヘリウム−カドミウムレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどの特定波長のレーザー光線等を挙げることができる。
本発明の感光性ペーストは低軟化点ガラス粉末、前記式(1)で示される化合物、前記紫外線吸収剤以外に、紫外線硬化型感光性有機成分として感光性モノマ、感光性オリゴマ、感光性ポリマのうち少なくとも1種類、重合開始剤、カップリング剤を必須成分とする。さらに必要に応じて、無機成分としてシリカ系複合酸化物粒子、フィラー、有機成分として、非感光性ポリマ、吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機溶媒、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分を含む。
本発明では感光性ペースト中に前記式(1)で示される化合物を含有することで露光光の直進性が向上し、隔壁パターンの底部幅を細幅化することができる。ここで底部幅とは、隔壁最底部(基板と隔壁の接着部)から隔壁最頂部までの高さを100%としたときに50%よりも低い部分の隔壁幅の最大値を指す。
前記式(1)で示される化合物は、無機成分との質量比で15:1〜10:1の割合で含有することが好ましい。前記式(1)で示される化合物の含有量が15:1の割合より小さい場合は、隔壁パターンの底部幅の細幅化効果が不十分となり、10:1より大きい場合では隔壁パターンの底部幅が細くなりすぎ、パターン蛇行やはがれの原因となるため好ましくない。
前記式(1)で示される化合物の具体例としてはIRGAMET39、IRGAMET42(共にチバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、1,2,3−ベンゾトリアゾール等を用いることができ、特に1,2,3−ベンゾトリアゾールを用いることが好ましい。
感光性ペーストに本発明における必須成分である紫外線吸収剤を含有すると、露光光によるペースト内部の散乱光を吸収し、散乱光を弱めることができる。本発明ではi線(波長365nm)における吸光係数が、h線(波長405nm)における吸光係数およびg線(波長436nm)における吸光係数よりも大きい紫外線線吸収剤を用いることで、隔壁パターンの頂部幅を細幅化することができる。ここで頂部幅とは、隔壁最底部(基板と隔壁の接着部)から隔壁最頂部までの高さを100%としたときの50%よりも高い部分の隔壁幅の最大値を指す。隔壁頂部細幅化のメカニズムは明確ではないが、i線に高い吸光係数を示す紫外線吸収剤を含有することで、隔壁頂部付近でi線の散乱を効率良く吸収し、頂部付近の露光光の直進性が向上するためであると推測している。紫外線吸収剤の吸光係数は、例えば紫外線吸収剤を既知の吸光度特性を有する溶剤に溶解または分散させて吸光度を測定し、ランベルト・ベールの法則(A=αLC A:吸光度、α:吸光係数、L:セルの光路長、C:溶液濃度)により求めることができる。吸光度は、例えば紫外線吸収剤のクロロホルム溶液を光路長が1cmの石英セルを用いて分光光度計(例えば、株式会社日立製作所製 U−3210)により測定できる。
i線における吸光係数がh線における吸光係数およびg線における吸光係数よりも大きい紫外線線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられ、具体例としては2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸トリハイドレート、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−フェニル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(3−ドデシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)等が挙げられる。
本発明の感光性ペーストでは、前記紫外線吸収剤を前記式(1)で示される化合物と共に含有し、その含有量を調整することで隔壁形状を調整することができ、ペースト中に前記式(1)で示される化合物と前記紫外線吸収剤の質量比が5:1〜2:1の割合で含有することで特に良好な隔壁形状を形成できる。前記紫外線吸収剤の含有量が前記範囲より小さい場合は頂部幅の細幅化効果が小さく、底部幅よりも頂部幅が太い隔壁形状になってしまうため、隔壁セルの開口部が狭くなる傾向があるため好ましくない。また、前記紫外線吸収剤の含有量が前記範囲より大きい場合は頂部幅の細幅効果が大きくなりすぎ、頂部が蛇行しやすくなり、蛇行しないパターンを形成しようとすると、必要となる露光量が高くなり好ましくない。
本発明では前記紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤として光褪色性化合物、有機系染料等を1種または2種以上使用することができ、含有量は、前記紫外線吸収剤とは別に感光性ペースト中に0.001〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜0.5質量%である。
光褪色性化合物とは、活性光線の波長領域の光を照射したときに、活性光線の波長領域の光を吸収し、光分解や光変性などの化学構造の変化を通し、活性光源の波長領域での吸光度が照射前に比べて小さくなるものをいう。光褪色性化合物を感光性ペーストに添加することによって、マスクパターンの非露光部領域への露光光の侵入を防ぎ、パターンの底部太りを抑制することができる。また、露光部領域においては光褪色性化合物が露光光のエネルギーを吸収し、光分解や光変性を経て次第に吸光しなくなるため、下層まで十分な露光光が到達しやすくなる。従って、非露光部と露光部の光硬化のコントラストが明確となり、露光量マージンを向上させることができる。光褪色性材料としては、光褪色性染料、光酸発生剤、光塩基発生剤、ニトロン化合物などの光分解性化合物や、アゾ系染料、フォトクロミック化合物などの光変性化合物が挙げられる。光酸発生剤の具体例としては、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾケトン化合物などを例として挙げることができる。
また、有機染料を添加して着色することにより視認性が良くなり、現像時にペーストが残存している部分と除去された部分との区別が容易になる。有機染料としては、特に限定はされないが、焼成後の絶縁膜中に残存しないものが好ましい。具体的にはアントラキノン系染料、インジゴイド系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム系染料、キノンイミン系染料、メチン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、フタルイミド系染料、ペリノン系染料などが使用できる。
感光性ポリマとしてはアルカリ可溶性のポリマを好ましく用いることができる。ポリマがアルカリ可溶性を有することで現像液として環境に問題のある有機溶媒ではなくアルカリ水溶液を用いることができるためである。アルカリ可溶性のポリマとしては、アクリル系共重合体を好ましく用いることができる。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマを含む共重合体である。アクリル系モノマ以外の共重合成分としては、炭素−炭素2重結合を有する化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類や、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
アクリル系共重合体にアルカリ可溶性を付与するためには、モノマとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより達成される。これらを付加した後のポリマの酸価は50〜150の範囲であることが好ましい。
アクリル系共重合体の露光による硬化反応の反応速度を大きくするためには、側鎖または分子末端に炭素−炭素2重結合を有するアクリル系共重合体とすることが好ましい。炭素−炭素2重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。このような官能基をアクリル系共重合体に付加させるには、アクリル系共重合体中のメルカプト基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基と炭素−炭素2重結合有する化合物や、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させてつくる方法がある。
グリシジル基と炭素−炭素2重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアネート基と炭素−炭素2重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネート等が挙げられる。
さらに、本発明の感光性ペーストは、有機成分として非感光性のポリマ成分、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース化合物、高分子量ポリエーテルなどを含有しても良い。
また、感光性モノマは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であり、その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマ、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、多官能モノマにおいて、不飽和結合を有する基はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が混在していてもよい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
本発明で用いられる感光性ペーストは、さらにウレタン化合物を含有することが好ましい。ウレタン化合物を含有することにより、ペースト乾燥膜の柔軟性が向上し、焼成時の応力を小さくでき、亀裂や断線などの欠陥を効果的に抑制できるためである。また、ウレタン化合物を含有することにより、熱分解性が向上し、焼成工程において焼成残渣が発生しにくくなる。
本発明で好ましく用いられるウレタン化合物の具体例としては、UA−2235PE(分子量18000、エチレンオキサイド含有率(以後EO含有率)20%)、UA−3238PE(分子量19000、EO含有率10%)、UA−3348PE(分子量22000,EO含有率15%)、UA−5348PE(分子量39000、EO含有率23%)(以上、新中村化学株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は混合して用いてもよい。
ウレタン化合物の含有量は、溶媒を除く有機成分の0.1〜10質量%であることが好ましい。含有量を0.1質量%以上とすることで、ペースト乾燥膜の柔性を向上することができ、ペースト乾燥膜を焼成する際の焼成収縮応力を緩和することができる。含有量が10質量%を超えると、有機成分と無機成分の分散性が低下し、また相対的にモノマおよび光重合開始剤の濃度が低下するので、欠陥が生じやすくなる。
光重合開始剤は活性光源の照射によってラジカルを発生する光ラジカル開始剤を好ましく用いることができ、その具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性モノマと感光性ポリマの合計量に対し、0.05〜20質量%、より好ましくは、0.1〜15質量%の範囲で添加される。光重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となるおそれがあり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
また、光重合開始剤と共に増感剤を使用し、感度を向上させたり、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。増感剤の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラ−ケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス−(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルへキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を本発明の感光性ペーストに添加する場合、その添加量は溶媒を除く有機成分に対して好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。増感剤の添加量をこの範囲内とすることにより、露光部の残存率を保ちつつ良好な光感度を得ることができる。
本発明の感光性ペーストにおいては、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤(以降、カップリング剤という)を含有することが必要である。ここで、シランカップリング剤とは、無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性のシリル基と、有機物に対して親和性あるいは反応性を有する有機官能性基を有するシラン化合物であり、チタンカップリング剤はシラン部分をチタンに置換した構造を有するものである。カップリング剤を用いることにより、特に感光性ペースト中でのシリカ系複合酸化物粒子の分散性を向上することができ、主として以下の三点の効果を得ることができる。第一に、焼成前のペースト膜と下地層の接着性が向上し現像時の剥がれを抑制できるので、より線幅の細いパターンの形成が可能になる。第二に分散性の向上によりペースト乾燥膜の光散乱が抑制され、低露光量の加工が可能となったり、線幅の細いパターンの形成が可能になる。
カップリング剤の中では、使いやすさやコストの面から、シランカップリング剤が特に好ましい。
本発明の感光性ペーストに用いるシランカップリング剤が有する加水分解性のシリル基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基が挙げられるが、通常、アルコキシ基、特にメトキシ基やエトキシ基が好ましく用いられる。
本発明の感光性ペーストに用いるシランカップリング剤が有する有機官能基としては、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、アルキル基、アリル基などを挙げることができる。具体的にはN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノメチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどを挙げることができる。本発明ではこれらのカップリング剤から選んだ1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。また、上記カップリング剤1種を用いた自己縮合物や、2種以上を組み合わせた異種縮合物を使用してもよい。
本発明の感光性ペーストに用いるカップリング剤は、感光性の有機官能基を有することが好ましく特に、エチレン性不飽和基を少なくとも有することが好ましい。エチレン性不飽和基としては、具体的にはメタクリル基、アクリル基、ビニル基を挙げることができる。これらの有機官能基を有するカップリング剤は、ラジカル重合性のモノマとしても作用し、露光時に無機成分と有機成分の境界付近の光硬化度を向上することができるので、上述のカップリング剤添加の効果に加え、現像液の染み込みなどによるパターンの蛇行を抑制する効果が大きくなる。
本発明においては、カップリング剤の重量平均分子量は200〜1000であることが好ましく、250〜500であることがより好ましい。重量平均分子量が200以上であることで、ペースト塗布膜の乾燥時の蒸発を抑制することができ、1000以下であることで、焼成時の熱分解性を良好に保つことができる。
カップリング剤は、30℃から100℃まで10℃/分で昇温後、100℃で2時間保持した時の重量保持率が80質量%以上であることが好ましい。カップリング剤の重量保持率を80質量%以上とすることで、ペースト塗布膜乾燥時のカップリング剤の揮発を抑制し、乾燥後のガラス基板とパターンの密着力が向上することによって高精細なパターン形成時でも露光量マージンを向上させることができる。カップリング剤は常温においても、感光性ペーストに含まれる無機成分と縮合反応などを通して化学的に結合し揮発性を有しなくなるため、カップリング剤単独の重量保持率が80質量%以上有すれば十分であるが、90質量%以上のものをさらに好ましく用いることができる。
また、上述のカップリング剤により表面処理を行った無機成分を用いることも本発明の好ましい形態である。表面処理を行った無機成分を用いることで、無機成分と有機成分との親和性を高め、露光部の耐現像性を向上することができる。表面処理の方法は任意であるが、例えば、カップリング剤を含む希薄水溶液を調整して無機成分を含浸処理する水溶液法、カップリング剤を含む有機溶媒を塗布する有機溶媒法、直接カップリング剤を噴霧するスプレー法などを挙げることができる。
カップリング剤の添加量は、無機成分の添加重量に対して1〜10質量%の範囲であることが好ましい。1質量%より少ない場合、上記に述べた有機成分と無機成分の密着力向上などのカップリング剤添加の効果が得られにくい。10質量%より大きい場合、カップリング剤同士で縮合反応を起こし、ペーストの保存安定性を損なう場合があるので好ましくない。
本発明の感光性ペーストは、無機成分として低軟化点ガラス粉末を必須成分とする。本発明において低軟化点ガラス粉末とは、荷重軟化温度が400〜600℃の範囲であるガラス粉末を指す。荷重軟化温度がこの範囲にあることで現像後のパターンを焼成することによって無機材料パターンを形成することができ、特に焼結時にパターンの変形がなく、溶融性も適切となるためである。より好ましい荷重軟化温度の範囲は450〜550℃である。また、低軟化温度ガラス粉末の無機成分に占める割合は60体積%〜85体積%が好ましい。含有割合が60体積%より小さくなると、焼成時の焼結が困難になり、焼成後のパターンの空隙率の大きくなるため好ましくない。85体積%より大きくなると、焼成時の無機成分全体の流動性が大きくなってしまうため焼成後のパターン形状の制御が困難になる、焼成後のパターンの機械的強度が小さく衝撃によってパターンの欠けが発生する、などの問題が発生する場合があるため好ましくない。
低軟化点ガラス粉末の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。無機成分と有機成分の屈折率を整合させ、光散乱を抑制することにより高精度のパターン加工が容易になる。また、低軟化点ガラス粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、重量分布曲線における50%粒子径(平均粒子径)が0.1〜3.0μm、最大粒子経(トップサイズ)が10μm以下であることが好ましい。
本発明の感光性ペーストで好ましく使用できる低軟化点ガラス粉末は例えば酸化物表記で下記の組成を有するものである。
酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム 3〜15質量%
酸化ケイ素 5〜30質量%
酸化ホウ素 20〜45質量%
酸化バリウムまたは酸化ストロンチウム 2〜15質量%
酸化アルミニウム 10〜25質量%
酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム 2〜15質量%
上記のように、酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウムのアルカリ金属酸化物のうち少なくとも1種を用い、その合計量が3〜15質量%、さらには3〜10質量%であることが好ましい。
また、上記の組成には表記されていないが、酸化亜鉛や酸化チタン、酸化ジルコニウムなどを含有させることも好ましい。
低軟化点ガラス粉末の作製法としては、例えば原料である酸化リチウム、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化バリウム、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムなどを所定の配合組成となるように混合し、900〜1200℃で溶融後、急冷し、ガラスフリットにしてから粉砕して1〜5μmの微細な粉末にする。原料は高純度の炭酸塩、酸化物、水酸化物などを使用できる。また、ガラス粉末の種類や組成によっては99.99%以上の超高純度なアルコキシドや有機金属の原料を使用し、ゾルゲル法で均質に作製した粉末を使用すると、高電気抵抗かつ緻密で気孔の少ない、高純度な焼成膜が得られるので好ましい。
本発明の感光性ペーストは、無機成分としてシリカ成分の含有率が80〜95モル%であるシリカ系複合酸化物粒子を含有することが好ましい。本発明におけるシリカ系複合酸化物粒子とは、粒子中のシリカ成分の割合が80〜95モル%である複合酸化物からなる粒子を指す。ここでいうシリカ成分の含有率とは、シリカを構成するシリコンのモル数をA、シリコン以外の金属酸化物を構成する金属元素のモル数をBとすると、A/(A+B)×100で表わされる。本発明のシリカ系複合酸化物粒子を構成する金属酸化物成分としては、シリカ以外にリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、ハフニウム、錫または鉛などの金属の酸化物があげられる。これらの金属酸化物を単独または二種類以上組み合わせてシリカと複合化しても良い。シリカ系複合酸化物粒子中のシリカ成分の割合が80モル%より小さい場合、シリカ系複合酸化物粒子自体の透明性が損なわれやすくなるので好ましくない。また、シリカ成分の割合が95モル%より大きい場合、分散時に凝集しやすくなったり焼成後の隔壁が脆くなりやすくなるなどの点で好ましくない。このようなシリカ系複合酸化物粒子を含有することにより、感光性ペーストの露光量を低く抑える効果や、パターン形成可能な露光量範囲(露光量マージン)を拡大できるなど、細幅、狭ピッチの微細な隔壁パターンのパターン形成性が改良できる。
上述のシリカ系複合酸化物粒子には、シリカ以外の金属酸化物として、特にチタニアまたはジルコニアを含有することが好ましい。チタニアまたはジルコニアを含有するシリカ系複合酸化物粒子は機械的強度が高く、耐薬品性に優れるため、このようなシリカ系複合酸化物粒子を用いることで、パターン形成時の改良効果に加えて、焼成後のパターンの機械的強度が向上したり、耐候性が向上しやすいからである。また、チタニアおよびジルコニアは単体での屈折率が高く、シリカ成分との比率を制御することによってシリカ系複合酸化物粒子の屈折率の制御範囲を広く取ることができるからである。さらに、透明性の高いシリカ系複合酸化物粒子を得やすいので、感光性ペーストのパターン形成性が向上しやすいからである。
シリカ系複合酸化物粒子の製造には、固相法、液相法、気相法などの一般的に知られた方法を用いることができる。本発明で用いるシリカ系複合酸化物粒子は、粒径が小さく、球状であり、透明性が高い方が好ましいので、特にゾルゲル法が製造方法として好ましい。ゾルゲル法とは、テトラエチルシリケートやテトラメチルシリケートのような金属アルコキシドを原料とし、触媒を含む含水有機溶媒中で前記金属アルコキシドを加水分解・縮合する製造方法である。
シリカ成分とシリカ以外の成分はシリカ系複合酸化物粒子内で互いに混ざりあっていても、コア部がシリカ成分でシリカ以外の成分がシェル部となるようなコア−シェル構造を形成していても良い。互いに混ざり合う場合、シリカ成分とシリカ以外の成分が100nm以下のオーダーで均一に混ざり合い、成分間の境界がない方が粒子の透過率が高くなりやすく、感光性ペースト法において露光光のロスが小さいため、感光性ペーストをより低露光量で加工できるので好ましい。また、コア−シェル構造の場合、シェル部の厚みを100nm以下とすることで光散乱が抑制され、感光性ペーストをより低露光量で加工できるので好ましい。
シリカ系複合酸化物粒子の粒子径は、形成したいパターンの幅、高さ等により決まるが、重量分布曲線における50%粒子径(平均粒子径)d50が0.1〜3.0μmであることが好ましい。平均粒子径が0.1μmより小さくなると、ペースト作製時にシリカ系複合酸化物粒子の凝集が生じやすくなるため好ましくない。凝集粒子の粒子径は50%粒子経よりもはるかに大きくなる場合があり、ペースト塗布時にピンホールが発生することにより形成後の隔壁パターンに欠けが生じたり、ペーストを塗布後、乾燥した膜を露光する際に凝集物が露光光のペースト膜への透過を阻害することにより光硬化反応が抑制され、隔壁パターンの欠けや幅や高さの寸法ばらつきが生じやすくなるため好ましくない。さらに、凝集した粒子の大きさが10μmを超えると、焼成後の隔壁パターンの頂部の平滑性が損なわれたり、異常突起の原因となるので好ましくないからである。また、平均粒子径が3.0μmより大きくなると、上述の凝集粒子がペースト内に含有される場合と同様に、隔壁パターンの欠けや幅、高さ等の寸法ばらつきが生じ、隔壁頂部の平坦性が損なわれやすいため好ましくない。焼成後に得られる無機成分からなるパターンの表面粗さが大きくなり、ディスプレイ用途に用いる場合、ディスプレイ特性に悪影響を及ぼす場合がある。具体的には、隔壁頂部の突起が大きくなるため、ディスプレイに機械的衝撃が印加された際に、衝撃による応力が突起部分に局所的に集中しやすく、隔壁パターンの破損およびそれに伴なうディスプレイの表示特性の悪化(不灯、輝度低下)が生じる。平均粒子径が3.0μm以下の場合、表面の平滑性が向上するため、衝撃による応力が集中しにくくなる上に、粒子径が小さいこと自体により、隔壁パターンの破損が面積的、体積的に小規模にとどまるので、ディスプレイ特性への悪影響を防止しやすい。また、重量分布曲線のトップサイズ(最大粒子経)dmaxは10μm以下であることが好ましい。最大粒子径が10μmより大きくなると、形成した絶縁パターンの表面粗さが大きくなり、ディスプレイ特性に悪影響を及ぼす場合がある。粒子の重量分布曲線は、粒度分布測定装置(例えば、日機装製「MT3300」)を用いて評価することができる。
シリカ系複合酸化物粒子の形状は略球状であることが好ましい。ここで言う、「略球状」とは、真球のみに限定されるものではなく、本発明の作用効果が発現される一定の幅をもった範囲として定義され、球類似形状も含まれる。具体的には粒子形状の尺度である真円度が0.7以上であるものを指す。真円度は、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)で得たられた画像を基に評価できる。先ず、粉末の透過型電子顕微鏡写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の真円度はA/Bとして表示できる。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の真円度は、真円度=A/B=A×4π/(PM)2として算出することができる。この値の100個以上の平均値によりシリカ系複合酸化物粒子の真円度を決定できる。真円度が0.7より小さくなると、粒子同士のパッキングが悪くなることで感光性ペーストを塗布、乾燥することによって得られるペースト乾燥膜中に空隙が生じやすく、露光時の光散乱因子が増大することや焼成後のパターンに空隙が含まれやすくなるなどの点で好ましくない。
シリカ系複合酸化物粒子の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。屈折率がこの範囲にあることでシリカ系複合酸化物粒子と有機成分の屈折率が近い値となるため、露光時の光散乱が抑制され、高精度のパターン加工が容易になる。屈折率は、シリカ成分とシリカ以外の金属酸化物成分(特に、屈折率が2以上のジルコニア、チタニアなどの高屈折率成分)の含有割合を調整することにより任意に制御することができる。シリカ系複合酸化物粒子の屈折率は液浸法により評価することができる。即ち、異なる屈折率の溶媒(例えば、トルエン、1−ブロモナフタレン、1−クロロナフタレン、ジヨードメタン、イオウ入りジヨードメタンなど)を比率を変更して配合することにより屈折率の異なる混合溶媒を作り、その中に粒子を分散させて25℃において最も透明な粒子分散溶液の屈折率を粒子の屈折率とする。
本発明では、上記のペーストに含まれる無機成分中のシリカ系複合酸化物粒子の割合が15〜40体積%であることが好ましい。15体積%より小さいと、シリカ系複合酸化物粒子によるパターン形成性改良の効果が十分得られない場合があり、40体積%より大きいと、無機成分の焼成時の焼結性が低下し、隔壁の機械的強度の低下や隣接セルへの電荷抜けが生じるなどの問題が生じる場合がある。無機成分中のシリカ系複合酸化物粒子の割合は、ペースト作成時の各成分の配合量から算出することができるが、感光性ペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜もしくは乾燥膜を焼成することによって得られるペースト焼成膜の断面を走査型電子顕微鏡観察することによっても求めることができる。ペースト乾燥膜もしくはペースト焼成膜の膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)により観察し、像の濃淡により無機成分の種類を区別し、画像解析を行えばよい。像の濃淡と無機成分の関係は、X線による元素分析を使用することにより特定することができる。透過型電子顕微鏡の評価エリアとしては、例えば、20μm×100μm程度の面積を対象とし、1000〜3000倍程度で観察すればよい。
本発明におけるフィラーとは、パターンの強度や、焼成収縮率を改善するために添加されるものであり、焼成温度でも溶融流動しにくい無機粒子を指す。具体的には、600℃以下で軟化温度や融点、分解温度を有さず、600℃において固体として存在するような無機粒子をいう。このようなフィラーを添加することで、パターンの焼成による収縮を抑制したり、パターンの強度を向上させることができる。本発明におけるシリカ系複合酸化物粒子は、パターン形成性の改良効果に加え、フィラーとしての機能を併せ持つ。
本発明では、フィラーとして、シリカ系複合酸化物粒子以外に荷重軟化温度が600〜1200℃である高軟化点ガラス粉末や、コーディエライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニアなどのセラミックス粉末から選ばれた少なくとも1種をシリカ系複合酸化物粒子と同時に用いることができるが、平均粒子径や平均屈折率の調節のしやすさの点から高軟化点ガラス粉末の使用が好ましい。
シリカ系複合酸化物以外のフィラー成分は感光性ペースト中への分散性や充填性、露光時の光散乱の抑制を考慮し、平均粒子径0.1〜3.0μm、平均屈折率1.50〜1.65であるものを好ましく使用することができる。
フィラーの含有割合は全無機成分に対して15〜40体積%となる組成範囲で添加することが好ましい。15体積%より少ない場合は焼成時にパターンのエッジが崩れやすくなり、良好な形状のパターンが得られない場合がある。また40体積%より多い場合は形成するパターンの緻密性が低下しやすくなるので好ましくない。本発明において、上記無機成分は感光性ペーストの固形分中に40体積%〜65体積%、より好ましくは40体積%〜55体積%の含有率で含まれていることが望ましい。ここで、固形分とは、ペースト中に含まれる溶媒を除く有機成分および無機成分を意味する。固形分中の無機成分の含有割合が40体積%より小さくなると焼成によるパターンの収縮が大きくなり、形状が不良となりやすいので好ましくない。また、含有割合が65体積%より大きくなると露光による架橋反応が不十分となり、パターン形成が難しくなるので好ましくない。
固形分中の無機成分の含有割合(体積%)は、ペースト調製時に無機成分および有機成分の比重を考慮して、添加量(質量%)で制御できる。また、無機成分の含有割合を分析する方法としては、熱重量測定(TGA)と無機成分の焼成膜の比重測定により求める方法や、感光性ペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜の透過型電子顕微鏡観察像の画像解析により求める方法が挙げられる。熱重量測定と無機成分の焼成膜の比重測定により求める場合、例えば、感光性ペースト十mg程度をサンプルとして、室温〜600℃の重量変化をTGA(例えば、株式会社島津製作所製TGA−50)により評価する。通常、100〜150℃でペースト中の溶媒が蒸発するので、溶媒蒸発後の重量に対する600℃昇温後の重量の割合から、無機成分と有機成分の質量比を求める。一方、焼成膜の膜厚、面積と質量を基に無機成分の比重を評価すれば含有割合を評価できる。また、透過型電子顕微鏡観察により含有割合を求める場合は、ペースト乾燥膜の膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)により観察し、像の濃淡により無機成分と有機成分を区別し、画像解析を行えばよい。透過型電子顕微鏡の評価エリアとしては、例えば、20μm×100μm程度の面積を対象とし、1000〜3000倍程度で観察すればよい。
本発明では酸化防止剤が好ましく添加される。酸化防止剤とは、ラジカル連鎖禁止作用、三重項の消去作用、ハイドロパーオキサイドの分解作用を持つものである。感光性ペーストに酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤がラジカルを捕獲したり、励起された光重合開始剤や増感剤のエネルギー状態を基底状態に戻したりすることにより散乱光による余分な光反応が抑制され、酸化防止剤で抑制できなくなる露光量で急激に光反応が起こることにより、現像液への溶解、不溶のコントラストを高くすることができる。具体的にはp−ベンゾキノン、ナフトキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ピクリン酸、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピロガロール、タンニン酸、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、クペロン、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)−2−エチルへキシルアミノニッケル−(II)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されない。本発明ではこれらを1種以上使用することができる。酸化防止剤の添加量は、感光性ペースト中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%の範囲である。酸化防止剤の添加量をこの範囲内とすることにより、感光性ペーストの光感度を維持し、また重合度を保ちパターン形状を維持しつつ、露光部と非露光部のコントラストを大きくとることができる。
感光性ペーストを基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整するために有機溶媒が使用される。このとき使用される有機溶媒としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などや、これらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混物が用いられる。
本発明の感光性ペーストは、各成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーなどの混練機器を用いて本混練を行って、均質分散し、感光性ペーストを作製する。また、本混練を終えた感光性ペーストを適宜、濾過、脱泡しておくことも好ましい。
以下にプラズマディスプレイ部材の作製方法を説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。
ガラス基板は、ソーダガラス、旭硝子株式会社製“PD200”、日本電気硝子株式会社製“PP8”等を用いることができる。ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により、アドレス用のストライプ状電極パターンを形成する。形成方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに通常350〜600℃に加熱・焼成して電極パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウムを蒸着した後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより不要な部分を取り除く、エッチング法を用いることができる。さらに、アドレス電極上に誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層を設けることによって、放電の安定性向上や、誘電体層の上層に形成する隔壁の倒れや剥がれを抑止することができる。また、誘電体層を形成する方法としては、ガラス粉末や高融点ガラス粉末などの無機成分と有機バインダーを主成分とする誘電体ペーストをスクリーン印刷、スリットダイコーター等で全面印刷または塗布する方法などがある。
次に本発明の感光性ペーストを用いたフォトリソグラフィ法による隔壁の形成方法について説明する。まず、誘電体を形成した基板上に本発明の感光性ペーストからなる隔壁ペーストを塗布、乾燥する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の方法を用いることができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度等によって調整できる。乾燥は熱風乾燥機、IR乾燥機等を用いて行い、乾燥温度や時間は用いたペーストの溶剤や塗布膜厚によって調整できる。
次に塗布、乾燥した隔壁ペーストを露光する。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。この際使用される活性光源は、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度の差を利用して現像を行うが、通常、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等で行う。現像液としては感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いることができるが、感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されにくく、アルカリ濃度が高すぎればパターンが剥離や腐食するおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
現像後、焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で例えば570〜600℃で10〜20分間焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
隔壁パターンは特に限定されないが、格子状、ワッフル状などが好ましい。隔壁高さは例えばAC型プラズマディスプレイの場合、維持電極とアドレス電極の放電距離等の理由から90〜150μmが好ましい。隔壁の断面形状としては、放電空間を最も大きくなる矩形又は台形が好ましい。隔壁パターンのピッチは、いわゆるハイビジョン対応の画素数:1024×768の場合、250〜400μm、画素数:1920×1080の場合、120〜250μm、更に高精細の画素数:3840×2160の場合、100μm以下にする必要がある。隔壁パターンピッチが狭いほど、放電空間や蛍光体塗布面積を広く確保する必要があるため、隔壁幅も細い方が好ましい。具体的には、隔壁ピッチが250〜400μm、120μm〜250μm、100μm以下の場合、それぞれ80μm以下、50μm以下、30μm以下が好ましい。
従来の感光性ペーストでは、セルピッチが160μm以下の場合、細幅で断面形状の良好な隔壁パターンの形成は困難であるが、本発明の感光性ペーストでは、ピッチ160μm以下の隔壁パターンを細幅で矩形又は台形の断面形状に形成することができる。
次に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体を形成する。感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィ法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。蛍光体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl10O17:Eu)やCaMgSi2O6である。緑色では、パネル輝度の点からZn2SiO4:Mn、YBO3:Tb、BaMg2Al14O24:Eu,Mn、BaAl12O19:Mn、BaMgAl14O23:Mnが好適である。さらに好ましくはZn2SiO4:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu、YPVO:Eu、YVO4:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO3:Euである。焼成する工程を経て蛍光体を形成する場合、上述の誘電体層や隔壁の焼成と同時に行っても良い。