JP4505122B2 - リホーミング用触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一酸化炭素(CO)と水素(H2 )との混合ガスである合成ガスを、メタンなどの炭化水素と水、二酸化炭素、酸素、空気などの改質物質とから得るためのリホーミング用触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、メタン、天然ガス、石油ガス、ナフサ、重油、原油などの炭化水素と、水、空気、酸素あるいは二酸化炭素の改質物質とを高温で触媒の存在下、反応させて、反応性に富む一酸化炭素と水素とからなる合成ガスを生成するリホーミングが行われており、生成した合成ガスを原料としてメタノールや液体燃料油が製造されている。
このリホーミングに使用されるリホーミング用触媒としては、ニッケル/アルミナ触媒、ニッケル/マグネシア/アルミナ触媒などが用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのリホーミング用触媒を用いた反応では、例えばメタンと水蒸気とを化学等量反応させようとすると、炭素質(カーボン)が多量に析出する問題がある。よって、この炭素質の析出を防止するために大過剰の水蒸気を供給し、リホーミング反応を促進する必要がある。
このため、従来のリホーミングにあっては、多量の水蒸気を必要とするためエネルギーコストが嵩み、設備が大型化する不都合があった。
そこで本出願人は、大過剰の水蒸気を供給しなくても炭素質(カーボン)の析出を抑制できるリホーミング用触媒として、コバルト/マグネシア系触媒を特願平10−103203号および特願平11−98220号で報告したが、このような炭素質(カーボン)の析出を抑制できる触媒を、より低コストで生産性良く製造できる方法の開発が望まれていた。
【0004】
本発明の目的は、炭化水素に化学等量もしくはそれに近い量の改質物質を加えて合成ガスを製造する際にも炭素質が析出しない触媒を、生産性良く製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のリホーミング用触媒の製造方法は、下記式(1)で表される組成を有する複合酸化物からなり、MおよびCoが該複合酸化物中で高分散化されているリホーミング用触媒の製造方法であって、MとCoとMgとCaとを下記式(1)で表された比率で含有する水溶液に、共沈剤を添加して沈殿を生成させる沈殿生成工程と、前記沈殿を乾燥し、乾燥沈殿物とする乾燥工程と、前記乾燥沈殿物を焼成する焼成工程を有し、沈殿生成工程を313〜373Kで行うことを特徴とする。
aM・bCo・cMg・dCa・eO・・・(1)
(式中、a,b,c,d,eはモル分率であり、a+b+c+d=1、0.0001≦a≦0.10、0.0001≦b≦0.20、0.70≦(c+d)≦0.9998、0<c≦0.9998、0≦d<0.9998、e=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mはマンガンである。)
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の製造方法で製造されるリホーミング用コバルト系触媒について説明する。
このリホーミング用コバルト系触媒は、下記式(1)で表される組成の複合酸化物からなるものである。ここでの組成は焼成後の無水物基準で表されたものである。
aM・bCo・cMg・dCa・eO…(1)
(式中、a,b,c,d,eはモル分率であり、a+b+c+d=1、0.0001≦a≦0.10、0.0001≦b≦0.20、0.70≦(c+d)≦0.9998、0<c≦0.9998、0≦d<0.9998、e=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mは周期律表第6A族元素、第7A族元素、Coを除く第8族遷移元素、第1B族元素、第2B族元素、第4B族元素およびランタノイド元素の少なくとも1種類の元素である。)
なお、ここでの周期律表はIUPACによるものとする。
ここでMは、マンガン、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、ランタニウム、セリウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、この組成において、Mの含有量(a)は、0.0001≦a≦0.10であり、好ましくは0.0001≦a≦0.05、さらに好ましくは0.0001≦a≦0.03である。Mの含有量(a)が0.0001未満では、炭素質析出抑制効果が認められず、0.10を越えるとリフォーミング反応の活性を低下させ不都合である。
【0007】
コバルト含有量(b)は、0.0001≦b≦0.20であり、好ましくは、0.0001≦b≦0.15、さらに好ましくは0.0001≦b≦0.10である。コバルト含有量(b)が0.0001未満ではコバルトの含有量が少なすぎて反応活性が低く、0.20を越えると後述する高分散化が阻害され、炭素質析出防止効果が十分得られない。
【0008】
マグネシウム含有量(c)とカルシウム含有量(d)との合計量(c+d)は、0.70≦(c+d)≦0.9998であり、好ましくは0.85≦(c+d)≦0.9998、さらに好ましくは0.90≦(c+d)≦0.9998である。このうち、マグネシウム含有量(c)は0<c≦0.9998であり、好ましくは0.35≦c≦0.9998、さらに好ましくは0.6≦c≦0.9998であり、カルシウム含有量(d)は0≦d<0.9998、好ましくは0≦d≦0.5、さらに好ましくは0≦d≦0.3であり、カルシウムを欠くものであってもよい。
【0009】
マグネシウム含有量(c)とカルシウム含有量(d)との合計量(c+d)は、M含有量(a)およびコバルト含有量(b)とのバランスで決められる。(c+d)は上記範囲内であればいかなる割合でもリホーミング反応に優れた効果を発揮するが、カルシウム(d)とM(a)の含有量が多いと炭素質析出の抑制に効果があるものの、マグネシウム(c)が多い場合に比べて触媒活性が低い。よって、活性を重視するのであれば、カルシウム含有量(c)が0.5を越え、M含有量(a)が0.1を越えると活性が低下するので好ましくない。
【0010】
本発明における複合酸化物とは、MgO、CaOが岩塩型結晶構造をとり、その格子に位置するMgまたはCa原子の一部がCoおよびMに置換した一種の固溶体であって、単相をなすものであり、各元素の単独の酸化物の混合物を言うものではない。
そして、本発明の製造方法で製造されるリホーミング用コバルト系触媒では、CoおよびMがこの複合酸化物中で高分散状態となっている。
【0011】
本発明での分散とは、一般に触媒分野で定義されているものであって、例えば「触媒講座 第5巻 触媒設計」第141頁(触媒学会編、講談社刊)などにあるように、担持された金属の全原子数に対する触媒表面に露出している原子数の比として定められるものである。
【0012】
これを、図1の模式図によって具体的に説明すると、複合酸化物からなる触媒1の表面には活性中心となる半球状などの微小粒子2、2…が無数存在しており、この微小粒子2は、後述する活性化(還元)処理後ではCoおよびMの金属元素またはその化合物からなっている。
この微小粒子2をなすCoおよびMの金属元素またはその化合物の原子数をAとし、これらの原子のうち粒子2の表面に露出している原子の数をBとすると、B/Aが分散度となる。
【0013】
触媒反応に関与するのは、微小粒子2の表面に露出している原子であると考えれば、分散度が1に近いものは多くの原子がその表面に分布することになって、活性中心が増加し、高活性となりうると考えられる。
また、微小粒子2の粒径が限りなく小さくなれば、微小粒子2をなす原子の大部分は、粒子2表面に露出することになって、分散度は1に近づく。したがって、微小粒子2の粒径が分散度を表す指標にもなりうる。
【0014】
本発明の製造方法で製造される触媒では、微細粒子2の径は種々の測定法、例えばX線回析法などの測定限界の3.5nm未満であり、このことから分散度が高く、高分散状態であると言うことができる。このため、反応に関与するコバルトおよびMの原子数が増加し、高活性となって、反応が化学量論的に進行し、炭素質(カーボン)の析出が防止される。
【0015】
このようにMおよびCoが該複合酸化物中で高分散化されているリホーミング用コバルト系触媒は、以下に説明する本発明の製造方法で効率的に製造できる。本発明のリホーミング用触媒の製造方法は、MとCoとMgとCaとを式(1)で表された比率で含有する水溶液に、共沈剤を添加して沈殿を生成させる沈殿生成工程と、前記沈殿を乾燥し乾燥沈殿物とする乾燥工程と、前記乾燥沈殿物を焼成する焼成工程とを有し、沈殿生成工程を313〜373Kで行う。
aM・bCo・cMg・dCa・eO…(1)
(式中、a,b,c,d,eはモル分率であり、a+b+c+d=1、0.0001≦a≦0.10、0.0001≦b≦0.20、0.70≦(c+d)≦0.9998、0<c≦0.9998、0≦d<0.9998、e=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mは周期律表第6A族元素、第7A族元素、Coを除く第8族遷移元素、第1B族元素、第2B族元素、第4B族元素およびランタノイド元素の少なくとも1種類の元素である。)
【0016】
沈殿生成工程における、MとCoとMgとCaとを式(1)で表された比率で含有する水溶液は、コバルト、マグネシウム、カルシウム、Mの酢酸塩などの有機塩や、硝酸塩などの無機塩といった水溶性塩類を、所望の比率で水に完全に溶解することによって得られる。
【0017】
共沈剤は、水溶液から沈殿を生成させることができるものであれば特に制限はないが、ナトリウム炭酸塩、カリウム炭酸塩、アンモニウム炭酸塩、ナトリウム炭酸水素塩、カリウム炭酸水素塩、アンモニウム炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アンモニア水から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、共沈剤の添加量は沈殿生成当量の1.0〜1.2倍とすることが好ましい。ここで沈殿生成当量とは、M、Co、Mg、Caをすべて水酸化物として沈殿させる場合に必要十分な共沈剤量の理論値である。共沈剤の添加量が沈殿生成当量の1.2倍を超えると、沈殿の生成量が多くゲル状のスラリーになり、このスラリーを十分に攪拌できなくなる場合がある。スラリーを十分に攪拌できないと、得られる触媒の組成が不均一になったり、CoおよびMが高分散しなくなったりする。また、スラリーがゲル状であると取扱いにくいうえ、沈殿の歩留まりが低下し、触媒の生産性が低下する。一方、共沈剤の添加量が沈殿生成当量の1.0倍未満では、十分に沈殿を生成させることができない場合がある。共沈剤の添加量を沈殿生成当量の1.0〜1.2倍とすることによって、水溶液のpHを8〜9.5に維持でき、沈殿を含むスラリーがゲル化せず、高い歩留まり、すなわち高い収量で沈殿を得ることができる。
【0018】
また、沈殿生成工程は、水溶液を313〜373Kに維持して行うことが好ましい。水溶液の温度が313K未満では、沈殿の生成量が多くゲル状のスラリーになり、このスラリーを十分に攪拌できなくなる場合がある。スラリーを十分に攪拌できないと、得られる触媒の組成が不均一になったり、CoおよびMが高分散しなくなったりする。また、スラリーがゲル状であると取扱いにくいうえ、沈殿の歩留まりが低下し、触媒の生産性が低下する。一方、373K以上では、沈殿の溶解度およびイオン積が大きくなるため、沈殿の歩留まりが低下し、触媒の生産性が低下する。さらに、CoおよびMを高分散させるためには沈殿生成工程中、水溶液を攪拌することが好ましく、沈殿生成後も10分間以上撹拌して沈殿の生成を完結させることが好ましい。
このようにして沈殿生成工程を行うことによって、MとCoとMgと必要に応じてCaを有する成分からなる化合物が、熱分解性水酸化物の形態で沈殿する。
【0019】
沈殿が生成した後、この沈殿物をろ過し、水や炭酸アンモニウム水溶液で洗浄を繰り返す。ついで、乾燥工程においてこの沈殿を373K以上の温度で乾燥し、乾燥沈殿物とする。
そして乾燥沈殿物を、通常973〜1573K、好ましくは1173〜1573K、より好ましくは1223〜1523Kで、1〜20時間焼成する焼成工程を行う。この焼成工程によって、熱分解性水酸化物が熱分解して酸化物となり、目的のリホーミング用触媒を得ることができる。焼成温度が973K未満では、炭素質(カーボン)析出を防止できる触媒が得られない場合がある。一方、1573Kを超えると、触媒活性が著しく低下する場合がある。また、焼成工程は空気中の他、不活性雰囲気中で行ってもよい。
【0020】
このような沈殿生成工程、乾燥工程、焼成工程で得られた触媒は、粉砕して粉末状として用いることもできるが、必要に応じて圧縮成型機により成型して、タブレット状として用いることもできる。また、これらの触媒を石英砂、アルミナ、マグネシア、カルシア、その他の希釈剤と合わせて用いることもできる。
【0021】
次に、本発明の製造方法で製造したリホーミング用触媒を用いて合成ガスを製造する方法について説明する。
まず、予めリホーミング用触媒の活性化処理を行う。この活性化処理は触媒を水素ガスなどの還元性気体の存在下で、773〜1273K、好ましくは873〜1273K、さらに好ましくは923〜1273Kの温度範囲で0.5〜30時間程度加熱することによって行われる。還元性気体は窒素ガスなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。
この活性化処理をリホーミング反応を行う反応器内で行うこともできる。
この活性化処理により、図1での触媒1表面の微小粒子2、2…が還元されてCoまたはMの金属元素またはその化合物となり、触媒活性が発現する。
本発明での活性化処理は、従来のCo酸化物系触媒の活性化よりも高温で行う。従来のCo酸化物系触媒ではすべて773K未満で行われており、本発明の製造方法で得られる触媒においては、このような高温での活性化処理も高分散化に寄与している可能性がある。
【0022】
合成ガスの原料となる炭化水素としては、天然ガス、石油ガス、ナフサ、重油、原油などや石炭、コールサンドなどから得られた炭化水素などが用いられ、その一部にメタンなどの炭化水素が含有されていれば、特に限定されることはない。これらは2種以上が混合されていてもよい。
また、改質物質としては、水(水蒸気)、二酸化炭素、酸素、空気などが用いられ、2種以上が混合されていてもよい。
【0023】
反応に際しての炭化水素と改質物質との供給割合は、炭化水素中の炭素原子の数を基準とするモル比で表して、改質物質/炭素比=0.3〜100、好ましくは0.3〜10、さらに好ましくは0.5〜3とされ、本発明では、改質物質を大過剰に供給する必要はない。炭化水素と改質物質との混合気体には、希釈剤として窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
【0024】
具体的な反応としては、上述のリホーミング用コバルト系触媒を充填した反応管に、炭化水素と改質物質とからなる原料ガスを供給し、温度773〜1273K、好ましくは873〜1273K、さらに好ましくは923〜1273Kの温度条件で、圧力条件が0.1〜10MPa、好ましくは0.1〜5MPa、さらに好ましくは0.1〜3MPaの範囲で反応を行う。
原料ガスの空間速度(GHSV:原料ガスの供給速度を体積換算の触媒量で除した値)は、500〜200000h-1、好ましくは1000〜100000h-1、さらに好ましくは1000〜70000h-1の範囲とすることが望ましい。また、触媒床の形態は、固定床、移動床、流動床などの周知の形態を任意に選択できる。
【0025】
このようなリホーミング用触媒の製造方法にあっては、CoOおよびMOxがMgOまたはMgO/CaOとの複合酸化物となっていて、コバルトおよびMが高分散化している触媒を生産性よく製造できる。すなわち、高活性で、メタンなどの炭化水素と水蒸気などの改質物質とを化学等量もしくはそれに近い量で反応させても、炭素質(カーボン)の析出を抑制でき、効率よく合成ガスを製造でき、寿命も長い高性能な触媒を、低コストで製造できる。このため、触媒製造を含めた合成ガス製造プロセス全体のコストを低く抑えることができる。
抑制され、触媒の寿命が長くなる。
【0026】
以下、具体例を示して本発明の作用、効果を明確にするが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
(実施例1)
硝酸コバルト六水和物16.2g、硝酸マグネシウム六水和物270.7g、硝酸マンガン六水和物3.19gを水500mlに溶解した。ついで、溶液温度を323Kに保ちながら、共沈剤として2mol/L炭酸カリウム水溶液590ml(沈殿生成当量の1.1倍)を加えることによってpHを9とし、コバルト、マグネシウムおよびマンガンの3成分からなる沈澱を生成させた。沈殿を含むスラリー溶液はゲル化しなかった。最終的に沈殿を生成した溶液はpH8.4となった。沈澱をろ過し、洗浄を行なった後、空気中、393Kで12時間以上乾燥した。乾燥後の沈殿の収量が85.8gであった。ついで、空気中、1453Kで5時間焼成して触媒Aを得た。
【0027】
(実施例2)
硝酸コバルト六水和物56.6g、硝酸マグネシウム六水和物235.0g、硝酸マンガン六水和物0.0032gを水500mlに溶解した。ついで、溶液温度を323Kに保ちながら、2mol/L炭酸カリウム水溶液590ml(沈殿生成当量の1.1倍)を加えることによってpHを9とし、コバルト、マグネシウムおよびマンガンの3成分からなる沈澱を生成させた。沈殿を含むスラリー溶液はゲル化しなかった。最終的に沈殿を生成した溶液はpH8.5となった。沈澱をろ過し、洗浄を行なった後、空気中、393Kで12時間以上乾燥した。乾燥後の沈殿の収量が84.7gであった。ついで、空気中、1453Kで5時間焼成して触媒Bを得た。
【0028】
(比較例1)
硝酸コバルト六水和物16.2g、硝酸マグネシウム六水和物270.7g、硝酸マンガン六水和物3.19gを水500mlに溶解した。ついで、溶液温度を293Kに保ちながら、2mol/L炭酸カリウム水溶液540ml(沈殿生成当量の1.0倍)を加えることによってpHを9とし、コバルト、マグネシウムおよびマンガンの3成分からなる沈澱を生成させた。沈殿を含むスラリー溶液がゲル化し、攪拌できなかった。最終的に沈殿を生成した溶液はpH9.4となった。沈澱をろ過し、洗浄を行なった後、空気中、393Kで12時間以上乾燥した。乾燥後の沈殿の収量は71.7gであった。
【0029】
(比較例2)
硝酸コバルト六水和物16.2g、硝酸マグネシウム六水和物270.7g、硝酸マンガン六水和物3.19gを水500mlに溶解した。ついで、溶液温度を293Kに保ちながら、2mol/L炭酸カリウム水溶液815ml(沈殿生成当量の1.5倍)を加えることによってpHを10とし、コバルト、マグネシウムおよびマンガンの3成分からなる沈澱を生成させた。沈殿を含むスラリー溶液がゲル化し、攪拌できなかった。最終的に沈殿を生成した溶液はpH10.8となった。沈澱をろ過し、洗浄を行なった後、空気中、393Kで12時間以上乾燥した。乾燥後の沈殿の収量は79.8gであった。
【0030】
(反応例1)
実施例1で調製した触媒A:30mlを加圧系固定床流通式反応器に充填して、メタンの CO2/水蒸気改質行った。触媒は予め水素気流中で1173Kで還元処理を行った後、 CH4:CO2:H2Oモル比=1:0.4:1の原料ガスを、圧力20kg/cm2 G、温度1123K、GSHV=6000h-1の条件で反応を行った。反応開始から100時間経過後のCH4 転化率は59%(反応条件下のCH4 の平衡転化率=59%)であり、3000時間経過後のCH4 転化率は59%であった。また、100時間経過後の触媒中における炭素析出量は、0.2wt%であり、非常に少ないレベルであった。
【0031】
(反応例2)
実施例2で調製した触媒B:30mlを加圧系固定床流通式反応器に充填して、メタンの CO2/水蒸気改質行った。触媒は予め水素気流中で1173Kで還元処理を行った後、 CH4:CO2:H2Oモル比=1:0.4:1の原料ガスを、圧力20kg/cm2 G、温度1123K、GSHV=6000h-1の条件で反応を行った。反応開始から100時間経過後のCH4 転化率は59%(反応条件下のCH4 の平衡転化率=59%)であった。また、100時間経過後の触媒中における炭素析出量は、0.2wt%であり、非常に少ないレベルであった。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のリホーミング用触媒の製造方法は、MとCoとMgとCaとを特定の比率で含有する水溶液に、共沈剤を添加して沈殿を生成させる沈殿生成工程と、前記沈殿を乾燥し乾燥沈殿物とする乾燥工程と、前記乾燥沈殿物を焼成する焼成工程を有し、沈殿生成工程を313〜373Kで行う。よって、CoOおよびMOxがMgOまたはMgO/CaOとの複合酸化物となっていて、コバルトおよびMが高分散化している触媒を、生産性よく製造できる。すなわち、高活性であり、メタンなどの炭化水素と水蒸気、二酸化炭素などの改質物質とを化学等量もしくはそれに近い量で反応させても、炭素質(カーボン)の析出を抑制でき、効率よく合成ガスを製造でき、寿命も長い高性能な触媒を、低コストで製造できる。このため、触媒製造を含めた合成ガス製造プロセス全体のコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の触媒の表面状態を模式的に示した説明図である。
Claims (4)
- 下記式(1)で表される組成を有する複合酸化物からなり、MおよびCoが該複合酸化物中で高分散化されているリホーミング用触媒の製造方法であって、
MとCoとMgとCaとを下記式(1)で表された比率で含有する水溶液に、共沈剤を添加して沈殿を生成させる沈殿生成工程と、前記沈殿を乾燥し乾燥沈殿物とする乾燥工程と、前記乾燥沈殿物を焼成する焼成工程を有し、
沈殿生成工程を313〜373Kで行うことを特徴とするリホーミング用触媒の製造方法。
aM・bCo・cMg・dCa・eO・・・(1)
(式中、a,b,c,d,eはモル分率であり、a+b+c+d=1、0.0001≦a≦0.10、0.0001≦b≦0.20、0.70≦(c+d)≦0.9998、0<c≦0.9998、0≦d<0.9998、e=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mはマンガンである。) - 沈殿生成工程における共沈剤の添加量を、沈殿生成当量の1.0〜1.2倍とすることを特徴とする請求項1に記載のリホーミング用触媒の製造方法。
- 焼成工程を973〜1573Kの温度で行うことを特徴とする請求項1または2に記載のリホーミング用触媒の製造方法。
- 共沈剤が、ナトリウム炭酸塩、カリウム炭酸塩、アンモニウム炭酸塩、ナトリウム炭酸水素塩、カリウム炭酸水素塩、アンモニウム炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アンモニア水から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のリホーミング用触媒の製造方法。
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