JP4502471B2 - 回転軸シール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転軸シールに係り、特に、カーエアコン用コンプレッサ等に於てCO2 ガス等の高圧流体を密封するのに用いられる回転軸シールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の回転軸シールとしては、図8に示すようなものが知られており、この回転軸シールは、コンプレッサのケース等のハウジング31と、回転軸32の間に介装され、流体収納室33内の流体や気体を密封する。
【0003】
その構造は、アウターケース34にゴム製シール部材35が接着され、さらに、螺旋溝付きの第1シールエレメント36・第2シールエレメント37を、第1インナーケース38・ワッシャ39・第2インナーケース40等を介して、アウターケース34内に、かしめ等にて、一体化されている。
【0004】
ゴム製シール部材35は、流体収納室33側へしだいに縮径するリップ先端部41を有する。このリップ先端部41の先端が略線接触状に回転軸32に接触して、密封作用をなす。
【0005】
そして、回転軸32の回転時には、リップ先端部41の先端と回転軸32の摺接部位から、仮に僅かの流体洩れが発生したとしても、第1・第2シールエレメント36, 37の螺旋溝(スクリュー溝)のハイドロダイナミック効果(ポンピング作用)によって、上記流体洩れを、図8の左方向へ押しもどし、回転軸シール全体としての回転時の密封を行う構造である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来の回転軸シールにあっては、図8中の矢印P方向に高い圧力が作用したとき、リップ先端部41は、大きく変形(過大変形)して回転軸32に強く押し付けられた面接触状態となり、密封性(シール性)が不安定になると共に、摺接面が早期に摩耗し、シール寿命が低下する虞れがある。
【0007】
そこで、本発明は、高い圧力によるリップ先端部の過大変形を抑えて回転軸との面接触を防止し、安定した密封性を確保できると共に、回転軸との摺接面の摩耗を低減し、耐久性の優れた回転軸シールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る回転軸シールは、ハウジングと回転軸の間に介装され、該回転軸に摺接するシールエレメントと、該シールエレメントより流体収納室側に配設されて該回転軸に摺接するゴム製リップ先端部を有する第1シール部材と、金属製アウターケースと、を備え、さらに、上記第1シール部材は、上記アウターケースの内鍔部を被覆する内鍔外被部と、上記回転軸と平行な短円筒部と、上記流体収納室側へしだいに縮径するように傾斜した上記リップ先端部とを、備え、上記短円筒部及び上記リップ先端部とから成るリップ部の断面は“へ”の字状であり、断面“へ”の字状に折曲った形状の補強金具が、上記リップ部の短円筒部の内部から上記リップ先端部の内部にわたって内装され、しかも、上記アウターケースの上記内鍔部に上記補強金具が連設されるように一体もので形成されている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
【0010】
図1は、本発明に係る回転軸シールの第1の実施の形態を示し、例えば、流体収納室33側に高圧の冷媒(CO2 等)が作用するカーエアコンコンプレッサ等に用いられる。この回転軸シールは、コンプレッサのケース等のハウジング31と、回転軸32(の外周面)との間に介装され、高圧の冷媒等の流体を密封するのに用いられる。
【0011】
なお、図1では回転軸シールの縦断面の半分のみを図示し、かつ、回転軸32とハウジング31は2点鎖線にて示す。また回転軸シールの形状は、未装着状態───自由状態───の場合を示し、回転軸32とハウジング31の間に介装された装着状態では、各部が弾性変形して介装される。
【0012】
具体的構成は、図1に於て、内鍔部2,3を有する金属製アウターケース1と、このアウターケース1の円筒部4の外周面と前方(流体収納室33側)の内鍔部2の前後両面に接着・溶着・焼付等によって固着一体化されたゴム製第1シール部材5と、溝6付きの第1シールエレメント7・第2シールエレメント8と、第1インナーケース9と、第1ワッシャ10と、第2インナーケース11と、アウターケース1の内鍔部2に一体的に連設───具体的には一体もので形成───された補強金具21と、から成る。
【0013】
アウターケース1の前半部位に一体状に固着された第1シール部材5は、ハウジング31の内周面に弾発的に接して密封作用を成すため(自由状態では)凹凸波形に外周面が形成された円筒部被覆部5aと、前方の内鍔部2の前後両面を被覆する内鍔外被部5bと、その内鍔外被部5bの内周側から流体収納室33側(前方)へ突設されたリップ部13と、から構成されている。
【0014】
このリップ部13は、さらに、回転軸32と平行な短円筒部13aと、流体収納室33側へしだいに縮径する───前内方へ傾斜する───リップ先端部13bと、から成り、このリップ部13は断面“へ”の字状に折曲った形状である。このリップ先端部13bの先端14が、装着(使用)状態で、回転軸32の外周面に線接触状態に接して、密封作用をなす。要するに、第1シール部材5は、回転軸32の回転時及び静止時の両方に於て、密封作用をなす。
【0015】
補強金具21は、リップ先端部13bに内装されると共に、アウターケース1の内鍔部2に連設されている。具体的に述べると、補強金具21は、リップ部13に対応した断面“へ”の字状に折曲った形状であり、リップ先端部13bの内部から短円筒部13aの内部に至る部分に装着され、内鍔部2に連設される。言い換えると、リップ部13は、補強金具21の内外周両面を被覆している。
【0016】
また、補強金具21は、リップ先端部13bの全長に渡って内装されるのではなく、補強金具21の先端は、リップ先端部13bの先端部14を含む端部を除いた位置まで延設される。
【0017】
従って、矢印P方向に高い圧力が作用したとき、リップ先端部13bの全体の過大変形を抑えて回転軸32との面接触を防止する。即ち、リップ先端部13bの端部(補強金具21が内装されていない部位)が、その圧力により(理想的に)変形して、リップ先端部13bの先端14が、回転軸32に対して、適切な線接触状態となり、高い密封性(シール性)が確保できる。
【0018】
例えば、カーエアコン用コンプレッサ等に於て、CO2 等の冷媒(流体)を用いたとき、全般に圧力が従来コンプレッサよりも高くなる。(例えば、3.5 MPa〜6MPaの高圧となる。)
【0019】
要するに、リップ部13(リップ先端部13b)は、高圧下に於ても、(従来コンプレッサの場合と同様の)低圧下と同じような挙動(変形)を保つことができ、回転軸32の摺接面の摩耗を低減し、耐久性の優れたものとなる。特に、先端14が回転中の回転軸32に摺接する接触面積の増加を防ぎ、発熱・摩耗を防止して、第1シール部材5の寿命を延長できる。
【0020】
また、この補強金具21(及び内鍔部2)は、第1シール部材5の先端14の近傍を除く略全域で、該第1シール部材5に内装されてガス遮蔽部材の役目(作用・機能)をはたしている。即ち、流体収納室33内の流体としてCO2 ガスのような、比較的ゴムや樹脂に対してガス透過性の高い冷媒ガスを使用する場合に、ガス遮蔽部材としての補強金具21(及び内鍔部2)の役目(作用・機能)は重要性を増す。
【0021】
そして、このような回転軸シールの製作については、第1シール部材5が予め接着等によって一体化されているアウターケース1の後方の内鍔部3が形成されていないストレート状態(円筒状態)のものに対して、第1シールエレメント7、断面L字形の第1インナーケース9、第1ワッシャ10、第2シールエレメント8、断面L字形の第2インナーケース11を順次嵌め込み、その後、塑性加工にて内鍔部3を折曲形成して、全体を一体化すればよい。
【0022】
特に、アウターケース1の内鍔部2乃至補強金具21には、予め、成形用孔部23を貫設しておくことによって、第1シール部材5との一体化をより強固なものとし、さらに、第1シール部材5の製造時に、成形用孔部23から、内鍔部2乃至補強金具21の後方(内側)へ、ゴム材料を容易にかつ十分に充填することができ、内鍔部2乃至補強金具21の後方のゴムを完全に成形することができる。従って、第1シール部材5と第1シールエレメント7との間の隙間を無くして密着状とし、第1シール部材5と第1シールエレメント7との間からの流体収納室33の流体の低圧側(大気側)42への漏れを防止することができる。
【0023】
要するに、図1に示した回転軸シールは、ハウジング31と回転軸32の間に介装され、回転軸32に摺接するシールエレメント(即ち、螺旋状の溝6付きの第1シールエレメント7・同心円状の溝6付きの第2シールエレメント8)と、このシールエレメントより流体収納室33側に配設されて回転軸32に摺接するゴム製リップ先端部13bを有する第1シール部材5と、を備えている。
【0024】
そして、第1シール部材5は、運転時(回転中)及び静止時の密封作用をなすものであり、第2シールエレメント8は、主として、静止漏れ防止用であるといえる。また、第1シールエレメント7は、静止時に第1シール部材5から漏れて(図1中の点線斜線にて示した)第1空室部28内に溜まった流体を螺旋状の溝6のポンピング作用(ハイドロダイナミック作用)により、流体収納室33側に送り返す働きをなす。
【0025】
なお、各構成部品の材質について述べる。補強金具21、アウターケース1、第1・第2インナーケース9,11、第1ワッシャ10の材質は、鋼等の金属とする。また、第1・第2シールエレメント7,8は、PTFE等のふっ素系樹脂とし、かつ、第1シール部材5は耐冷媒性を考慮してHNBRを用いるが、特に好ましいのは、JIS硬度を87〜96に設定する。(JIS硬度87未満だと変形が過大となり、逆に96を越すと弾性が不足する。)
【0026】
また、第1シール部材5のリップ先端部13bは回転軸32の軸心Lに対して所定傾斜角度θをもって(前方縮径状に)傾斜している。この傾斜角度θとしては、10°≦θ≦45°が好適である。なお、傾斜角度θが上述の下限値未満であると、リップ先端部13bが(不要に)長寸となり、かつ、先端14の受圧時に線接触を保つのが難しくなる。逆に、θが上限値を越えると、リップ先端部13bが過小となり、流体収納室33内の圧力の増減に微妙に対応しにくくなり、シール性を低下する。
【0027】
次に、図2に、本発明の第2の実施の形態を示し、図1の第1の実施の形態と比較すると、明らかに次の構成が相違する。(なお、同様の構成は、同一符号をもって示したので説明を省略する。)
【0028】
即ち、第1シール部材5の背面乃至内面を保持するサポート金具12を備えている。具体的に述べると、サポート金具12は、鋼等の金属の材質とし、第1シール部材5と第1シールエレメント7との間に、介装され、第1シール部材5の内鍔外被部5bの後方側壁部乃至内径部、及び、リップ部13の短円筒部13a乃至リップ先端部13bを、支持する断面略L字形である。
【0029】
サポート金具12は、傾斜した上記リップ先端部13bを背面(後方)から受持する勾配受け面12aを前端に有する。この勾配受け面12aの傾斜角度は前述のリップ先端部13bの傾斜角度θと同じに設定する。
【0030】
このように、サポート金具12の勾配受け面12aは、リップ先端部13bの背面(内面)に密着して受持して、リップ先端部13bの受圧時の過度の変形を防止して、優れたシール性能(密封性)及び耐久性を発揮させている。さらに、補強金具21と共働きして、相乗効果をもたらす。
【0031】
また、サポート金具12は、第1シール部材5の先端14の近傍を除く略全域で、第1シール部材5の後面乃至内面に密着(接触)して、ガス遮蔽部材の役目(作用・機能)をはたしている。さらに、補強金具21と共働きして、相乗効果をもたらす。
【0032】
さらに、第1シール部材5の製造時に、成形用孔部23から、補強金具21とサポート金具12の間に、ゴム材料を完全に充填することができ、第1シール部材5とサポート金具12との間の隙間を無くして密着状とし、第1シール部材5とサポート金具12との間からの流体収納室33の流体の低圧側(大気側)42への漏れを防止することができる。
【0033】
次に、図3に、本発明の第3の実施の形態を示し、図2の第2の実施の形態と比較すると、明らかに次の構成が相違する。(なお、同様の構成は、同一符号をもって示したので説明を省略する。)
【0034】
即ち、図2に示した上述の実施の形態に於ける第2シールエレメント8を省略して、代わりに第2シール部材25が低圧側(大気側)42に配設されている。具体的に述べると、第2シール部材25は、(ワッシャ状の)金属製円環平板部26と、この平板部26の前面側及び内周縁に接着・溶着・焼付等で一体化されたゴム部27と、から成る。このゴム部27は、円環平板部26の前面に一体化される前壁部27aと、該平板部26の内周縁位置から前内方へ延伸した(ゴム製)リップ先端部27bとを、有する。このリップ先端部27bは、静止状態の回転軸32の外周面に、第1空室部28に加圧状態の流体が貯った状態(静止加圧状態と呼ぶことがある)で、接触して、密封作用をなす。
【0035】
この第2シール部材25のゴム製リップ先端部27bの締め代は、第1シール部材5のリップ先端部13bの締め代よりも小さく、零又はマイナスに設定されるのが望ましい。つまり、回転軸32が回転時の密封は、第1シール部材5及び第1シールエレメント7にて行うので、回転時には第2シール部材25は機能しなくても良く、この第2シール部材25の締め代は零、又は、軸ずれを考慮して僅かにマイナス───未加圧状態でリップ先端部27bの先端が回転軸32と微小間隙が存在する状態───とする。そして、静止加圧状態に於て、この第2シール部材25のリップ先端部27bの先端が回転軸32に接触・押圧されて、密封機能(シール性)を発揮する。従って、この第2シール部材25は、静止漏れ防止用のリップ先端部27bを有しているといえる。
【0036】
また、第2シール部材25は第1ワッシャ10と第2インナーケース11によって挾着保持されている。このときゴム部27の前壁部27aが第1ワッシャ10に圧着されるので、密封性(シール性)が確保され、第2シール部材25の外周端縁部と、アウターケース1の内面との間から、低圧側(大気側)42への外部洩れは防止できる。
【0037】
なお、平板部26の材質は、鋼等の金属とする。また、第2シール部材25は耐冷媒性を考慮してHNBRを用いるが、特に好ましいのは、JIS硬度を87〜96に設定する。(JIS硬度87未満だと変形が過大となり、逆に96を越すと弾性が不足する。)
【0038】
次に、図4に、本発明の第4の実施の形態を示し、図3の第3の実施の形態と比較すると、明らかに次の構成が相違する。(なお、同様の構成は、同一符号をもって示したので説明を省略する。)
【0039】
即ち、大気側(低圧側)42に配設される第2シール部材25、及び、それを保持する前後部品が相違している。また、第1シールエレメント7の(直)後方に、(鋼等の金属製の)第3インナーケース19が付設されている。具体的に述べると、第2シール部材25は、ゴム部27の形状及び金属部16の形状が図3と相違し、かつ、サポート金具22が存在する点が相違する。金属部16は断面L字形であり、図3の円環平板部26と第1ワッシャ10及び第1インナーケース9の一部を、一体化した如き形状である。ゴム部27は、金属部16の円筒部16aの外周面を被覆した凹凸波形部を有する円筒部被覆部27cと、金属部16の内鍔部16bを被覆する(断面U字状の)内鍔外被部27dと、この内鍔外被部27dから前方へ延伸状に連設されたリップ部27eと、から成る。リップ部27eは、軸心Lと平行な短円筒部27fと、前方へ縮径するリップ先端部27bと、から成り、第1シール部材5のリップ部13と類似形状である。
【0040】
そして、サポート金具22の形状、機能は、図2に於て説明したサポート金具12と同様である。即ち、このサポート金具22もCO2 等の冷媒のガス遮蔽部材の役目(作用・機能)をはたしている。従って、第1サポート金具12と第2サポート金具22によって、2重のガス遮蔽を行う構造となる。さらに、第2シール部材25のリップ先端部27bは、10°≦θ≦45°の範囲の所定角度θをもって、(前方縮径状に)傾斜している。これと同じ傾斜角度θをもって傾斜した勾配受け面22aを、上記サポート金具22は前端に有しており、この勾配受け面22aが、リップ先端部27bを後方(低圧側)から、受持する。その作用・機能は、第1サポート金具12と同様である。但し、主として回転軸32の静止時の加圧状態で特にその受持作用(サポート機能)が重要となる。
【0041】
なお、第2シール部材25の締め代を、零又はマイナスに設定し、未受圧状態では、リップ先端部27bの先端が回転軸に非接触又は極めて軽く接触するように構成する。また、第2シール部材25のゴム部27の円筒部被覆部27cは、(自由状態で)凹凸波形であり、これがアウターケース1の内周面に圧接して組立てられる構造であるのでアウターケース1の内周面を通じての流体漏洩を、有効阻止できる。
【0042】
次に、図5に、本発明の第5の実施の形態を示し、図4の第4の実施の形態と比較すると、明らかに次の構成が相違する。(なお、同様の構成は、同一符号をもって示したので説明を省略する。)
【0043】
即ち、図4に示した上述の実施の形態に於けるサポート金具22を省略して、代わりに第2シールエレメント8を付加した構成である。そして、第2シールエレメント8は、螺旋状の溝6を有すると共に、溝6が存在しない平滑接触部(ストレート部)20を有している。
【0044】
この第2シールエレメント8の機能は、静止漏れ防止用の第2シール部材25のリップ先端部27bが、受圧して変形するまでの微小な漏れを、防止する。上述の平滑接触部(ストレート部)20は、そのため、必要である。なお、図1〜図5(及び後述の図6、図7)に於て、第1シールエレメント7は、このような平滑接触部(ストレート部)がなくて、貫通タイプの方がポンピング作用(ハイドロダイナミック効果)が大きくて好ましい。勿論、第1シールエレメント7に平滑接触部(ストレート部)を設けても、圧力差による流体の流れを生じて、ほぼ同様の流体押し戻し作用がある。
【0045】
次に、図6に、本発明の第6の実施の形態を示し、図4の第4の実施の形態と比較すると、明らかに次の構成が相違する。(なお、同様の構成は、同一符号をもって示したので説明を省略する。)
【0046】
即ち、図4の実施の形態のものに、第1インナーケース9、第1ワッシャ10、第2シールエレメント8を追加した構成である。具体的に述べると、図4に示したサポート金具12と第1シールエレメント7との間に、第1インナーケース9と第1ワッシャ10とを挾圧状に介在させ、第2空室部29を形成する。また、図4に示した第2サポート金具22と第2インナーケース11との間に、第2シールエレメント8を密着状に介在させている。
【0047】
なお、第1シールエレメント7は、静止時に第1空室部28内に溜まった流体を螺旋状の溝6のポンピング作用(ハイドロダイナミック作用)により、第2空室部29及び流体収納室33側に送り返す働きをなす。また、第2シールエレメント8の作用(機能)については、上述の図1又は図5の場合と同様である。
【0048】
次に、図7に、本発明の第7の実施の形態を示し、図6の第6の実施の形態と比較すると、明らかに次の構成が相違する。(なお、同様の構成は、同一符号をもって示したので説明を省略する。)
【0049】
即ち、前述の図6に於ける第1インナーケース9と第1ワッシャ10の2部品を(一体化して)1部品とした形状の第1インナーケース9aを有する。また、図6に示した第2シールエレメント8を省略する構成とする。
【0050】
そして、この金属製のインナーケース9aは、内端寄りを軸心Lと平行に流体収納室33側へ延伸した形状の保持筒部45を有し、第1シールエレメント7の癖付けを補助する機能を備える。
【0051】
つまり、回転軸32を挿通する前の自由状態では、この第1シールエレメント7は円環状で、回転軸32に挿通し易い程度に癖付けされているが、完全には癖が付いていない。このような第1シールエレメント7の内周寄りを、回転軸32の外周面に沿って完全に弯曲(変形)させるには、組付け状態に依存している。従って、組付け状態(装着状態)に於て、第1シールエレメント7の回転軸32への接触面圧は、屈曲部で大きく、保持筒部45の先端へゆくに従って接触面圧が減少し、そのことによって、流体圧力が高かったり、圧力変動が激しい場合に、その先端がめくれあがる(先端が回転軸32の外周面から遊離する)虞がある。図7に示したように、保持筒部45によって、第1シールエレメント7の内周寄り円筒部46を、外周側から受けるようにして、組付け時に安定して正規姿勢・正規形状に癖を付け、かつ、高圧流体が作用したときにも、安定して回転軸32の外周面に密着させる。
なお、図7ではシールエレメントが1枚の場合を示したが、これが2枚以上の場合には、同様のインナーケース9aを各々のシールエレメントに配設する。
【0052】
なお、図4〜図7に於て、円筒部被覆部27cは自由状態(未嵌合状態)では外周面が凹凸波状であり、組立時にこれを円筒部4に密に嵌合する構造であるが、図4〜図7に於ては、自由状態の円筒部被覆部27cの外周面を、そのまま実線にて(凹凸形状のままで)図示しているが、実際上は、密に嵌合して、外周面は当然に円筒部4の内面と同一となるように、弾性圧縮される。このように、円筒部被覆部27cの外周面の凹凸形状の効果として、円筒部4と円筒部被覆部27cの間から流体が漏れるのを防止する。つまり、外周面を、凹凸形状とすることで、凸状部の面圧が高くなって、凹凸形状としない場合よりも密封効果が向上する。
【0053】
上述の図3〜図7の全ての実施の形態を、まとめて、次のように表現できる。つまり、ゴム製リップ先端部13bを有する第1シール部材5、及び、(樹脂製)第1シールエレメント7をもって、いわば“基本シール部”を形成し、この“基本シール部”の後方の低圧側42に、ゴム製リップ先端部27bを有する第2シール部材25を、付設していると、表現することもできる。そして、回転軸32の回転時(運転時)には、“基本シール部”で密封(シール)を行い、回転軸32の停止時(静止時)に、低圧側42へ漏洩しようとするのを、第2シール部材25のゴム製リップ先端部27bにて、密封して阻止する。
【0054】
例えばCO2 等の冷媒(流体)を用いたカーエアコン用コンプレッサ等に於て、回転時(運転時)には圧力が(例えば 3.5MPaに)低くなり、静止時には圧力は(例えば6MPaに)高くなる。
【0055】
このように静止時に流体収納室33内の圧力が高圧となった場合、第1シール部材5は、補強金具21を内装したリップ先端部13bを有しているため、リップ先端部13bの過大変形による回転軸32への面接触を抑制して流体(CO2 等)の漏洩を防止するが、それでも漏洩した流体は、“基本シール部”を経て、第1空室部28の空間に溜まる。第2シール部材25はゴム製リップ先端部27bを有しているので、上記高圧によって、リップ先端部27bは静止状態の回転軸32に押えられ、弾性変形して、密封(シール)作用を発揮し、外部漏洩を防止できる。
【0056】
その後、回転軸32が回転すると、流体収納室33側の圧力が(上述のように)低下するので、流体は第1空室部28から流体収納室33側へ押し戻される。この際、第1シールエレメント7の螺旋状の溝(スクリュー溝)6のポンピング作用(ハイドロダイナミック効果)によって、一層確実に、かつ早期に、流体収納室33側へ押し戻される。
【0057】
しかも、第2シール部材25のゴム製リップ先端部27bは、締め代を零(又はマイナス)としていて、未受圧状態では、密封作用(シール性)を有しないが、静止時に高圧が作用した静止受圧状態では、シール性を発揮する。しかも、回転時には、回転軸32の表面から、リップ先端部27bが離れる方向に変形するため、耐久性も向上(改善)する。
【0058】
【発明の効果】
本発明は上述の構成により次のような著大な効果を奏する。
【0059】
リップ先端部13bの受圧(特に、高圧)による過大変形を抑え、回転軸32への面接触を防止し、線接触状態とし、安定した密封性(シール性)が確保できると共に、リップ先端部13bの早期摩耗が防止できてシール寿命が向上する。また、補強金具21は、アウターケース1の内鍔部2に連設されているため、剛性も高く、姿勢が安定し、容易に(一体)成形でき、リップ先端部13bの受圧による過大変形を確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図2】 本発明の第2の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図3】 本発明の第3の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図4】 本発明の第4の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図5】 本発明の第5の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図6】 本発明の第6の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図7】 本発明の第7の実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図8】 従来例を示す半截側面図である。
【符号の説明】
1 アウターケース
2 内鍔部
5 第1シール部材
5b 内鍔外被部
7 第1シールエレメント
8 第2シールエレメント
12 サポート金具
13 リップ部
13a 短円筒部
13b リップ先端部
21 補強金具
22 サポート金具
23 成形用孔部
25 第2シール部材
27b リップ先端部
31 ハウジング
32 回転軸
33 流体収納室
42 低圧側(大気側)
Claims (1)
- ハウジング(31)と回転軸(32)の間に介装され、該回転軸(32)に摺接するシールエレメント(7)と、該シールエレメント(7)より流体収納室(33)側に配設されて該回転軸(32)に摺接するゴム製リップ先端部(13b)を有する第1シール部材(5)と、金属製アウターケース(1)と、を備え、さらに、上記第1シール部材(5)は、上記アウターケース(1)の内鍔部(2)を被覆する内鍔外被部(5b)と、上記回転軸(32)と平行な短円筒部(13a)と、上記流体収納室(33)側へしだいに縮径するように傾斜した上記リップ先端部(13b)とを、備え、上記短円筒部(13b)及び上記リップ先端部(13b)とから成るリップ部(13)の断面は“へ”の字状であり、断面“へ”の字状に折曲った形状の補強金具(21)が、上記リップ部(13)の短円筒部(13a)の内部から上記リップ先端部(13b)の内部にわたって内装され、しかも、上記アウターケース(1)の上記内鍔部(2)に上記補強金具(21)が連設されるように一体もので形成されていることを特徴とする回転軸シール。
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