JP4498256B2 - 内燃機関のデコンプ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関のデコンプ装置に関する。
4ストロークサイクルの単気筒内燃機関等は、圧縮抵抗が大きいため、キックスタートまたはスタータモータの駆動による始動時に、大きな抵抗を受けてクランクシャフトの回転に勢いをつけ難い場合があり、そのために、始動時に燃焼室内の圧縮を抜く所謂デコンプ装置が設けられている例がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−254025号公報
同特許文献1では、カムシャフトにおいて軸方向に指向したシャフト溝がカム山の反対側に形成され、同シャフト溝に回動自在に嵌挿されたシャフト部におけるカムスプロケットの開口を貫通した端部に、マスウエイトが基端を固着されて揺動自在に設けられている。
なお、マスウエイトは遠心方向に抗する方向にスプリングにより付勢されている。
始動開始時には、マスウエイトが揺動せずシャフト部が回動しない状態でシャフト部のデコンプカム部が、カムロブのカム山と反対側にベース円より外方に突出していてロッカアームに作用し排気バルブを僅かに開くデコンプ作動状態であり、燃焼室内の圧縮を抜いて内燃機関の始動を容易にしている。
始動回転数が増して、カムシャフトがある回転数を超えると、内燃機関は始動し、マスウエイトが遠心方向に揺動してシャフト部を回動しデコンプカム部がベース円より内方に没してロッカアームに作用しないようになり、排気バルブを完全に閉じることができるデコンプ解除状態となり、内燃機関が通常の運転状態となる。
機関回転数におけるデコンプが解除する回転数は、始動回転数より高く、アイドル回転数より低い所要の狭い回転数域に設定されることが、円滑な始動を行う上で必要であるが、ウエイトの重量が軽いとウエイトの揺動が不安定となり、デコンプの解除回転数が大きく変動してしまう。
そこで、マスウエイトはある程度重くしており、その分スプリングも大きなばね力のものを用いている。
したがって、デコンプ装置が大型化していた。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、デコンプの解除を適切なタイミングで実行して円滑な始動を図ることができる内燃機関のデコンプ装置を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、排気バルブを作動するデコンプシャフトが動弁用のカムシャフトに対して軸心を平行にして相対回動自在に嵌挿され、前記デコンプシャフトにメインウエイトが基端を固着されて揺動自在に設けられ、前記カムシャフトにサブウエイトが揺動自在に軸支され、前記メインウエイトと前記サブウエイトがリンク部材を介して連結され、前記リンク部材は、棒状をなし、カムシャフトの停止時に前記デコンプシャフトの軸心に配置されないで、両端が前記メインウエイトと前記サブウエイトにそれぞれ軸支され、軸方向視で前記デコンプシャフトの軸心からリンク部材までの距離は、カムシャフトの停止時および極低回転時に小さく、カムシャフトの回転が増すと前記メインウエイトと前記サブウエイトの揺動により大きくなる内燃機関のデコンプ装置とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のデコンプ装置において、前記デコンプシャフトが、前記カムシャフトに対して軸心を偏心させていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の内燃機関のデコンプ装置において、前記カムシャフトに対して軸心を平行かつ偏心して相対回動自在に嵌挿されたサブシャフトに、前記サブウエイトが基端を固着されて揺動自在に設けられたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の内燃機関のデコンプ装置において、前記デコンプシャフトの軸心と前記サブシャフトの軸心は、前記カムシャフトの軸心を中心に約90度角位相がずれた位置にあることを特徴とする。
請求項1記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、デコンプを作用させるデコンプシャフトを回動させる遠心ウエイトをメインウエイトとサブウエイトに分割して、両者をリンク部材で連結したので、ウエイトの揺動が安定するに必要なウエイト合計重量は確保しつつ、各ウエイトを小さくコンパクトにまとめてデコンプ装置を小型化することができるとともに、ウエイトの揺動が安定することによりデコンプの解除を適切なタイミングで実行して円滑な始動を図ることができる。
リンク部材が、カムシャフトの停止時および極低回転時に軸方向視でデコンプシャフトの軸心に接近した近接位置にあるので、サブウエイトの回転モーメントがリンク部材を介してメインウエイトに影響し難い状態にあり、そのためデコンプシャフトが回動し始めるデコンプ解除回転数を高くすることができる。
そして、一旦デコンプシャフトが回動すると、リンク部材がデコンプシャフトから離れ、サブウエイトの回転モーメントがリンク部材を介してメインウエイトに影響する割合が大きくなり、両ウエイトの合計モーメントが大きな値となるため、機関回転数が下降して極低速の状態になってもデコンプシャフトが逆回転し始めるデコンプ作動回転数を低くすることができる。
したがって、始動時には、デコンプ作動状態を長く維持してスタータモータの容量を小さくでき、またはキックスタートのキック荷重を低減することができる。
停止時には、デコンプ作動回転数をエンジンストール回転数の近傍まで低くすることができるため、アイドル回転数を低く調整したとしてもアイドル回転時にデコンプが作動することを回避することができる。
請求項2記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、デコンプシャフトが、カムシャフトに対して軸心を偏心させているので、設計の自由度が増し、ウエイトを小さくコンパクトにまとめ易い。
請求項3記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、カムシャフトに対して軸心を平行かつ偏心して相対回動自在に嵌挿されたサブシャフトに、サブウエイトが基端を固着されて揺動自在に設けられので、メインウエイトとともにサブウエイトの設計の自由度が増し、両ウエイトを小さくコンパクトにまとめ易くデコンプ装置の小型化を図ることができる。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図8に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した一実施の形態に係るスクータ型自動2輪車1の側面図である。
車体前部2と車体後部3とが、低いフロア部4を介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームは、概ねダウンチューブ6とメインパイプ7とからなる。
すなわち車体前部2のヘッドパイプ5からダウンチューブ6が下方へ延出し、同ダウンチューブ6は下端で水平に屈曲してフロア部4の下方を後方へ延び、その後端において左右一対のメインパイプ7が連結され、メインパイプ7は該連結部から斜め後方に立ち上がって所定高さで水平に屈曲して後方に延びている。
同メインパイプ7により燃料タンクや収納ボックスが支持され、その上方にシート8が配置されている。
一方車体前部2においては、ヘッドパイプ5に軸支されて上方にハンドル11が設けられ、下方にフロントフォーク12が延びてその下端に前輪13が軸支されている。
メインパイプ7の立ち上がり部下端にはブラケット15が突設され、同ブラケット15にリンク部材16を介してスイングユニット17が揺動自在に連結支持されている。
スイングユニット17には、その前部に単気筒の4ストロークサイクル内燃機関30が、シリンダブロック32を略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で搭載され、そのユニットスイングケース31のクランクケースに相当する部分の下端から前方に突出したハンガーブラケット18の端部が前記リンク部材16にピボット軸19を介して連結されている。
該内燃機関30から後方にかけて本ベルト式無段変速機35が構成され、その後部に設けられた減速機構38に後輪21が軸支されている。
この減速機構38の上端と前記メインパイプ7の上部屈曲部間にリヤクッション22が介装されている。
スイングユニット17の上部には、内燃機関30のシリンダヘッド33の上部から延出した吸気管23に接続された気化器24および同気化器24に連結されるエアクリーナ25が配設されている。
他方ユニットスイングケース31の下部に突設されたハンガーブラケット18には、メインスタンド26が枢着されており、ベルト式無段変速機35の伝動ケースカバー36から突出したキック軸27にキックアーム28の基端が固着され、同キックアーム28の先端にキックペダル29が設けられている。
車体前部2は、フロントカバー9aとリヤカバー9bにより前後からフロントロアカバー9cにより左右側方から覆われ、ハンドル11の中央部はハンドルカバー9dによって覆われる。
フロア部4はサイドカバー9eにより覆われ、また車体後部3は左右側方からボデイカバー10aおよびテールサイドカバー10bによって覆われる。
図2は、スイングユニット17を図1の概ねII−II線に沿って截断し展開した断面図である。
ユニットスイングケース31は、左右割りの左ユニットケース31Lと右ユニットケース31Rとを合体して構成されるもので、右ユニットケース31Rは、クランクケース部の半体をなし、左ユニットケース31Lは、前後に長尺で前部のクランクケース部31a,中央の伝動ケース部31b,後部の減速機ケース部31cからなる。
この左ユニットケース31Lの左側開放面は、伝道ケースの一部である伝動ケースカバー36により覆われ、内部にベルト式無段変速機35が収納され、後方の減速機ケース部31cの右側開放面は減速機ケース37により覆われ、内部に減速機構38が収納される。
クランクケース部31aと右ユニットケース31Rの所謂クランクケース内には、クランクシャフト40が左右の主軸受41,41に回転自在に支持されて、左右水平方向に延びた延出部のうち右延出部にはACジェネレータ60が設けられ、左延出部にはカムチェーン駆動スプロケット55とベルト式無段変速機35のベルト駆動プーリ76が設けられる。
内燃機関30は、シリンダブロック32のシリンダライナ44内を往復動するピストン42とクランクシャフト40のクランクピン40aとをコネクティングロッド43が連結している。
本4サイクル内燃機関30は、SOHC型式のバルブシステムを採用しており、シリンダヘッドカバー34内には動弁機構50が設けられ、同動弁機構50に駆動伝達を行うカムチェーン51がカムシャフト53とクランクシャフト40との間に架設されており、そのためのカムチェーン室52が、クランクケース部31a,シリンダブロック32,シリンダヘッド33に連通して設けられている。
すなわち左右水平方向に指向したカムシャフト53の左端に嵌着された被動スプロケット54と、クランクシャフト40に嵌着された前記駆動スプロケット55との間にカムチェーン51がカムチェーン室52内を通って架渡されている。
シリンダヘッド33においてカムチェーン室52と反対側(右側)から燃焼室に向かって点火プラグ45が嵌入されている。
図3に示すようにシリンダヘッドカバー34内の動弁機構50は、シリンダが水平に近い状態にまで大きく前傾しているので、カムシャフト53の上下に吸気バルブ56と排気バルブ57が配設されており、上下のロッカシャフト58i,58eにはそれぞれロッカアーム59i,59eが揺動自在に枢着され、カムシャフト53のカムの回転によりロッカアーム59i,59eは揺動して所定のタイミングで吸気バルブ56と排気バルブ57の開閉動作を行わせる。
右ユニットケース31Rの右側面に設けられるACジェネレータ60は、右ユニットケース31Rの中央円筒部31dより突出するクランクシャフト30の端部にACGボス61を介して碗状のアウタロータ62が固着され、その内周面に周方向に亘って配設される磁石63の内側にステータコイル65の巻回されたステータ64が中央円筒部31dに固定されている。 アウタロータ62の右側面には強制空冷ファン66が取り付けられ、その側方をファンカバ
ー67が覆っている。
一方ユニットスイングケース31のクランクケース部31aには、前記カムチェーン室52が主軸受41によりクランク室と仕切って形成されており、同カムチェーン室52の左側壁は、さらに左方のベルト式無段変速機室70とカムチェーン室52とを仕切る仕切り壁71であり、同仕切り壁71にクランクシャフト40が貫通する大径の偏平円筒状をなす円形貫通孔71aが形成され、同貫通孔71aに円環状シール部材72が圧入され、同円環状シール部材72の中空部をクランクシャフト40が貫通している。
このシール部材72と主軸受41との間のクランクシャフト40に前記駆動スプロケット55が嵌着されており、同駆動スプロケット55に前記カムチェーン51が巻き掛けられる。
このシール部材72によりベルト式無段変速機室70がカムチェーン室52から水密に仕切られ、オイルがベルト式無段変速機室70に漏れるのを防止している。
シール部材72を貫通して延出したクランクシャフト40にはベルト駆動プーリ76がともに回転可能に設けられている。
ベルト駆動プーリ76は、固定側プーリ半体77と可動側プーリ半体78とからなり、固定側プーリ半体77は、クランクシャフト40の左端部にボス79を介して固着され、その右側に可動側プーリ半体78がクランクシャフト40にスプライン嵌合され、同可動側プーリ半体78はクランクシャフト40とともに回転し、かつ軸方向に摺動して固定側プーリ半体77に接近・離反することができ、両プーリ半体77,78間にVベルト75が挟まれて巻き掛けられる。
図4を参照して、可動側プーリ半体78の右側で前記円環状シール部材72に近接した固定位置にカムプレート80が設けられており、その外周端に設けたスライドピース80aが可動側プーリ半体78の外周端に軸方向に形成したカムプレート摺動ボス部78aに摺動自在に係合している。
可動側プーリ半体78のカムプレート80側側面は、カムプレート80側に向けてテーパしており、同テーパ面内側にカムプレート80に挟まれてドライウェイトローラ81が収容されている。
したがってクランクシャフト40の回転速度が増加すると、可動側プーリ半体78とカムプレート80間にあってともに回転するドライウェイトローラ81が、遠心力により遠心方向に移動し、可動側プーリ半体78は同ドライウェイトローラ81に押圧されて左方に移動して固定側プーリ半体77に接近し、両プーリ半体77,78間に挟まれたVベルト75を遠心方向に移動させ巻き掛け径を大きくするように構成されている。
かかるベルト駆動プーリ76に対応する後方のベルト被動プーリ86は、減速機構38の減速機入力軸92に対し相対回転自在に支持されるインナスリーブ89に固定側プーリ半体87が嵌着され、同固定側プーリ半体87の左側でインナスリーブ89に軸方向の摺動自在に支持されたアウタスリーブ90に可動側プーリ半体88が嵌着されて、かかる両プーリ半体87,88から構成されている。
両プーリ半体87,88に前記Vベルト75が挟持される。
減速機入力軸92とインナスリーブ89の左側部に遠心クラッチ91が設けられており、Vベルト75を介してインナスリーブ89に伝達された動力は、その回転速度が増すと遠心クラッチ91が接合して減速機入力軸92に伝達される。
減速機構38は、減速機入力軸92に伝達された動力を中間軸93を介して出力軸94に歯車の噛合により減速して伝えるものであり、出力軸94が後輪21の車軸で後輪21を回転させる後車軸である。
後輪21のハブ部にはドラムブレーキ95が設けられている。
ベルト式無段変速機室70を左側から覆う伝動ケースカバー36は、前方のベルト駆動プーリ76から後方の遠心クラッチ91までを覆っており、中央より若干前寄りに前記キック軸27が回動自在に貫通支持されており、同キック軸27の内側端部には駆動ヘリカルギヤ100 が嵌着され、リターンスプリング101 により付勢されている。
そして伝動ケースカバー36の前部内面には、図4を参照して、クランクシャフト40と同軸に摺動軸102が回転かつ軸方向の摺動可能に支持されており、同摺動軸102 には被動ヘリカルギヤ103 が形成されて前記駆動ヘリカルギヤ100 と噛合しているとともに、右端にはラチェットホイール104 が固着され、全体がフリクションスプリング105 により左方に付勢されている。
一方クランクシャフト40側のボス79には、ラチェットホイール105 に対向してラチェット79aが形成されており、両者は摺動軸102 の摺動で接離可能である。
したがってキックペダル29が踏み込まれ、キックアーム28を介してキック軸27がリターンスプリング101 に抗して回転すると、キック軸27と一体に駆動ヘリカルギヤ100 が回転して、これと噛合する被動ヘリカルギヤ103 が摺動軸102 と一体に回転しながらフリクションスプリング105 に抗して右方に摺動して、ラチェットホイール105 がボス79のラチェット79aと噛み合ってクランクシャフト40を強制的に回転させ内燃機関30を始動することができる。
一方本内燃機関は、左ユニットケース31Lのクランクケース部31aの上方にスタータモータ110 が配設されており、図4に示すようにスタータモータ110 は、アウタステータの磁石111 に周りを囲まれたインナロータのコイル112 の巻回されたピニオン113 が左方に突出しており、ピニオン113 の端部にギヤ113aが形成されている。
そしてクランクケース部31aと伝動ケースカバー36とに挟持されて飛び込みギヤ機構115 が、軸を左右水平方向に指向させて、スタータモータ110 とベルト駆動プーリ76との間に設けられており、同飛び込みギヤ機構115 の右側の入力ギヤ116 にスタータモータ110 のピニオンギヤ113aが噛合し、一方の左側の飛び込みギヤ117 は、左方に飛び出すと固定側プーリ半体77の外周縁に形成されたスタータリングギヤ77aに噛み合う。
したがってスタータモータ110 が駆動すると、ピニオン113 の回転が飛び込みギヤ機構115 の入力ギヤ116 に伝達され、飛び込みギヤ117 が左方に飛び出し固定側プーリ半体77のスタータリングギヤ77aに噛み込み、固定側プーリ半体77をクランクシャフト40とともに回転させて内燃機関30の始動を行うことができる。
なおスタータモータ110 が停止すれば飛び込みギヤ117 は引っ込みスタータリングギヤ77aとの噛合が解かれる。
飛び込みギヤ117 の噛み込みを受けるスタータリングギヤ77aの形成された固定側プーリ半体77は、そのVベルト75を挟持する側面と反対側側面(左側面)にゴム製の冷却ファン118 がゴム焼き付けにより添着されており、冷却ファン118の回転によりベルト式無段変速機35が冷却される。
そして、本ベルト式無段変速機室70を構成する伝動ケースカバー36は、前後方向の略中央でベルト駆動プーリ76とベルト被動プーリ86の間で若干ベルト被動プーリ86寄りに側壁内面に沿って矩形筒状の排風通路121が、略上下方向で若干斜めに傾斜して膨出形成されている。
該排風通路121は、その上端開口121tが伝道ケースに覆われたベルト式無段変速機室70内に開放され下端開口が外部に開放されており、前記冷却ファン118の回転により生じた冷却風がベルト式無段変速機35を冷却し熱を奪った後に該排風通路121により外部に排出される。
前記したシリンダヘッドカバー34内の本動弁機構50には、デコンプ装置130が組み込まれており、その構造を図5ないし図8に示し説明する。
左右水平方向に指向するカムシャフト53は、左右端部が軸受131,132により軸支されており、同カムシャフト53に対してデコンプシャフト133が軸心を平行かつ偏心して相対回動自在に左端面から嵌挿されている。
デコンプシャフト133の左端にはメインウエイト134の基端部134aが嵌着されている。
メインウエイト134は、基端部134aから延びるアーム部134bが左方に膨出して肉厚に形成され、同膨出部から遠心方向に先端ウエイト部134cが周方向の特にカムシャフト53とともに回転する回転後方に展開して形成されている。
このメインウエイト134の基端部134aからアーム部134bの部分が揺動する領域を、被動スプロケット54に穿設された扇形開口54aが確保していると同時に、同扇形開口54aがメインウエイト134の揺動範囲を決定している。
また、カムシャフト53には、前記デコンプシャフト133と同様にサブシャフト135が軸心を平行かつ偏心して相対回動自在に左端面から嵌挿されており、同サブシャフト135はデコンプシャフト133から約90度角位相がずれた位置に設けられている。
このサブシャフト135の被動スプロケット54を貫通した左端に基端部を嵌着されてサブウエイト136が揺動自在に設けられている。
サブシャフト135は基端部から真っ直ぐ延びている。
カムシャフト53とともに回転する前記メインウエイト134の回転方向前方に突起134dが先端近くに突出しており、他方前記サブウエイト136の回転方向後方に突起136dが中間部に突出しており、突起134dと突起136dに両端を軸支されたリンク部材である連結棒137がメインウエイト134とサブウエイト136とを連結している。
メインウエイト134には、トーションスプリング138が備えられていて、同トーションスプリング138は、カムシャフト53に対するメインウエイト134の揺動に関して遠心力に抗する方向にメインウエイト134を付勢している。
円柱状のデコンプシャフト133は、図5に示すように、右端近傍に切欠きにより概ね半月状の断面形状のデコンプカム部133aが形成されており、カムシャフト53のデコンプカム部133a近傍は欠損していてデコンプカム部133aが露出している。
特にカムシャフト53のデコンプカム部133aが旋回する領域は全周に亘って欠損している。
これに対して排気側のロッカアーム59eは、カム側端部にカムシャフト53の排気側カム部53eに接するローラ59erを回転自在に軸支するとともに、デコンプシャフト133のデコンプカム部133aに向かってデコンプ用突起59edが突出している。
デコンプ用突起59edは、デコンプシャフト133が回動して半月状のデコンプカム部133aの切欠きの反対側の円弧面に対向したときは同デコンプカム部133aに接して排気側ロッカアーム59eを揺動し圧縮行程で排気バルブ57を僅かに開いてデコンプを作動させ、他方デコンプ用突起59edがデコンプカム部133aの切欠きに対向したときはデコンプカム部133aに接することなくデコンプを解除する。
なお、サブシャフト135はデコンプ用突起59edに常に干渉しないように溝135aが形成されている。
図6は、クランクシャフト40とともにカムシャフト53が停止または極低回転時の状態を示しており、メインウエイト134はトーションスプリング138に付勢されて時計回りに揺動し扇形開口54aの端縁に当接して停止した限界位置にあり、サブウエイト136もメインウエイト134に連結棒137により連結されて時計回りに揺動した限界位置にある。
メインウエイト134の揺動中心軸であるデコンプシャフト133は、そのデコンプカム部133aが切欠きの反対側の円弧面を排気側ロッカアーム59eのデコンプ用突起59edに向けて接して排気側ロッカアーム59eを揺動するデコンプ作動状態を示している。
すなわち、内燃機関30が停止または極低回転時には、デコンプ作動状態にある。
なお、排気側ロッカアーム59eのローラ59erは、カムシャフト53の排気側カム部53eのベース円から離れている。
この状態で、図6を参照して、連結棒137は、メインウエイト134の揺動中心であるデコンプシャフト133の軸心Cmに軸方向視(図6に示すように側面から右方向に視て)で最も接近した近接位置にある。
デコンプシャフト133の軸心Cmから連結棒137までの距離をdとする。
サブウエイト136に加わる遠心力Ps(図6においてサブウエイト136の重心Gsから矢印で示す)を、サブウエイト136が連結棒137を引く力Pc(図6において連結棒137の指向する方向の矢印で示す)とこれと直角の方向の力に分解すると、この引く力Pcに距離dを乗算したモーメントPc・dがメインウエイト134に作用する。
図6に示すデコンプ作動状態では、極低回転ということで遠心力Psも小さく、よって連結棒137を引く力Pcも小さいとともに、距離dが最も小さいために、モーメントPc・dは小さく、サブウエイト136がメインウエイト134の揺動に影響し難い状態にあって、略メインウエイト134の遠心力だけではメインウエイト134はトーションスプリング138に抗してまで容易に揺動しない。
回転数が上昇して遠心力Psが大きくなっても、距離dが最も小さいため、始動回転数を超えてある程度高い回転数になるまでは、メインウエイト134は揺動せず、その間デコンプ作動状態にある。
したがって、スタータモータ110を駆動したり、あるいはキックペダル29を踏み込んで、内燃機関30を始動させる場合、当初デコンプが作動して燃焼室内の圧縮を抜きクランクシャフト40の回転に勢いをつけ易くし、始動回転数を超えたところで内燃機関30を円滑に始動することができる。
内燃機関30が始動してアイドル回転数に至るまでの間で相当程度高い回転数になって初めてメインウエイト134が揺動を始めることになり、一旦揺動し始めると、図7に示すようにデコンプシャフト133の軸心Cmから連結棒137までの距離dが大きくなるので、モーメントPc・dは益々大きくなってサブウエイト136がメインウエイト134の揺動に大きく影響することになり、一気にメインウエイト134が揺動してデコンプシャフト133を回動する。
そして、図8に示すように、メインウエイト134の揺動が被動スプロケット54に穿設された扇形開口54aにより規制された揺動範囲の限界まで達すると、デコンプシャフト133の半月状のデコンプカム部133aの切欠きが排気側ロッカアーム59eのデコンプ用突起59edに向いてデコンプ用突起59edが接することがなく、排気側ロッカアーム59eがそのローラ59erをカムシャフト53のカム部53eのベース円に接してデコンプは解除され、内燃機関30は通常の運転状態となる。
このように、停止時または極低回転時にデコンプシャフト133の軸心Cmから連結棒137までの距離dが小さいので、サブウエイト136の回転モーメントがリンク部材を介してメインウエイト134に影響し難い状態にあり、そのためデコンプシャフト133が回動し始めるデコンプ解除回転数をできるだけ高くしデコンプ作動状態を長く維持して内燃機関30の始動を円滑かつ確実に行うようにすることができる。
図8に示すデコンプ解除状態においては、メインウエイト134およびサブウエイト136は、いずれもカムシャフト53の回転中心から偏心したデコンプシャフト133およびサブシャフト135を中心にそれぞれ遠心方向に揺動しているが、いずれも被動スプロケット54の外周円内に収まるよう設計されており、揺動が不安定にならないウエイト合計重量は確保しつつメインウエイト134とサブウエイト136をコンパクトに構成してデコンプ装置130を小型化することができる。
このデコンプ解除状態で、デコンプシャフト133の軸心Cmから連結棒137までの距離dは最も大きく、サブウエイト136の回転モーメントがリンク部材を介してメインウエイト134に大きく影響しているため、内燃機関30の運転を停止する場合に、メインウエイト134が逆方向(回転中心方向)に揺動してデコンプシャフト133が逆回転し始めるデコンプ作動回転数を低くすることができ、よってエンジンストール回転数の近傍まで低くすることができる。
以上のように、本デコンプ装置130は、始動時には、デコンプ作動状態を長く維持してスタータモータの容量を小さくでき、またはキックスタートのキック荷重を低減することができる。
停止時には、デコンプ作動回転数をエンジンストール回転数の近傍まで低くすることができるため、アイドル回転数を低く調整したとしてもアイドル回転時にデコンプが作動することを回避することができる。
次に、デコンプ装置の別の例について図9ないし図11に図示し説明する。
動弁機構は、カムシャフト160、被動スプロケット161以外は前記実施の形態と同じであり、同じ部材は同じ符号を用いる。
本デコンプ装置150のデコンプシャフト151は、カムシャフト160に対して軸心を同軸にして相対回転自在に左端面から嵌挿されている(図9参照)。
図10に示すように、被動スプロケット161は、デコンプシャフト151の臨む中央部を円形に開口してカムシャフト160に嵌着されており、被動スプロケット161の左側面には偏心した位置に支軸162が突設され、同支軸162に基端部152aを軸支されてデコンプウエイト152が被動スプロケット161に沿って揺動自在に設けられている。
デコンプウエイト152は、支軸162に軸支された基端部152aから中空円板状の被動スプロケット161の環状に倣ってカムシャフト160の回転方向の後方に環状に大きく展開した環状ウエイト部152bが形成されるとともに、基端部152aからカムシャフト160の中心方向に向けて延出部152cが延びている。
環状ウエイト部152bは、外周縁が被動スプロケット161と略同径の円弧をなし、その内側中央に支軸162を中心にした円弧状の円弧孔153が穿設されており、被動スプロケット161の左側面所定位置から突出したストッパピン163が該円弧孔153を貫通している。
したがって、デコンプウエイト152は、円弧孔153がストッパピン163で規制される範囲内で支軸162を中心に環状ウエイト部152bを揺動することができる。
そして、支軸162に巻回されたトーションスプリング164が被動スプロケット161とデコンプウエイト152との間に介装されて、デコンプウエイト152の環状ウエイト部152bを被動スプロケット161の回転中心に向けて付勢している。
デコンプウエイト152のカムシャフト160の中心方向に向けて延びた延出部152cには小さい長孔154が穿設されており、同長孔154にデコンプシャフト151の左端面の外周近傍に突設された係合ピン165が貫通係合している。
したがって、カムシャフト160が停止しているときは、図10に実線で示すように、デコンプウエイト152は、トーションスプリング164により環状ウエイト部152bを被動スプロケット161の回転中心に近づけており、環状ウエイト部152bは一部を除き概ね被動スプロケット161内に収まっている。
カムシャフト160の回転数が上昇すると、デコンプウエイト152は、トーションスプリング164に抗して環状ウエイト部152bを遠心方向に揺動し、一体に揺動する延出部152cが長孔154に係合する係合ピン165を介してデコンプシャフト151をカムシャフト160に対して相対的に回動させる。
カムシャフト160がある回転数以上になると、デコンプウエイト152は、円弧孔153がストッパピン163で規制されて、環状ウエイト部152bを最大限遠心方向に揺動しており、図10に2点鎖線で示すように、環状ウエイト部152bの外周端縁部分は被動スプロケット161の外周円よりはみ出している。
ただし、環状ウエイト部152bの外周端は被動スプロケット161の外周円と同軸の円弧をなし、一部が大きくはみ出しているのではなく、環状ウエイト部152bの外周縁部分が被動スプロケット161の外周円より一様にはみ出すように構成されてデコンプウエイト152が必要な重量を確保しつつコンパクトに組み付けられている。
このデコンプシャフト151が回動自在に嵌挿されるカムシャフト160の嵌挿孔160aは、カムシャフト160の左端面から排気側カム部53e辺りまで穿孔されており、その嵌挿孔160aの底面より若干手前のデコンプ用突起59edの軸方向位置においてカムシャフト160を嵌挿孔160に直交して径方向に貫通する貫通孔160bを有し、同貫通孔160bにデコンプピン155が摺動自在に嵌挿されている。
デコンプピン155は、丸棒状で側部に側面視でコ字状に欠損した切欠き155aが形成されている(図9参照)。
デコンプシャフト151の右端面は、デコンプピン155に近接しており、同右端面には回動中心より偏心した位置に円柱突起151aが突出しており、同円柱突起151aがデコンプピン155の切欠き155aに相対移動自在に嵌合している。
前記したようにカムシャフト160の回転によるデコンプウエイト152の揺動は、デコンプシャフト151をカムシャフト160に対して相対的に回動させる。
図9および図11(1)に示す状態は、停止時または極低回転時のもので、デコンプシャフト151の偏心した円柱突起151aがデコンプ用突起59edに最も近づいた状態を示している。
この状態で、デコンプピン155は、その一方の先端がカムシャフト160の外周面から若干突出し、他端はカムシャフト160の外周面より内側に没している。
したがって、デコンプピン155の先端はデコンプ用突起59edに接して排気側ロッカアーム59eを揺動し、圧縮行程で排気バルブを僅かに開いてデコンプを作動させる。
機関回転数が上昇すると、カムシャフト160の回転でデコンプウエイト152が揺動し、デコンプシャフト151がカムシャフト160に対して相対的に回動し、デコンプシャフト151の偏心した円柱突起151aが旋回する。
そして始動回転数より高くなると、円柱突起151aは図11(2)に示すような位置に旋回する。
円柱突起151aの旋回に従ってデコンプピン155が貫通孔に案内されて移動し、カムシャフト160の外周面から若干突出していた先端が図11(2)に示すように貫通孔160b内に没して排気側ロッカアーム59eのデコンプ用突起59edに接することなく、カムシャフト53のカム部53eのベース円が排気側ロッカアーム59eのローラ59erに接してデコンプは解除され、内燃機関は通常の運転状態となる。
内燃機関の運転を停止する場合は、デコンプウエイト152が逆方向(回転中心方向)に揺動してデコンプシャフト151が逆回転し円柱突起151aが旋回し、所定機関回転数を下回ると、デコンプピン155をカムシャフト160の外周面から突出させて排気側ロッカアーム59eを作動してデコンプ作動状態となる。
次に、また別のデコンプ装置180について図12および図13に基づき説明する。
本デコンプ装置180は、前記デコンプ装置150とデコンプシャフト181の回動によるデコンプピン185の移動構造のみが異なり、その他の構造は同じであって同じ部材は同じ符号を用いて示す。
カムシャフト190のデコンプシャフト181が嵌挿される軸中心の嵌挿孔190aの奥側に小径孔190aがあり、その小径孔190aに直交して貫通孔190bが形成されている。
その貫通孔190cは、一方の外方への開口が縮径しており、同貫通孔190cに本体部185aと小径部185bとからなるデコンプピン185が摺動自在に嵌挿される。
本体部185aには側面視でコ字状に欠損した切欠き185cが形成されている(図9参照)。
デコンプピン185を貫通孔190bに嵌挿する場合に、デコンプピン185の小径部185bが挿入される貫通孔190bに内側からコイルスプリング186を挿入しておき、貫通孔190bの縮径部とデコンプピン185の本体部186aとの間にコイルスプリング186を介装し、デコンプピン185を付勢するようにする。
デコンプシャフト181の右端面より回転中心軸に同軸に突出した突起181aが小径孔190aに挿入されてデコンプピン185の切欠き185aに嵌挿されており、コイルスプリング186により付勢されて摺動しようとするデコンプピン185を受け止めている。
デコンプシャフト181の右端の突起181aは、図13に示すように円柱体の側部を一部軸方向全体に亘って切欠いた欠損部181bを有する。
前記したようにカムシャフト190の回転によるデコンプウエイト152の揺動は、デコンプシャフト181をカムシャフト190に対して相対的に回動させる。
図12および図13(1)に示す状態は、停止時または極低回転時のもので、デコンプシャフト181の突起181aの円弧面がデコンプ用突起59edに向いた状態を示している。
この状態で、デコンプピン185は、突起181aの円弧面に受け止められて、小径部185bの先端がカムシャフト190の外周面から若干突出している。
したがって、デコンプピン155の小径部185bの先端はデコンプ用突起59edに接して排気側ロッカアーム59eを揺動し、圧縮行程で排気バルブを僅かに開いてデコンプを作動させる。
機関回転数が上昇すると、カムシャフト190の回転でデコンプウエイト152が揺動し、デコンプシャフト181がその突起181aとともにカムシャフト190に対して相対的に回動する。
そして始動回転数より高くなると、突起181aは図11(2)に示すように欠損部181bがデコンプ用突起59edに向き、コイルスプリング186の付勢力によりデコンプピン155が摺動して突起181aの欠損部181bの面で受け止められ、デコンプピン185の小径部185bの先端は貫通孔190b内に没して排気側ロッカアーム59eのデコンプ用突起59edに接することなく、カムシャフト190のカム部のベース円が排気側ロッカアーム59eのローラ59erに接してデコンプは解除され、内燃機関は通常の運転状態となる。
内燃機関の運転を停止する場合は、デコンプウエイト152が逆方向(回転中心方向)に揺動してデコンプシャフト181が逆回転し突起181aが円弧面をデコンプ用突起59ed側に向けてデコンプピン185を移動し、所定機関回転数を下回ると、デコンプピン185の小径部185bの先端をカムシャフト190の外周面から突出させて排気側ロッカアーム59eを作動してデコンプ作動状態となる。
次に、デコンプウエイトを用いず駆動手段により作動するデコンプ装置200について図14ないし図19に基づき説明する。
動弁機構は、カムシャフト210以外は前記図1ないし図8に示した実施の形態と略同じであり、同じ部材は同じ符号を用いる。
カムシャフト210の軸心に設けられた嵌挿孔210aにスライドシャフト201が軸心を同一にして軸方向に摺動自在に右端面から嵌挿されている。
スライドシャフト201が嵌挿される開口に対向するシリンダヘッドカバー34の側壁には電磁ソレノイド205がねじにより取り付けられており、電磁ソレノイド205から防護スリーブ207がシリンダヘッドカバー34の側壁を貫通して突出している。
そして、電磁ソレノイド205の伸縮ロッド206が防護スリーブ207内を軸受208に摺動自在に支持されて突出して同心のスライドシャフト201に相対回転自在に連結されている。
電磁ソレノイド205が励磁されると、伸縮ロッド206が伸長し、スライドシャフト201を嵌挿孔210aの奥側(図14において左側)に移動し、励磁が解除されると、伸縮ロッド206が縮小し、スライドシャフト201を開口側(図14において右側)に移動する。
一方、カムシャフト210の排気側カム部210eに隣接するデコンプ用突起59edの軸方向位置において、嵌挿孔210aから排気側カム部210eのカム山と反対側径方向に穿孔された孔にデコンプピン202が径方向に摺動自在に設けられている。
デコンプピン202の両端は丸みを帯び、中心側端部近傍にC字状ばね203が貫通し嵌挿孔210内にあって係合され(図15参照)、遠心側端部はカムシャフト210の外周面から出没自在である。
スライドシャフト201の先端は、図15に図示するように、本体大径部より径を小さくした中径部201aおよび中径部201aからテーパ部201bを介して最先端の小径部201cが形成されている。
そして、中径部201a,テーパ部201b,小径部201cの周面に軸方向に指向し連続した溝条201gが刻設されるとともに、溝条201gの反対側には突条201hが形成されている。
このスライドシャフト201の先端を、デコンプピン202に係合されたC字状ばね203に挿入し、溝条201gにデコンプピン202の中心側端部が接するように合わせる。
C字状ばね203の開いた部分に突条201hが入り込み、C字状ばね203が回動してデコンプピン202から抜けるのを防止している。
図16および図17に示す状態は、停止時または極低回転時のものであり、電磁ソレノイド205が励磁されスライドシャフト201が嵌挿孔210aの奥側に移動した状態を示している。
スライドシャフト201の奥側への移動でデコンプピン202はテーパ部201bの溝条201gを上って中径部201aの溝条201gに至り、デコンプピン202の遠心側端部はカムシャフト210の外周面から若干突出している。
なお、C字状ばね203はテーパ部201bのくい込みにより拡径している。
したがって、デコンプピン202の先端はデコンプ用突起59edに接して排気側ロッカアーム59eを揺動し、圧縮行程で排気バルブを僅かに開いてデコンプを作動させる。
機関回転数が所定回転数まで上昇すると、電磁ソレノイド205の励磁が解除され、スライドシャフト201が嵌挿孔210aの開口側に時間遅れなく瞬時に移動し、C字状ばね203がテーパ部201bを下がり縮径することで、図18および図19に示すように、デコンプピン202は、テーパ部201bの溝条201gを下り、小径部201cの溝条201gに至り、遠心側端部はカムシャフト210の外周面から没して、排気側ロッカアーム59eのデコンプ用突起59edに接することなく、カムシャフト210のカム部210eのベース円が排気側ロッカアーム59eのローラ59erに接してデコンプは解除され、内燃機関は通常の運転状態となる。
このように電磁ソレノイド205の駆動制御により、デコンプの解除(および作動)を適切なタイミングに確実に実行して円滑な始動を図ることができる。
本発明の一実施の形態に係るスクータ型自動2輪車の全体側面図である。 該スクータ型自動二輪車の内燃機関の図1におけるII−II線に沿って截断した断面図である。 図2におけるIII −III 線に沿って截断した断面図である。 図3におけるIV−IV線に沿って截断した断面図である。 デコンプ装置が組み込まれた動弁機構を示す断面図である。 デコンプ作動状態の一部省略したデコンプ装置の側面図である。 デコンプの解除または作動する途中の状態の一部省略したデコンプ装置の側面図である。 デコンプ解除状態の一部省略したデコンプ装置の側面図である。 別のデコンプ装置が組み込まれた動弁機構を示す断面図である。 同デコンプ装置の一部省略した側面図である。 図9におけるXI−XI線に沿って截断したデコンプ作動状態と解除状態の断面図である。 また、別のデコンプ装置が組み込まれた動弁機構を示す断面図である。 図12におけるXIII−XIII線に沿って截断したデコンプ作動状態と解除状態の断面図である。 またさらに、別のデコンプ装置が組み込まれた動弁機構を示す断面図である。 スライドシャフト,デコンプピンおよびC字状ばねの分解斜視図である。 デコンプ作動状態のカムシャフトの要部縦断面図である。 図16におけるXVII−XVII線に沿って截断した断面図である。 デコンプ解除状態のカムシャフトの要部縦断面図である。 図17におけるXVII−XVII線に沿って截断した断面図である。
符号の説明
1…スクータ型自動二輪車、27…キック軸、28…キックアーム、29…キックペダル、
30…内燃機関、31…ユニットスイングケース、33…シリンダヘッド、34…シリンダヘッドカバー、35…ベルト式無段変速機、40…クランクシャフト、
50…動弁機構、51…カムチェーン、53…カムシャフト、54…被動スプロケット、55…駆動スプロケット、56…吸気バルブ、57…排気バルブ、58i,58e…ロッカシャフト、59i,59e…ロッカアーム、110…スタータモータ、
130…デコンプ装置、133…デコンプシャフト、134…メインウエイト、135…サブシャフト、136…サブウエイト、137…連結棒、138…トーションスプリング、
150…デコンプ装置、151…デコンプシャフト、153…円弧孔、154…長孔、155…デコンプピン、160…カムシャフト、161…被動スプロケット、162…支軸、163…ストッパピン、164…トーションスプリング、
180…デコンプ装置、181…デコンプシャフト、185…デコンプピン、186…コイルスプリング、190…カムシャフト、
200…デコンプ装置、201…スライドシャフト、202…デコンプピン、203…C字状ばね、205…電磁ソレノイド、210…カムシャフト。

Claims (4)

  1. 排気バルブを作動するデコンプシャフトが動弁用のカムシャフトに対して軸心を平行にして相対回動自在に嵌挿され、
    前記デコンプシャフトにメインウエイトが基端を固着されて揺動自在に設けられ、
    前記カムシャフトにサブウエイトが揺動自在に軸支され、
    前記メインウエイトと前記サブウエイトがリンク部材を介して連結され
    前記リンク部材は、棒状をなし、カムシャフトの停止時に前記デコンプシャフトの軸心に配置されないで、両端が前記メインウエイトと前記サブウエイトにそれぞれ軸支され、
    軸方向視で前記デコンプシャフトの軸心からリンク部材までの距離は、カムシャフトの停止時および極低回転時に小さく、カムシャフトの回転が増すと前記メインウエイトと前記サブウエイトの揺動により大きくなることを特徴とする内燃機関のデコンプ装置。
  2. 前記デコンプシャフトが、前記カムシャフトに対して軸心を偏心させていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のデコンプ装置。
  3. 前記カムシャフトに対して軸心を平行かつ偏心して相対回動自在に嵌挿されたサブシャフトに、前記サブウエイトが基端を固着されて揺動自在に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のデコンプ装置。
  4. 前記デコンプシャフトの軸心と前記サブシャフトの軸心は、前記カムシャフトの軸心を中心に約90度角位相がずれた位置にあることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のデコンプ装置。
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