JP4497385B2 - 金属捕集方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属捕集方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場廃水、研究所廃水の如き液状廃棄物、ゴミ焼却場から排出される廃煙の如きガス状廃棄物、或いはゴミ焼却場で生じる焼却灰、鉱山から排出される鉱滓、汚水処理場等において使用した処理済みの汚泥、汚染された土壌の如き固体状廃棄物等の廃棄物中に含まれる金属、特に人体に有害な水銀、カドミウム、亜鉛、鉛、銅、クロム等の金属に対しては厳しい規制が設けられており、廃棄物中に含まれる金属を除去するための種々の方法が検討されてきた。
【0003】
廃水等の液状廃棄物中に含まれる金属を除去する従来の方法としては、例えば中和凝集沈殿法、イオン浮選法、イオン交換法、電解浮上法、電気透析法、吸着法、逆浸透法等が知られている。しかしながら、中和凝集沈殿法では、生成した大量の金属水酸化物スラッジを処理しなければならないという作業上の問題や、廃棄したスラッジ中から金属が河川、海水中等に再溶出して二次公害を引き起こしたり、廃水中の金属濃度を国が制定する基準値以下にすることが容易でない等の問題があり、またイオン浮選法、イオン交換法、電解浮上法、電気透析法、吸着法、逆浸透法等の場合には、金属の除去率、操作性、ランニングコスト等に問題があった。
【0004】
このため、これらの方法にかわって、金属捕集剤を用いて廃水中の金属を捕集除去する方法が広く利用されるようになっている。更に近年、金属捕集剤は廃水等の液状廃棄物中の金属捕集用としてのみの利用に限らず、ガス化した金属を含むガス状廃棄物や、金属を含む固体廃棄物の処理用としても利用されるようになっている。
【0005】
上記金属捕集剤としては、例えば本出願人が先に提案した如き、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンやポリエチレンイミン等のポリアミン類の窒素原子にジチオ酸基やジチオ酸塩基が結合した構造の金属捕集剤(特公平5−7079号、特公平5−7080号等)等が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
金属捕集剤を用いた金属捕集方法において、金属捕集効果を向上させるために、例えば廃水中の金属を捕集する場合には、金属捕集剤と廃水中の金属との反応性を向上させることはもとより、金属捕集剤と金属とが反応して生成したフロックの沈殿速度を早めて処理効率を向上させたり、フロックから金属が再溶出しないようにすることが必要とされている。また金属捕集剤により固体状廃棄物中の金属を固定化し、固体状廃棄物中から金属が溶出しないように処理する場合には、処理後の固体状廃棄物が酸性雨等に晒されても、金属捕集剤で捕集された金属が溶出しないようにすることが必要とされている。更に、酸を含む低pHの廃水、ガス状廃棄物や固体状廃棄物中に酸性物質が多量に含まれる場合であっても、確実に金属を捕集したり固定化できることが必要となる。
【0007】
本発明者等は上記の点について種々研究を行った結果、金属捕集剤としては公知の化合物のうちの、特定の化合物を2種以上組み合わせて用いることにより、単独の金属捕集剤からは予測できない程の優れた金属捕集効果が得られ、低pH領域や酸性物質存在下においても金属捕集能の低下を招くことがなく、また金属の除去限界及び固定化能が更に向上でき、特にクロム等の3価の金属に対して優れた効果が発現されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の金属補集方法は、金属を含む廃棄物に、チオ尿素とジフェニルカルバジド、チオグリコール酸とスルファミン酸グアニジン、チオ尿素とオキシン、ジフェニルカルバジドとジメチルグリオキシムの組み合わせより選ばれた金属捕集剤を添加し、廃棄物中の金属を捕集することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において金属捕集剤として、チオ尿素とジフェニルカルバジド、チオグリコール酸とスルファミン酸グアニジン、チオ尿素とオキシン、ジフェニルカルバジドとジメチルグリオキシムの組み合わせより選ばれた金属捕集剤を用いる。これらの化合物はいずれも金属捕集作用を有することが知られているが、2種以上を組み合わせて用いることにより、これらを単独で使用した場合からは予測できない程の金属捕集効果の向上を図ることができる。
【0010】
本発明方法において、特にチオ尿素とジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバジドとジメチルグリオキシムの組み合わせが好ましく、これらの組み合わせの場合、チオ尿素:ジフェニルカルバジド=40〜60重量%:60〜40重量%、ジフェニルカルバジドジメチルグリオキシム=40〜60重量%:60〜40重量%で組み合わせることが好ましい。
【0011】
本発明方法において、上記した金属捕集剤の他に、従来から使用されている他の金属捕集剤を併用することができる。このような従来公知の金属捕集剤として一般的なものは、ジチオカルバミン酸型の金属捕集剤である。従来公知のジチオカルバミン酸型金属捕集剤等を混合して用いる場合、本発明方法で用いる上記した金属捕集剤の使用量が、全金属捕集剤の使用量の50重量%以上となるようにすることが好ましい。また本発明方法の実施に際し、トリメルカプトトリアジン又はその塩類、一硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、二硫化ナトリウム、三硫化ナトリウム、四硫化ナトリウム、五硫化ナトリウム等のポリ硫化ナトリウム等と併用することができ、これらを併用すると更に金属捕集効率を高めることができる。中でも硫化水素ナトリウム、ポリ硫化ナトリウムとの併用が好ましい。
【0012】
本発明の金属捕集方法が対象とする廃棄物としては、例えば、工場廃水、研究所廃水のような、金属を含む液状廃棄物、ゴミ焼却場から排出される廃煙のような、ガス化した金属を含むガス状廃棄物、ゴミ焼却場で生じる焼却灰(EP灰、サイクロン灰、バグフィルター灰等)、鉱滓、汚泥、土壌等のような、金属を含有する固体状廃棄物が挙げられる。
【0013】
液状廃棄物の処理法としては、金属捕集剤を水等に溶解させて液状廃棄物に添加し、液状廃棄物中に含まれる金属と金属捕集剤とが反応して生成したフロックを分離除去した後、液状廃棄物を放流する等の方法が採用される。またガス状廃棄物の処理には、金属捕集剤の水溶液等をガス状廃棄物に噴霧し、ガス状廃棄物の中に含まれるガス化した金属を捕集剤によって捕集して分離除去した後、ガス状廃棄物を放出する等の方法が挙げられる。また固体状廃棄物の処理法としては、固体廃棄物に金属捕集剤を添加して金属捕集剤と固体廃棄物中の金属と反応させて金属が固体廃棄物中から溶出しないように固定化した後、固体廃棄物をコンクリート等で固めて最終処分する等の方法が挙げられる。
【0014】
本発明方法によれば、pHが5程度以下の低pHの廃水であっても、確実に金属を捕集することができる。また、酸性物質を含むガス状廃棄物や固体状廃棄物に対しても、金属捕集能、金属固定化能が低下する虞れがない。ガス状廃棄物や固体状廃棄物の場合、廃ガスを水中に通過させて洗浄した洗浄水のpHや、固体状廃棄物を水中に投入して洗浄した洗浄水のpH(溶出pH)が5程度以下となるような量の酸性物質を含有する場合でも、有効に処理することができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。尚、以下の実施例、比較例において使用した金属捕集剤は以下の通りである。
【0016】
▲1▼金属捕集剤a:チオ尿素とジフェニルカルバジドとを重量比で55:45で混合した混合物。
▲2▼金属捕集剤b:チオグリコール酸とスルファミン酸グアニジンとを重量比で20:80で混合した混合物。
▲3▼金属捕集剤c:チオ尿素とオキシンとを重量比で70:30で混合した混合物。
▲4▼金属捕集剤d:ジフェニルカルバジドとジメチルグリオキシムとを重量比で45:55で混合した混合物。
【0017】
▲5▼金属捕集剤e:チオ尿素
▲6▼金属捕集剤f:オキシン
▲7▼金属捕集剤g:ジフェニルカルバジド
▲8▼金属捕集剤h:ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム
【0018】
実施例1〜4、比較例1〜4
水銀0.5mg/リットル、亜鉛20mg/リットル、カドミウム4mg/リットルを含有する廃水(pH=3.8)を、表1に示す金属捕集剤を用いて処理した。金属捕集剤は廃水1リットル当たり500mgを添加撹拌した後、10分間静置して生成したフロックを分離除去し、廃水中の残存金属濃度を原子吸光分析法により測定した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0004497385
【0020】
実施例5〜8、比較例5〜8
鉛437mg/kg、亜鉛3150mg/kg、カドミウム121mg/kg、クロム8750mg/kgを含有する鉱滓(溶出pH=4.6)を、表2に示す金属捕集剤を用いて処理した。処理法としては鉱滓100g当たりに対し、金属捕集剤の水溶液(もしくは水分散液)を固型分の添加量が6gとなるように鉱滓表面に噴霧混練し、100分間放置した後、環境庁告示13号試験法により、鉱滓からの金属溶出量を測定した。結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
Figure 0004497385
【0022】
実施例9〜12、比較例9〜12
水銀1.2mg/kg、鉛3650mg/kg、カドミウム37mg/kgを含む、ゴミ焼却場から得た飛灰(EP灰:溶出pH=3.5)100g当たりに対し、表3に示す金属捕集剤の水溶液(もしくは水分散液)を固型分の添加量が4gとなるように添加し、20分間混練し60分間放置した後、環境庁告示13号試験法により、飛灰からの金属溶出量を測定した。結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
Figure 0004497385
【0024】
実施例13〜16、比較例13〜16
鉛1820mg/kg、水銀15mg/kg、クロム3240mg/kg、亜鉛4480mg/kg、カドミウム174mg/kgを含有する汚泥(含水率85%)250gの表面に、表4に示す金属捕集剤水溶液(もしくは水分散液)を固型分の添加量が2.5gとなるように吹き付け、120分間放置した。放置後の汚泥からの金属溶出量を環境庁告示13号試験法により測定した。結果を表4に示す。
【0025】
【表4】
Figure 0004497385
【0026】
実施例17〜20、比較例17〜20
水銀1.5mg/Nm3 、カドミウム0.8mg/Nm3 、ダスト0.8mg/Nm3 を含む排煙(15000Nm3/時間、溶出pH=4.5)に、表5に示す金属捕集剤の水溶液(もしくは水分散液)を50mg/時間(固型分として)の割合で煙路中に噴霧し、バグフィルターにて捕集した。バグフィルター通過後の排煙中の金属濃度を測定した。またバグフィルターにより分離した飛灰からの金属溶出量を、環境庁告示13号試験法により測定した。これらの結果を表5に示す。
【0027】
【表5】
Figure 0004497385
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の金属捕集方法は、特定の金属捕集剤を組み合わせて廃棄物に添加する方法を採用したことにより、低pHにおいても金属捕集能や金属固定化能が低下する虞れがないとともに、これらの金属捕集剤を単独で用いた場合に比べて、金属の除去下限及び固定化能が更に向上し、特に3価の金属に対する除去能、固定化能が向上される。また固体状廃棄物中の金属を固定化した場合には、固体状廃棄物が酸性雨等に晒された場合でも、固体状廃棄物中からの金属溶出が抑えられる等、本発明方法において金属捕集剤として用いる個々の化合物を単独で用いた場合からは予測できない優れた金属捕集効果を発現する。

Claims (1)

  1. 金属を含む廃棄物に、チオ尿素とジフェニルカルバジド、チオグリコール酸とスルファミン酸グアニジン、チオ尿素とオキシン、ジフェニルカルバジドとジメチルグリオキシムの組み合わせより選ばれた金属捕集剤を添加し、廃棄物中の金属を捕集することを特徴とする金属捕集方法。
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