JP4495998B2 - プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents

プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高剛性と高衝撃強度の両機能をそなえたプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法に関するものであり、詳しくは、メタロセン触媒を用いて、前段工程としてプロピレン単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との共重合体を製造し、後段工程として前段工程で得られた重合体の存在下に、プロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との気相重合を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、後段工程を行う反応器に特定の炭化水素化合物を存在させて共重合性を高める、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法に係わるものである。
優れた物性と経済性とを備えたプロピレン重合体は、ポリマー分野において高く評価され、実用性の非常に高い高分子材料として汎用されているが、耐衝撃性においてはその性能が充分とはいえず、プロピレン重合体が非常に重要なポリマー材料であるがゆえに、最近では、耐衝撃性の向上が強く期待されている。
耐衝撃性の改良方法として注目されているのが、プロピレン重合体をエチレンなどの他のα−オレフィンと共重合してブロック共重合体とする方法であり、共重合部分のゴム成分によるエラストマー性能が発揮されて、プロピレン重合体における剛性などの本来の優れた性質を損なわずに、耐衝撃性を向上させることが可能となる。ここでゴム成分とは、後段工程で生成されるプロピレン−α−オレフィン共重合体のことであり、コモノマーであるα−オレフィンがエチレンの場合は、ゴム成分はEPRと呼ばれることが多い。
そして、具体的には、チーグラー系触媒を使用して、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を気相共重合させて、プロピレン系ブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体」と省略する場合がある。)を製造することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
ここで得られる製品は、各段階で製造される重合体あるいは共重合体の混合物であるが、一般にプロピレン系ブロック共重合体と称されている。
この重合方法は、プロピレン重合体における剛性などの本来の優れた性質を損なわずに、耐衝撃性を向上させることができるので、プロピレン重合体の製造において重要なものとなり、この優れた重合方法をさらに向上させるために、いわゆるキラーの添加などの、種々の改良方法が提案されている。
改良方法におけるキラーの添加方法としては、例えば、アルミニウムアルコキサイドやアルコールなどの活性水素化合物の添加があり(特許文献2及び3を参照)、これらの重合方法においては、ゴム重合の段階に炭化水素を添加する技術が記載されているものもあるが、これは第三成分を反応器内に供給するための希釈剤として使用されている。また、この第三成分はいわゆる「キラー」として作用することを目的とするため、当希釈剤として使用する量には何ら技術的な意図はない。改良方法のなかで、炭化水素化合物を単独で添加する技術を開示した文献も見られるが(特許文献4及び5を参照)、特許文献4で開示されている技術は、気相重合における微粒子の飛散を防止することを目的として槽内空塔速度を小さくする際に、その副効果として重合反応熱の除熱が不十分になるため、沸点の低い炭素数3〜5の炭化水素化合物の気化熱を利用するものであり、特許文献5では、共重合活性の向上を目的として炭化水素化合物を添加するものであるが、添加量を精密に特定して重合反応を制御するものではない。
しかしながら、これらの文献はチーグラー系触媒を用いたブロック共重合に関するものであって、メタロセン触媒を使用することは開示も示唆もなく、そもそも、チーグラー系触媒を用いたブロック共重合においては、本発明の課題である、メタロセン触媒を用いてプロピレン系ブロック共重合を行った際に、後段の共重合性が低下して、ゴム成分の量(EPR含有量)及びゴム成分中のエチレン含量が共に低下するという問題は報告されていない。さらに、チ−グラー系触媒の共重合においては、炭化水素化合物を添加すると、ポリマー中の低分子量成分や低結晶性成分を溶出させて、生成粒子や製品のベタツキを発生させるなど好ましくない側面が大きかった。
一方、最近では、メタロセン触媒を使用して、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を気相共重合させて、プロピレン系ブロック共重合体を製造することも行われており(例えば、特許文献6を参照)、それにより耐衝撃性の向上が図られているが、耐衝撃性を充分に向上させて耐衝撃性と高剛性の格別に優れたバランスを実現するには至っていない。
一般に、メタロセン触媒は、チーグラー系触媒に比して、触媒活性が高く、生成重合体の分子量分布が狭く、共重合体では組成分布が均一となるなど、チーグラー系触媒より優れた触媒であるといえるが、メタロセン触媒においても、プロピレン重合体をエチレンなどの他のα−オレフィンと共重合してブロック共重合体とする方法によって、共重合部分のゴム成分によるエラストマー性能を充分に発揮させ、プロピレンン重合体における剛性などの本来の優れた性質を損なわずに、耐衝撃性を向上させることは、未だに充分には達成されてはいない。
特開昭62−132912号公報(特許請求の範囲の請求項1、第2頁右上欄) 特開昭58−213012号公報(特許請求の範囲の請求項1) 特公昭63−54294号公報(特許請求の範囲の請求項1、第2頁4欄22行) 特開平4−331219号公報(特許請求の範囲の請求項1) 特開平7−90035号公報(特許請求の範囲の請求項1) 特開2001−316438号公報(特許請求の範囲の請求項1、段落0070)
以上において述べたように、チーグラー系触媒に比して、触媒活性が高く、生成重合体の分子量分布が狭く、共重合体では組成分布が均一となるなど、チーグラー系触媒より優れた触媒であるといえるメタロセン触媒を使用して、プロピレン重合体をエチレンなどの他のα−オレフィンと共重合してブロック共重合体とする方法により、共重合部分のゴム成分によるエラストマー性能を発揮させて、プロピレンン重合体における剛性などの本来の優れた性質を損なわずに耐衝撃性を向上させることは、未だ充分には達成されていない。
本発明は、かかる状況において、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を気相共重合させて、プロピレン系ブロック共重合体を製造するに際して、メタロセン触媒を使用して、その優れた特性を生かし、耐衝撃性を充分に向上させて耐衝撃性と高剛性の格別に優れたバランスを実現することを、発明が解決しようとする課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、先ず触媒として、チーグラー系触媒に比して触媒活性が高く、生成重合体の分子量分布が狭く、共重合体では組成分布が均一となるなど、チーグラー系触媒より優れた触媒であるメタロセン触媒を使用して、プロピレン重合体をエチレンなどの他のα−オレフィンと共重合してブロック共重合体とする方法を基本として考え、具体的には、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を気相共重合させて、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法において、高い重合活性や高い分子量の達成と共に共重合性の改良による耐衝撃性の向上などを目指して、メタロセン触媒や重合条件などについて全般的な思考及び検索を巡らし、それらについて検討及び実験を重ねた。
その結果として、メタロセン触媒を使用して、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を気相共重合させて、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法において、新しい知見を得ることができた。
すなわち、メタロセン触媒を用いて上記のブロック共重合を行った際に、チーグラー系触媒を用いてブロック共重合を行う場合と比較して、後段工程における共重合性、特に、プロピレンに対するエチレンの共重合性が悪化して、ゴム成分の量(EPR含有量)及びゴム成分中のエチレン含量が共に低下するという新たな課題を見出した。
一般には、オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合させる場合、例えばプロピレンよりもエチレンの方が重合速度は大きいと考えられている。しかしながら、本発明者の検討によって驚くべきことが明らかになり、プロピレンと他のオレフィンの共重合、特に、プロピレンとエチレンの共重合を行った場合に、エチレン単位がプロピレン単位よりもポリマー中に取り込まれ難い。このような知見は本発明者が知る限り報告されておらず、メタロセン触媒を用いてプロピレン系共重合体を製造する際の新たな課題というべきである。
そして、新たな課題である、プロピレンに対するエチレンの共重合性を改良させて、エチレン−プロピレン共重合体におけるゴム成分の量(EPR含有量)及びゴム成分中のエチレン含量を高めることができれば、プロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との共重合体において、前記した本来の課題である、高い剛性を維持しつつ耐衝撃性を向上することができ、併せてゴム重合活性の向上及びゴム分子量の向上なども実現できるのではと推察した。
この推察に沿って、重合条件や触媒機構などについて種々の検討を行う過程において、本発明者らは、例えばエチレンとプロピレンを共重合させる場合、同じ原料組成比であっても得られるポリマー分子中に取り込まれるコモノマー単位の割合は、気相重合よりもスラリー重合する方が高いことに着目した。これは、同じ重合圧力の場合、液体媒体の方が気体媒体よりもモノマー、コモノマー共に溶媒によく溶けることも原因の一つであるが、それだけではなく、触媒活性点の周辺を液体媒体で満たすことによりプロピレンに対するコモノマーの移動速度が向上するためであると推定される。
しかし、スラリー重合には溶出成分による生成粒子の粒子相互あるいは壁面への付着という欠点があるので、本発明者らはゴム成分の重合に際してコモノマーの溶解性を高めるというスラリー重合の利点および低結晶成分の溶出問題がないという気相重合の両方の利点を巧みに利用して、ブロック共重合体におけるコモノマーを共重合する方法を探索した。
そして、共重合反応は後段工程に存在するポリマー粒子の表面において実際には行われていると考えられるので、共重合反応において後段工程に存在するポリマー粒子の細孔をミクロな反応器と仮想し、そこでいわば擬似的にスラリー重合により共重合を行いつつ、反応器全体からみれば気相重合の態様を維持する仮想反応系を考えると、スラリー系の溶媒である不活性炭化水素化合物がポリマー粒子の持つ細孔内にミクロの液体状態で保持された状態となり、そのミクロ部でプロピレンとコモノマーとのスラリー重合が行われ、共重合全体のマクロの反応系では、液体中にポリマー粒子が流動しているいわゆるスラリー状態とはならず気相重合系となり、全体としてスラリー重合の欠点を防止できるという、新しい構想を着想することができた。
換言すれば、後段工程に存在するポリマー粒子の細孔にて液体を使用したミクロ的なスラリー重合を行い、反応全体としては気相重合とすれば、ポリマー中に取り込まれるコモノマーの割合を増加させると共に、スラリー重合における生成粒子付着などの問題を巧みに回避することができる。
かかる新たな認識に基づいて、実際のプロピレン−コモノマー共重合反応において、仮想反応系としての、後段工程に存在するポリマー粒子の細孔にて液体を使用したミクロ的なスラリー重合を実現するには、後段工程の気相重合系において重合に不活性な炭化水素などの液体を特定量にて添加して、後段工程に存在するポリマー粒子の細孔にてミクロなスラリー重合を行わせればよいのではと、想い到った。この新規な技術思想が本発明の創作の母体となって、以下において詳細に述べる本発明群を具現化することができた。
本発明者らは、当技術思想を実際のプロピレン−コモノマー共重合反応に適用するために、メタロセン触媒を使用して、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合させて、プロピレン系ブロック共重合体を製造する方法において、後段の重合として、低結晶成分の溶出問題がなくて溶媒の精製や回収の必要がなく生成重合体の乾燥が容易な気相重合法を採用し、さらに、不活性な液状炭化水素を、後段工程に存在すなわち添加するポリマー粒子の細孔にてミクロなスラリー重合を行わせ、かつ全体の重合系を気相状に保持しうる容量にて、後段工程に存在すなわち添加させる構成を採用した。
そして、さらに重要なことであるが、プロピレン−コモノマー共重合反応における後段の気相重合において、ポリマー全体における共重合体の割合を増加させ、かつ共重合部分においてコモノマー量をも増加させうるための、不活性な液状炭化水素の存在(添加)すべき適量を理論的かつ実験的に詳細に検討して、本発明を完成させるに到った。
なお、前述したように、チーグラー系触媒を用いたブロック共重合の共重合段階に炭化水素を添加する技術として、前記した特許文献が開示されているが、殆どがキラーのキャリアあるいは除熱改良剤などとしての添加である。また、そもそも、チーグラー系触媒を用いたブロック共重合においては、後段の共重合性が低下して、ゴム成分の量(EPR含有量)及びゴム成分中のエチレン含量が共に低下するという問題は報告されていない。さらに本発明の炭化水素を添加する技術は、べたつき成分が多いチーグラー触媒に適用すると、さらにべたつきを助長するため安定的な重合が不可能になり、実質上べたつき成分の少ないメタロセン触媒でのみ適用が可能な技術である。
したがって、これらのいずれの先行発明も、チーグラー系触媒より触媒活性その他において顕著に優れたメタロセン触媒を活用し、プロピレン−コモノマー共重合反応における後段の気相重合において、ポリマー全体における共重合体の割合を増加させ、かつ共重合部分においてコモノマー量をも増加させうるために、不活性な液状炭化水素の存在(添加)すべき適量を理論的かつ実験的に詳細に規定することを主とした特徴とする本発明を、いささかも示唆するものではない。
さらに、メタロセン触媒を用いたブロック共重合においては、例えば触媒や有機アルミニウム化合物を希釈するために不活性炭化水素溶媒を使用することはあるかもしれないが、気相重合の保持あるいは余分な精製工程をもたらす溶剤使用の回避などの観点から、溶剤の使用を避けるのが通常と考えられ、炭化水素を積極的に使用しその量を特定量に規定するという技術思想は無かったのである。
以上に詳述したとおりに創作され、構成及び機能において格別の特徴を有す本発明を総括的に記載すると、次の発明群から構成される。(全ての発明群を包含して、「本発明」と総称する。)
次の[1]における発明が基本的な発明であり、[2]以下の発明は基本的な発明における実施の態様としての発明群である。
[1]メタロセン触媒を用いて、前段工程としてプロピレン単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との共重合体を製造し、後段工程として前段工程で得られた重合体の存在下に、プロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との気相重合を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、後段工程を行う反応器にエチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物を添加し、かつその添加量が下記式を満足することを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
式 0.1≦V/P≦2.0
(Pは後段重合の反応器内に添加する時間あたりの重合体の量[g/h]、Vは当該反応器内に添加する時間あたりの上記の炭化水素化合物の量[mL/h]である。)
[2]エチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物が、飽和脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素であることを特徴とする、[1]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[3]エチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物が、常温常圧において気体又は液体であることを特徴とする、[1]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[4]後段工程の気相中のプロピレン/他のα−オレフィン(エチレンを含む)のモル比が10/90ないし90/10にて共重合を行うことを特徴とする、[1]〜[3]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[5]前段工程と後段工程の重合体製造量の重量比(前段の量/後段の量)が20/80以上97/3以下であることを特徴とする、[1]〜[4]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[6]エチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物が、前段工程終了後で後段工程開始前に添加されることを特徴とする、[1]〜[5]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[7]他のα−オレフィンがエチレンを含むものであることを特徴とする、[1]〜[6]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[8]エチレン−プロピレンブロック共重合体のゴム成分が20〜80重量%の範囲にあり、かつゴム成分中のエチレン含量が30〜80重量%の範囲にあるプロピレン系ブロック共重合体を製造することを特徴とする、[1]〜[7]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
[9]ブロック重合体のMFR(単位:g/10分)が0.01以上500以下であり、かつブロック重合体中のゴム成分の重量平均分子量が10,000以上5,000,000以下であるプロピレン系ブロック共重合体を製造することを特徴とする、[1]〜[7]におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
本発明の製造方法を用いることにより、メタロセン触媒を使用したプロピレン−α−オレフィンの多段重合において、後段工程におけるコモノマーの共重合性を改善することができ、それにより、ゴム成分の量(例えばコモノマーであるα−オレフィンがエチレンの場合はEPR含有量)及びゴム成分中のα−オレフィン含量を高めることができ、その結果、耐衝撃性を充分に向上させて、耐衝撃性と高剛性をバランスよく増大できる。そして、ブロック共重合体の収量が良好で、生成粒子の凝集(融着)が無く、高い重合活性及び高い分子量の達成もなされる。
以下において、本発明における各発明群を詳細に説明するために、発明の実施の形態として具体的に詳述する。
(1)メタロセン触媒
本発明で使用するメタロセン触媒は、従来に使用されている公知の種々ものが特に制限無く利用できるが、プロピレン単独重合を行う際に結晶性の高いポリマーを与えるメタロセン錯体を使用することが好ましい。
メタロセン触媒は一般に、(A)共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを活性化させる(B)助触媒、並びに必要に応じて使用される(C)有機アルミニウム化合物から構成される。オレフィン重合プロセスの特性によっては、粒子化が必須とされるため、さらに(D)担体を構成要素とする場合がある。(なお、本明細書の記載においては、元素の周期律表として短周期型のものを使用している。)
(A)メタロセン錯体
本発明において用いられるメタロセン錯体としては、代表的なものとして共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物のメタロセン錯体が挙げられ、これらのうち、下記一般式で表されるものが好ましい。
Figure 0004495998



Figure 0004495998
なお、式中において、AおよびA’は、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基である。この置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基が挙げられる。この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、また、これが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。AおよびA’は、その他の例として、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基などが挙げられる。これらの基は、さらに副環上に置換基を有していてもよい。これらの中で好ましいものは、インデニル基またはアズレニル基である。
Qは、二つの共役五員環などの配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を表し、具体的にはアルキレン基、シリレン基あるいはゲルミレン基であることが好ましい。
Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる遷移金属の金属原子、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどである。特にジルコニウムまたはハフニウムが好ましい。
XおよびYは、補助配位子であり、成分(B)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX,Yは、配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
メタロセン錯体の具体的化合物として、以下のものを例示することができる。
アズレニル系のものとして、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(1−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(2−アントラセニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−エチル−4−(9−フェナンスリル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
アズレニル系であって他の共役多員環配位子が異なるものとして、ジメチルシリレン[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}][1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル}]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
インデニル系のものとして、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、メチルアルミニウムビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、フェニルホスフィノビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、フェニルアミノビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
(B)助触媒(活性化剤成分)
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させうる化合物であり、具体的には下記(B−1)〜(B−4)のものが挙げられる。
(B−1)アルミニウムオキシ化合物
(B−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可
能なイオン性化合物またはルイス酸
(B−3)固体酸
(B−4)イオン交換性層状珪酸塩
(B−1)のアルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には次の各一般式で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004495998
上記の各一般式中、Rは、水素原子または炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは、0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
一般式のうち、一番目及び二番目の式で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式の三番目で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
一般式中、R及びRは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
(B−2)の化合物は、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物などが挙げられる。また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。あるいは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムなどの金属ハロゲン化合物などが例示される。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。
(B−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどが挙げられる。
(B−4)のイオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
珪酸塩は各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
2:1型鉱物類
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族; バーミキュライトなどのバーミキュライト族; 雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族; パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族; Mg緑泥石などの緑泥石族
2:1リボン型鉱物類
セピオライト、パリゴルスカイトなど
本発明で原料として使用する珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。本発明で使用する珪酸塩は、天然品または工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。本発明において、これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
(C)有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒系に、必用に応じて使用される有機アルミニウム化合物としては、本発明においては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には一般式
AlR3−i
(式中、RはC1〜20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0≦i<3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0<i<3とする。)で示される化合物が使用される。
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、又はジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム、さらにはジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
これらのうち、特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。さらに好ましくは、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムである。
(D)担体
担体としては、無機あるいは有機の化合物を用いることが可能である。このうち無機物担体としては、多孔質酸化物が好ましく、具体的にはSiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO などが例示できる。または、これらの混合物、例えばSiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−V、SiO−Cr、SiO−TiO−MgOなども例示することができる。
これらの中で、SiO あるいはAl から選ばれた少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
上記の無機酸化物には、少量のNaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaSO、Al(SO、BaSO、KNO、Mg(NO、Al(NO、NaO、KO、LiOなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差しつかえない。このような担体は、必要に応じて100〜1,000℃、好ましくは150〜700℃で焼成し乾燥して用いられる。
有機物担体としては、粒径が5〜300μmである有機化合物の顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。これら有機化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体あるいはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体を例示することができる。
これら無機物または有機物の担体は、粒径が5〜300μm、好ましくは10〜200μmの顆粒状ないしは微粒子状の固体が使用される。担体は、その種類及び製法により性状は異なるが、本発明で好ましく用いられる担体は、比表面積が10〜1,000m/g、好ましくは50〜500m/gであり、細孔容積が0.1〜2.5cm/g、好ましくは0.2〜0.5cm/gである。
なお、前述した助触媒のうち固体のものであれば、担体兼助触媒として使用することが可能である。例えば(B−3)固体酸や(B−4)イオン交換性層状珪酸塩などが挙げられる。
(E)触媒成分の使用量その他
成分(A)と成分(B)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物の場合はAl/遷移金属のモル比は通常10以上100,000以下、さらに100以上20,000以下、特に100以上10,000以下の範囲が適する。一方、成分(B)としてイオン性化合物あるいはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比は0.1〜1,000、好ましくは0.5〜100、さらに好ましくは1〜50の範囲である。
成分(B)として、固体酸あるいはイオン交換性層状珪酸塩を用いる場合は、成分(B)1gにつき、遷移金属錯体0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲である。
これらの使用比率は、通常の割合例を示すものであって、触媒が目的にかなうものとなっていれば、上に述べた使用比率の範囲によって、本発明が限定されることにはならないことは当然である。
遷移金属錯体と助触媒からなるポリオレフィン製造用触媒をオレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に必要に応じて、担体に担持させた後、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどのオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。予備重合方法は公知の方法が使用できる。
(2)炭化水素化合物
a.炭化水素化合物の役割
本発明の最も特徴とするところは、前述のとおりに、重合反応に対して不活性な液状炭化水素化合物を特定の容量において、後段工程を行う気相反応器に存在すなわち添加させることであり、メタロセン触媒によるプロピレン−α−オレフィンの多段共重合において新規で特別な当手段の採用によって、プロピレン系ブロック共重合体を製造するに際して、後段工程におけるコモノマーの共重合性を改善することができ、それにより、ゴム成分の量(例えばコモノマーであるα−オレフィンがエチレンの場合はEPR含有量)及びゴム成分中のα−オレフィン含量を高めることができ、その結果、耐衝撃性を充分に向上させて耐衝撃性と高剛性の格別に優れたバランスを実現でき、本発明の課題を解決せしめるものである。
すなわち、前段でプロピレンを単独重合もしくはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合しプロピレン(共)重合体を製造後、該(共)重合体の存在下に、後段でプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を気相共重合させる、プロピレン−コモノマー共重合反応系で、後段工程に存在するポリマー粒子の細孔(あるいは、固着したポリマー粒子間の空隙においても)における不活性な液状炭化水素の特定容量の存在により、マクロな気相重合におけるミクロ的なスラリー重合が実現され、それによってポリマー全体における共重合体の割合を増加させ、かつ共重合部分におけるコモノマー量をも増加させて、その結果として、プロピレン重合体本来の剛性を損なわずに耐衝撃性を充分に向上させるに到ったものである。
そして、ポリマー粒子の細孔に存在する、特定容量の不活性な液状炭化水素により、ポリマー粒子表面にてコモノマーが液状炭化水素に充分に溶解しプロピレンとミクロ的なスラリー重合を行うものと推察される。
スラリー重合が実現され、それによってポリマー全体における共重合体の割合を増加させ、かつ共重合部分におけるコモノマー量をも増加させ得る原因は、同じ重合圧力の場合、液体媒体の方が気体媒体よりもモノマー、コモノマー共に溶媒によく溶けることにもよるが、それだけではなく触媒活性点の周辺を液体媒体で満たすことによりプロピレンに対するコモノマー移動速度が向上するためであると推定される。
いわゆる疑似スラリー重合の利点は、触媒活性点の周辺のモノマー濃度が純粋な気相重合に比べて高いことから高重合活性が期待でき、さらにはゴム成分の分子量が向上する効果も期待できるものであるが、また、気相重合の場合は重合熱が比熱の小さいガスを通じて冷却されるため重合熱の除去の点で不利であるが、スラリー重合では比熱の大きい溶媒が触媒活性点周辺に存在するため有利である。
b.炭化水素化合物材料
後段の共重合系に存在すなわち添加させる炭化水素材料は、ミクロ的なスラリー重合における一種の溶剤的な作用をなすものであるから、共重合反応系において液状で存在することが望ましく、また、共重合反応系に対して不活性であらねばならず、重合活性な不飽和結合を持たないものでなければならない。
換言すれば、重合条件下で液状である必要があって、常温常圧で気体ないし液体あるいは固体であるものが使用できる。常温常圧で液体である化合物は取り扱いが容易であるため好ましいし、常温常圧で気体である化合物もポリマーとの分離が容易であるという点から好ましい。常温常圧で固体である化合物は取り扱いやポリマーとの分離が困難であるため好ましくない。常温常圧における好ましい沸点は300℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは100℃以下である。常温常圧における好ましい融点は30℃以下、さらに好ましくは5℃以下である。
また、エチレン性二重結合を有さず、オレフィン重合触媒によって重合しないような炭化水素であるべきで、具体的には、飽和炭化水素や飽和脂環式炭化水素あるいは芳香族炭化水素が使用され、これらの混合物であってもよい。非末端炭素−炭素二重結合を有すものは、使用しうるがあまり好ましくはない。
具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどの炭素数3〜20程度の脂肪族炭化水素、好ましくは炭素数3〜8の化合物が挙げられ、これらは環状であっても分岐があってもよいし、さらにこれらに置換基が結合していてもよい。
環状化合物の例としてはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどが挙げられる。また、以上の例示化合物の異性体はすべて使用可能である。
芳香族環を有する炭化水素化合物としては、ベンゼンおよびその誘導体が挙げられる。例えばトルエン、キシレン、ヘミメリテン、プソイドクメン、メシチレン、プレニテン、イソズレン、ペンタメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、シメン、スチルベンなどがある。
また単一化学種で構成される必要はなく、ガソリン、灯油、軽油、重油、ケロシンなど複数化学種の混合物であるような液体であってもよい。
以上の炭化水素化合物における、置換基の例としては、Cl,Br,Iなどのハロゲンやエステル基、エーテル基、フェニル基、ナフチル基、アルキル基などが挙げられる。アルコキシ基、ケトン基などを含んでいても良い。しかし、水酸基、アミノ基、カルボン酸基などの活性水素を含む置換基は触媒と反応する可能性があり、あまり好ましくない。
c.炭化水素化合物の供給方法
不活性炭化水素化合物の供給方法は、特に制限はなく一括して供給する方法、連続的に供給する方法、断続的に供給する方法が挙げられる、
該炭化水素化合物の存在(添加)方法としては、特に制限はなく、直接後段工程に添加する方法、前段工程に直接添加して後段工程に送り込む方法、前段から後段へ移送する場合は、移送中に添加する方法のいずれでもよい。なかでも、後段工程に直接添加する方法が制御の容易さという観点から好ましい。また、添加の際には、触媒や有機アルミニウムあるいは原料などの成分を供給する際の調製用助剤として使用してもよい。
d.炭化水素化合物の添加(存在)量
本発明においては、添加する液状の不活性炭化水素の量の範囲は以下の式で表される。
式 0.1≦V/P≦2.0
(Pは、後段重合の反応器内に添加する時間あたりの重合体の量[g/h]、Vは、当該反応器内に添加する時間あたりの上記の炭化水素化合物の量[mL/h]である。)ここで、重合体は、実質的に、前段重合から由来するプロピレン(共)重合体である。
プロピレン−コモノマー共重合反応における後段の気相重合において、ポリマー全体における共重合体の割合を増加させ、かつ共重合部分においてコモノマー量をも増加させうるための、不活性な液状炭化水素の添加すべき適量を理論的かつ実験的に詳細に検討して規定した。
後段の重合をマクロ的に、スラリー状態としないために、下記のように、V/P≦2.0の範囲が必要である。
すなわち、プロピレン系重合体の密度は0.8〜1.0g/mLの範囲、およそ0.9g/mL程度である。また重合槽内に存在するプロピレン系ブロック重合体の嵩密度は0.2〜0.7g/mL、およそ0.4g/mL程度である。重合体の密度と嵩密度に差がでるのは、ポリマー粒子間の空隙の存在、並びにポリマー粒子内の細孔の存在に由来する。これらの体積の和は上記の値を用いれば重合体1gあたり1/(0.9−0.4)=2.0mL/g となる。したがって、添加する炭化水素化合物の体積をこの体積(重合体1g当たり2.0mL)以下にすることで、マクロ的に液体中にポリマー粒子が流動しているいわゆるスラリー状態になることを防止でき、ポリマー粒子の細孔(及び、固着したポリマー粒子間の空隙)においてのみスラリー重合が生起する。
V/P≦2.0の範囲の上限より大きくなると、流動状態いわゆるスラリー状態となりポリマー凝集を招くため不適当である。
V/Pの範囲における0.1≦V/Pの下限より小さくなると、不活性炭化水素化合物の添加による共重合効果が小さくなり、不適当である。
0.1≦V/P≦2.0は、換言すると、ポリマーが湿った状態であるのが適当であり、ポリマーが液中に沈んでしまうほど大量の液体量であるのは好ましくないことを表わしている。
好ましいV/Pの下限は、共重合性向上効果の改善程度の観点から、0.12であり、より好ましい下限は0.15、さらに好ましい下限は0.2、非常に好ましい下限は0.25、きわめて好ましい下限は0.30である。また、好ましいV/Pの上限は、ポリマー凝集防止の観点から、1.5であり、より好ましい上限は1.2、さらに好ましい上限は1.0、非常に好ましい上限は0.8、きわめて好ましい上限は0.7である。
(3)共重合モノマー
本発明において使用できる、共重合モノマーであるα−オレフィンとは、プロピレン以外のα−オレフィンをいい、エチレンも含む概念である。例えば、炭素数2〜20程度のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素化合物であり、具体的には、エチレン、ブテン、3−メチル−ブテン−1、3−メチル−ペンテン−1、ヘキセン、オクテン、デカンなどが例示できる。また、芳香環を有するα−オレフィンとしては、スチレン、ジビニルベンゼンなどを例示できる。環状のα−オレフィンとしては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロペンタン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが例示でき、1,5−ヘキサジエンなどのジオレフィンも、本発明のα−オレフィンの概念に含めることができる。これらのうち好ましいのは、エチレンである。
(4)重合方法
本発明では、前段工程としてプロピレン単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との共重合体を製造し、後段工程として前段工程で得られた重合反応混合物の存在下、プロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との気相重合を行う。
生成ポリマーの分子量調整のため、必要に応じて、連鎖移動剤として水素を加えてもよい。
なお、コモノマーの共重合性とは、反応器に仕込んだモノマーの比率に対するポリマー中のコモノマーの比率のことを言い、双方が同じ値に近づくほど共重合性が良いと言う。したがって共重合体中に取り込まれたコモノマーの比率が、原料供給時のコモノマーの比率と全く一致する場合が最も共重合性が良いことになる。
前段工程で得られる結晶性重合体中のプロピレン以外のα−オレフィンの割合は、ポリプロピレンの特性を失わない程度の量、例えば、20重量%以下であることが好ましい。結晶性重合体中のプロピレン以外のα−オレフィンの割合が、20重量%を越えるとポリマー粒子の凝集が増大する。
重合反応は、複数の反応器を直列につないで連続重合を行ってもよいし、同じ反応器で多数の条件の重合をバッチ式に行ってもよい。本発明における後段重合とは少なくとも1つの条件の重合反応後に行う気相重合反応である。
前段重合とは、気相重合を行う前に行う重合であり、通常、スラリー重合法又は、実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法が採用される。前段重合は何回かに分けてもよい。また、前段重合の様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク重合も採用できる。
後段重合をさらに多段の気相重合で行っても良い。この場合少なくともいずれかひとつの気相反応を行う反応器内に、不活性炭化水素化合物を存在させればよいが、複数の気相反応において存在させることも可能であり、かつ好ましい。
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。
基本的に大略、重合温度は0〜150℃であり、重合圧力は0より大きく、2,000kg/cmG以下、好ましくは0より大きく60kg/cmG以下が適当である。
バルク重合の場合には、プロピレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの混合モノマーを液状に保ちうる温度及び圧力条件下で行うことが好ましい。重合温度は、通常30〜90℃、好ましくは50〜80℃である。重合時間は、通常5分〜5時間である。
気相重合では、プロピレン又はプロピレンと他のα−オレフィンとの混合モノマーを導入して、気相状態を維持できる温度、圧力条件下で行われる。重合温度は通常30〜95℃、好ましくは40〜70℃である。重合時間は通常30分〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
本発明においては、後段工程の気相中のプロピレン/他のα−オレフィン(エチレンを含む)のモル比が、10/90ないし90/10にて共重合をおこなうことが望ましい。下限モル比10/90を下回ると、製品であるブロック重合体の耐衝撃性が低下するため好ましくない。逆に、上限90/10を超えても同様の不都合が生じる。また、この範囲の好ましい下限は15/85、より好ましい下限は20/80、特に好ましい範囲は30/70である。また、この範囲の好ましい上限は80/20、より好ましい上限は70/30、さらに好ましい上限は60/40である。これらの値はガスクロマトグラフで測定する。
(5)ブロック共重合体
前段工程で得られるプロピレン(共)重合体と、後段工程で得られるプロピレン/α−オレフィン共重合体(いわゆるゴム成分)との生成比率(前段での重量/後段の重量)は、20/80以上97/3以下の範囲が望ましい。
好ましい生成比率の下限は30/70、さらに好ましい下限は60/40、より好ましい下限は50/50である。好ましい生成比の上限は95/5、さらに好ましい上限は90/10、特に好ましい上限は80/20である。
プロピレン系ブロック共重合体のゴム成分は、20〜80重量%の範囲が好ましく、また、ゴム成分中のコモノマー含量は10〜90重量%、好ましくは下限が30重量%、特に好ましくは40重量%であり、上限は好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%である。下限を下回ると本発明の効果が小さく、逆に上限を上回ると粒子が生成ゴム成分を保持できず、反応器内に液体状で存在する炭化水素化合物によって粒子同士が凝集あるいは壁面との付着を引き起こす場合がある。ゴム成分中のエチレン含量などの測定方法はCFC−IRによる。
ブロック共重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重、JIS−K−6758に準拠して測定)は、0.01以上500以下であることが好ましい。下限のMFRを下回ると製品のブロック共重合体の溶融時の粘度が高すぎて成形性が悪化するので好ましくない。また、上限のMFRを上回ると溶融時の溶融張力が低下して成形性が悪化するため好ましくない。この範囲の好ましい下限は、0.05、より好ましい下限は0.1である。この範囲の好ましい上限は、300、より好ましい上限は100である。
また、ブロック共重合体中のゴム成分の重量平均分子量は、10,000以上5,000,000以下であるのが好ましい。下限未満の重量分子量では、ブロック共重合体を成形した製品の耐衝撃性が低下するため好ましくない。また、上限を超える分子量の場合、製品の外観が悪化するため好ましくない。この範囲の好ましい下限は50,000、より好ましい下限は100,000である。この範囲の好ましい上限は3,000,000、より好ましい上限は1,000,000である。測定はCFC−IRによる。
以下において、実施例により本発明を詳細に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りにおいて、これらの実施例によって制約を受けるものではない。
[MFR測定]
MFRは、JIS−K−6758に準拠して230℃、2.16kg荷重により測定したメルトインデックス値である。
[ゴム含量 EPR中のエチレン含量 EPRの重量平均分子量]
プロピレン−エチレン系ブロック共重合体のゴム含量(エチレン−プロピレン
共重合体:EPR)、EPR中のエチレン含量及びEPRの重量平均分子量(MwEPR)を測定する。
EPR活性とは後段工程におけるエチレン−プロピレン共重合の活性であり、触媒1g当たり、後段重合1時間当たりの生成したエチレン−プロピレン共重合体(EPR)の重量で表す。後段重合で生成したEPR量は得られたブロック共重合体量にEPR含量(単位 重量%)を掛け合わせることで求められる。
1.使用する分析装置
a.クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
b.フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。
CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
c.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段のGPCカラムは、昭和電工製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
2.CFCの測定条件
a.溶媒:o−ジクロルベンゼン(ODCB)
b.サンプル濃度:4mg/mL
c.注入量:0.4mL
d.結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
e.分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
f.溶出時溶媒流速:1mL/分
3.FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
CFC−FT−IRの概念図を図1に示した。
a.検出器:MCT
b.分解能:8cm−1
c.測定間隔:0.2分(12秒)
d.一測定当たりの積算回数:15回
4.測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2,945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
a.標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
b.プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC−IRによって得られる2,956cm−1の吸光度と2,927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定などによりエチレン含有量が既知となっているEPR及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
[EPR含有量の理論計算]
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体のEPR含有量は、下記式(I)で定義され、以下のような手順で求められる。
EPR含有量(重量%) =
40×A40/B40+W100×A100/B100+W140×A140/B140 (I)
(W40、W100、W140は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100、A140は、W40、W100、W140に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100、B140は、各フラクションに含まれるEPRのエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、A140、B40、B100、B140の求め方は後述する。
(I)式の意味は以下の通りである。(I)式右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるEPRの量を算出する項である。フラクション1がEPRのみを含み、PP(プロピレン重合体)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のEPR含有量に寄与するが、フラクション1にはEPR由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、EPR成分由来の量を算出する。例えばフラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるEPRのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はEPR由来、残りの1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からEPRの寄与を算出することを意味する。右辺第二項以後も同様であり、各々のフラクションについて、EPRの寄与を算出して加え合わせたものがEPR含有量となる。
[EPR含有量の実測]
上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜3に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100、A140とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
フラクション1の微分分子量分布曲線(図2参照)におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2および3については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明ではB100=B140=100と定義する。B40、B100、B140は各フラクションに含まれるEPRのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在するPPとEPRを完全に分離分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果を合理的に説明することができることがわかった。また、B100、B140はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるEPRの量がフラクション1に含まれるEPRの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、共に100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=B140=100として解析を行うこととしている。
以下の式に従い、EPR実測含有量を求める。
EPR含有量(重量%) =
40×A40/B40+W100×A100/100+W140×A140/100 (II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は結晶性を持たないEPR含有量(重量%)を示し、第二項と第三項の和であるW100×A100/100+W140×A140/100は結晶性を持つEPR含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40、A100、A140は、次のようにして求める。
図2は、結晶分布の違いによって分別されたフラクション1を、CFC分析装置の一部を構成するGPCカラムで分子量分布を測定した曲線、および、当該GPCカラムの後ろに接続されたFT−IRによって、分子量分布曲線に対応して測定されるエチレン含有量の分布曲線を示した例である。微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。
また、図2において、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各々のデータポイント毎の重量割合と、各々のデータポイント毎のエチレン含有量の積の総和が平均エチレン含有量A40となる。フラクション2及びフラクション3についてもフラクション1においてA40を求めたのと同様の操作によりフラクションの平均エチレン含有量であるA100、A140がそれぞれ求まる。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えばEPRの大部分、もしくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分及びアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えばEPR中、エチレン及び/又はプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えばPP中の特に結晶性の高い成分、およびEPR中の極端に分子量が高くかつエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140に含まれるEPR成分は極めて少量であり実質的には無視できる。
[EPR中のエチレン含有量の実測]
EPR中のエチレン含有量(重量%)=
(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[EPR]
但し、[EPR]は先に求めたEPR含有量(重量%)である。
[実施例1]
(1)触媒合成
a.化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,698gを投入し、98%硫酸501gを滴下した。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:19.5μm)を300g添加後、撹拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、洗浄した。
回収したケーキに硫酸リチウム1水和物324gの水900mL水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、275gの化学処理体を得た。
b.化学処理モンモリロナイトの有機アルミニウム処理
内容積1Lのフラスコに、上記a.で得た化学処理モンモリロナイト9.9gを加え、ヘプタン65mLとトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液35.4mL(25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。
(2)プロピレンによる予備重合
上記(1)のb.で調整したトリイソブチルアルミニウム処理したモンモリロナイトのヘプタンスラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液2.13mL(1,504μmol)を加えて10分間、室温で撹拌した。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウム(299μmol)にトルエン(60mL)を加えてスラリーとした後、上記の1Lフラスコに加えて、室温で60分間撹拌した。
次に、上記モンモリロナイトのヘプタンスラリーに、さらにヘプタン340mLを追加して内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを238.1mmol/hr(10g/時)の一定速度で120分間にて供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2時間そのまま維持し、その後残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液8.5mL(6.0mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒を32.8g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.22であった。
(3)重合
前段重合:内容積3Lの撹拌機付オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mLを加え、水素300mL、続いて液体プロピレン750gを導入し、65℃に昇温した。上記(2)で得られた予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、固体触媒として30mg(予備重合ポリマーを除く正味の固体触媒の量)を圧入して重合を開始した。槽内温度を65℃に維持した。触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンにて槽内を5回置換した。撹拌を停止させアルゴンをフローさせながら、テフロン管を槽内に差し込み、ポリプロピレンを少量抜き出した。90℃窒素気流下で30分間乾燥後に測定した結果、抜き出し量は16gであった。
後段重合:重合槽の撹拌を再開後にヘプタン200mLを添加し、エチレンとプロピレンを3:7のモル比で圧力2.0MPaまで供給した。内温を80℃に保持し、圧力を2.0MPaに保つようにエチレンとプロピレンを45:55の割合で供給し気相共重合を30分間実施した。重合終了後、回収したポリマーは90℃窒素気流下で30分間乾燥した。
(4)重合結果
プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:402g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:21重量%
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:402×(1−0.21)=318 [g]
EPR中のエチレン含有量:50重量%
EPR活性 =6,100[gEPR/(gcat・h)]
また、この実施例における後段反応器に添加した不活性炭化水素化合物の量Vは、重合時間が30分で、200[mL]であるためV/Pの値は0.63mL/gとなり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たす。
この重合において、EPR中エチレン含量とポリマー中EPR含量の値は、後述する比較例1においてヘプタンを全く添加しない場合に比べて、増加していることがわかる。粒子の凝集は全くなく良好な性状であった。
[実施例2]
実施例1における後段重合開始時点で、添加するヘプタン量を100mLとした以外は実施例1と同様に行った。
重合結果 プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:435g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:19重量%
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:435×(1−0.19)=352 [g]
EPR中のエチレン含有量:47重量%
EPR活性 =5,300[gEPR/(gcat・h)]
また、この実施例におけるV/Pの値は0.28mL/gとなり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たす。
この重合において、ポリマー中EPR含量も19wt%であった。粒子の凝集は全くなく良好な性状であった。
[比較例1]
実施例1における後段重合の開始時点で、ヘプタンを添加しない以外は実施例1と同様に行った。
重合結果 プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:448g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:18重量%
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:448×(1−0.18)=367 [g]
EPR中のエチレン含有量:42重量%
EPR活性 =5,010[gEPR/(gcat・h)]
また、この比較例におけるV/Pの値は0mL/g となり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たさない。
[実施例3]
実施例1における後段重合開始時点で、ヘプタンを500mL添加した以外は実施例1と同様に行った。重合後得られたのはポリマーが一部溶解したスラリーであり70℃で12時間乾燥後に以下の分析を行った。
重合結果 プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:460g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:26重量%
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:460×(1−0.26)=340 [g]
EPR中のエチレン含有量:65重量%
EPR活性 =8,000[gEPR/(gcat・h)]
また、この実施例におけるV/Pの値は1.47mL/g となり
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たす。
この重合においてポリマーの粒子性状は、やや悪く一部溶媒に溶解していた。
[実施例4]
実施例1における前段重合と同様に実施した。
後段重合:重合槽の撹拌を再開後にヘプタン200mLを添加し、エチレンとプロピレンを55:45のモル比で圧力2.0MPaまで供給した。内温を80℃に保持し、圧力を2.0MPaに保つようにエチレンとプロピレンを3:7の割合で供給し、気相共重合を30分間実施した。重合終了後、回収したポリマーは90℃窒素気流下で30分間乾燥した。
重合結果 プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:456g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:21重量%
EPR活性 =6,400[gEPR/(gcat・h)]
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:456×(1−0.21)=360 [g]
EPR中のエチレン含有量:27重量%
また、この実施例におけるV/Pの値は0.56mL/gとなり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たす。
この重合において、粒子の凝集は全くなく良好な性状であった。またポリマーのIZOD(−30℃)は54kg・cm/cmであった。
[比較例2]
実施例4における後段重合開始時点で、ヘプタンを添加しない以外は実施例4と同様に行った。
重合結果 プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:427g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:18重量%
EPR活性 =5,100[gEPR/(gcat・h)]
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:427×(1−0.18)=350 [g]
EPR中のエチレン含有量:23重量%
また、この比較例におけるV/Pの値は0mL/g となり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たさない。
この重合において、ポリマーのIZOD(−30℃)は46kg・cm/cmであり、実施例4より悪化していた。
[実施例5]
(1)触媒合成及びプロピレンによる予備重合
容積200mLのフラスコ中で、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}]ハフニウム(304μmol)にトルエン(60ml)を加えてスラリーとした後、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.85ml(600μmol)を加えて60分間室温で撹拌した。別途1Lフラスコにウイトコ社製MAO担持シリカ(TA02794/HL/04)9.99gとヘプタン100mlを入れてスラリー化し、これに上記の反応物を加えて、室温で60分間撹拌した。
その後このスラリーに、さらにヘプタン340mlを追加して内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを238.1mmol/hr(10g/時)の一定速度で120分間にて供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2時間そのまま維持し、その後残存ガスをパージして、予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液8.5ml(6.0mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒を66.6g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.22であった。
(2)重合
前段重合:内容積3Lの撹拌機付オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/ml)2.86mlを加え、水素300ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、65℃に昇温した。上記(1)で得られた予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、固体触媒として40mg(予備重合ポリマーを除く正味の固体触媒の量)を圧入して重合を開始した。槽内温度を65℃に維持した。触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンにて槽内を5回置換した。撹拌を停止させ、アルゴンをフローさせながら、テフロン管を槽内に差し込み、ポリプロピレンを少量抜き出した。90℃窒素気流下で30分間乾燥後に測定した結果、抜き出し量は9.8gであった。
後段重合:重合槽の撹拌を再開後にヘプタン250mlを添加し、エチレンとプロピレンを3:7のモル比で圧力1.8MPaまで供給した。内温を65℃に保持し、圧力を1.8MPaに保つようにエチレンとプロピレンを3:7の割合で供給し気相共重合を30分間実施した。重合終了後、回収したポリマーは90℃窒素気流下で30分間乾燥した。
(3)重合結果
プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:218g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:10.7重量%
EPR活性 =1,170[gEPR/(gcat・h)]
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:218×(1−0.107)=195 [g]
EPR中のエチレン含有量:36重量%
また、この実施例におけるV/Pの値は1.28ml/gとなり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たす。
この重合においてEPR中エチレン含量とポリマー中EPR含量の値は、次の比較例3のヘプタンを全く添加しない場合に比べて、増加していることが分かる。
[比較例3]
実施例5における後段重合開始時点で、ヘプタンを添加しない以外は実施例5と同様に行った。
重合結果 プロピレン−エチレンブロックポリマーの収量:223g
エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の含有量:9.5重量%
P:後段重合開始時点のポリオレフィンパウダーの量:223×(1−0.095)=202 [g]
EPR中のエチレン含有量:32重量%
EPR活性 =940[gEPR/(gcat・h)]
また、この比較例におけるV/Pの値は0ml/gとなり、
式 0.1≦V/P≦2.0 を満たさない。
以上の各実施例と比較例の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0004495998
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の各実施例と各比較例とを検討し、対照することにより、本発明おいては、不活性炭化水素の存在量に係わるV/P値が本発明で規定する範囲内であれば、ブロック共重合体の収量が良好で、生成粒子の凝集(融着)が無く、共重合体におけるEPR活性が高く、EPR成分の含有量及びEPRにおけるエチレン含有量も高くなることが明らかにされている。
したがって、本発明においては、触媒活性の持続性に優れ、高いEPR含有量に基づく高い耐衝撃性が得られている。
CFC−IR測定のフローを示す概念図である。 CFC−IR測定の結果を示すチャートの一例である。

Claims (9)

  1. メタロセン触媒を用いて、前段工程としてプロピレン単独重合体またはプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との共重合体を製造し、後段工程として前段工程で得られた重合体の存在下に、プロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)との気相重合を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、後段工程を行う反応器にエチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物を添加し、かつその添加量が下記式を満足することを特徴とする、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
    式 0.1≦V/P≦2.0
    (Pは後段重合の反応器内に添加する時間あたりの重合体の量[g/h]、Vは当該反応器内に添加する時間あたりの上記の炭化水素化合物の量[mL/h]である。)
  2. エチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物が、飽和脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素であることを特徴とする、請求項1に記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  3. エチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物が、常温常圧において気体又は液体であることを特徴とする、請求項1に記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  4. 後段工程の気相中のプロピレン/他のα−オレフィン(エチレンを含む)のモル比が10/90ないし90/10にて共重合を行うことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  5. 前段工程と後段工程の重合体製造量の重量比(前段の量/後段の量)が20/80以上97/3以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  6. エチレン性不飽和二重結合を有しない液体状態の炭化水素化合物が、前段工程終了後で後段工程開始前に添加されることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  7. 他のα−オレフィンがエチレンを含むものであることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  8. エチレン−プロピレンブロック共重合体のゴム成分が20〜80重量%の範囲にあり、かつゴム成分中のエチレン含量が30〜80重量%の範囲にあるプロピレン系ブロック共重合体を製造することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  9. ブロック重合体のMFR(単位:g/10分)が0.01以上500以下であり、かつブロック重合体中のゴム成分の重量平均分子量が10,000以上5,000,000以下であるプロピレン系ブロック共重合体を製造することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載されたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
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