JP4486168B2 - 非プロトン性電解質薄膜、その製造方法およびそれを用いた二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非プロトン性電解質薄膜およびその製造方法に関し、特にポリオレフィン多孔膜に、非プロトン性電解液を選択的に膨潤固定化した、実質的に固体と見做し得るリチウム系1次電池、2次電池または電気2重層コンデンサーなどに好適に使用できる非プロトン性電解質薄膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム電池は、高エネルギー密度を有する非水溶液系、または固体電解質系電池であり、小電流の半導体メモリーバックアップ電源、時計やカメラの電源として実用化されているが、こうした成長と同時に動力用電源や電力貯蔵装置としての応用領域を更に拡大するためには、軽量で、形状が多様で、可撓性を有する超薄型のリチウム2次電池の開発が期待される。
【0003】
しかし、リチウム2次電池の高性能化や安全性向上のためには多くの問題があり、リチウム金属のデンドライト生成による短絡損傷や発火の問題を解消し、電池の信頼性の向上に寄与する充放電サイクル寿命の優れた電解質系の発見が一つの課題である。
【0004】
前記リチウム電池の電解液は、イオン導電性を有する必要がある一方では、正極と負極間の電子伝導による短絡、自己放電を起こさせないようにするために、電子伝導性をほとんど示さないことが要求される。これが固体電解質では、液洩れの心配がなく、また特に薄膜化、大面積化などにおいて工程が簡単になるなどの利点を有している。
【0005】
一方、高分子からなる固体電解質は、固体電解質のこれらの長所を活かすために、LiClO4 などを溶解、分散させたものであり、既存の電池の電解液が置き換えられる可能性がある。特に、ペーパー電池と言われるような超薄膜電池の開発、エレクトロクロミック表示素子のような大面積を要する電気化学デバイスの開発に置いては、組立の容易さ、長期安定性などの点から優れた高分子固体電解質の開発が待たれている。
【0006】
例えば、LiClO4 などのリチウム塩をポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ポリエステル、ポリイミン、ポリエーテル誘導体に溶解させた高分子電解質が開発されているが、イオン導電率10-5〜10-3s/cmは室温より充分高温でないと発揮されない。
【0007】
また、実効抵抗を下げるためには薄膜化も一つの解決策であり、例えば50μm以下の固体高分子多孔薄膜の0.1μm以下の微細な空孔中に毛管凝縮を利用して液体状イオン導電体を固定化する方法(特開平1−158051)があるが、動作温度の問題は根本的には解決できない。
【0008】
さらに、ポリマーマトリックスに従来の液体タイプのリチウム電池と同じような塩と溶媒の溶液を含浸させるゲル状ポリマーとして、架橋したポリアルキレンオキシドを電解質に用いる技術(USP 4,303,748 )、ポリアルリレートをゲル化して電解質に用いる技術(USP 4,830,939 )が提案されている。また、最近では、ポリ弗化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体にリチウム塩を溶解したカーボネート系溶液を含浸させたポリマーゲルを電解質に用いる技術(USP5,296,318)が提案され、有望視されているが、高温に於けるゲル収縮による電解液の滲み出の問題があり、溶媒保持性に関する完全な解決策ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解消し、薄膜化、大面積化などが容易で広い温度範囲で非プロトン性電解液の保持性に優れ、長期安定性と機械的強度の向上した非プロトン性電解質薄膜及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意研究の結果、ポリオレフィン多孔膜にグラフト重合されたポリマーと親和性を有する非プロトン性電解液を膜に固定化することにより、前記課題が解決できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の非プロトン性電解質薄膜は、ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面にグラフト重合体を有してなる多孔性または非多孔性の膜に、非プロトン性電解液が固定化された非プロトン性電解質薄膜であって、前記グラフト重合体が前記非プロトン性電解液に親和性を有するものであり、前記グラフト重合体を形成するために使用するモノマーがアクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステル、アクリルアミドから選択されたアクリル系モノマーであることを特徴とするものである。さらに、本発明は、前記非プロトン性電解液を用いた二次電池を提供するものである。
【0012】
また、本発明の非プロトン性電解質薄膜の製造方法は、ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面にモノマーをグラフト重合して多孔性または非多孔性のポリオレフィン膜を形成し、次いでグラフト重合された前記ポリオレフィン膜に、非プロトン性電解液を含浸させて固定化させる非プロトン性電解質薄膜の製造方法であって、当該モノマーの重合体が非プロトン性電解液溶媒に親和性を有するものであり、当該モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステル、アクリルアミドから選択されたアクリル系モノマーであることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の非プロトン性電解質薄膜は、ポリオレフィン多孔膜を基材とする。ポリオレフィン多孔膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などの多孔膜があげられる。これらの内ではポリエチレン多孔膜が好ましい。このポリエチレン多孔膜としては、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレンからなるものを用いることができるが、強度、電解質膜の安全性、製膜性などの観点から超高分子量ポリエチレンまたはその成分を含むものを用いるのが好ましい。
【0014】
上記超高分子量ポリエチレンまたはその成分を含むポリエチレン多孔膜は、空孔率が30〜95%、より好ましくは50〜90%の範囲のものである。空孔率が30%未満では非プロトン性電解液の固定化が不十分であり、一方95%を超えると膜の機械的強度が小さくなり実用性に劣る。
【0015】
また、平均孔径は0.005〜1μmの範囲内が好ましい。平均孔径が0.005μm未満ではプラズマによるグラフト重合が困難になる。一方、1μmを超えるとグラフト重合量が少い場合は、活物質や反応生成物の拡散を防止することが困難となる。
【0016】
さらに、破断強度を200kg/cm2 以上が好ましい。破断強度を200kg/cm2 以上とすることで、グラフト重合体に非プロトン性電解液が溶解した際の膨潤に対する耐変形性が十分となる。
【0017】
なお、ポリエチレン多孔膜の厚さは好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.2〜25μmである。厚さが0.1μm未満では膜の機械的強度が小さく、実用に供することが難しい。一方、50μmを超える場合は、厚すぎて薄膜化が不十分となる。
【0018】
前記超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体またはエチレンと10モル%以下のα−オレフィンとの共重合体からなる結晶性の線状超高分子量ポリエチレンであり、その分子量は、重量平均分子量が5×105 以上、好ましくは1×106 〜1×107 である。超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は得られるポリエチレン多孔膜の機械的強度に影響する。重量平均分子量が5×105 未満では極薄で高強度のポリエチレン多孔膜が得られない。一方、重量平均分子量の上限は特に限定されないが、重量平均分子量が1×107 を超えると延伸加工による薄膜化が難しいので好ましくない。
【0019】
超高分子量ポリエチレンに、他の比較的低分子量のポリエチレンを配合する場合、重量平均分子量が7×105 以上の超高分子量ポリエチレンを1重量%以上含有し、重量平均分子量/数平均分子量が好ましくは10〜300、より好ましくは12〜250のポリエチレン組成物からなるものである。
【0020】
重量平均分子量/数平均分子量が10未満では、平均分子鎖長が大きく、溶解時の分子鎖同士の絡み合い密度が高くなるため、高濃度溶液の調製が困難である。また300を超えると、延伸時に低分子量成分の破断が起こり膜全体の強度が低下する。
【0021】
またポリエチレン組成物中の超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレンは、重量平均分子量が5×105 未満のものであるが、分子量の下限としては1×104 以上のものが好ましい。重量平均分子量が1×104 未満のポリエチレンを用いると、延伸時に破断が起こりやすく、目的のポリエチレン多孔膜が得られないので好ましくない。特に重量平均分子量が1×104 以上5×105 未満のポリエチレンを超高分子量ポリエチレンに配合するのが好ましい。
【0022】
なお、上記したポリエチレン多孔膜には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填剤などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0023】
ここで、超高分子量ポリエチレン多孔膜の製造方法について説明する。
【0024】
まず、上述の超高分子量ポリエチレンまたはそれを含むポリエチレン組成物を溶媒に加熱溶解することにより、高濃度溶液を調製する。この溶媒としては、ポリエチレン組成物を十分に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば流動パラフィンなどが溶液の安定性のうえから好ましい。加熱溶解は、ポリエチレン組成物が溶媒中で完全に溶解する温度で二軸押出機を用いて混練するか、または溶解槽で攪拌しながら行う。その温度は使用する重合体及び溶媒により異なるが、140〜250℃の範囲が好ましい。また、ポリエチレン組成物溶液の濃度は、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
【0025】
次にこのポリエチレン組成物の加熱溶液をダイスから押し出して成形する。ダイスは、通常長方形の口金形状をしたシートダイスが用いられるが、2重円筒状の中空系ダイス、インフレーションダイス等も用いることができる。シートダイスを用いた場合のダイスギャップは通常0.1〜5mmであり、押出し成形時には140〜250℃に加熱される。この際押し出し速度は、通常20〜30cm/分乃至2〜3m/分である。
【0026】
このようにしてダイスから押し出された溶液は、冷却することによりゲル状物に成形される。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。
【0027】
次に、このゲル状成形物を延伸する。延伸は、ゲル状成形物を加熱し、上記と同様に、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法もしくはこれらの方法の組み合わせ組み合わせによって所定の倍率で行うが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸は、縦横同時延伸または逐次延伸のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。延伸倍率は、一軸延伸では2倍以上が好ましく、より好ましくは3〜30倍であり、二軸延伸では10倍以上が好ましく、より好ましくは15〜400倍である。
【0028】
延伸温度は、ポリエチレン組成物の融点+10℃以下、好ましくは結晶分散温度から結晶融点未満の範囲である。例えば、90〜140℃、より好ましくは、100〜130℃の範囲である。得られた延伸膜中の溶媒を抽出除去して室温で乾燥後、好ましくは115℃で熱セットする。
【0029】
本発明においてポリオレフィン多孔膜の表面および細孔表面にグラフト重合するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらのエステル、アクリルアミドから選択されたアクリル系モノマーが用いられる。
【0030】
ここで、グラフト重合ポリオレフィン膜は、ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔表面を覆っているグラフト重合体に親和性のある電解溶媒を選択的に取り込むが、主骨格が耐溶剤性に優れたポリオレフィンから構成されているので全体としてみるとその膨潤は適度に抑えられ、大きな変形、強度の低下を防止できる。
【0031】
本発明における非プロトン性電解液の電解質としては、LiClO4 、LiAsF6 、LiPF6 、LiBF4 等のリチウム塩を単独または組み合わせたものがあげられる。また、これら電解質の非プロトン性溶媒としては、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、エチレンカーボネイト、1,2−ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ギ酸ビニル、ジエチルエーテル等の1種または2種以上を組み合わせたものがあげられる。
【0032】
本発明では、ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面にグラフト重合体を形成させるが、これにはプラズマあるいは電子線、γ線などの放射線グラフト重合法を用いる。ポリオレフィン多孔膜にラジカルを生成させた後に選択されたモノマーに接触させる後重合法でも、モノマーに接触させた状態でラジカルを生成させる同時重合法でも良い。
【0033】
前記プラズマグラフト重合の具体例としては、10-2〜10mbarの圧力となるアルゴン、ヘリウム、窒素、空気等のガスの存在下でポリオレフィン多孔膜に対して通常周波数10〜30MHz、出力1〜1000Wで、1〜1000秒のプラズマ処理を行う。次に選択された前記モノマーを1〜10容量%、必要に応じて架橋助剤を0.01〜2容量%含む無機または有機溶媒(前記のモノマー及び架橋助剤はこの溶媒に溶解または懸濁している)にプラズマ処理を施したポリオレフィン多孔膜を浸漬し、窒素ガス、アルゴンガン等でバブリングしながら、20〜100℃で、1〜60分間グラフト重合反応を行う。なお、溶媒としては、水、メタノール等のアルコール、アルコール水溶液等を用いることができる。
【0034】
また、電子線グラフト重合法としては、前記のポリオレフィン多孔膜、前記選択されたモノマー及び前記架橋助剤を共存させて同時に電子線を照射する同時照射法及び予めポリオレフィン多孔膜に電子線を照射した後に、前記架橋助剤の存在下に前記選択されたモノマーを反応させる前照射法があるが、前記選択されたモノマーの単独重合を抑制することから前照射法によるものが好ましい。
【0035】
前照射法では、ポリオレフィン多孔膜に加速電圧100〜5000KeVが好ましく、より好ましくは200〜800Kevの電子線を照射する。なお、電子線照射は、空気雰囲気下で行うことができる。
【0036】
照射量としては10〜500KGyが適当であり、好ましくは50〜200KGyである。10KGy未満では前記選択されたモノマーのグラフトが不十分であり、一方500KGyを超えるとポリオレフィン多孔膜が劣化することがある。
【0037】
次いで、電子線照射したポリオレフィン多孔膜を、前記架橋助剤の存在下に前記選択されたモノマー溶液中に浸漬処理してグラフト重合体を形成する。
【0038】
このようなグラフト重合で、ポリオレフィン多孔膜の表面に選択的にグラフト重合体を形成、あるいはその細孔内表面に選択的にグラフト重合体を形成、あるいは表面およびその細孔内表面のいずれにもグラフト重合体を形成することができる。
【0039】
なお、グラフト重合の過程で副生されたホモポリマーは、トルエンなどの溶剤を用いて完全に洗い流し、グラフト重合体のみをポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面に残す。グラフト重合量は、ラジカル生成量あるいはモノマー濃度、その接触時間、温度などの条件で制御することができる。グラフト重合量(単位面積当りに重合したグラフトコポリマー量)は0.02〜35mg/cm2 が好ましく、より好ましくは0.03〜30mg/cm2 である。ポリオレフィン微多孔膜の膜厚にもよるが、0.02mg/cm2 未満では電解液による溶解、膨潤効果が不十分で35mg/cm2 を超えるとポリオレフィン微多孔膜の変形防止、強度低下防止の効果が不十分となる。グラフト重合量の増加にともない、ポリオレフィン多孔膜の微細孔は次第に閉塞され多孔性は徐々に失われ、最後には実質的に完全閉塞されることになる。
【0040】
こうして得られるグラフト重合を施したポリオレフィン多孔膜に電解液を導入し非プロトン性電解質薄膜とする方法としては、含浸、塗布またはスプレーなどを単独あるいは組み合わせて使用することが出来る。また、電解液を導入するのは、電池に組み込む前でもよいし、電池組立途中工程でもよいし、電池組立最終工程でもよい。中でも、電池組立時の取り扱い性、皺などの混入防止、正負極板表面との密着性などの観点と、従来の電池組立工程をそのまま適用できることから、電池組立途中工程あるいは電池組立最終工程で電解液を導入する方法が好ましい。
【0041】
こうして得られる電池は、従来の非プロトン系液体電解液と同じ電解液を使用しているが、グラフト重合を施したポリオレフィン多孔膜に含浸することにより毛管凝縮による固定化に加え、電解液がグラフト重合体を溶解、膨潤することにより固定化し、その結果液漏れの心配がなくなるとともに蒸気圧が著しく下がり、燃えにくくなる。
【0042】
また固定化された電解液はイオン導電性においては液体とほぼ同様に働くので動作温度の問題は回避できる。
【0043】
【実施例】
本発明を以下の具体的な実施例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例における試験方法は次の通りである。
(1)膜厚:断面を走査型電子顕微鏡により測定。
(2)平均孔径:オムニソープ360[日機装(株)]によって測定。
(3)引張り破断強度:幅15mm短冊状試験片の破断強度をASTM
D882に準拠して測定。
(4)空孔率:重量法により測定。
【0044】
実施例1
PE微多孔膜(重量平均分子量110万、分子量分布20、膜厚25μm、平均孔径0.03μm、空孔率43.5%、引っ張り強度1049kg/cm2 )にアルゴン雰囲気下で0.1mbar、10W、60秒プラズマを照射し、メチルアクリレート水溶液(モノマー濃度を4vol%とし、溶媒として水を使用)に30℃で、各々0.1、15、1000min接触させてグラフト重合を行なった。反応終了後、トルエンで洗浄し、50℃オーブンにて乾燥し、PE微多孔膜(サンプルa、b、c)を得た。重合前後の重量変化から、単位基材面積当りに重合したグラフトポリマー量は、各々0.02、2.3、34mg/cm2 であった。また、引っ張り破断強度は985、995、190kg/cm2 であった。
【0045】
実施例2
実施例1において、ブチルアクリレートエマルジョン液(モノマー濃度を10vol%とし、溶媒としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加した水を使用)し、30℃、60min接触させてグラフト重合させた以外は同様にして、グラフトポリマー量1.5mg/cm2 、引っ張り強度940kg/cm2 のグラフト重合を施したPE微多孔膜(サンプルd)を得た。
【0046】
実施例3
実施例1において、2−エチルヘキシルアクリレートエマルジョン液(モノマー濃度を10vol%とし、溶媒としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加した水を使用)し、30℃、30min接触させてグラフト重合させた以外は同様にして、グラフトポリマー量2.6mg/cm2 、引っ張り強度1035kg/cm2 のグラフト重合を施したPE微多孔膜(サンプルe)を得た。
【0047】
実施例4
実施例1〜3で得られたグラフト重合を施したPE微多孔膜(サンプルb、d、e)3種類の10×10cm角を各々25℃のγ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルに1時間浸漬した。
【0048】
この膜の表面の付着液を除いた後、直ちに膜重量の経時変化を測定し、0秒後に外挿することによって求めた重量増加率は下表の通り。また、25℃で大気放置した状態で0秒後に外挿した重量を起点とする重量の経時変化を測定した結果、1時間後の重量減少率は表1及び2の通り。
【0049】
比較例1
比較として、PE微多孔膜(実施例1に同じ)の10×10cm角を各々25℃のγ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルに1時間浸漬した。その重量増加率は下表の通り。また、25℃で大気放置した状態で0秒後に外挿した重量を起点とする重量の経時変化を測定した結果、1時間後の重量減少率は表1及び2の通り。
【0050】
表 1
0 秒 外 挿 重 量 増 加 率
γ−ブチロラクトン テトラヒドロフラン ジエチルエーテル
サンプルb 72% 66% 42%
サンプルd 67% 66% 60%
サンプルe 62% 61% 68%
比較例 1 49% 38% 31%
【0051】
表 2
1 時 間 大 気 放 置 重 量 減 少 率
γ−ブチロラクトン テトラヒドロフラン ジエチルエーテル
サンプルb <0.5% 1.0% 2.5%
サンプルd <0.5% 1.0% 1.5%
サンプルe <0.5% 1.0% 1.0%
比較例 1 2.5% 37.5% 31.0%
【0052】
実施例5
実施例1で得られたグラフト重合を施したPE微多孔膜(サンプルa、b、c)3種類の10×10cm角を各々25℃のLiBF4 を1mol%含むγ−ブチロラクトンに1時間浸漬し、非プロトン性電解質薄膜とした。
【0053】
得られた非プロトン性電解質薄膜を直径10mmに打ち抜き、これを白金黒電極で挟み、周波数1kHzの交流で薄膜の電気抵抗値を測定し、この値と薄膜の厚み及び面積より薄膜のイオン導電率を算出し、表3に示した。
【0054】
比較例2
比較として、PE微多孔膜(実施例1に同じ)の10×10cm角を25℃のγ−ブチロラクトンに1時間浸漬し、同様にして電気抵抗値を測定し、イオン導電率を算出し、表3に示した。
【0055】
表 3
0秒外挿 1時間
重量増加率 大気放置重量減少率 イオン伝導度
サンプルa 47% 2.0% 7.0×10-3[S/cm]
サンプルb 72% <0.5% 7.1×10-3[S/cm]
サンプルc 91% <0.5% 7.1×10-3[S/cm]
比較例 2 49% 2.5% 6.8×10-3[S/cm]
【0056】
【発明の効果】
本発明の非プロトン性電解質薄膜は、基材としてグラフト重合されたポリオレフィン多孔膜を用いており、用いる電解質の溶媒に対して良好な溶解、保持性を有する。特に、ポリエチレンとして超高分子量ポリエチレン成分を用いた場合、非プロトン性電解質薄膜は機械的強度および耐久性に優れる。
【0057】
本発明の非プロトン性電解質薄膜において、グラフト重合体はポリオレフィン多孔膜の細孔の少なくとも一部を閉塞、実質的に全部を閉塞しているので、グラフト重合体と親和性のある電解質の溶媒を選択的に含有、固定化することができる。
【0058】
本発明の非プロトン性電解質薄膜は、非プロトン系電解液を用いる一次電池、二次電池、コンデンサー、中でもリチウム一次電池、リチウム二次電池に好適に用いられる。
Claims (4)
- ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面にグラフト重合体を有してなり、非プロトン性電解液を固定化してなる非プロトン性電解質薄膜であって、
ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面にアクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステル、アクリルアミドから選択されたアクリル系モノマーをグラフト重合してグラフト重合体を有してなるポリオレフィン多孔膜を形成させ、 次いで前記グラフト重合体を有する前記ポリオレフィン多孔膜にリチウム塩を含有するテトラヒドロフラン、α−ブチロラクトンまたはジエチルエーテルからなる非プロトン性電解液を含浸させて固定化させることにより得られる非プロトン性電解質薄膜。 - 前記ポリオレフィン多孔膜が、重量平均分子量5×105以上の超高分子量ポリエチレンまたは重量平均分子量7×105以上の超高分子量ポリエチレンを1重量%以上含有し、重量平均分子量/数平均分子量が10〜300のポリエチレン組成物からなることを特徴とする請求項1記載の非プロトン性電解質薄膜。
- ポリオレフィン多孔膜の表面およびその細孔内表面にモノマーをグラフト重合してグラフト重合体を有するポリオレフィン多孔膜を形成させ、次いで前記グラフト重合体を有するポリオレフィン多孔膜に、非プロトン性電解液を含浸させて固定化させる非プロトン性電解質薄膜の製造方法であって、前記モノマーがアクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステル、アクリルアミドから選択されたアクリル系モノマーであり、前記非プロトン性電解液が、リチウム塩を含有するテトラヒドロフラン、α−ブチロラクトンまたはジエチルエーテルであることを特徴とする非プロトン性電解質薄膜の製造方法。
- 請求項1または2のいずれかの1項に記載の非プロトン性電解質薄膜を用いた二次電池。
Priority Applications (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP35190396A JP4486168B2 (ja) | 1996-12-11 | 1996-12-11 | 非プロトン性電解質薄膜、その製造方法およびそれを用いた二次電池 |
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