JP3581772B2 - 非プロトン性電解質薄膜およびその製造方法 - Google Patents

非プロトン性電解質薄膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非プロトン性電解質薄膜及びその製造方法に関し、特にポリオレフィン多孔薄膜に、非プロトン性電解質溶液を固定化した非プロトン性電解質薄膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解質薄膜は、燃料電池、食塩電解、一次電池、二次電池、促進輸送用分離膜、エレクトロクロミックデバイス、センサーなど低膜抵抗で、かつ優れた機械的強度の要求される分野に広く利用できる。なかでも、リチウム系二次電池などの高分子固体電解質として利用できる。
【0003】
高分子固体電解質系のリチウム二次電池は、リチウム金属のデンドライトの生成を阻止して電池の短絡損傷や発火問題を解決し、溶液系の二次電池に比べ液もれがなく、特に薄膜化、大面積化を可能にするということで、開発が望まれてきている。
【0004】
LiClOなどのリチウム塩をポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテル誘導体に溶解させた高分子電解質が開発されているが、イオン導電率10−5〜10−3s/cmは室温より十分高温でないと発揮されない。
【0005】
また、実効抵抗を下げるためには薄膜化の例として、50μm以下の固体高分子多孔薄膜の0.1μm以下の微細な空孔中に毛管凝縮を利用して液体状イオン導電体を固定化する方法(特開平1−158051)があるが、動作温度の問題は根本的には解決されていなかった。
【0006】
さらに、ポリマーマトリックスに従来の液体タイプのリチウム電池と同じような塩と溶媒の溶液を含浸させるゲル状ポリマーとして、架橋したポリアルキレンオキシドを電解質に用いる技術(USP4,303,748)、ポリアリレートをゲル化して電解質に用いる技術(USP4,830,939)が提案されている。また、最近では、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体にリチウム塩を溶解したカーボネート系溶液を含浸させたポリマーゲルを電解質に用いる技術(USP5,296,318)が提案され、有望視されているが、高温におけるゲル収縮による電解液の滲みだしの問題があり、溶媒保持性に問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解消し、薄膜化、大面積化などが容易で広い温度範囲で非プロトン性電解質溶媒の保持性に優れ、長期安定性と機械的強度の向上した非プロトン性電解質薄膜及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、主骨格は耐溶剤性に優れたポリオレフィンから構成され、末端鎖に使用する電解液溶媒と親和性を有する官能基を有するポリマーで表面及び細孔表面をコーティングしたポリオレフィン多孔薄膜に電解質溶液を含浸させることにより、非プロトン性電解質溶液を膜に固定化し、溶媒保持性に優れた非プロトン性電解質薄膜が得られることを発見し本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の非プロトン性電解質薄膜は、ポリオレフィンからなる多孔薄膜の表面及び細孔表面に末端変性ポリプロピレンを導入したポリオレフィン多孔薄膜に非プロトン性電解質溶液を固定化させるものである。
【0010】
また、本発明の非プロトン性電解質薄膜の製造方法は、非プロトン性溶媒に親和性を有する官能基含有モノマーで末端を変性したリビング重合ポリプロピレンをポリオレフィン多孔薄膜に含浸、塗布またはスプレーなどの方法で導入し、ついで非プロトン性電解質溶液を含浸させて固定化させるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の非プロトン性電解質薄膜は、主骨格は耐溶剤性に優れたポリオレフィン多孔薄膜から構成されている。このポリオレフィン多孔薄膜は、使用する電解液溶媒に親和性を有する官能基を末端鎖に有する末端変性ポリマーを含有し、電解質を溶媒に溶解した電解質溶液が充填され、安定的に保持された薄膜である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(1)ポリオレフィン多孔薄膜
本発明のポリオレフィン多孔薄膜は、ポリオレフィンからなる多孔薄膜に、末端変性ポリプロピレンを含浸、塗布またはスプレーなどの方法で導入したものである。
【0013】
1.原料
a.ポリオレフィン組成物
主骨格である耐溶剤性を有するポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体又は共重合体が挙げられるが、多孔構造の設計や薄膜化を考慮すると、これらのうちではポリプロピレン、ポリエチレン(特に高密度ポリエチレン)及びこれらの組成物等が好ましい。
【0014】
また、該ポリオレフィンは、重量平均分子量が5×10以上、好ましくは1×10〜1×10の超高分子量成分を1重量%以上含有し、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が10〜300であるのが好ましい。超高分子量ポリオレフィン成分の含有量が1重量%未満では、膜の延伸性の向上に寄与するところが不十分である。一方、上限は特に限定的ではない。また、分子量分布が300をこえると、低分子量成分による破断が起こり薄膜全体の強度が低下するため好ましくない。
【0015】
該ポリオレフィンは上記分子量及び分子量分布を有していれば、多段重合によるものであっても、2種以上のポリオレフィンによる組成物であっても、いずれでもよい。
【0016】
なお、上述したような超高分子量成分を含有するポリオレフィンには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0017】
b.末端変性ポリプロピレン
末端変性ポリプロピレンは末端に官能基構造を有するポリプロピレンである。ここでポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体に限らず、プロピレンと他のα−オレフィン(例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との1種または2種以上のブロック共重合体ゴムを包含する。
【0018】
末端に官能基構造を有するポリプロピレンは、次のようにして製造できる。
すなわち、特定のバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒の存在下でプロピレンをリビング重合して得られるリビングポリプロピレンを官能基含有モノマーと反応させることにより製造する。
【0019】
バナジウム化合物としてはV(アセチルアセトナト)、V(2−メチル−1、3−ブタンジオナト)、V(1、3−ブタンジオナト)、が好ましい。有機アルミニウム化合物としては、炭素数1〜18個、好ましくは炭素数2〜6個を有する有機アルミニウム化合物またはその混合物または錯化合物であり、例えば、ジアルキルアルミニウムモノハライド、モノアルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムセスキハライドなどが挙げられる。
【0020】
重合反応は、重合反応に対して不活性で、かつ重合時に液状である溶媒中で行うのが好ましい。そのような溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0021】
プロピレンの重合時の重合触媒の使用量はプロピレン1モル当たりバナジウム化合物が1×10−4〜0.1モル、好ましくは5×10−4〜5×10−2モルで、有機アルミニウム化合物が1×10−4〜0.5モル、好ましくは1×10−3〜0.1モルである。なお、バナジウム化合物1モル当たり、有機アルミニウム化合物は4〜100モル用いられるのが望ましい。
【0022】
リビング重合は、通常−100℃〜100℃で、0.5〜50時間行われる。得られるリビングポリプロピレンの分子量は反応温度および反応時間を変えることにより調節できる。重合温度を低温、特に−30℃以下にすることにより、単分散に近い分子量分布を持つポリマーとすることができる。−50℃以下ではMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が1.05〜1.40のリビング重合体とすることができる。
【0023】
上記のようにして、約800〜400,000の数平均分子量を持ち、単分散に近いリビングポリプロピレンを製造できる。
【0024】
次に、末端に官能基構造を導入するために、リビングポリプロピレンと官能基含有モノマーと反応させる。導入するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、スチレンおよびその誘導体等が用いられる。具体的には、例えばアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチルデシルアクリレート、エチルヘキサデシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1、4ブタンジオールジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート等のアクリル系モノマーが挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、ジメタクリル酸エチレングリコール等のメタクリル系モノマーが挙げられる。これらの1種類又は複数種類を選択して用いることができる。また、必要に応じてビニルアクリレート、ビニルメタアクリレート、ジビニルベンゼン、ビニルアクリル酸ブチル等の架橋性モノマーも用いることができる。
【0025】
上記したモノマーのうちではアクリル酸、メタクリル酸またはこれらのエステルからなるモノマー、アクリルアミドまたはその誘導体からなるアクリル系モノマーを用いるのが好ましい。
【0026】
これらのモノマーは電解質薄膜の製造で用いる電解溶液の溶媒により適宜選択する。具体的には、溶解性を表す溶解度パラメーターの一つであるハンセンパラメーターを考慮に入れて選択する。ハンセンパラメーターとは、溶解度パラメーターを無極性相互作用による効果δ、分極による効果δ、水素結合による効果δ、の3成分に分けて三次元的に表したパラメーターで、多くの溶剤についてその値が調べられている(C.M.Hansen,et al.,Encyclopedia of Chemical Technology,N.Y.,p.889,1971)。また、ある特定のポリマーに対して溶解性の高い溶媒(良溶媒)および貧溶媒のハンセンパラメーターをδ、δ、δのなす三次元空間座標にプロットすると、良溶媒のハンセンパラメーターは、ある大きさの球内に位置することが経験的に判っている。すなわち、ある溶媒とポリマーの三次元空間座標(δ、δ、δ)距離が近い場合、そのポリマーに対して良溶媒とみなすことができる。
【0027】
本発明では、リビング重合体を形成する単一モノマーあるいは複数モノマーの配合量を、電解溶液の溶媒のハンセンパラメーターに合わせて調節する。こうすることにより、電解溶液に効果的に膨潤ゲル化し、それを強固に固定化することができるようになる。ここで、末端変性リビング重合体を導入したポリオレフィン多孔性薄膜は、その表面および細孔表面を覆っているリビング重合官能基に親和性のある電解液溶媒を選択的に取り込むが、主骨格が耐溶剤性に優れたポリエチレンから構成されているので、全体としてその膨潤は適度に抑えられ、大きな変形、強度の低下を防止できる。
【0028】
リビングポリプロピレンと官能基含有モノマーとの反応は、リビングポリプロピレンが存在する反応系にモノマーを供給し、反応させる。反応は通常−100℃〜150℃の温度で5分間〜50時間行う。反応温度を高くするか、反応時間を長くすることにより、モノマーユニットによるポリプロピレン末端の変性率を増大することができる。リビングポリプロピレン1モルに対して、通常モノマーを1〜1,000モル使用する。
【0029】
上記のようにして得られた末端変性ポリプロピレンは約800〜500,000の数平均分子量(Mn)を有し、かつ前記のリビングポリプロピレンそのものを踏襲した非常に狭い分子量分布(Mw/Mn=1.05〜1.40)を有する。しかも、その末端に、平均して0.1〜500個、好ましくは0.5〜100個の前記モノマーの末端構造を有する。またこのようにして製造した末端変性ポリプロピレンは、シンジオタクチックダイアッド分率が0.6以上であることが1つの特徴である。
【0030】
2.ポリオレフィン多孔薄膜の製造法
本発明のポリオレフィン多孔薄膜の製造方法は、上述のポリオレフィン組成物を溶媒に加熱溶解することにより、溶液を調製する。この溶媒としては、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィンなどの脂肪族または環式の炭化水素、あるいは沸点がこれらに対応する鉱油留分などを用いることができる。
【0031】
加熱溶解は、ポリオレフィン組成物を溶媒中で完全に溶解する温度で撹拌しながら行うか、又は押出機中で均一混合して溶解する方法で行う。溶媒中で撹拌しながら溶解する場合は、温度は使用する重合体及び溶媒により異なるが、例えばポリエチレン組成物の場合には140〜250℃の範囲である。ポリオレフィン組成物の高濃度溶液から多孔薄膜を製造する場合は、押出機中で溶解するのが好ましい。
【0032】
ポリオレフィン組成物と溶媒との配合割合は、ポリオレフィン組成物と溶媒の合計を100重量%として、ポリオレフィン組成物が10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%であり、溶媒が90〜50重量%、好ましくは90〜60重量%である。ポリオレフィン組成物が10重量%未満では(溶媒が90重量%を超えると)、シート状に成形する際に、ダイス出口で、スウエルやネックインが大きくシートの成形性、自己支持性が困難となる。一方、ポリオレフィン組成物が50重量%を超えると(溶媒が50重量%未満では)、成形加工性が低下する。
【0033】
次に、このようにして溶融混練したポリオレフィン組成物の加熱溶液を押出機を介して、ダイス等から押し出して成形する。
【0034】
ダイスは、通常長方形の口金形状をしたシートダイスが用いられるが、2重円筒状の中空糸ダイス、インフレーションダイス等も用いることができる。シートダイスを用いた場合のダイスギャップは通常0.1〜5mmであり、押し出し成形時には140〜250℃に加熱する。この際押し出し速度は、通常20〜30cm/分ないし5〜10m/分である。
【0035】
このようにしてダイスから押し出された溶液は、急冷することによりゲル状成形物に形成される。冷却は少なくとも50℃/分の速度で行うのが好ましい。
【0036】
次に、このゲル状成形物に延伸を行う。延伸はゲル状成形物を加熱し、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法もしくはこれらの方法の組み合わせによって所定の倍率で行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また、二軸延伸の場合は、縦横同時延伸または逐次延伸のいずれでもよい。
【0037】
延伸温度はポリオレフィンの融点+10℃以下、好ましくはポリオレフィンの結晶分散温度から結晶融点未満の範囲で行う。例えば、ポリエチレン場合は、90〜140℃、好ましくは100〜130℃の範囲である。
【0038】
また延伸倍率は原反の厚さによって異なるが、一軸延伸では2倍以上が好ましく、より好ましくは3〜30倍である。二軸延伸では面倍率で10倍以上が好ましく、より好ましくは15〜400倍である。面倍率が10倍未満では延伸が不十分で高弾性、高強度の微多孔膜が得られない。一方、面倍率が400倍を超えると、延伸操作などで制約が生じる。
【0039】
延伸された成形物は、溶剤で洗浄し残留する溶媒を除去する。洗浄溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩炭素などの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの易揮発性のものを用いることができる。
抽出後洗浄溶剤を乾燥し、結晶分散温度〜融点の温度範囲で熱固定することが望ましい。
【0040】
以上のようにして製造したポリオレフィン多孔薄膜は破断強度が200kg/cm以上とするのがよい。200kg/cm以上とすることで、リビング重合官能基に電解溶液の溶媒が溶解した際の膨潤に対する耐変形性が十分となる。また厚さは好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.2〜50μmである。厚さが0.1μm未満では膜の機械的強度が小さく、実用に供することが難しい。一方100μmを超える場合は、厚すぎて小型の電池、コンデンサー製造の上では好ましくはない。なお、空孔率、孔径については特に限定はないが、電解質溶液を導入した状態でのイオン伝導を損なわない範囲の空孔率、孔径が好ましい。また、同状態で内部短絡を生じない範囲の空孔率、孔径が好ましい。
【0041】
なお、得られたポリオレフィン多孔薄膜は、必要に応じてさらに、プラズマ照射、界面活性剤含浸、表面グラフト等の親水化処理などの表面修飾を施すことができる。
【0042】
3.末端変性ポリプロピレンの導入方法
末端変性ポリプロピレンを芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の溶媒に溶解し、ポリオレフィン多孔薄膜に導入する。導入する方法としては、含浸、塗布またはスプレーなどの方法で多孔薄膜の表面及び細孔表面をコーティングすることができ、導入後溶剤を乾燥する。導入量はポリオレフィン多孔薄膜に対して1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%である。1重量%では電解液の溶媒の含浸、固定化の効果が期待できない。一方、50重量%を超えると機械的強度の低下が著しくなる。
【0043】
(2)電解質溶液
1)電解質
本発明で用いる電解質としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が用いられ、例えばLiF、NaI、LiI、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiPF、NaSCN等が挙げられる。
【0044】
2)電解液溶媒
本発明の電解質を溶解する非プロトン性溶媒としては、アルカリ金属に対して安定な溶媒で、具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、フォルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の非プロトン性の高誘電率溶媒が使用される。また、前述のように、本発明で用いる溶媒に親和性を有するように末端変性ポリプロピレンの官能基は選択される。
【0045】
(3)電解質薄膜の製法
ポリオレフィン多孔膜に電解質を電解液溶媒に溶解した電解質溶液を導入し非プロトン性電解質薄膜とする方法は、ポリオレフィン薄膜に電解質溶液を含浸、塗布またはスプレーなどの方法を単独あるいは組み合わせて使用することができ、末端変性ポリプロピレンの末端官能基が非プロトン溶液に親和性があるため、ポリオレフィン多孔薄膜に容易に含浸、固定される。また電解質溶液を導入するのは、電池に組み込む前でもよいし、電池組み立て途中でもよいし、電池組み立て最終工程でもよい。中でも、電池組み立て時の取扱い性、皺などの発生防止、正負極板表面との密着性などの観点と従来の電池組み立て工程をそのまま適用できることから、電池組み立て途中工程あるいは電池組み立て最終工程で電解質溶液を導入する方法が好ましい。
【0046】
こうして得られる電池は、従来の非プロトン系液体電解液と同じ電解液を使用しているが、ポリオレフィン薄膜に導入することにより毛管凝縮による固定化に加え、電解液が溶解、膨潤することにより固定化し、その結果液洩れの心配がなくなるとともに、蒸気圧が著しく下がり、燃えにくくなる。また、固定化された電解液は、イオン導電性においては液体状態とほぼ同様に働くので、動作温度の問題も回避できる。
【0047】
【実施例】
以下に本発明について実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例における試験方法は次の通りである。
【0048】
(1)膜厚:断面を走査型電子顕微鏡により測定。
(2)空孔率:重量法により測定。
(3)引張り破断強度:ASTM D882に準拠して測定。
【0049】
実施例1
重量平均分子量が2.5×10の超高分子量ポリエチレンを6重量%、重量平均分子量が3.5×10の高密度ポリエチレン24重量%、流動パラフィン(64cst/40℃)70重量%の混合物に、酸化防止剤をポリオレフィン組成物100重量部当たり0.375重量部を加え、2軸押出機で加熱混練した。
【0050】
これを長方形の口金を有するダイスから吐出し、30℃に調温したチルロールで引き取り0.5mm厚のシートとした。このシートをバッチ式2軸延伸機を用いて115℃で5×5倍に同時2軸延伸し、残留する流動パラフィンをn−ヘキサンで洗浄後、金枠に固定した状態で120℃で乾燥、熱セットして、膜厚25μm、空孔率43.5%、引張り破断強度1049kg/cm、平均孔径0.03μmのポリエチレン多孔薄膜を得た。
【0051】
重量平均分子量が5万の末端にメチルアクリレート基を有するリビング重合ポリプロピレン10重量%を含有するテトラヒドロフラン溶液に、上記で得られたポリエチレン多孔薄膜を1時間含浸した後、一昼夜風乾した。リビング重合ポリプロピレンの導入量は、14重量%であった。
【0052】
得られたポリエチレン多孔薄膜10×10mm角に25℃のLiBFを1mol%含むγ−ブチロラクトン溶液を0.1cc滴下し、密閉容器の中に1時間放置して、非プロトン性電解質薄膜とした。この非プロトン性電解質薄膜の表面の付着液を除いた後、直ちに膜重量の経時変化を測定し、0秒後に外挿することにより求めた重量増加率は56%であった。また、25℃で大気放置した状態で0秒後に外挿した重量を起点とする重量の経時変化を測定した結果、1時間後の重量減少率は0.5%以下であった。
【0053】
さらに、この非プロトン性電解質薄膜を直径10mmに打ち抜き、これを白金黒電極で挾み、周波数1KHzの交流で薄膜の電気抵抗値を測定し、薄膜の厚み及び面積より薄膜のイオン導電率を算出すると、7×10−3s/cmであった。
【0054】
比較例1
実施例1において、末端変性ポリプロピレンを用いない以外は実施例1と同様にして得られたポリエチレン微多孔膜10×10mm角を25℃のLiBFを1mol%含むγ−ブチロラクトン溶液に1時間浸漬し、非プロトン性電解質薄膜とした。この非プロトン性電解質薄膜の表面の付着液を除いた後、直ちに膜重量の経時変化を測定し、0秒後に外挿することにより求めた重量増加率は49%であった。また、25℃で大気放置した状態で0秒後に外挿した重量を起点とする重量の経時変化を測定した結果、1時間後の重量減少率は2.5%であった。
【0055】
さらに、この非プロトン性電解質薄膜を直径10mmに打ち抜き、これを白金黒電極で挾み、周波数1KHzの交流で薄膜の電気抵抗値を測定し、薄膜の厚み及び面積より薄膜のイオン導電率を算出すると、7×10−3s/cmであった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の非プロトン性電解質薄膜は、末端に官能基を有するリビングポリプロピレンを含有するポリオレフィン多孔薄膜を用いており、末端鎖の官能基により電解質溶液を固定化し、ポリオレフィン多孔薄膜主鎖骨格によりその過度な膨潤を抑えることにより、広い温度範囲で安定的に電解質溶液を保持することが出来るとともに、電解液溶媒の蒸発速度を極めて低く保つことができる。また、官能基の種類と長さを制御することにより、使用目的に併せてイオン伝導度を容易に制御することができる。すなわち、イオン導電性を著しく低下させることなく、過充電での安全性を向上することが出来る。
【0057】
特にポリオレフィンとして超高分子量ポリエチレン成分を用いた場合、非プロトン性電解質薄膜は機械的強度および耐久性に優れ、非プロトン系電解液を用いる一次電池、二次電池、コンデンサー、中でもリチウム一次電池、リチウム二次電池に好適に用いられる。

Claims (7)

  1. ポリオレフィンからなる多孔薄膜の表面及び細孔表面に末端変性ポリプロピレンを導入したポリオレフィン多孔薄膜に非プロトン性電解質溶液を固定化した非プロトン性電解質薄膜。
  2. ポリオレフィンからなる多孔薄膜の表面及び細孔表面に末端変性ポリプロピレンを導入したポリオレフィン多孔薄膜が、末端変性ポリプロピレンで表面及び細孔表面をコーティングしたポリオレフィン多孔薄膜である請求項1に記載の非プロトン性電解質薄膜。
  3. 末端変性ポリプロピレンがリビング重合法により得られた末端官能基変性ポリプロピレンである請求項1に記載の非プロトン性電解質薄膜。
  4. ポリオレフィンが重量平均分子量5×10 以上の超高分子量ポリオレフィンを1重量%以上含有したポリオレフィン組成物であり、末端変性ポリプロピレンがポリオレフィンの1〜50重量%である請求項1ないし3に記載の非プロトン性電解質薄膜。
  5. ポリオレフィン多孔薄膜の表面及び細孔表面を末端変性ポリプロピレンでコーティングし、該表面被覆ポリオレフィン多孔薄膜に非プロトン性電解質溶液を含浸し、固定化することを特徴とする非プロトン性電解質薄膜の製造方法。
  6. ポリオレフィンが重量平均分子量5×10 以上の超高分子量ポリオレフィンを1重量%以上含有するポリオレフィン組成物であり、末端変性ポリプロピレンがリビング重合法により得られた末端官能基変性ポリプロピレンで、ポリオレフィンの1〜50重量%である請求項5に記載の非プロトン性電解質薄膜の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の非プロトン性電解質薄膜を用いたリチウム電池。
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