JP4484971B2 - 新規酵素活性ポリペプチド及びそれを用いる融合タンパク質切断キット - Google Patents

新規酵素活性ポリペプチド及びそれを用いる融合タンパク質切断キット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質分解酵素活性を有する酵素活性ポリペプチドに関し、より詳細には、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼであるColHの酵素活性部分からなる酵素活性ポリペプチドに関する。
【0002】
【従来の技術】
コラーゲンは細胞外マトリクスを構成する主なタンパク質であり、高等動物における主要なタンパク質である(Mayne, R., and Burgeson, R.E., Structure and function of collagen types, Academic Press, Orlando, Fla.,(1987))。3重らせん構造を有するコラーゲン分子は相互に凝集して水不溶性の繊維又はシートを形成し、これらはコラゲナーゼのみにより加水分解される。基質や分子構造が異なる様々な種類のコラゲナーゼが特定されており、基質特異性及び分子構造等の違いから動物性コラゲナーゼと細菌性コラゲナーゼに大別され、動物性コラゲナーゼは細菌性コラゲナーゼと比較して広い基質特異性を示す(Peterkofsky, B., Methods Enzymol. 82, 453-471(1982)、及びBirkedal-Hansen, H., Methodss Enzymol. 144, 140-171(1987))。
【0003】
Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼであるColHは、入手が容易であるため、細菌性コラゲナーゼ中で最もよく研究されている(Mookhtiar, K.A., and Van Wart, H.E., Matrix Suppl. 1, 116-126(1992))。ColHは、組織の分解酵素として又は融合ペプチドの切断用のタンパク質分解酵素として広く用いられている(Seglen, P.O., Methods Cell Biol. 13, 29-83(1976)、及びWorthington, C.C., Worthington Enzyme Manual: collagenase, Biochemical Co., Freehold, N.J.,(1988))。ColHは、水可溶性のコラーゲン及び水不溶性のコラーゲンの双方を加水分解することが可能であり、ほとんどのタイプのコラーゲンに対し強い酵素活性を示し、またコラーゲンの三重らせん構造を消化して単独の繊維に分けることが知られている(Mookhtiar, K.A., and Van Wart, H.E., Matrix Suppl. 1, 116-126(1992))。また、そのDNAの塩基配列も特定され、他の細菌のコラゲナーゼとのアミノ酸配列の比較から、4つの領域からなることが明らかとなっているが、その酵素活性を有する正確な領域は明かではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特定のアミノ酸配列を切断するタンパク質分解酵素は特に遺伝子工学分野等において重要な役割を演じ、広く利用されているが、現在利用されているタンパク質分解酵素の種類は決して多いとは言えない。特に4〜6のアミノ酸配列を認識するタンパク質分解酵素は需要が高いが、その種類の少なさのために選択の幅が狭く、例えば遺伝子工学において融合タンパク質から目的のタンパク質を得る際にタンパク質分解酵素を利用した結果、目的タンパク質のアミノ酸配列にタンパク質分解酵素の認識配列が存在することに起因して目的のタンパク質がしばしば切断されてしまうこともあった。
【0005】
上述のように、特に遺伝子工学分野における融合タンパク質を切断するためのプロテアーゼとその認識配列には様々なバリエーションが求められているが、そのバリエーションが少なく、現状においては目的のタンパク質にプロテアーゼが認識するアミノ酸配列が存在して、正確に目的タンパク質を得ることができない事例が非常に多いため、新たなプロテアーゼとその認識アミノ酸配列の組合せが強く望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ColHの酵素活性を有する領域を特定し、当該特定の領域のみからなる酵素活性ポリペプチドを得ることにより、新たなタンパク質分解酵素として利用することを目的として鋭意研究を重ねた結果、ColH中の特定アミノ酸配列を認識する部分を特定し、更に実質的に上記部分のみからなる断片及び当該断片が認識するアミノ酸配列を融合タンパク質のリンカーとして利用して遺伝子工学的産物を得る方法を見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、ColH分子中の特定アミノ酸配列認識部分は、ColHのN末端部の41番目のバリンからの約683アミノ酸残基であり、上記認識部分を含み、コラーゲン結合領域を欠失した酵素活性ポリペプチドは配列番号3記載のアミノ酸配列を認識して当該アミノ酸配列のロイシン残基のC末端側で当該配列を有するペプチド鎖を切断することを見出した。またさらに、驚くべきことに当該酵素活性ポリペプチドをコードするDNAを発現させることによって当該酵素活性ポリペプチドを製造することで、従来知られていたColHの塩基配列の全配列を発現させてColHを製造する方法と比して、大幅に製造効率を向上することができることを見出した。さらに当該酵素活性ポリペプチド調製品が、遺伝子工学分野における融合タンパク質を切断するためのキットとして有用であることを見いだした。
【0008】
従って、本発明は、ColHの全アミノ酸配列のうち、少なくともコラーゲン結合領域が欠失したアミノ酸配列を有し、かつ、下記▲1▼及び▲2▼の理化学的性質を有する酵素活性ポリペプチドを提供する。
▲1▼作用
配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に認識し、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって該ペプチドを切断する。
▲2▼基質特異性
水不溶性のタイプIコラーゲンを実質的に分解しない。
【0009】
また、本発明は、下記の(a)〜(d)記載のアミノ酸配列から選ばれたいずれかの配列を有し、配列番号3記載のアミノ酸配列からなるペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性がColHの同活性の60%以上であることを特徴とする酵素活性ポリペプチドを提供する。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列。
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列。
(c)配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列。
(d)アミノ酸配列(c)において1もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列。
【0010】
以下、上記酵素活性ポリペプチドを総称して本発明酵素活性ポリペプチドという。
また、本発明は、本発明酵素活性ポリペプチドをコードするDNA(本発明DNA)、特に、下記の(a)〜(d)記載の塩基配列から選ばれたいずれかの配列を有し、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性を有する酵素活性ポリペプチドをコードすることを特徴とするDNAを提供する。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(b)塩基配列(a)がコードするアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(c)配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(d)塩基配列(c)がコードするアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【0011】
さらに、また、本発明は、本発明酵素活性ポリペプチドを用いたペプチドの切断方法及びキット、すなわち、本発明の酵素活性ポリペプチドにより、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断することを特徴とするペプチドの切断方法(本発明切断方法)、及び、本発明酵素活性ポリペプチドを少なくとも含むことを特徴とする前記切断方法を行うためのキット(本発明キット)を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
<1>本発明酵素活性ポリペプチド
本発明酵素活性ポリペプチドは、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼであるColHのコラーゲン結合領域を欠失したポリペプチドであり、下記▲1▼〜▲2▼の理化学的性質を有する酵素活性ポリペプチドである。
▲1▼作用
コラーゲン分子中に含まれる配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチド(PLGP)を特異的に認識し、当該配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって該ペプチドを切断する。
▲2▼基質特異性
水不溶性のタイプIコラーゲンを実質的に分解しない。pH7.5、37℃の条件下において本発明酵素活性ポリペプチドの不溶性のコラーゲンを分解する作用はColHと比して10%未満である。
【0013】
またさらに、本発明酵素活性ポリペプチドは下記の(a)〜(d)から選ばれたいずれかのアミノ酸配列からなり、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、当該配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性を有することを特徴とするポリペプチドも包含する。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列。
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列。
(c)配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列。
(d)アミノ酸配列(c)において1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列。
【0014】
本発明酵素活性ポリペプチドは、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼ、ColHの、PLGPを認識して切断する部分と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、好ましくはSDS-PAGEにより測定される分子量が約76KDaである。前記アミノ酸配列はColHのアミノ酸配列の一部であるが、ColHが不溶性のコラーゲンを分解する活性を有するのに対し、本発明酵素活性ポリペプチドは不溶性のコラーゲンを分解する活性が著しく低い点においてColHと本発明酵素活性ポリペプチドは明らかに区別される。
【0015】
ColHのコラーゲン結合領域とは、ColHが不溶性コラーゲン(水不溶性のタイプIコラーゲン)に結合するために必要な領域を指称し、当該領域において不溶性コラーゲンに結合して、不溶性コラーゲンを加水分解し、当該部分のアミノ酸残基を欠失することで不溶性コラーゲンに結合する活性が、当該領域を欠失していない形態と比較して後述の試験例記載の方法で測定した結果、20%以上低下する領域を指称する。
【0016】
ところで、本明細書中における「数個のアミノ酸」とは、通常には、ポリペプチドを構成している全アミノ酸の5%以下を指す。例えば700残基のアミノ酸からなるポリペプチドの場合の「数個のアミノ酸」とは35個以下のアミノ酸である。
【0017】
本発明酵素活性ポリペプチドの配列番号3記載のアミノ酸配列を含むペプチドを切断する活性は、後述実施例中の試験例に記載された方法により測定した際に、試験例中に記載のColHの同活性と比して60%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、100%以上であることが最も好ましいが、200%を越えないことが好ましい。
【0018】
配列番号2におけるアミノ酸番号1〜723又は41〜723のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性を有し、また不溶性のコラーゲンを分解する活性を有さない限り、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は転位を有してもよく、そのような置換、欠失、挿入又は転位を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのいずれもが本発明酵素活性ポリペプチドに包含される。配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性の測定法は、本明細書中に記載の方法に従って当業者であれば容易に実施することが可能であるため、目的とする酵素活性の有無を指標として、該活性を実質的に害さない1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は転位を容易に選択することができる。
【0019】
Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼのアミノ酸配列には、自然変異や人工変異により、個体間、株間などで相違が生じ得ると考えられるが、これらの相違に相当する1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は転位を有する変異型(mutant又はvariant)も本発明活性ポリペプチドに包含される。
【0020】
本明細書中における配列番号3記載のアミノ酸配列を含むペプチドとは、配列番号3記載のアミノ酸配列を含み、4以上のアミノ酸がペプチド結合により結合したアミノ酸のポリマーであってコラーゲンの三重らせん構造を形成していないものであれば限定されないが、水性溶媒に対し可溶性であることが好ましい。
【0021】
本発明酵素活性ポリペプチドは上記配列番号3記載のアミノ酸配列を含むペプチドを切断する活性を有するが、例えば、後述の本発明DNAを利用した製造の際の該ポリペプチドの分離方法によりそのN末端部の構造が変化する場合がある。具体的には、後述の本発明DNAを含むベクターを導入した宿主細胞(菌体等)を破砕して本発明酵素活性ポリペプチドを得た場合は、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが得られ、また、宿主細胞(菌体等)の培養上清から本発明酵素活性ポリペプチドを得た場合は、配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドが得られる。配列番号2のアミノ酸番号1〜40からなる領域は宿主細胞(菌体等)において細胞外に分泌するために必要な領域であると考えられる為、細胞を破砕して精製した際には、配列番号2におけるアミノ酸番号1〜723のアミノ酸配列からなる本発明酵素活性ポリペプチドが得られると考えられ、また前記領域は細胞外に分泌される際に切断される為に培養上清から本発明酵素活性ポリペプチドを精製した際は当該領域を欠失した配列番号2におけるアミノ酸番号41〜723のアミノ酸配列からなる本発明酵素活性ポリペプチドが得られると考えられる。上述のように、製造方法により異なるアミノ酸残基数の酵素活性ポリペプチドが得られるが、いずれの場合も前記特定の酵素活性を有する限り、本発明に包含される。
【0022】
<2>本発明DNA
本発明DNAは、上記に説明した本発明酵素活性ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAである。特には、下記の塩基配列のいずれかを有し、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性を有する酵素活性ポリペプチドを
コードすることを特徴とする。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(b)塩基配列(a)がコードするアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(c)配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(d)塩基配列(c)がコードするアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入もしくは転位したアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【0023】
上記1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは転位は、(a)または(c)の塩基配列に、上記1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入もしくは転位をもたらす置換、欠失、挿入もしくは転位などの変異を導入することによって導入できる。DNAの変異は人為的変異であっても自然発生による突然変異であってもよい。DNAの塩基配列の置換、欠失、挿入又は転位は、両末端に制限酵素切断末端を持ち、変異点の両側を含む配列を合成し、未変異DNAが有する塩基配列の相当する部分と入れ換えることにより、DNAに導入することができる。また、部位特異的変異法(Kramer,W. and Frits,H.J., Meth. in Enzymol., 154, 350(1987); Kunkel,T.A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367(1987))などの方法によっても、DNAに置換、欠失、挿入又は転位を導入することができる。
【0024】
本発明DNAとして具体的には配列番号2または配列番号2のアミノ酸番号41〜723記載のアミノ酸配列の全てをコードする塩基配列を有するDNAが挙げられる。より好ましくはアミノ酸番号1〜40を含む配列番号2記載の全てのアミノ酸配列をコードする塩基配列が好ましいがこれに限定はされない。
【0025】
本発明DNAが有する塩基配列としてより具体的には、配列番号1に示す塩基配列を有するDNAが挙げられ、かつ好ましい。このようなDNAとして具体的には、配列番号1における塩基番号301〜2472の塩基配列からなるDNAが挙げられる。
【0026】
尚、同一アミノ酸配列をコードするものである限り、遺伝暗号の縮重による異なった塩基配列を有するDNAも本発明DNAに包含されることは、当業者であれば容易に理解されるところである。
【0027】
また、本発明DNAには、本発明DNAに相補的な塩基配列を有するDNA又はRNAも実質的に包含される。さらに本発明DNAは、本発明酵素活性ポリペプチドをコードするコード鎖のみの一本鎖であってもよく、この一本鎖及びこれと相補的な塩基配列を有するDNA鎖又はRNA鎖からなる二本鎖であってもよい。
【0028】
<3>本発明酵素活性ポリペプチド及び本発明DNAの製造方法
先ず、本発明DNAを得る方法について説明する。本発明DNAは、本発明酵素活性ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて作成したオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR法(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション法)によって細菌(Clostridium histolyticum)のDNA或いはRNAから増幅することによって製造することも可能であり、また、特に以下の方法により製造することも可能である。
▲1▼ColHをコードするDNA(colH遺伝子)の部分塩基配列を導入したベクターの調製。
▲2▼本発明酵素活性ポリペプチドに相当する部分DNAの増幅。
▲3▼▲1▼のベクター中の部分配列部分の▲2▼の増幅産物による置換。
【0029】
本発明DNAの製造方法はこれに限定されるものではなく、他の公知のDNAクローニングの手法を応用することによっても本発明DNAを製造することができる。以下、製造方法の一例を説明する。
(1)colH遺伝子の部分塩基配列を有するDNAを導入したベクターの構築
ColHのN末端よりの目的とする部分塩基配列を有するDNA(当該DNAを以下、colH'と記載する)はYoshihara,K., Matsushita,O., Minami,J., and Okabe,A., J. Bacteriol. 176, 6489-6496(1994)記載のcolH遺伝子を制限酵素HaeIIIおよびPstIにより切断することにより作成する。colH'(2.9Kb)をブルースクリプトII KS(+)(BluescriptII KS(+):ストラタジーン製)のEcoRVとPstIにはさまれる部位に接続したプラスミドを常法により構築する(pCHC200)。
【0030】
(2)pCHC200からの本発明酵素活性ポリペプチドに相当する部分DNAの増幅
配列番号4及び配列番号5記載の2つの合成オリゴヌクレオチドプライマー及びpCHC200を用いてPCR法により、colH'のDNAの部分塩基配列を増幅する。PCR法は常法に従って行うことができる。
【0031】
例えば、1μlのpCHC200、それぞれ100pmolの上記合成オリゴヌクレオチドプライマー、それぞれ250μMの4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、1.25単位のTaqポリメラーゼを含む反応液(終体積50μl)に対し、95℃1分、46〜62℃1分、72℃2分の各条件で35サイクル反応を繰り返して行うことができる。このPCR産物は、常法に従い公知のベクターに取り込ませて大量に複製、増幅することが好ましく、例えば製造販売元の説明書に従いpT7Blue T-ベクター(Novagen, Madison, Wis.)に取り込ませて複製することができる。
【0032】
このようにして得られた部分的DNAを公知の方法に従い制限酵素SphI及びSacIIで処理して、両端に制限酵素切断末端を有するフラグメントとし、完全長の本発明DNAを作成するために上述(1)の工程により得られたプラスミド中のcolHの部分塩基配列部分を置き換える。
【0033】
(3)プラスミド中の部分塩基配列の増幅産物による置換
(1)の工程で得られたプラスミドpCHC200から常法に従い、プラスミドに挿入されたcolH'中のSphIサイトからブルースクリプトII KS(+)中のSacII迄の領域を切り出して除去し、(2)に記載のSphI及びSacIIによる切断面を両端に持つフラグメントを上記プラスミド中の同制限酵素による切断面に連結することにより本発明DNAを保持したプラスミド(以下pCHC252と記載する)が完成する。
【0034】
上記プラスミドを公知の方法により塩基配列を解析することが好ましい。例えば上記の手順で作成して決定された本発明DNAの塩基配列としては配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAが挙げられる。
【0035】
次に、本発明酵素活性ポリペプチドの製造方法について説明する。
<1>本発明DNAの宿主細胞への導入
上記のように作成した本発明DNAを発現させて本発明酵素活性ポリペプチドを得るために上記本発明DNAを適当な宿主細胞へ導入し、当該宿主細胞を培養した培養物から本発明酵素活性ポリペプチドを得ることができる。
【0036】
本発明DNAの適当な宿主細胞への導入は、本発明DNAを組み込んだ組換えDNAで宿主細胞を形質転換することによって行うことができる。この導入に用いられる組換えDNA及びこの導入によって得られる形質転換体も本発明に包含される。
【0037】
上記組換えDNAは、一般には、組み込み用ベクターに本発明DNAを組み込んだものである。本組換えDNAの基本となる組み込み用ベクターは、本発明DNAの導入を企画する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、宿主として大腸菌を用いる場合には、pBR322やpUC18等のColE1系のもの、pACYC177やpACYC188等のp15A系のもの、ミニF等のF因子系のもの、pSC101等のR因子系のものなどの各種ベクターを、また、上記ベクターの他に、EMBL3,4やλgt10,11等のファージベクターや、pKY2662、pCOS1-10、HormerIII等のコスミド等も組み込み用ベクターとして用いることができる。また、酵母を宿主として用いる場合には、2μmDNA由来のYEp系やarsを用いたYRp系、arsもしくは、2μm系にセントロメア配列を付加したYCp系、染色体への組み込み型であるYIp系のベクター等を組み込み用ベクターとして用いることができる。さらに、枯草菌を宿主として用いる場合には、UB110やpHY300PLK等の大腸菌とのシャトルベクターを組み込み用ベクターとして用いることができる。これらの組み込み用ベクターへの本発明DNAの組み込みは公知の方法に従って行うことができる。
【0038】
本組換えDNAの構築に際して、例えば、大腸菌では、本発明酵素活性ポリペプチドの構造遺伝子の上流にプロモーター配列、SD配列等が位置するように設計するのが通常である。真核生物用のベクターを組み込み用ベクターとして採用する場合には、上記と同様に、プロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位等が含まれるように設計するのが通常である。
【0039】
なお、上記の遺伝子発現を企画した部位を既に備えた組み込み用ベクターは、既に市販されている。例えば、昆虫細胞における発現を企画する場合には、例えばバキュロウィールスの発現系においては、大腸菌とのシャトルベクターであるpAc373,pAcYM1もしくはその誘導体等を組み込み用ベクターとして用いることができる。
【0040】
なお、本発明酵素活性ポリペプチドの発現様式は必ずしも単独発現系に限定されるものでなく、例えば、融合タンパク質発現系を企画したベクターを設計することができる。
【0041】
上記形質転換体は、宿主細胞を本組換えDNAで形質転換して得ることができる。宿主細胞としては大腸菌等の原核細胞や、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞等の真核細胞が例示される。本組換えDNAの宿主細胞への導入、及び、これによる形質転換の方法は、通常一般に用いられる方法を採用することができる。例えば、宿主細胞として大腸菌を用いる場合には、宿主細胞の対数増殖期にある細胞を集め、CaCl2処理して自然にDNAを取り込みやすい状態にして、かかる処理細胞に上記ベクターを取り込ませる方法等を採用することができる。なお、かかる方法において、形質転換率を向上させるために、MgCl2やRbClをさらに共存させて、形質転換・形質導入を行うこともできる。
【0042】
より具体的な例を挙げれば、pCHC252を常法に従い制限酵素BssHIIで処理し、本発明DNAを含む約3.0kbの断片を得、当該断片をpAT19(Trieu-Cuot,P., Carlier,C., Poyart-Salmeron,C., and Courvalin,P., Gene, 102, 99-104(1991))のSmaIサイトに連結する。当該本発明DNAを保持したpAT19を例えばBacillus subtilis DB104等の適当な宿主細胞に感染させることにより本発明DNAを宿主細胞に組み込み、形質転換体を得ることが可能である。
【0043】
<2>宿主細胞培養物からの本発明酵素活性ポリペプチドの単離・精製
本発明DNAを導入した宿主細胞は、適当な培地を用いて常法に従って培養することができる。例えば上述のBacillus subtilis DB104を用いる場合は、Jung, C.-M.らの方法(Jung,C.-M., Matsushita,O., Katayama,S., Minami,J., Ohhira,I., and Okabe,A., Microbiol. Immunol., 40, 923-929(1996))が好ましいがこれに限定はされない。本発明酵素活性ポリペプチドは当該宿主培養物の可溶性画分より単離、精製する。
【0044】
本明細書中における培養物とは、培養された細胞及び培地を指称し、特に限定はされないが、上記のBacillus subtilis DB104を使用する際は、培養上清のみから配列番号2記載のアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号41〜723からなる本発明酵素活性ポリペプチドを単離、精製することが可能である。培養上清から本発明酵素活性ポリペプチドを精製する方法としては、例えばJung,C.-M., Matsushita,O., Katayama,S., Minami,J., Ohhira,I., and Okabe,A., Microbiol. Immunol., 40, 923-929(1996)中に記載の方法によって行うことが可能である。
【0045】
すなわち後者の方法は、培養上清を直接硫酸アンモニウム沈澱処理及びゲルろ過を行う。ゲルろ過によるPz-ペプチダーゼ活性(実施例記載の測定法により測定する)画分をイオン交換クロマトグラフィーで分画し、酵素活性画分をMono Qカラムで分画することにより配列番号2のアミノ酸番号41〜723のアミノ酸配列からなる本発明酵素活性ポリペプチドを得ることができる。
【0046】
また、同様に培養した培養物の菌体を常法により破砕した後、Jung,C.-M., Matsushita,O., Katayama,S., Minami,J., Ohhira,I., and Okabe,A., Microbiol. Immunol., 40, 923-929(1996)中に記載の方法と同様に単離、精製を行うことにより配列番号2のアミノ酸配列からなる本発明酵素活性ポリペプチドを得ることができる。
【0047】
<4>本発明切断方法
本発明切断方法は、上記本発明酵素活性ポリペプチドにより、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することにより切断することを特徴とするペプチド鎖の切断方法である。
【0048】
本発明における切断方法は、通常のペプチダーゼによってタンパク質やペプチドを消化する方法と同じ条件、例えばpH7.5、37℃条件下において、容易に行うことが可能である。なお、pHを変化、あるいは温度条件を変化させて同様の効果を得ることは当業者であれば予備実験に基づいて容易に行いうることであり、そのような場合も本発明酵素活性ポリペプチド共存下において、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドが配列番号3中のロイシン残基のC末端側で切断される限りにおいては本発明切断方法に包含される。
【0049】
<5>本発明キット
本発明キットは、少なくとも本発明酵素活性ポリペプチドを少なくとも構成試薬として含むものであり、本発明切断方法を行うためのキットである。
【0050】
本発明キットに包含される酵素活性ポリペプチドは上述の本発明酵素活性ポリペプチドであれば特に限定はされない。本発明キットには本発明酵素活性ポリペプチド以外に、発現を目的とするDNAを組み込むことにより、前記DNAがコードするタンパク質を融合タンパク質として発現する発現ベクターを含めることが好ましい。前記融合タンパク質は、マーカータンパク質と、前記組み込んだDNAによって発現されるべきタンパク質が、配列番号3記載のアミノ酸配列を有するペプチドをリンカーとして結合している。前記マーカータンパク質としては、公知のプロモーターを有してその発現機構を調節しうるマーカータンパク質が好ましく、更に、融合タンパク質として発現した後に、当該マーカータンパク質を指標として、当該マーカータンパク質について、例えばアフィニティークロマトグラフィー、抗原抗体反応、蛍光標識、ビオチン標識等の公知の精製手段を用いて融合タンパク質を精製することが可能であるタンパク質が好ましい。このようなマーカータンパク質の例としては、プロテインA、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼ、T7第10遺伝子タンパク質及びグルタチオンS転移酵素等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。このようなベクターは、市販されている公知のベクターを用いて当業者が通常行う程度の組み換え技術を用いることによって構築すること可能である。前記ベクターに一般的な技術によりマーカータンパク質、前記リンカー及び目的とするタンパク質をそれぞれコードするDNAを連結したcDNAを組み込み、ベクターに対応する宿主に感染させて発現させることで、容易に融合タンパク質を得ることができ、当該融合タンパク質を本発明酵素活性ポリペプチドにより処理することで、目的とするタンパク質のN又はC末端のどちらか一方にリンカーの切断断片を有するタンパク質を得ることが容易にできる。
【0051】
本発明酵素活性ポリペプチドやベクターなどのキットの構成要素は、それらをグリセロールなどの安定化剤を含む溶液や緩衝液に溶解した調製品としてキットに含めることが好ましい。
【0052】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の目的を超えない限り、本実施例に本発明が限定されることはない。
【0053】
【試験例1】
ColHのコラーゲン結合部分の特定
ColHのアミノ酸配列において、そのN末端領域に酵素の活性中心であると考えられる配列が存在するため、そのコラーゲン結合領域はC末端部であると推測し、様々な長さを有するcolH'のC末端領域の断片を作成してそのコラーゲン結合活性を測定した。
すなわち、Yoshihara,K., Matsushita,O., Minami,J., and Okabe,A., J. Bacteriol. 176, 6489-6496(1994)記載のプラスミドpCHC116の5'末端部の非コード領域を切断し、Yoshihara,K., Matsushita,O., Minami,J., and Okabe,A., J. Bacteriol. 176, 6489-6496(1994)記載のcolHの塩基配列のうち塩基番号2719から3391を有するプラスミドpCHC116Δ3を作成した。このプラスミドに含まれるColHのC末端部をコードするDNAをさらに既知の制限酵素を用いて切断した後、公知の方法によりそれぞれの断片を精製し、GST(グルタチオン S-転移酵素)-融合ベクターであるファルマシア製のpGEX-4Tへ組み込んだ。それぞれの塩基配列の解析は、AmpliTaq DNAポリメラーゼ,FS(パーキンエルマー製)、pGEXプライマー(ファルマシア製)を用いてパーキンエルマー製のABI PRISM 377シークエンサーで解析した。その結果、上記ColHのアミノ酸配列のうち、767-981、811-981、839-981、861-981、886-981の範囲を有する断片が得られ、それぞれをGSTとの融合タンパク質として発現するクローンをFP302、FP303、FP304、FP305、FP306とした。それぞれの発現産物はグルタチオン−セファロースカラムで精製した。
【0054】
この発現産物のコラーゲン結合活性を測定した。すなわち、5mgの不溶性コラーゲン(タイプI、C-9879、Sigma製)を多孔性膜(孔径0.22μm:Millipore製)が取り付けられたマイクロチューブへ加えた。200μlのコラーゲン結合緩衝液(CB緩衝液:50mM Tris-HCl、5mM CaCl2、pH7.5)を添加し、コラーゲンを膨潤させる。室温で30分間振盪後、15分間、15,000×gで遠心処理する。その遠心上清のGST活性を、コラーゲンを含まない対照群と比較することにより算出した。GST活性は1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン(CDNB)を使用して説明書に記載の方法によって測定した(表1)。
【0055】
【表1】
Figure 0004484971
【0056】
FP306でコラーゲン結合能が大きく低下していることから、クローンFP306ではコラーゲン結合領域の一部を欠失していると考えられ、ColHのコラーゲン結合部分は少なくともPro861〜Arg981の間に含まれ、また、その領域のN末端部はPro861〜Ile886の間に存在することが明らかになった。
【0057】
【試験例2】
酵素活性の測定
酵素活性の測定は、配列番号3記載のアミノ酸配列を有し、可溶性のペプチド鎖であるPz-ペプチドを分解する活性(Pz-ペプチダーゼ活性)として測定した。Pz-ペプチダーゼ活性の測定は、Wunsch,E., and Heidrich,H.-G., Hoppe-Seyler's Z. Physiol. Chem., 333, 149-151(1963)の方法に従って行った。酵素活性は、320nmの吸光を1分あたり0.1上昇させる活性を1ユニットとして表した。
【0058】
【実施例1】
本発明DNAの製造
ColHのN末端よりの部分塩基配列を有するDNAとしては、Yoshihara,K., Matsushita,O., Minami,J., and Okabe,A., J. Bacteriol. 176, 6489-6496(1994)記載のcolH遺伝子を常法によりHaeIII及びPstIで切断処理することにより得られるcolH'を使用した。colH'(2.9Kb)をブルースクリプトII KS(+)(BluescriptII KS(+):ストラタジーン製)のEcoRVとPstIにはさまれる部位に常法により接続し、これをプラスミドpCHC200とした。このプラスミドと配列番号及び配列番号記載の2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR法により、colH'のDNAの部分塩基配列の増幅行った。PCR法は、1μlのpCHC200、それぞれ100pmolの上記合成オリゴヌクレオチドプライマー、それぞれ250μMの4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、1.25単位のTaqポリメラーゼを含む反応液(終体積50μl)に対し、95℃1分、46〜62℃1分、72℃2分を35サイクル繰り返して行った。このPCR産物を、製造販売元の説明書に従ってpT7Blue T-ベクター(Novagen, Madison, Wis.)に取り込ませて大量に調製した。
【0059】
この調製された部分的DNAを公知の方法で制限酵素SphI及びSacIIで処理し、両端に制限酵素切断末端を有するフラグメントを調製した。このフラグメントを、pCHC200をSphI及びSacIIで処理したプラスミド断片に挿入し本発明DNAを保持するプラスミド(pCHC252)を調製した。
【0060】
上記プラスミドの挿入断片の塩基配列は、colH'遺伝子の各部分に対応する20塩基前後の合成ヌクレオチドとABI PRISM Dye terminatior Cycle Sequencing Ready Reaction kit(パーキン エルマー(Perkin Elmer)製)を使用して解析した。塩基配列及びそれがコードするアミノ酸配列を配列番号1に、アミノ酸配列のみを配列番号2に示す。
【0061】
【実施例2】
本発明酵素活性ポリペプチドの製造
pCHC252中の本発明DNAを使用し、宿主細胞として枯草菌(Bacillus subtilis DB104)を用いて本発明酵素活性ポリペプチドを得た。すなわち、pCHC252を常法で制限酵素BssHIIで処理し、本発明DNAを含む約3.0kbの断片を作成し、当該断片をpAT19のSmaIサイトに連結した。このプラスミドをBacillus subtilis DB104に導入し、Jung,C.-M., Matsushita,O., Katayama,S., Minami,J., Ohhira,I., and Okabe,A., Microbiol. Immunol., 40, 923-929(1996)記載の方法に則って0.2%のグルコース、0.5Mのコハク酸ナトリウム及び8μg/mlのエリスロマイシンを含むLB培地(MLS培地)で10時間培養した。800mlの培養物を回収し、4℃、10,000×gで30分間遠心処理して可溶性画分を回収した。この可溶性画分を45%飽和度の硫酸アンモニウム沈澱処理後、4℃30分間、10,000×gで遠心処理して上清を回収した。さらにこの遠心上清に硫酸アンモニウムを60%飽和度になるように加え、4℃で30分間静置後、4℃で30分間10,000×gで遠心処理することにより沈澱を回収した。当該沈澱を5mlのpH8.5に調製した50mMのTris-HCl緩衝液に再溶解した。10,000×gで30分間遠心処理することにより不溶物を沈澱として除去し、上清をpH8.5の50mM Tris-HCl緩衝液で平衡化した2.2cm×70cmの分子ふるいカラム(Sephacryl S-200; Pharmacia LKB Biotechnology)でゲルろ過を行った。ゲルろ過によるPz-ペプチダーゼ活性(試験例記載の測定法により測定する)画分を約30ml集めた。この画分を、pH8.5の50mMTris-HCl緩衝液で平衡化したイオン交換カラム(MonoQ HR5/5; Pharmacia)にアプライした。室温で、初めの20mlでNaCl 0M〜0.5Mの直線的濃度勾配により溶出した。Pz-ペプチダーゼ活性は0.17M NaCl画分に検出された。この画分を採取し、Laemmliらの方法(Clevel,D.W., Fischer,S.G., Kirshner,M.W. and Laemmli,U.K., J. Biol. Chem. 252, 1102-1106(1977))によりSDS-PAGEで解析した結果、Bacillus subtilis DB104の培養上清より得られる配列番号2中のアミノ酸番号41〜723からなる本発明酵素活性ポリペプチドは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分子量約76KDaの単一のバンドとして観察された。
【0062】
【実施例3】
酵素活性の測定
上記実施例2で得られた本発明酵素活性ポリペプチド、及び、完全長のYoshihara,K., Matsushita,O., Minami,J., and Okabe,A., J. Bacteriol. 176, 6489-6496(1994)記載の方法に従って調製したColH(rColH)のPz-ペプチダーゼ活性及びコラゲナーゼ活性を測定、比較した(表2)。Pz-ペプチダーゼ活性は上述の試験例記載の活性測定法により行った。また、コラゲナーゼ活性は不溶性コラーゲンである牛アキレス腱コラーゲン(CL; Worthington Biochemical製)を業者のプロトコールに従って測定した。コラゲナーゼ活性は、37℃、5時間、pH7.5条件下でコラーゲンから1mMのL-ロイシンを遊離する活性を1ユニットとした。酵素濃度は、BSA(牛血清アルブミン)を対照としてBradford法によって測定して同量に調製した。
【0063】
【表2】
Figure 0004484971
【0064】
この結果より、本発明酵素活性ポリペプチドの不溶性コラーゲン分解活性であるコラゲナーゼ活性は完全長のColHと比して95%程度低下しているのに対し、可溶性の配列番号3記載のアミノ酸配列を有するPz-ペプチドを分解するPz-ペプチダーゼ活性が完全長のColHと比して40%程度上昇していることが明らかである。
【0065】
【実施例4】
キットの作成
以下の試薬を含むキットを作成した。
(1)実施例2で得た本発明酵素活性ポリペプチド 10units(10μl グリセロール溶液)
(2)修飾済みpGEMEX(R)-1 ベクター 20μl
(3)大腸菌JM109(DE3)グリセロール溶液
【0066】
本キットの修飾済みpGEMEX(R)-1 ベクターは、そのSfiI切断部位に、T7 第10遺伝子と同一の読み枠で本発明ポリペプチドが認識するアミノ酸配列をコードしたDNA断片が挿入されている。
【0067】
以下、本キットの使用例を説明する。本キットの修飾済みpGEMEX(R)-1 ベクターは予めそのSfiI切断部位に、T7 第10遺伝子と同一の読み枠で本発明ポリペプチドが認識するアミノ酸配列をコードしたDNA断片が挿入されているため、目的のルシフェラーゼをコードする構造遺伝子をPCR法により単離し、本ベクターのマルチプル クローニング サイトに同一の読み枠となるように従来の一般的方法と同一手順に従い挿入した。この組み換えプラスミドを大腸菌JM109(DE3)に形質転換し、イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトシドで誘導して、ルシフェラーゼをT7 第10遺伝子タンパク質及び配列番号3記載のアミノ酸配列のペプチド鎖との融合タンパク質として生産、精製した。この融合タンパク質を本発明酵素活性ポリペプチド3mg/mlを含むpH7.5 Tris-HCl緩衝液と混合し、37℃で10分間保温することによりルシフェラーゼを融合タンパク質から切断することができ、容易に精製することができた。
【0068】
上述のように精製されたルシフェラーゼ及びルシフェリンを利用してD.M.Karlの方法(D.M.Karl, Microbiol. Rev., 44, 739(1980))によりATPの定量の確認を行った結果、従来通りの正確な測定結果が得られ、十分な酵素活性を保持していることが明らかになった。
【0069】
【発明の効果】
本発明により、ColHのコラーゲン結合領域が明らかとなり、前記領域を欠失した新規酵素活性ポリペプチドが提供される。また、本発明により当該酵素活性ポリペプチドを利用した融合タンパク質を切断する方法及び前記方法を実施するためのキットが提供される。
【0070】
【配列表】
Figure 0004484971
Figure 0004484971
Figure 0004484971
Figure 0004484971
Figure 0004484971
Figure 0004484971
【0071】
Figure 0004484971
Figure 0004484971
Figure 0004484971
Figure 0004484971
【0072】
Figure 0004484971
【0073】
Figure 0004484971
【0074】
Figure 0004484971

Claims (2)

  1. 下記(a)及び(b)記載のアミノ酸配列から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなり、かつ、下記(1)の理化学的性質を有する酵素活性ポリペプチド。
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列。
    )配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列。
    (1)作用
    配列番号3記載のアミノ酸配列を含むペプチドを特異的に認識し、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって該ペプチドを切断する。
  2. 下記の(a)及び(b)記載の塩基配列から選ばれたいずれかの配列からなり、配列番号3記載のアミノ酸配列を含むペプチドを、該アミノ酸配列中のロイシン残基のC末端側のペプチド結合を加水分解することによって切断する活性を有する酵素活性ポリペプチドをコードすることを特徴とするDNA。
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
    )配列番号2記載のアミノ酸配列のうちアミノ酸番号41〜723からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
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