JP3071437B2 - T3―エキソヌクレアーゼの製造方法 - Google Patents

T3―エキソヌクレアーゼの製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、遺伝子操作等に有用なT3−エキソヌクレア
ーゼ、その塩基配列、及びその製造方法に関する。
〔従来の技術〕
従来T3−エキソヌクレアーゼは、例えば大腸菌にT3フ
ァージを感染させ、その菌体の抽出物から精製すること
により得られるものであった〔ジャーナル オブ ビロ
ロジー(J.Virology)、第100巻、第382頁(1980)〕。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、大腸菌にT3ファージを感染させて得ら
れるエキソヌクレアーゼの含量は少なく、また、操作も
煩雑であり、本酸素を大量に得ることは困難であった。
一方、この遺伝子の単離及び該遺伝子を種々のベクター
に結合して、クローニングする方法については、いまだ
明らかにされていない。
本発明の目的はT3−エキソヌクレアーゼの工業的規模
の製造に適した、T3−エキソヌクレアーゼ遺伝子を含む
プラスミドを導入した新規模生物、時に大腸菌の創製及
びそれを用いたT3−エキソヌクレアーゼの効果的製造方
法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は配列表の
配列番号1記載のアミノ酸配列を有するT3−エキソヌク
レアーゼをコードする核酸に関する。また本発明の第2
の発明は第1の発明のT3−エキソヌクレアーゼをコード
する核酸を含有させた組換えプラスミドを導入させた形
質転換体を培養し、該培養物より本発明の第1の発明の
T3−エキソヌクレアーゼを採取することを特徴とする製
造方法に関する。
本発明者らは、T3バクテリオファージDNAより、T3−
エキソヌクレアーゼ遺伝子全領域(1053bp)を含む2.1k
bp DNAをクローニングすることに成功し、更に、このDN
A断片を含むプラスミドを導入した微生物、特に大腸菌
を培養することにより、菌体中に著量のT3−エキソヌク
レアーゼが蓄積することを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に係る新規微生物、例えば大腸菌は次に例示す
る工程により得ることができる。
(1) DNA供与体であるT3バクテリオファージからフ
ァージDNAを抽出し、制限酵素で切断し、DNA断片を回収
する。
(2) プラスミドベクターを制限酵素で開裂きし、こ
の開裂部位に、(1)で得たDNA断片を結合させる。
(3) ファージDNA断片を結合させたプラスミドを宿
主に導入し、目的のDNA断片を含む形質転換体を選択す
る。
(4) (3)で得た形質転換体からプラスミドを取出
し、目的のDNA断片を切出し、これを(2)と同様の要
領で発現ベクタープラクミドに結合させる。
(5) (4)で得たT3−エキソヌクレアーゼを含むDN
A断片を結合させた発現ベクタープラスミド(3)と同
じ要領で宿主に導入し、形質転換体を得る。
上記DNA供与体であるT3バクテリオファージDNAは大腸
菌B株にT3バクテリオファージを感染させた溶菌液より
ファージ粒子を回収しそれより抽出する。
ファージDNAの制限酵素による切断は次のように行
う。ファージDNAに適当な制限酵素を加え、適当な反応
を行うことにより種々のDNA断片に切断される。この切
断に使用しうる酵素は、ファージDNAを切断し得るもの
であり、かつT3−エキソヌクレアーゼを産生する遺伝情
報を担うDNA部分を切断しないものであることが望まし
い。
また、ベクターとなるプラスミドを1カ所切断できる
ものであることが望ましい。
一方、プラスミドベクターの開裂も同様の方法で行う
ことができる。プラスミドベクターとしては公知のもの
が使用できるが、例えばpBR322、pUC18、pUC19などが挙
げられる。
次に、DNAリガーゼを用いてベクターDNAの開裂部位に
上述のDNA断片を組込ませるが、その手段自体は公知の
方法によるものであり、ベクターDNAの種類及び制限酵
素の種類に応じて適当な反応条件が選択される。
次いで、ファージDNA断片図を組込んだプラスミドを
宿主大腸菌の導入させるが、宿主大腸菌としては、形質
転換体を有するものであれば、野菜株、変異株のいずれ
も使用できる。用いるベクタープラスミドにより、用い
る宿主大腸菌を適宜変えることも可能である。
この様にして目的のDNA断片を宿主に導入させ、プラ
スミドベクターの特性、例えばpUC18、Sau3A I部位にク
ローン化する場合には、アンピシリン耐性コロニーを選
択することにより、クローン化することができる。
クローン化されたDNAの解析は、以下の方法を用いて
行う。すなわち、多数得られる形質転換株よりプラスミ
ドを調製し、適当な制限酵素で切断後、アガローガス電
気泳動すればクローン化されたDNA断片の長さを知るこ
とができる。この様にして解析したところ2.1kbpのクロ
ーン化DNAを有するプラスミドを得た。
更に、この全2.1kbpを解析し、この内部にT3−エキソ
ヌクレアーゼ遺伝子が存在すること、及びその塩基配列
を決定した。
プラスミドに組込まれたT3−エキソヌクレアーゼ遺伝
子を導入した大腸菌が上記エキソヌクレアーゼ蛋白を生
産しているか否かを調べる手段としては、菌体を破砕し
て得た抽出物を直接SDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動し、分子量約40,000の蛋白バンドの量を調べる方法
がある。また、T3−エキソヌクレアーゼ活性を測定すれ
ば良い。
大腸菌からのT3−エキソヌクレアーゼの精製には、通
常のクロモトグラフィー手法が用いられる。すなわち、
培養菌体をリゾチーム処理、次いで超音波処理して上清
を得る。次いで、ストレプトマイシン硫酸処理を行い、
上清を分画す。次いで、イオン交換、ゲルろ過等のクロ
マトグラフィーによってT3−エキソヌクレアーゼを得る
ことができる。
以上述べてきたごとく、本発明によりT3−エキソヌク
レアーゼの一次構造が明らかとなり、その遺伝子を組込
んだプラスミド、及びそれを導入した大腸菌を調製する
ことができ、該大腸菌を用いるT3−エキソヌクレアーゼ
の遺伝子工学的製造方法を提供することが可能となっ
た。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明はこれら実
施例に限定されるものではない。
実施例1 (1) T3バクテリオファージDNAの調製 ジャーナル オブ ビロロジィー第100巻、第382頁
(1980年)記載の方法に従ってT3バクテリオファージDN
Aを調製した。
(2) T7−エキソヌクレアーゼと類似性を有する領域
の解析 ジャーナル オブ モレキューラー バイオロジー
(J.Mol.Biol)第166巻、第477頁(1983年)にT7−エキ
ソヌクレアーゼの遺伝子配列が記載されている。
一方、T3バクテリオファージDNAをMbo Iで切断する
と、ジーン(Gene)第12巻、第161頁(1980年)に記載
の様なフラグメントに切断される。これらのフラグメン
トの塩基配列をM13ファージを用いたジデオキシ法〔サ
イエンス(Science)第214巻、第1205〜1210頁(198
1)〕により決定したところ、BフラグメントとIフラ
グメントにわたってT7−エキソヌクレアーゼ遺伝子の高
い類似性を持つ配列が認められた。
T7−エキソヌクレアーゼ遺伝子とBフラグメント、I
フラグメントの関係を第1図に示す。すなわち第1図は
T7−エキソヌクレアーゼ遺伝子とT3−エキソヌレアーゼ
遺伝子の関係を示す模式図であり、第1図で示す1053bp
がT3−エキソヌクレアーゼ遺伝子に相当する。T3−エキ
ソヌクレアーゼの遺伝子配列及びアミノ酸配列を第2図
に示す。すなわち第2図はT3−エキソヌクレアーゼの塩
基配列及びアミノ酸配列を示し、5′末端側のATGは開
始コドンを示し、Metをコードするが、発現時には除去
される。また3′末端側のTGAは終止コドンを示す。
(3) T3−エキソヌクレアーゼ遺伝子を含む 2.1kbp DNA断片のクローニング 上記(2)のT3バクテリオファージDNAのMbo I DNA
断片のBフラグメントをBamH Iで開環後、アルカリホス
ファターゼ処理したbBR内に組込み(DNAライゲーション
キット、宝酒造社製を用いた)、このプラスミドbT3−
0を大腸菌HB101に導入後、培養し常法に従ってプラス
ミドpT3−0を精製した。このプラスミィドをNae IとSa
u3A Iで完全消化しNae I、Sau3A Iサイトを両端に持つB
2フラグメントを得た。
一方、pUC18プラスミドをHinc IIとBamH Iで消化した
ものと、B2フラグメントとIフラグメントを混合し、DN
Aライゲーションキット(宝酒造社製)を用いて各フラ
グメントを結合させこの反応液を大腸菌HB101株に導入
後、常法に従ってアンピシリンを含むシャーレ上に植菌
後生育したコロニー48株をアンピシリンを含むL培地で
培養し、常法に従って、各株のプラスミドを精製した。
精製したプラスミドをHind IIIとEcoR Iで消化したとこ
ろ、約2.6kb(pUC18)と約2.1kb(I+B2フラグメン
ト)のフラグメントを生じるものが1株あった。このプ
ラスミドのシークエンスを行ったところB2フラグメント
とIフラグメントはT3−エキソヌクレアーゼ遺伝子を完
成させる方向に結合していた。このプラスミドをpT3−
2と命名した。
(4) T3−エキソヌクレアーゼ遺伝子を含むDNA断片
とpUC19との結合及び大腸菌への導入(3)で得たプラ
スミドpT3−2DNAをEcoR I、Hind IIIで切断し、アガロ
ースゲル電気泳動により、前記1053pbのDNAを含むプラ
スミドpT3−1 DNAを得た。またpUC19DNAもEcoR I、Hi
nd IIIで切断後アルカリンホスファターゼ処理を行いベ
クターDNAを得た。
両DNA断片を(3)に示す方法で結合後大腸菌JM109株
に形質導入した。(3)と同様の方法でプラスミドを解
析した結果、2.1kbpのDNA断片を含むことが明らかとな
りこのプラスミドをpT3−3と命名した。
この大腸菌はエシエリヒアコリJM109/pT3−3と命名
し、Escherichia coli JM109/pT3−3と表示し、微工研
菌寄第11086号(FERM P−11086)として、工業技術院微
生物工業技術研究所に寄託されている。
(5) プラスミドpT3−3を導入した大腸菌(エシエ
リヒア・コリ JM109/pT3−3)によるT3−エキソヌク
レアーゼの生産 上記大腸菌(FERM P−11086)をアンピシリン50μg/m
lを含む50mlのL培地に接種し、37℃、16時間前培養し
た。これを500mlのL培地を含む2容フラスコに移
し、37℃1時間(120rpm)培養した後、IPTG(イソプロ
ピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド)100mg/
を加えたのち、更に5時間培養した。集菌後緩衝液
〔25mMトリス−HCl(pH8.0)、50mMグルコース、10mM
EDTA、1mM DTT〕36mlに懸濁した。これに、144mgのリ
ゾチームを加え室温て約5分間かくはん後超音波処理、
遠心分離により無細胞抽出液を得た。
抽出液に5.25mlの5%ストレプトマイシン硫酸の添加
し4℃で15時間放置後遠心分離により上清を得た。この
上清を50mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)、1mM EDTA、1
mM DTTで十分透析し、DEAE−セファロースCL−6B(フ
ァルマシア社製)による精製を行った。ここで得られた
活性画分を集めたところ37400UのT3−エキソヌクレアー
ゼが生産されていた。
T3−エキソヌクレアーゼの活性測定方法 (1) 基質DNA溶液の調製 3μgの牛胸腺DNAをHae IIIで完全消化し、常法に従
いフェノール、クロロホルム処理後、エタノール沈殿、
乾燥後200μの50mMトリスHCl緩衝液pT7.5、1mM EDTA
に溶解する。
(2) 5倍濃縮緩衝液の組成 250mMトリス−HCl(pH8.1)、25mM MgCl2、5mM DT
T、100mM KCl (3)反応系 基質DNA 7μ 5倍濃縮緩衝液 50μ 水 186μ 酸素溶液 7μ 37℃ 5分 反応 250μ (4) 活性の定義 上記反応系において30分間で10nmolのヌクレオチドを
生成する酵素量を1Uとする。
(5) 活性のもとめ方 ΔOD:5分間で増加する260nmの吸光度 6.0×10-5:基質DNAからヌクレオチドが遊離し、ヌク
レオチド濃度が10nol/Lとなった時の260nmにおける吸光
度の増加量 2.5×10-4:反応系の容量(L) 30/5:反応時間5分に対する30分の比 7:酵素量(μL) 〔発明の効果〕 以上詳細に説明した通り、本発明によりT3バクテリオ
ファージエキソヌクレアーゼ遺伝子が単離された。該遺
伝子を含有するプラスミドで形質転換した微生物により
遺伝子工学において有用なT3−エキソヌクレアーゼを効
率よく製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図はT7−エキソヌクレアーゼ遺伝子とT3−エキソヌ
クレアーゼ遺伝子の関係を示す図、第2図はT3−エキソ
ヌクレアーゼをコードする塩基配列及びアミノ酸配列を
示す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:92) (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内 (72)発明者 田中 琢治 大阪府吹田市高野台5―4―1 (56)参考文献 Virology 100 p.382− 389(1980) J.Mol.Biol.166 p.477 −535(1983) Virology 151 p.350− 361(1986) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 9/16 C12N 15/00 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列を
    有するT3−エキソヌクレアーゼをコードする核酸。
  2. 【請求項2】配列表の配列番号2記載の塩基配列を有す
    る請求項1記載の核酸。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の核酸を含有させた組
    換え体プラスミドを導入させた形質転換体を培養し、該
    培養物より、組換えエキソヌクレアーゼを採取すること
    を特徴とするT3−エキソヌクレアーゼの製造方法。
JP1299558A 1989-11-20 1989-11-20 T3―エキソヌクレアーゼの製造方法 Expired - Fee Related JP3071437B2 (ja)

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Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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J.Mol.Biol.166 p.477−535(1983)
Virology 100 p.382−389(1980)
Virology 151 p.350−361(1986)

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