JP3775873B2 - フルクトシルアミンオキシダーゼを生産する実質上純粋な微生物 - Google Patents

フルクトシルアミンオキシダーゼを生産する実質上純粋な微生物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフルクトシルアミンオキシダーゼを発現する実質上純粋なDNA、フルクトシルアミンオキシダーゼを生産する実質上純粋な微生物及びフルクトシルアミンオキシダーゼの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中のグルコースは遊離のアミノ基(主にリジンのε−アミノ基)を持つ蛋白と結合し、シッフ塩基を形成してアルジミンとなる。この反応は可逆であり、生じた反応物は不安定であるが、それに続く不可逆性のアマドリ転移によって、安定したケトアミンとなる。このような糖化蛋白を総称してフルクトサミンと呼ぶ。フルクトサミンの60から70%はグリケイテッドアルブミンであると言われている。アルブミンの半減期が約2週間であることから、フルクトサミンは約2週間前の血糖値を反映すると言われている。
【0003】
糖尿病患者における血液中のグルコース濃度は健常人と比較して高いことから、フルクトサミンの濃度も高くなることが知られている。血糖値は食事の影響を大きく受けることから、食事の影響を受けないフルクトサミンは、糖尿病患者の血糖コントロール指標として有用である。
フルクトサミンの定量法としては、アフィニティークロマトグラフィー法(Daiabetes,第29巻、1044−1047ページ、1980年)、HPLC法(J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,第19巻、81−87ページ、1981年)、(FEBS Lett.,第71巻、356−360ページ、1976年)等があるが、いずれも操作が煩雑な上、精度に問題があった。
【0004】
上記の方法に代わって、最近多く用いられているのがアルカリ溶液中でのフルクトサミンの還元能を利用してNBT(ニトロブルーテトラゾリウム)を還元し、ホルマザン生成物の吸光度(550nm)を測定するものである。この方法は迅速であり、臨床検査に用いるために種々の分析機で自動化されている。しかし、試料中の夾雑物質の影響を受けることから特異性が疑問視されていた。そこで、簡便でかつ夾雑物質の影響を受けないフルクトサミンを測定する方法が望まれていた。
【0005】
フルクトサミンを含むアマドリ化合物の定量法としてコリネバクテリウム(Corynebacterium)属由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを用いた方法が報告されている(特開昭61−268178号公報)。しかしこの方法はα−アミノ酸のアマドリ化合物に対しては作用するがε−アミノ酸に対しては作用しない(特開平3−155780号公報)。フルクトサミンは、タンパク質中のε−アミノ酸であるリジン残基に糖が結合したものである(Diabetologia、第26号、93−98ページ、1984年)ことから、この方法はフルクトサミンの定量には使用できなかった。
【0006】
フルクトサミンのようなε−アミノ酸のアマドリ化合物にも作用する酵素として、アスペルギウス(Aspergillus)属由来のフルクトシルアミンオキシダーゼ(特開平3−155780号公報)、フサリウム(Fusarium)属、アクレモニウム(Acremonium)属、およびデバリオマイセス(Debaryomyces)属由来のケトアミンオキシダーゼ(特開平5−192193号公報)が知られている。しかし、いずれも培養に誘導物質としてフルクトシルグリシンやフルクトシルバリンなどのような合成基質を使用するにもかかわらず酵素生産能は非常に低い。加えて、真菌類は液体培養を行うと菌体が培地の半分もの体積になり、また細胞壁が非常に強固であることから、微量の酵素を精製することは非常に困難である。さらに、血液中に存在するような低濃度のフルクトサミンを測定するには多量の酵素が必要であり、本酵素を供給する方法として現実的なものではあり得なかった。
【0007】
このような状況下、フルクトシルアミンオキシダーゼにおいてはε−アミノ酸に対する反応性や生産菌株の酵素生産性が非常に低いことから、ε−アミノ酸に対して反応性の高い酵素を効率よく生産し、容易に抽出・精製できる微生物の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実情のもとで、フルクトサミンの定量に有用なε−アミノ酸に反応性の高いフルクトシルアミンオキシダーゼを検索し、この酵素を効率よく生産する微生物を開発し、さらにこの微生物を用いて該酵素を量産する方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を重ね、自然界および公知の分離株についてフルクトシルアミンオキシダーゼを産出する株を探索した結果、特に真菌類に広く存在することがわかった。その中で特にフサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)IFO−9972のフルクトシルアミンオキシダーゼ生産能が高いことがわかった。
【0010】
そこで、本菌株から該酵素を精製し、該酵素の部分的アミノ酸配列を決定した。そして、該酵素を生産する微生物由来の染色体DNAライブラリーの中から、該酵素をコードする遺伝子DNAを決定した部分的アミノ酸配列から設計・合成したDNAプローブを用いてスクリーニングし、得られたDNA断片から該酵素をコードしない領域(5’および3’ノンコーディング領域並びにイントロン)を部位特異的変異法を用いて除去することで原核生物において遺伝子発現が可能でかつ容易に発現する構造に変換した後、この遺伝子を用いて発現ベクターを構築し、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に属する微生物に導入して形質転換微生物を作出し、これを特に培地中で低温にて培養することによって、該フルクトシルアミンオキシダーゼを効率よく量産することを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、配列表1のアミノ酸配列の1から440で表されるアミノ酸配列を有するフルクトシルアミンオキシダーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAによって形質転換されたものであることを特徴とするフルクトシルアミンオキシダーゼを生産する実質上純粋な微生物、配列表1のアミノ酸配列の1から440で表されるアミノ酸配列を有するフルクトシルアミンオキシダーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするフルクトシルアミンオキシダーゼを発現する実質上純粋なDNA、配列表1のアミノ酸配列の1から440で表されるアミノ酸配列を有するフルクトシルアミンオキシダーゼのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAによって形質転換されたフルクトシルアミンオキシダーゼを生産する実質上純粋な微生物を培地に培養し、次いでその培養物からフルクトシルアミンオキシダーゼを採取することを特徴とするフルクトシルアミンオキシダーゼの製造法を提供するものである。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用されるフルクトシルアミンオキシダーゼ生産菌は、フサリウム・オキシスポルムIFO−9972株であり、本菌の生産するフルクトシルアミンオキシダーゼの性状は以下の通りである。
・フルクトシルアミンオキシダーゼの活性測定法
・反応液組成
50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)
0.03%の4−アミノアンチピリン
0.02%のフェノール
4.5u/mlのパーオキシダーゼ
1mMのZFL(α−カルボベンズオキシ−ε−D−フルクトシル−L−リジン)
上記の反応液1mlを小試験管に入れ、37℃で5分間予備加温した後、適当に希釈した酵素液0.02mlを添加して撹拌し、反応を開始する。正確に10分間反応の後に、0.5%のSDSを2ml添加して反応を停止し、波長500nmの吸光度を測定する(As)。また盲検として酵素液のかわりに蒸留水0.02mlを用いて同一の操作を行って吸光度を測定する(Ab)。この酵素使用の吸光度(As)と盲検の吸光度(Ab)の吸光度差(As−Ab)より酵素活性を求める。別にあらかじめ過酸化水素の標準溶液を用いて吸光度と生成した過酸化水素量との関係を調べておく。37℃、1分間に1μMの過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義し、計算式は下記の通りである。
酵素活性(U/ml)=(As−Ab)×1.16×酵素の希釈率
(1)基質特異性
ZFL 100%
D−フルクトシル−L−アラニン 104%
ε−D−フルクトシル−L−リジン 81%
D−フルクトシル−L−バリン 10%
(2)酵素作用
下記に示すように、少なくともα−アミノ酸、ε−アミノ酸のアマドリ化合物を分解して、グルコソンと過酸化水素および対応するα−アミノ酸、ε−アミノ酸を生成する反応を触媒する。
【0013】
【化1】
Figure 0003775873
【0014】
(3)分子量
本酵素の分子量はSephadex・G−100を用いたカラムゲル濾過法で、0.2MのNaCl含有0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を溶出液として測定した結果、48,000±2,000、SDS−PAGEでは47,000±2,000であった。
(4)等電点
キャリアアンフォライトを用いる焦点電気泳動法によって4℃、700Vの定電圧で40時間通電した後、分画し、各画分の酵素活性を測定した結果、pH4.3±0.2であった。
(5)Km値
50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
0.03%の4−アミノアンチピリン
0.02%のフェノール
4.5u/mlのパーオキシダーゼ
を含む反応液中で合成基質ZFLの濃度を変化させて、ZFLに対するKm値を測定した結果、0.194mMの値を示した。
(6)至適pH
前記の酵素活性測定法に従い、反応液中の50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に代えて100mMの酢酸緩衝液(pH4.4−5.4)、リン酸緩衝液(pH5.6−7.9)、トリス−塩酸緩衝液(pH7.3−8.5)、およびグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.0−10.3)の各緩衝液を用いて測定した。この結果、pH7.5で最大の活性を示した。
(7)pH安定性
本酵素0.5Uを含有する0.5Mの至適pHを測定するときに用いた各種緩衝液0.5mlを40℃、10分間処理した後、その残存活性を後記の活性測定法に従って測定した。この結果、pH7.0−9.0の範囲で80%以上の活性を保持していた。
(8)熱安定性
本酵素0.5Uを0.2Mのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で調製し、10分間加熱処理後、その残存活性を活性測定法に従って測定した。この結果、40℃までは残存活性として95%以上を保持した。
(9)至適温度
40mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)を用い、活性測定法に従い、各温度で10分間反応後、0.5%のラウリル硫酸ナトリウム(以下SDSと略称する)溶液2mlで反応を停止し、波長500nmで吸光度を測定した。この結果、50℃で最大の活性を示した。
【0015】
【表1】
Figure 0003775873
【0016】
以上の本酵素の理化学的性質と公知の酵素の性質を(表1)に示し比較した。その結果、分子量においてはコリネバクテリウムsp.由来酵素は88,000、アスペルギルスsp.由来酵素は83,000、フザリウム・オキシスポルムIFO05880由来酵素は106,000であるのに対し、本発明の酵素の分子量は48,000であり明らかに違う分子量であった。至適温度においてコリネバクテリウムsp.由来酵素は40℃、アスペルギルスsp.由来酵素は40℃、フザリウム・オキシスポルムS−1F4由来酵素は45℃、フザリウム・オキシスポルムIFO05880由来酵素は33℃であり、本発明の酵素の至適温度は50℃であり、明らかに異なっていた。阻害剤においては本発明の酵素がマンガンイオンやニッケルイオンによって阻害されるの対してフザリウム・オキシスポルムS−1F4由来酵素やフザリウム・オキシスポルムIFO05880由来酵素はマンガンイオンとニッケルイオン存在下に100%残存活性を示す阻害を受けない性質を有するものであった。基質特異性においては本発明酵素はフルクトシルリジンとフルクトシルバリンに作用し、フルクトシルグリシンには作用しなかった。コリネバクテリウムsp.由来酵素はフルクトシルリジンに作用しないことから、明らかに本発明酵素とは異なるもので、また血中のフルクトサミン(リジン残基のε位のアミノ基が糖化された蛋白)の測定には使用できない。フザリウム・オキシスポルムS−1F4由来酵素はフルクトシルバリンに作用しないことから明らかに本発明酵素とは異なるものであり、また血中のヘモグロビンA1C(ヘモグロビンA1Cは血糖コントロールマーカーで、N末のバリン残基が糖化されている。)の測定には使用できない。以上の諸性質における差異が認められ、本酵素は新規な性質のものと認められる。
【0017】
また、上記に示した本発明の新規な性質を有するフルクトシルアミンオキシダーゼについて精製を行い、得られた電気泳動的に均一なフルクトシルアミンオキシダーゼを用い、N末端側アミノ酸配列、シアノゲンブロミドなどを用いて化学的に切断した各ペプチド断片、およびリシルエンドペプチダーゼやアスパラギニルエンドペプチダーゼなどプロテアーゼを用いて消化した各ペプチド断片についてアミノ酸配列を決定し、フルクトシルアミンオキシダーゼの部分的なアミノ酸配列を決定する。
【0018】
次に、フルクトシルアミンオキシダーゼを発現する遺伝子DNAをクローニングし、遺伝子工学的に該酵素を発現する形質転換微生物を作出する訳であるが、用いられるフルクトシルアミンオキシダーゼを発現する遺伝子DNAは、例えば該酵素を生産する微生物由来の染色体DNAまたはcDNAライブラリーの中から、スクリーニングすることによって得ることができる。
【0019】
本発明においては、前記のフルクトシルアミンオキシダーゼを生産する微生物として、フサリウム・オキシスポルムIFO−9972が好ましく用いられる。このフサリウム・オキシスポルムIFO−9972から該酵素を発現する遺伝子DNAをスクリーニングする方法について説明する。まず、本菌の遺伝子ライブラリーを作製するにあたり、染色体DNAライブラリーを作製する場合、まず、該微生物の染色体DNAを通常用いられている方法によって抽出した後、適当な制限酵素で切断して、クローニング用ベクターに連結し、次いでこの組換えベクターを宿主微生物に導入して、104 〜105 個の形質転換宿主微生物のコロニーからなる染色体DNAライブラリーを作製する。
【0020】
また、cDNAライブラリーを作製する場合は、全RNAを通常用いられている方法に従って調製した後、例えばオリゴdTカラムを用いてmRNAを精製しても良いし、市販のキットを用いて直接mRNAを調製しても良い。調製したmRNAに適当な制限酵素部位を有するリンカーやアダプターを付加した後適当なクローニング用ベクターに挿入し、上記と同様に宿主微生物に導入してcDNAライブラリーを作製する。この際用いられる宿主微生物としては、組換えDNAが安定でかつ自律的に増殖可能であるものであれば特に制限されず、通常の遺伝子組換えに用いられているもの、例えばエシェリヒア属、バチルス属に属する微生物などが好ましく使用される。
【0021】
宿主微生物に組換えDNAを導入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下に組換えDNAの導入を行ってもよいし、コンピテントセル法を用いてもよく、またバチルス属に属する微生物の場合には、コンピテントセル法またはプロトプラスト法などを用いることができるし、エレクトロポレーション法あるいはマイクロインジェクション法を用いてもよい。宿主微生物への所望組換えDNA導入の有無の選択については、組換えDNAを構成するベクターの薬剤耐性マーカーや栄養要求性マーカーに基づく選択培地で、該宿主微生物を培養し、生育する宿主微生物を選択すればよい。
【0022】
一方、フルクトシルアミンオキシダーゼ精製標品の部分的アミノ酸配列に基づいて種々のオリゴヌクレオチドを合成した後、例えばアイソトープで標識して標識オリゴヌクレオチドプローブを作製する。
次いで、これらの標識オリゴヌクレオチドプローブを用い、従来慣用されている方法に従って、前記の染色体DNAまたはcDNAライブラリーの中から、フルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を含むものをスクリーニングする。
【0023】
次に、この目的の遺伝子DNAを含む形質転換された宿主微生物から、例えばマニアティスらの方法(Molecular Cloning Second Edition.,Cold Spring Harbor Laboratory、1989年)などに従って、フルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子DNAを含む組換えベクターを調製することができる。
【0024】
次に、以上のようにして得たフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を発現用ベクターに組み込んで、発現ベクターを構築する。この発現用ベクターとしては、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージDNAまたはプラスミドDNAから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。前者のファージベクターとしては、例えばエシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合には、λgt・λC、λgt・λBなどが用いられる。また、プラスミドベクターとしては、エシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合は、例えばpBR322、pBR325、pACYC184、pUC12、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pTV119N、pBluescriptSK+、pTrc99Aなどが用いられる。
【0025】
さらに、バチルス属を宿主微生物とする場合は、例えばpHY300PLKなどを用いればよく、サッカロミセス属を宿主微生物とする場合は、例えばpYAC5などを用いればよい。また宿主微生物が原核生物である場合、フルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を組み込んだ際に効率よく働くプロモーターが上流に存在するような構造の発現用ベクターが適しており、エシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合には、pUC12、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pTV119N、pBluescriptSK+、pTrc99Aなどがこれに合致する。さらに、バチルス属を宿主微生物とする場合は、pHY300PLKなどが合致する。
【0026】
これらのベクターに、該フルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子DNAを組み込む方法については特に制限はなく、従来慣用されている方法を用いることができる。しかし、該酵素生産菌であるフサリウム・オキシスポルムIFO−9972は真核生物であることから、該酵素遺伝子内にイントロンを保持している可能性がある。イントロンが存在している場合、エシェリヒア・コリなどの原核生物を宿主として活性発現させるためにはこのイントロンを除去しなければならない。この場合は、部位特異的変異法を応用して、イントロンを除去した後に結合させたいエクソン(タンパクをコードしている遺伝子部分)両末端と同じ配列を有する合成DNAを用いてイントロンを除去すればよい。また、宿主微生物での遺伝子の発現効率を上昇させるために、部位特異変異法を用いて低頻度遺伝子コドンを高頻度コドンに変換する作業が有効である。例えば宿主微生物がエシェリヒア・コリであれば、アルギニンをコードするエシェリヒア・コリでの低頻度遺伝子コドンAGGを、同じくアルギニンをコードする高頻度コドンであるCGGなどに変換する操作が一般的に行われる。また、フルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を発現用ベクターに組み込むに先だって、遺伝子の上流部と下流部に部位特異変異法やPCR法を用いて、適当な制限酵素認識部位を作成しておくことも一般的な手法である。そして、適当な制限酵素を用いて、前記のフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子DNAを含む組換えベクター及び発現用ベクターを処理し、それぞれフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を含むDNA断片及びベクター断片を得た後、それぞれの接着末端をアニーリング後、適当なDNAリガーゼを用いて結合させることによって、発現ベクターが得られる。
【0027】
後述の実施例における発現ベクターは、前記のフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子DNAを含む組換えプラスミドとして分離したpFOD1とプラスミドベクターpTV119Nから得られ、pFOD7と命名されたものであり、その構成の模式図は図1に示すとおりである。
このようにして、構築された発現ベクターをエシェリヒア・コリに属する微生物に導入し、該宿主微生物を形質転換させればフルクトシルアミンオキシダーゼを生産する実質上純粋な微生物が得られる。発現ベクターの導入及び選択方法については前述した方法を用いて行う。
【0028】
本発明においては、前記組換えプラスミドpFOD7によって形質転換されたエシェリヒア・コリに属する微生物は、エシェリヒア・コリDH1・pFOD7(微工研寄託、FERM P−15943)と命名される。
このようにして得られた形質転換微生物の培養は、該微生物の生育に必要な炭素源や窒素源などの栄養源や無機成分などを含む培地中において行うことができる。
【0029】
該炭素源としては、例えばグルコース、デンプン、ショ糖、モラッセス、デキストリンなどが、窒素源としては、例えばペプトン、肉エキス、カゼイン加水分解物、コーンスチープリカー、硝酸塩、アンモニウム塩などが、無機成分としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛、マンガン、鉄などの陽イオンや塩素、硫酸、リン酸などの陰イオンを含む塩が挙げられる。
【0030】
培養方法については特に制限はなく公知の方法、例えば通気撹拌培養、振盪培養、回転培養、静置培養などの方法によって行うことができるが、本発明に関しては、数々の検討を行った結果、エシェリヒア・コリの至適生育温度である37℃よりも低い28℃以下好ましくは25℃で、12時間から60時間程度培養する方法が好ましく用いられる。
【0031】
このようにして培養を行ったのち、遠心分離処理などの手段によって菌体を集め、次いで酵素処理、自己消化、フレンチプレス、超音波処理などによって細胞を破壊して目的とする酵素を含有する抽出液を得る。この抽出液から、該酵素を分離、精製するには、例えば、塩析、脱塩、イオン交換樹脂による吸脱着処理などを行ったのち、さらに吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過、電気泳動法などによって精製すればよけ、この精製酵素について適宜、ショ糖、グリセロール、アミノ酸等の安定化剤を0.1〜5%添加して凍結乾燥してもよい。
【0032】
この精製標品について、フルクトシルアミンオキシダーゼの酵素活性及び物理化学的性質を調べることによって、該形質転換微生物がフルクトシルアミンオキシダーゼの産生能を有することが確認された。
したがって、本発明において用いたフルクトシルアミンオキシダーゼを発現する遺伝子DNAは、配列表1のアミノ酸配列の1から440で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、かつその塩基配列が配列表1の塩基配列の1から1320で表される塩基配列であることが明らかである。
【0033】
このようにして得られたフルクトシルアミンオキシダーゼは、例えば血清中のフルクトサミン定量などの臨床用酵素として有用である。
なお、本発明明細書に記載の塩基配列の記号及びアミノ酸配列の記号は、当該分野における慣用略号に基づくもので、それらの例を以下に列記する。また、すべてのアミノ酸はL体を示すものとする。
【0034】
DNA:デオキシリボ核酸
A:アデニン
T:チミン
G:グアニン
C:シトシン
N:アデニン、チミン、グアニンまたはシトシン
R:アデニンまたはグアニン
Y:チミンまたはシトシン
Ala:アラニン
Arg:アルギニン
Asn:アスパラギン
Asp:アスパラギン酸
Cys:システイン
Gln:グルタミン
Glu:グルタミン酸
His:ヒスチジン
Ile:イソロイシン
Leu:ロイシン
Lys:リジン
Met:メチオニン
Phe:フェニルアラニン
Pro:プロリン
Ser:セリン
Thr:スレオニン
Trp:トリプトファン
Tyr:チロシン
Val:バリン
【0035】
【発明実施の形態】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、常法に従い、と記述した操作は、例えばマニアティスらの方法(T.maniatis.,et al.,Molecular Cloning Second Edition.,Cold Spring Harbor Laboratory、1989年)や、市販の各種酵素、キット類に添付された手順に従えば実施できるものである。また、実験に使用した組換えDNA実験酵素試薬(制限酵素など)、プラスミドDNA、キット類は特に指摘しない限り宝酒造株式会社より購入したものである。
【0036】
【実施例1】
<染色体DNAの分離>
フサリウム・オキシスポルムIFO−9972菌株を2%のグルコース(和光純薬社製)、2%の酵母エキス(極東製薬工業社製)から成り、pH5.5に調整した培地100mlにて28℃で3日間振盪培養した後、この培養液を高速冷却遠心機(トミーCX−250型)を用い、6500rpm(7660G)で10分間遠心分離処理して、菌体を集菌した。
【0037】
次いで、この菌体を50mMの酢酸緩衝液(pH5.5)、100mMのエチレンジアミン4酢酸(以下EDTAと略称する)(pH8.0)及び15%のシュクロースからなる溶液20ml中に懸濁し、最終濃度が2mg/mlとなるようにノボザイム(ノボノルディスク社製)を加え、25℃で30分間処理して菌株の細胞壁を破壊した。
【0038】
次に、これに10の%のSDS(シグマ社製)水溶液1mlを加えて、37℃で20分間処理した後、これに等量のフェノール:クロロホルム=1:1混合液を加え、10000rpm(12080G)で10分間遠心分離処理して水相を回収した。この水相に2倍量のエタノールを静かに重層し、ガラス棒でゆっくり撹拌しながら、DNAをガラス棒にまきつかせて分離した後、10mMのトリス−塩酸(pH8.0)及び1mMのEDTAからなる溶液20mlで溶解し、次いでこれに等量のフェノール:クロロホルム=1:1混合液を加え、前記と同様に処理して水相を分取した。
【0039】
次に、この水相に2倍量のエタノールを加えて前記の方法でもう一度DNAを分離した後、10mMのトリス−塩酸(pH8.0)及び1mMのEDTAからなる溶液2mlに溶解した。
【0040】
【実施例2】
<フサリウム・オキシスポルムIFO−9972遺伝子ライブラリーの作製>
実施例1で得られたフサリウム・オキシスポルムIFO−9972染色体5μgを30単位の制限酵素BglIIを用い、常法に従って37℃で2時間切断処理した。また、5μgのプラスミドベクターpUC119を30単位の制限酵素BamHIを用い、常法に従って37℃で2時間切断処理した。さらに5’末端を脱リン酸化するために、反応液に1単位のアルカリ性ホスファターゼを加えて65℃で2時間処理した。
【0041】
次に、前記のようにして得られた2種のDNA溶液を混合し、この混合液に等量のフェノール:クロロホルム=1:1混合液を加えて処理した後、遠心分離処理によって水相を分取した。次いで、この水相に1/10量の3Mの酢酸ナトリウム溶液を加え、さらに2倍量のエタノールを加えて遠心分離処理することによってDNAを沈澱させた後、減圧乾燥した。
【0042】
このDNAを100単位のT4DNAライゲースを用い、常法に従って16℃で16時間ライゲーションを行った。
次に、これを常法に従いコンピテント細胞としたエシェリヒア・コリDH1(ATCC33849)[F−、recA1、endA1、gyrA96、thi−1、hsdR17(rk−、mk+)、SupE44、relA1、λ−](T.maniatis.,et al. Molecular Cloning:Cold Spring Harbor,504−506ページ、1982年)にトランスフォーメーションし、これをアンピシリン50μg/ml含有3.7%のBHI寒天培地(DIFCO社製)にて、37℃で一昼夜培養し、約8000株の形質転換微生物を得て、フサリウム・オキシスポルムIFO−9972遺伝子ライブラリーとした。
【0043】
【実施例3】
<放射性オリゴヌクレオチドプローブの作製>
フルクトシルアミンオキシダーゼ精製標品のリシルエンドペプチダーゼ処理断片、及びアスパラギニルエンドペプチダーゼ処理断片のアミノ酸配列を調べたところ、配列表2から7のアミノ酸配列で表される6領域のアミノ酸配列が決定された。
【0044】
この情報をもとに遺伝子の5’末端側から塩基配列を予想した。この予想された塩基配列には種々の組合せが考えられるので、組合せの数が少ない部分のオリゴヌクレオチドを設計した。すなわち、配列表2のアミノ酸配列の59番目のPheから65番目のAspをコードする20塩基のDNA配列を予想し、64通りの全ての塩基配列を有するDNAが混在するオリゴヌクレオチドFOD1を設計し、外部機関(BEX社)に合成依頼して作成した。FOD1のDNA配列を配列表8に示した。
【0045】
このようにして得られたオリゴヌクレオチド50ngを370キロベクレルの[γ−32P]ATP(アマシャムジャパン社製)の存在下、8.5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを用い、常法に従って37℃で30分間反応させて、放射性同位元素32Pを取り込ませ、放射性オリゴヌクレオチドプローブを作製した。
【0046】
【実施例4】
<フルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子含有DNAのスクリーニング>
実施例2で得たフサリウム・オキシスポルムIFO−9972遺伝子ライブラリー、すなわち平板寒天培地上のアンピシリン耐性コロニーの上に、ナイロンメンブレンフィルター(アマシャムジャパン社製、ハイボンド−N+)を重ね、フィルター上に該コロニー菌体の一部を移行させた後、このフィルターをアルカリ変性溶液(1.5MのNaCl、0.5NのNaOH)中に5分間浸し、さらに中和溶液(0.5Mのトリス−塩酸(pH7.0)、3MのNaCl)に5分間浸漬後、乾燥させた。
【0047】
次に、このフィルターを80℃で2時間加熱し、菌体中にあったプラスミドDNAをフィルターに固定した。さらに、このフィルターをプレハイブリダイゼーション溶液(1.8MのNaCl、0.18Mのクエン酸ナトリウム、0.05%の二リン酸ナトリウム、0.1%のSDS、0.1%のフィコール、0.1%のポリビニルピロリドン、0.1%のウシ胎児血清アルブミン(以下BSAと略称する)(シグマ社製)、0.01%のサケ精子DNA(ベーリンガー・マンハイム社製))に浸し、37℃で一昼夜プレハイブリダイゼーションを行った。
【0048】
その後、フィルターをハイブリダイゼーション溶液(1.8MのNaCl、0.18Mのクエン酸ナトリウム、0.05%の二リン酸ナトリウム、0.1%のSDS、0.1%のフィコール、0.1%のポリビニルピロリドン、0.1%のBSA、0.002%のエシェリヒア・コリ由来トランスファーRNA(ベーリンガー・マンハイム社製))に浸した後、実施例3で得られた放射性オリゴヌクレオチドプローブを加え、37℃で24時間ハイブリダイゼーションを行った。
【0049】
ハイブリダイゼーション後、洗浄液(1.8MのNaCl、0.18Mのクエン酸ナトリウム、0.05%の二リン酸ナトリウム)でフィルターを3回洗浄した後、42℃の洗浄液に10分間浸し、余分なプローブを洗い落とした。ついで、フィルターを風乾後、X線フィルム(富士写真フィルム社製、NewRXO−H)に重ね、遮光下−80℃で24時間オートラジオグラフィーを行った。
【0050】
その後、フィルムを現像したところ、ポジティブシグナルを示すコロニーを確認した。
該コロニーをフルクトシルアミンオキシダーゼをコードするDNAを含む形質転換体エシェリヒア・コリDH1・pFOD1と命名した。
【0051】
【実施例5】
<組み換えプラスミドの抽出>
上記実施例4で取得したエシェリヒア・コリDH1・pFOD1を、3.7%のBHI培地にて37℃で一昼夜培養した後、常法に従ってフルクトシルアミンオキシダーゼをコードするDNAを含む組み換えプラスミドpFOD1を抽出した。該プラスミド中のフサリウム・オキシスポルムIFO−9972染色体由来の部位のDNA配列をジデオキシ法(Science、第214巻、1205−1210ページ、1981年)により決定し、フルクトシルアミンオキシダーゼをコードする全DNAが含まれていることを確認すると共に、その全塩基配列を決定した。
【0052】
また、今回解析したフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子がコードするアミノ酸配列は、実施例3で決定したフルクトシルアミンオキシダーゼの6種の部分アミノ酸配列とも完全に一致した。さらに配列表1のDNA配列の78番目のTと79番目のCの間に、48bpのイントロンが存在することが判明した。
【0053】
【実施例6】
<エシェリヒア・コリ宿主フルクトシルアミンオキシダーゼ発現用プラスミドの作製>
フルクトシルアミンオキシダーゼの遺伝子中のイントロンをクンケルの部位特異変異法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.第82巻、488ページ、1985年)により除去するために、DNA変異用オリゴヌクレオチドプライマーFOD2を設計し、外部機関(BEX社)に合成依頼して作成した。FOD2のDNA配列を配列表9に示した。また、実施例5で得られたプラスミドpFOD1を部位特異変異用実験キットMutan−K(宝酒造社製)に添付されたエシェリヒア・コリCJ236株に常法に従って導入し、添付のマニュアルに従って1本鎖DNA状のpFOD1を調製した。この2μgの一本鎖DNA状のpFOD1を鋳型DNAとし、1μgのFOD2を変異用プライマーとして、Mutan−Kを用い、添付のマニュアルに従って部位特異変異を行い、イントロンを除いたDNA鎖を含有するプラスミドを合成した。
【0054】
このプラスミドをMutan−Kに添付のエシェリヒア・コリBMH71−18mutS株に常法に従って導入し、組換え菌体数コロニーから組換えプラスミドを抽出し、10単位の制限酵素SalIで、添付のマニュアルに従って37℃で2時間切断処理し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分析し、新たにSalI部位が導入されているプラスミドを確認、選択した。
【0055】
この組換えプラスミドを再びエシェリヒア・コリDH1株に形質転換し、組換えプラスミドを抽出し、SalI部位が導入されていることを確認した。以上により得たプラスミドをpFOD2と命名した。
次にフルクトシルアミンオキシダーゼ構造遺伝子の上流と下流に制限酵素認識部位をクンケルの部位特異変異法により導入するために、オリゴヌクレオチドFOD3とFOD4を設計し、それぞれ外部機関(BEX社)に合成依頼して作成した。FOD3のDNA配列を配列表10に、FOD4のDNA配列を配列表11に示した。また、プラスミドpFOD2を部位特異変異用実験キットMutan−Kに添付されたエシェリヒア・コリCJ236株に常法に従って導入し、添付のマニュアルに従って一本鎖DNA状のpFOD2を調製した。この2μgの一本鎖DNA状のpFOD2を鋳型DNAとし、1μgのFOD3と1μgのFOD4を変異用プライマーとして、Mutan−Kを用い、添付のマニュアルに従って部位特異変異を行い、NcoIとHindIIIの認識部位が追加されたDNA鎖を含有するプラスミドを合成した。
【0056】
このプラスミドをMutan−Kに添付のエシェリヒア・コリBMH71−18mutS株に常法に従って導入し、組換え菌体数コロニーから組換えプラスミドを抽出し、10単位の制限酵素NcoIとHindIIIで、添付のマニュアルに従って37℃で2時間切断処理し、0.7%アガロースゲル電気泳動で分析し、新たにNcoIとHindIIIの認識部位が導入されているプラスミドを確認、選択した。以上により得たプラスミドをpFOD3と命名した。
【0057】
さらに5μgのpFOD3を用い、制限酵素NcoI及びHindIIIそれぞれ10単位で添付のマニュアルに従って37℃で2時間切断処理し、0.7%アガロースゲル電気泳動で約1.4kbのFOD遺伝子を含むDNA断片を分離回収した。一方、5μgのエシェリヒア・コリ宿主プラスミドベクターpTV119Nを前記と同様に切断し、50mMのトリス−塩酸(pH8.0)存在下に、1単位のアルカリ性フォスファターゼを加え、65℃で2時間処理した。
【0058】
次いで、前記のDNA溶液を混合し、実施例2と同様にライゲーション、トランスフォーメーションを行い、50μg/mlのアンピシリンを含有する3.7%のBHI寒天培地にまき、25℃で一昼夜培養した。このようにして、プラスミドベクターpTV119NのNcoI及びHindIII部位にフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を含む約1.4kbのDNA断片が挿入されたプラスミドpFOD7を保持する形質転換微生物を取得し、実施例3の方法で組換えプラスミドpFOD7を得た。
【0059】
【実施例7】
<エシェリヒア・コリ内でのフルクトシルアミンオキシダーゼの活性発現>
実施例6で作製したプラスミドpFOD7を保持する形質転換微生物をアンピシリン50μg/ml及び1mMのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を含有する3.7%のBHI培地にて37℃で一昼夜培養した後、培養液を15000rpmで1分間遠心分離処理して沈澱を回収した。この沈澱に、該培養液と同量の10mMのトリス−塩酸(pH8.0)を加え、超音波破砕を行った。
【0060】
この破砕液を適宜希釈した後、20μlとり、前記に示した酵素活性測定法にてフルクトシルアミンオキシダーゼ活性を定量した。なお、比較のためにpTV119Nのみをトランスフォーメーションしたエシェリヒア・コリDH1の破砕液についても前記と同様の処理を行い、フルクトシルアミンオキシダーゼ活性を測定した。その結果、プラスミドpFOD7を保持した形質転換微生物での活性は0.08U/mlであったが、pTV119Nを持つものの活性は検出できなかった。これより、フルクトシルアミンオキシダーゼ活性をもつ形質転換体が得られていることが確認された。この形質転換体をエシェリヒア・コリDH1・pFOD7(Escherichia coli・DH1・pFOD7)(微工研寄託、FERM P−15943)と命名した。
【0061】
このようにして得られたフルクトシルアミンオキシダーゼを単離・精製し、発現蛋白の理化学的性質を確認し、フサリウム・オキシスポルムIFO−9972のフルクトシルアミンオキシダーゼと同一であることを確認した。
【0062】
【発明の効果】
本発明によるとフサリウム・オキシスポルムIFO−9972由来の染色体DNAライブラリーから、フルクトシルアミンオキシダーゼを発現する遺伝子DNAをスクリーニングし、これを用いて構築された発現ベクターを例えばエシェリヒア・コリに属する微生物に導入することによって、得られた形質転換微生物は効率よくフルクトシルアミンオキシダーゼを生産することができる。
【0063】
また、本発明によって、初めてフルクトシルアミンオキシダーゼの全アミノ酸配列及びこのアミノ酸をコードする遺伝子DNAの塩基配列が決定できたので、該酵素の基質及び補酵素特異性の変換や耐熱性の向上などのプロテインエンジニアリングが可能となった。
【0064】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1はプラスミドpFOD7の構造を示す模式図である。
図中の「fod」はフルクトシルアミンオキシダーゼ遺伝子を、「ap」はアンピシリン耐性遺伝子を、「lac」はβ−ガラクトシダーゼ遺伝子由来プロモーター配列を、「ori」はプラスミド複製起点を示す。また、「NcoI」、「HindIII」は制限酵素認識部位を、「pTV119N」、「F.oxysporum DNA」はプラスミドの各領域の由来を示す。

Claims (3)

  1. 配列表1の塩基配列の1から1320で表される塩基配列を有するDNAによって形質転換された微生物であるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを生産する実質上純粋なエシェリヒア・コリDH1・pFOD7(微工研寄託:FERM P−15943)を培地に培養し、次いでその培養物からフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを採取することを特徴とするフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの製造法。
  2. 培養において28℃以下で培養する請求項記載のフルクトシルアミンオキシダーゼの製造法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造法によって得られたフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの臨床用酵素としての使用。
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