JP4479354B2 - 亜鉛系めっき鋼板の表層酸化膜の膜厚測定方法 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼板の表層酸化膜の膜厚測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ10nm〜100nmの酸化膜の厚さを迅速に測定する技術に関するものである。
鉄鋼、半導体、ディスプレーなどの製品分野では厚さ数10〜数100 nmの表層皮膜が製品特性の支配因子になっている場合がある。鉄鋼製品分野でこのような表層の極薄膜が関係する製品特性の一つにプレス成形性がある。自動車や家電製品に使用される鋼板には、近年、高耐食性の観点から亜鉛系のめっきが施される場合が多いが、このめっき鋼板をプレス加工して難成形部品を製造する場合、加工の厳しい部位で鋼板のプレス割れが起こりやすいという問題がある。この亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性をプレス時に高粘度の潤滑油を使用することで改善する方法が知られているが、この方法では脱脂工程を強化しないと化成処理や塗装などの後工程でムラが発生するという問題がある。
このような後工程での懸念が少ない方法として、めっき層の表面に潤滑作用のある皮膜を形成させる方法が知られている。例えば、特許文献1〜3には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電界処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、亜鉛酸化物を主体とする酸化膜を形成させて溶接性または加工性を向上させる技術が開示されている。特許文献4には、亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸ナトリウム5〜60g/lを含みpH2〜6の水溶液にめっき鋼板を浸漬するか、電解処理を行うか、または、上記水溶液を塗布することにより、リン酸化物を主体とする酸化膜を形成して、プレス成形性及び化成処理性を向上させる技術が開示されている。特許文献5には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処理、または加熱処理により、Ni酸化物を生成させることにより、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術が開示されている。
このようなめっき層の表面に潤滑作用のある酸素含有皮膜(酸化膜)を形成させる方法では、酸化膜の厚さを迅速に評価することが製品特性の制御と管理を行う上で大変重要である。このような酸化膜厚を評価する技術としては、(1)オージェ電子分光法やX線光電子分光法などの表面分析手法とイオンエッチングを組み合わせて深さ方向の情報を測定する方法、(2)断面試料を作製して膜厚方向から透過電子顕微鏡で観察する方法、(3)光の薄膜中での干渉効果を利用するエリプソなどの光学的手法、などが知られている。
以下に先行技術文献情報について記載する。
特開昭53-60332号公報 特開平2-190483号公報 特開2004-3004号公報 特開平4-88196号公報 特開平3-191093号公報
溶融亜鉛系めっき鋼板の場合、めっき表面の酸化膜が数nmレベルの膜厚でもプレス成形性の改善に効果があり、特許文献3等に開示されている通り、それが10nm以上になると特に改善効果が大きい。したがって、めっき表面の酸化膜の厚さを迅速に測定できれば、その測定結果を製造プロセスにフィードバックすることによってプレス成形性に優れた製品の歩留まりを向上させることが可能になり、また、出荷判定に利用することによって製品の品質管理を行うことが可能になる。
先に述べたこのような極薄の酸化膜の厚さ評価に利用できる(1)〜(3)の方法のうち、(1)と(2)は、測定もしくは試料調整に長時間を要するため、プロセスへのフィードバックどころか出荷判定での利用さえも極めて困難である。例えば、(1)の方法では、試料を超高真空中で測定する必要があるため、予備排気装置を備えた装置を使用しても排気に数10分ないし数時間を要し、更に、エッチング速度が既知のイオンエッチングを繰り返して酸化膜厚を測定するため、試料1個の測定に最低数時間かかる。また、(2)の方法では、試料1個の調整に最低半日以上、調整した試料の透過電子顕微鏡観察に更に1時間程度、撮影した電子顕微鏡写真の現像に更に数時間かかるため、試料1個の膜厚評価に最短でも1日前後の時間を要する。
(3)の干渉作用を利用した光学的手法は、シリコンウエハー上に形成した熱酸化膜のように平坦な下地の上に評価すべき薄膜がある試料の膜厚を評価するのに適している。しかしながら、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のように、調質圧延に起因する凹凸や合金化反応に起因する微細な凹凸が下地めっき鋼板に存在する場合、膜厚の測定精度を確保することが難しい。
このように、溶融亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された極薄の酸化膜の厚さを、最低限、出荷が滞ることのないスピードで精度良く測定できる技術は知られていないのが現状である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ10nm〜100nmの酸化膜の厚さを迅速かつ高精度で測定する技術を提供することを主な目的とする。また、測定した酸化膜厚からそれを備えためっき鋼板のプレス成形性を評価することを主な目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro-Analyzer; EPMA(試料に電子線を照射することによって発生する試料含有元素の特性X線の強度を測定することを基本機能とする分析装置))をある特定の条件で用いると、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ数10nmの酸化膜厚を精度良く測定できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1) 電子線マイクロアナライザーもしくは波長分散型X線検出器を備えた走査電子顕微鏡を用いて、3〜6kVに加速した電子線を表層に酸化膜が形成された亜鉛系めっき鋼板の表面に照射し、それによって発生した酸素のKα線の強度を検出器とその後段の波高分析器を通して亜鉛のL線の二次線の影響を除いて測定し、前記で測定した酸素のKα線の強度から酸化膜の膜厚を算出することを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ10〜100nmの酸化膜の膜厚測定方法(第1発明)。
(2)鏡面研磨されたシリコンウエハー上に形成された膜厚既知の酸化シリコン皮膜を用いて酸素のKα線の強度と酸化膜厚の関係を表わす検量線を作成し、この検量線を用いて、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された酸化膜の膜厚を算出することを特徴とする(1)記載の酸化膜の膜厚測定方法(第2発明)。
本発明によれば、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ10nm〜100nmの酸化膜の厚さを迅速に精度良く測定することが可能になる。また、この測定した酸化膜厚から該めっき鋼板のプレス成形性の良否を評価できるようになる。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro-Analyzer; EPMA(試料に電子線を照射することによって発生する試料含有元素の特性X線の強度を測定することを基本機能とする分析装置))をある特定の条件で用いると、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ数10nmの酸化膜厚を精度良く測定できることを見出した。
尚、本発明おいて、酸化膜は微視的に不連続な酸素含有物であっても構わず、その場合の膜厚は緻密で一様な皮膜に換算した場合の厚さという意味である。
EPMAを用いて亜鉛系めっき鋼板上の酸化膜に含まれる酸素の特性X線(O-Kα線)を測定する場合、EPMAに用いられる波長分散型X線分析器では酸化膜と下地に含まれる亜鉛の特性X線(Zn-Lα線、Zn-Lβ線)の二次線が、酸素の特性X線の検出位置(検出角度)と重なるという現象に留意しなければならない。この重なりは、亜鉛の特性X線が分光結晶によって二次の回折を起こすために生じるものである。この点に留意することなく、通常の加速電圧(15kV程度)で亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された極薄の酸化膜から酸素の特性X線を検出しようとしても、実際には、下地から発生した亜鉛の特性X線を大量に検出することになる。
しかも、この点に気付いても、通常の加速条件では、波高分析器を使って亜鉛の重なりの影響を効果的に除くことができない。波高分析器とは、特性X線のエネルギーの違いを利用して注目元素の特性X線だけを選別する機能を有する機器である。
そこで本発明者らは、電子線が酸化膜の全膜厚領域でほぼ均等に酸素の特性X線を発生させ、しかも、下地に含まれる亜鉛からの特性X線の発生を極力抑制できる測定条件について検討を重ねた。その結果、亜鉛系めっき鋼板上の高々数10nmの酸化膜を測定対象とする場合、3〜6kVの加速電圧で測定するのが最適であるとの知見を得た。この理由を説明するため、亜鉛系めっきを被覆する厚さ100nmの酸化亜鉛(ZnO)の薄膜に細く絞った電子線を種々の加速電圧で照射した場合のコンピュータシミュレーションの結果を図1に示す。このシミュレーションで膜厚を100nmに設定したのは、本発明が対象とする酸化膜の膜厚の上限が100nmであることに基く。
酸素から特性X線を発生させるためには、酸素の吸収端エネルギーに相当する0.53kVを超える加速電圧で電子線を試料に照射して酸素をイオン化する必要がある。この吸収端エネルギーに相当する電圧で加速された電子は試料の最表面に衝突して少しでもエネルギーを失った瞬間に酸素をイオン化する能力を失う。したがって、実際に酸化膜の厚さを反映する強さの特性X線を発生させるためには電子線を更に高い加速電圧で加速する必要がある。図1からわかるように、発生する酸素の特性X線強度が100nmの酸化膜厚まで膜厚と共に増加するようにするためには、最低3kVの加速電圧で加速する必要がある。
一方、加速電圧が高すぎると、下地の亜鉛からの特性X線が大量に発生するため、波高分析器を利用してもそれが、酸素の検出位置で検出されることを避けられないため、酸素の特性X線だけを効率的に計測することができなくなる。この制約条件で決まる加速電圧の上限が6kVである。
EPMAでは電子線を1μmφ前後のプローブ径まで絞って試料表面の任意の場所を測定することができる。そのため、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のように凹凸の激しい下地の上に形成された酸化膜の場合でも、調質圧延時に形成される平坦部に電子線を照射すれば下地の粗さに影響されずにその部分の酸化膜厚を測定できる。従って、本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板ならびに溶融亜鉛めっき鋼板(めっき後合金化処理されていない亜鉛めっき鋼板)の平坦部表層に形成された酸化膜の膜厚測定法として好適である。また、試料ステージをコンピュータで制御しながら駆動させることが可能なため、電子線プローブの照射位置をこの方法で走査してマクロ的なエリアでの酸化膜厚の分布や平均酸化膜厚を測定することもできる。
シリコンウエハー上に形成された膜厚が既知の酸化シリコン皮膜などの市販の試料を標準試料として、これを未知試料と一緒に測定することにより、測定結果を標準化することも容易である。このような標準試料の酸素の特性X線強度と酸化膜厚の関係を表わす検量線を作成しておけば、未知試料の酸化膜厚を標準試料の酸化膜厚に換算する形で表わすこともできる。
EPMAの装置構成は波長分散型のX線分光器を備えた走査電子顕微鏡とほぼ同じである。したがって、EPMAの代わりに波長分散型X線検出器を備えた走査電子顕微鏡を用いても同様の酸化膜厚測定を行うことができる。
本発明が対象とする亜鉛系めっき鋼板のめっき成分には、亜鉛の他に、鉄、クロム、ニッケル、シリコン、アルミニウム、マグネシウム、鉛、アンチモン、錫、マンガン、チタン、リチウム、銅などの元素が添加されていても本発明の効果は損なわれない。
酸化膜厚を精度良く測定するためには、試料を測定に使用するEPMAの試料ステージに載る大きさに切り出した後、トルエンやエタノールなどの有機溶媒系脱脂液で最低数分間超音波洗浄して試料に付着した汚染物を事前に除去するのが望ましい。
本発明を実施するためのEPMAは、例えば、島津製作所のLS7A人工結晶などの装置メーカー指定の酸素用分光結晶、比例計数管、波高分析器を備えたものであれば、市販の装置で構わない。
EPMAの加速電圧は3〜6kVの範囲であれば良い。ビーム電流はエミッタ−に過負荷がかからない範囲で、比例計数管での検出効率が高くなるように設定する。市販のEPMAを、タングステンフィラメントをエミッタ−として使用する場合には100nA程度が適当である。
電子線プローブの直径は、目的に応じて設定する。例えば、調質圧延された亜鉛系めっき鋼板の狭い平坦部を狙うような場合は、最小に絞って使用するのが良い。但し、通常のEPMAを上記の加速電圧で使用する場合、最小に絞っても1μm超のプローブ径となるのが普通で、しかも、試料内で電子線は照射位置から0.2μm程度拡散する。そのため、数μmしかない平坦部を測定するような場合には、ジルコニアなどの発光性の標準試料を用いて最小に絞った状態でのプローブ径を確認し、プローブ径が充分収まるような平坦部であることを確認した上で測定するように注意した方が良い。
既に述べた通り、亜鉛上の酸化膜の酸素の特性X線を測定する場合、酸素と同じ検出位置に現れる亜鉛の特性X線を除くように波高分析器を設定しなければならない。この様子を図2〜4に示す。図2はシリコンウエハー上に形成した酸化シリコン膜の酸素を島津製作所製EPMA-1600を用いて5kVで測定した例である。(a)波高分析器をオープンにした場合、(b)酸素の特性X線エネルギーにウインドウ幅を合わせた場合、(c)ウインドウ幅を更に狭めた場合、の3条件での結果を示しており、ウインドウ幅が狭まるにつれて検出ピークの高さが低くなっている様子がわかる。
これに対して、亜鉛上に形成した酸化亜鉛の薄膜を同一条件で測定した結果を図3に示す。(a)の波高分析器をオープンにした状態では検出ピークのトップが図2の位置よりも若干長波長側(右側)にずれており、更に、メインピークの長波長側にサブピークが現れているのがわかる。これは酸素の特性X線(酸素のKα線)の検出位置に亜鉛のLβ線が重なり、その長波長側に亜鉛のLα線が更に重なって検出されるためである。この図では亜鉛のLα線よりもLβ線の方が高いという印象を受けるかもしれないが、これは、亜鉛のLβ線が酸素のKα線位置に重なっているからであって、本来はLα線の方がLβ線よりも強い。
この亜鉛のLα線のピークが無視できる程度にウインドウ幅を狭めたのが(b)の状態である。この状態ではメインピークの位置が図2の酸化シリコン膜の酸素の位置とほぼ同等の位置になっていることがわかる。このウインドウ幅を狭めるほど亜鉛のLα線・Lβ線の検出は抑制されるが、それと同時に酸素のKα線の検出効率も下がって行く。この状態が(c)である。したがって、波高分析器を設定する場合には亜鉛のLα線のピークが無視できる範囲で広めのウインドウ幅になるようこれを設定することが重要である。このようにウインドウ幅を設定する方法としては、膜厚が既知(例えば96nm)の酸化シリコン皮膜が載ったシリコンウエハーを使って酸素のKα線をまずウインドウオープンの状態で測定し、その後、ウインドウオープン時の測定強度が80%まで減衰するようにウインドウ幅を設定する方法を例示できる。
図4は、図3と同じデータを加速電圧だけ15kVに変えて測定した場合のスペクトルである。この図からわかるように、このような通常の加速電圧では下地から発生する大量の亜鉛Lα線・Lβ線の強度が酸素Kα線の検出位置に重なるため、波高分析器を(c)の状態に設定しても酸素のKα線だけを効率的に検出することはできない。
計測時間は許容しうるトータルの測定時間と相対変動を考慮して決定するのが望ましい。通常、統計的な相対変動は測定カウント数をNとした場合、ルートN分の1となるため、例えば、1万カウント以上計測できれば相対変動は1%以下に抑えることができる。このような考え方から、通常、一点あたり数秒〜数10秒の範囲で測定するのが現実的である。
酸素の特性X線の強度を酸化膜厚に換算するには、鏡面研磨されたシリコンウエハー上に形成された膜厚既知の酸化シリコン皮膜を用いて作成した検量線を用いるのが効率的である。このような膜厚既知の酸化シリコン皮膜を特に好んで使用する主な理由は、このような皮膜が(オージェ電子分光法やX線光電子分光法などの)表面分析用の深さ方向分析用標準試料などの形で市販されていて調達が容易だからである。また、表面分析手法とイオンエッチングを組み合わせて膜厚を測定する従来技術と同じ標準試料に基づいて計算できるため、測定時間が迅速でありながら、得られる結果が従来技術での値と整合するという利点もある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
板厚0.8mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を調質圧延後、酢酸ナトリウム20g/lを添加したpH:2.0、液温:50℃の硫酸酸性水溶液に1秒間浸漬した後、所定時間放置した上で水洗・乾燥させることによって、めっき表面に亜鉛主体の酸化物(水酸化物も含む)を形成させた供試材を40枚作製し、これらの表裏面を酸化膜厚の測定に用いた。この際、放置時間を2〜60秒の範囲で変化させて、供試材の平坦部に形成される酸化膜の膜厚を調整した。このようにして作製した供試材を直径12mmに打ち抜き加工した後、トルエンで2分間、更にエタノールで1分間超音波洗浄し、これを温風乾燥してEPMAの試料ホルダーにセットした。
EPMAには島津製作所製EPMA-1600を使用した。測定時の加速電圧は5kV、ビーム電流は100nA、ビーム径は最小、分光結晶はLS7Aに設定して酸素のKα線を検出した。また、波高分析器は、発明の実施形態で説明した要領で酸素Kα線の最適値に設定した。酸素のKα線の測定に際しては、そのピーク位置に加えてバックグラウンド位置での強度も測定し、酸素Kα線の正味の強度が算出できるようにした。試料の測定位置は調質圧延で形成された平坦部とし、これを各試料とも10箇所を5秒間測定した後、各試料の平均酸素強度を算出した。
また、試料ステージには、これら一連の試料と一緒に、適当な大きさに癖開した膜厚96nmと20nmの酸化シリコン皮膜を形成したシリコンウエハーをセットし、これらの酸化シリコン皮膜からも酸素Kα線の正味の強度を算出できるようにした。2試料とも任意の10箇所を5秒間測定した後、それぞれの平均酸素強度を算出した。これらのデータを用いて酸化膜厚と平均酸素強度との検量線を作成し、供試材の酸化膜の厚さを酸化シリコン皮膜換算での酸化膜厚値として算出するようにした。
このようにして酸化膜厚を測定した供試材のプレス成形性を評価する手段として、平板摺動試験によってこれらの摩擦係数を測定した。平板摺動試験では、スライドテーブル上に固定した亜鉛めっき鋼板の表面に、押し付け荷重400kgfでビード工具を押し付けながらスライドテーブルを100cm/minで移動させて、亜鉛めっき鋼板とビードとの間にすべりを与えて試験した。この時のビードの押し付け荷重Nとスライドテーブルを移動させる力Fを、それぞれロードセルを用いて測定し、その比(F/N)から摺動時の摩擦係数を求めた。尚、測定面には予め洗浄油(プレトン社製R352L)を塗布した。ビードの鋼板接触面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面とした。このようにして求めた摩擦係数は、主に、プレス成形時のビード部の摺動特性を反映するため、この値が小さいほど同部分での摺動抵抗が小さく、プレス成形時の破断等が生じにくいと判断した。
このようにして測定した酸化膜厚と摩擦係数の関係を図5に示す。この図から分かるように、20nm付近までは酸化膜厚の増加に伴う摩擦係数の減少が著しい。従って、このようにして測定した酸化膜厚を管理すれば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス成形性における重要因子である摩擦係数を評価することが可能である。また、プレス成形性を考慮して摩擦係数に閾値を設けることでプレス成形性の要否を判断することが可能である。
放電ダルロールで調質圧延した板厚0.8〜1.2mmの範囲の種々の溶融亜鉛めっき鋼板を40mm角にせん断加工した後、トルエンで2分間、更にエタノールで1分間超音波洗浄し、これを温風乾燥して供試材とした。これらの溶融亜鉛めっき鋼板の表層に存在する酸化膜厚は保管環境等で無作為に形成されたもので、それゆえ、均一に全面を被覆しているとは限らない。このような場合には面分析を利用して平均的な酸化膜厚を測定する方法が有効である。
EPMAには日本電子製ERA-8600MXを使用した。測定時の加速電圧は3kV、ビーム電流は120nA、ビーム径は100μm、分光結晶はLDE1に設定して試料中央付近の20mm角のエリアを100μmピッチの200点×200点の条件でステージスキャンしながら酸素のKα線を測定した。この際の1点あたりの測定時間は20msecとした。波高分析器の設定や酸素Kα線の正味の強度を算出できるように設定する点は実施例1と同様である。この各点での正味の強度を平均して試料の平均酸素強度を求め、これを試料と一緒に測定した前述の酸化シリコン皮膜を使って引いた検量線で酸化膜厚に換算した。
このようにして酸化膜厚を測定した供試材のプレス成形性を評価する手段として、平板摺動試験によってこれらの摩擦係数を測定した。平板摺動試験の要領は実施例1と同様であるが、押し付け荷重は100、600kgfの2段階に設定して面圧を各々3.3、20Mpaに変化させて摩擦係数を測定した。尚、測定面には予め洗浄油(プレトン社製R352L)を塗布した。
このようにして測定した酸化膜厚と摩擦係数の関係を図6に示す。この図から分かるように、面圧が高いほど摩擦係数は下がる傾向にあり、いずれの面圧でも酸化膜厚が厚いほど摩擦係数が下がる妥当な結果が得られる。
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ10nm〜100nmの酸化膜の厚さを迅速に測定する方法として利用することができる。
本発明は、前記のようにして測定した酸化膜厚から該めっき鋼板の摺動性の良否を判断する方法として利用することができる。
亜鉛系めっき上の厚さ100nmの酸化亜鉛薄膜に種々の加速電圧で電子線を照射した場合の電子線の内部拡散挙動を表すモンテカルロシミュレーションの例である。 シリコンウエハー上に形成した酸化シリコン皮膜を用いて加速電圧5kVでウインドウ幅を変えた波高分析器条件で測定した酸素の特性X線スペクトルで、(a)はウインドウ幅がオープン、(b)は適性ウインドウ幅、(c)は狭すぎるウインドウ幅での結果を示す。 亜鉛上に形成した酸化亜鉛薄膜を用いて図2と同一条件で測定した酸素の特性X線スペクトルである。 図3と同じデータを加速電圧だけ15kVに変えて測定した場合のスペクトルである。 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の平坦部の酸化膜厚と摩擦係数の相関関係を示す図である。 溶融亜鉛めっき鋼板の平均酸化膜厚と摩擦係数の相関関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 電子線マイクロアナライザーもしくは波長分散型X線検出器を備えた走査電子顕微鏡を用いて、3〜6kVに加速した電子線を表層に酸化膜が形成された亜鉛系めっき鋼板の表面に照射し、それによって発生した酸素のKα線の強度を検出器とその後段の波高分析器を通して亜鉛のL線の二次線の影響を除いて測定し、前記で測定した酸素のKα線の強度から酸化膜の膜厚を算出することを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された厚さ10〜100nmの酸化膜の膜厚測定方法。
  2. 鏡面研磨されたシリコンウエハー上に形成された膜厚既知の酸化シリコン皮膜を用いて酸素のKα線の強度と酸化膜厚の関係を表わす検量線を作成し、この検量線を用いて、亜鉛系めっき鋼板の表層に形成された酸化膜の膜厚を算出することを特徴とする請求項1記載の酸化膜の膜厚測定方法。
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