JP3367478B2 - 蛍光x線分析装置 - Google Patents
蛍光x線分析装置Info
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- G01N2223/076—X-ray fluorescence
Description
関し、更に詳しくは、波長分散型(WD)蛍光X線分析
装置に関する。
の照射により試料から発生した蛍光X線を分光結晶で波
長分散させ、特定波長を有する回折X線を検出器に導入
する構成を有している。波長走査のために、分光結晶と
検出器とは所定の角度関係を保って回転駆動される。具
体的には、分光結晶及び検出器は、(1)式のブラッグの
条件式を満たすようにその角度が走査される。 2d・sin θ=n・λ …(1) d:分光結晶の格子間間隔 2θ:回折角 λ:入射蛍光X線の波長 n:回折次数 このような走査により検出器に導入されるX線の波長が
順次変化するから、その走査角(2θ)を横軸に、X線
強度を縦軸にとることによってX線スペクトルを作成す
ることができる。
回折X線(以下「一次線」という)と、他の元素の二次
以上の高次の回折X線(以下「高次線」という)とがほ
ぼ同一の走査角の位置に重なる可能性がある。このよう
な場合、それぞれのX線フォトンの持つエネルギには差
があるから、検出器においてX線フォトンに応じて生成
されたパルス信号の波高値を波高選別器で弁別し、一次
線に対応したパルス信号のみを選択して計数することに
より、高次線の影響を排除して、一次線によるX線強度
を取得する。
一波長のみでなく、蛍光X線の発生に関与する電子遷移
の状態に応じて、Kα(厳密にはKα1、Kα2)、Kβ
1、Kβ2、Kβ3、Lα1、Lα2、…などと呼ばれる複
数の波長の固有X線が存在する。このため、複数の異な
る元素を含む試料を分析する場合、X線スペクトルを基
に含有元素の定性分析、定量分析を行う際には、X線ス
ペクトルに現れているピークが何れの元素の何れの固有
X線であるのかを同定し、そのピークトップからX線強
度を求める、といった解析処理を実行している。
切に設定したとしても、試料に含まれる高含有量元素の
二次線以上のX線(高次線)によるパルス信号の一部
が、波高選別器で一次線によるパルス信号の波高を選択
するような弁別範囲に入ってしまう。このような波高選
別器で選択されたパルス信号を基に作成されたX線スペ
クトル(以下「一次線プロファイル」という)を利用し
てピークの同定や蛍光X線のピーク強度の算出を行おう
とすると、或る元素の一次線によるピークの走査角近傍
に他の元素の高次線によるピークが存在することがよく
あり、このような場合、得られたピークプロファイルか
らだけでは、何れの元素のスペクトルであるのかを判断
することができない。
広い範囲の一次線プロファイルを取得し、他の元素の高
次線が重ならないような波長の短い元素のピークから同
定を行い、順次波長の長い元素のピークに対して、それ
までに同定した含有元素の情報を基にして一次線と高次
線との重なりがあるか否かを判断するようにしている。
また、一次線によるピークと高次線によるピークの重な
り部分の評価に関しては、対象とする元素の一次線によ
るピークと高次線によるピークとの強度比を、予め標準
試料を測定することにより求めておき、それを参照しな
がら評価するようにしている。
作成する場合、上記(1)式においてn=1であるから、
2d・sin θ=λ≦2dを満たすように、波長λよりも
2dが長いような格子面間隔を有する分光結晶を用いな
ければならない。従って、軽元素から重元素まで広い元
素範囲の測定を行う場合、或る1種類の分光結晶でもっ
てこのような幅広いスペクトルの全波長をカバーするこ
とは不可能である。そのため、スペクトルの波長範囲に
応じた格子面間隔を有する分光結晶を複数用意し、分光
結晶を交換しながら、各分光結晶毎に分光結晶及び検出
器を所定角度範囲で走査して測定を行う必要があった。
そのため、装置は複数の分光結晶を備えておかねばなら
ず、その交換のための機構が必要であって、装置が大型
化すると共にコストも高いものとならざるをえなかっ
た。また、分光結晶及び検出器を同一の角度範囲で複数
回走査しなければならず、長い測定時間を要していた。
際に必要とされる実験データは、元素毎に相違するのは
勿論のこと、たとえ元素が同一であっても、分光結晶や
スリットなどの分析条件毎に異なり、更にはそのような
分析条件を同一にしたとしても装置毎に異なってしま
う。そのため、正確な評価を行うには、前もって膨大な
実測データを取得する必要があり、分析準備の手間が非
常に負担であった。
成されたものであり、その第1の目的は、或る元素の一
次線によるピークと他の元素の高次線によるピークとの
重なりを正確に判別及び評価することにより、定性分析
及び定量分析の確度を向上させることができる蛍光X線
分析装置を提供することである。また、本発明の第2の
目的は、上記のような評価を行うために予め用意してお
く実測データの量を大幅に削減することにより、作業者
の負担を軽減すると共に分析作業の効率化を図ることが
できる蛍光X線分析装置を提供することにある。更に、
本発明の他の目的は、従来のように複数の分光結晶を交
換しつつ測定を繰り返す必要がなく、1種類の分光結晶
でもって短時間で分析を終了させると共に、装置自体の
コストも低減することができる蛍光X線分析装置を提供
することにある。
に成された本発明に係る第1の蛍光X線分析装置は、試
料から発生する蛍光X線を、所定の角度関係を保って走
査される分光結晶と検出器とで波長分散及び検出する波
長分散型蛍光X線分析装置において、 a)所定波高弁別範囲に入る検出器出力を選別し、その出
力に基づいて走査角に対するX線強度を示す一次線プロ
ファイルを作成する一次線プロファイル作成手段と、 b)前記所定波高弁別範囲よりも高い領域に設定された波
高弁別範囲に入る検出器出力を選別し、その出力に基づ
いて走査角に対するX線強度を示す高次線プロファイル
を作成する高次線プロファイル作成手段と、 c)複数の対象元素に関して、予め測定しておいた一次線
によるピーク強度と高次線によるピーク強度との比、又
はそれに相当する情報を記憶させておく記憶手段と、 d)前記一次線及び高次線プロファイルに存在するピーク
の同定を行うデータ解析手段であって、或る元素の一次
線によるスペクトルと他の元素の高次線によるスペクト
ルとが重畳してピークが形成されている可能性がある場
合、前記記憶手段に記憶しておいた情報を基に、高次線
プロファイルに存在するピークにおける一次線又は高次
線の寄与を判断すると共に、一次線プロファイルに存在
するピークにおける一次線又は高次線の寄与を判断し、
それによりそれぞれのピークの同定を行うデータ解析手
段と、を備えることを特徴としている。
置は、 a)試料から発生する蛍光X線が入射されたとき、所定の
波長範囲に対応してブラッグ条件式を満たす回折X線を
発生する分光結晶と、 b)該分光結晶による回折X線を検出する検出器と、 c)前記分光結晶と検出器とを所定の角度関係を保って回
転させる波長走査手段と、 d)互いに相違する波高弁別範囲に入る検出器出力をそれ
ぞれ選別し、その出力に基づいて走査角に対するX線強
度を示す複数のプロファイルをそれぞれ作成するプロフ
ァイル作成手段と、 e)最も低い領域に設定された波高弁別範囲に対応する一
次線プロファイルに存在するピークと、その波高弁別範
囲よりも高い領域に設定された波高弁別範囲に対応する
高次線プロファイルに存在するピークとを相互に参照し
て、各ピークの同定を行うデータ解析手段と、を備える
ことを特徴としている。
体的な実施態様としては、一次線プロファイル作成手段
は、一次線を有効に弁別するように波高弁別範囲が設定
された第1波高選別器と、該第1波高選別器により選別
されたパルス信号を計数する第1計数手段とを含み、他
方、高次線プロファイル作成手段は、二次以上の高次線
を有効に弁別するように波高弁別範囲が設定された第2
波高選別器と、該第2波高選別器により選別されたパル
ス信号を計数する第2計数手段とを含み、角度走査時
に、一次線プロファイルと高次線プロファイルとを並列
に取得する構成とすることができる。
高次線プロファイル作成手段は、一次線を有効に弁別す
るような波高弁別範囲と二次以上の高次線を有効に弁別
するような波高弁別範囲とを択一的に設定可能な波高選
別器と、該波高選別器により選別されたパルス信号を計
数する計数手段とを含み、少なくとも2回の角度走査時
に、それぞれ一次線プロファイルと高次線プロファイル
とを別個に取得する構成とすることができる。
置においても同様に、プロファイル作成手段は、互いに
波高弁別範囲の相違する複数の波高選別器を並列に備え
た構成とし、複数のプロファイルを一回の角度走査によ
って同時に取得することもできるし、また、一個の波高
選別器において波高弁別範囲を変えながら複数回の角度
走査を行って、複数のプロファイルを異なる時間におい
て取得するように構成することもできる。
は、高次線プロファイルは一個に限定されるものではな
く、二次以上の高次線を更に、二次、三次、四次、…等
複数の回折次数に対応したパルス信号を選択するように
波高弁別範囲を設定し、各次数のX線に対応したプロフ
ァイルを取得する構成とすることができる。
装置では、上記データ解析手段は、一次線プロファイル
及び高次線プロファイルに対して、通常のピーク同定処
理を行い、各ピークに対応する元素名、固有X線の種類
及び回折次数の候補を挙げる。或るピークに対して、或
る元素Bの高次線と、他の元素Aの一次線との両方が候
補に挙がっている場合、記憶手段に記憶させておいた元
素A単独の場合の一次線によるピークと高次線によるピ
ークとの比、及び、元素B単独の場合の一次線によるピ
ークと高次線によるピークとの比を利用して、他の元素
の一次線又は高次線の寄与がないと仮定した場合のピー
ク強度と、実際に得られているピーク強度とから、他の
元素の一次線又は高次線の寄与があるか否かを推定す
る。例えば、一次線プロファイル中の或るピークにおい
て一次線と高次線の両方の寄与があると判断できる場合
には、その両方をそのピークに対するスペクトルとして
同定し、一次線の寄与がないと判断できる場合には、高
次線のみをそのピークに対するスペクトルとして同定す
る。なお、一次線プロファイルに現れている元素Aの一
次線によるピーク強度から元素Bの高次線による寄与分
を差し引くことにより、元素Aの一次線によるピーク強
度を求めることができるから、この値を定量分析に利用
することもできる。
は、分光結晶として、比較的軽い元素、即ち蛍光X線が
長波長である元素に対応したものを利用する。すると、
一次線プロファイルには主として比較的軽い元素の一次
線によるスペクトルが現れ、高次線プロファイルには、
上記(1)式のブラッグ条件式を満たすような、比較的重
い元素の高次線によるスペクトルが現れる。上述したよ
うに、それらプロファイルには互いに他の回折次数のス
ペクトルの寄与が存在するから、互いのピークを相互に
参照することによりピークを同定することができる。ま
た、このようにして高次線プロファイルに存在する高次
線によるピークを正確に評価することにより、一次線が
走査角度範囲に入らないような重元素も定性分析及び定
量分析が行える。
光X線分析装置について図面を参照して説明する。図1
は本実施例による波長分散型蛍光X線分析装置の要部の
構成図である。
試料2で発生した蛍光X線は、ゴニオメータ3に導入さ
れる。ゴニオメータ3の中心には蛍光X線を波長分散す
るための分光結晶4が据えられ、分光結晶4で分光され
た回折X線はゴニオメータ3の円周上に設けられた検出
器5に導入される。分光結晶4と検出器5とは、制御部
10の制御の下に、上記(1)式を満たすべく倍角(θ,
2θ)の関係を保って回転するように構成されている。
制御部10は分光結晶4及び検出器5を回転させる際
に、走査角2θをデータ処理部9に送出する。なお、分
光結晶4の入口側及び出口側にはそれぞれソーラスリッ
ト11が配置されており、X線の光束の幅を規制してい
る。
などが利用され、X線フォトンが入射するとそのX線フ
ォトンが有するエネルギに応じた波高を持つパルス信号
を生成する。このパルス信号はアンプ6で増幅されたあ
とに、第1及び第2波高選別器7a、7bに並列に入力
される。波高選別器7a、7bは、入力されたパルス信
号のうち、予め設定された所定の弁別範囲に収まる波高
値を持つパルス信号のみを選択して出力するもので、第
1波高選別器7aでは、一次線を有効に選択するような
弁別範囲(I)、一方、第2波高選別器7bでは、一次
線に対応するパルス信号よりも波高値が大きくなる二次
以上の高次線を有効に取り込むような弁別範囲(II)が
設定される。これら波高選別器7a、7bの出力パルス
信号はそれぞれ第1及び第2カウンタ8a、8bで計数
され、単位時間に入力されたパルス信号の数に応じた値
がデータ処理部9に与えられる。データ処理部9は周知
のパーソナルコンピュータなどにより構成され、所定の
アルゴリズムに従って後述のように各種のデータ解析処
理を実行する。
高値とX線強度との関係の一例を示す波高分布曲線であ
り、その図中のC部の拡大図を(b)に示す。縦軸のX
線強度は、第1及び第2カウンタ8a、8bで得られる
パルス計数値に対応するものである。また、図3
(a)、(b)は、分光結晶4及び検出器5を所定角度
範囲で走査(つまり回転)したときに、第1及び第2カ
ウンタ8a、8bでそれぞれ得られる信号に基づいてデ
ータ処理部9で作成される、一次線及び高次線プロファ
イルの一例である。
高分布曲線と高次線による波高分布曲線とはその間で若
干の重なりが生じる。そのため、第1及び第2波高選別
器7a、7bの波高弁別範囲を最適に設定したとして
も、図2(b)に示したように、一方のプロファイル
に、本来ならば他方のプロファイルに記録されるべき信
号が漏れ込んでしまうことが避けられない。プロファイ
ル作成時には、走査角2θに従ってX線強度をプロット
していくだけであるから、例えば元素Aの一次線による
ピークと元素Bの高次線によるピークの走査角が一致又
はごく近接している場合、図3(a)、(b)に示すよ
うに、一次線及び高次線プロファイルの何れにおいて
も、このような重なりがあるのか否かさえ判断できな
い。
は、データ処理部9は、一次線及び高次線プロファイル
をそれぞれ作成したあと、これらプロファイルを基に次
のような解析処理を実行することによりピークの同定を
実行する。図4及び図5は、このピーク同定の処理手順
を示すフローチャートである。
ロファイルに対して、通常のピーク同定処理を実行す
る。即ち、プロファイル波形に対して、統計誤差を除去
するためのスムージング処理、測定データに含まれるバ
ックグラウンドノイズを除去するノイズ除去処理を行っ
たあとに、ピークを検出する。そして、各ピークの位置
(走査角2θ)、ピークトップ強度、バックグラウンド
強度を算出するピークサーチ処理を実行し、検出された
各ピークに対して、予め記憶されている波長テーブル及
び線強度比テーブルを参照して、元素名、スペクトル線
名(Kα、Kβ、…)及び回折の次数を推定する(ステ
ップS1)。このとき、或るピーク〔P1〕に対して元
素Aの固有X線の一次線が存在し、ほぼ同じ走査角に別
の元素Bの固有X線の二次線が存在する場合、その両方
をスペクトルの候補として挙げる(ステップS2)。
ロファイルに対し、上記ステップS1と同様の処理を実
行し、元素名、スペクトル線名及び回折次数を推定する
(ステップS3)。このとき、或るピーク〔Ph〕に対
して、元素Bの固有X線の高次線が存在し、ほぼ同じ走
査角に別の元素Aの固有X線の一次線が存在する場合、
その両方をスペクトルの候補として挙げる(ステップS
4)。
ク〔Ph〕に関して、そのピーク強度Phから一次線によ
る寄与分を除去する演算を実行する。このときには、元
素Aを含み元素Bを含まないような標準試料を予め実測
したときの、一次線によるピーク強度P1Aと高次線によ
るピーク強度PhAとの比PhA/P1Aを利用し、ピーク
〔P1〕のピーク強度P1に比PhA/P1Aを乗じ、ピーク
〔Ph〕のピーク強度Phから減じる(ステップS5)。
即ち、ピーク〔Ph〕の高次線寄与分の推定値Ph’は、
次の(2)式で求まる。 Ph’=Ph−P1・(PhA/P1A) …(2) 仮にピーク〔P1〕に高次線の寄与があるとしてもそれ
はごく僅かであると推測できるから、ピーク〔Ph〕に
元素Bの高次線の寄与がない場合、Ph≦P1・(PhA/
P1A)であると考えられる。そこで、Ph’がゼロ以下
であるか否かを判定し(ステップS6)、ゼロ以下であ
れば、ピーク〔Ph〕は元素Aの一次線による寄与分の
みであると判断する(ステップS7)。この場合には、
元素Bは含まれていないものと結論付け、ピーク〔P
1〕、〔Ph〕共に元素Aの一次線であるとスペクトルを
確定する(ステップS8)。なお、元素Aの定量分析に
はそのままピーク強度P1を利用する(ステップS
9)。
りも大きければ、ピーク〔Ph〕には別の元素の高次線
が寄与しているものと判断できる(ステップS10)。
その場合、ピーク〔Ph〕に対して、まず候補として挙
げられた元素Bの高次線をスペクトルとして確定する
(ステップS11)。
〔P1〕に関して、そのピーク強度P1から一次線による
寄与分を除去する演算を実行する。このときには、元素
Bを含み元素Aを含まないような標準試料を予め実測し
たときの、高次線によるピーク強度PhBと一次線による
ピーク強度P1Bとの比P1B/PhBを利用し、ピーク強度
Ph’に比P1B/PhBを乗じ、P1から減じる(ステップ
S12)。即ち、ピーク〔P1〕の一次線寄与分の推定
値P1’は、次の(3)式で求まる。 P1’=P1−Ph’・(P1B/PhB) …(3) ピーク〔P1〕に元素Aの一次線の寄与がない場合、P1
≦Ph’・(P1B/PhB)であると考えられる。そこ
で、P1’がゼロ以下であるか否かを判定し(ステップ
S13)、ゼロ以下であれば、ピーク〔P1〕は元素B
の高次線による寄与分のみであると判断する(ステップ
S14)。この場合には、元素Aは含まれていないもの
と判断できるから、ピーク〔P1〕、〔Ph〕共に元素B
の高次線をスペクトルとして確定する(ステップS1
5)。
よりも大きければ、ピーク〔P1〕には元素Aの一次線
によるピーク強度P1’と元素Bの高次線によるピーク
強度Ph’・(P1B/PhB)とが重畳しているものと判
断し(ステップS16)、ピーク〔P1〕、〔Ph〕に対
して、元素Aの一次線、元素Bの高次線の両方をスペク
トルとして確定する(ステップS17)。また、引き続
き元素Aの定量分析を行う場合には、上記(3)式で得ら
れた一次線によるピーク強度P1’を用いる(ステップ
S18)。
高次線とが重なり合った可能性があるピークに対して、
そのピークの正確な同定を行うことができると共に、高
次線の寄与を除去して、或る元素の一次線によるX線強
度を求めることができる。
り具体的に説明する。上記構成において、試料2は鉛の
含有量が0.15%、錫の含有量が9.02%である銅
合金であって、分光結晶4はLiF(フッ化リチウム)
で回折面:200、検出器5はシンチレーション計数器
(SC)である。この例は、Pb(鉛)のLβ一次線に
よるピークと、Sn(錫)のKα二次線によるピークと
が重なる場合であって、何れのスペクトル線もゴニオメ
ータ3の走査角(2θ)が28.2°付近でピークが現
れる。
り、(a)は走査角28.26°における波高分布曲
線、(b)は一次線プロファイル、(c)は高次線プロ
ファイルである。また、図7は、鉛を含み、錫を含まな
い標準試料である、鉛含有率が99.9%の鉛板の測定
データであり、(a)〜(c)は図6と同様である。更
に、図8は、錫を含み、鉛を含まない標準試料である、
錫含有率が99.9%の錫板の測定データであり、
(a)〜(c)は図6と同様である。
線プロファイル及び高次線プロファイル共に、走査角2
8.26°近傍で現れているピークはPbLβ一次線
と、SnKα二次線とが重なっているものであるが、こ
のデータのみではその重なりの判断や分離が行えない。
手順で解析処理を実行する。まず、図6(b)及び
(c)に示した一次線プロファイル及び高次線プロファ
イルに対し、ピーク同定処理を実行する。これにより、
何れのプロファイルにおいても走査角28.26°に現
れているピークに対して、PbLβ一次線とSnKα二
次線とが候補として挙げられる。次いで、図6(c)に
示した高次線プロファイル中のピーク〔Ph〕に対しP
h’を計算する。このときには、図7(b)及び(c)
に示した、鉛に対する一次線及び高次線プロファイル中
の走査角28.26°付近に現れている各ピークのピー
ク強度を利用する。本例では、Ph’=53.3−0.
647×4.91/142.9=53.28と求まる。
この値は十分にゼロよりも大きいので、ピーク〔Ph〕
にはSnKα二次線が寄与していると判断する。これに
より、まずピーク〔Ph〕に対してSnKα二次線を確
定する。
ァイル中のピーク〔P1〕に対しP1’を計算する。この
ときには、図8(b)及び(c)に示した、錫に対する
一次線及び高次線プロファイル中の走査角28.26°
付近に現れている各ピークのピーク強度を利用する。本
例では、P1’=0.647−53.28×0.172
/25.24=0.284と求まる。この値は十分にゼ
ロよりも大きいので、ピーク〔P1〕にはPbLβ一次
線とSnKα二次線の両方が重なっていると判断し、こ
れにより、ピーク〔P1〕、〔Ph〕共にPbLβ一次線
及びSnKα二次線を確定する。同時に、ピーク〔P
1〕におけるPbLβ一次線のピーク強度0.284が
得られる。
イルで走査角33.9°付近に現れているピークはPb
Lαであるが、上記算出されたPbLβ一次線のピーク
強度に対するこのPbLαのピーク強度の比は、0.3
06:0.284=1:0.928となり、これは鉛板
を用いて得られるPbLαとPbLβとの比5.41:
4.91=1:0.908とほぼ一致している。これ
は、上述したような処理によってSnKα二次線の重な
りの影響が正確に分離されて、PbLβ一次線のピーク
強度が高い精度で取得できたことを示している。
まれておらずPbLαとPbLβとの比が鉛板の場合と
ほぼ一致したが、鉛と砒素とが同時に含まれる試料の場
合には、走査角2θ:33.9°付近にAsKαによる
ピークが重なるため、上述したような28.2°付近の
ピーク強度と走査角33.9°付近のピーク強度との比
は上記値よりも大きくなる。従って、上述したようにP
bLβの強度を正確に評価することができれば、それに
基づいてPbLαに対するAsKαの重なりを的確に評
価できることになる。また、この場合、PbLαの強度
から鉛の定量分析を行うことができず、PbLβを用い
ることになるが、錫が含まれている場合でも正確な評価
が行える。
ァイル及び高次線プロファイルに現れるピークにおける
一次線と高次線との重なりを正確に評価することができ
れば、高次線によるピーク強度を定量分析に利用するこ
とが可能となる。即ち、軽元素から重元素まで幅広い一
次回折線の波長範囲を有する試料を分析する際に、重元
素については一次線でなく高次線によるピークで同定を
行い、そのピーク強度を利用して定量分析を実行する。
以下、このような機能を備えた蛍光X線分析装置の一実
施例を具体的に説明する。
つのプロファイルに記録しているのに対し、本実施例の
蛍光X線分析装置では、二次線、三次線、四次線及び五
次線プロファイルをそれぞれ別個に作成するために、パ
ルス信号の波高値をこれら高次線毎に弁別するように波
高弁別範囲が設定された、マルチチャンネル波高分析器
を利用している。図9は、波高分布曲線の一例を示す図
である。波高分布は高次線になるほど広がりが大きくな
り、隣接する次数の波高分布との重なりが大きくなる。
マルチチャンネル波高分析器は、各高次線によるパルス
信号の波高値を最適に弁別できるように最適に設定され
る。
=25.75ÅのTAP(フタル酸水素タリウム)を用
いる。TAPは、本来、酸素、フッ素、ナトリウム、マ
グネシウムなどの軽元素の一次線を測定するのに利用さ
れており、重元素の一次線は対象外である。しかしなが
ら、重元素の高次線は走査範囲内に入ってくる。この蛍
光X線分析装置で、所定の走査角範囲で分光結晶4及び
検出器5を回転させたときにデータ処理部9で作成され
る一次〜五次線プロファイルの一例を、図10(a)〜
(e)にそれぞれ示す。
ば、データ処理部9は、まず、各プロファイルに対して
通常のピーク同定処理を実行し、各ピーク毎に候補とな
るスペクトルを推定する。そして、各プロファイルで候
補に挙がったスペクトルを相互に参照しながらスペクト
ルを確定する。具体的には、例えば、或る元素の一次線
に対応するピークが一次線プロファイルに存在する場
合、その元素の高次線に対応するピークがそれぞれの次
数に応じたプロファイルに存在するか否かを確認し、そ
れが確認できる場合にスペクトルを確定する。また、或
る元素の一次線によるピークと別の元素の高次線による
ピークとが重なっている可能性がある場合には、上述し
たような方法によって、ピークの重なりを評価したあと
にそれぞれのスペクトルを確定する。このようにして、
各ピークに対してスペクトルを確定したあとピーク強度
を算出し、各元素のX線強度からファンダメンタル・パ
ラメータ法(FP法)に基づいて定量分析を実行する。
FP法では、試料に含まれる全ての元素について、強度
又はそれに代わる情報が必要であるが、本実施例によれ
ば、1種類の分光結晶による測定データを用いて、この
ような情報を集めることが可能となる。
の趣旨の範囲で適宜変形や修正を行うことができること
は明らかである。
X線分析装置によれば次のような効果を奏する。 (1)一次線によるピークと高次線によるピークとの重
なりを正確に判断できると共にその重なりの程度まで正
確に評価できる。従って、定性分析や定量分析の精度が
向上する。 (2)スペクトルの重なりの評価に利用される、一次線
プロファイルに対する高次線の寄与比、高次線プロファ
イルに対する一次線の寄与比は、検出器の種類や元素の
波長(エネルギ)のみに関係し、分光結晶の種類、スリ
ット幅などには依存しない。従って、実測データを取得
する際の分析条件の種類を削減することができ、結果と
して、実測データ取得の作業が大幅に軽減される。 (3)一次線プロファイルのみならず高次線プロファイ
ル中に現れている高次線によるピークを定性分析や定量
分析に利用することができるので、一次線プロファイル
を、全元素をカバーするような幅広い波長範囲に亘って
取得する必要がなくなる。そのため、複数の分光結晶を
用意せずとも一個の分光結晶でもって実現し得る角度範
囲の測定を行えばよく、従来のように複数の分光結晶を
交換しつつ測定を繰り返す必要がない。その結果、分析
時間を大幅に短縮することができると共に、装置自体の
コストも低減することができる。
要部の構成図。
布曲線の一例。
プロファイル及び高次線プロファイルの一例。
すフローチャート。
すフローチャート。
示す図であり、(a)は走査角28.26°における波
高分布曲線、(b)は一次線プロファイル、(c)は高
次線プロファイル。
タ。
タ。
により得られる波高分布曲線の一例。
線プロファイル及び高次線プロファイルの一例。
Claims (2)
- 【請求項1】 試料から発生する蛍光X線を、所定の角
度関係を保って走査される分光結晶と検出器とで波長分
散及び検出する波長分散型蛍光X線分析装置において、 a)所定波高弁別範囲に入る検出器出力を選別し、その出
力に基づいて走査角に対するX線強度を示す一次線プロ
ファイルを作成する一次線プロファイル作成手段と、 b)前記所定波高弁別範囲よりも高い領域に設定された波
高弁別範囲に入る検出器出力を選別し、その出力に基づ
いて走査角に対するX線強度を示す高次線プロファイル
を作成する高次線プロファイル作成手段と、 c)複数の対象元素に関して、予め測定しておいた一次線
によるピーク強度と高次線によるピーク強度との比、又
はそれに相当する情報を記憶させておく記憶手段と、 d)前記一次線及び高次線プロファイルに存在するピーク
の同定を行うデータ解析手段であって、或る元素の一次
線によるスペクトルと他の元素の高次線によるスペクト
ルとが重畳してピークが形成されている可能性がある場
合、前記記憶手段に記憶しておいた情報を基に、高次線
プロファイルに存在するピークにおける一次線又は高次
線の寄与を判断すると共に、一次線プロファイルに存在
するピークにおける一次線又は高次線の寄与を判断し、
それによりそれぞれのピークの同定を行うデータ解析手
段と、を備えることを特徴とする蛍光X線分析装置。 - 【請求項2】 a)試料から発生する蛍光X線が入射され
たとき、所定の波長範囲に対応してブラッグ条件式を満
たす回折X線を発生する分光結晶と、 b)該分光結晶による回折X線を検出する検出器と、 c)前記分光結晶と検出器とを所定の角度関係を保って回
転させる波長走査手段と、 d)互いに相違する波高弁別範囲に入る検出器出力をそれ
ぞれ選別し、その出力に基づいて走査角に対するX線強
度を示す複数のプロファイルをそれぞれ作成するプロフ
ァイル作成手段と、 e)最も低い領域に設定された波高弁別範囲に対応する一
次線プロファイルに存在するピークと、その波高弁別範
囲よりも高い領域に設定された波高範囲に対応する高次
線プロファイルに存在するピークとを相互に参照して、
各ピークの同定を行うデータ解析手段と、を備えること
を特徴とする蛍光X線分析装置。
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