JP5983167B2 - クラック評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば皮膜付き鋼板等の試料の表面に発生したクラックを評価するクラック評価方法に関する。
冷延鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板には、耐食性などの特性を付与するために、複数成分を含有する皮膜が形成される場合がある。
このような皮膜には、塗布条件や乾燥条件によってクラックが生じてしまうことがある。皮膜に生じたクラックは、耐食性、耐剥離性、密着性などの特性に影響を与えるため、クラックの数量や大きさなどを評価することが必要となる。
クラックを評価する方法としては、例えば、皮膜付き鋼板を電解液に浸し、電解液と鋼板とに流れる電流を測定し、クラック量を判定する方法(例えば、特許文献1を参照);試料片に銅めっきを施して微小孔または微小割れ部に析出した銅めっきの状態からクラック量を判定する方法(例えば、非特許文献1を参照);ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム三水和物とヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムフェロキシル水溶液を染み込ませたろ紙を試験片に貼り付けて剥がし、ろ紙上に着色した鉄錯イオンの斑点からクラックを評価する方法(フェロキシル試験)(例えば、非特許文献1を参照);等が挙げられる。
特許3921929号公報 JIS H 8617 (1999)
ところで、皮膜付き鋼板の皮膜には、下地である鋼板まで達する深いクラックのほかに、下地に達しない微細なクラックも生ずることがある。このような微細クラックも、皮膜の特性に影響を与えうるため、当然、クラック評価の対象となる。
しかしながら、上述した従来のクラック評価方法(例えば、フェロキシル試験)では、深いクラックが少ない場合や鋼板等の下地に達していない微細クラックについては、適切に評価し切れないという問題があった。
また、従来の方法は、化学薬品を用いるため、薬品による汚染、薬傷の危険性、薬品によるクラック助長の懸念、廃液処理の問題もあった。
このとき、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて観察することにより、下地に達していない微細クラックを評価することも考えられるが、二次電子像(Secondary Electron:SE像)には表面の形状情報が含まれてしまうため、SE像に基いてクラック評価することは、容易ではなかった。
そこで、反射電子像(Backscattered Electron:BSE像)を取得してクラック評価することも考えられる。しかし、BSE像には組成情報が含まれるため、皮膜に複数成分が含有されている場合には、これらの成分に起因する組成情報がBSE像に含まれてしまい、やはり、クラック評価は容易ではなかった。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、皮膜付き鋼板などの試料の表面に生じたクラックをより適切に評価し得るクラック評価方法を提供することを目的とし、とりわけ、複数成分を含有する皮膜に生じた微細なクラックであっても評価し得るようにすることを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、金属薄膜が成膜された試料表面のBSE像であれば、試料が皮膜を有し、その皮膜が複数成分を含有していても、複数成分に由来する組成コントラスト等が抑制され、微細なクラックも評価できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)試料表面に発生したクラックを評価するクラック評価方法であって、上記試料表面に金属薄膜を成膜する工程と、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて上記金属薄膜の反射電子像(BSE像)を取得する工程と、上記取得したBSE像に基いて上記クラックを評価する工程と、を備えるクラック評価方法。
(2)上記金属薄膜の金属種が、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)、および、これらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)に記載のクラック評価方法。
(3)上記金属薄膜の膜厚が、5〜20nmである、上記(1)または(2)に記載のクラック評価方法。
(4)上記SEMの観察条件として、加速電圧を2〜10kVとした、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のクラック評価方法。
(5)上記クラックを評価する際に、上記取得したBSE像から、下記式により求めたクラック判定閾値以下の明度の領域を上記クラックの領域と判定する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のクラック評価方法。
(クラック判定閾値)=MB−nσB
ここで、MB:BSE像全体の明度の中央値、σB:BSE像全体の明度の標準偏差、
n:1.5〜3.0の定数
本発明によれば、皮膜付き鋼板などの試料の表面に生じたクラックをより適切に評価し得るクラック評価方法を提供することができ、複数成分を含有する皮膜に生じた微細なクラックであっても評価し得る。
本発明で用いられるSEM101を含むシステムの一例を概略的に示す模式図である。 金属薄膜が成膜されていない皮膜付き鋼板の表面を示すSEM像であり、(a)は水準6のSE像、(b)は水準6のBSE像、(c)は水準2のSE像、(d)は水準2のBSE像を示す。 Au薄膜が成膜された水準6の皮膜付き鋼板の表面を示すSEM像であり、(a)はSE像、(b)はBSE像を示す。 図3に示すSEM像のヒストグラム解析を示すグラフであり、(a)はSE像のグラフ、(b)はBSE像のグラフを示す。 水準1〜6のフェロキシル試験斑点数とクラック占有率との関係を示すグラフである。 Au薄膜が成膜された皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像であり、(a)は水準1のBSE像、(b)は水準3のBSE像、(c)は水準6のBSE像を示す。 Au薄膜が成膜された皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像であり、(a)はAu薄膜の膜厚が5nm、(b)はAu薄膜の膜厚が10nm、(c)はAu薄膜の膜厚が50nmである。 Au薄膜が成膜された皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像であり、(a)は加速電圧が3kV、(b)は加速電圧が5kV、(c)は加速電圧が10kVである。
[クラック評価方法]
本発明のクラック評価方法は、試料表面に発生したクラックを評価するクラック評価方法であって、上記試料表面に金属薄膜を成膜する工程と、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて上記金属薄膜の反射電子像(BSE像)を取得する工程と、上記取得したBSE像に基いて上記クラックを評価する工程と、を備えるクラック評価方法である。
〔試料〕
本発明で用いられる試料としては、その表面に発生したクラックの評価を所望するものであれば特に限定されず、例えば、鋼,アルミニウムなどの金属,シリコンなどの半導体,ガラス,これらに各種被膜が形成されているもの等が挙げられる。
また、試料の形状も特に限定されず、板状、塊状等の形状であってもよい。
このような試料の具体例としては、鋼板が挙げられる。鋼板としては、鋼板のほか、亜鉛めっき鋼板などのめっき鋼板、ステンレス鋼板、制振鋼板、これらに各種被膜が形成されているもの等が挙げられる。
試料の表面における皮膜の有無は特に限定されないが、皮膜がない試料の表面よりも皮膜付き基板の表面の方が、一般的にクラックが発生しやすいことから、皮膜付き試料の評価に好適に用いられる。
このとき、皮膜が含有する成分としては、特に限定されず、例えば、シリカなどの無機成分、有機樹脂などの有機成分等が挙げられ、皮膜は、単一成分のみを含有していても、複数成分を含有していてもよい。もっとも、本発明においては、クラックを評価しにくい複数成分を含有する皮膜に生じたクラックであっても評価し得るようになる。
また、皮膜の膜厚についても特に限定されない。なお、皮膜の膜厚が厚い場合には下地に到達しない微細なクラックが発生しやすいと考えられるが、本発明によれば、そのような微細クラックであっても評価し得るようになる。
〔金属薄膜〕
試料表面に金属薄膜を成膜する方法としては、特に限定されず、例えば、蒸着装置を用いた蒸着,電気めっきや無電解めっきなどのめっき,スパッタ装置を用いたスパッタリング,等により成膜する方法が挙げられる。
これらのうち、必要な膜厚を得るための時間の短さ等の観点から、スパッタリングが好ましく用いられる。
金属薄膜の膜厚が薄すぎる場合には、走査電子顕微鏡(SEM)の電子ビームが金属薄膜を透過してしまい物質コントラストを生じるため、その後のクラック評価が困難となる場合がある。一方、膜厚が厚すぎる場合には微細クラックが金属薄膜で覆われてしまい、その後のクラック評価が困難になる場合がある。
このような観点から、試料表面に成膜させる金属薄膜の膜厚は、5〜20nmであるのが好ましく、5〜15nmであるのがより好ましい。
また、金属薄膜の金属種に要求される特性としては、試料(例えば、皮膜付き鋼板など)の表面への成膜が容易なこと、大気による酸化や皮膜との反応により変質や変形を起こしにくいこと、膜厚が極めて薄くても電子ビームを透過しにくいこと等が挙げられる。
また、原子番号の大きな重い金属種であるほど、BSE像において、クラック部分と非クラック部分とのコントラストが明確に出やすい。
このような観点から、金属薄膜の金属種としては、原子番号22以上の金属であるのが好ましく、市販の蒸着装置で蒸着しやすいという理由から、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)、および、これらの合金であるのが好ましい。
大気による酸化しにくさ等の観点から、Ag、Pd、W、Pt、Auおよびこれらの合金であるのがさらに好ましい。
〔SEM〕
図1は、本発明で用いられるSEM101を含むシステムの一例を概略的に示す模式図である。本システムは、本体であるSEM101と、SEM101を制御する制御部102と、画像処理部104を有するホスト103とを備えている。SEM101と制御部102とホスト103とは、互いに接続されている。ホスト103には、画面表示装置105およびマウス106が接続している。
SEM101を用いた観察については、周知であるため詳細な説明を省略するが、概略的には、まず、金属薄膜が成膜された試料がステージ上に置かれ、金属薄膜の任意位置に電子銃から電子ビームが照射される。このとき、電子線が焦点を結んで照射されるように、偏向器および対物レンズによって、電子線の照射位置および絞りが制御される。電子線を照射された金属薄膜からは、二次電子と反射電子が放出される。このとき、二次電子は二次電子検出器により、反射電子は、反射電子検出器によって検出される。検出された二次電子または反射電子は、A/D変換機でデジタル信号に変換され、二次電子像(SE像)または反射電子像(BSE像)(以下、これらをまとめて「SEM像」ともいう)として、制御部102によって取得される。
このとき、制御部102が、加速電圧、倍率等の観察条件を制御する。例えば、加速電圧が高すぎる場合には、電子ビームが金属薄膜を透過し、さらに試料が皮膜を有する場合には皮膜も透過してしまい、後のクラック評価を適正に行うことが困難になる。一方、加速電圧が低すぎる場合には、一般的なSEMに搭載されている反射電子検出器では、多くの場合、その特性上、信号が弱くなってしまい、SEM像の取得が困難になってしまう。
このような観点から、加速電圧は、2〜10kVであるのが好ましく、4〜7kVであるのがより好ましい。
また、SEM像の倍率については、評価対象となるクラックの分布が捉えられるような倍率であればよく、例えば、100〜5,000倍であるのが好ましく、500〜5,000倍であるのがより好ましい。
なお、評価に用いる視野数としては、特に限定されず、少なくとも1視野の測定を行えばよいが、観察の視野数を増やすことにより、クラック評価の精度が向上し、より適切な評価が可能となることから、評価に用いる視野数を、1試料あたり5視野以上とするのが好ましく、10視野以上とするのがより好ましい。
制御部102は、そのほか、SEM101内のステージ移動制御や排気用真空ポンプの制御を行うが、取得したBSE像について、連続的に高速に行う必要がある画像処理についても行うことがある。
一方、操作者が確認するステップが多い画像処理については、主としてホスト103の画像処理部104で実行される。
例えば、取得されたBSE像に基いてクラック占有率を求める処理(後述)は、ホスト103の画像処理部104で実行される。このとき、BSE像は制御部102から転送されたものであってもよいし、ホスト103に内蔵された記憶装置に保存されたものであってもよい。BSE像は、画面表示装置105の画面上に出力され、操作者はマウス106を用いて画面上で任意の操作をする。
〔BSE像に基づくクラック評価〕
本発明においては、BSE像に基いてクラック評価を行うが、その手法に関しては、特に限定されず、例えば、クラック占有率によるクラック評価が挙げられる。
この場合、本発明においては、画像処理部104が、取得したBSE像に対して各種の画像処理を実行してもよく、例えば、画像処理部104は、取得したBSE像に占めるクラックの面積の割合をクラック占有率(%)として算出する処理を実行する。
この際、例えば、取得したBSE像から、下記式により求めたクラック判定閾値以下の明度の領域を上記クラックの領域と判定することができる。
(クラック判定閾値)=MB−nσB
ここで、MB:BSE像全体の明度の中央値、σB:BSE像全体の明度の標準偏差、
n:1.5〜3.0の定数
より具体的には、例えば、このとき、画像処理部104は、まず、BSE像のヒストグラム(画像の明度を所定段階(例えば256段階)に分けて、それぞれの明度に該当するドット数をカウントしてグラフ化したもの)の中央値から標準偏差の例えば2倍を差し引いた値以下の明るさの領域をクラックの領域とし、これらの領域が画像全体に占める割合をクラック占有率として算出する処理を実行する。
さらに、算出されたクラック占有率に基いて、合否判定を行うことができる。合否判定は、例えば、所定の合格基準値(%)を設定し、クラック占有率が、合格基準値以下であった場合には合格と判定し、合格基準値超であった場合には不合格と判定する、というように行うことができる。
このような合否判定については、ホスト103が、クラック占有率の算出処理に続く処理として、実行してもよい。また、画像処理、および合否判定については、独立した別の計算機で行ってもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<I:皮膜付き鋼板の作製>
まず、シリカおよびエポキシ樹脂を含有する処理液を調製した。このとき、処理液中のエポキシ樹脂の含有量は、乾燥後の皮膜において20質量%になるようにした。これは、処理液を乾燥させて得られる皮膜にクラックが発生しやすくなるように、樹脂の含有量をあえて低量にしたものである。バリヤー性のエポキシ樹脂に多量のシリカを添加することで、焼き付け条件によってクラックに差が出やすい皮膜組成として調査を行なった。
また、板厚0.5mmの鋼板〔A230(JIS C 2552(2000))〕から、幅150mm×長さ300mmの試験片を切り出した。
次に、切り出した試験片の表面に、調製した処理液を所定量ロールコーターで塗布し、熱風焼付け炉により250℃(到達鋼板温度)で、1分間焼付けした後、常温に放冷した。これにより、水準1〜6の皮膜付き鋼板を得た。
<II:フェロキシル試験>
水準1〜6の皮膜付き鋼板から小片(50mm×50mm)を切り出して、フェロキシル試験(JIS H 8617 (1999))を行い、発生した斑点数(個/cm)から、クラックを評価した。
より詳細には、皮膜付き鋼板から切り出した小片の洗浄後の表面に、試験液を染み込ませた緻密なろ紙(試験紙)を貼り付け、一定時間放置した後に剥がし、試験紙を水で洗浄して乾燥した。このとき、小片の表面にクラックがあれば下地金属との反応生成物が紙面に残留し、青色の斑点(フェロシアン化鉄)となって現れる。なお、試験液としては、適量の蒸留水にフェロシアン化カリウム(JIS K 8802、一級品以上)10g、フェリシアン化カリウム(JIS K 8801、一級品以上)10gおよび塩化ナトリウム(JIS K 8150)60gを室温で溶解し、薄めた後、ろ過した溶液を使用した。
このようなフェロキシル試験で発生した斑点数(以下、「フェロキシル試験斑点数」または単に「斑点数」ともいう)を下記第1表に示す。
<III:金属薄膜が成膜されていない場合のSEM像に基づく評価>
水準2(斑点数:約22個/cm)および水準6(斑点数:約39個/cm)の皮膜付き鋼板について、フェロキシル試験を実施していない皮膜表面を、走査電子顕微鏡(SEM)(型番:Quanta200 3D、FEI社製)を用いて、加速電圧5kV、倍率1,000倍の条件で観察し、二次電子像(SE像)および反射電子像(BSE像)を取得した。
図2は、金属薄膜が成膜されていない皮膜付き鋼板の表面を示すSEM像であり、(a)は水準6のSE像、(b)は水準6のBSE像、(c)は水準2のSE像、(d)は水準2のBSE像を示す。
図2に示すSEM像を見ると、水準6では下地まで達する深いクラックが多く形成されているのに対して、水準2では、下地に達しない微細なクラックが多く形成されていた。
このとき、SE像においては、皮膜表面の凹凸形状により生ずる明度のコントラスト(以下「凹凸コントラスト」という)や、帯電によって生ずる皮膜表面の明度とのコントラスト(以下「帯電コントラスト」という)が確認された。
また、BSE像においては、凹凸コントラストや帯電コントラストは確認されないものの、皮膜が複数成分を含有することによる明度のコントラスト(以下「組成コントラスト」という)が確認された。
ここで、取得したSEM像に基いてクラックを評価しようとする場合、具体的には例えば、SEM像に画像処理等を行ってクラック部分のみを抽出するような場合、皮膜とクラックとの明度の差が大きく、皮膜に対してクラックが強調されているSEM像であることが重要となる。
しかしながら、図2および後に説明する図3に示すように、各種のコントラストがSEM像に現れてしまうと、クラックのみが強調された像ではなくなってしまうため、クラック評価が困難である。とりわけ、水準2のように、下地に達しない微細なクラックが多く形成されている場合、クラック評価が著しく困難になってしまう。
したがって、皮膜付き鋼板の表面に金属薄膜が成膜されていない場合には、そのSEM像に基いてクラック評価することは非常に困難であることが分かった。
<IV:Au薄膜が成膜されている場合のSEM像に基づく評価>
水準1〜6の皮膜付き鋼板から小片(10mm×10mm)を切り出して、蒸着装置(型番:JFC−1200、日本電子社製)を用いて、皮膜表面にAu薄膜(膜厚:10nm)を成膜した。
次に、上記SEMを用いて、加速電圧5kV、倍率1,000倍の条件で、表面を観察し、二次電子像(SE像)および反射電子像(BSE像)を取得した。
図3は、Au薄膜が成膜された水準6の皮膜付き鋼板の表面を示すSEM像であり、(a)はSE像、(b)はBSE像を示す。
図4は、図3に示すSEM像のヒストグラム解析を示すグラフであり、(a)はSE像のグラフ、(b)はBSE像のグラフを示す。
なお、図4に示すグラフにおいては、まず、図3に示すSEM像(SE像、BSE像)に対して画像処理を行い、像の明度を所定段階(ここでは256段階)に分けて、それぞれの明度に該当するドット数をカウントしてヒストグラム化し、さらに、ガウスフィッティングによって各成分(後述する)を分離してグラフ化した。
図3(a)に示すように、SE像においては、皮膜付き鋼板の表面にAu薄膜を成膜することにより、帯電コントラストの出現は抑制されるものの、凹凸コントラストの出現は抑制できないことが分かった。
また、図3(a)に示すSE像は、明度に応じて3成分に区分することができる。すなわち、最も暗い「クラック」(平均明度:77.97)と、次に暗い「皮膜暗部」(平均明度:89.02)と、最も明るい「皮膜明部」(平均明度:109.78)とに区分することができる。
図3(a)に示すSE像は、凹凸コントラストを含むため、皮膜が「皮膜暗部」と「皮膜明部」とに別れてしまっており、例えば、「クラック」の縁が盛り上がって「皮膜明部」となっている。そして、「クラック」と「皮膜暗部」との明度の差が比較的小さい。そのため、画像処理等によりクラックのみを抽出することは困難である。
これは、図4(a)に示すグラフからも明らかである。すなわち、図4(a)に示すグラフにおいては、「クラック」と「皮膜暗部」とがオーバーラップしており、「クラック」のみを分離することが困難であることが分かる。
したがって、皮膜付き鋼板の表面にAu薄膜を成膜した場合であっても、そのSE像に基いてクラック評価することは困難であることが分かった。
これに対して、図3(b)に示すように、BSE像においては、皮膜付き鋼板の表面にAu薄膜を成膜することにより、帯電コントラスト、凹凸コントラスト、組成コントラストが抑制されていることが分かった。
また、図3(b)に示すBSE像においては、図3(a)に示すSE像とは異なり、明度に応じて2つの部位にのみ区分することができる。すなわち、暗い「クラック」(平均明度:110.20)と、明るい「皮膜」(平均明度:167.62)とに区分することができる。
図3(b)に示すBSE像は、前述のコントラストを含まず、「クラック」と「皮膜」とのみに区分され、かつ、両者の明度の差が比較的大きいため、画像処理等によりクラックのみを抽出することが容易である。
これは、図4(b)に示すグラフからも明らかである。すなわち、図4(b)に示すグラフにおいては、「クラック」と「皮膜」とのオーバーラップが少なく、「クラック」を分離することが比較的容易であることが分かる。
したがって、皮膜付き鋼板の表面にAu薄膜を成膜し、そのBSE像を観察する場合には、クラック評価が容易になることが分かった。
このとき、取得したBSE像から、下記式により求めたクラック判定閾値以下の明度の領域を、クラックの領域と判定するのが好ましい。
(クラック判定閾値)=MB−nσB
ここで、MB:BSE像全体の明度の中央値、σB:BSE像全体の明度の標準偏差、
n:1.5〜3.0の定数
<V:クラック占有率>
次に、クラック占有率によるクラック評価を行った。このとき、Au薄膜が成膜された水準1〜6の皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像に対して画像処理を行い、BSE像に占めるクラックの面積の割合をクラック占有率(%)として算出した。より詳細には、各BSE像のヒストグラムの中央値から標準偏差の2倍を差し引いた値以下の明るさの領域をクラックの領域とし、これらの領域が画像全体に占める割合をクラック占有率として算出した。
下記第2表に、クラック占有率およびクラックに影響を受けると考えられる他の方法で行なった皮膜の合否判定結果(下記第2表では、耐食性にて合否判定)を、皮膜付着量およびフェロキシル試験斑点数とともに記載したが、フェロキシル試験斑点数と他の方法での合否判定とは相関が不明確であるのに対し、クラック占有率と他の方法での合否判定とはよく相関していることが分かる。具体的には、合格基準値をクラック占有率が6.5%として、クラック占有率が6.5%以下であった場合には合格、6.5%超であった場合には不合格として、評価することが可能であることがわかる。
図5は、水準1〜6のフェロキシル試験斑点数とクラック占有率との関係を示すグラフである。図5に示すグラフを見ると、水準1〜3および水準5は、斑点数が20〜25個/cmの範囲で飽和するも、その範囲でクラック占有率は増減が見られた。このとき、水準1および水準5の合否判定の結果は「○」であり、水準2および水準3は「×」であった。このことから、フェロキシル試験では斑点数が同等であるため同等の評価をしがちな場合であっても、本発明によれば、より適切な評価が行えることが分かった。
図6は、Au薄膜が成膜された皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像であり、(a)は水準1のBSE像、(b)は水準3のBSE像、(c)は水準6のBSE像を示す。
図6に示すように、合否判定の結果が「×」であった水準3および水準6では、下地鋼板まで達する深いクラック(図6中、白矢印で示す)が多く確認されたが、合否判定の結果が「○」であった水準1には下地鋼板まで達するクラックはほとんど確認されなかった。
図6に示すBSE像からは、下地鋼板まで達するクラックが、水準6、水準3、水準1の順に減少している。
ここで、水準1と水準3とに着目すると、両者のフェロキシル試験斑点数は同等であるにも拘わらず(第2表参照)、水準3では、水準1よりも、下地鋼板まで達する深いクラックが明らかに多く確認される。
これらの結果は、下地鋼板まで達する深いクラック量が所定量まで減少すると、フェロキシル試験で出現する斑点が目視できなくなり、フェロキシル試験では適正な評価ができなくなることを示している。
したがって、本発明によれば、下地まで達する深いクラックが少ない場合や下地まで達しない微細クラックについても、適切に評価することが可能になった。
<VI:Au薄膜の膜厚の違いによるBSE像の変化>
水準6の皮膜付き鋼板から、上記と同様に、小片を切り出して、上記装置を用いて、皮膜表面にAu薄膜を成膜した。このとき、Au薄膜の膜厚が5nm、10nm、50nmの3種類のサンプルを作製した。
次に、上記SEMを用いて、加速電圧5kV、倍率1,000倍の条件で、表面を観察し、反射電子像(BSE像)を取得した。
図7は、Au薄膜が成膜された皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像であり、(a)はAu薄膜の膜厚が5nm、(b)はAu薄膜の膜厚が10nm、(c)はAu薄膜の膜厚が50nmである。
図7に示すBSE像から明らかなように、各膜厚においても、BSE像は、コントラストを含まず、「クラック」と「皮膜」とのみに区分されており、クラック評価が容易となることが分かった。
もっとも、図7(c)に示す膜厚50nmのBSE像においては、下地鋼板に達しない微細クラックがやや見えにくくなっていた。これは、膜厚50nmのAu薄膜においては、Au薄膜によって微細クラックがやや埋まってしまったためと考えられる。
<VII:加速電圧の違いによるBSE像の変化>
水準6の皮膜付き鋼板から、上記と同様に、小片を切り出して、上記蒸着装置を用いて、皮膜表面にAu薄膜(膜厚:10nm)を成膜した。
次に、上記SEMを用いて、各種の加速電圧(3kV、5kV、10kV)、倍率1,000倍の条件で、皮膜付き鋼板の表面に成膜されたAu薄膜を観察し、反射電子像(BSE像)を取得した。
図8は、Au薄膜が成膜された皮膜付き鋼板の表面を示すBSE像であり、(a)は加速電圧が3kV、(b)は加速電圧が5kV、(c)は加速電圧が10kVである。
図8(a)に示す加速電圧が3kVのBSE像は、僅かにぼやけたような像になってしまった。
また、図8(c)に示す加速電圧が10kVのBSE像においては、Au薄膜の下層にある皮膜が透過したような像となってしまい、皮膜が複数成分を含有することによる組成コントラストが確認された。
これに対して、図8(c)に示す加速電圧が5kVのBSE像においては、コントラストを含まず、クラック評価が容易となった。
101 SEM
102 制御部
103 ホスト
104 画像処理部
105 画面表示装置
106 マウス

Claims (4)

  1. 皮膜付き鋼板である試料の皮膜に発生したクラックを評価するクラック評価方法であって、
    前記試料表面に金属薄膜を成膜する工程と、
    走査電子顕微鏡(SEM)を用いて前記金属薄膜の反射電子像(BSE像)を取得する工程と、
    前記取得したBSE像に基いて前記クラックを評価する工程と、
    を備え
    前記クラックを評価する際に、前記取得したBSE像から、下記式により求めたクラック判定閾値以下の明度の領域を前記クラックの領域と判定する、クラック評価方法。
    (クラック判定閾値)=MB−nσB
    ここで、MB:BSE像全体の明度の中央値、σB:BSE像全体の明度の標準偏差、
    n:1.5〜3.0の定数
  2. 前記金属薄膜の金属種が、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)、および、これらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のクラック評価方法。
  3. 前記金属薄膜の膜厚が、5〜20nmである、請求項1または2に記載のクラック評価方法。
  4. 前記SEMの観察条件として、加速電圧を2〜10kVとした、請求項1〜3のいずれかに記載のクラック評価方法。
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