JP6119925B2 - 表面処理鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、表面処理鋼板に関する。
本願は、2015年3月16日に、日本に出願された特願2015−52646号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
Snめっき鋼板は、主に缶用鋼板として使用されている。Snめっき鋼板の表面に施される化成処理としては、従来よりクロメート処理が使用されてきた。しかしながら、近年はCr(VI)の使用を回避する目的で、Cr以外の化学種、特に酸化Zr(IV)を利用する化成処理が検討されている。
特許文献1〜3では、Zr皮膜、りん酸化合物皮膜およびフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも二種以上の皮膜を鋼板表面に形成する化成処理方法が開示されている。
特許文献1および2では、Zr皮膜、りん酸化合物皮膜およびフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも二種以上の皮膜中の任意の粒子が一定の大きさ以下であることにより、耐食性および製缶加工性が向上すると記載されている。
特許文献3では、Zr皮膜、りん酸化合物皮膜およびフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも二種以上の皮膜中の任意の粒子が一定の大きさ以上であることにより、皮膜と皮膜の上層に被覆するフィルム又は塗料との密着性が向上すると記載されている。なお、フィルムと塗料とをコーティング剤と総称する。
特許文献4には、鋼板またはめっき鋼板に対して、Zrイオンおよびりん酸イオンを含む酸性溶液を用いた陰極電解処理を1回行うことにより、Zrおよびりん酸を含む皮膜を形成する化成処理方法が開示されている。
日本国特開2009−1851号公報 日本国特開2009−1853号公報 日本国特開2012−62519号公報 日本国特開2009−120919号公報
特許文献1〜4の化成処理方法により形成される皮膜(以下、化成処理皮膜と呼称する)では、コーティング剤との密着性が十分ではない場合がある。特許文献1〜4の化成処理皮膜の表面は平滑であるか、または表面に粒状または定まった形状を有さない(無定形の)酸化Zr(IV)結晶やりん酸Zr(IV)結晶が析出して凹凸を形成している。粒状または無定形の酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)が析出している(つまり、酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)が凸状の析出物である)場合は、化成処理皮膜の表面が平滑である場合と比べて、化成処理皮膜とコーティング剤との接触面積が増加するため、コーティング剤との密着性がある程度向上する。
しかしながら、粒状または無定形の酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)が析出している場合には、コーティング剤が酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)の下に回り込まないので、化成処理皮膜とコーティング剤とが物理的に密着しない。このような場合には、化成処理皮膜とコーティング剤との密着性は両者の親和力に依存するため、好適な密着性を得ることが難しい。
化成処理皮膜中の化合物のうち、りん酸塩はコーティング剤との密着性の向上に寄与する。そのため、特許文献1〜4の化成処理皮膜とコーティング剤との密着性を向上するには、化成処理皮膜中のりん酸塩の含有量を増加させることが必要である。しかしながら、化成処理皮膜中のりん酸塩の含有量を増加させると、化成処理皮膜に割れが生じる場合がある。化成処理皮膜に割れが生じると、コーティング剤との密着性が劣化するため好ましくない。つまり、特許文献1〜4の化成処理皮膜では、コーティング剤との密着性を向上させるのが難しい。
また、特許文献1〜4の化成処理皮膜では、耐食性の更なる向上が望まれている。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、コーティング剤との密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決して、係る目的を達成するために以下の手段を採用する。
(1)本発明の一態様に係る表面処理鋼板は、鋼板またはめっき鋼板である基板と、前基板の少なくとも一方の表面に形成され、平面視した状態で網目と長さ1μmの任意の直線との交点の数を測定した場合に、複数の前記任意の直線との前記交点の数が平均で5〜20個である網目形状を有するりん酸Zr(IV)結晶と、を有し、かつ前記りん酸Zr(IV)結晶が、前記基板の前記表面から鉛直方向に20〜200nmの位置に、前記基板の面方向1μm当たり5〜30個の頂点を有する。
)上記(1に記載の表面処理鋼板において、前記りん酸Zr(IV)結晶の付着量が、金属Zr量に換算して5〜50mg/mである構成を採用してもよい。
上記各態様によれば、コーティング剤との密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板を提供することができる。
本実施形態に係る表面処理鋼板の層構造を示す模式図である。 本実施形態に係る表面処理鋼板の表面を示すSEM画像である。 図2を二値化した画像である。 本実施形態に係る表面処理鋼板の断面を示すSEM画像である。 本実施形態に係るりん酸Zr(IV)結晶を示す模式図である。 本実施形態に係るりん酸Zr(IV)結晶を示す模式図である。 本実施形態に係るりん酸Zr(IV)結晶を示す模式図である。 本実施形態に係るりん酸Zr(IV)結晶を示す模式図である。 本実施形態に係る表面処理鋼板の製造方法を示す流れ図である。 比較例18の表面処理鋼板の表面を示すSEM画像である。 比較例19の表面処理鋼板の表面を示すSEM画像である。 比較例20の表面処理鋼板の表面を示すSEM画像である。
以下、実施形態に係る表面処理鋼板およびその製造方法を、図面を参照して説明する。
(表面処理鋼板)
最初に、図1を参照して表面処理鋼板10について説明する。図1は、本実施形態に係る表面処理鋼板10の層構造を示す模式図である。図1に示すように、表面処理鋼板10は、鋼板またはめっき鋼板である基板1と、基板1の表面に形成されたりん酸Zr(IV)結晶2とを有する。なお、「りん酸Zr(IV)結晶2」の「IV」は、りん酸Zrが4価のりん酸Zrであることを表す。
[基板1]
基板1として用いられる鋼板またはめっき鋼板の種類は、特に限定されない。鋼板としてはアルミキルド鋼などの普通鋼、IF鋼や高張力鋼などの板および鋼帯を用いることができる。めっき鋼板としては、上記鋼板の表面にZn、Zn合金またはSnなどのめっき層を形成したものや、ステンレス鋼板を用いることができる。
[りん酸Zr(IV)結晶2]
図1に示すように、複数のりん酸Zr(IV)結晶2が基板1の少なくとも一方の表面に形成されている。
次に、図2〜8を参照してりん酸Zr(IV)結晶2についてさらに詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る表面処理鋼板10の表面を示すSEM画像である。図3は、図2を二値化した画像である。図4は、本実施形態に係る表面処理鋼板10の断面を示すSEM画像である。図5〜8は、本実施形態に係るりん酸Zr(IV)結晶を示す模式図である。
図2に示すように、表面処理鋼板10は、平面視した場合に網目状に形成されたりん酸Zr(IV)結晶2を基板1の表面に備える。
溶融又は軟化したコーティング剤は、網目状に形成されたりん酸Zr(IV)結晶2の表面全体を被覆する。これにより、りん酸Zr(IV)結晶2とコーティング剤との密着性が向上する。コーティング剤により被覆されたりん酸Zr(IV)結晶2は、絞り加工やしごき加工などを受けても剥離や割れが発生しにくく、コーティング剤との密着性が劣化しにくい。
[りん酸Zr(IV)結晶2の交点の数]
表面処理鋼板10の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した場合(平面視した場合)に、網目状に形成されたりん酸Zr(IV)結晶2の網目と長さ1μmの任意の直線との交点の平均値が、5〜20個である。網目状に形成されたりん酸Zr(IV)結晶2の網目と長さ1μmの任意の直線との交点の平均値が5〜20個であることにより、コーティング剤がりん酸Zr(IV)結晶2の表面を好適に被覆するため、好適な樹脂密着性を有することができる。
網目状に形成されたりん酸Zr(IV)結晶2の網目と長さ1μmの任意の直線との交点の数を測定する際には、図3に示すように、表面処理鋼板10を平面視したSEM画像を二値化した画像(以下、二値化画像と呼称する)を用いて測定する。なお、図3に示す二値化画像では、白色の部分にりん酸Zr(IV)結晶2が存在する。
表面処理鋼板10を平面視したSEM画像は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、1万〜5万倍で撮影するとよい。また、SEM画像の二値化画像を作成する際は、コンピュータで画像解析用のソフトウェアを用いた画像処理をすればよい。二値化画像においてりん酸Zr(IV)結晶2の網目の交点の数の測定方法は、例えば、二値化画像上100nm間隔で横方向に長さ1μmの直線を5本引き、網目と交わる点を目視により計数し、交点の数の平均値を算出すればよい。
交点の数の平均値を算出する際に用いる任意の直線の数は特に限定されないが、例えば5本が好ましく、より好ましくは10本である。
[りん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数]
表面処理鋼板10の断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した場合に、基板1の表面を基準とする鉛直方向に高さ20〜200nmの位置(以下、特定高さ位置と呼称する)にりん酸Zr(IV)結晶2の頂点が、基板1の表面方向の長さ1μm当たり5〜30点形成されていることが好ましい。
りん酸Zr(IV)結晶2の頂点の位置が基板1の表面を基準として鉛直方向に20nm未満であると、表面処理鋼板10とコーティング剤との接触部分が小さく、コーティング剤との密着性を向上させるのが難しい。一方、りん酸Zr(IV)結晶2の頂点の位置が基板1の表面を基準として鉛直方向に200nmを超えると、加工時に折れやすく、コーティング剤との密着性が劣化する。
特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数が5未満では、表面処理鋼板10とコーティング剤との接触面積が小さく、コーティング剤との密着性を向上させるのが難しい。一方、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数が30を超えると、りん酸Zr(IV)結晶2の基板1に近い部分での間隙が減少し、コーティング剤の侵入が困難になる。そのため、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数が30超の場合には、コーティング剤との密着性を向上させることが難しい。
りん酸Zr(IV)結晶2の頂点の観察に用いる断面試料は、クロスセクションポリッシャ(登録商標)を用いて、表面処理鋼板10の板長方向又は板幅方向の断面試料を作成する。なお、観察する際には、表面処理鋼板10の表面にカーボン等の蒸着を施した状態で、SEMを用いて10000倍以上の倍率で観察することが好ましい。より好ましい倍率は、30000〜50000倍である。
りん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数は、オージェ電子分光装置(AES)を用いて測定することもできる。AESを用いて結晶頂点の数を測定する場合には、まず、AESを用いてZr及びPを検出する。AESによるZr及びPの検出結果から、ZrとPとが同じ位置に存在し、かつ、ZrとPとの存在比率(モル比)が0.95〜1.05である部位にりん酸Zr(IV)結晶2が形成されていると判断する。上述の方法でりん酸Zr(IV)結晶2の形成されている部位を特定した上で、基板1の表面方向の長さ1μm当たりに形成されているりん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数を測定する。
図5に示すように、りん酸Zr(IV)結晶2が略三角形である場合には、基板1の表面を基準とするりん酸Zr(IV)結晶2の鉛直方向の高さは、頂点Aと、頂点Aから基板1の表面に下ろした垂線の足である点Hとを結ぶ線分AHの長さとする。
図6に示すように、りん酸Zr(IV)結晶2が略四角形である場合には、以下の方法で基板1の表面を基準とするりん酸Zr(IV)結晶2の鉛直方向の高さを求める。まず、頂点A’から基板1の表面に垂線を引き、頂点A’と垂線の足である点H’とを結ぶ線分A’H’の長さを求める。次に、頂点Dから基板1の表面に垂線を引き、頂点Dと垂線の足である点H’’とを結ぶ線分DH’’の長さを求める。上述の方法で求められた線分A’H’の長さと線分DH’’の長さとの平均の長さを、基板1の表面を基準とするりん酸Zr(IV)結晶2の鉛直方向の高さとする。
すなわち、基板1の表面を基準とするりん酸Zr(IV)結晶2の鉛直方向の高さが20〜200nmであれば、基板1の表面を基準とする鉛直方向の高さ20〜200nmの位置にりん酸Zr(IV)結晶2の頂点が存在することになる。
図7に示す頂点L及びMは、基板1の表面から鉛直方向に20〜200nmの位置に存在する。一方、図7に示す頂点Nは、基板1の表面から鉛直方向に20nm未満の位置に存在する。そのため、図7に示す場合には、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数は2である。
図8に示す頂点O,P及びQは、基板1から鉛直方向に20〜200nmの位置に存在する。そのため、図8に示す場合には、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶2の頂点の数は3である。
基板1の表面に形成されるりん酸Zr(IV)結晶2の付着量は、金属Zr量に換算して5〜50mg/mであることが好ましい。りん酸Zr(IV)結晶2の付着量が金属Zr量に換算して5mg/m未満では、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶2の頂点数が少なく、コーティング剤との密着性を向上させることが難しい。りん酸Zr(IV)結晶2の付着量が金属Zr量に換算して50mg/mを超えると、りん酸Zr(IV)結晶2が密に存在することによりりん酸Zr(IV)結晶2に割れが生じる可能性が高くなる。これにより、コーティング剤との密着性が低下する場合があるので好ましくない。
なお、Zrの濃度は基板1の表面側において高く、基板1の表面から鉛直方向に離間するに従って低くなる。つまり、Zrの濃度は、基板1の表面を基準とし、鉛直方向にグラデーションが形成されている。この原因としては、りん酸Zr(IV)結晶2は後述するように酸化Zr(IV)結晶がりん酸化されることにより形成されるが、りん酸化される際に酸化Zr(IV)結晶の先端側が基板1の表面側に溶け落ちるためであると考えられる。
表面処理鋼板10はコーティング剤との密着性だけでなく、耐食性にも優れている。表面処理鋼板10が耐食性にも優れている理由としては、コーティング剤の剥離がりん酸Zr(IV)によって抑制され、腐食因子が金属表面に極めて到達しにくいためであると考えられる。
上述のように、表面処理鋼板10はコーティング剤との密着性及び耐食性に優れており、特に缶用鋼板、自動車用鋼板及び家電用鋼板などに用いることができる。
(表面処理鋼板10の製造方法)
次に、図9を参照して表面処理鋼板10の製造方法について説明する。図9は、本実施形態に係る表面処理鋼板10の製造方法を示す流れ図である。
図9に示すように、表面処理鋼板10の製造方法は、陰極電解処理工程、水洗処理工程及びりん酸化処理工程を有するので、それぞれの工程について詳細に説明する。
[前処理工程]
基板1の表面に油脂又はその他の汚れが付着していると、酸化Zr(IV)の析出が妨げられる。そのため、表面処理鋼板10の製造に当たっては、表面が清浄な基板1を用いることが好ましい。基板1の表面が清浄ではない場合には、基板1の材質に適した脱脂等の処理を行うことが好ましい。基板1として鋼板を用いる場合は、水酸化ナトリウム水溶液中で電解処理を施すことにより、鋼板表面の脱脂を行うことが好ましい。
[陰極電解処理工程]
次に、ZrF 2−を含有する陰極電解処理液を用いて基板1を陰極電解処理することによって、基板1の表面に酸化Zr(IV)を析出させる(ステップS101)。ZrF 2−源として用いることのできる化合物としては、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸アンモニウム 、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸カリウム 、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸ナトリウム等が挙げられる。
ZrF 2−を含有する陰極電解処理液を用いた陰極電解処理による酸化Zr(IV)の析出反応は、次のように説明できる。まず、陰極である基板1の表面で、下式(1)のように、水素イオンが還元されて水素ガスが生成される。これにより、基板1表面近傍の水素イオン濃度が低下し、pHが上昇する。陽極には、白金または白金めっきしたチタン等の金属を用いるのが好ましい。
pHが上昇した基板1表面近傍のZrF 2−が、下式(2)のように反応して、水酸化Zr(IV)となって基板1表面に沈殿する。さらに脱水することにより、下式(3)のように酸化Zr(IV)が形成される。
陰極である基板1の表面近傍に高pH層が形成され、その高pH層においてZrF 2−から水酸化Zr(IV)の沈殿皮膜が形成される。そのため、基板1のごく近傍では、ZrF 2−の欠乏層が生じる。ZrF 2−の欠乏層ではZrF 2−の反応が起こらないので、上記の式(2)の反応の場は、基板1の近傍から次第に離れる。
上述のように反応する結果、酸化Zr(IV)が基板1の面方向に広がって析出するのではなく、基板1の表面の鉛直方向に対して少し傾いた方向に析出する。基板1の表面の鉛直方向ではなく、少し傾いた方向に析出する理由は明確ではないが、上述の方向に析出することで結晶が安定化するためであると考えられる。
陰極電解処理液のZrF 2−の濃度は、0.15〜2.0mol/dmである。
陰極電解処理液のZrF 2−の濃度が2.0mol/dm超の場合には、上記の式(2)の反応が起こりやすくなって、無定形の酸化Zr(IV)結晶が形成される。
陰極電解処理液のZrF 2−の濃度が0.15mol/dm未満の場合は、陰極である基板1の近傍に生じる高pH層の大部分がZrF 2−欠乏層となるため、上述したような酸化Zr(IV)の規則的な成長が起こらず、粒状の形態を有する酸化Zr(IV)結晶が析出する。
陰極電解処理液の温度は、20℃〜60℃である。陰極電解処理液の温度が20℃未満の場合には、無定形の酸化Zr(IV)結晶が析出する。この場合には、りん酸化処理を行っても、好適な形状のりん酸Zr(IV)結晶2が形成されないため好ましくない。
一方、陰極電解処理液の温度が60℃を超えると、酸化Zr(IV)結晶がほとんど析出しないため、好ましくない。
陰極電解処理液のpHは、3.5〜4.5である。陰極電解処理液のpHが3.5未満の場合には、酸化Zr(IV)結晶の析出量が非常に少ないため好ましくない。
一方、陰極電解処理液のpHが4.5超の場合には、無定形の水酸化Zr(IV)が析出する。この場合には、後述するりん酸化処理を行っても、基板1の表面にりん酸Zr(IV)結晶2を形成するのが困難である。
陰極電解処理における電流密度は、1〜20A/dmである。陰極電解処理における電流密度が1A/dm未満の場合には、長時間陰極電解処理を行っても、酸化Zr(IV)結晶がほとんど析出しないため好ましくない。
一方、陰極電解処理における電流密度が20A/dmを超えると、酸化Zr(IV)結晶が板状に成長せず、後述するりん酸化処理を行っても、好適な形状を有するりん酸Zr(IV)結晶2が形成されないため好ましくない。
陰極電解処理の電気量は、1〜30C/dmである。陰極電解処理の電気量が1C/dm未満の場合には、酸化Zr(IV)結晶の析出量が少なく、後述するりん酸化処理を行うことにより、酸化Zr(IV)結晶が溶解及び消失してしまう。一方、陰極電解処理の電気量が30C/dmを超えると、酸化Zr(IV)結晶が過剰に析出し、後述するりん酸化処理によって形成されるりん酸Zr(IV)結晶2が好適な形状とならないため好ましくない。
[水洗処理工程]
陰極電解処理工程後、板状の酸化Zr(IV)結晶が析出した基板1を水洗する(ステップS103)。水洗処理工程を行うことにより、過剰に付着した酸化Zr(IV)結晶を洗い流すとともに、後述するりん酸化処理工程が適切に行われるように、表面性状等を調整する。
水洗処理工程で用いる水の温度は、5℃〜80℃が好ましい。水洗処理工程の処理時間は、特に限定されないが、0.5〜5秒が好ましい。
[りん酸化処理工程]
水洗処理工程後の基板1を、りん酸イオンを主成分とし、pHが2.5〜3.5のりん酸化処理液に0.5秒以上浸漬する(ステップS103)。この工程で、析出した酸化Zr(IV)結晶の一部は溶解し、一部はりん酸Zr(IV)結晶2に変化する。
りん酸化処理液のpHが2.5未満の場合には、酸化Zr(IV)のりん酸化処理液に対する溶解度が高いため、酸化Zr(IV)が短時間で溶解し、りん酸化処理工程の制御が難しくなるため好ましくない。
一方、りん酸化処理液のpHが3.5を超えると、りん酸イオンと酸化Zr(IV)との反応性が低い。そのため、酸化Zr(IV)結晶のごく表面を除き、大部分がりん酸化されないため好ましくない。
りん酸化処理工程の処理時間は、0.5秒以上である。
りん酸化処理工程の処理時間が0.5秒未満の場合には、酸化Zr(IV)結晶のりん酸化が不十分であり、酸化Zr(IV)結晶のごく表面を除き、大部分がりん酸化されないため好ましくない。
一方、析出した全ての酸化Zr(IV)がりん酸Zr(IV)結晶2へ変化した後は、りん酸化処理工程を行う必要が無い。りん酸化処理工程の処理時間の上限は特に定めないが、例えば10秒である。より好ましいりん酸化処理工程の処理時間の上限は、5秒である。
りん酸化処理液は、りん酸イオン、りん酸水素イオンおよびりん酸二水素イオンを合計でPO 3−に換算して0.0316〜0.316mol/dm含有する。りん酸化処理液がりん酸イオン、りん酸水素イオンおよびりん酸二水素イオンを合計で上記の量含有することにより、りん酸Zr(IV)結晶2が好適に形成されるので好ましい。
なお、りん酸化処理液は、溶解したZr(IV)イオンを含有しても構わない。
特許文献1〜4の化成処理方法では、酸化Zr(IV)とりん酸塩とを共に含む陰極電解処理液を用いて陰極電解処理することにより、化成処理皮膜を形成する。つまり、特許文献1〜4では、化成処理皮膜が1段階処理により形成される。
一方、本実施形態の表面処理鋼板10の製造方法では、陰極電解処理工程およびりん酸化処理工程の2工程により、基板1の表面にりん酸Zr(IV)結晶2を形成する。つまり、本実施形態では、りん酸Zr(IV)結晶2が2段階処理により形成される。これにより、表面処理鋼板10は優れたコーティング剤との密着性および耐食性を有する。
表面処理鋼板10が優れたコーティング剤との密着性および耐食性を有する理由としては、りん酸化処理工程において酸化Zr(IV)結晶をりん酸化処理液に浸漬することによって、酸化Zr(IV)結晶がりん酸Zr(IV)結晶2に変化するとともに、酸化Zr(IV)結晶が一部溶解することによりりん酸Zr(IV)結晶2が平面視した場合に網目形状を有することに起因すると考えられる。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。以下に示す実施例は、本実施形態に係る表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法の一例にすぎず、本実施形態に係る表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法は、以下に示す実施例に限定されない。
[基板、前処理、めっき処理]
基板として、鋼板の表面にSnめっき層が形成されたSnめっき鋼板を用いた。具体的には、低炭素冷延鋼帯を連続焼鈍および調質圧延することにより得た板厚0.18mm、調質度T−5CAのSPB鋼帯を鋼板として使用した。前処理として、10mass%水酸化ナトリウム溶液中でSPB鋼帯に対して陰極電解脱脂を行った後、5mass%希硫酸でSPB鋼帯を酸洗した。
比較例14〜20は、ワット浴を用いて70mg/mのニッケルめっきを施した。
次いで、フェロスタン浴を用いてSPB鋼帯に電気Snめっきを施した。具体的には、Snイオンを20g/L、フェノールスルホン酸イオンを75g/L、界面活性剤を6g/L含む43℃のSnめっき液中で、電流密度20A/mで陰極電解処理した。陽極には、白金を約1μmめっきしたチタンを用いた。
Snめっき後は、Snめっき液を10倍希釈した溶液にSPB鋼帯を浸漬し、ゴムロールで液切りをした後、冷風で乾燥した。通電加熱によって10秒間で260℃まで昇温させてSnをリフローし、直ちに75℃の水でクエンチした。
1mol/dmの希塩酸を用いた電解剥離法により測定された全Sn量は2.8g/mであり、Sn−Fe合金層を構成するFeSnの量は金属Sn量に換算して1.0〜1.1g/mであった。
実施例および比較例1〜13は、引き続き該Snめっき鋼板に、下記のように化成処理を施した。
[陰極電解処理]
前記のSnめっき鋼帯に、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸アンモニウムを0.15〜2.0mol/dm以下の濃度で含有し、温度が20℃〜70℃、pH3.5〜4.5の(NHZrF水溶液中で、1〜20A/dmの電流密度、1〜30C/dmの電気量の条件下で陰極電解処理を施した。
[水洗処理]
陰極電解処理後、陰極電解処理を施したSnめっき鋼帯を30℃の水で2秒間水洗した。
[りん酸化処理]
水洗処理後、Snめっき鋼帯に対してりん酸化処理を施した。
りん酸化処理には、りん酸イオン、りん酸水素イオン及びりん酸二水素イオンの合計の濃度が1wt%であり、温度が40℃であるりん酸化処理液を用いた。水酸化ナトリウムを用いて、りん酸化処理液のpHを2.5〜3.5に調整した。
Snめっき鋼帯を、上述のりん酸化処理液に0.5〜10秒浸漬した。
りん酸化処理後、ゴムロールで液を絞り、速やかに水洗および乾燥した。
上述の工程により得られた表面処理鋼板を、試験材と呼称する。
実施例及び比較例1〜13は、陰極電解処理工程とりん酸化処理工程との2段階処理によりりん酸Zr(IV)結晶を形成したのに対して、比較例14〜20は、Snめっき鋼帯に対して、Zr及びリン酸塩を含む陰極電解処理液を用いた陰極電解処理によりりん酸Zr(IV)を含む化成処理皮膜を形成した。つまり、比較例14〜20では、1段階処理で化成処理皮膜を形成した。
なお、比較例14〜18で用いた陰極電解処理液は、特許文献3で用いられている化成処理液B1に相当し、比較例19で用いた陰極電解処理液は、特許文献3で用いられている化成処理液B2に相当し、比較例20で用いた陰極電解処理液は、特許文献3で用いられている化成処理液B3に相当する。
Zr量及びP量は、蛍光X線強度から、予め作成した検量線を使って算出した。
酸化Zr(IV)結晶のりん酸化状態は、オージェ電子分光分析(AES)により調べた。具体的には、結晶ごとにZrとPとの存在比率(モル比)を調べ、ZrとPとのモル比が0.95〜1.05である場合には、その結晶は酸化Zr(IV)結晶が全てりん酸Zr(IV)結晶に変化していると判断した。
一方、ZrとPとのモル比が0.95未満である場合には、酸化Zr(IV)結晶の一部はりん酸Zr(IV)結晶に変化しているが、酸化Zr(IV)結晶が残存していると判断した。また、ZrとPとのモル比が1.05超である場合には、酸化Zr(IV)結晶が過剰にりん酸化されていると判断した。
Sn付着量は、1mol/Lの希塩酸中でSnめっき鋼板を陽極とする電解剥離法により求めた。
網目状に形成されたりん酸Zr(IV)結晶の網目の交点の数は、以下のようにして測定した。
試験材を平面視したSEM画像を、日本電子製FE−SEM JSM−6500Fを用いて、加速電圧5kV、3万倍の倍率で取得した。得られたSEM画像をソフトウェア“Lia32”を用いた画像処理により二値化し、二値化画像上100nm間隔で横方向に長さ1μmの直線を5本引き、網目と交わる点を目視により計数し、交点の数の平均値を算出した。
特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数は、以下のようにして測定した。
クロスセクションポリッシャ(登録商標、日本電子株式会社製)を用いて、試験材にArイオンビームを照射して断面を加工した(CP加工)。断面を加工した試験材を、電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社JSM−6500F)を用いて、倍率50000倍で観察した。
基板の表面方向の長さ1μm当たりの特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数を測定した。この測定を10視野において行い、その平均値を算出した。
上記試験材について、以下に示す(A)〜(D)の各項目について評価試験を実施した。
(A)塗料一次密着性
試験材に、コーティング剤としてエポキシ・フェノール系塗料を60mg/dm塗布した。以下では、エポキシ・フェノール系塗料を塗布した試験材を、塗装板と呼称する。塗装板に対して、210℃で10分間の焼き付けを行った。さらに、190℃で15分間、230℃で90秒間の追い焼きを行った。
焼き付け及び追い焼きを施した塗装板から、縦の長さ5mm、横の長さ100mmの大きさの試料を切り出した。同じ試験材から切り出した2枚の試料を、塗装面が向かい合うようにして、間に厚さ100μmのフィルム状のナイロン接着剤を挟んだ。これを、つかみ部を残して、ホットプレスで200℃で60秒間予熱した後、2.9×10Paの圧力をかけて200℃で50秒間圧着し、引張試験片とした。
つかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張り、剥離強度を測定して、塗料一次密着性を評価した。
幅5mm当たりの剥離強度が59N以上の試験片を「Very Good」、39N以上59N未満の試験片を「Good」、19N以上39N未満の試験片を「Poor」、19N未満の試験片を「Bad」とした。
(B)塗料二次密着性
(A)と同様の方法で引張試験片を作製した。
引張試験片をオートクレーブ中で125℃の水蒸気雰囲気に30分間曝し、90℃まで降温した後、引張試験片をオートクレーブから取り出した。引張試験片をオートクレーブから取り出した直後に、引張試験片のつかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張った。その際の剥離強度を測定して、塗料二次密着性を評価した。
幅5mm当たりの剥離強度が、42N以上の試験片を「Very Good」、29N以上42N未満の試験片を「Good」、15N以上29N未満の試験片を「Poor」、15N未満の試験片を「Bad」と評価した。
(C)耐食性
塩化物イオンを含む酸性溶液を貯蔵するための容器用鋼板として各試験材を用いた場合の耐食性を評価するため、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。
試験材に、エポキシ・フェノール系塗料を50mg/dm塗布した。以下では、エポキシ・フェノール系塗料を塗布した試験材を塗装板と呼称する。塗装板に対して、205℃で10分間の焼き付けを行い、さらに、180℃で10分間の追い焼きを行った。
焼き付け及び追い焼きを施した塗装板から、縦の長さ50mm、横の長さ50mmの大きさの試料を切り出した。試料の表面にカッターで地鉄に達するまでクロスカットを入れ、資料の端面と裏面とを塗料でシールした。その後、大気開放下で、試料を1.5%クエン酸と1.5%塩化ナトリウムとを含有する55℃の試験液中に96時間浸漬した。
試験液中に96時間浸漬した後の試料を水洗および乾燥した後、速やかにスクラッチ部及び平面部をテープで剥離して、クロスカット部近傍の腐食状況、クロスカット部のピッティング腐食及び平面部の塗膜剥離状況を観察して、耐食性を評価した。
テープによる剥離及び腐食の両方が発見されなかった試験片を「Very Good」、スクラッチ部から0.2mm未満の範囲で生じたテープ剥離と目視不能な腐食との少なくとも一方が発見された試験片を「Good」、スクラッチ部から0.2〜0.5mmの範囲で生じたテープ剥離と目視可能な小さい腐食との少なくとも一方が発見された試験片を「Poor」、0.5mmを超えるテープ剥離が発見された試験片を「Bad」と評価した。
(D)フィルム密着性
試験材の両面に厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを200℃でラミネートし、絞りしごき加工を行って缶体を作製した。上記の方法で作製された缶体に対し、125℃の温度下で、30分間レトルト処理を行った。レトルト処理後の缶体のフィルムの剥離状況を観察し、「Very Good」(剥離面積率0%)、「Good」(剥離面積率0%超2%未満)、「Poor」(剥離面積率2%以上10%未満)、「Bad」(剥離面積率10%以上)の4段階に分類し、「Good」を合格レベルとした。
上記4項目の性能評価のうち、最も低い評価結果を総合評価として用いた。試験材の総合評価が「Very Good」または「Good」であれば、その試験材は実用することが可能である。
実施例および比較例の処理条件を表1〜3に、得られた結果を表4〜6に示した。
表4に示すように、実施例は、いずれも総合評価が「Very Good」または「Good」であった。一方、表5及び6に示すように、比較例は、いずれも総合評価が「Poor」または「Bad」であった。
比較例1はZr(IV)陰極電解処理におけるZrF 2−濃度が低い例である。酸化Zr(IV)結晶の析出数が少ないことに起因して、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数が少なかった。耐食性およびフィルム密着性が劣っていた。
比較例2はZr(IV)陰極電解処理におけるZrF 2−濃度が高い例である。特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数が多かった。フィルム密着性が不十分であった。
比較例5は陰極電解処理液のpHが低い例である。りん酸Zr(IV)結晶が観察されなかった。評価した全ての項目で、性能が劣っていた。
比較例6は陰極電解処理液のpHが高い例である。りん酸Zr(IV)結晶が無定形であり、特定高さ位置に存在する頂点が観察されなかった。フィルム密着性が不十分であった。
比較例7は陰極電解処理における陰極電流密度が低い例である。りん酸Zr(IV)結晶が析出しなかった。評価した全ての項目で、性能が劣っていた。
比較例8は陰極電解処理における陰極電流密度が高い例である。りん酸Zr(IV)結晶が無定形であった。評価した全ての項目で、性能が劣っていた。
比較例9は陰極電解処理における電気量が少ない例である。りん酸Zr(IV)結晶が析出しなかった。評価した全ての項目で、性能が劣っていた。
比較例10は陰極電解処理における電気量が多い例である。酸化Zr(IV)結晶のりん酸化が不十分であった。フィルム密着性が劣っていた。
比較例11はりん酸化処理液のpHが低い例である。りん酸化処理における酸化Zr(IV)の溶解が速いことに起因して、りん酸Zr(IV)結晶が観察されなかった。評価した全ての項目で、性能が劣っていた。
比較例12はりん酸化処理液のpHが高い例である。酸化Zr(IV)結晶のりん酸化が不十分であった。フィルム密着性が劣っていた。
比較例13はりん酸化処理の処理時間が短い例である。酸化Zr(IV)結晶のりん酸化が不十分であった。フィルム密着性が劣っていた。
比較例14〜18は、特許文献3の化成処理液B1に相当する陰極電解処理液を用いて1段階で陰極電解処理した例である。いずれもフィルム密着性が劣っていた。
なお、比較例17の試験材のSEM画像を図10に示す。図10に示すように、比較例17では、りん酸Zr(IV)結晶が平滑であり、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数が少なかった。
比較例19は、特許文献3の化成処理液B2に相当する陰極電解処理液を用いて1段階で陰極電解処理した例である。比較例19では、全ての評価結果が劣っていた。
なお、比較例19の試験材のSEM画像を図11に示す。図11に示すように、比較例19では、りん酸Zr(IV)結晶が粒状であり、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数が少なかった。
比較例20は、特許文献3の化成処理液B3に相当する陰極電解処理液を用いて1段階で陰極電解処理した例である。比較例20では、全ての評価結果が劣っていた。
なお、比較例20の試験材のSEM画像を図12に示す。図12に示すように、比較例20では、りん酸Zr(IV)結晶が無定形であり、特定高さ位置に存在するりん酸Zr(IV)結晶の頂点の数が少なかった。
なお、詳細な結果は示さないが、特許文献1、2および4の化成処理皮膜も、特許文献3の化成処理皮膜と同様のりん酸Zr(IV)結晶が形成されていた。
上記一実施形態によれば、コーティング剤との密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法を提供することができる。
1 鋼板
2 りん酸Zr(IV)結晶
10 表面処理鋼板

Claims (2)

  1. 鋼板またはめっき鋼板である基板と;
    前記基板の少なくとも一方の表面に形成され、平面視した状態で網目と長さ1μmの任意の直線との交点の数を測定した場合に、複数の前記任意の直線との前記交点の数が平均で5〜20個である網目形状を有するりん酸Zr(IV)結晶と;
    を有し、
    かつ前記りん酸Zr(IV)結晶が、前記基板の前記表面から鉛直方向に20〜200nmの位置に、前記基板の面方向1μm当たり5〜30個の頂点を有することを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 前記りん酸Zr(IV)結晶の付着量が、金属Zr量に換算して5〜50mg/mであることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理鋼板。
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