JP6008068B1 - 表面処理鋼板および表面処理鋼板の製造方法 - Google Patents

表面処理鋼板および表面処理鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

この表面処理鋼板は、鋼板またはめっき鋼板である基板と、前記基板の表面に形成され、形状が板状または針状である酸化Zr(IV)結晶と、前記酸化Zr(IV)結晶の表面を0.5nm〜2.0nmの被覆厚さで被覆するりん酸Zr(IV)とを含むZr複合体とを有し、前記Zr複合体で、前記基板と接する一端と、他端とを結ぶ線分の長さの平均が、50nm〜500nmであり、前記Zr複合体と前記基板の前記表面とにより形成される角度の平均が、20°〜65°であり、前記Zr複合体を前記基板の前記表面に垂直に投射した場合の投射面積は、前記基板の前記表面の面積に対して、90%以上である。

Description

本発明は、表面処理鋼板および表面処理鋼板の製造方法に関する。
本願は、2014年12月1日に、日本に出願された特願2014−243298号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
Snめっき鋼板は、主に缶用鋼板として使用されている。Snめっき鋼板の表面に施される化成処理としては、従来よりクロメート処理が使用されてきた。しかしながら、近年はCr(VI)の使用を回避する目的で、Cr以外の化学種、特に酸化Zr(IV)を利用する化成処理が検討されている。
特許文献1〜3の容器用鋼板には、鋼板表面に、Zr皮膜、りん酸化合物皮膜およびフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも二種以上の皮膜が形成されている。
特許文献4の容器用鋼板には、鋼板表面に、酸化Zr(IV)とりん酸Zr(IV)との混合物を含む化成処理皮膜層が形成されている。特許文献4の化成処理皮膜層では、化成処理皮膜層の表面から40%以内の部分にりん酸Zr(IV)、化成処理皮膜層の表面から40〜100%の部分に酸化Zr(IV)が偏在している。
また、特許文献4には、鋼板またはめっき鋼板に対して、Zrイオンおよびりん酸イオンを含む酸性溶液を用いた陰極電解処理を1回行うことにより、上記容器用鋼板を製造する方法が開示されている。
日本国特開2009−1851号公報 日本国特開2009−1853号公報 日本国特開2012−62519号公報 日本国特開2009−120919号公報
上記特許文献1〜4に開示されている容器用鋼板では、容器用鋼板の表面に塗料やフィルム(以下、コーティング剤という)を被覆した場合に、容器用鋼板とコーティング剤との間の密着性が十分ではない場合があった。
特許文献1〜4の容器用鋼板において、酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)から成る化成処理皮膜の表面は、平滑であるか、または表面に粒状もしくは無定形の酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)が析出している。粒状または無定形の酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)が鋼板またはめっき鋼板表面に析出している場合は、容器用鋼板の表面が平滑である場合と比べて、容器用鋼板とコーティング剤との間の接触面積が増加するため、コーティング剤との間の密着性がある程度向上する。
しかしながら、酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)が粒状または無定形の場合には、コーティング剤が酸化Zr(IV)やりん酸Zr(IV)の下に回り込まないため、容器用鋼板とコーティング剤とが物理的に密着しない。このような場合には、容器用鋼板とコーティング剤との密着性は両者の親和力に依存するため、必要な密着性が得られない。
特許文献1〜4に記載されている容器用鋼板とコーティング剤との密着性を向上させるには、コーティング剤に対する親和性の高いりん酸Zr(IV)を多く容器用鋼板に付着させることが必要である。しかしながら、特許文献4に記載されている通り、りん酸Zr(IV)を多く付着させると、化成処理皮膜の割れが起こりやすくなるため、コーティング剤との密着性が低下する。そのため、特許文献1〜4に記載されている容器用鋼板では、コーティング剤に対する密着性を向上するのが困難であった。
また、特許文献1〜4の容器用鋼板では、耐食性の更なる向上が求められていた。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、塗料またはフィルムに対する密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決して、係る目的を達成するために以下の手段を採用する。
(1)本発明の一態様に係る表面処理鋼板は、鋼板またはめっき鋼板である基板と、前記基板の表面に形成され、形状が板状または針状である酸化Zr(IV)結晶と、前記酸化Zr(IV)結晶の表面を0.5nm〜2.0nmの被覆厚さで被覆するりん酸Zr(IV)とを含むZr複合体とを有し、前記Zr複合体で、前記基板と接する一端と、他端とを結ぶ線分の長さの平均が、50nm〜500nmであり、前記Zr複合体と前記基板の前記表面とにより形成される角度の平均が、20°〜65°であり、前記Zr複合体を前記基板の前記表面に垂直に投射した場合の投射面積は、前記基板の前記表面の面積に対して、90%以上である。
(2)上記(1)に記載の表面処理鋼板において、前記Zr複合体の付着量が、金属Zr量に換算して5mg/m〜100mg/mであってもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の表面処理鋼板において、前記りん酸Zr(IV)の付着量が、P量に換算して0.1mg/m〜4.5mg/mであってもよい。
(4)上記(1)〜(3)の何れか一態様に記載の表面処理鋼板において、前記Zr複合体の付着量が金属Zr量に換算してZ1[mg/m]であり、前記りん酸Zr(IV)の付着量がP量に換算してP1[mg/m]である場合に、前記Z1を前記P1で除算して得られる比率Z1/P1が10〜100であってもよい。
(5)本発明の一態様に係る表面処理鋼板の製造方法は、ZrF 2−を0.15mol/L〜2.0mol/Lの濃度で含有し、温度が35℃〜50℃であり、pHが3.5〜4.5の陰極電解処理水溶液を用い、電流密度が2A/dm〜20A/dm、電気量が1C/dm〜20C/dmの条件下で、鋼板またはめっき鋼板である基板に陰極電解処理を施す陰極電解処理工程と、前記陰極電解処理工程後、前記陰極電解処理が施された前記基板に水洗処理を施す水洗処理工程と、前記水洗処理工程後、前記水洗処理が施された前記基板を、PO 3−換算で2g/l〜30g/lのりん酸イオンを含有し、pHが3.7〜6.5である浸漬処理水溶液に2秒〜4秒浸漬する浸漬処理工程と、を有する。
上記各態様によれば、塗料またはフィルムに対する密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法を提供することができる。
走査型電子顕微鏡(SEM)により取得した、本実施形態に係る表面処理鋼板の表面画像である。 SEMにより取得した、従来技術に係る表面処理鋼板の表面画像である。 SEMにより取得した、従来技術に係る表面処理鋼板の表面画像である。 SEMにより取得した、従来技術に係る表面処理鋼板の表面画像である。 基板上に析出した酸化Zr(IV)結晶の模式図である。 基板上に析出した酸化Zr(IV)結晶の模式図である。 基板上に析出した酸化Zr(IV)結晶の模式図である。 図5のE−E線での断面を示した断面図である。
以下、実施形態に係る表面処理鋼板及びその製造方法を、図面を参照して説明する。
(表面処理鋼板)
本実施形態の表面処理鋼板は、鋼板またはめっき鋼板である基板1と、基板1の表面に形成された酸化Zr(IV)結晶2と、酸化Zr(IV)結晶2の表面を被覆するりん酸Zr(IV)5を有する。以下では、基板1、酸化Zr(IV)結晶2及びりん酸Zr(IV)5のそれぞれについて、詳細に説明する。
なお、本実施形態では、表面をりん酸Zr(IV)5で被覆された酸化Zr(IV)結晶2をZr複合体10と呼称する。
[基板1]
本実施形態で基板1として用いられる鋼板またはめっき鋼板の種類は、特に限定されない。鋼板としては、アルミキルド鋼などの普通鋼、IF鋼や高張力鋼などの板および鋼帯を用いることができる。めっき鋼板としては、上記鋼板の表面に、Zn、Zn合金またはSnなどのめっき層を形成したものや、ステンレス鋼板を用いることができる。
[酸化Zr(IV)結晶2]
本実施形態に係る酸化Zr(IV)結晶2について説明する。
図5〜図7は、基板1上に析出した酸化Zr(IV)結晶2の模式図である。図5及び図6は酸化Zr(IV)結晶2が板状結晶の場合を表し、図7は酸化Zr(IV)結晶2が針状結晶の場合を表す。また、図5は酸化Zr(IV)結晶2の形状が略平行四辺形である場合を表し、図6は酸化Zr(IV)結晶2の形状が略平行四辺形ではない四角形である場合を表す。
図5〜図7に示すように、本実施形態において、基板1の表面には、酸化Zr(IV)結晶2が形成されている。本実施形態の酸化Zr(IV)結晶2は、板状結晶または針状結晶であり、板状結晶のみであってもよいし、針状結晶のみであってもよいし、板状結晶と針状結晶とが混在していてもよい。
なお、本実施形態では、酸化Zr(IV)結晶2のごく表面をりん酸Zr(IV)が被覆しているため、酸化Zr(IV)結晶2の形状とZr複合体10の形状とは略同一と見なすことができる。
図5〜図7に示すように、Zr複合体10は、基板1の表面に直交する方向から傾いた方向に形成されているため、コーティング剤がZr複合体10の下側に回り込むことができる。これにより、コーティング剤がZr複合体10によって物理的に固定されるため、基板1とコーティング剤との間の密着強度を飛躍的に向上させることができる。
なお、基板1の表面に、上述の形態を有する酸化Zr(IV)結晶2を形成する技術は、本発明により新たに見出された知見である。
[Zr複合体10の結晶長]
複数のZr複合体10における、基板1と接する一端3と、その最も離れた他端4とを結ぶ線分の長さ(以下、結晶長という)の平均は、50nm〜500nmである。
Zr複合体10の結晶長は、樹脂埋め込み研磨またはCP加工などで断面を露出した試料を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することで測定することができる。SEMにより観察する際の倍率は、10000倍以上が好ましく、30000倍以上がより好ましい。
なお、図5に示すように、Zr複合体10の一端3と他端4とが平行である場合には、一端3と他端4とを結ぶ線分の長さ(図5の線分AHの長さ)は一定であるため、Zr複合体10の結晶長としてはその値を用いる。
図6に示すように、Zr複合体10が板状であって、一端3と他端4とが平行ではない場合には、一端3と他端4とを結ぶ線分の長さが一意には定まらない。このような場合には、まず、酸化Zr(IV)結晶2の各点のうち、一端3(基板1の表面)からの垂直距離が最も離間している点を決定する。そして、決定された点から一端3までの垂直距離を、酸化Zr(IV)結晶2の結晶長とする。
図6に示す場合に、Zr複合体10の各点における一端3からの垂直距離を比較すると、点Aが最も離間した位置にある。点Aから一端3に向けて引いた垂線の足(垂点)を点Hとしたとき、線分AHの長さをZr複合体10の結晶長とする。
図7に示すように、Zr複合体10が針状である場合にも、一端3と他端4とを結ぶ線分の長さが一意には定まらない。このような場合にも、図6に示す場合と同様に、まず、Zr複合体10の各点のうち、一端3(基板1の表面)からの垂直距離が最も離間している点を決定する。そして、決定された点から一端3までの垂直距離を、Zr複合体10の結晶長とする。
図7に示す場合に、Zr複合体10の各点における一端3からの垂直距離を比較すると、点Aが最も離間した位置にある。点Aから一端3の延長線に向けて引いた垂線の足(垂点)を点Hとしたとき、線分AHの長さをZr複合体10の結晶長とする。
結晶長が50nm未満では、コーティング剤がZr複合体10に物理的に固定されないため、好適なコーティング剤に対する密着性が得られない。一方、Zr複合体10は、結晶長が500nmを超えると割れやすくなり、コーティング剤との密着性が悪くなる。
複数のZr複合体10において、基板1と接する一端3と、その最も離れた他端4とを結ぶ線分の長さの平均は、より好ましくは、60nm〜300nmである。
[Zr複合体10の析出角度]
複数のZr複合体10において、Zr複合体10と基板1の表面とにより形成される角度(以下、析出角度という)は、平均で20°〜65°である。なお、本実施形態において、Zr複合体10の析出角度とは、Zr複合体10と基板1の表面とにより形成される底角の角度と、その底角に関する外角の角度とを比較したとき、より小さい角度を指す。
また、本実施形態において、Zr複合体10と基板1の表面とにおいて、底角と外角とは2対存在するが、いずれの底角と外角との対においても、底角の角度とその底角に関する外角の角度とを比較したとき、より小さい角度が20°〜65°である。
図5を例にして説明すると、Zr複合体10と基板1の表面とにより形成される底角はθ1及びθ2である。また、θ1の外角はφ1であり、θ2の外角はφ2である。底角θ1と外角φ1とを比較した場合に、より小さい角度を有するφ1の角度が20°〜65°である。なお、図5は、一端3(線分BC)と他端4(線分AD)とが平行である場合を表しているので、θ1とφ2とは同じ角度であり、φ1とθ2とは同じ角度である。
図6及び図7に示す場合は、図5の場合と同様に、底角θ1と外角φ1とを比較した場合に、より小さい角度を有するφ1の角度が20°〜65°である。また、底角θ2と外角φ2とを比較した場合に、より小さい角度を有するθ2の角度が20°〜65°である。
Zr複合体10の析出角度は、樹脂埋め込み研磨またはCP加工などで断面を露出した試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することで測定することができる。SEMにより観察する際の倍率は、10000倍以上が好ましく、30000倍以上がより好ましい。
なお、基板1の表面に形成された複数個のZr複合体10について析出角度を測定し、平均化することにより得られた角度を、Zr複合体10の析出角度とする。
析出角度が20°未満の場合には、コーティング剤が、基板1とZr複合体10との間に浸入することが難しい。そのため、コーティング剤がZr複合体10に物理的に固定されず、好適な密着性が得られない。
一方、析出角度が65°超の場合には、コーティング剤がZr複合体10の下側に侵入することが可能だが、コーティング剤が基板1から剥離しやすくなる。
析出角度は、より好ましくは平均で45°〜65°である。
[りん酸Zr(IV)5]
図8は、図5のE−E線での断面を示した断面図である。
図8に示すように、りん酸Zr(IV)5は、0.5nm〜2.0nmの被覆厚さで、酸化Zr(IV)結晶2の表面を被覆している。
りん酸Zr(IV)5の被覆厚さは、オージェ電子分光装置(AES)を用いて、Pの深さ方向分析を行うことで測定できる。りん酸Zr(IV)5はコーティング剤との密着性に優れる一方、被覆厚さが大きい場合には、割れや剥離を引き起こしやすい。本実施形態の表面処理鋼板では、酸化Zr(IV)結晶2による強度の確保と、最表面のりん酸Zr(IV)5によるコーティング剤に対する密着性の確保とを両立させている。
りん酸Zr(IV)5の被覆厚さは、より好ましくは1.5nm〜2.0nmである。
[投射面積]
Zr複合体10を、基板1の表面に垂直に投射した場合の投射面積は、基板1の表面積に対して、90%以上である。上記の比率が90%未満の場合には、コーティング剤がZr複合体10に物理的に固定されることによる密着性の向上効果が低減するため、好ましくない。
上記の投射面積および表面積は、表面にZr複合体10が形成された基板1の表面をSEMで撮像し、画像解析ソフトを用いることにより測定することができる。SEMの倍率は、10000倍程度が好ましい。
[Zr量]
Zr複合体10の付着量(酸化Zr(IV)結晶2及びりん酸Zr(IV)結晶5の合計付着量)は、金属Zr量に換算して10mg/m〜100mg/mであることが好ましい。
Zr複合体10の付着量が、金属Zr量に換算して10mg/m未満の場合には、Zr複合体10の大きさが不十分であるため、コーティング剤に対する好適な密着性を得ることが難しい。
Zr複合体10の付着量が金属Zr量に換算して100mg/mを超えると、Zr複合体10に割れが生じやすくなる。そのため、コーティング剤に対する好適な密着性を得るのが難しい。
Zr複合体10の付着量は、より好ましくは、金属Zr量に換算して20mg/m〜100mg/mである。
[P量]
りん酸Zr(IV)5の付着量は、P量に換算して、0.1mg/m〜4.5mg/mであることが好ましい。P量が上述の範囲であることにより、本実施形態に係る表面処理鋼板は、酸化Zr(IV)結晶2に起因する好適な強度と、りん酸Zr(IV)5に起因する好適な密着性とを得ることができる。
りん酸Zr(IV)5の付着量は、P量に換算して、0.25mg/m〜2.1mg/mであることがより好ましい。
[金属Zr量とP量との比率]
本実施形態に係る表面処理鋼板において、Zr複合体10の付着量を金属Zr量に換算してZ1[mg/m]とし、りん酸Zr(IV)5の付着量をP量に換算してP1[mg/m]とした場合に、Z1をP1で除算して得られる比率Z1/P1が10〜100であることが好ましい。
表面処理鋼板における金属Zr量とP量との比率が上述の範囲内であれば、酸化Zr(IV)結晶2の付着量とりん酸Zr(IV)5の付着量との比率が好適である。そのため、表面処理鋼板における金属Zr量とP量との比率が上述の範囲内であれば、酸化Zr(IV)結晶2に起因する好適な強度と、りん酸Zr(IV)5に起因する好適な密着性とを得ることができる。
比率Z1/P1は、より好ましくは20〜40である。
(表面処理鋼板の製造方法)
次に、本実施形態の表面処理鋼板の製造方法について述べる。
[前処理工程]
基板1の表面に、油脂等の汚れが付着していると、酸化Zr(IV)結晶2の付着が妨げられる。そのため、必要がある場合には、基板1の表面に脱脂等の前処理を行うことが望ましい。基板1表面の脱脂方法としては、水酸化ナトリウム水溶液中で基板1を電解処理する方法が挙げられる。基板1の電解処理としては、陰極電解処理と陽極電解処理とのどちらか一方でもよいし、陰極電解処理と陽極電解処理との両方を行ってもよい。
[陰極電解処理工程]
次に、ZrF 2−を含有する水溶液(以下、陰極電解処理水溶液という)を用いた陰極電解処理によって、基板1の表面に、酸化Zr(IV)結晶2を析出させる。ZrF 2−源としてはヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸カリウム、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸ナトリウム等が挙げられる。
ZrF 2−を含有する陰極電解処理水溶液を用いた陰極電解処理によって、基板1の表面に酸化Zr(IV)結晶2が析出する反応は、次のように説明できる。まず、陰極である基板1表面で、下式(1)のように水素イオンが還元されて水素ガスとなることで、表面近傍の水素イオン濃度が低下し、pHが上昇する。
pHが上昇した基板1近傍のZrF 2−が、下式(2)のように反応して、水酸化Zr(IV)となって基板1表面に沈殿し、さらに下式(3)のように脱水して酸化Zr(IV)となる。
陰極である基板1の表面近傍に高pH層が形成され、その高pH層においてZrF 2−から水酸化Zr(IV)の沈殿皮膜が形成される。そのため、基板1のごく近傍では、ZrF 2−の欠乏層が生じる。ZrF 2−の欠乏層ではZrF 2−の反応が起こらないので、上式(2)の反応の場は、基板1の近傍から次第に離れる。
上述のように反応する結果、酸化Zr(IV)結晶2は、基板1の面方向に広がって析出するのではなく、基板1の表面に対して20°〜65°の角度で析出する。基板1の表面に直交する方向ではなく、斜め方向に結晶が析出する理由は明確ではないが、上述の方向に析出することで結晶が安定化するためであると考えられる。
[ZrF 2−濃度]
陰極電解処理水溶液中のZrF 2−の濃度は、好ましくは0.15mol/L〜2.0mol/Lである。
陰極電解処理水溶液中のZrF 2−の濃度が0.15mol/Lより低いと、陰極である基板1の近傍に生じる高pH層の大部分がZrF 2−欠乏層となるため、酸化Zr(IV)結晶2の形状が規則的に形成されない。つまり、酸化Zr(IV)結晶2が板状または針状ではなく、粒状に形成される。
一方、陰極電解処理水溶液中のZrF 2−の濃度が2.0mol/Lを超える場合には、上式(2)の反応が促進され、酸化Zr(IV)が短時間で析出するため、結晶形態を制御することが難しい。
より好ましい陰極電解処理水溶液中のZrF 2−の濃度は、0.5mol/L〜1.5mol/Lである。
[陰極電解処理水溶液の温度]
陰極電解処理水溶液の温度は、好ましくは35℃〜50℃である。
35℃未満では、酸化Zr(IV)結晶2の析出角度が大きいため好ましくない。一方、陰極電解処理水溶液の温度が50℃を超えると、酸化Zr(IV)結晶2の析出角度が小さいため好ましくない。
[陰極電解処理水溶液のpH]
陰極電解処理水溶液のpHは、好ましくは3.5〜4.5である。
陰極電解処理水溶液のpHが3.5未満では、陰極である基板1の表面近傍のpHが十分に上がらず、水酸化Zr(IV)の沈殿が生じない。その結果、酸化Zr(IV)結晶2の析出量が少なくなるため好ましくない。
一方、陰極電解処理水溶液のpHが4.5超の場合には、基板1の表面で上式(1)の反応が起こりにくくなる一方、上式(2)の反応は起こりやすくなる。つまり、酸化Zr(IV)結晶2が様々な方向に伸長するため、規則的な形状を持たない酸化Zr(IV)結晶2が形成されるため好ましくない。
[電流密度]
陰極電解処理の電流密度(陰極電流密度)は、好ましくは2A/dm〜20A/dmである。
電流密度が2A/dm未満では、上式(1)の反応が抑制され、基板1の近傍におけるpH上昇が不十分となるため、上式(2)の反応の進行が遅くなる。その結果、酸化Zr(IV)結晶2がほとんど析出しないため好ましくない。
一方、電流密度が20A/dmを超えると、上式(1)の反応が促進され、基板1の近傍においてpHが急激に上昇する。その結果、上式(2)の反応が促進され、酸化Zr(IV)結晶2を板状または針状に形成することが難しいため好ましくない。
[電気量]
陰極電解処理の電気量は、好ましくは1C/dm〜20C/dmである。
電気量が1C/dm未満では、酸化Zr(IV)結晶2の析出量が不足し、コーティング剤に対する好適な密着性が得られないため好ましくない。一方、電気量が20C/dmを超えると、酸化Zr(IV)結晶2の析出量が過剰になり、耐アブレージョン性が劣化するため好ましくない。
[水洗処理工程]
陰極電解処理による酸化Zr(IV)結晶2の析出後、水洗処理を行う。水洗処理の条件としては、純水または浄水を用い、浸漬法またはシャワー状もしくはスプレー状にかける方法が挙げられる。
[浸漬処理工程]
水洗処理後、PO 3−換算で2〜30g/lのりん酸イオンを含有し、pHが3.7〜6.5の水溶液(以下、浸漬処理水溶液という)を用いた浸漬処理を2〜4秒行う。これにより、酸化Zr(IV)結晶2の先端部をりん酸化し、りん酸Zr(IV)5を形成する。なお、上述のりん酸イオンには、りん酸イオン、りん酸水素イオン及びりん酸二水素イオンを含む。
浸漬処理水溶液のpHが3.7未満では、酸化Zr(IV)結晶2の溶解が進行するため好ましくない。一方、浸漬処理水溶液のpHが6.5を超えると、りん酸イオンと酸化Zr(IV)結晶2との反応性が低く、酸化Zr(IV)結晶2の表面のりん酸化が十分に起こらないため好ましくない。
浸漬処理時間が2秒未満では、酸化Zr(IV)結晶2表面のりん酸化が十分に起こらず、コーティング剤に対する好適な密着性が得られないため好ましくない。一方、浸漬処理時間が4秒を超えると、酸化Zr(IV)結晶2の内部までりん酸化が進み、強度が弱くなってしまうため好ましくない。
特許文献1〜4では、酸化Zr(IV)とりん酸Zr(IV)とを共に含む化成処理液を用いて、基板1の表面を化成処理する方法が開示されている。この方法では、酸化Zr(IV)結晶2の形成とりん酸Zr(IV)5の形成とを独立に制御することは難しい。
一方、本実施形態に係る表面処理鋼板は、酸化Zr(IV)結晶2の形成とりん酸Zr(IV)5の形成とを別の行程で行うことにより、それぞれを独立に制御することが可能である。本実施形態では、りん酸Zr(IV)5の付着量を少なくすることにより、コーティング剤との密着性が好適である。これは、従来技術では、りん酸Zr(IV)5の付着量が多かったため、コーティング剤との密着性が好ましくなかったものと考えられる。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。以下に示す実施例は、本実施形態に係る表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法の一例にすぎず、本実施形態に係る表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法は、以下に示す実施例に限定されない。
[基板、前処理、めっき処理]
基板1として、鋼板の表面にSnめっき層が形成されたSnめっき鋼板を用いた。具体的には、低炭素冷延鋼帯を連続焼鈍および調質圧延することにより得た板厚0.18mm、調質度T−5CAのSPB鋼帯を鋼板として使用した。前処理として、10mass%水酸化ナトリウム溶液中でSPB鋼帯に対して陰極電解脱脂を行った後、5mass%希硫酸でSPB鋼帯を酸洗した。
次いで、フェロスタン浴を用いて、鋼帯に電気Snめっきを施した。Snイオンを20g/L、フェノールスルホン酸イオンを75g/L、界面活性剤を6g/L含む43℃のめっき液中で、陰極電流密度20A/dmで陰極電解処理した。陽極には、白金を約1μmめっきしたチタンを用いた。
Snめっき後は、Snめっき液を10倍希釈した溶液に鋼帯を浸漬し、ゴムロールで液切りをした後、冷風で乾燥した。通電加熱によって10秒間で260℃まで昇温させてSnをリフローし、直ちに75℃の水でクエンチした。
1mol/Lの希塩酸を用いた電解剥離法により測定された全Sn量は2.8g/mであり、Sn−Fe合金層FeSnの量はSn量として1.0〜1.1g/mであった。
実施例1〜26および比較例1〜16は、上述のように形成されたSnめっき鋼板に対して、以下に記載する化成処理を施した。
一方、比較例17〜21は、上述のSnめっきに先立って、ワット浴を用いたNiめっきを施した。
[陰極電解処理]
次に、陰極電解処理を施した。前述のSnめっき鋼板に、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸アンモニウムを0.15mol/L〜2.0mol/Lの濃度で含有し、温度が35℃〜50℃、pH3.5〜4.5の(NHZrF水溶液中で、2A/dm〜20A/dmの陰極電流密度で、電気量0.2C/dm〜20C/dmの陰極電解処理を施した後、水洗した。なお、一部の比較例では、比較のため、上述の処理条件から外れる条件の下、陰極電解処理を実施した。
比較例17〜21は、特許文献3に記載されている化成処理液を用いて陰極電解処理を行った。
[浸漬処理]
まず、浸漬処理水溶液を調整した。具体的には、りん酸水溶液を、水酸化ナトリウムでpH3.7〜6.5に調整した。上述の水溶液に、陰極電解処理後のSnめっき鋼板を、2〜4秒浸漬した。この水溶液のりん酸化学種のイオン(りん酸イオン、りん酸水素イオン、りん酸二水素イオン)の全濃度を(PO 3−換算で10g/l)、温度を40℃とした。
なお、一部の比較例では、比較のため、上述の処理条件から外れる条件の下、浸漬処理を実施した。
浸漬処理後、ゴムロールで液を絞り、速やかに水洗、乾燥した。
比較例17〜21では、浸漬処理を行わなかった。
Zr及びPの付着量は、蛍光X線強度から、予め作成した検量線を使って算出した。Sn付着量は、1mol/Lの希塩酸中でSnめっき鋼板を陽極とする電解剥離法により求めた。
Zr複合体の結晶長は、CP加工した断面を電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社JSM−6500F)で得られた30000倍の画像を用い、Snめっき鋼板の表面方向1μmの範囲に存在する結晶を30個選び、Snめっき鋼板と接する一端と、最も離れた他端とを結ぶ線分の長さを測定して、平均値を算出した。
Zr複合体とSnめっき鋼板の表面とがなす角度は、Zr複合体とSnめっき鋼板の表面とにより形成される底角の角度とその底角に関する外角の角度とを比較したとき、より小さい角度を測定して、結晶30個の平均値を算出した。
Zr複合体をSnめっき鋼板の表面に垂直に投射した場合の投射面積と、Snめっき鋼板表面の面積との比率は、電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社JSM−6500F)で得られた10000倍の画像をコンピューターに取り込み、画像解析ソフトを用いて算出することにより求めた。
Zr複合体の最表面を、オージェ電子分光装置(AES、ULVAC−PHI MODEL680)を用いて、P,O,Zrの深さ方向分析を行うことで、りん酸Zr(IV)の分布を測定した。
上述のように、Snめっき鋼板上にZr複合体が形成された表面処理鋼板を評価材として用い、以下に示す(A)〜(D)の各項目について評価試験を実施した。
(A)塗料一次密着性
評価材に、コーティング剤としてエポキシ・フェノール系塗料を60mg/dm塗布した。以下では、エポキシ・フェノール系塗料を塗布した評価材を、塗装板という。塗装板に対して、210℃で10分間の焼き付けを行い、さらに、190℃で15分間、230℃で90秒間の追い焼きを行った。
焼き付け及び追い焼きを施した塗装板から、縦の長さ5mm、横の長さ100mmの大きさの試料を切り出した。同じ評価材から切り出した2枚の試料を、塗装面が向かい合うようにして、間に厚さ100μmのフィルム状のナイロン接着剤を挟んだ。これを、つかみ部を残して、ホットプレスで、200℃で60秒間予熱した後、2.9×10Paの圧力をかけて200℃で50秒間圧着し、引張試験片とした。
つかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張り、剥離強度を測定して、塗料一次密着性を評価した。
幅5mm当たりの剥離強度が、59N以上の試験片を「Very Good」、39N以上59N未満の試験片を「Good」、19N以上39N未満の試験片を「Poor」、19N未満の試験片を「Bad」と評価した。
(B)塗料二次密着性
(A)と同様の方法で引張試験片を作製した。
引張試験片をオートクレーブ中で125℃の水蒸気雰囲気に30分間曝し、90℃まで降温した後、引張試験片をオートクレーブから取り出した。引張試験片をオートクレーブから取り出した直後に、引張試験片のつかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張った。その際の剥離強度を測定して、塗料二次密着性を評価した。
幅5mm当たりの剥離強度が、42N以上の試験片を「Very Good」、29N以上42N未満の試験片を「Good」、15N以上29N未満の試験片を「Poor」、15N未満の試験片を「Bad」と評価した。
(C)耐食性
塩化物イオンを含む酸性溶液を貯蔵するための容器用鋼板として各評価材を用いた場合の耐食性を評価するため、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。
評価材に、エポキシ・フェノール系塗料を50mg/dm塗布した。以下では、エポキシ・フェノール系塗料を塗布した評価材を塗装板という。塗装板に対して、205℃で10分間の焼き付けを行い、さらに、180℃で10分間の追い焼きを行った。
焼き付け及び追い焼きを施した塗装板から、縦の長さ50mm、横の長さ50mmの大きさの試料を切り出した。試料の表面にカッターで地鉄に達するまでクロスカットを入れ、試料の端面と裏面とを塗料でシールした。その後、大気開放下で、試料を1.5%クエン酸と1.5%塩化ナトリウムとを含有する55℃の試験液中に96時間浸漬した。
試験液中に96時間浸漬した後の試料を水洗および乾燥した後、速やかにスクラッチ部及び平面部をテープで剥離して、クロスカット部近傍の腐食状況、クロスカット部のピッティング腐食及び平面部の塗膜剥離状況を観察して、耐食性を評価した。
テープによる剥離及び腐食の両方が発見されなかった試験片を「Very Good」、スクラッチ部から0.2mm未満の範囲で生じたテープ剥離と目視不能な腐食との少なくとも一方が発見された試験片を「Good」、スクラッチ部から0.2mm〜0.5mmの範囲で生じたテープ剥離と目視可能な小さい腐食との少なくとも一方が発見された試験片を「Poor」、0.5mmを超えるテープ剥離が発見された試験片を「Bad」と評価した。
上記3項目の性能評価で最も低い評価結果を総合評価とし、「Very Good」、「Good」、「Poor」、「Bad」の4段階に分類し、「Very Good」および「Good」を合格と評価した。
実施例1〜26の陰極電解処理及び浸漬処理の条件を表1に、比較例1〜16の陰極電解処理及び浸漬処理の条件を表2に、実施例1〜26のZr複合体に関する結果を表3に、比較例1〜16のZr複合体に関する結果を表4に、実施例1〜26の特性評価の結果を表5に、比較例1〜16の特性評価の結果を表6に示した。
比較例17〜21については、めっきおよび陰極電解処理の条件を表7に、酸化Zr(IV)結晶に関する結果を表8に、特性評価の結果を表9に示した。
本発明の実施例1〜26は、いずれも総合評価が「Very Good」または「Good」であった。
比較例1は、陰極電解処理液のZrF 2−の濃度が低い例である。Zr複合体が板状または針状に形成されず、粒状の析出物となってしまったため、塗料密着性が不十分で、耐食性も劣っていた。
比較例2は、陰極電解処理液のZrF 2−の濃度が高い例である。水酸化Zr(IV)の結晶が成長し、Zr複合体が板状または針状に形成されず、塗料密着性が不十分であった。
比較例3は、陰極電解処理液の温度が低い例である。Zr複合体の析出角度が大きくなり、塗料密着性が不十分であった。
比較例4は、陰極電解処理液の温度が高い例である。Zr複合体の析出角度が小さくなり、塗料密着性が不十分であった。
比較例5は、陰極電解処理液のpHが低い例である。Zr複合体の析出量が少なく、Snめっき鋼板表面を十分に被覆していないため、塗料密着性が不十分で、耐食性も劣っていた。
比較例6は、陰極電解処理液のpHが高い例である。不定形の水酸化Zr(IV)結晶が析出したため、塗料密着性が不十分で、耐食性も劣っていた。
比較例7は、陰極電解処理の陰極電流密度が低い例である。酸化Zr(IV)結晶がほとんど析出しなかったため、塗料密着性が不十分で、耐食性も劣っていた。
比較例8は、陰極電解処理の陰極電流密度が高い例である。酸化Zr(IV)結晶が板状または針状に成長しにくく、不定形で疎な析出形態となったため、塗料密着性が不十分で、耐食性も劣っていた。
比較例9は、陰極電解処理の電気量が低い例である。酸化Zr(IV)結晶の析出量が不足し、塗料密着性が不十分で、耐食性も劣っていた。
比較例10は、陰極電解処理の電気量が高い例である。酸化Zr(IV)結晶の析出量が過剰であるため、酸化Zr(IV)結晶の割れによる剥離が生じやすくなる傾向があった。
比較例11は、浸漬処理水溶液のpHが低い例である。酸化Zr(IV)結晶が溶解したため、酸化Zr(IV)結晶の量が少なくなり、塗料密着性が不十分であった。
比較例12は、浸漬処理水溶液のpHが高い例である。酸化Zr(IV)結晶表面のりん酸化が十分に起こらなかったため、塗料二次密着性が不十分であった。
比較例13は、浸漬処理時間が短い例である。酸化Zr(IV)結晶表面のりん酸化が十分に起こらず、塗料二次密着性が不十分であった。
比較例14は、浸漬処理時間が長い例である。酸化Zr(IV)結晶の内部までりん酸化されたため、強度が弱くなり、割れによる剥離が生じやすくなる傾向があった。
比較例15は、陰極電解処理を低い電流密度かつ高い電気量の条件下で実施した例であり、酸化Zr(IV)結晶が大きく成長してしまったため、割れが生じやすくなり、塗料密着性が不十分となった。
比較例16は、陰極電解処理の電気量が低い例であり、酸化Zr(IV)結晶のサイズが小さく、塗料に対する酸化Zr(IV)結晶の物理的な固定効果が十分ではなく、塗料密着性が不十分であった。
比較例17〜21は、特許文献3に記載されている化成処理液を用いて、酸化Zr(IV)結晶とりん酸Zr(IV)とを同時に析出させた例であるが、いずれも平滑な表面かまたは析出した結晶が粒状であったため、塗料密着性および耐食性が不十分であった。
なお、詳細な結果は示さないが、特許文献4に記載されている化成処理液を用いて化成処理皮膜を作製したところ、特許文献4の表2の条件B1の化成処理液で作製した化成処理皮膜は平滑表面となった。また、特許文献4の表2の条件B2の化成処理液で作製した化成処理皮膜は粒状析出物となり、条件B3の化成処理液で作製した化成処理皮膜は無定形の析出物となった。
また、同様に詳細な結果は示さないが、特許文献1〜3に記載されている化成処理液を用いた場合も、特許文献4の場合と同様の結果が得られた。
このように、特許文献1〜4に記載されている化成処理液を用いた場合には、塗料またはフィルムとの密着性が十分ではないことが示された。
上記一実施形態によれば、塗料やフィルムとの密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板及び表面処理鋼板の製造方法を提供することができる。
1 基板
2 酸化Zr(IV)結晶
3 酸化Zr(IV)結晶が基板と接する一端
4 酸化Zr(IV)結晶が基板と接する他端
5 りん酸Zr(IV)
10 Zr複合体

Claims (5)

  1. 鋼板またはめっき鋼板である基板と;
    前記基板の表面に形成され、形状が板状または針状である酸化Zr(IV)結晶と、前記酸化Zr(IV)結晶の表面を0.5nm〜2.0nmの被覆厚さで被覆するりん酸Zr(IV)とを含むZr複合体と;
    を有し、
    前記Zr複合体で、前記基板と接する一端と、他端とを結ぶ線分の長さの平均が、50nm〜500nmであり、
    前記Zr複合体と前記基板の前記表面とにより形成される角度の平均が、20°〜65°であり、
    前記Zr複合体を前記基板の前記表面に垂直に投射した場合の投射面積は、前記基板の前記表面の面積に対して、90%以上である
    ことを特徴とする、表面処理鋼板。
  2. 前記Zr複合体の付着量が、金属Zr量に換算して5mg/m〜100mg/mである
    ことを特徴とする、請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 前記りん酸Zr(IV)の付着量が、P量に換算して0.1mg/m〜4.5mg/mである
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の表面処理鋼板。
  4. 前記Zr複合体の付着量が金属Zr量に換算してZ1[mg/m]であり、前記りん酸Zr(IV)の付着量がP量に換算してP1[mg/m]である場合に、前記Z1を前記P1で除算して得られる比率Z1/P1が10〜100である
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の表面処理鋼板。
  5. ZrF 2−を0.15mol/L〜2.0mol/Lの濃度で含有し、温度が35℃〜50℃であり、pHが3.5〜4.5の陰極電解処理水溶液を用い、電流密度が2A/dm〜20A/dm、電気量が1C/dm〜20C/dmの条件下で、鋼板またはめっき鋼板である基板に陰極電解処理を施す陰極電解処理工程と;
    前記陰極電解処理工程後、前記陰極電解処理が施された前記基板に水洗処理を施す水洗処理工程と;
    前記水洗処理工程後、前記水洗処理が施された前記基板を、PO 3−換算で2g/l〜30g/lのりん酸イオンを含有しpHが3.7〜6.5である浸漬処理水溶液に2秒〜4秒浸漬する浸漬処理工程と;
    を有することを特徴とする、表面処理鋼板の製造方法。
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