JP5505085B2 - 錫めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、飲料缶、食缶等に使用される、有機皮膜の二次密着性、耐食性に優れた錫めっき鋼板の製造方法に関する。
従来、缶用材料として使用されてきた表面処理鋼板は、ブリキやLTS、TNS等の錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板(TFS−NT)、電解クロムめっき鋼板(TFS−CT)が主なものである。通常、これらの鋼板のめっき表面には化成処理が施され、それによって塗料や樹脂フィルムとの密着性を確保している。
現在、商品化されている缶用表面処理鋼板の化成処理の殆どは、重クロム酸塩又はクロム酸を主成分とする水溶液を用いた、浸漬処理又は陰極電解処理である。例外として、特許文献1及び2に開示されているブリキのリン酸塩水溶液中での陰陽極電解処理が知られているが、用途は内面を無塗装のまま使用する粉乳用缶に限定されている。この陰陽極電解処理が粉乳用缶以外の飲料缶、食缶に使用されない主たる理由は、塗料や樹脂フィルムのような有機皮膜との密着性が不十分であるためである。
一方、重クロム酸塩又はクロム酸を主成分とする水溶液を用いた、浸漬処理又は陰極電解処理によって得られたクロム(III)酸化膜は、有機皮膜の密着性を向上させる効果が大きく、これに代わる化成処理は、種々検討されているものの、実用化には至っていないのが現状である。例えば、特許文献3には、フィチン酸又はフィチン酸塩溶液中で陽極処理する方法が開示されている。
近年は、錫めっき層上に、シランカップリング剤を使用した皮膜を施す技術が多く開示されている。例えば、特許文献4には、錫めっき鋼板のSn層又はFe−Sn合金層上に、シランカップリング剤塗布層を設けた鋼板及び缶が開示されており、特許文献5には、錫めっき層上に、下層としてP、Snを含有する化成皮膜、上層としてシランカップリング層を有する錫めっき鋼板が開示されている。また、特許文献5に類似した技術として、特許文献6乃至15が開示されている。
特開昭52−68832号公報 特開昭52−75626号公報 特開昭52−92837号公報 特開2002−285354号公報 特開2001−316851号公報 特開2002−275643号公報 特開2002−206191号公報 特開2002−275657号公報 特開2002−339081号公報 特開2003−3281号公報 特開2003−175564号公報 特開2003−183853号公報 特開2003−239084号公報 特開2003−253466号公報 特開2004−68063号公報
しかしながら、前記特許文献1及び2に記載された化成皮膜はいずれも塗装缶用めっき鋼板として用いるに必要な有機皮膜の二次密着性、耐食性等の性能を備えているとは言い難く、また、特許文献3乃至15に記載された技術は高価な薬剤を使用するために従来技術に比べて製造コストが非常に高く、工業的に実用化するのは困難と考えられる。

そこで本発明者は、低コストで有機皮膜の密着性、耐食性に優れた錫めっき鋼板を得る技術を種々検討し、リン酸塩水溶液中で陰極電解処理、陽極電解処理に次いでさらに陰極電解処理を施す技術を開発した(特願2008-036281号)。しかし、この技術の欠点として、陽極電解処理の適正電流密度範囲が狭いために、比較的高度の制御技術を必要とすることが挙げられる。
そこで、本発明は、リン酸塩溶液を用いた陽極電解処理を利用しない陰極電解処理及び浸漬処理によって、有機皮膜の密着性、耐食性に優れた錫めっき鋼板を得る方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討し、極めて良好な有機皮膜の密着性が得られる錫めっき鋼板を、低コストで製造する方法を構築して本発明に至ったものである。
即ち、本発明の主旨とするところは、
(1)鋼帯に電気錫めっき法により錫めっきを施した後、前記鋼帯の錫めっき層の表面を溶存酸素濃度6ppm以下、pH1.5〜3.5のリン酸塩水溶液中で、3〜30A/dm、0.15〜1秒の陰極電解処理を施し、前記鋼帯を前記処理液から出すことなくさらに0.2〜1.2秒間、浸漬することを特徴とする錫めっき鋼板の製造方法。
(2)前記リン酸塩水溶液が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンの中から選ばれる1種又は2種以上のカチオンを含む水溶液であることを特徴とする前記(1)に記載の錫めっき鋼板の製造方法。
(3)前記電気錫めっき後、前記鋼帯の錫めっき層中の錫の加熱溶融処理(リフロー処理)を施し、その後、前記陰極電解処理を施すことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の錫めっき鋼板の製造方法。
(4)前記電気錫めっきの前に、前記鋼帯に電気Fe−Ni合金めっき又は電気NiめっきをNi量として2〜100mg/m施すことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の錫めっき鋼板の製造方法。
本発明により、有機皮膜の密着性、耐食性に優れた錫めっき鋼板を、簡便かつ低コストで得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する鋼帯には、特に制限を設ける必要はない。従来から缶用鋼板に使用されているアルミキルド鋼や低炭素鋼等の成分系の鋼帯が問題なく使用できる。例えば、JIS G 3303で規定される鋼種MRのSPB(ブリキ原板)が好適な鋼種として挙げられる。また、鋼帯の厚みや調質度、表面仕上げは、使用目的に適したグレードを選択すればよい。
鋼帯は、めっき前処理として脱脂、酸洗が施される。脱脂は電解アルカリ脱脂、酸洗は、
希硫酸への浸漬処理が好適である。
前処理を施された鋼帯は、錫めっきが施される。電気めっき法が好適である。めっき浴は特に限定しないが、光沢添加剤を含む硫酸、スルホン酸系のめっき浴が取り扱いが容易で、かつ質の高い錫めっきが得られるので好ましい。硫酸浴、フェノールスルホン酸浴、メタンスルホン酸浴がその代表的なめっき浴である。陽極は金属錫も使用できるが、溶性陽極は極間距離の安定性に難があるし、交換の手間がかかることから、白金めっきを施したチタンなどの不溶性陽極が推奨される。
錫めっきの付着量は本発明では限定しないが、0.5〜12g/mが好ましい。0.5g/m未満では、鋼板表面を被覆しきれず、露出部分ができてしまうことがあり、外観が優れず、また、酸性溶液に対する耐食性の確保が困難となる場合がある。一方、12g/mを超えると塗料密着性が劣化する場合があり、経済的にも不利である。より好ましい錫めっきの付着量は3〜8g/mである。錫付着量は、陰極電流密度と電解時間との積にほぼ比例するので、これらのパラメーターで制御すればよい。

前記電気錫めっきの前に、必要に応じて電気Fe−Ni合金めっき又は電気NiめっきをNi量として2〜100mg/m施すことで、錫と鉄の合金化を抑制することができ、加工性が劣化するのを防ぐことができるので好ましい。Niめっきについてはめっき後、加熱してNiを鋼板表面層に拡散させて、Fe−Ni合金層を形成させてもよい。
錫めっき後の鋼板は、水又は錫めっき液が希釈された液の入ったドラグアウト槽に浸漬され、洗浄される。錫めっき液の希釈液は、リフロー処理におけるフラックスの役割を果たすので、必要に応じてその濃度を調整するとよい。
錫めっき層中の錫の加熱溶融処理(リフロー処理)を施す場合は、錫めっきした鋼板を錫の融点である232℃以上に加熱する。300℃を超えると、Fe−Sn合金化が過剰に進行してしまうので、好ましくない。加熱の手段としては、電気抵抗加熱や誘導加熱、又は、それらを組み合わせて用いるとよい。
リフロー処理の直後にクエンチ処理することで、Fe−Sn合金層又はFe−Ni−Sn合金層の過剰な生成を防ぐことが望ましい。クエンチ処理は、錫が溶融状態にある錫めっき鋼板を水に浸漬して行う。ストリップを連続的にリフロー処理及びクエンチ処理すると、クエンチ槽の水は80℃程度まで上昇するが、鋼板はこの程度の温度まで冷却されれば合金化反応は停止し、過剰な合金層の生成は抑制されるため、問題は無い。
鋼帯を電気錫めっき後、またはさらにリフロー・クエンチ処理後、溶存酸素濃度6ppm以下、pH1.5〜3.5のリン酸塩水溶液中で、3〜30A/dm、0.15〜1秒の陰極電解処理を施し、さらに前記処理液に浸漬したまま0.2〜1.2秒保つ。この一連の処理により、まず陰極電解処理によって表面の酸化錫が還元されて活性な金属錫となり、次のリン酸塩水溶液中の浸漬処理によって錫めっき表面に均一なリン酸錫(II)皮膜が形成される。金属錫が空気中の酸素によって酸化されて酸化錫となるのを防ぐため、前記陰極電解処理後、浸漬処理まで鋼帯を処理液から出さないことが望ましい。リン酸錫(II)皮膜は、塗料や樹脂フィルムなどの有機皮膜の密着性を担保するのに必要である。
陰極電解処理によって酸化錫が還元されて金属錫となることは、製造ラインでの確認は困難であるが、実験室で確認することができる。すなわち、窒素雰囲気中で錫めっき鋼板をリン酸塩水溶液中で陰極電解処理し、同雰囲気中で酸化錫量を測定する。酸化錫量は、その還元に要する電気量として表わされ、錫めっき鋼板を、窒素ガスのバブリング等の手段によって溶存酸素を除去した0.001mol/Lの臭化水素酸水溶液中で0.05mA/cmの定電流で陰極電解し、得られる電位−時間曲線から求めることができる。このようにして、本発明の範囲の陰極電解処理条件では酸化錫が全量金属錫に還元されていることがわかる。
リン酸塩処理液のpHは1.5〜3.5である。pHが1.5より低いと、鋼板表面の錫を溶解する速度が速すぎ、エッチングされてしまう。一方、pHが3.5より高いと、鋼板表面の錫との反応性が乏しく、リン酸錫(II)皮膜の形成が不十分である。
陰極電解処理の陰極電流密度は3〜30A/dmである。3A/dmより低いと、鋼板表面の酸化錫の還元が十分に行われない。一方、30A/dmを超えると陰極表面での水素ガスの発生が非常に多くなりすぎ、酸化錫が部分的に還元されずに残留するため、リン酸錫(II)皮膜にピンホール状の欠陥が多くなってしまう。
陰極電解処理の時間は、0.15〜1秒である。0.15秒未満では、鋼板表面の酸化錫の還元が十分に行われない。一方、1秒以内に酸化錫は全量還元されるため、これ以上長く電流を流しても性能の向上は認められない。
陰極電解処理の電気量は、1.2C/dm以上であることが好ましい。1.2C/dm未満であると、鋼板表面の酸化錫の還元が不十分になりやすい。一方、30C/dmを超える電気量の通電は、水素ガスの発生が多くなるばかりである。
陰極電解処理後、前記処理液から出さずに0.2〜1.2秒浸漬することが必要である。陰極電解処理によって鋼板表面には酸化錫がなくなっているため、金属錫とリン酸またはリン酸塩が反応してリン酸錫(II)皮膜で覆われる。0.2秒未満では、リン酸錫(II)層の形成が不十分である。一方、1.2秒を超える浸漬処理をしても、性能の向上は認められない。錫めっき鋼帯を陰極電解処理後に空気中に出してはならないのは、空気中の酸素によって表面の錫が速やかに酸化されてしまい、浸漬処理によるリン酸錫(II)皮膜が均一に形成されなくなってしまうためである。
リン酸塩処理液の溶存酸素濃度を6ppm以下に保つ必要があるのは、陰極電解処理によって還元された錫めっき鋼帯表面の錫が酸化されるのを防止するためである。すなわち、処理液中の溶存酸素濃度が6ppmを超えると、鋼帯表面の錫が溶存酸素によって酸化されて酸化錫を生じやすくなる。そのため、リン酸錫(II)皮膜の欠陥部が生じ、得られるめっき鋼板の性能が劣ってしまう。溶存酸素濃度が6ppm以下であれば、溶存酸素による錫の酸化反応が十分に遅く、表面の錫はリン酸またはリン酸塩と反応し、リン酸錫(II)皮膜が形成される。より好ましい溶存酸素濃度は4.5ppm以下であり、溶存酸素濃度が低いほど、錫の酸化される部分が少なくなって、より良好なめっき鋼板が得られる。
処理溶液中の溶存酸素濃度を6ppm以下にする手段としては、減圧、不活性気体のバブリング、処理液の高温化等が挙げられる。減圧による溶存酸素の抜気は、装置が大掛かりになりがちである。その点、窒素ガスなどの不活性気体のバブリングは簡便である。不活性気体の純度は必ずしも高くなくてよい。処理液中の溶存酸素濃度を所定のレベルまで下げればよいのであるから、酸素ガスが12vol%までなら混入していてもよく、バブリング後のガスを回収して再利用することもできるので経済的である。
また、処理液を50℃以上、好ましくは60℃以上に昇温することで、処理液に溶解できる酸素量を下げ、溶存酸素濃度6ppm以下に抑える方法も推奨できる。処理液温度が高いほど溶存酸素濃度が下がるが、80℃を超えると水蒸気発生が激しくなって、液面が見えづらくなり急なトラブルに対処しにくくなる、周囲の装置を腐食しやすくなるといった問題があり、事実上操業に支障をきたすので、80℃以下が望ましい。
さらにこれらの方法を組み合わせてもよい。処理液の溶存酸素濃度を非常に低く保つには系を密閉する必要があるが、本発明ではそこまでの低溶存酸素濃度を要求しておらず、コストのかかる大掛かりな装置を必要としない。
リン酸塩電解液中の溶存酸素濃度は、良好なリン酸錫(II)皮膜を形成する重要なポイントであるから、電解液を溶存酸素系で常時モニターすることが望ましい。
pH1.5〜3.5のリン酸系水溶液におけるリン酸の化学種は、主としてリン酸とリン酸二水素イオンであり、微量のリン酸水素イオンも存在する。リン酸の化学種の濃度はリン酸イオン換算で20〜50g/Lが適当である。より好ましい濃度範囲は20〜30g/Lである。20g/L未満では、鋼板近傍のリン酸の化学種の濃度が低いために、リン酸錫(II)皮膜が形成されにくい。一方、30g/Lを超えても性能の向上はほとんど認められない。50g/Lを超えると、沈殿が生じやすくなるので避けたほうがよい。
前記リン酸系水溶液のリン酸の化学種とpHとを、前記の範囲に調整するために、水素イオン以外のカチオン成分が必要である。カチオンは、水溶液に溶解し、処理後の水洗によって鋼板から除去できるカチオンであることが必要で、この目的に適するカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンの中から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。好ましいカチオン濃度は、リン酸イオン濃度と水素イオン濃度のバランスをとるためにほぼ一義的に定まり、上記のカチオンを使用する場合、合計で3〜10g/Lの範囲である。
なお、陰極電解処理の前に、陰極電解処理と同じまたは濃度の低い組成の水溶液に浸漬してもよい。予め鋼帯表面の水膜をリン酸塩溶液に置換することで、陰極電解処理時に鋼帯表面近傍の処理液の濃度むらが抑えられ、酸化錫の還元の均一性が増す可能性があるためである。
陰極電解処理及び浸漬処理後の鋼帯は、必要に応じて静電塗油を施し、コイル状に巻き取る、または、シート状に剪断するなどしてから梱包し、客先に出荷すればよい。
なお、本発明による方法で製造される鋼板の概略は以下の通りである。
リン酸錫(II)の付着量は、P量として1.0〜5.0mg/mが適当である。P量は、予め作成した検量線を用いて、蛍光X線強度から測定することができる。P量は1.0mg/m未満でも、有機皮膜の一次密着性は確保可能であるが、二次密着性は確保できない。
一方、P量として5.0mg/mを超えるリン酸錫(II)は、凝集破壊し易くなるため、有機皮膜の一次密着性、二次密着性共に確保できない。有機皮膜の一次密着性、二次密着性を安定して確保するという観点からより好ましいリン酸錫(II)の付着量は、P量として1.9〜3.8mg/mである。
錫合金層は、Fe−Sn合金、Fe−Ni−Sn合金のいずれでも、また、両者が混在しても差し支えない。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
低炭素冷延鋼帯を連続焼鈍、次いで調質圧延して得た、鋼種MR、板厚0.18mm、調質度T−5CA、表面仕上げRの鋼帯状のSPB(ブリキ原板)を使用した。めっき前処理として、10mass%水酸化ナトリウム溶液中で電解脱脂した後、5mass%希硫酸で酸洗した。
一部の鋼帯には、Fe−Ni合金めっき、又は、Niめっきを施した。Niめっきを施した鋼帯は、その後に焼鈍してNiを拡散させて、Fe−Ni合金層を形成させた。
次いで、フェロスタン浴を用いて電気錫めっきを施した。錫イオンを20g/L、フェノールスルホン酸イオンを75g/L、界面活性剤を5g/L含む43℃のめっき液中で、陰極電流密度20A/dmで陰極電解した。陽極には、白金めっきしたチタンを用いた。錫めっきの付着量は、電解時間で調節した。
一部の鋼帯には錫めっき後、錫めっき液を10倍希釈した溶液に浸漬し、ゴムロールで液切りをした後、冷風で乾燥し、通電加熱によって10秒間で250℃まで昇温させて錫を溶融し、直ちに80℃の水でクエンチした。
引き続き、該錫めっき鋼板に、全リン酸濃度をリン酸換算で35g/L、カチオンを4g/L含む50℃の処理液中で陰極電解処理、次いで、同一溶液中で浸漬処理を施した。
ここで全リン酸とは、リン酸、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、リン酸イオンのような、リン酸の酸解離によって生じる化学種を総括している。処理液中の溶存酸素濃度は窒素バブリングによって6ppm以下とし、溶存酸素計でモニタリングした。処理液のpHは1.5〜3.5の範囲とした。電解条件としては、陰極電流密度3〜30A/dm、電解時間0.15〜1秒とした。陽極には、白金めっきしたチタンを用いた。
陰極電解処理後、処理液から鋼帯を出すことなく、さらに0.2〜1.2秒の浸漬処理を施した。
なお、比較例では上記の条件を外れた条件での処理を実施した。
このようにして得られた錫めっき鋼帯のP、Niの付着量は、蛍光X線強度から、予め作成した検量線を使って算出した。ここで、Pの付着量は、リン酸錫(II)皮膜の量を、直接測定できる指標で表わしたものである。Sn付着量は、1mol/Lの希塩酸中で錫めっき鋼板を陽極とする電解剥離法により求めた。
上記処理材について、以下に示す(A)〜(D)の各項目について評価試験を実施した。
(A) 塗料一次密着性
評価材に、エポキシ・フェノール系塗料を60mg/dm塗布し、210℃で10分間の焼き付けを行った。さらに、190℃で15分間、230℃で90秒間の追い焼きを行った。
この塗装板から、5mm×100mmの大きさの試料を切り出した。2枚の同一水準の試料を、塗装面が向かい合わせになるようにし、間に厚さ100μmのフィルム状のナイロン接着剤を挟んだ。これを、つかみ代を残して、ホットプレスで200℃で60秒間予熱した後、2.9×10Paの圧力をかけて200℃で50秒間圧着し、引張試験片とした。
つかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張り、剥離強度を測定して、塗料一次密着性を評価した。試験片幅5mm当たりの測定強度が、68N以上を◎、49N以上68N未満を○、29N以上49N未満を△、29N未満を×とした。
(B) 塗料二次密着性
評価材に、前記(A)と同様の方法で、塗装、焼付け、ナイロン接着剤を挟んで圧着を施し、試験片を作製した。
これを125℃、30分のレトルト処理をし、直後につかみ部をそれぞれ90゜の角度で曲げてT字状とし、引張試験機のチャックでつかんで引っ張り、剥離強度を測定して、塗料二次密着性を評価した。試験片幅5mm当たりの測定強度が、42N以上を◎、34N以上42N未満を○、25N以上34N未満を△、25N未満を×とした。
(C) 耐食性
評価材の缶内面に相当する面の塩化物イオンを含む酸性溶液中における耐食性を評価するため、UCC(アンダーカッティング・コロージョン)試験を行った。エポキシ・フェノール系塗料を50mg/dm塗布し、205℃で10分間の焼き付けを行った。さらに180℃で10分間の追い焼きを行った。
この塗装板から、50mm×50mmの大きさの試料を切り出した。塗膜にカッターで地鉄に達するまでクロスカット(スクラッチ)を入れ、端面と裏面を塗料でシールした後、1.5%クエン酸と1.5%塩化ナトリウムからなる55℃の試験液中に、大気開放下で96時間浸漬した。水洗・乾燥後、速やかにカット部に沿ってセロテープ(登録商標)(ニチバンNo.405、24mm幅)を貼った後、テープを上方に急激に剥離した。クロスカット部近傍の腐食状況、クロスカット部のピッティング腐食及び平面部の塗膜剥離状況を観察して、耐食性を評価した。
テープによる剥離も腐食も認められないものを◎(非常に良好)、スクラッチ部から0.2mm未満のテープ剥離又は目視で認められない僅かな腐食の一方又は両方が認められたものを○(良好)、スクラッチ部から0.2mm以上0.5mm以下のテープ剥離又は目視で認められる小さい腐食の一方又は両方が認められたものを△(やや不良)、0.5mmを超えるテープ剥離が生じたものを×(不良)とした。
(D) 外観
無塗装の評価材の外観を、次のように評価した。光沢は、鋼板の圧延方向で鏡面光沢度GS60°を測定した。
色調は、目視により着色の有無を判定した。GS60°が400以上で、着色のない非常に良好な外観であるものを◎、GS60°が350以上400未満で、着色のない良好な外観であるものを○、GS60°が300以上350未満のもの、および/またはわずかな着色が見られるものを△、GS60°が300未満のもの、および/または着色が見られるものを×とした。
以上の性能評価結果から、総合評価を◎(非常に良好)、○(良好)、△(やや不良)、×(不良)の4段階に分類し、◎、○を合格レベルであると判断し、その製造方法を本発明の請求の範囲に適したものであるとした。
上記に記載しなかった製造条件、及び評価結果を、表1に示した。
Figure 0005505085
本発明の実施例1〜42は、全ての評価項目及び総合評価で、◎又は○であり、求められる性能を満足する製造方法であった。
比較例1及び2は、リン酸塩溶液中の溶存酸素濃度が高い例で、塗料密着性が劣っていた。
比較例3及び4は、リン酸塩溶液のpHが低い例である。鋼板表面の錫がエッチングされ、外観不良であった。
比較例5は及び6は、リン酸塩溶液のpHが高い例である。リン酸錫(II)皮膜の形成が不十分で、塗料の二次密着性と耐食性が不十分であった。
比較例7は、リン酸塩溶液中での陰極電解処理の陰極電流密度が低い例で、塗料密着性、耐食性が劣っていた。
比較例8は、リン酸塩溶液中での陰極電解処理の陰極電流密度が高い例である。鋼板表面で水素発生が多すぎるためにリン酸錫(II)皮膜のピンホール状の欠陥が多くなって、耐食性が優れなかった。
比較例9は、リン酸塩溶液中での陰極電解処理の電解時間が短い例で、塗料密着性、耐食性が劣っていた。
比較例10は、陰極電解処理後のリン酸塩溶液への浸漬時間の短い例である。リン酸錫(II)皮膜の形成が不十分で、塗料の二次密着性と耐食性が不十分であった。
比較例11及び12は、陰極電解処理後に錫めっき鋼帯を処理液から出した後、処理液に浸漬した例である。その他の処理条件は全ての性能の良好だった実施例と同じであるが、陰極電解処理後に処理液から出したために塗料密着性、耐食性が劣っていた。

Claims (4)

  1. 鋼帯に電気錫めっき法により錫めっきを施した後、前記鋼帯の錫めっき層の表面を溶存酸素濃度6ppm以下、pH1.5〜3.5のリン酸塩水溶液中で、3〜30A/dm、0.15〜1秒の陰極電解処理を施し、前記鋼帯を前記処理液から出すことなくさらに0.2〜1.2秒間、浸漬することを特徴とする錫めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記リン酸塩水溶液が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンの中から選ばれる1種又は2種以上のカチオンを含む水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の錫めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記電気錫めっき後、前記鋼帯の錫めっき層中の錫の加熱溶融処理(リフロー処理)を施し、その後、前記陰極電解処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の錫めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記電気錫めっきの前に、前記鋼帯に電気Fe−Ni合金めっき又は電気NiめっきをNi量として2〜100mg/m施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の錫めっき鋼板の製造方法。
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