JP4475144B2 - 新規パン酵母及び該酵母を含有する生地 - Google Patents

新規パン酵母及び該酵母を含有する生地 Download PDF

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Description

本発明は新規なパン酵母、及びこれを利用したパンの製造方法に関するものである。即ち、強い中種耐性及び高い中種安定性を有したパン酵母に関するものである。さらには、該酵母を使った種々の生地、あるいはパン製造方法に関する。
パンには配合される糖の種類によって、糖を含まないフランスパンから、糖配合が5%程度の食パン、15%程度のテーブルロール類、30%程度の菓子パン類、更には40%程度の超高糖生地を使った物まで、非常に多くの種類があり、糖以外にも小麦粉、パン酵母、イーストフード、食塩、油脂類、乳製品等がパンの味や形態に応じて、様々な配合で組み合わされている。また製パン工程においても、発酵条件や焼成条件に様々な工夫が加えられている。
イーストと称してパン生地に配合されるパン酵母は、生地中の糖を資化し発酵する事で、炭酸ガスやアルコール等を発生し、パンにボリュームと独特の風味を付与する。しかし、そのガス発生量は配合される糖量によって大きく影響を受け、低糖配合領域で発酵が強いパン酵母や高糖配合領域で発酵が強いパン酵母が、糖配合に応じて使い分けられているのが現状である。
一方、製パン法は大きく分けて、1段階発酵で製パンするストレート法と、2段階発酵で製パンする中種法に大別される。ストレート法は、原材料を1回でミキシングし1段階発酵で製パンする方法であり、比較的短時間で製パンする事ができ、オーブンフレッシュベーカリー等で用いられる事が多い。中種法は、小麦粉とパン酵母、水等の原材料の一部をミキシングして中種生地を作製し、中種発酵と呼ばれる一定時間の発酵をさせた後、残りの原材料と発酵した中種生地を再度ミキシング(これを本捏という)し、再発酵(この本捏後の発酵を本捏発酵という)させて製パンする方法である。この中種法では、中種発酵によってパンがソフトに仕上がり、発酵風味が付与される事に加えて、パン生地物性が安定して生地の機械耐性が良く、ベタ付き難くなるため、製パン工場でのライン生産に多用されている。
この大きく異なる2つの製法におけるパン酵母のガス発生量(即ち発酵力)は、必ずしも相関しておらず、ストレート法で強い発酵力を有するパン酵母が、中種法の本捏発酵でも発酵力が強いとは限らず、こういった製法の違いによるパン酵母の発酵特性の違いから、パン酵母は使い分けられる事がよくある。この理由として、ストレート製法での発酵力が強くなるよう作製される通常のパン酵母は、糖が無添加或いは少量添加される中種法の中種発酵中に、パン酵母自体がしだいに環境変化に弱い活性化された状態になる為、残りの原材料が加えられる本捏生地では、浸透圧が高い状態に急激にさらされることで、本捏後の発酵力が弱まるのが一般的である。この本捏後のガス発生量は、中種発酵時間が長い程低下する傾向にあり、実際の製パン工程において生地物性の観点からライン生産に適した中種製法であっても、そのガス発生量の変動が生産状況に応じた発酵時間の調整をつけ難くする要因となっており、ストレート製法の発酵力が強い菌株ほどその変動が明らかにみられる。
また、日本では古くより、糖を添加しない無糖生地から30%程度の糖を配合する高糖生地までに使用できるパン酵母が、汎用型パン酵母としてストレート法や中種法で使い分けられる事無く常用されてきたが、その本捏発酵力が菌株固有の機能として改良可能な事には着目されず、中種発酵後の本捏発酵力に優れた中種耐性パン酵母は開発されて来なかった。しかし最近になり、フランスパンから菓子パンまでを使用可能とし、中種法での菓子パン製造に適したパン酵母(特許文献1)が示されているが、該パン酵母は30%を超えない糖配合での製パン実施例で優位性が示されているに過ぎず、30%を超える糖配合(即ち超高糖配合)領域において強い中種耐性があるとは示されておらず、示唆もない。パン酵母の一般的発酵特性として、糖0%から7%程度の無糖・低糖配合領域での発酵特性と、糖8%程度から20%程度の中糖配合領域での発酵特性、そして糖20%程度から30%程度までの高糖配合領域での発酵特性に強い関連性は無く、特に無糖・低糖配合領域と高糖配合領域での発酵特性は別の形質である事が言われており、30%を優に超える超高糖配合領域における発酵特性も、他の糖配合領域の発酵特性との関連性は無い事から、本発明で言う低糖配合領域から超高糖配合領域までの広い糖配合領域で中種耐性の強いパン酵母は示されていない。
また、30%を超える糖配合領域で発酵力の高い酵母として、高度高糖発酵力の高いパン酵母(特許文献2)が示されているが、中種耐性に関しては示されておらず示唆もない。更には(特許文献3)が示されているが、中種耐性が強い事は示されておらず、40%程度の糖配合の中種法で製パン可能な事が示されているに過ぎず、広い糖配合領域で中種耐性の強いパン酵母は示されていないし、示唆もない。更に、ストレート法と中種法での耐砂糖性と耐浸透圧性の高いパン酵母(特許文献4)が、その強い耐浸透圧性によって、中種法での浸透圧変化にも耐性のある酵母として示されているが、高糖配合領域あるいは超高糖配合領域に効果が限定されており、低糖配合領域での発酵力は不充分で、これも広い糖配合領域で中種耐性に優れたパン酵母とは言えない。さらに上記課題を解決する方法として、中種製法に改善を加えた方法(特許文献5、6)が示されているが、これらの何れにも中種発酵時間に対する中種安定性に優れたパン酵母についての記載は無いし、示唆もない。
したがって、広い糖配合領域でのストレート法発酵力に優れている事に加え、広い糖配合領域での本捏後発酵力即ち中種耐性に優れ、及び/又は、中種発酵時間に対する中種安定性に優れたパン酵母が、製パン工程を容易にし、高品質のパンを安定生産できるパン酵母として望まれている。
特開平10−191964号公報 特開平7−203952号公報 特開2000−262275号公報 国際公開第01/021763号パンフレット 特開平11−253094号公報 特開2003−52301号公報
低糖配合領域から超高糖配合領域までの広い糖配合領域において中種耐性に優れたパン酵母を開発することで、パンの種類による菌種の使い分けを必要とせず作業を容易にし、且つ、中種発酵時間に対する中種安定性の優れたパン酵母を開発することで、製パン工程や品質を安定化させる事を目的とする。
本発明は上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、自然界より分離した菌株や、交雑により作製した育種菌株のスクリーニングにおいて、中種耐性を指標とした菌株評価を組み込む事によって選択した特定の菌株は、一般のパン酵母と同じSaccharomyces cerevisiaeに分類されるものの、これまでに無い高機能性、即ち、無糖生地から超高糖生地の広い糖配合領域のストレート法生地において高い発酵力を示し、且つ広い糖配合領域の中種法本捏生地において強い本捏発酵力、即ち、強い中種耐性を有していることを見出した。また上記菌株は、中種発酵時間の影響を受けにくい、即ち、中種安定性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、中種法低糖配合(本捏生地糖配合5%)の本捏ガス発生量が320ml以上、且つ、中種法中糖配合(本捏生地糖配合15%)の本捏ガス発生量が350ml以上、且つ、中種法高糖配合(本捏生地糖配合25%)の本捏ガス発生量が280ml以上、且つ、中種法超高糖配合(本捏生地糖配合35%)の本捏ガス発生量が140ml以上であり、中種法の中種発酵後、広い糖配合領域での本捏発酵において強い中種耐性を有し、且つ本捏生地(本捏生地糖配合30%)50g当たり、38℃で2時間のガス発生量が、150分間発酵させた中種生地を用いた時には280ml以上であり、且つ、150分間発酵させた中種生地を用いた時の該ガス発生量が50分間発酵させた中種生地を用いた時の該ガス発生量の80%以上であり、中種法の本捏発酵における本捏ガス発生量が、中種発酵時間の影響を受け難い、高い中種安定性を有することを特徴とするサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)FERM P−19692、FERM P−20407、又はFERM P−20408であるパン酵母、に関する。より好ましくは、パン酵母がドライイーストの形態である上記記載のパン酵母、に関する。本発明の第二は、上記記載のパン酵母を含有する生地、に関する。本発明の第三は、上記記載のパン酵母を使用するパン製造方法、に関する。
本発明のパン酵母は、無糖から超高糖配合領域までの幅広い糖配合領域において、製パンストレート法に適用できるだけでなく、これまで不可能であった製パン中種法における前記広い糖配合領域での強い中種耐性と、本捏発酵力が中種発酵時間の影響を受け難い高い中種安定性が実現でき、その為にパンの種類や製法の違いによる菌株の使い分けを必要とせず作業を容易にし、また製パン工程や品質を安定化させる事が可能となる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。まず、本明細書において使用される用語について説明する。本明細書において使用される用語は、以下に特に説明する場合を除いて、当分野で通常使用される用語の意味と同一である。本明細書において、糖配合割合を含め、製パン主副原料の配合割合(%)は、全生地中の小麦粉量に対する重量割合を言う。また本明細書において、パン酵母量とは、65%水分量に圧搾された湿菌体相当量の事を言う。
本発明において、中種法とは一般的に用いられる製パン法の1つであり、小麦粉とパン酵母、水等の原材料の一部をミキシングして中種生地を作製し、中種発酵と呼ばれる一定時間の発酵をさせた後、この中種生地と残りの原材料を再度ミキシングし、再発酵させた後焼成してパンを得る方法である。本発明において、低糖配合領域から超高糖配合領域までの広い糖配合領域で中種耐性の強いパン酵母とは、低糖配合生地(本捏生地糖配合3〜7重量%)から超高糖配合生地(本捏生地糖配合33〜50重量%)までの、何れの糖配合領域の中種法本捏生地においても強い本捏発酵力を持つパン酵母のことを意味する。また、表1に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い、中種発酵後、本捏生地を作製し、その本捏生地50g当たり、38℃で2時間のガス発生量(即ち本捏ガス発生量)が、中種法低糖配合(本捏生地糖配合5%)で310ml以上、且つ、中種法中糖配合(本捏生地糖配合15%)で340ml以上、且つ、中種法高糖配合(本捏生地糖配合25%)で270ml以上、且つ、中種法超高糖配合(本捏生地糖配合35%)で130ml以上を示す事が好ましい。より好ましくは、表1に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い、中種発酵後、本捏生地を作製し、その本捏生地50g当たり、38℃で2時間のガス発生量(即ち本捏ガス発生量)が、中種法低糖配合(本捏生地糖配合5%)で320ml以上、且つ、中種法中糖配合(本捏生地糖配合15%)で350ml以上、且つ、中種法高糖配合(本捏生地糖配合25%)で280ml以上、且つ、中種法超高糖配合(本捏生地糖配合35%)で140ml以上を示す事である。各々の糖配合領域において、本捏生地の発酵力が上記以下であった場合には、ホイロ発酵時間の延長或いはパン酵母の増量が必要となる場合があり、高い中種耐性があるとは言えず、また何れかの糖配合領域において、本捏生地の発酵力が上記以下であった場合には、広い糖配合領域で中種耐性の強いとは言えない。
Figure 0004475144
本発明における本捏ガス発生量は、本捏ミキシング後の本捏生地20gのガス発生量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて、38℃で2時間測定し、全ガス量に2.5を乗じ本捏生地50gに相当する全ガス量を算出し、それを本捏ガス発生量とした。
本発明においてパン酵母が有する高い中種安定性とは、中種法において、所定の中種発酵時間より発酵時間を延長しても本捏ガス発生量の低下が少ない事、あるいは、所定の中種発酵時間より発酵時間を短縮しても本捏ガス発生量の増加が少ない事、即ち、中種法の本捏発酵における本捏ガス発生量が、中種発酵時間の影響を受け難い性質の事を言う。また、表2に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い中種発酵後、本捏生地(本捏生地糖配合30%)を作製し、その本捏生地50g当たり、38℃で2時間のガス発生量が、150分間発酵させた中種生地を用いた時には280ml以上であり、且つ、150分間発酵させた中種生地を用いた時のガス発生量が50分間発酵させた中種生地を用いた時のガス発生量の80%以上である事が好ましい。通常の中種製法では、40分間から60分間発酵させた中種生地を使った時の本捏生地でのガス発生量をピークに、中種生地の中種発酵時間が長くなるにつれて本捏生地でのガス発生量が徐々に低下する傾向が見られる。即ち、パンを所定の形状にする為に、中種発酵時間を所定時間より延長した場合は、本捏ガス発生量が低下する為、ホイロ(最終発酵)時間の延長によりパン生地の膨らみ不足を防ぐ必要があり、あるいは、中種発酵時間を所定時間より短縮した場合は、本捏ガス発生量が増加する為、ホイロ時間の短縮によりパン生地の極度な膨らみ過ぎを防ぐ必要がある。よって150分間発酵させた中種生地を用いた時のガス発生量が50分間発酵させた中種生地を用いた時のガス発生量に対して80%未満となるようなパン酵母を用いると、発酵時間の影響を敏感に受けてしまい、安定してボリュームの大きいパンとはならない場合がある。更に、中種安定性だけが良くても充分なボリュームのパンとはならないことも容易に推定される。
Figure 0004475144
本発明においてより好ましいパン酵母は、広い糖配合領域での強い中種耐性を有し、かつ高い中種安定性を併せ持つパン酵母がより好ましい。さらに好ましくは、表1に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い、中種発酵後、本捏生地を作製し、その本捏生地50g当たり、38℃で2時間のガス発生量(即ち本捏ガス発生量)が、中種法低糖配合(本捏生地糖配合5%)で320ml以上、かつ、中種法中糖配合(本捏生地糖配合15%)で350ml以上、かつ、中種法高糖配合(本捏生地糖配合25%)で280ml以上、かつ、中種法超高糖配合(本捏生地糖配合35%)で140ml以上を示し、且つ、表2に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い中種発酵後、本捏生地(本捏生地糖配合30%)を作製し、その本捏生地50g当たり、38℃で2時間のガス発生量が、150分間発酵させた中種生地を用いた時には280ml以上であり、且つ、150分間発酵させた中種生地を用いた時のガス発生量が50分間発酵させた中種生地を用いた時のガス発生量の80%以上である事である。
本発明のパン酵母は、広い糖配合領域での強い中種耐性及び/又は高い中種安定性を有するものであれば特に限定なく、例えば当業者が一般的に行う自然界からのスクリーニング及びパン酵母の育種技術である交雑、変異処理、細胞融合などの手法によって得る事ができる。好ましくは、低糖配合領域で高い発酵力を示す菌株と高糖配合領域で高い発酵力を示す菌株、及び中種耐性の高い菌株を含む複数株から交雑育種によって作製することができるパン酵母である。より好ましいパン菌株は、上記方法により選択したサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) KCY1160、あるいは、サッカロミセス・セレビシエKCY1170株、あるいは、サッカロミセス・セレビシエKCY1171株である。本KCY1160株はFERM P−16962(受託日:2004年2月17日)として、KCY1170株はFERM P−20407(受託日:2005年2月16日)として、KCY1171株はFERM P−20408(受託日:2005年2月16日)として、独立行政法人産業技術総合研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6)に寄託されている。
本発明のパン酵母を用いたパンの製造方法を以下に例示する。例えば表1の様な配合に油脂や卵あるいは乳製品等が種々加えられる所定の条件で、自然界からのスクリーニング及び交雑によって得た上記KCY1160株、あるいは、KCY1170株、あるいは、KCY1171株を含む中種生地をミキシングして作製し、所定の温度と時間発酵をとった中種生地を得る。発酵した中種生地は、残った材料とともに再ミキシングし本捏生地となる。本捏生地は、所定の製パン工程に従い、「第一発酵(フロアタイムとも言う)」、「分割・丸め」、「第二発酵発酵(ベンチタイムとも言う)」、「成形・型詰め」をした後、「最終発酵(ホイロとも言う)」により充分パン生地を膨らませ、オーブンで焼成し所望のパンを得る。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、菌株としては、本発明による菌株と、対照菌株として、株式会社カネカから市販されているパン酵母3株(RED、GA、SG)を用いた。また、「%」は特に断りのない限り使用小麦粉重量に対する重量基準である。
<本捏ガス発生量測定法>
小麦粉として日清製粉の強力粉カメリヤを使用し、規定量の糖と水あるいは食塩を糖懸濁液として調製し、パン酵母とともにホバート卓上ミキサーで生地をミキシングし、本捏ミキシング後の本捏生地20gのガス発生量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて、38℃で2時間測定し、全ガス量に2.5を乗じ本捏生地50gに相当する全ガス量を求め、そのガス量を各パン酵母の本捏ガス発生量とした。
(実施例1) 交雑育種
当社サッカロミセス・セレビシエ保存菌株より、無糖生地発酵力の高い菌株と、高糖生地発酵力の高い菌株に加え、中種耐性の良好な菌株を含む複数株を元株として使用した。これら元株はいずれも2倍体であるため胞子形成培地で胞子を形成させ、次のステップで交雑育種を実施した。なお、ここに示した無糖生地発酵力、高糖生地発酵力とは、イースト工業会で定められた測定方法で測定されうるガス発生量の事である。また、中種耐性とは、表1あるいは表2に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い中種発酵後、本捏生地を作製し、その本捏生地50g当たり、38℃で2時間のガス発生量(即ち本捏ガス発生量)を測定する事により評価でき、ここで言う中種耐性の良好な菌株とは、表1あるいは表2に示した何れかの条件で測定した本捏ガス発生量が良好な菌株を言う。手順は以下の通りである。
(1)無糖生地発酵力の高い菌株から作製した胞子株と、高糖生地発酵力の高い菌株から作製した胞子株を各々交雑し、多数の第一世代交雑株を作製した。
(2)一方、中種耐性の高い菌株から作製した胞子株と、高糖生地発酵力の高い菌株から作製した胞子株を各々交雑し、別系統の多数の第一世代交雑株を作製した。
(3)また一方で、無糖生地発酵力の高い菌株から作製した胞子株と、中種耐性の高い菌株から作製した胞子株を各々交雑し、別系統の多数の第一世代交雑株を作製した。
(3)別々に作製した交雑株から再度胞子形成させ、系統が異なる交雑株に由来する胞子間交雑を行い、第二世代交雑を実施した。
(4)第二世代交雑株より、更に胞子を形成させ、種々の組み合わせで再交雑を実施、第三世代交雑株を作製した。
上記手順において、各世代で、多数作製した交雑株について、無糖生地発酵力、高糖生地発酵力の評価に加え、中種耐性を指標にした評価を実施し、親株より機能向上した事を基準として次世代交雑株作製の元株を選択した。世代毎に各機能の向上を図り、第三世代交雑株の中から、発明課題を解決しうる本発明の菌株、即ちKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株を選択する事に成功した。
(実施例2) パン酵母菌体の作製方法
表3に示す組成の培地を5ml/大型試験管、50ml/500ml坂口フラスコに分注し、オートクレーブ殺菌した後培養に使用した。実施例1で選択したKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株の交雑育種株1白金耳を培地5mlの入った大型試験管に植菌し、30℃、1日の振とう培養により試験管種母とし、次に培地50mlの入った500ml坂口フラスコに継植し、更に30℃、1日の振とう培養によりフラスコ種母とし、5Lジャーでの種母培養に供した。
Figure 0004475144
表4組成の培地を5Lジャーに2250mL調製し、オートクレーブ殺菌後、500ml坂口フラスコ5本分のフラスコ種母250mlを植菌し表4の条件で18時間培養し、本培養種母とした。
Figure 0004475144
糖以外の表5組成の培地を5Lジャーに調製し、オートクレーブ殺菌後、5Lジャーで培養した本培養種母の湿菌体50g相当量を添加し、表5の条件で14時間培養を行った。培地組成の糖は、14時間の培養時間に分割して添加し菌体を作製した。培養菌体は培養終了後直ちに遠心分離し、ヌッチェにより吸引脱水し湿菌体を作製、以下の実施例に使用した。実際に使用する際には、湿菌体の水分含量を測定し、65%水分の湿菌体相当量に換算した。
Figure 0004475144
(実施例3) 中種耐性
表6に示す各糖配合での中種法において、中種発酵後の本捏生地ガス発生量を測定比較した。パン酵母としては、KCY1160株、KCY1170株、KCY1171株を用いた。その結果を表7に示す。
Figure 0004475144
Figure 0004475144
(比較例1)
パン酵母として、株式会社カネカから市販されているパン酵母3株(RED、GA、SG)を用いた以外は、実施例3と同様にして表6に示す各糖配合での中種法において、中種発酵後の本捏生地ガス発生量を測定比較した。その結果を表7に示す。
本発明のKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株は、市販されているパン酵母に較べて、低糖配合領域から超高糖配合領域までの広い糖配合領域の本捏発酵において、強い中種耐性を有しているといえる。
(実施例4) 中種安定性
表8に示す糖配合での中種法において、中種発酵後の本捏生地ガス発生量と中種安定性を測定比較した。パン酵母としては、KCY1160株、KCY1170株、KCY1171株を用いた。その結果を表9に示す。
Figure 0004475144
Figure 0004475144
(比較例2)
パン酵母として、株式会社カネカから市販されているパン酵母3株(RED、GA、SG)を用いた以外は、実施例4と同様にして、表8に示す糖配合での中種法において、中種発酵後の本捏生地ガス発生量と中種安定性を測定比較した。その結果を表9に示す。
本発明のKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株は市販されているパン酵母に較べて、中種法において、中種発酵時間の経過に伴う本捏発酵におけるガス発生量の低下が少なく、高い本捏後ガス発生量を維持しうる高い中種安定性を有しているといえる。
(実施例5) ストレート生地発酵力
表10に示す各糖配合のストレート法生地において、ストレート生地ガス発生量を測定比較した。パン酵母としては、KCY1160株、KCY1170株、KCY1171株を用いた。その結果を表11に示す。なお、ストレート生地発酵力は、小麦粉として日清製粉の強力粉カメリヤを使用し、規定量の糖と水あるいは食塩を糖懸濁液として調製し、パン酵母とともにホバート卓上ミキサーで生地をミキシングし、ミキシング後の生地20gのガス発生量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて、38℃で2時間測定し、全ガス量に2.5を乗じ本捏生地50gに相当する全ガス量を求め、そのガス量を各パン酵母のストレート生地発酵力とした。
Figure 0004475144
Figure 0004475144
(比較例3)
パン酵母として、株式会社カネカから市販されているパン酵母3株(RED、GA、SG)を用いた以外は、実施例5と同様にして、表10に示す各糖配合のストレート法生地において、ストレート生地ガス発生量を測定比較した。その結果を表11に示す。
本発明のKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株は、市販されているパン酵母に較べて、中種製法に限らずストレート製法においても、無糖生地から超高糖生地までの広い糖配合領域で高いガス発生量を示し、製法や糖配合による使い分けを必要としない使い易いパン酵母であるといえる。
(実施例6) 中種法製パン試験−1
表12に示す中種法生地組成で、中種製パン試験を実施し、比容積を比較した。パン酵母としては、KCY1160株、KCY1170株、KCY1171株を用いた。結果を表13に示す。
Figure 0004475144
Figure 0004475144
(比較例4)
パン酵母として、株式会社カネカから市販されているパン酵母2株(RED、GA)を用いた以外は、実施例6と同様にして、表12に示す中種法生地組成で、中種製パン試験を実施し、比容積を比較した。その結果を表13に示す。
本発明のKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株は、上記製パン試験においても、高い本捏ガス発生量と優れた製パン性を示し、比容積良好なパンとなった。更に、形状は腰高で良好であり、ソフトな食感、良好な風味を示した。
(実施例7) 中種法製パン試験−2
表14に示す中種法生地組成で、中種製パン試験を実施し、比容積を比較した。パン酵母としては、KCY1160株、KCY1170株、KCY1171株を用いた。結果を表15に示す。
Figure 0004475144
Figure 0004475144
(比較例5)
パン酵母として、株式会社カネカから市販されているパン酵母2株(RED、GA)を用いた以外は、実施例7と同様にして、表14に示す中種法生地組成で、中種製パン試験を実施し、比容積を比較した。結果を表15に示す。
本発明のKCY1160株、KCY1170株、及びKCY1171株は、上記製パン試験においても、高い本捏ガス発生量と優れた製パン性を示し、比容積良好なパンとなった。更に、形状は腰高で良好であり、ソフトな食感、良好な風味を示した。

Claims (4)

  1. 下記表1に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い、中種発酵後、本捏生地を作製した場合の、中種法低糖配合(本捏生地糖配合5%)の本捏ガス発生量が320ml以上、且つ、中種法中糖配合(本捏生地糖配合15%)の本捏ガス発生量が350ml以上、且つ、中種法高糖配合(本捏生地糖配合25%)の本捏ガス発生量が280ml以上、且つ、中種法超高糖配合(本捏生地糖配合35%)の本捏ガス発生量が140ml以上であり、中種法の中種発酵後、広い糖配合領域での本捏発酵において強い中種耐性を有するとともに、
    下記表2に示した生地配合、ミキシング条件、発酵条件に従い、中種発酵後、本捏生地(本捏生地糖配合30%)を作製した場合の、本捏生地(本捏生地糖配合30%)50g当たり、38℃で2時間のガス発生量が、150分間発酵させた中種生地を用いた時には280ml以上であり、且つ、150分間発酵させた中種生地を用いた時の該ガス発生量が50分間発酵させた中種生地を用いた時の該ガス発生量の80%以上であり、中種法の本捏発酵における本捏ガス発生量が、中種発酵時間の影響を受け難い、高い中種安定性を有することを特徴とするサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)FERM P−19692、FERM P−20407、又はFERM P−20408であるパン酵母。
    (ただし、製パン主副原料の配合割合(%)は、全生地中の小麦粉量に対する重量割合であり、また、パン酵母量とは、65%水分量に圧搾された湿菌体相当量であり、さらに、本捏ガス発生量は、本捏ミキシング後の本捏生地20gのガス発生量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて、38℃で2時間測定し、全ガス量に2.5を乗じ本捏生地50gに相当する全ガス量を算出し、それを本捏ガス発生量とした。)
    Figure 0004475144
    Figure 0004475144
  2. パン酵母がドライイーストの形態である請求項1に記載のパン酵母。
  3. 請求項1又は2に記載のパン酵母を含有する生地。
  4. 請求項1又は2に記載のパン酵母を使用するパン製造方法。
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