JP4268355B2 - 乾燥耐性酵母 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製パン用、特に冷凍生地製パン用として好適な、乾燥耐性を有する酵母、当該酵母を乾燥してなる乾燥酵母、前記酵母または前記乾燥酵母を含有してなる生地、ならびに当該生地を用いてなるパンに関する。
【0002】
【従来の技術】
パン酵母には生酵母(以下、乾燥前の酵母という場合がある)と乾燥酵母(以下、乾燥後の酵母という場合がある)の大きく分けて2種類の形態がある。生酵母としては、より糖濃度の高い生地に用いられる酵母、冷凍生地製法に用いられる酵母、低温感受性を有している酵母など種々の機能を持った酵母が開発されており、目的のパンの製造に適した酵母が実用化され、様々な製パンへの対応が可能である。しかしながら、生酵母は貯蔵に冷蔵が必要であり、保存期間も短い。
【0003】
一方、乾燥酵母は、保存性、貯蔵性の向上を目的として生酵母を乾燥されたものであり、活性乾燥酵母やインスタント乾燥酵母として実用化されている。さらに、乾燥酵母特有の風味が特に糖濃度が低いパンに好まれ、実用化されている。かかる乾燥酵母の製造には乾燥耐性を有した菌株を用いたり、又は培養方法を調整することによって乾燥耐性を付与することが必要である。また、乾燥においても乾燥装置の工夫と、温度又は乳化剤添加などの工夫が必要である。このように、乾燥時の性能低下を最小限に防ぎ、発酵力等の機能を生酵母そのままに保ち乾燥酵母製品にすることは難しく、生酵母に比べその機能は十分とは言えない。そこで、貯蔵性や保存性に優れ、なおかつ生酵母でみられるような様々の機能を同程度に有する乾燥酵母の実現が待ち望まれていた。
【0004】
現在、乾燥酵母は限られた糖濃度の条件で、特に乾燥酵母特有の風味を生かした製法において主に使用されている。具体的には、スクラッチ製法のフランスパンと、食パンなど糖濃度の低いパンの製造への使用が主流である。一方、糖濃度の高い生地を用いる製パン法や、冷凍生地もしくは冷蔵保存生地を用いる冷凍生地製法にはほとんど使用されていない。これは、それらの生地において充分な製パン性を有する酵母が未だ得られていないことによる。乾燥酵母として冷凍生地製法において使用し得る酵母としては、たとえば、特開平11−155559号公報に、ごく限られた低い糖濃度の生地において冷凍耐性を有し、かつ乾燥耐性を有するパン酵母が記載されている。しかしながら、未だ無糖から高糖濃度までの種々の生地において高い冷凍耐性を発揮し得る酵母については報告された例はなく、当然ながら、そのような特性を有する乾燥酵母についても報告はない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無糖から高糖濃度までの種々の生地において優れた発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する、製パン用、特に冷凍生地製パン用として好適な酵母、詳しくは、高糖から超高糖生地において高い発酵力を示し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から高糖生地において高い発酵力を示し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から低糖生地において高い発酵力を示し、かつ乾燥耐性を有する酵母;中糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から低糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母;および低温感受性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供することを目的とする。また本発明は、前記酵母を乾燥してなる、貯蔵性や保存性に優れ、生酵母と同程度の発酵力を発揮しうる、特に冷凍生地製パン用として好適な乾燥酵母を提供することを目的とする。さらに本発明は、前記酵母または前記乾燥酵母を含有してなる生地および冷凍生地、ならびに当該生地を用いてなる、品質の安定した優れたパンを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前期課題に鑑み鋭意検討した結果、所望の特性を有する酵母を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は
〔1〕 糖濃度0〜30重量%の生地において冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母であって、下記:
(1) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度0重量%の生地(乾燥酵母2重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で100ml以上である、
(2) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度5重量%の生地(乾燥酵母2重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で70ml以上である、
(3) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度10重量%の生地(乾燥酵母2重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で90ml以上である、および
(4) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度25重量%の生地(乾燥酵母3重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で125ml以上であり、かつフロアタイム90分後4週間冷凍保存後の生地で50ml以上である、
の特性を有する、サッカロマイセス・セルビシエ (Saccharomyces cerevisiae) D92764株(FERM BP−7690)
〔2〕 前記 (1) の糖濃度0重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.88以上である前記〔1〕記載の酵母、
〔3〕 前記 (1) の糖濃度0重量%の生地での試験において、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が0.80以上である前記〔1〕又は〔2〕記載の酵母、
〔4〕 前記 (2) の糖濃度5重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.40以上である前記〔1〕記載の酵母、
〔5〕 前記 (2) の糖濃度5重量%の生地での試験において、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が0.50以上である前記〔1〕又は〔4〕記載の酵母、
〔6〕 前記 (3) の糖濃度10重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.50以上である前記〔1〕記載の酵母、
〔7〕 前記 (3) の糖濃度10重量%の生地での試験において、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が0.20以上である前記〔1〕又は〔6〕記載の酵母、
〔8〕 前記 (4) の糖濃度25重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.70以上であり、かつフロアタイム90分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.30以上である前記〔1〕記載の酵母、
〔9〕 前記 (4) の糖濃度25重量%の生地での試験において、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が0.35以上である前記〔1〕又は〔8〕記載の酵母、
〔10〕 さらに、残存発酵力比〔乾燥前後での発酵力の比(乾燥後/乾燥前)〕が0.70以上である前記〔1〕〜〔9〕いずれか記載の酵母、
〔11〕 酵母が乾燥酵母である前記〔1〕〜〔10〕いずれか記載の酵母、
〔12〕 冷凍生地用の前記〔1〕〜〔11〕いずれか記載の酵母、
〔13〕 前記〔1〕〜〔12〕いずれかに記載の酵母を含有してなる生地、
ならびに
〔14〕 前記〔13〕に記載の生地を用いてなるパン、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の酵母は、無糖から高糖濃度までの種々の生地において優れた発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母である。また、当該酵母は特定の糖濃度範囲の生地において、特に、優れた発酵力、冷凍耐性、フロア耐性、低温感受性を発揮するなど、製パン性の観点より特に優れた性質を有する。
【0009】
本発明の酵母によれば、パンの糖濃度に応じた従来のような使い分けの必要は必ずしもないので、一般的なあらゆる糖濃度のパンの製造に対応することができる。また、糖濃度を限定し、当該糖濃度において特に優れた性質を発揮しうる酵母を使用することで、より優れたパンの製造が可能となる。また、当該酵母を乾燥してなる乾燥酵母は、貯蔵性や保存性に優れ、しかも高糖から超高糖生地において、又は無糖から高糖生地の広い糖濃度範囲の生地において、又は無糖から低糖生地において生酵母と同程度の発酵力を発揮しうることから、一般的なあらゆる糖濃度範囲において質のよいパン製造を行うことができる。また、従来の乾燥酵母には、例えば、十分な冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有するものはなく、冷凍生地製法への使用は困難であったが、前記乾燥酵母は中糖から高糖生地において、又は無糖から高糖生地の広い糖濃度範囲の生地において、又は無糖から低糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を発揮しえ、かつ乾燥耐性を有することから、糖濃度による制限を実質的に受けることなく、冷凍生地製法に非常に好適に使用することができる。
【0010】
ところで、乾燥酵母は、その製法と性状から大きく2種類に分類される。一方は、その製造に特殊な機器を必要としない一般にアクティブ乾燥酵母(アクティブドライブイースト)と呼ばれるもので、菌体水分量10重量%程度である。使用に際しては、温水(ショ糖を添加する場合もある)に溶解して数十分間に渡り活性化を行った後にパン生地に混捏する。もう一方は、インスタント乾燥酵母と呼ばれるもので、菌体水分量は4重量%程度で長期間の保存が可能であり、使用に際しては温水で活性化することなしに生地に混捏することができる。
【0011】
本明細書において「乾燥酵母」とはインスタント乾燥酵母をいい、前記アクティブ乾燥酵母としてのみ使用可能な酵母に比べ、より乾燥耐性に優れた酵母からなる。従って、本発明の乾燥酵母は、貯蔵性に非常に優れると共に、生地に混捏する際に温水での活性化なしに直ちに使用可能である。
【0012】
さらに、本発明によれば、前記酵母又は前記乾燥酵母を含有してなる、例えば、スクラッチ製法の生地及び冷凍生地製法に好適な生地が得られ、当該生地を用いてなる、品質の安定した優れたパンを提供することができる。
【0013】
なお、前記乾燥酵母、生地及びパンは本発明に包含される。また本明細書において、生地の糖濃度として「重量%」を用いる場合、当業界の慣習に従って「小麦粉100重量部に対する糖の重量部」を示し、たとえば、「糖濃度5重量%の生地」という場合、「小麦粉100重量部に対し糖5重量部が添加されてなる生地」をいう。冷凍生地には冷蔵生地の概念を含む場合がある。また本明細書において、「無糖生地」とは糖濃度0重量%である生地を、「低糖生地」とは糖濃度が0重量%を超えて10重量%までの生地を、「中糖生地」とは糖濃度が10重量%を超えて15重量%までの生地を、「高糖生地」とは糖濃度が15重量%を超えて30重量%までの生地を、「超高糖生地」とは糖濃度が30重量%を超えて40重量%までの生地を、それぞれいう。なお、本明細書において、「糖」とは一般にショ糖をいうが、その種類は特に限定されるものではなく、生地の調製の際に添加して使用される糖であればいずれのものでもよい。また、高糖生地には超高糖生地の意が含まれる場合がある。
【0014】
以下、本発明の酵母の性質について説明する。
【0015】
なお、スクラッチ製法において示す、糖濃度0重量%、糖濃度5重量%、糖濃度30重量%、糖濃度40重量%の各々の生地は、表1に示す配合にしたがい、各原料を卓上ミキサー(HOBART社製)により、捏ね上げ温度29℃で混捏し、調製したものである。
【0016】
【表1】
Figure 0004268355
【0017】
同様に、冷凍生地製法において示す、糖濃度0重量%、糖濃度3重量%、糖濃度5重量%、糖濃度10重量%、糖濃度15重量%、糖濃度25重量%の各々の生地は、後述する表4に示す配合にしたがい、各原料を卓上ミキサー(HOBART社製)により、捏ね上げ温度29℃で混捏し、調製したものである。
【0018】
本発明の酵母の各性質の定義ならびにその評価の方法をまとめて示す。
【0019】
(1)糖濃度0重量%の生地発酵力
本明細書において糖濃度0重量%の生地発酵力は、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用いて生地を調製し、一定条件下に測定した生地からのガス(炭酸ガス)発生量で表す。具体的には、当該ガス発生量(ml)は、表1に示す糖濃度0重量%の生地配合で生地を混捏・調製し、この生地を85gに分割後、常法に従ってファーモグラフ(アトー社製)で測定(30℃で85分間)して求める。
【0020】
(2)糖濃度5重量%の生地発酵力
本明細書において糖濃度5重量%の生地発酵力とは、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用いて生地を調製し、一定条件下に測定した生地からのガス発生量で表す。具体的には、当該ガス発生量(ml)は、表1に示す糖濃度5重量%の生地配合で生地を混捏・調製し、この生地を85gに分割後、常法に従ってファーモグラフ(アトー社製)で測定(30℃で85分間)して求める。
【0021】
(3)糖濃度30重量%の生地発酵力
本明細書において糖濃度30重量%の生地発酵力とは、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用いて生地を調製し、一定条件下に測定した生地からのガス発生量で表す。具体的には、当該ガス発生量(ml)は、表1に示す糖濃度30重量%の生地配合で生地を混捏・調製し、この生地を85gに分割後、常法に従ってファーモグラフ(アトー社製)で測定(30℃で115分間)して求める。
【0022】
(4)糖濃度40重量%の生地発酵力
本明細書において糖濃度40重量%の生地発酵力とは、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用いて生地を調製し、一定条件下に測定した生地からのガス発生量で表す。具体的には、当該ガス発生量(ml)は、表1に示す糖濃度40重量%の生地配合で生地を混捏・調製し、この生地を85gに分割後、常法に従ってファーモグラフ(アトー社製)で測定(30℃で115分間)して求める。
【0023】
(5)本捏後の生地ガス発生量
本明細書において本捏後の生地ガス発生量とは、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用い、加糖中種法により調製した本捏後の生地からの、一定条件下に測定したガス発生量で表す。具体的には、当該ガス発生量(ml)は、表2に示す加糖中種生地配合で表3に示す加糖中種法の生地作製条件に従って生地を調製し、本捏後の生地を50gに分割後、常法に従ってファーモグラフ(アトー社製)で測定(30℃で120分間)して求める。
【0024】
【表2】
Figure 0004268355
【0025】
【表3】
Figure 0004268355
【0026】
(6)冷凍耐性
本明細書において冷凍耐性とは、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用いて生地を調製し、当該生地を一定期間冷凍保存後、当該乾燥酵母が、冷凍保存前の酵母と同様に使用可能な発酵力を発揮し得ることをいう。なお、冷凍保存後の発酵力は、表4の配合に従って得られた生地を20gに分割し、30℃でフロアタイムを60分間又は90分間とり、次いで−20℃で4週間冷凍保存後、25℃で30分間解凍し、ファーモグラフ(アトー社製)で測定(38℃で120分間)して得た生地からのガス発生量(ml)として表す。
【0027】
【表4】
Figure 0004268355
【0028】
また、冷凍耐性は、冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)、詳しくは、発酵力を表すガス発生量の冷凍保存前後での比として表すこともでき、冷凍保存前と比較した冷凍保存後の発酵力の程度を直ちに把握することができる点で、冷凍耐性を評価するのに好適である。本発明の酵母としては、その冷凍耐性において、前記冷凍保存後の発酵力と冷凍保存前後での発酵力の比が共に高いものがより好適である。なお、冷凍保存前の発酵力は、前記冷凍保存後の発酵力について示す方法において、生地を冷凍保存しない場合の生地からのガス発生量として表す。
【0029】
(7)フロア耐性
本明細書においてフロア耐性とは、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用いて生地を調製し、冷凍保存の前に前発酵(フロア)しても、前発酵しないか、あるいは実質的に前発酵しない場合と同様に使用可能な発酵力を発揮し得ることをいう。フロア耐性は、前記乾燥酵母を用いて生地を調製し、個々の生地に対し長短時間の2通りのフロアタイムをとり、次いで当該生地を一定期間冷凍保存後、短時間のフロアタイムをとった場合と長時間のフロアタイムをとった場合における冷凍保存後の発酵力の比(長時間のフロアタイム/短時間のフロアタイム)、詳しくは、前記冷凍耐性と同様、発酵力をガス発生量として求め、得られたガス発生量の比として表す。
【0030】
すなわち、糖濃度0重量%の生地、糖濃度3重量%の生地、糖濃度5重量%の生地では、フロアタイム0分と60分間とし、4週間冷凍保存後、解凍し、各々発酵力をガス発生量として求め、それらの比をとる。また、糖濃度10重量%の生地、糖濃度15重量%の生地、糖濃度25重量%の生地では、フロアタイムを30分間と90分間とし、4週間冷凍保存後、解凍し、各々発酵力をガス発生量として求め、それらの比をとる。なお、ガス発生量(ml)は、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母を用い、表4の配合に従って生地を調製し、当該生地を20gに分割し、30℃で所定のフロアタイムをとり、次いで−20℃で4週間冷凍保存後、25℃で30分間解凍し、ファーモグラフ(アトー社製)で測定(38℃で120分間)して求める。
【0031】
(8)低温感受性
本明細書において低温感受性とは、好ましくは0℃〜10℃、より好ましくは3℃〜8℃の低温において発酵力が低いという性質をいい、本発明において具体的には、酵母を後述するようにして乾燥して得た乾燥酵母の5℃における生地発酵力に対する30℃における生地発酵力の比(30℃生地発酵力/5℃生地発酵力)により評価した。当該比の値が大きいほど低温感受性に優れる。
【0032】
当該乾燥酵母の5℃における発酵力は微弱であるため、5℃生地発酵力と30℃生地発酵力とでは、その測定方法が異なる。すなわち、5℃生地発酵力を測定する場合、表5に示す生地組成で各成分を卓上ミキサーを用い、捏ね上げ温度25℃になるように混捏して生地を調製し、得られた生地をシリンダーに入れて、あらかじめ初期体積(ml)を測定する。次いで、そのままの状態で5℃にて20時間発酵させた後に生地の体積(発酵後体積)を測定し、発酵後体積と初期体積との差(発酵後体積−初期体積)を5℃生地発酵力とする。一方、30℃生地発酵力は、表5に示す生地組成で同様にして、捏ね上げ温度29℃になるように混捏して生地を調製し、得られた生地を85gに分割後、常法に従ってファーモグラフ(アトー社製)でガス発生量を測定(30℃で85分間)し、当該ガス発生量を30℃生地発酵力とする。なお、酵母として生酵母(圧搾酵母)を使用する場合は、表5において乾燥酵母1gの替わりに生酵母2gを使用する。
【0033】
【表5】
Figure 0004268355
【0034】
(9)乾燥耐性
本発明において乾燥耐性は、乾燥前の酵母の発酵力に対する乾燥後の酵母の発酵力の比(残存発酵力比)として表す。本発明の酵母は乾燥耐性に優れており、従って、乾燥後においても乾燥前の酵母と同様に使用可能な発酵力を発揮し得る。
【0035】
なお、残存発酵力比は以下のようにして求める。すなわち、乾燥前及び乾燥後の各々の酵母を用い、表6の配合に従って各原料を卓上ミキサー(HOBERT社製)により混捏(捏ね上げ温度29℃)して生地を調製する。得られた生地を85gに分割した後、各場合について、ファーモグラフにて30℃で85分間のガス発生量(ml)を測定し、当該ガス発生量を発酵力とする。次いで、乾燥後の酵母の発酵力、乾燥前の酵母の発酵力、乾燥後の菌体水分量(重量%)及び乾燥前の菌体水分量(重量%)を、以下の式:
【0036】
【数1】
Figure 0004268355
【0037】
に適用して残存発酵力比を求める。乾燥後及び乾燥前の菌体水分量は、測定する菌体約1gを精秤し(菌体重量1;g)、充分に乾燥した試験管内において110℃で12時間乾燥を行った後、再度精秤し(菌体重量2;g)、以下の式:
菌体水分量(重量%)=〔(菌体重量1−菌体重量2)/菌体重量1〕×100
により求める。
【0038】
【表6】
Figure 0004268355
【0039】
本発明の一態様として、特に高糖生地において好適に使用される、当該生地において高い発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供する。当該酵母としては以下の性質を有するものが好適であり、本発明の所望の効果を充分に奏しうる。
【0040】
糖濃度30重量%の生地発酵力としては好ましくは200ml以上、より好ましくは250ml以上である、および/または糖濃度40重量%の生地発酵力としては好ましくは70ml以上、より好ましくは90ml以上である。また、さらに本捏後の生地ガス発生量が、好ましくは120ml以上、より好ましくは170ml以上、特に好ましくは175ml以上、さらに好ましくは190ml以上であるのがより好ましい。
【0041】
乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。なお、本態様において、残存発酵力比が0.70以上である場合、冷凍生地用としても好適に使用することができる。
【0042】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D75412株(FERM BP−7688)を挙げることができる。
【0043】
また本発明の一態様として、糖濃度0〜30重量%の生地において好適に使用される、当該生地において高い発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供する。当該酵母としては以下の性質を有するものが好適であり、本発明の所望の効果を充分に奏しうる。
【0044】
糖濃度0重量%の生地発酵力としては好ましくは140ml以上、より好ましくは190ml以上であり、かつ糖濃度30重量%の生地発酵力としては好ましくは200ml以上、より好ましくは230ml以上である。また、さらに本捏後の生地ガス発生量が好ましくは120ml以上、より好ましくは170ml以上、特に好ましくは175ml以上であるのがより好ましい。
【0045】
乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。なお、本態様において、残存発酵力比が0.70以上である場合、冷凍生地用としても好適に使用することができる。
【0046】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D20946株(FERM BP−7684)を挙げることができる。
【0047】
また本発明の一態様として、糖濃度0〜5重量%の生地において好適に使用される、当該生地において高い発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供する。当該酵母としては以下の性質を有するものが好適であり、本発明の所望の効果を充分に奏しうる。
【0048】
糖濃度0重量%の生地発酵力としては好ましくは220ml以上、より好ましくは240ml以上である、および/または糖濃度5重量%の生地発酵力としては好ましくは160ml以上、より好ましくは180ml以上である。
【0049】
乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。なお、本態様において、残存発酵力比が0.70以上である場合、冷凍生地用としても好適に使用することができる。
【0050】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D46462株(FERM BP−7686)を挙げることができる。
【0051】
また本発明の一態様として、糖濃度10〜30重量%の生地において好適に使用される、当該生地において冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供する。当該酵母としては以下の性質を有するものが好適であり、本発明の所望の効果を充分に奏しうる。
【0052】
糖濃度10重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは90ml以上、より好ましくは100ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.50以上、より好ましくは0.55以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が好ましくは0.20以上、より好ましくは0.35以上であるのがより好適である。
【0053】
糖濃度15重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは70ml以上、より好ましくは100ml以上、さらに好ましくは130ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.65以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が好ましくは0.20以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.45以上であるのがより好適である。
【0054】
糖濃度25重量%の生地の場合、フロアタイム90分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは50ml以上、より好ましくは60ml以上、更に好ましくは90ml以上であり、さらに、フロアタイム90分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.60以上、より好ましくは0.63以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であるのがより好適である。
【0055】
乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。
【0056】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D66785株(FERM BP−7687)を挙げることができる。
【0057】
また本発明の一態様として、糖濃度0〜30重量%の生地において好適に使用される、当該生地において冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供する。当該酵母としては以下の性質を有するものが好適であり、本発明の所望の効果を充分に奏しうる。
【0058】
糖濃度0重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは100ml以上、より好ましくは105ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.88以上、より好ましくは0.90以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が好ましくは0.80以上、より好ましくは0.90以上であるのがより好適である。
【0059】
さらに糖濃度5重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは70ml以上、より好ましくは85ml以上、さらに好ましくは90ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.40以上、より好ましくは0.70以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が好ましくは0.50以上、より好ましくは0.60以上であるのがより好適である。
【0060】
さらに糖濃度10重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは90ml以上、より好ましくは100ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.50以上、より好ましくは0.55以上、さらに好ましくは0.65以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が好ましくは0.20以上、より好ましくは0.35以上、さらに好ましく0.40以上であるのがより好適である。
【0061】
さらに糖濃度25重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは125ml以上、より好ましくは130ml以上、更に好ましくは140ml以上であり、かつフロアタイム90分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは50ml以上、より好ましくは60ml以上、更に好ましくは90ml以上である。さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.72以上であり、かつフロアタイム90分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)は好ましくは0.35以上、より好ましくは0.38以上であるのがより好適である。
【0062】
乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。
【0063】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D92764株(FERM BP−7690)を挙げることができる。
【0064】
また本発明の一態様として、糖濃度0〜3重量%の生地において好適に使用される、当該生地において冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母を提供する。当該酵母としては以下の性質を有するものが好適であり、本発明の所望の効果を充分に奏しうる。
【0065】
糖濃度0重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは100ml以上、より好ましくは110ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.88以上、より好ましくは0.95以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が好ましくは0.80以上、より好ましくは0.90以上であるのがより好適である。
【0066】
さらに糖濃度3重量%の生地の場合、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の発酵力は、ガス発生量で好ましくは50ml以上、より好ましくは70ml以上、さらに好ましくは75ml以上であり、さらに、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比が好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.55以上であるのが好適である。加えて、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が好ましくは0.35以上、より好ましくは0.50以上であるのがより好適である。
【0067】
乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。
【0068】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D80921株(FERM BP−7689)を挙げることができる。
【0069】
また本発明の一態様として、特に低糖生地において好適に使用される、当該生地において低温感受性及び乾燥耐性を有する酵母を提供する。低温感受性としては、5℃生地発酵力に対する30℃生地発酵力の比(30℃生地発酵力/5℃生地発酵力)が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。一方、乾燥耐性としては、残存発酵力比が好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上である。
【0070】
本態様における好適な酵母の一例として具体的には、後述するサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D31735株(FERM BP−7685)を挙げることができる。
【0071】
本発明の酵母としては無糖から高糖濃度の生地において前記したような性質を有するあらゆる菌株、特に、高糖から超高糖生地において高い発酵力を示しかつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株、無糖から高糖生地において高い発酵力を示しかつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株、無糖から低糖生地において高い発酵力を示しかつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株、中糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株、無糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株、無糖から低糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株、低温感受性を有し、かつ乾燥耐性を有するあらゆる菌株を包含し、人工的に作出したもの、自然界から分離したものを問わず、全て包含するものである。たとえば、既知の酵母でよく、一般的にパンを製造するのに利用されている酵母、たとえば、多用されるサッカロマイセス・セルビシエ、その他、サッカロマイセス・ウバウム、サッカロマイセス・エクシギューズやトルラポラ属等が挙げられ、本発明の所望の効果を奏しうる限り、いずれのものでもよい。
【0072】
本発明の酵母は公知の各種方法により得ることができる。たとえば、前記したような各種性質に基づいて自然界より広くスクリーニングを実施し、所望の性質を有する酵母を選抜し、若しくは公知の交雑法により各酵母を掛け合わせ、或いは公知の方法に従って各種突然変異を引き起こし、所望の性質を有する酵母を選抜することで、所望の酵母を取得できる。
【0073】
本発明においては、自然界より分離した菌株や交雑により作製した育種菌株を前記の各種性質に基づいてスクリーニングした結果、前記のような優れた性質を有する7種の新規菌株を取得し、それぞれサッカロマイセス・セルビシエD75412株、サッカロマイセス・セルビシエD20946株、サッカロマイセス・セルビシエD46462株、サッカロマイセス・セルビシエD66785株、サッカロマイセス・セルビシエD92764株、サッカロマイセス・セルビシエD80921株、およびサッカロマイセス・セルビシエD31735株(以下、株を省略する)と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した。
【0074】
以下、前記新規菌株について説明する。
【0075】
〔菌学的性質〕
本発明の酵母の菌学的性質を表7〜表20に示す。
【0076】
【表7】
Figure 0004268355
【0077】
【表8】
Figure 0004268355
【0078】
【表9】
Figure 0004268355
【0079】
【表10】
Figure 0004268355
【0080】
【表11】
Figure 0004268355
【0081】
【表12】
Figure 0004268355
【0082】
【表13】
Figure 0004268355
【0083】
【表14】
Figure 0004268355
【0084】
【表15】
Figure 0004268355
【0085】
【表16】
Figure 0004268355
【0086】
【表17】
Figure 0004268355
【0087】
【表18】
Figure 0004268355
【0088】
【表19】
Figure 0004268355
【0089】
【表20】
Figure 0004268355
【0090】
前記菌株はそれぞれ、上記のような菌学的性質を有し、「ジ イースツ、ア タキソノミック スタディー(The Yeasts, A Taxonomic Study)(第4版)」と照合したところ、いずれの菌株ともサッカロマイセス・セルビシエに属するものと確認された。さらに、前記するように、それぞれ、高糖から超高糖生地において高い発酵力を示しかつ乾燥耐性を有するという特徴、無糖から高糖生地において高い発酵力を示しかつ乾燥耐性を有するという特徴、無糖から低糖生地において高い発酵力を示しかつ乾燥耐性を有するという特徴、中糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有しかつ乾燥耐性を有するという特徴、無糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有しかつ乾燥耐性を有するという特徴、無糖から低糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有しかつ乾燥耐性を有するという特徴、低温感受性を有しかつ乾燥耐性を有するという特徴を持っていることから、前記菌株はいずれも従来の菌株には見当たらず、新規菌株と認定した。
【0091】
〔培養条件〕
前記各酵母の培養方法としては通常のパン酵母に用いられる方法であれば特に限定はない。また、最適生育pH、生育可能なpH範囲、最適生育温度、生育可能な温度範囲等も通常のパン酵母と同様である。例えば、糖蜜の流加方式にて菌体を作製することができる。糖蜜は他の資化性糖蜜に代用でき、また窒素源/リン酸源も限定するものではない。さらに成長促進因子を加えても良い。培養により得られた酵母菌体を集菌、洗浄後、脱水し、圧搾酵母として本発明の酵母を得ることができる。
【0092】
本発明はまた、前記酵母を乾燥して得られる乾燥酵母を提供する。本明細書にいう乾燥酵母とは酵母を乾燥させたものをいい、好ましくは、酵母菌体中の水分量が5重量%以下であるものをいう。なお、菌体中の水分量の測定は前記の方法により行うことができる。
【0093】
前記したように、従来、所望の製パン性を有する乾燥酵母を調製することは困難であったが、本発明においては、酵母の乾燥方法には特に限定はなく、たとえば、一般に乾燥酵母を作製する方法として公知である方法を使用することができる。たとえば、以下のようにして乾燥酵母を得ることができる。圧搾酵母に乾燥酵母当たり1.5重量%になるようにソルビタン脂肪酸エステルの水エマルジョンを添加して混合し、次いで、エクストルーダーにより0.5mmのスクリーンメッシュをパスさせて糸状とし、流動乾燥機の初期入り口温度44℃の温風により流動乾燥させ、乾燥終点を菌体中の水分量が5重量%以下になった時点とし、乾燥酵母を得ることができる。
【0094】
本発明の生地は、前記する本発明の酵母(乾燥前の酵母)又は乾燥酵母を、各種原料と共に混捏することで調製することができる。本明細書にいう生地とは、小麦粉に代表される穀粉に水を加えて、所望により、ショートニング等の油脂;砂糖、ブドウ糖、果糖、液糖等の糖類;食塩;卵;脱脂粉乳、牛乳、発酵乳等の乳製品;イーストフード;モノグリセリド等の乳化剤等の添加物を入れて混捏したものをいい、特に限定されるものではないが、主としてパン生地をいう。本発明の生地としては、パイ生地、饅頭生地、ピザ生地等も包含する。前記穀粉、水、添加物は特に限定されるものではなく、公知のものを適宜使用することができる。本発明の酵母又は乾燥酵母は、無糖から高糖濃度までの種々の生地において優れた発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母であり、また、前記するように、当該酵母はそれぞれ特定の糖濃度範囲の生地において、製パン性の観点より、特に優れた性質を有する。従って、一般的なあらゆる糖濃度のパンの製造に対応することができ、また、糖濃度範囲を限定することで、より優れたパンの製造が可能となる。なお、本発明の酵母又は乾燥酵母の生地における含有量は特に限定されるものではないが、生酵母の場合、小麦粉100重量部に対し、好ましくは1〜6重量部、一方、乾燥酵母の場合、小麦粉100重量部に対し、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0095】
本発明のパンの製造方法としては特に限定はなく、たとえば、ストレート法、中種法、冷蔵生地法、冷凍生地法を挙げることができる。本発明の酵母又は乾燥酵母は、本発明の所望の効果の発現の観点から、スクラッチ製法においては、好ましくは糖濃度0〜40重量%、より好ましくは0〜30重量%の配合で使用することが効果的である。また、冷凍耐性を持った酵母については冷蔵もしくは冷凍生地法において当該生地用として使用することが効果的である。なお、前記生地は、これらのパンの製造方法において、焼成工程を経てパンとなる前のものである。
【0096】
たとえば、公知の冷凍生地法では、通常、冷凍生地は、冷凍生地以外のいわゆるストレート生地と同様の生地組成で比較的低温で捏ね上げて調製され、30〜120分間の前発酵(フロア)、分割、成形の後、冷凍保存される。次いで、冷凍保存された生地を解凍後、最終発酵、焼成することにより品質の安定した優れたパンが得られる。これらの生地およびパンの製造に関しては過去様々な資料が知られており、それらを適宜参考にすることができ、混捏条件、温度条件等は特に限定されるものではない。
【0097】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。但し、実施例2〜7、9、12、15、18、20は参考例である。
【0098】
実施例1
本発明酵母サッカロマイセス・セルビシエD75412、D20946、D46462、D66785、D92764、D80921、D31735について、乾燥耐性を検討した。本発明酵母と、比較対照として市販の汎用酵母カネカレッドイースト(鐘淵化学工業株式会社製)、低温感受性酵母カネカイーストホワイト(鐘淵化学工業株式会社製)、カネカイーストAL(鐘淵化学工業株式会社製)、冷凍耐性酵母FD−I(O社製)、冷凍耐性酵母FD−II(O社製)とYF(J社製)から、乾燥酵母を作製し、その乾燥耐性を比較した。各々の圧搾酵母について乾燥酵母当たり1.5重量%になるようにソルビタン脂肪酸エステルの水エマルジョンを添加して混合し、次いでエクストルーダーにより0.5mmにスクリーンメッシュをパスさせて糸状とし、流動層乾燥機の初期入り口温度44℃の温風により流動乾燥させ、乾燥終点は菌体水分量が5重量%以下になった時点とし、それぞれの乾燥酵母を得た。
【0099】
乾燥耐性は、前記(9)乾燥耐性に示す方法により評価した。その結果を表21に示す。市販の酵母の残存発酵力比が0.50以下であるのに対して、本発明の乾燥酵母の残存発酵力比は0.70以上であり、優れた乾燥耐性を有することが分かる。
【0100】
【表21】
Figure 0004268355
【0101】
実施例2
本発明酵母サッカロマイセス・セルビシエD46462について、乾燥温度を変えての乾燥後の残存発酵力比を測定した。本発明酵母と、比較対照として市販のMauripan low sugar (BP社製)から、乾燥酵母を作製し、その乾燥耐性を乾燥温度を変えて比較した。実施例1と同様に、各々の圧搾酵母について乾燥酵母当たり1.5重量%になるようにソルビタン脂肪酸エステルの水エマルジョンを添加して混合し、次いでエクストルーダーにより0.5mmにスクリーンメッシュをパスさせて糸状とし、流動層乾燥機の初期入り口温度44℃の温風により流動乾燥させた。同様に、流動乾燥機の入り口温度を50℃から65℃まで変化させ乾燥酵母を得た。乾燥終点は菌体水分量が5重量%以下になった時点とし、それぞれの乾燥酵母を得た。
【0102】
乾燥耐性は、前記(9)乾燥耐性に示す方法により評価した。その結果を表22に示す。本発明の乾燥酵母(D46462)とMauripan low sugar (BP社製)は、44℃で乾燥させた時の残存発酵力比は0.8程度とほぼ同等であるが、温度の上昇と共に残存発酵力比の差は広がり、65℃で乾燥させた時の残存発酵力比は本発明の乾燥酵母(D46462)が0.64に対し、Mauripan low sugar(BP社製)は0.51と明らかに、本発明の酵母D46462がより乾燥耐性の強いことを示している。
【0103】
【表22】
Figure 0004268355
【0104】
実施例3
圧搾酵母より乾燥酵母を調製する際に、乾燥による発酵力の低下を押さえる目的で乳化剤の添加は不可欠である。しかし、近年消費者の自然指向の強まりと共に、できるだけ添加剤を押さえた製パンを求められるようになっている。乾燥時に添加する乳化剤の濃度を変えて、本発明の酵母D46462と、比較対照として市販の酵母Mauripan low sugar (BP社製)(本明細書においては、製品の乾燥酵母を「市販の乾燥酵母Mauripan low sugar」という場合がある)より培養により圧搾酵母を調製後、乾燥酵母を作製し、乾燥耐性を検討した。
【0105】
各々の圧搾酵母について、乾燥酵母当たり0.8、1.0、1.2、1.5、3.0重量%になるようにソルビタン脂肪酸エステルの水エマルジョンを添加して混合し、次いでエクストルーダーにより0.5mmのスクリーンメッシュをパスさせて糸状とし、入り口温度を44℃の温風により流動乾燥させ、乾燥終点は菌体水分量が5重量%以下になった時点とし、それぞれの乾燥酵母を得た。
【0106】
乾燥耐性は、前記(9)乾燥耐性に示す方法により評価した。その結果を表23に示す。
【0107】
【表23】
Figure 0004268355
【0108】
表23から明らかなように、市販の酵母から調製した乾燥酵母は、乳化剤添加濃度が1.0重量%以下で急激な低糖生地発酵力の低下がおこったのに対して、本発明の酵母は0.8重量%でも0.60の残存発酵力比を保持していた。このことから、酵母から乾燥酵母を作製する際に添加する乳化剤の量を押さえることが可能で、本発明により、強く求められている自然志向の食品にマッチした乾燥酵母を得ることが出来るといえる。
【0109】
実施例4
本発明の酵母D75412について、糖濃度30重量%の生地発酵力と糖濃度40重量%の生地発酵力を測定した。それぞれの生地発酵力は、前記(3)糖濃度30重量%の生地発酵力と(4)糖濃度40重量%の生地発酵力に示す方法により評価した。本発明の酵母D75412は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。また比較対照として、菓子パン製造に適するとされる市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)(S社製)、Fermipan Brown(D社製)を用いた。結果を表24に示す。
【0110】
【表24】
Figure 0004268355
【0111】
表24に示すように、糖濃度30重量%の生地発酵力は、市販の乾燥酵母が200ml未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母D75412は261mlであり、優れた発酵力を有することが分かる。さらに、糖濃度40重量%の生地発酵力は、市販の乾燥酵母が70ml未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D75412)は111mlであり、糖濃度40重量%の生地においても優れた発酵力を有することが分かる。この発酵力は、あんパンなど糖を多く含む菓子パン生地に最適なことを示している。
【0112】
実施例5
本発明の酵母D20946について、糖濃度0重量%の生地発酵力と糖濃度30重量%の生地発酵力を測定した。それぞれの生地発酵力は、前記(1)糖濃度0重量%の生地発酵力と(3)糖濃度30重量%の生地発酵力に示す方法により評価した。本発明の酵母D20946は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として、食パン製造に適するとされる市販の乾燥酵母Saf-instant (RED) (S社製) 、Fermipan RED (D社製)2品と、菓子パン製造に適するとされる市販の乾燥酵母Saf-instant (Gold) (S社製) 、Fermipan Brown (D社製)2品の合計4品について糖濃度0重量%の生地発酵力と糖濃度30重量%の生地発酵力を測定した。得られた結果を表25に示す。
【0113】
【表25】
Figure 0004268355
【0114】
表25に示すように、市販の乾燥酵母で糖濃度0重量%の生地発酵力が170ml以上の充分に高い菌株でも糖濃度30重量%の生地発酵力は100ml未満となり、高糖濃度の菓子パンを製造するには適さないものであった。また、糖濃度30重量%の生地発酵力が180ml以上あり、菓子パン製造に適した市販の乾燥酵母では、糖濃度0重量%の生地発酵力が140ml未満であり、フランスパンを製造するには適さないものであった。
【0115】
それに対し、本発明の乾燥酵母(D20946)は糖濃度0重量%の生地発酵力が196mlと充分に高く、また、糖濃度30重量%の生地発酵力も236mlと十分に高いため、フランスパンのような無糖生地から、菓子パンのような高糖生地を製造するのに充分な発酵力を示した。
【0116】
実施例6
本発明の酵母D46462について、糖濃度0重量%の生地発酵力と糖濃度5重量%の生地発酵力を測定した。それぞれの生地発酵力は、前記(1)糖濃度0重量%の生地発酵力と(2)糖濃度5重量%の生地発酵力に示す方法により評価した。本発明の酵母D46462は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として、食パン製造に適するとされる市販の乾燥酵母Bruggeman Blue (BR社製)、Saf-instant (RED) (S社製)、およびMauripan low sugar (BP社製)について糖濃度0重量%の生地発酵力と糖濃度5重量%の生地発酵力を測定した。得られた結果を表26に示す。
【0117】
【表26】
Figure 0004268355
【0118】
表26に示すように、市販の乾燥酵母は糖濃度0重量%の生地発酵力が220ml未満で、かつ糖濃度5重量%の生地発酵力が160ml未満であった。それに対し、本発明の酵母D46462は糖濃度0重量%の生地発酵力が244mlであり、更に、糖濃度5重量%の生地発酵力が193mlと市販の乾燥酵母より遙かに高い発酵力を示した。
【0119】
実施例7
本発明酵母D75412、D20946について、加糖中種生地における本捏後のガス発生量及びホイロ投入後のガス発生量(ホイロ中のガス発生量)を測定した。比較対照として、菓子パン製造に適するとされる市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)(S社製)、Fermipan Brown(D社製)を使用した。前記(5)本捏後の生地ガス発生量に示す方法で、本捏後の生地ガス発生量を測定した。同様に、成型後の生地を50gに分割した後、ファーモグラフ(アトー社製)により30℃で2時間のガス発生量(ml)を測定し、当該ガス発生量をホイロ投入後のガス発生量とした。さらに、焼成後のパンの重量に対するパンの容積の割合をパンの比容積(ml/g)として測定した。得られた結果を表27に示す。
【0120】
【表27】
Figure 0004268355
【0121】
表27で示すように、市販の乾燥酵母はいずれも本捏後のガス発生量が120ml以下であるのに対して、本発明の乾燥酵母(D75412)は193ml、本発明の乾燥酵母(D20946)は176mlと顕著に高かった。この本捏後のガス発生量の高さは、引き続いて行われるホイロ投入後のガス発生量の差を生みだしている。最終的に焼成されたパンは、市販の乾燥酵母のものはパンの膨らみが悪く、比容積が4.6ml/g以下と小さいものであった。それに対し、本発明の乾燥酵母で作成されたパンは、顕著に大きなパンが焼成され、その比容積は、本発明の乾燥酵母(D75412)は5.89ml/g、本発明の乾燥酵母(D20946)は5.54ml/gであった。
【0122】
実施例8
本発明の酵母D92764、D80921について冷凍耐性を検討した。冷凍耐性は、前記(6)冷凍耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) (S社製) 、Fermipan Red(D社製) を用いた。冷凍耐性の評価においては、生地の糖濃度は0重量%とした。結果を表28に示す。
【0123】
【表28】
Figure 0004268355
【0124】
表28に示すように、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が100ml未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は110ml、同(D80921)は110mlであり、優れた冷凍保存後の発酵力を有することが分かる。さらに、冷凍保存前後の発酵力の比は、市販の乾燥酵母が0.88未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.92、同(D80921)は0.97であり、優れた冷凍耐性を有することが分かる。
【0125】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして冷凍保存後の発酵力を測定した。その結果を図1に示す。糖濃度0重量%の生地でのフロアタイム60分後の条件では、図1から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著な冷凍耐性を示した。
【0126】
実施例9
本発明の酵母D80921について冷凍耐性を検討した。冷凍耐性は、前記(6)冷凍耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) (S社製)、Fermipan Red(D社製) を用いた。冷凍耐性の評価においては、生地の糖濃度は3重量%とした。結果を表29に示す。
【0127】
【表29】
Figure 0004268355
【0128】
表29に示すように、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が50ml未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D80921)は79mlであり、優れた冷凍保存後の発酵力を有することが分かる。さらに、冷凍保存前後の発酵力の比は、市販の乾燥酵母が0.35未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母は0.58であり、優れた冷凍耐性を有することが分かる。
【0129】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして冷凍保存後の発酵力を測定した。その結果を図2に示す。糖濃度3重量%の生地でのフロアタイム60分後の条件では、図2から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著な冷凍耐性を示した。
【0130】
実施例10
本発明の酵母D92764について冷凍耐性を検討した。冷凍耐性は、前記(6)冷凍耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) (S社製)、Fermipan Red(D社製) を用いた。冷凍耐性の評価においては、生地の糖濃度は5重量%とした。結果を表30に示す。
【0131】
【表30】
Figure 0004268355
【0132】
表30に示すように、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が70ml未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母は91mlであり、優れた冷凍保存後の発酵力を有することが分かる。さらに、冷凍保存前後の発酵力の比は、市販の乾燥酵母が0.40未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母は0.72であり、優れた冷凍耐性を有することが分かる。
【0133】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして冷凍保存後の発酵力を測定した。その結果を図3に示す。糖濃度5重量%の生地でのフロアタイム60分後の条件では、図3から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著な冷凍耐性を示した。
【0134】
実施例11
本発明の酵母D92764、D66785について冷凍耐性を検討した。冷凍耐性は、前記(6)冷凍耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) 、Saf-instant (Gold)(S社製)、Fermipan Red、Fermipan Brown(D社製)を用いた。冷凍耐性の評価においては、生地の糖濃度は10重量%とした。結果を表31に示す。
【0135】
【表31】
Figure 0004268355
【0136】
表31に示すように、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が80ml以下であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は112ml、同(D66785)は109mlであり、優れた冷凍保存後の発酵力を有することが分かる。さらに、冷凍保存前後の発酵力の比は、市販の乾燥酵母が0.45未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.69、同(D66785)は0.56であり、優れた冷凍耐性を有することが分かる。
【0137】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして冷凍保存後の発酵力を測定した。その結果を図4に示す。糖濃度10重量%の生地でのフロアタイム60分後の条件では、図4から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著な冷凍耐性を示した。
【0138】
実施例12
本発明の酵母D66785について冷凍耐性を検討した。冷凍耐性は、前記(6)冷凍耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Gold)(S社製)、Fermipan Brown(D社製)を用いた。冷凍耐性の評価においては、生地の糖濃度は15重量%とした。結果を表32に示す。
【0139】
【表32】
Figure 0004268355
【0140】
表32に示すように、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が62ml以下であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D66785)は132mlであり、優れた冷凍保存後の発酵力を有することが分かる。さらに、冷凍保存前後の発酵力の比は、市販の乾燥酵母が0.35未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D66785)は0.66であり、優れた冷凍耐性を有することが分かる。
【0141】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして冷凍保存後の発酵力を測定した。その結果を図5に示す。糖濃度15重量%の生地でのフロアタイム60分後の条件では、図5から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著な冷凍耐性を示した。
【0142】
実施例13
本発明の酵母D92764、D66785について冷凍耐性を検討した。冷凍耐性は、前記(6)冷凍耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Gold) (S社製) 、Fermipan Brown (D社製) を用いた。冷凍耐性の評価においては、生地の糖濃度は25重量%とした。結果を表33と表34に示す。
【0143】
【表33】
Figure 0004268355
【0144】
【表34】
Figure 0004268355
【0145】
表33と表34に示すように、フロアタイムを60分とした時、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が120ml以下であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は138ml、同(D66785)は145mlであり、また、フロアタイムを90分とした時、冷凍保存後の発酵力は、市販の乾燥酵母が40ml未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は65ml、同(D66785)は119mlであり、優れた冷凍保存後の発酵力を有することが分かる。さらに、冷凍保存前後の発酵力の比は、フロアタイムを60分とした時、市販の乾燥酵母が0.70未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.72、同(D66785)は0.78であり、また、フロアタイムを90分とした時、市販の乾燥酵母が0.25未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.36、同(D66785)は0.64であり、優れた冷凍耐性を有することが分かる。
【0146】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして冷凍保存後の発酵力を測定した。その結果を図6に示す。糖濃度25重量%の生地でのフロアタイム90分後の条件では、図6から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著な冷凍耐性を示した。
【0147】
実施例14
本発明の酵母D92764、D80921についてフロア耐性を検討した。フロア耐性は、前記(7)フロア耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) (S社製) 、Fermipan Red(D社製) を用いた。フロア耐性の評価においては、生地の糖濃度は0重量%とした。結果を表35に示す。
【0148】
【表35】
Figure 0004268355
【0149】
表35に示すように、フロア耐性を表わす発酵力の比(フロアタイム60分での発酵力/フロアタイム0分での発酵力)は、市販の乾燥酵母が0.70以下であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は1.00、同(D80921)は0.90であり、優れたフロア耐性を有することが分かる。
【0150】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして各時点でのフロア耐性を検討した。その結果を図7に示す。糖濃度0重量%の生地では、図7から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著なフロア耐性を示した。
【0151】
実施例15
本発明の酵母D80921についてフロア耐性を検討した。フロア耐性は、前記(7)フロア耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) (S社製) 、Fermipan Red(D社製) を用いた。フロア耐性の評価においては、生地の糖濃度は3重量%とした。結果を表36に示す。
【0152】
【表36】
Figure 0004268355
【0153】
表36に示すように、フロア耐性を表わす発酵力の比(フロアタイム60分での発酵力/フロアタイム0分での発酵力)は、市販の乾燥酵母が0.30未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D80921)は0.54であり、優れたフロア耐性を有することが分かる。
【0154】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして各時点でのフロア耐性を検討した。その結果を図8に示す。糖濃度3重量%の生地では、図8から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著なフロア耐性を示した。
【0155】
実施例16
本発明の酵母D92764についてフロア耐性を検討した。フロア耐性は、前記(7)フロア耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red)(S社製)、Fermipan Red(D社製)を用いた。フロア耐性の評価においては、生地の糖濃度は5重量%とした。結果を表37に示す。
【0156】
【表37】
Figure 0004268355
【0157】
表37に示すように、フロア耐性を表わす発酵力の比(フロアタイム60分での発酵力/フロアタイム0分での発酵力)は、市販の乾燥酵母が0.50未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.67であり、優れたフロア耐性を有することが分かる。
【0158】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして各時点でのフロア耐性を検討した。その結果を図9に示す。糖濃度5重量%の生地では、図9から明らかなように、特に冷凍保存期間が長期に渡る場合(2週または4週間)、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著なフロア耐性を示した。
【0159】
実施例17
本発明の酵母D92764、D66785についてフロア耐性を検討した。フロア耐性は、前記(7)フロア耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Red) 、Saf-instant (Gold)(S社製) 、Fermipan Red、Fermipan Brown(D社製) を用いた。フロア耐性の評価においては、生地の糖濃度は10重量%とした。結果を表38に示す。
【0160】
【表38】
Figure 0004268355
【0161】
表38に示すように、フロア耐性を表わす発酵力の比(フロアタイム90分での発酵力/フロアタイム30分での発酵力)は、市販の乾燥酵母が0.15未満であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.45、同(D66785)は0.39であり、優れたフロア耐性を有することが分かる。
【0162】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして各時点でのフロア耐性を検討した。その結果を図10に示す。糖濃度10重量%の生地では、図10から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著なフロア耐性を示した。
【0163】
実施例18
本発明の酵母D66785についてフロア耐性を検討した。フロア耐性は、前記(7)フロア耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Gold) (S社製) 、Fermipan Brown (D社製) を用いた。フロア耐性の評価においては、生地の糖濃度は15重量%とした。結果を表39に示す。
【0164】
【表39】
Figure 0004268355
【0165】
表39に示すように、フロア耐性を表わす発酵力の比(フロアタイム90分での発酵力/フロアタイム30分での発酵力)は、市販の乾燥酵母が0.15以下であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D66785)は0.48であり、優れたフロア耐性を有することが分かる。
【0166】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして各時点でのフロア耐性を検討した。その結果を図11に示す。糖濃度15重量%の生地では、図11から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著なフロア耐性を示した。
【0167】
実施例19
本発明の酵母D92764、D66785についてフロア耐性を検討した。フロア耐性は、前記(7)フロア耐性に示す方法により評価した。本発明の酵母は実施例1と同様にして乾燥酵母とした。比較対照として市販の乾燥酵母Saf-instant (Gold) (S社製) 、Fermipan Brown (D社製) を用いた。フロア耐性の評価においては、生地の糖濃度は25重量%とした。結果を表40に示す。
【0168】
【表40】
Figure 0004268355
【0169】
表40に示すように、フロア耐性を表わす発酵力の比(フロアタイム90分での発酵力/フロアタイム30分での発酵力)は、市販の乾燥酵母が0.30以下であるのに対し、本発明の乾燥酵母(D92764)は0.38、同(D66785)は0.79であり、優れたフロア耐性を有することが分かる。
【0170】
また、冷凍保存期間を1週間、2週間、4週間にして各時点でのフロア耐性を検討した。その結果を図12に示す。糖濃度25重量%の生地では、図12から明らかなように、1週、2週、4週のいずれの冷凍保存期間においても、市販の乾燥酵母に対して本発明の乾燥酵母が顕著なフロア耐性を示した。
【0171】
実施例20
本発明乾燥酵母D31735の低温感受性を前記(8)低温感受性に示す方法により測定した。比較対照として、市販の低温感受性の圧搾酵母 カネカイーストAL(鐘淵化学工業(株))と、市販の乾燥酵母6種、Saf-instant(RED)(S社製) 、Saf-instant (Gold) (S社製)、Mauripan low sugar(BP社製)、Bruggeman Blue(BR社製)、Fermipan RED(D社製)、Fermipan Brown(D社製)を用いた。その結果を表41に示す。
【0172】
【表41】
Figure 0004268355
【0173】
表41から明らかなように、低温感受性を有する市販の圧搾酵母の5℃生地発酵力に対する30℃生地発酵力の比が1.02に対し、本発明の乾燥酵母では1.01であり、ほぼ同等の低温感受性を有していることを示している。それに対し、市販の乾燥酵母6種は、いずれもその比が0.64以下であり、本発明の乾燥酵母に比べ、低温感受性が劣ることが分かる。
【0174】
寄託された生物材料
(1)寄託機関の名称・あて名
独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
(2)寄託された微生物
▲1▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D75412
原寄託日 :2000年9月8日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7688
▲2▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D20946
原寄託日 :2000年9月8日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7684
▲3▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D46462
原寄託日 :2000年9月8日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7686
▲4▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D66785
原寄託日 :2000年9月8日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7687
▲5▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D92764
原寄託日 :2001年2月20日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7690
▲6▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D80921
原寄託日 :2000年9月8日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7689
▲7▼サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)D31735
原寄託日 :2000年9月8日
国際寄託への移管請求日 :2001年8月1日
受託番号: FERM BP−7685
【0175】
【発明の効果】
本発明により、無糖から高糖濃度までの種々の生地において優れた発酵力を有し、かつ乾燥耐性を有する、製パン用、特に冷凍生地製パン用として好適な酵母、詳しくは、高糖から超高糖生地において高い発酵力を示し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から高糖生地において高い発酵力を示し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から低糖生地において高い発酵力を示し、かつ乾燥耐性を有する酵母;中糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から高糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母;無糖から低糖生地において高い冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母;および低温感受性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母が提供される。また本発明により、前記酵母を乾燥してなる、貯蔵性や保存性に優れ、生酵母と同程度の発酵力を発揮しうる、特に冷凍生地製パン用として好適な乾燥酵母が提供される。さらに本発明により、前記酵母または前記乾燥酵母を含有してなる生地および冷凍生地、ならびに当該生地を用いてなる、品質の安定した優れたパンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、糖濃度0重量%の生地(フロアタイム60分)における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母の冷凍耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D80921)、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Redの結果を示す。また、縦軸には、各酵母の冷凍保存前の発酵力を1.0とした場合の冷凍保存の各時点での発酵力を冷凍耐性度として示す。なお、糖濃度は0%と記した。以下、各図につき同様である。
【図2】図2は、糖濃度3重量%の生地(フロアタイム60分)における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母の冷凍耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D80921)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Redの結果を示す。また、縦軸には、各酵母の冷凍保存前の発酵力を1.0とした場合の冷凍保存の各時点での発酵力を冷凍耐性度として示す。
【図3】図3は、糖濃度5重量%の生地(フロアタイム60分)における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母の冷凍耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Redの結果を示す。また、縦軸には、各酵母の冷凍保存前の発酵力を1.0とした場合の冷凍保存の各時点での発酵力を冷凍耐性度として示す。
【図4】図4は、糖濃度10重量%の生地(フロアタイム60分)における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母の冷凍耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、黒丸は本発明の乾燥酵母(D66785)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Red、白丸は市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)、白三角は市販の乾燥酵母Fermipan Brownの結果を示す。また、縦軸には、各酵母の冷凍保存前の発酵力を1.0とした場合の冷凍保存の各時点での発酵力を冷凍耐性度として示す。
【図5】図5は、糖濃度15重量%の生地(フロアタイム60分)における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母の冷凍耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D66785)、白丸は市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)、白三角は市販の乾燥酵母Fermipan Brownの結果を示す。また、縦軸には、各酵母の冷凍保存前の発酵力を1.0とした場合の冷凍保存の各時点での発酵力を冷凍耐性度として示す。
【図6】図6は、糖濃度25重量%の生地(フロアタイム90分)における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母の冷凍耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D66785)、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、白丸は市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)、白三角は市販の乾燥酵母Fermipan Brownの結果を示す。また、縦軸には、各酵母の冷凍保存前の発酵力を1.0とした場合の冷凍保存の各時点での発酵力を冷凍耐性度として示す。
【図7】図7は、糖濃度0重量%の生地における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母のフロア耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、黒丸は本発明の乾燥酵母(D80921)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Redの結果を示す。また、縦軸には、冷凍保存後の発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)として表わされるフロア耐性を示す。
【図8】図8は、糖濃度3重量%の生地における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母のフロア耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D80921)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Redの結果を示す。また、縦軸には、冷凍保存後の発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)として表わされるフロア耐性を示す。
【図9】図9は、糖濃度5重量%の生地における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母のフロア耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Redの結果を示す。また、縦軸には、冷凍保存後の発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)として表わされるフロア耐性を示す。
【図10】図10は、糖濃度10重量%の生地における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母のフロア耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、黒丸は本発明の乾燥酵母(D66785)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Red)、白丸は市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Red、白三角は市販の乾燥酵母Fermipan Brownの結果を示す。また、縦軸には、冷凍保存後の発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)として表わされるフロア耐性を示す。
【図11】図11は、糖濃度15重量%の生地における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母のフロア耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D66785)、黒三角は市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)、白四角は市販の乾燥酵母Fermipan Brownの結果を示す。また、縦軸には、冷凍保存後の発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)として表わされるフロア耐性を示す。
【図12】図12は、糖濃度25重量%の生地における本発明の乾燥酵母と市販の乾燥酵母のフロア耐性を比較したグラフである。グラフ中、黒丸は本発明の乾燥酵母(D66785)、黒四角は本発明の乾燥酵母(D92764)、白三角は市販の乾燥酵母Fermipan Brown、白丸は市販の乾燥酵母Saf-instant(Gold)、の結果を示す。また、縦軸には、冷凍保存後の発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)として表わされるフロア耐性を示す。

Claims (14)

  1. 糖濃度0〜30重量%の生地において冷凍耐性及び/又はフロア耐性を有し、かつ乾燥耐性を有する酵母であって、下記:
    (1) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度0重量%の生地(乾燥酵母2重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で100ml以上である、
    (2) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度5重量%の生地(乾燥酵母2重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で70ml以上である、
    (3) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度10重量%の生地(乾燥酵母2重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で90ml以上である、および
    (4) 乾燥酵母とした時の発酵力を糖濃度25重量%の生地(乾燥酵母3重量%)20g当たり38℃における120分間のガス発生量で表した時、フロアタイム60分後4週間冷凍保存後の生地で125ml以上であり、かつフロアタイム90分後4週間冷凍保存後の生地で50ml以上である、
    の特性を有する、サッカロマイセス・セルビシエ (Saccharomyces cerevisiae) D92764株(FERM BP−7690)
  2. 前記 (1) の糖濃度0重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.88以上である請求項記載の酵母。
  3. 前記 (1) の糖濃度0重量%の生地での試験において、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が0.80以上である請求項1又は2記載の酵母。
  4. 前記 (2) の糖濃度5重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.40以上である請求項記載の酵母。
  5. 前記 (2) の糖濃度5重量%の生地での試験において、フロアタイム0分4週間冷凍保存後とフロアタイム60分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム60分/フロアタイム0分)が0.50以上である請求項1又は4記載の酵母。
  6. 前記 (3) の糖濃度10重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.50以上である請求項記載の酵母。
  7. 前記 (3) の糖濃度10重量%の生地での試験において、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が0.20以上である請求項1又は6記載の酵母。
  8. 前記 (4) の糖濃度25重量%の生地での試験において、フロアタイム60分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.70以上であり、かつフロアタイム90分後4週間冷凍保存前後での発酵力の比(冷凍保存後/冷凍保存前)が0.30以上である請求項記載の酵母。
  9. 前記 (4) の糖濃度25重量%の生地での試験において、フロアタイム30分後4週間冷凍保存後とフロアタイム90分後4週間冷凍保存後での発酵力の比(フロアタイム90分/フロアタイム30分)が0.35以上である請求項1又は8記載の酵母。
  10. さらに、残存発酵力比〔乾燥前後での発酵力の比(乾燥後/乾燥前)〕が0.70以上である請求項1〜いずれか記載の酵母。
  11. 酵母が乾燥酵母である請求項1〜10いずれか記載の酵母。
  12. 冷凍生地用の請求項1〜11いずれか記載の酵母。
  13. 請求項1〜12いずれかに記載の酵母を含有してなる生地。
  14. 請求項13に記載の生地を用いてなるパン。
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