JP4839860B2 - 新規パン酵母 - Google Patents

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Description

本発明は新規なパン酵母、このパン酵母を含有するパン生地、ならびにこのパン酵母を使用するパンの製造方法に関する。
パンは小麦粉、水、食塩、パン酵母、乳製品、糖類、油脂などをミキシングし、一定の発酵時間を取った後焼成される。発酵の過程では、パン酵母は小麦粉中に含まれるマルトースなどの糖分や原料として添加される砂糖などを発酵して大部分は炭酸ガスとエタノールへと変換するが、この他にもエタノール以外のアルコールや、有機酸、エステルなども生成しこれらがパンの風味や生地物性に寄与している。
焼成は通常200℃前後のオーブン内で行われるために、外側の表皮部温度は160℃位に、そして内相中心部も100℃弱位まで上昇し、焼成時間のうち10分間はこの温度に維持されている。
カビは一般に耐熱性が低いため、青カビの胞子は82℃10分間で、赤カビの胞子では70℃10分間程度で死滅することが知られているので、上記のような焼成条件では、オーブンを出た直後のパンは表皮、内相ともに無菌状態にある(非特許文献1)。しかし、オーブンを出たパンは中心温度40℃を目標に数十分間かけて搬送コンベヤー上で冷却されるため、工程上は空気中のカビ胞子との接触は不可避である。さらには製造作業員の手によるパンへの接触やスライス、包装などによってもカビ胞子の付着が起こる可能性があり、これらもパンのカビ発生の原因となる(非特許文献1)。このためパンの製造現場においては冷却工程、包装工程、出荷場の塵やパンくずの清掃が行なわれ、カビ胞子の数を低下させること等で、カビ発生を抑える取り組みが行われている(非特許文献1)。またパン製造では、プロピオン酸ナトリウム製剤や酢酸ナトリウム製剤等が保存料として添加される場合もあり、1日〜2日間ほどカビ発生を遅らせている。
このような有機酸が示す抗菌作用は微生物の細胞膜を透過して細胞内に移行して初めて発現するが、解離型分子よりも非解離型分子の方が細胞膜を通過し、細胞内へ侵入しやすい性質を有するため、抗菌活性は非解離型分子の方が高い(非特許文献2)。
例えば、パン酵母が生地中に産生する種々の有機酸を比較した場合、通常のパン生地におけるpHでは、pKaの高い酢酸はコハク酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸と比べて解離しにくいために、同一のpHでは非解離型分子の割合は他の有機酸よりも高くなり、結果的に強い抗菌活性を示すことが知られている(非特許文献2)。
有機酸の解離はpHの低下によって減少するために、低pHほど非解離型分子の割合が増加し、強い抗菌作用が発揮できる(非特許文献2)。例えば酢酸と乳酸を同時に大腸菌に作用させる場合、乳酸によるpH低下で酢酸の非解離分子濃度を増加させた方がpHを5〜6にコントロールするよりも大腸菌への阻害作用が高まることが報告されている(非特許文献3)。実際に、醤油もろみ中においては乳酸と酢酸が共存することで、乳酸のpH低下による酢酸の非解離型濃度増加で抗菌活性が増強する現象が知られている(非特許文献4)。
パンのカビ抑制のために酢酸ナトリウム製剤が使用されることがあるが、酢酸ナトリウムは解離してナトリウムイオンを生成するために生地のpHが高まり、酢酸を単独添加する場合と比べて非解離型酢酸濃度は相対的に低下する。このためにカビ抑制効果を一定レベルに保つためには酢酸を単独で添加する場合よりも多くの酢酸ナトリウム製剤を添加する必要があるが、トータルの酢酸濃度を高めることとなり、結果的にパンの風味が酸っぱくなる。
一方、生地pHの低下は上記のごとく非解離型酢酸濃度を上昇させ抗菌活性は高まるが、過度なpH低下はグルテンの網目構造を弱め、ガス保持力を低下させ(非特許文献5)、パンの品質に影響を与える恐れがある。
製造したパンを一定時間空気中に放置させ、数日間保管するとパン製造に使用するパン酵母によってパンのカビ発生までの時間に差がみられる。パンクラムのpHが若干低く、かつ生成する発酵による酢酸濃度が高いことでパンのカビ発生を遅らせることができるパン酵母(特許文献1)や生成したエタノール濃度が高く、生地から漏洩しにくい生地構造を採ることでパンのカビ発生を遅らせることができるパン酵母(特許文献2)などの報告があり、パン酵母の発酵作用によるカビ抑制が注目されつつある。
しかし、これらの特許は糖5%程度のいわゆる低糖領域のパンに対するカビ抑制効果であり、糖添加量の多い菓子パンでもある程度のカビ抑制効果はみられるが、醗酵力が不十分でありその効果は限定されていた。しかし、菓子パンにおいてはより長い期間保存されるパンが販売されており、糖添加量の多い生地においてカビ抑制性の強いパン酵母の開発が必要であった。
光琳、「製パンの科学(1)製パンプロセスの科学」、1991年、263頁−271頁 技報堂出版、「食品微生物学ハンドブック」、1995年、522頁 J.Appl.Bacteriol.、1983年、54巻、383頁 醸協、1981年、76巻、701頁 ダイレック、「BAKERY技術百科」、1990年、1巻、142頁 特開2004−313190号公報 特開2004−049217号公報
本発明では、パン酵母による生地発酵で生地のガス保持力、内相のすだち、食感、風味などのパンの品質を損なうことなく、またpH低下要因となるような副材料を添加することなく、その上で糖添加量が多い生地で発酵力を高め、且つカビの発生をより抑制した菓子パン製造を可能とするパン酵母を提供すること。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のパン酵母を用いれば、従来のカビ抑制酵母からカビ抑制性を低下させることなく、糖添加量の多い菓子パン生地での醗酵力が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の第1は、本捏糖濃度20%の中種製法において、本捏ミキシング後の38℃で45分間の炭酸ガス発生量がパン生地100gあたり300ml以上であり、且つ該生地を焼成して作製したパンクラム中の非解離型酢酸濃度が160ppm以上であるパン酵母に関する。好ましい実施態様は、パン酵母が、サッカロミセス・セレビシエに属するKGLY59株(受託番号:FERM P−20635)であることを特徴とする上記記載のパン酵母に関する。本発明の第2は、上記記載のパン酵母を含有するパン生地関する。本発明の第3は、小麦粉、パン酵母、糖類、食塩、乳製品、油脂、水、卵を主成分とし、それ以外にpH低下要因となるような副材料を添加しない生地を焼成することで得られるパンであって、クラムの非解離型酢酸濃度が160ppm以上であることを特徴とするパンに関する。本発明の第4は、上記記載のパンの製造方法に関する。
本発明のパン酵母を用いて糖添加量が多い菓子パンを製造すると、パン酵母による生地発酵で生地のガス保持力、内相のすだち、食感、風味などのパンの品質を損なうことなく、またpH低下要因となるような副材料を添加することなく、その上で糖添加量が多い生地で発酵力を高め、且つカビの発生をより抑制した菓子パン製造を可能とするパン酵母を提供することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。本明細書において使用される用語は、以下に特に説明する場合を除いて、当該分野で通常に使用される用語の意味と同一である。即ち、本発明において、砂糖、食塩、その他の製パン副材料の割合(%)は、小麦粉に対する重量割合をいう。例えば、砂糖分20%とは、パン生地において小麦粉100gに対して砂糖20gを使用することをいう。中種製法における本捏糖濃度とは、中種、本捏に使用する小麦粉全量、即ちパン生地中の小麦粉全量に対する、中種発酵後の生地に本捏で添加した糖量の割合をいう。また「その他の製パン副材料」とは、小麦粉、食塩および水以外の製パンに使用される材料をいい、例えば、砂糖、異性化糖、乳製品、油脂、卵などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明のパン酵母は、カビ抑制性パン酵母であり、これを用いて作製したパンのカビ発生が従来のパン酵母のみならず、これまでのカビ抑制性パン酵母を用いて作製したパンのカビ発生よりも遅い。ここで、パンにおけるカビ発生のしにくい特性をカビ抑制性と言う。なお、ここでいう従来のパン酵母とは、以前より使用されているカビ抑制性の低いパン酵母である。またカビ抑制性パン酵母とは、酢酸生成量が従来のパン酵母よりも高い、たとえば特開2004−313190号公報に記載のパン酵母(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター受託番号:FERM P−18863)のようなパン酵母のことを指す。
パンの作製法としては、特に限定は無いが、工業的には中種製法の方が好ましい。中種製法とは、一般的なパン製造法であり、例えば次のような工程である。パン製造に使用する小麦粉全量のうちの70%にイースト、水、糖を混合して中種生地を作り、28℃で約2.5時間発酵させた後、ミキサーへ戻し、中種生地に残りの小麦粉、砂糖、油脂、乳製品、卵および適量の水を加えて本捏し、さらに発酵をとり最後に焼成を行なう方法である。
本発明のパン酵母は以下のような本捏糖濃度20%の中種製法において特徴を有する。例えば、小麦粉70g、65%水分換算したパン酵母3g、砂糖3g、水40mlを加えて終点温度を26℃として中種ミキシングして作製した生地を28℃、150分間発酵させた後、小麦粉30g、砂糖20g、食塩1g、脱脂粉乳2g、卵8g、油脂8g、水15mlを添加し、終点温度を27℃として本捏ミキシングした後、28℃、60分間さらに25℃、25分間インキュベートしてから、38℃で45分間測定した炭酸ガス発生量がパン生地100gあたり300ml以上であり、且つ該パン生地を200℃、25分間焼成して作製した本捏糖濃度20%のパンクラム中の非解離型酢酸濃度が160ppm以上、好ましくは200ppm以上、より好ましくは250ppm以上であることに本発明の酵母は特徴を有している。
本捏糖濃度20%のパンクラム中の非解離型酢酸濃度が160ppm以上であると、充分なカビ抑制性が得られる。これは、本発明のパン酵母が従来のパン酵母よりも非解離型酢酸を多量に生成することに起因しており、従来のパン酵母を用いて作製したパンのクラム中の非解離型酢酸濃度は非常に低い。さらに、これまであったカビ抑制性パン酵母であっても、本捏糖濃度20%のパンクラム中の非解離型酢酸濃度は150ppm未満でしかなかった。
本発明のパン酵母は、上記した本捏糖濃度が20%のパンだけでなく、本捏糖濃度を変えても、従来のパン酵母やカビ抑制パン酵母よりも非解離型酢酸を多量に生成する。
本発明のパン酵母は、例えば以下の方法により得ることができる。FERM P−18863のようなカビ抑制性の高いサッカロミセス・セレビシエ保存菌株ならびに菓子パン用パン酵母から胞子株を取得し、種々の組み合わせで交雑株を作製し、この中から非解離型酢酸濃度が高い菌株をスクリーニングするために以下の方法でスクリーニングした。
上記で得られた交雑株を用いて以下の方法によりスクリーニング用中種法生地を作製し、生地のpH、酢酸濃度、及び焼成したパンクラム中の酢酸濃度を測定し、これらの測定値からパンクラム中の非解離型酢酸濃度を算出した。そして、該非解離型酢酸濃度が160ppm以上となる株を選択した。ここで本発明のパン酵母は、パンのクラムの非解離型酢酸濃度を160ppm以上とするものであれば特に交雑育種に限定されることはなく、自然界からのスクリーニング、変異処理、細胞融合などの育種技術によっても取得することができる。
本発明において、パンのクラムの非解離型酢酸濃度を160ppm以上とするためには、サッカロミセス・セレビシエに属するパン酵母を選択することが好ましく、それらから得られる交雑株の内、KGLY59株が更に好ましい。このKGLY59株はサッカロミセス・セレビシエと同定され、本菌株は2005年8月23日にFERM P−20635(受託番号)として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6)に寄託されている。
本発明のパン酵母で作製した菓子パン生地中で、従来のパン酵母よりも酢酸生成量が多く、且つ生地pHが従来パン酵母を用いた生地pHよりも低い。このため、菓子パン中の非解離型酢酸量が従来のパン酵母よりも多くなり、カビ抑制性が強く、また菓子パンでの醗酵力が向上していることにより比容積の大きな菓子パンの作製が可能となった。
以下に本発明の実施例を記載するがこれらは本発明を例示的に記載するのみであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。また、以下の実施例に使用した材料について、小麦粉は「カメリア」(日清製粉(株)社製)を使用し、イーストフードは「ニューフードCN」(株式会社カネカ製)、ショートニングは「スノーライト」(株式会社カネカ製)を使用した。また乳化剤は「パンマック200B」(理研ビタミン(株)社製)を使用した。その他の製パン材料および製パン副原料は、一般小売店から入手可能なものを使用した。また、対照菌株として、特開2004−313190号公報に記載のパン酵母FERM P−18863、ならびに株式会社カネカ製の菓子パン用イーストTR、GAを用いた。
<スクリーニング用菌体作製法>
表1の組成の培地を大型試験管に5ml、500ml坂口フラスコに50ml分注し、オートクレーブ殺菌した後、以下の培養に使用した。育種株1白金耳を大型試験管に植菌し、30℃、1日間振とう培養後、500ml坂口フラスコに継植して、30℃、1日間振とう培養した。その後で遠心分離し、ヌッチェにより吸引脱水し湿菌体を作製した。なお、培地の調整の際に、糖は糖蜜を使用し、糖濃度4%(W/V)分になるよう調整した。
<スクリーニング用菓子パン中種法生地作製法>
表2の生地組成、ならびに表3の工程により生地を作製した。
<生地pH、酢酸濃度測定方法>
作製した生地のpH、及び酢酸濃度は以下の方法で測定した。ホイロ発酵をさせた生地20gを蒸留水80mlと混合し、ホモジナイザーにて12000rpmで5分間破砕し、破砕液を得て、pHをpHメータで測定したのち、生地pHとした。pH測定後、ただちに10%塩化ベンザルコニウムを1ml添加し、破砕液の破砕液50mlを17000×g(gravity)で10分間遠心分離し、上清4.5mlを分取し10%過塩素酸0.5mlを加え十分混合した後、17000×g(gravity)で10分間遠心分離し、上清を孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過を行い試料溶液とした。試料溶液は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で生地中の酢酸濃度([共役塩基]+[共役酸]、以下AcCともいう)の測定を行なった。HPLCによる分析条件は次の通りである。
HPLC :SHIMAZU LC10A
カラム :SCR101H
カラム温度 :60℃
検出器 :SPD10A(475nm)
流速 :1ml/min
移動相 :過塩素酸溶液(pH2.2)
<パン生地中の非解離型酢酸濃度算出法>
非解離型酢酸濃度は上記の方法で測定したpH、酢酸濃度(AcC)、並びに酢酸のpKa値(4.74)から、Henderson−Hasselbalchの式(pH=pKa+log[共役塩基]/[共役酸]、出典:東京化学同人、「コーンスタンプ生化学(第5版)」、1988年、13頁)を元にした以下の式より算出した。
非解離型酢酸濃度=AcC/{10(pH-pKa)+1}
<製パン試験用菌体作製法>
・バッチ培養
表4の組成の培地を大型試験管に5ml、500ml坂口フラスコに50ml分注し、オートクレーブ殺菌した後、培養に使用した。育種株1白金耳を大型試験管に全量植菌し、30℃、1日間振とう培養後、500ml坂口フラスコに継植して、さらに30℃、1日間振とう培養により作製したバッチ培養菌体を以下の5Lジャーの種母培養に供した。なお、培地の調整の際に、糖は糖蜜を使用し、糖濃度4%(W/V)分になるよう調整した。
・5Lジャー種母培養
5Lジャーに表5の組成の培地2Lを入れて、オートクレーブ殺菌後、500ml坂口フラスコ5本分の菌体を植菌し表6の条件で種母培養を行った。なお、培地の調整の際に、糖は糖蜜を使用し、糖濃度4%(W/V)分になるよう調整した。
・5Lジャー本培養
始発液量を表7の培地組成で、5Lジャーで培養した種母菌体を湿菌体として50g添加し、表8の条件で本培養を行った。具体的には13時間培養を行い、糖は12時間培養の間に分割添加した。5Lジャー培養菌体は培養終了後直ちに遠心分離し、ヌッチェにより吸引脱水し湿菌体を作製、以下の実施例に使用した。実験に使用する際には、湿菌体の水分含量を測定し、使用量は65%水分に換算した。なお、培地の調整の際に、糖は糖蜜を使用し、糖濃度を測定後230gを添加した。
<菓子パン中種法によるパン作製法>
表9に示すパン生地組成、表10に示す工程によりパンを作製した。
<パンクラムのpH、酢酸濃度測定方法>
パンクラムのpH、及び酢酸濃度は以下の方法で測定した。冷却後のパンのクラム部分20gを蒸留水80mlと混合し、ホモジナイザーにて12000rpmで5分間破砕し、破砕液を得た。破砕液のpHをpHメータで測定し、クラムpHとした。破砕液50mlを17000×g(gravity)で10分間遠心分離し、上清4.5mlを分取し10%過塩素酸0.5mlを加え十分混合した後、17000×g(gravity)で10分間遠心分離し、上清を孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過を行い試料溶液とした。試料溶液は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でパンクラム中の酢酸濃度の測定を行なった。HPLCによる分析条件は生地での分析条件に同じである。
<パンクラム中の非解離型酢酸濃度算出法>
パンクラムの非解離型酢酸濃度の算出法は生地での算出法に準拠する。
<カビ抑制性の塗布方式による評価法>
作製したパンを空気中で1日放置させた後、ナイロン袋で密封して20℃で10日間放置させてカビを十分に生育させたパンを0.3g秤量し、滅菌水10mlに懸濁して始発濃度とする。さらにこの始発濃度の懸濁液を元に別の滅菌水にて10倍ずつ100000倍まで順次希釈した懸濁液を作製した。
カビ発生試験には目的サンプルのパンを2cmの厚さでスライスし、作製した希釈倍率100倍、1000倍、10000倍、及び100000倍の4水準のカビ懸濁液30μlをn数=4でクラム部分へ塗布したのち、ナイロン袋で密封し20℃で4日間放置し、スライスしたクラム表面にカビが発生し始めたカビ懸濁液の希釈倍率の差をみた。
<パン表面に自然落下したカビの増殖に対するカビ抑制性の評価法>
作製したパンを90分間空気中で放置、冷却させた後、ナイロン袋で密封し20℃で17日間放置して、食パン表面に自然落下し増殖したカビの広がりを比較しカビ抑制性を判定した。
(実施例1) 交雑育種、スクリーニング
FERM P−18863のようなカビ抑制性の高い2倍体のサッカロミセス・セレビシエ保存菌株ならびに菓子パン用パン酵母から胞子株を取得し、これら胞子株を使用して種々の組み合わせで交雑株を作製した。作製した種々の交雑株ならびにFERM P−18863を上記のスクリーニング用菌体作製法により培養し、得られた菌体を用いてスクリーニング用菓子パン中種法生地作製法により生地を作製した。
生地のpH、酢酸濃度を測定して非解離型酢酸濃度を算出し、FERM P−18863よりも高い非解離型酢酸を生成した菌株を選択した。続いて、上記の5Lジャーによる製パン試験用菌体作製法にて菌体を作製し、前記の菓子パン中種法に従いパンを作製した。ホイロのガス発生量、比容積、パンクラムのpH、酢酸濃度の測定値から算出した非解離型酢酸濃度、ならびにパンのカビ発生評価から、発明課題を解決しうる本発明のKGLY59株を選択した。
(実施例2) KGLY59株の評価
表9に示すパン生地組成、表10に示す工程においてKGLY59株について中種製パン試験を行った。ホイロのガス発生量、ならびにパンの比容積を表11に示す。作製したパンのクラムpH、酢酸濃度、およびpH、酢酸濃度より算出した非解離型酢酸濃度を表12に示す。カビ抑制性評価におけるカビの生育状態を図1、図2に示す。図1ではカビ懸濁液を塗布したときのカビの生育状態、図2ではパン表面に自然落下したカビの生育状態を示す。
(比較例1) 従来パン酵母の評価
パン酵母として、対照菌株FERM P−18863を用いた以外は、実施例2と同様にして製パンを行い、非解離型酢酸濃度測定及びカビ抑制性評価を行った。ホイロのガス発生量、ならびにパンの比容積を表11に示す。作製したパンのクラムpH、酢酸濃度、およびpH、酢酸濃度より算出した非解離型酢酸濃度を表12に示す。またカビ抑制性評価におけるカビの生育状態を図1、図2に示す。
(比較例2) 従来パン酵母の評価
パン酵母として、対照菌株として菓子パン用イーストTRを用いた以外は、実施例2と同様にして製パンを行い、非解離型酢酸濃度測定及びカビ抑制性評価を行った。ホイロのガス発生量、ならびにパンの比容積を表11に示す。作製したパンのクラムpH、酢酸濃度、およびpH、酢酸濃度より算出した非解離型酢酸濃度を表12に示す。またカビ抑制性評価におけるカビの生育状態を図1、図2に示す。
(比較例3) 従来パン酵母の評価
パン酵母として、対照菌株として菓子パン用イーストGAを用いた以外は、実施例2と同様にして製パンを行い、非解離型酢酸濃度測定及びカビ抑制性評価を行った。ホイロのガス発生量、ならびにパンの比容積を表11に示す。作製したパンのクラムpH、酢酸濃度、およびpH、酢酸濃度より算出した非解離型酢酸濃度を表12に示す。またカビ抑制性評価におけるカビの生育状態を図1、図2に示す。
KGLY59を使用したパンのホイロでのガス発生量やパンの比容積は菓子パン用イーストTR、GAよりも高く、菓子パン製造能力はこれら菓子パン用イーストを上回った。
KGLY59株を使用したパンクラムのpHはFERM P−18863を使用したパンクラムのpHよりも低く、酢酸濃度はKGLY59株を使用したパンがFERM P−18863を使用したパンを上回った。このようにKGLY59株を使用したパンでは、pHが低いことと酢酸濃度が高いことにより、非解離型酢酸濃度は特許文献1に記載された高いカビ抑制性をもったFERM P−18863を使用したパンを大きく上回ることが特徴であった。
カビを塗布した4日経過後のパンのカビ発生についてはKGLY59株を使用したパンでは希釈倍率100倍部分までしかみられないが、FERM P−18863を使用したパンでは1000倍部分までカビ発生が進行している。TR,GAを使用したパンではFERM P−18863を使用したパン同様、1000倍部分までカビ発生がみられるが、カビは濃く、増殖が一段と進行していた。
自然落下菌のコロニー数、広がりはFERM P−18863、TR、GAを使用したパンと比べてKGLY59を使用したパンは明らかに抑制されていた。
KGLY59は菓子パン製造において菓子パン用イーストを上回る能力を示しただけでなく、特開2004−313190号公報で食パンにおける高いカビ抑制性をもつことが示されているFERM P−18863を大きく上回る非解離型酢酸を菓子パンで生成し、より一層カビ抑制のレベルが向上していた。
このようにKGLY59は菓子パン製造において菓子パン用酵母を上回る菓子パン製造能力とカビ抑制性を併せ持つ新規なイーストとして、日持ちパン製造のニーズに応じることができるものと考えられる。
スライスしたパンのクラム部分にカビ塗布した評価法において、20℃で4日間経過後のカビ発生、及び生育状態を示す。左上:KGLY59株、左下:FERM P−18863株、右上:TR株、右下:GA株。また、1つのスライスパン中、縦方向では上から順に希釈率100倍、1000倍、10000倍、100000倍のカビ懸濁液を4点塗布し、横方向は同一のカビ懸濁液を塗布した試料を2点並べた。 20℃で17日間経過後のパン表面の自然落下菌の増殖状態を示す。左上2つ:KGLY59株、左下2つ:FERM P−18863株、右上2つ:TR株、右下2つ:GA株。

Claims (4)

  1. ッカロミセス・セレビシエに属するKGLY59株(受託番号:FERM P−20635)であることを特徴とするパン酵母。
  2. 請求項1に記載のパン酵母を含有するパン生地。
  3. 小麦粉、請求項1に記載のパン酵母、糖類、食塩、乳製品、油脂、水、卵を主成分とし、それ以外にpH低下要因となるような副材料を添加しない生地を焼成することで得られるパンであって、クラムの非解離型酢酸濃度が160ppm以上であることを特徴とするパン。
  4. 請求項に記載のパンの製造方法。
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