JP2014083022A - 新規パン生地およびこれを焼成してなるパン - Google Patents

新規パン生地およびこれを焼成してなるパン Download PDF

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Abstract

【課題】 防カビ性(特に製パン後)と静菌性(特に中種発酵種と本捏配合原料を混ぜるまでの間)を併せ持ち、且つ低pH域においても生地が柔らかくなり過ぎず、さらに作業性の良い中種発酵生地及びその生地を用いたパンを提供すること。
【解決手段】 配合X(強力粉:100重量部、パン酵母(水分66.5%菌湿体):3〜5重量部、標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌し、発酵乳を1%(重量/重量)添加したものを試験区とし、一方で標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌したものを対照区として、各々を35℃、48時間培養した後、標準寒天培地に希釈添加し35℃、72時間培養後、菌数の測定をした際に、対照区に対する試験区の菌数比が0.1以下である発酵乳:15〜30重量部、水:20〜50重量部)を、条件A(ミキシングし、捏ね上げ温度を10〜30℃に調節して生地を得た後、該生地を3〜12℃で、24〜72時間発酵)に従って作製してなり、且つAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が300B.U.以上の中種用静菌生地を用いてパンを作製すること。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なパン生地及び該パン生地を焼成してなるパンに関する。
一般的に食パン製造においては、酢酸ナトリウムに代表される防カビ剤を使用して、製パン中や焼成後のパン生地におけるカビや雑菌の増殖を抑えている。しかしながら昨今、添加物不使用の所謂「無添加食パン」が見られる様になってきているが、防カビ剤なしでは消費期限が短くなるといった問題が生じており、技術の開発が望まれている。
そこで、この問題を解決するために酢酸を多量に産生するイーストが開発されているが(特許文献1)、カビの発生は十分抑えられるものの雑菌抑制が不十分で、さらに雑菌抑制を上げるために発酵時間を長くするなど製パン条件を変えると、生地pHが下がりすぎ、生地が柔らかくなり過ぎて製パンが困難になる等の問題がある。また、防カビ性と雑菌抑制を上げるために、高静菌性イーストが開発されているが(特許文献2)、防カビ性が不十分であり問題を解決するに至っていない。一方、乳酸菌発酵種を用いたサワーブレッドがあるが(特許文献3)、防カビ性も雑菌抑制も不十分であり、それらの効果を出そうと発酵度合いを上げると、酸っぱくなり過ぎたり、生地が柔らかくなりすぎる問題がある。
特開2004−31390号公報 特開2011−234713号公報 特開2011−229497号公報
本発明の目的は、防カビ性(特に製パン後)と静菌性(特に中種発酵種と本捏配合原料を混ぜるまでの間)を併せ持ち、且つ低pH域においても生地が柔らかくなり過ぎず、さらに作業性の良い中種発酵生地及びその生地を用いたパンを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、防カビ性を向上させるために酢酸産生量の多く、且つできるだけ抗張力の高い生地が得られるイーストを用い、更に静菌性を上げるために発酵乳を配合して作製した中種用静菌生地を、中種生地や本捏配合材料と混ぜることで、防カビ性と静菌性を併せ持ち、且つ低pH域においても生地が柔らかくなり過ぎず、作業性の良い中種発酵生地を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、配合X(強力粉:100重量部、パン酵母(水分66.5%菌湿体):3〜5重量部、標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌し、発酵乳を1%(重量/重量)添加したものを試験区とし、一方で標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌したものを対照区として、各々を35℃、48時間培養した後、標準寒天培地に希釈添加し35℃、72時間培養後、菌数の測定をした際に、対照区に対する試験区の菌数比が0.1以下である発酵乳:15〜30重量部、水:20〜50重量部)を、条件A(ミキシングし、捏ね上げ温度を10〜30℃に調節して生地を得た後、該生地を3〜12℃で、24〜72時間発酵)に従って作製してなり、且つAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が300B.U.以上の中種用静菌生地に関する。好ましい実施態様は、発酵乳が、抗菌ペプチドを含んでいることを特徴とする上記記載の中種用静菌生地に関する。より好ましくは、抗菌ペプチドとしてH−Arg−Pro−Lys−His−Pro−Ile−Lys−His−Gln−OHの構造であるペプチドを含む上記記載の中種用静菌生地、更に好ましくは、パン酵母が、配合2(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、酵母(水分65%湿菌体):0重量部、水(30℃):任意量)、条件4(3分間ミキシングして生地を得た後、該生地を150g分割し、30℃で160分間静置した後成型)に従って作製した生地をAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.になるよう水(30℃)の量を調節した生地を生地Aとし、配合3(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、酵母(水分65%湿菌体):4重量部、水(30℃):生地Aと同量)、条件3に従って作製した生地BをAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.以上となり、生地B中の酢酸量が400ppm以上となり、さらに配合1(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、食塩:0.5重量部、酵母(水分65%湿菌体):4重量部、水:52重量部)、条件3(3分間ミキシングして生地を得た後、該生地を50g分割し、38℃で2時間発酵)で生地を発酵した時のガス発生量が360ml以上となることを指標として酵母(倍数体)を選択される上記記載の中種用静菌生地、特に好ましくはパン酵母が、サッカロミセス・セレビシエ KCY1240(NITE P−1269)、サッカロミセス・セレビシエ KCY1249(NITE P−1270)、サッカロミセス・セレビシエ KCY1251(NITE P−1272)又はサッカロミセス・セレビシエ KCY1254株(NITE P−1396)である上記記載の中種用静菌生地、に関する。本発明の第二は、上記記載の中種用静菌生地25〜100重量%と、配合5(強力粉:100重量部、パン酵母:2〜3重量部、水:50〜60重量部)75〜0重量%を混合してなる中種生地に関する。本発明の第三は、上記記載の中種生地60〜80重量%と、配合6(強力粉:100重量部、上白糖:15〜25重量部、食塩:4〜8重量部、油脂:10〜25重量部、脱脂粉乳:0〜10重量部、水:70〜100重量部)40〜20重量%を混合してなるパン生地に関する。本発明の第四は、上記記載のパン生地を焼成してなるパンに関する。
本発明に従えば、防カビ性(特に製パン後)と静菌性(特に中種発酵種と本捏配合原料を混ぜるまでの間)を併せ持ち、且つ低pH域においても生地が柔らかくなり過ぎず、さらに作業性の良い中種発酵生地及びその生地を用いたパンを提供することができる。
実施例4で得られた中種用静菌生地を棒状(幅:18mm、高さ:22.5mm)に成型した生地の両側を固定したまま、25℃の恒温槽で20分間静置した直後、即ち抗張力を測定する直前に撮影した該生地の様子。(生地の下方向への垂れは小さい) 比較例2で得られた中種用静菌生地を棒状(幅:18mm、高さ:22.5mm)に成型した生地の両側を固定したまま、25℃の恒温槽で20分間静置した直後、即ち抗張力を測定する直前に撮影した該生地の様子。(生地の下方向への垂れは大きい)
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の中種用静菌生地は、特定の発酵乳を含む特定の配合と特定の条件で作製することで得ることができ、特定範囲の抗張力を有することが特徴である。なお、本明細書において使用される用語は、以下で特に説明する場合を除いて、当該分野で通常に使用される用語の意味と同一である。
本発明の中種用静菌生地の抗張力は、300B.U.以上が好ましく、400B.U.以上がより好ましく、450B.U.以上が更に好ましい。抗張力が300B.U.よりも小さいと、生地が柔らかくなり過ぎて製パンが困難となり好ましくない。なお抗張力は、エキステンソグラフ(ブラベンダー社製)を用いて、AACC法54−10の記載に準拠して測定される。即ち、抗張力を測定する生地150g±1g片を分取し、軽く手で丸めた後、30℃の恒温槽で160分間静置する。その後、棒状(幅:18mm、高さ:22.5mm)に成型した生地の両側を固定したまま、25℃の恒温槽で20分間静置した後、サンプルをエキステンソグラフのアームに乗せ、その中央にフックをかけて、生地が切れるまで下方へ引っ張り、フックにかかる力を抗張力とする。
本発明においては、エキステンソグラフの測定で得られる抗張力が高い生地ほど、酵母の発酵により発生するガスを保持する能力や、膨張に耐える能力が高いことを意味する。抗張力が高い酵母を用いると、酵母の発生するガスを逃さず、さらには生地が上方へと膨張していくため、ボリュームが大きく、腰高なパンの作製が可能となる。
本発明の中種用静菌生地に用いる発酵乳は、標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌し、発酵乳を1%(重量/重量)添加したものを試験区とし、一方で標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌したものを対照区として、各々を35℃、48時間培養した後、標準寒天培地に希釈添加し35℃、72時間培養後、菌数の測定をした際に、対照区に対する試験区の菌数比が、0.1以下となる抗菌性を有することが好ましい。該比が0.1を超えると抗菌性が弱く、中種用静菌生地の静菌性が低下したり、また静菌性を保とうとすると配合量を増やす必要があり、そうなると生地自身のpHが下がりすぎて、生地が柔らかくなり過ぎる場合がある。
前記発酵乳は、抗菌ペプチドを含むと抗菌性を発現しやすく好ましい。そのような発酵乳としては例えば、ラクトバチルス・ヘルベティクスK−4(LactobacillushelveticusK−4、微工研菌寄12249号)を用いた発酵乳が挙げられ、該発酵乳はH−Arg−Pro−Lys−His−Pro−Ile−Lys−His−Gln−OHの構造である抗菌ペプチドを含む。
本発明の中種用静菌生地の配合は、配合X(強力粉:100重量部に、パン酵母(水分66.5%菌湿体):3〜5重量部、抗菌性を有する発酵乳:15〜30重量部、水:20〜50重量部)であることが好ましい。このような配合であれば、中種用静菌生地の抗張力を300B.U.以上とすることが容易になる。パン酵母の量が3重量部より少ないと目的とする発酵生成物が生成されない場合があり、5重量部より多いと効果は頭打ちとなり望ましくない場合がある。該発酵乳が15重量部より少ないと目的とする抗カビ効果が得られない場合があり、30重量部より多いと効果は頭打ちとなる場合がある。また、水が20重量部より少ないと生地が硬くなり発酵阻害が起こる場合があり、50重量部より多いと生地が柔らかく作業性が悪くなり過ぎる場合がある。
本発明の中種用静菌生地には、配合中に糖を好ましくは5〜20重量部、より好ましくは8〜12重量部添加することもできる。糖を添加することで酢酸の生成量を増加させることができ、生地中の菌数を抑制することができる。糖の添加量が5重量部よりも少ないと、発酵生成物が生成されにくく生地中の菌数が多くなる場合があり、20重量部よりも多いと発酵時間が長くなり過ぎる場合がある。
本発明の中種用静菌生地は、ミキサーボウルに強力粉、少量の水で懸濁したパン酵母、発酵乳及び水を入れた配合Xの混合物を、条件A(捏ね上げ温度が10〜30℃になるように調節してミキシングした生地を、3〜12℃で、24〜72時間発酵)に従って作製することができる。
前記ミキシングの条件は、通常の中種生地の製造条件に準ずれば良く、一般的には低速で1〜3分間、中速で1〜3分間である。ミキシング時間が短いと材料の分散性が悪くて生地の物性が出ない場合があり、逆に長くなると生地温度上昇の原因となり望ましくない場合がある。また、前記捏ね上げ温度が10℃より低いと発酵不足となる場合があり、30℃を超えると発酵過多となり望ましくない場合がある。更に、前記生地の発酵温度が3℃より低いと発酵不足の場合があり、12℃より高いと発酵過多となり望ましくない場合がある。また、前記発酵時間が24時間より短いと発酵不足の場合があり、72時間より長いと発酵過多となり望ましくない場合がある。
本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母、即ち配合Xに係るパン酵母は、酢酸産生能およびパン生地に高張力を付与できる能力を有するパン酵母であることが好ましく、例えば特定の指標であるスクリーニング工程(3)行うことで得ることができる。しかし、時間と労力を低減する為には、スクリーニング工程(3)の前に、スクリーニング工程(1)、(2)を行う方が好ましい。
(スクリーニング工程(1))
スクリーニング工程(1)では、胞子株(a)、胞子株(b)、及び胞子株(c)を得る。スクリーニング工程(1)で選択対象として用いる酵母は、自然界の土壌、河川、果実などから単離した酵母であってよく、また、このように単離した酵母から胞子株を取得し、これらを適宜組み合わせて、常法により交雑して得られる酵母であってもよい。また、市販の酵母であってもよい。
胞子株(a)は、以下のようにして得る。即ち、条件1(培地(酵母エキス:1重量部、ペプトン:2重量部、グルコース:2重量部、水:95重量部、酵母:1白金耳(表2に記載))、30℃で18時間振とう培養)で酵母(倍数体)を培養し、得られた培養液の上清のグルタチオン量が120μmol/L以下となることを指標として酵母(倍数体)を選択し、該酵母を胞子形成させ、該胞子を分離して胞子株(a)とする。
ここでグルタチオン量とは、本来酵母に含有されているグルタチオンが、発酵により、酵母外に漏洩してきたグルタチオン量の事を言う。一般に、グルタチオンは、生地中のグルテンネットワーク中のSS結合を切断し、生地の軟化を発生させる一つの因子である(添加剤による小麦ドウの物性改良効果−三重大生物資源紀要、第19号、21−27項、平成9年12月1日)。培養液の上清のグルタチオン量を確認することによって、生地を作製せずとも、生地軟化の状態を推測することが可能となる。そして、培養液の上清のグルタチオン量が120μmol/L以下であることを指標にすると、生地にした時の生地軟化が比較的軽減され、作業しやすい生地の作製が可能な酵母の取得が容易になる。
前記グルタチオン量は、次のようにして測定することができる。前記条件1の培地を大型試験管に5ml分注し、オートクレーブ殺菌した後、培養に使用する。育種株1白金耳を大型試験管に全量植菌し、30℃で18時間振とう培養した培養液を、ドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを3000rpmで10分間遠心分離する。遠心後の上清液を1ml分取し、同仁社製の「Total Glutathione Quantification Kit」マニュアル(Revised November 11 2008)に従って、グルタチオン量を測定する。
胞子株(b)は、以下のようにして得る。即ち、前記条件1で酵母(倍数体)を培養した後、培養液をドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを3000rpmで10分間遠心分離して得られる酵母(倍数体)を、条件2(培地(マルトース:10重量部、グルコース:0.6重量部、クエン酸バッファー(クエン酸12.3重量%水溶液(pH5.28)):3.2重量部、食塩:1重量部、水:85.2重量部(表3に記載))、30℃で3時間発酵)で発酵させ、得られた発酵液の上清のpHが5.0以下となることを指標として酵母(倍数体)を選択し、該酵母を胞子形成させ、該胞子を分離して胞子株(b)とする。ここでpHの測定は、常法に従えばよい。
酢酸は、酵母が発酵中に副生する物質の一つであり、カビの増殖を抑制する効果がある。酢酸の生成量が多いと、pHは低下する傾向にあるため、pHを測定することで簡易的にカビ抑制効果を推認することが可能となる。発酵液の上清のpHが5.0以下であることを指標にすると、既存のカビ抑制性イースト(例えばカネカイーストDR)と同等、若しくはそれ以上のカビ抑制効果を示す酵母の取得が容易になる。
胞子株(c)は、以下のようにして得る。即ち、配合1(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、食塩:0.5重量部、酵母(水分65%湿菌体):4重量部、水:52重量部(表1に記載))、条件3(3分間ミキシングして生地を得た後、該生地を50g分割し、38℃で2時間発酵(表1に記載))で生地を発酵した時のガス発生量が300ml以上となることを指標として酵母(倍数体)を選択し、該酵母を胞子形成させ、該胞子を分離して胞子株(c)とする。但し、ガス発生量は、実際には生地20gのガス量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて38℃で2時間測定し、発生した全ガス量に2.5を乗じ、生地50gに相当する全ガス量として算出する。なお、水分65%湿菌体とは、水分が65%を占める湿菌体のことをいう。
生地を発酵した時のガス発生量は、酵母の発酵力を示すもので、当該ガス発生量を測定することで、高糖生地での発酵力機能を推認することが可能となる。本工程で、生地を発酵した時のガス発生量が300ml以上であることを指標にすると、交雑育種による最終スクリーニングで、ガス発生量が360ml以上となる高糖発酵力機能を有する酵母の取得が容易になる。
また、上記において、水分65%湿菌体である酵母は、次のようにして得ることができる。表4に記載の組成の培地を大型試験管に5ml、500ml坂口フラスコに50ml分注し、オートクレーブ殺菌した後、培養に使用する。スラント保存している酵母を、それぞれ大型試験管に1白金耳植菌し、30℃、1日間振とう培養後、500ml坂口フラスコに継植して、さらに30℃、1日間振とう培養により作製した菌体を2000rpmで5分間遠心分離し、ヌッチェにより吸引脱水し湿菌体を得る。そして湿菌体の水分含量を測定し、実際に使用する際には、配合1で記載された酵母の純分量が合うように調節する。
(スクリーニング工程(2))
スクリーニング工程(2)では、スクリーニング工程(1)で得た胞子株(a)、胞子株(b)、及び胞子株(c)を用いて、胞子株(d)、及び胞子株(e)を得る。
胞子株(d)は、以下に示す方法で得る。即ち、前記胞子株(a)と前記胞子株(b)を常法に従って交雑して得られる第一世代酵母(倍数体)の中から、条件1で該酵母(倍数体)を培養して得られる培養液の上清のグルタチオン量が120μmol/L以下となり、且つ、条件1で該酵母(倍数体)を培養した後、培養液をドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを3000rpmで10分間遠心分離して得られる酵母(倍数体)を条件2で発酵させ、得られた発酵液の上清のpHが5.0以下となることを指標として酵母(倍数体)を選択し、該酵母を胞子形成させ、該胞子を分離して胞子株(d)とする。ここでpHの測定は、常法に従えばよい。
胞子株(e)は、以下に示す方法で得る。即ち、前記胞子株(b)と前記胞子株(c)を常法に従って交雑して得られる第一世代酵母(倍数体)の中から、条件1で該酵母(倍数体)を培養した後培養液をドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを遠心分離して得られる酵母(倍数体)を条件2で発酵させ、得られた発酵液の上清のpHが5.0以下となり、且つ、配合1、条件3で生地を発酵した時のガス発生量が300ml以上となることを指標として酵母(倍数体)を選択し、該酵母を胞子形成させ、該胞子を分離して胞子株(e)とする。但し、ガス発生量は、実際には生地20gのガス量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて38℃で2時間測定し、発生した全ガス量に2.5を乗じ、生地50gに相当する全ガス量として算出する。
(スクリーニング工程(3))
スクリーニング工程(3)では、スクリーニング工程(2)で得られる胞子株(d)、及び胞子株(e)を用いて、本発明の新規パン酵母を得ることが好ましい。
具体的には、前記胞子株(d)と前記胞子株(e)を常法に従って交雑して得られる第二世代酵母(倍数体)或いは適当な酵母(倍数体)の中から、配合2(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、酵母(水分65%湿菌体):0重量部、水(30℃):任意量(表9に記載))、条件4(3分間ミキシングして生地を得た後、該生地を150g分割し、30℃で160分間静置した後、成型(表10に記載))に従って作製した生地A’を、AACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.になるよう水(30℃)の量を調節した生地を生地Aとし、配合3(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、酵母(水分65%湿菌体):4重量部、水(30℃):生地Aと同量(表9に記載))、条件4に従って作製した生地BをAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.以上となり、生地B中の酢酸量が400ppm以上となり、さらに配合1、条件3で作製した生地のガス発生量が360ml以上となることを指標として酵母(倍数体)を選択する。これを本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母として得る。但し、ガス発生量は、実際には生地20gのガス量をファーモグラフII(ATTO社製)にて38℃で2時間測定し、発生した全ガス量に2.5を乗じ、生地50gに相当する全ガス量として算出する。
また本工程で、生地を発酵した時のガス発生量が360mL以上であることを指標にすると、既存の高糖発酵力を有する酵母に匹敵する酵母を取得することができる。
なお、スクリーニング工程(3)における抗張力の測定は、前記した中種用静菌生地の抗張力の測定と同様にできる。
測定時に用いる小麦粉の品質は産地や収穫時期によって異なるため、使用する小麦粉の品質によって生地の抗張力の値は変動する。そのため、酵母に由来する抗張力の絶対値評価は難しい。しかし、酵母を含まずに常に一定の抗張力(500B.U.)を示すよう調節した生地Aに対して、酵母を添加して生地Bを作成し、その生地Bの抗張力を測定することで、小麦粉の品質に影響を受けることなく、酵母間の抗張力の比較が可能となる。
生地Bの抗張力が500B.U.以上になることを指標にすると、製パン時に生地軟化の抑制効果が顕著に感じられ、従来菌株を用いた場合と比較して確実にボリュームと腰高性に優れたパンの作製が可能となる酵母を取得することができる。
また上述したように酢酸は、酵母が発酵中に副生する物質の一つであり、カビの増殖を抑制する効果があるため、酢酸量を測定すると、カビ抑制効果を推測することが可能となる。
生地B中の酢酸量が400ppm以上であることを指標にすると、従来の菌株と比較して顕著に優れたカビ抑制効果を示す酵母を取得することができる。指標とすべき生地B中の酢酸量の下限は、好ましくは450ppm以上、より好ましくは500ppm以上であり、上限は好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは900ppm以下である。
スクリーニング工程(3)における酢酸量の測定は、次の通りである。前記で抗張力を測定した生地10gに滅菌水40mlを加え、15000rpmで10分間ホモジナイズする(NISSEI社製「AM−8 HOMOGENIZER」使用)。この破砕液のpHをpHメータで測定した値を生地pHとする。pH測定後、直ちに10%塩化ベンザルコニウムを1ml添加し、破砕液50mlを得る。この破砕液を3000rpmで10分間遠心分離して、上清0.9mlを分取し、10%過塩素酸0.1mlを加えて十分混合した後、12000rpmで10分間遠心分離した上清を、孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過を行い試料溶液とする。得られる試料溶液について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で酢酸量の測定を行う。HPLCによる分析条件は以下の通りである。本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母はカビ抑制性が高く、該パン酵母を用いると、生地中の酢酸量が多くなり、焼成後のパンに発生するカビの発生が遅くなる。
HPLC:SHIMAZU LC10A
カラム:SCR101H
カラム温度:40℃
検出器:CDD−10Avp
流速:0.8ml/min
移動相:p−トルエンスルホン酸溶液
以上のようにスクリーニング工程(1)〜(3)を経て得られるパン酵母は、前記生地BをAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.以上を示し、生地B中の酢酸量が400ppm以上を示し、さらに、配合1、条件2で生地を発酵した時のガス発生量が360ml以上を示すパン酵母である。このパン酵母は、高糖生地において生地軟化が懸念される条件でも、吸水を減らさずに生地軟化が抑制でき、ボリュームと腰高性の向上とカビ抑制性に優れている。また該パン酵母を用いてなるパンは、高糖であっても食感がソフトである。本発明において、高糖生地とは、生地糖配合30%の生地のことである。
以上では、本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母をスクリーニング工程(1)〜(3)により取得する実施形態を説明したが、本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母は以上のスクリーニング工程を経たものに限定されない。上述したように、生地Bの抗張力が500B.U.以上、生地B中の酢酸量が400ppm以上、および、配合1、条件3で生地を発酵した時のガス発生量が360ml以上という3つの物性を示せば、本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母に該当する。
本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母は、スクリーニング工程(1)および(2)を実施することなく、スクリーニング工程(3)のみを実施することでも取得可能である。この場合、スクリーニング工程(3)で選択対象として使用する酵母は、上述したような胞子株(d)と胞子株(e)を常法に従って交雑して得られる第二世代酵母(倍数体)に限定されない。自然界の土壌、河川、果実などから単離した酵母であってよく、また、このように単離した酵母から胞子株を取得し、これらを適宜組み合わせて、常法により交雑して得られる酵母であってもよい。また、市販の酵母であってもよい。しかし、スクリーニング工程(3)の前にスクリーニング工程(1)および(2)を実施することで、より確実に、本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母を取得することができる。
本発明の中種用静菌生地に用いるパン酵母として、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属するパン酵母を選択することが更に好ましく、具体的には、KCY1240株(NITE P−1269)、サッカロミセス・セレビシエ KCY1249株(NITE P−1270)、サッカロミセス・セレビシエ KCY1251株(NITE P−1272)又はサッカロミセス・セレビシエ KCY1254株(NITE P−1396)が得られている。前記KCY1240株、KCY1249株、KCY1251株はそれぞれ、サッカロミセス・セレビシエ「NITE P−1269(受託日:2012年3月6日)」、「NITE P−1270(受託日:2012年3月6日)」、「NITE P−1272(受託日:2012年3月6日)、「NITE P−1396(受託日:2012年4月26日)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8)に寄託している。
本発明の中種生地の配合は、上記に記載の中種用静菌生地25〜100重量%と、配合5(強力粉100重量部に対してパン酵母2〜3重量部と水50〜60重量部)75〜0重量%である。中種用静菌生地の量が25重量%よりも少ないと酢酸生成量が少なくなり望ましくない場合がある。パン酵母の量が2重量部より少ないと発酵不足となる場合があり、3重量部より多いと効果は頭打ちとなる場合がある。また、水分の量が50重量部より少ないと生地が硬く発酵不足となる場合があり、60重量部より多いと生地が柔らかくなり過ぎる場合がある。
本発明の中種生地の製造方法は、中種用静菌生地、強力粉、パン酵母及び水をミキシングした後、23〜25℃で、3〜5時間発酵して得ることができる。ミキシングの条件は、通常の中種生地の製造条件に準ずれば良く、一般的には低速で1〜3分間、中速で1〜3分間である。ミキシング時間が短いと材料の分散性が悪く、生地物性が出なくなる場合があり、逆に長くなると生地温度上昇となり望ましくない場合がある。また、発酵温度が23℃より低いと発酵時間が長くなり作業工程上望ましくなく、25℃より高いと発酵過多となり望ましくない場合がある。更に、発酵時間が3時間より低いと発酵が不十分となる場合があり、5時間より長くなると発酵過剰となり望ましくない場合がある。
本発明のパン生地の配合は、上記に記載の発酵した中種生地60〜80重量%と、配合6(強力粉100重量部に対して、上白糖15〜25重量部、食塩4〜8重量部、脱脂粉乳0〜10重量部、油脂10〜25重量部、水70〜100重量部)40〜20重量%である。中種生地の量が60重量%よりも少ないと酢酸生成不足となる場合があり、80重量部より多いと生地物性軟化となり望ましくない場合がある。上白糖の量が15重量部より少ないと発酵が不足したり、甘さが減少する場合があり、25重量部より多いと発酵が過多となったり、甘さが増大されて望ましくない場合がある。食塩の量が4重量部より少ないと生地が軟化したり、味が悪くなる場合があり、8重量部より多いと発酵阻害が起こったり、塩辛くなり望ましくない場合がある。脱脂粉乳が10重量部よりも多いとパン酵母の発酵が阻害され、望ましくない場合がある。油脂の量が10重量部より少ないと生地物性が硬くなる場合があり、25重量部より多いと生地が軟化し望ましくない場合がある。また、水分の量が70重量部より少ないと生地が硬くなる場合があり、100重量部より多いと生地が軟化してしまい、望ましくない場合がある。
本発明のパン生地は、上記に記載の発酵した中種生地、強力粉、上白糖、食塩及び水をミキシングした後、油脂を混ぜ合わせて、更にミキシングして得ることができる。ミキシングの条件は、通常のパン生地の製造条件に準ずれば良く、一般的には低速で1〜3分間、中速で4〜7分間、油脂を入れて、低速で1〜3分間、中速で4〜7分間である。ミキシング時間が短いと材料の分散性が悪く、生地物性が出なくなり、逆に長くなると生地温度上昇となり、望ましくない場合がある。
ミキシングしたパン生地は、所定の製パン工程に従い、「第一発酵(フロアタイムとも言う)」、「分割・丸め」、「第二発酵発酵(ベンチタイムとも言う)」、「成形・型詰め」をした後、「最終発酵(ホイロとも言う)」により充分生地を膨らませ、オーブンで焼成し所望のパンを得る。
本発明の中種用静菌生地を使用したパンとしては、例えば、食パン、あんパンやクリームパンの菓子パン、クロワッサン等のデニッシュペストリー、ロールパン、フランスパン等の堅焼きパン、バラエティブレッド、サンドイッチ等の調理パン、蒸しパン、またはそれらの二次加工品、或いはレンジ調理を必要とするもの等、いかなるパンでもよい。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
また、以下の実施例に使用した材料について、強力粉「カメリア」(日清製粉社製)を使用し、イーストフードは「イーストフードC」(カネカ社製)、ショートニングは「スノーライト」(カネカ社製)を使用した。その他の製パン材料および製パン副原料は、一般小売店から入手可能なものを使用した。
実施例の製パン評価における酵母の使用量は、水分65%湿菌体の使用量として記載しており、実際に水分含量が違う際には、記載された酵母の純分量が合うように使用し、水の量は実際の湿菌体の水分含量に合わせて添加量を調整した。
<生地のガス発生量測定>
ミキシング終了後の生地20gのガス量をファーモグラフII(ATTO社製)を用いて30℃4時間測定し、全ガス量に2.5を乗じ、中種ミキシング終了後の生地50gに相当する全ガス量を算出した。
<カビ塗布方式によるカビ抑制性の評価>
作製したパンを空気中で1日放置させた後、ナイロン袋で密封して20℃で10日間放置させてカビを十分に生育させたパンを0.3g秤量し、滅菌水10mlに懸濁して始発濃度とする。さらにこの始発濃度の懸濁液を元に、別の滅菌水にて10倍ずつ100000倍まで順次希釈した懸濁液を作製した。
カビ発生試験には、目的サンプルのパンを2cmの厚さでスライスし、作製した希釈倍率100倍、1000倍、10000倍及び100000倍の4水準のカビ懸濁液10μlをn数=4でパンのクラム部分へ塗布したのち、ナイロン袋で密封し、30℃で4日間放置し、スライスしたクラム表面に増殖したカビの広がりを比較し、カビ抑制性を評価した。その際の評価基準は以下の通りであった。
−:カビの発生が見られない、
±:希釈倍率が最も高いところで極めて僅かなカビの胞子が見られる、
+:希釈倍率が最も高いところで1mm程度のカビ胞子の広がりが見られる、
++:1〜1.5mm程度のカビ胞子の広がりが散見される、
+++:2mm以上のカビ胞子の広がりが散見される。
<雑菌抑制性の評価>
発酵後のパン生地10gに滅菌水40mlを加え、無菌的に15000rpmで10分間ホモジナイズ(NISSEI社製「AM−8 HOMOGENIZER」)した。この破砕液を原液とし、滅菌水で1000000倍まで希釈した懸濁液を、プレート上の雑菌試験用培地(アクチジオン培地)に0.1ml塗布し、30℃で48時間インキュベートした後、雑菌のコロニー出現の有(+)無(−)を目視で確認した。
<パン生地作製時の作業性評価>
実施例・比較例を実施する際に作業性の良さについて評価した。その際の評価基準については以下の通りである。
◎:非常に作業しやすい
○:作業しやすい
△:生地がベタつくが、なんとか作業が出来る
×:生地がベタつき、作業しにくい
<食パンの風味評価>
実施例・比較例で得られた食パンの風味を、熟練のパネラー10人により評価した。評価基準については以下の通りである。
○:異味がなく美味しい
△:やや酸味が感じられるが美味しい
×:酸味が強く、美味しくない
(製造例1) パン酵母(KCY1254株)の取得
[スクリーニング工程(1)−1:胞子株(a)の取得]
日本国内の土壌及び植物等から単離したSaccharomyces cerevisiae株(2倍体)(東北地方:380サンプル/1167分離菌、四国地方:236サンプル/695分離菌、中国地方:347サンプル/468分離菌、九州地方:294サンプル/752分離菌、その他:55サンプル/111分離菌)から胞子株を取得し、その内ランダムに選択した数々の組み合わせで18種の交雑株を作製し、条件1で培養した。
得られた18種の酵母(倍数体)の培養上清のグルタチオン量を、前記の測定方法に準拠して測定し、グルタチオン量が120μmol/L以下であった5株の酵母(倍数体)を選抜した。これらの酵母(倍数体)を同定したところ、サッカロミセス・セレビシエであり、特にグルタチオン量が104.3μmol/Lと少なかった株をNITE P−1271(KCY1250株)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8)に寄託した(受託日:2012年3月6日)。選抜した5株の酵母(倍数体)をそれぞれ胞子形成させ、該胞子を分離して得られた合計20種の胞子株を胞子株(a)とした。
[スクリーニング工程(1)−2:胞子株(b)の取得]
スクリーニング工程(1)−1で得た18種の交雑株を条件1で培養した。各培養液をドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを遠心分離して得られる各酵母菌体(倍数体)を、条件2で発酵させ、得られた発酵液の上清のpHが5.0以下となるパン酵母5株を選抜した。これら5株の内、1株は市販されているカネカ社製「カネカイーストDR」であり、pHが4.85であった。これら5株のパン酵母(倍数体)をそれぞれ胞子形成させ、該胞子を分離して得られた合計20種の胞子株を胞子株(b)とした。
[スクリーニング工程(1)−3:胞子株(c)の取得]
スクリーニング工程(1)−1で得た18種の交雑株を条件1で培養した。得られた各菌体(倍数体)を用いて、配合1、条件3で生地を作製、発酵した時のガス発生量を前記の測定方法に従い測定した。ガス発生量が300ml以上となるパン酵母10株(倍数体)を選抜した。10株の内、1株は市販されているカネカ社製「カネカイーストTR」であり、ガス発生量が369mlであった。これら10株のパン酵母(倍数体)をそれぞれ胞子形成させ、該胞子を分離して得られた合計40種の胞子株を胞子株(c)とした。
[スクリーニング工程(2)−1:胞子株(d)の取得]
前記胞子株(a)と前記胞子株(b)を常法に従って交雑して30種の第一世代交雑株を得、それらを条件1で培養した。得られた30種の交雑株の培養上清のグルタチオン量を、前記の測定方法に準拠して測定し、グルタチオン量が120μmol/L以下で、且つ、該培養液をドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを遠心分離して得られるパン酵母(倍数体)を条件2で発酵させ、得られた発酵液の上清のpHが5.0以下であったパン酵母(倍数体)を12株選抜した。これらのパン酵母(倍数体)をそれぞれ胞子形成させ、該胞子を分離して得られた48種の胞子株を胞子株(d)とした。
[スクリーニング工程(2)−2:胞子株(e)の取得]
前記胞子株(b)と前記胞子株(c)を常法に従って交雑して28種の第一世代交雑株を得、それを条件1で培養した。得られた28種の交雑株の培養液をドライ換算で酵母含量が100mgになるよう分取し、それを遠心分離して得られるパン酵母(倍数体)を条件2で発酵させ、得られた発酵液の上清のpHが5.0以下で、且つ、該パン酵母(倍数体)を条件1で培養し、得られた酵母菌体を用いて、配合1、条件3で生地を作製、発酵した時の、前記の測定方法に従い測定したガス発生量が300ml以上であったパン酵母(倍数体)を10株選抜した。これらのパン酵母(倍数体)をそれぞれ胞子形成させ、該胞子を分離して得られた40種の胞子株を胞子株(e)とした。
[スクリーニング工程(3): KCY1254株の取得]
前記胞子株(d)と前記胞子株(e)を常法に従って交雑して22種の第二世代交雑株を得、それを条件1で培養した。得られた酵母菌体の中から、配合2、条件4に従って作製した生地について前記の測定方法に従って測定した抗張力が500B.U.になるよう水(30℃)の量を調節して生地Aとし、配合3、条件4に従って作製した生地Bについて同様に測定した抗張力が500B.U以上であって、該生地B中について前記の測定方法に従って測定した酢酸量が400ppm以上、および配合1、条件3で生地を作製、発酵した時の、前記の測定方法に従い測定したガス発生量が360ml以上であったパン酵母を得た。
これを同定したところサッカロミセス・セレビシエであり、NITE P−1396(KCY1254株・実施例2〜7)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8)に寄託した(受託日:2012年4月26日)。
KCY1254株を用いて作製した生地Bの抗張力及び酢酸量と、配合1、条件3で生地を作製、発酵した時のガス発生量を表11に示した。
次いで、製パン試験に供するパン酵母を得るために、以下のように培養を行った。
<バッチ培養>
表4に記載の組成の培地を大型試験管に5ml、500ml坂口フラスコに50ml分注し、オートクレーブ殺菌した後、培養に使用する。育種株1白金耳を大型試験管に植菌し、30℃、1日間振とう培養後500ml坂口フラスコに継植して、さらに30℃、1日間振とう培養により作製したバッチ培養菌体を以下の5Lジャーの種母培養に供した。なお、培地の調整の際に、糖は糖蜜を使用し、糖濃度4%(重量/体積)分になるよう調整した。
<5Lジャー種母培養>
5Lジャーに表5に記載の組成の培地2Lを入れて、オートクレーブ殺菌後、500ml坂口フラスコ5本分の菌体を植菌し、表6に記載の条件で種母培養を行った。なお、培地の調整の際に、糖は糖蜜を使用し、糖濃度4%(重量/体積)分になるよう調整した。
<5Lジャー本培養>
始発液を表7に記載の培地組成として、5Lジャーで培養した種母菌体を湿菌体として50g添加し、表8に記載の条件で本培養を行った。具体的には13時間培養を行い、糖は12時間培養の間に分割添加した。5Lジャー培養菌体は培養終了後直ちに遠心分離し、ヌッチェにより吸引脱水し湿菌体を作製、以下の実施例に使用した。なお、培地の調整の際に、糖としては糖蜜を、糖濃度測定後に230g添加した。
(製造例2) 抗菌ペプチドを含む発酵乳
110℃で15分間滅菌した10%(重量/重量)還元脱脂乳培地に、ラクトバチルス・ヘルベティクスK−4を1%(重量/重量)接種して24時間培養し、それを凝固させた。これを2回繰り返したものを種菌とし、同培地に2%(重量/重量)接種し72時間培養して発酵乳を得た。得られた発酵乳の抗菌性は、対照区に対する試験区の菌数比として0.0002363(7.8*108(個/g)/3.3*104(個/g))であった。
(実施例1〜7) 中種用静菌生地の作製
表12の中種用静菌生地配合に従い、縦型ミキサー(関東ミキサー、10コート)とフックを用い、水をミキサー内に入れ、その上に強力粉、パン酵母、抗菌ペプチドを含む発酵乳、を加え、低速2分、中速2分で、捏上温度が20℃になるように混捏した。この生地を表12に記載の条件で発酵し、中種用静菌生地を得た。実施例4で得られた中種用静菌生地を棒状(幅:18mm、高さ:22.5mm)に成型した生地の両側を固定したまま、25℃の恒温槽で20分間静置した直後、即ち抗張力を測定する直前に該生地の様子を写真に撮った(図1)。さらに他の実施例を含めて、高張力、作業性及び雑菌抑制性を評価した。それらの評価結果を表12にまとめた。
(比較例1,2) 中種用静菌生地の作製
表12の配合及び条件の如く、実施例1〜7において、パン酵母又は抗菌ペプチドを含む発酵乳を添加しない以外は同様の方法にて、中種用静菌生地を得た。比較例2で得られた中種用静菌生地を棒状(幅:18mm、高さ:22.5mm)に成型した生地の両側を固定したまま、25℃の恒温槽で20分間静置した直後、即ち抗張力を測定する直前に該生地の様子を写真に撮った(図2)。さらに他の比較例を含めて、高張力、作業性及び雑菌抑制性を評価した。それらの結果を表12に示した。
(実施例8〜10、比較例3,4) 食パンの製作
表13の配合及び条件に従い、実施例1、4、7及び比較例1、2で作製した中種用静菌生地を用いて中種生地を調製した。中種生地調整後、縦型ミキサーにショートニングを除く本捏配合材料と中種生地を入れ、低速2分、中速5分で混捏した。その後、ショートニングを入れ、低速2分、中速5分で混捏し、捏上温度27℃のパン生地とした。次に、パン生地を27℃、15分恒温槽にて保存するフロアータイムをとった後、生地を240gずつに分割した。分割後27℃で20分間のベンチタイムをとり、モルダーにて生地を伸ばした後、U字成型した。この成型物を食型(底面:縦12cm×横36cm、上面:縦12.5cm×横37cm、高さ:13cm)に6個入れ、温度38℃、湿度86%で50分間最終発酵を行った。最終発酵後、180℃のオーブンで38分間焼成した。その結果を表13に示した。

Claims (8)

  1. 配合X(強力粉:100重量部、パン酵母(水分66.5%菌湿体):3〜5重量部、標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌し、発酵乳を1%(重量/重量)添加したものを試験区とし、一方で標準液体培地にE.coli(JCM1649)を103個/g植菌したものを対照区として、各々を35℃、48時間培養した後、標準寒天培地に希釈添加し35℃、72時間培養後、菌数の測定をした際に、対照区に対する試験区の菌数比が0.1以下である発酵乳:15〜30重量部、水:20〜50重量部)を、条件A(ミキシングし、捏ね上げ温度を10〜30℃に調節して生地を得た後、該生地を3〜12℃で、24〜72時間発酵)に従って作製してなり、且つAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が300B.U.以上の中種用静菌生地。
  2. 発酵乳が、抗菌ペプチドを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の中種用静菌生地。
  3. 抗菌ペプチドとしてH−Arg−Pro−Lys−His−Pro−Ile−Lys−His−Gln−OHの構造であるペプチドを含む請求項1又は2に記載の中種用静菌生地。
  4. パン酵母が、以下のスクリーニング工程を行って得られる請求項1〜3何れかに記載の中種用静菌生地。
    配合2(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、酵母(水分65%湿菌体):0重量部、水(30℃):任意量)、条件4(3分間ミキシングして生地を得た後、該生地を150g分割し、30℃で160分間静置した後成型)に従って作製した生地をAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.になるよう水(30℃)の量を調節した生地を生地Aとし、配合3(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、酵母(水分65%湿菌体):4重量部、水(30℃):生地Aと同量)、条件3に従って作製した生地BをAACC法54−10に準拠してエクステンソグラムで測定した時の抗張力が500B.U.以上となり、生地B中の酢酸量が400ppm以上となり、さらに配合1(強力粉:100重量部、上白糖:30重量部、食塩:0.5重量部、酵母(水分65%湿菌体):4重量部、水:52重量部)、条件3(3分間ミキシングして生地を得た後、該生地を50g分割し、38℃で2時間発酵)で生地を発酵した時のガス発生量が360ml以上となることを指標として酵母(倍数体)を選択する。
  5. パン酵母が、サッカロミセス・セレビシエ KCY1240(NITE P−1269)、サッカロミセス・セレビシエ KCY1249(NITE P−1270)、サッカロミセス・セレビシエ KCY1251(NITE P−1272)又はサッカロミセス・セレビシエ KCY1254株(NITE P−1396)である請求項1〜4何れかに記載の中種用静菌生地。
  6. 請求項1〜5何れかに記載の中種用静菌生地25〜100重量%と、配合5(強力粉:100重量部、パン酵母:2〜3重量部、水:50〜60重量部)75〜0重量%を混合してなる中種生地。
  7. 請求項6に記載の中種生地60〜80重量%と、配合6(強力粉:100重量部、上白糖:15〜25重量部、食塩:4〜8重量部、油脂:10〜25重量部、脱脂粉乳:0〜10重量部、水:70〜100重量部)40〜20重量%を混合してなるパン生地。
  8. 請求項7に記載のパン生地を焼成してなるパン。
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