JP2004298014A - ミネラル高含有パン酵母及びそれを用いたパン - Google Patents

ミネラル高含有パン酵母及びそれを用いたパン Download PDF

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Atsushi Nagasawa
淳 長澤
Hisanori Endo
久則 遠藤
Katsuya Fukami
克哉 深見
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Abstract

【課題】本発明は、通常のパン酵母と同等の発酵力、製パン適性、保存安定性を有し、かつ亜鉛等のミネラルを通常のパン酵母の約1,000倍含有するミネラル高含有パン酵母を提供することで、パンの生地性、内相、風味、食感、着色等の悪化を招くことなく、通常のパン酵母を用いたパンよりも特に風味が優れたミネラル高含有パンの製造を可能とすることを課題とする。
【解決手段】パン酵母に亜鉛等のミネラルを高濃度に取り込ませつつ、パン酵母として求められる発酵力、製パン適性、保存安定性を満足できるパン酵母の培養条件を検討し、ミネラルを高濃度含有していても通常のパン酵母に比較して同等の発酵力、製パン適性、保存安定性を示すミネラル高含有パン酵母を得ることに成功した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は亜鉛等のミネラルを高濃度に含有することでパンの栄養成分を強化すると同時に、パンに優れた風味を与える新規ミネラル高含有パン酵母及びこれを用いたパンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
厚生労働省の平成13年国民栄養調査によると日本人は亜鉛、鉄、銅等の生体微量元素が不足していることが指摘されている(図1参照)。
【0003】
一方、酵母は、昨今、酵母中の栄養成分(例えば、細胞壁成分(グルカン等)、良質なタンパク質、ビタミンB群、核酸等)に注目され、ダイエット食品等、栄養補給の素材として、重要な食品素材となってきた。また、酵母は、培地に金属を添加すると、その金属を菌体中に取り込むことが知られている(例えば、B. Volesky, H. A. MayPhilips; Biosorption of heavy metals by Saccharomyces cerevisiae; Appl Microbiol Biotechnol(1995)42: 797−806(技術文献1)参照)。亜鉛、鉄、銅、マンガン、セレン、モリブデン、クロム等の微量元素は生体において重要な働きをしており、これらの金属を培地中に添加すれば、食品に強化したい元素の供給素材として酵母が利用できることになる。この点に着目し、ミネラル含有酵母の製造方法が開発された(特開昭54−157890号公報(特許文献1)、特開昭60−75279号公報(特許文献2)、特公平6−16702号公報(特許文献3))。更に10,000ppmの亜鉛を取り込んだ酵母を製造する技術も検討されてきた(特開平8−332082号公報(特許文献4)参照)。また、このような亜鉛を高い濃度で含有する酵母を利用した食品も検討されてきた(特開2000−125811号公報特許文献5)、特開平9−124438号公報(特許文献6)参照)。
【0004】
しかしながら、これらのミネラル高含有酵母は加熱殺菌後、噴霧乾燥された形態、若しくはアルコール、熱水等で抽出した酵母エキスとして化粧品又は食品に添加されており、活性を維持した生菌の状態でパン等の発酵食品に通常のパン酵母と同様に使用した場合の効果について言及した例は示されていない。
【0005】
また、上記の特許文献5,6に示されているように酵母の死滅菌体や酵母抽出物をパンに添加した場合、酵母由来のグルタチオン等の還元性物質や有機酸、アミノ酸、核酸等が菌体から漏洩するため、グルテンネットワークの生成阻害によるパン製造ラインでの機械耐性低下やパン内相の乱れ、食感のねちゃつき、風味の悪化、表皮の過剰な着色を招く可能性が極めて高く、ミネラル酵母添加によるパンの栄養成分強化を行う場合の大きな障害となっていた。
【0006】
更にまた、上記の特許文献1にミネラル含有酵母を生菌体の状態でパンの発酵に用いることが出来る旨、記載されているが、ミネラル高含有酵母を生菌体の状態でパンに用いた場合のミネラル補給以外の効果については示されていない。
【0007】
【技術文献1】
B. Volesky, H. A. MayPhilips; Biosorption of heavy metals by Saccharomyces cerevisiae; Appl Microbiol Biotechnol(1995)42: 797−806
【特許文献1】
特開昭54−157890号公報
【特許文献2】
特開昭60−75279号公報
【特許文献3】
特公平6−16702号公報
【特許文献4】
特開平8−332082号公報
【特許文献5】
特開2000−125811号公報
【特許文献6】
特開平9−124438号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、通常のパン酵母と同等の発酵力、製パン適性、保存安定性を有し、かつ亜鉛等のミネラルを通常のパン酵母の約1,000倍含有するミネラル高含有パン酵母を提供することで、パンの生地性、内相、風味、食感、着色等の悪化を招くことなく、通常のパン酵母を用いたパンよりも特に風味が優れたミネラル高含有パンの製造を可能とすることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、パン酵母に亜鉛等のミネラルを高濃度に取り込ませつつ、パン酵母として求められる発酵力、製パン適性、保存安定性を満足できるパン酵母の培養条件を検討し、ミネラルを高濃度含有していても通常のパン酵母に比較して同等の発酵力、製パン適性、保存安定性を示すミネラル高含有パン酵母を得ることに成功した。
【0010】
また、本発明のパン酵母を用いてパンを製造した結果、パンの生地性、内相、風味、食感、着色等への悪影響が全く認められないだけではなく、通常のパン酵母を用いた場合よりも好ましい風味がパンに与えられることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は
(1)乾燥菌体中にミネラルを含有し、かつ砂糖分が5%の低糖生地における30℃、2時間の発酵で発生するトータルガス発生量が少なくとも70ml以上、かつ5℃で4週間冷蔵保存したときの同炭酸ガス発生量が製造直後の80%以上を維持していることを特徴とするミネラル高含有パン酵母、
(2)ミネラルが亜鉛であることを特徴とする(1)記載のパン酵母、
(3)(1)記載のミネラル高含有パン酵母を含有することを特徴とするミネラル強化パン、
(4)(1)記載のミネラル高含有パン酵母を用いたことを特徴とするミネラル強化パンの製造方法に関する。
【0012】
本発明により見出されたミネラル高含有パン酵母は当社の既存パン酵母に比較して同等の発酵力、製パン適性、保存安定性を示し、かつ亜鉛、鉄等のミネラルを高度に含有するものである。
【0013】
また、本発明のミネラル高含有パン酵母を用いることで通常のパン酵母を用いたパンに比較してミネラルリッチ、かつ風味の好ましいパンを製造することが可能となり、また、既存の加熱殺菌ミネラル高含有酵母やミネラル高含有酵母エキスを添加したパンに比較した場合は生地性が良好で、風味、食感の低下がなく、表皮に過剰な着色が認められないパンの製造が可能となった。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明でいうミネラルとは特に限定されるものではないが、例えば生体において重要な働きをしている亜鉛、鉄、銅、マンガン、セレン(セレニウム)、モリブデン、クロム、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、ヨウ素、ナトリウム等があげられる。
【0015】
乾燥菌体中のミネラルの含有量はミネラルによって異なり、例えば亜鉛やマグネシウムでは、3,000〜300,000ppm、好ましくは3,000〜10,000ppm、より好ましくは5、000〜9、000ppmである。
【0016】
鉄の場合は、3,000〜300,000ppm、好ましくは3,000〜40,000ppm、より好ましくは5,000〜20,000ppmで、銅では300〜30,000ppm、好ましくは300〜30,000ppm、より好ましくは300〜4,000ppmである。
【0017】
また、マンガンでは300〜30,000ppm、好ましくは300〜10,000ppm、より好ましくは300〜8、000ppm、セレンやモリブデンあるいはクロムの場合は、10〜1、000ppm、好ましくは10〜600ppm、より好ましくは10〜200ppmである。
いずれのミネラルについても、所望の濃度に含有させた酵母の製造法は、公知のミネラル酵母製造方法により行うことができる。
【0018】
例えば、亜鉛では前記の特許文献4に記載されているように、「亜鉛溶液中に酵母を懸濁して、4〜40℃、好ましくは20〜35℃の温度、1〜120時間、好ましくは40〜100時間、pH4〜7、好ましくはpH4.5〜6.5とするが、使用する酵母、亜鉛塩の種類や濃度に応じて適宜定め、場合によっては
上記範囲外であってもよい。」(
【0013】欄)という方法を採用することができる。
【0019】
また、同じく鉄についても同文献の
【0028】欄に「鉄溶液中に酵母を懸濁して、4〜40℃、好ましくは20〜35℃の温度、0.5〜72時間、好ましくは1〜36時間、pH4〜7、好ましくはpH4.5〜6.5とするが、使用する酵母、鉄塩の種類や濃度に応じて適宜定め、場合によっては上記範囲外であってもよい。」と記載されているような方法を採ることができる。
そして、上記のミネラルのうち複数種の組み合わせで含有させてもよい。
【0020】
また、酵母のミネラル含有量の測定は、当業者に周知の各種の方法により可能であるが、例えば亜鉛、マンガン、マグネシウム等は原子吸光光度法によって行うことができる。鉄はo−フェナントロリン吸光光度法であり、銅はAPDC抽出・原子吸光光度法である。セレンは2,3−ジアミノナフタレン蛍光光度法で、モリブデンはIPC発光分析法、クロムはジフェニルカルバジド吸光光度法である。
【0021】
本発明に用いられるパン酵母としては、サッカロミセス・セレビジエが最も好ましいが、サッカロミセス・ロゼイやサッカロミセス・ウバルム、サッカロミセス・シバリエリ、トルラスポラ・デルブルーキー、場合によってはクルベロマイセス・サーモトレランス、サッカロミセス・スペーシーズ等もあげることが出来る。
【0022】
本発明で言うミネラル高含有パン酵母とは、上記のミネラルの硫酸塩、塩化物等の塩を乾燥菌体中の所望のミネラル含有量になるように、培養開始時に窒素、リン等の培養原料と共に添加し、酵母シードを加えた後、通気攪拌しつつ糖液を徐々に流加して培養される。培養終了後、培養液は遠心分離機によって酵母と培養廃液に分離、洗浄され水分80%前後のクリーム酵母の状態で冷蔵保管される。また必要に応じて、得られた酵母菌体について前記の特許文献4に記載された方法を実施することもできる。クリーム酵母は脱水機によって水分65%前後まで脱水されて粘土状のバルク酵母となり計量、充填、包装後、冷却され出荷される。
【0023】
尚、酵母の商品形態として、バルク酵母を成型機で500gのブロック状に成形した後、包装され箱詰め、冷却した後、出荷される場合もある。また、バルク酵母に適宜、安定剤として乳化剤等を加えた後、造粒機にて顆粒状にしたものを流動乾燥機にて酵母の活性を保ったまま、水分を20〜30%まで乾燥しセミドライ酵母としても良いし、さらに水分5%以下まで乾燥してドライ酵母に加工することも可能である。
本発明のミネラル高含有パン酵母は通常のパン酵母と同等の発酵力、保存安定性、製パン適性を有す。
【0024】
詳しくは、糖5%の低糖生地を30℃の恒温水槽中にて2時間発酵させた際に発生するトータルガス発生量をファーモグラフII(ATTO社製)にて測定したときに少なくとも70ml以上の数値を示すだけの発酵力を有していることが必要である。
【0025】
また、パン酵母として市場流通する際に重要な保存安定性に関しては、4週間冷蔵保存した後、上記と同様に低糖生地におけるトータルガス発生量を測定したときに、少なくとも製造直後のガス発生量の80%以上、好ましくは85%以上のガス発生量を示すだけの発酵力を維持していることが求められる。
【0026】
製パン適性については通常のパン酵母に比較してパン生地のミキシング時の生地の過剰なべたつきや、オーバーミキシング等のミキシング耐性の低下、生地の分割、成型の際のベタ付き、ダレ、生地表面の荒れ等の発生による機械耐性の低下、生地からのガス漏洩によるホイロ時間の極端な遅延、オーブンによる焼成時の釜伸びの低下等が認められないことが必要となる。
【0027】
本発明で言うパンとは、パン酵母を用いて発酵を行う全ての発酵パンのことを指す。詳しくはバケットやバタール等のハードロール類、角食パン、黒糖パン、イギリスパン、全粒粉パン等の食パン類、バターロール、ドッグロール、テーブルロール等のロールパン類、クロワッサン、デニッシュ等のペストリー類、あんパン、クリームパン、ジャムパン等の菓子パン類、中華まん、蒸しパン等の蒸しパン類、ドーナッツ、カレーパン等の揚げパン類があげられる。
パンの製法としてはストレート法、中種法、オーバーナイト法、老麺法、中麺法、液種法等のスクラッチ法以外に、冷蔵生地製法、冷凍生地製法も含まれる。
【0028】
ミネラル高含有パン酵母のパンへの添加量、添加方法は特に限定されるものではないが、基本的には用いるパンの種類及び製法において通常使用するパン酵母の使用量と同量のミネラル高含有パン酵母を通常のパン酵母に置き換えてパン生地に添加するだけで良い。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1) 亜鉛高含有パン酵母の培養
300lジャーファーメンターに表1の培養用培地150lを調製後、当社保有株サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)XJ株のシードを接種し、以下に示す条件で培養を行った。
【0031】
【表1】
Figure 2004298014
【0032】
培養終了後、直ちに培養液を3,000rpm、10分間、遠心分離し上清を廃棄後、残った亜鉛高含有パン酵母菌体を冷水にて2度洗浄した。得られた洗浄菌体を濾布に包んでプレス機にて圧搾脱水し、水分65〜67%の亜鉛高含有パン酵母(ZY−06)25Kgを得た。表2に示したとおり、得られた亜鉛高含有パン酵母の乾燥固形分当たりの亜鉛含有量は5,800ppmだった。
【0033】
【表2】
Figure 2004298014
【0034】
・亜鉛高含有パン酵母の生地発酵力の測定
表3に示される生地組成における亜鉛高含有パン酵母の発酵力を当社製品であるXJイースト(通常製品)、45イーストを比較対照として測定した。
【0035】
即ち、原料をグラムミキサー(米国National社製)にて2分間ミキシングし、得られた生地を30gに分割してファーモグラフIIを用いて30℃、120分間で発生するトータルガス発生量を測定した。
【0036】
【表3】
Figure 2004298014
【0037】
表4に結果を示した。本発明の亜鉛高含有パン酵母は当社普通酵母や冷凍生地用酵母に比較して低糖生地でやや低いものの無糖生地と高糖生地では強い非冷凍生地発酵力を示し、パンを製造するために十分な発酵力を有していた。
【0038】
【表4】
Figure 2004298014
【0039】
・亜鉛高含有パン酵母の冷凍生地発酵力の測定
亜鉛高含有パン酵母の低糖生地および高糖生地における冷凍耐性を当社冷凍生地用YFイーストと比較した。表5に示した生地組成に従い調合した原料をグラムミキサーにて2分間ミキシングし、得られた生地は、25℃のインキュベーター中で60分間発酵した。発酵終了後、生地を30gに分割した後、ポリ袋に入れてー20℃で冷凍保管した。解凍は冷凍後、1日、2週間、1ヶ月後に生地を冷凍庫から取り出し、ファーモグラフ測定用ガラス瓶に入れ、38℃、120分間のトータルガス発生量をファーモグラフIIにて測定した。
【0040】
【表5】
Figure 2004298014
【0041】
図2に120分間のトータルガス発生量の冷凍保存1ヶ月の経過を、表6に冷凍保存1ヶ月後の発酵力残存率(冷凍1日目のガス発生量を100%としたときの冷凍1ヶ月後のガス発生量の割合)を示した。本発明の亜鉛高含有パン酵母は低糖生地で80%以上、高糖生地で85%以上の発酵力残存率を示した。また、1ヶ月間の発酵力経過からも当社冷凍生地用YFイーストに比べて遜色のない冷凍耐性能を有することが確認された。
【0042】
【表6】
Figure 2004298014
【0043】
・亜鉛高含有パン酵母の保存安定性
亜鉛高含有パン酵母の冷蔵保管における保存安定性を当社XJイースト(通常培養製品)と比較した。前記の培養試験で得られた亜鉛高含有パン酵母試作品を5℃の冷蔵庫にて保存し、製造直後、冷蔵2週間、冷蔵4週間の低糖生地発酵力を表3の生地組成に従って測定した。即ち、原料をグラムミキサーにて2分間ミキシングし、得られた生地を30gに分割してファーモグラフIIを用いて30℃、120分間で発生するトータルガス発生量を測定した。
【0044】
図3に保存安定性試験の結果を示す。本発明で得られた亜鉛高含有パン酵母の冷蔵保存安定性はXJイーストに比較して、特に劣るものではなく、冷蔵4週間目の低糖生地発酵力は製造直後の発酵力の約85%を維持しており、業務用生パン酵母として安定的に市場流通するのに十分な性能を示した。
【0045】
(実施例2) 亜鉛高含有パン酵母を用いたソフトフランスパンの試作
実施例1で得られた亜鉛高含有パン酵母を用い、表7の配合、工程に従ってソフトフランスパンの試作を行った。比較対照として当社XJイースト使用ソフトフランスパンおよび、亜鉛を乾燥固形分あたり9,000ppm含有する亜鉛高含有酵母粉末(死滅酵母)をパン中の亜鉛含有量が亜鉛高含有パン酵母使用配合と同程度になるように添加したソフトフランスパンを試作した。
【0046】
尚、配合中の割合はベーカーズ・パーセントであり、小麦粉を100%とし、他の原料配合量を小麦粉に対する割合で示している。また、試作によって得られたパンの生地性、ボリューム、表皮の着色、風味の評価を表8に示す。生地性、風味についてはA(非常に良い)、A−(良い)、B(普通)、B−(やや悪い)、C(悪い)、C−(非常に悪い)の6段階で表している。
【0047】
【表7】
Figure 2004298014
【0048】
亜鉛高含有パン酵母を2%(ベーカーズ・パーセント:以下同)使用したソフトフランスパンは1個あたり約4mgの亜鉛を含有している。亜鉛の1日の所要量は約12mgであり、ソフトフランスパン1個を食べることで1日の所要量の1/3を摂取できる。また、表8に示したとおり、亜鉛高含有パン酵母を用いたパンは生地性が良好でパン体積、表皮の着色も良好であった。さらに亜鉛高含有パン酵母を用いたパンは、酵母菌自体は同じ菌株である当社XJイーストと比較しても好ましい風味が付与されるという知見を得た。これは亜鉛が菌体中に多量蓄積されることにより亜鉛を活性中心に必要とする代謝系酵素の活性が高まったためと推測される。
【0049】
それに対し、亜鉛高含有酵母粉末(死滅酵母)を添加したパンも1個あたり約4mgの亜鉛を含有しているが、表8に示したように製パン工程における生地性はべた付き、ダレが発生し好ましくなかった。焼成後のパン体積も小さく、表皮の着色も過剰で、風味も劣るものだった。
【0050】
【表8】
Figure 2004298014
【0051】
(実施例3) 亜鉛高含有パン酵母を用いた中種法食パンの試作
実施例1で得られた亜鉛高含有パン酵母を用い、表9の配合、工程に従って中種法食パン(プルマン型)の試作を行った。比較対照として当社XJイーストを使用。および、亜鉛を乾燥固形分あたり9,000ppm含有する亜鉛高含有酵母粉末(死滅酵母)をパン中の亜鉛含有量が亜鉛高含有パン酵母使用配合と同程度になるように添加した食パンを試作した。また、試作によって得られたパンの生地性、ホイロ時間、表皮の着色、風味の評価を表10に示す。
【0052】
【表9】
Figure 2004298014
【0053】
亜鉛高含有パン酵母を2%使用した食パンは1斤を6枚にスライスしたとき、1枚あたり約2mgの亜鉛を含有している。つまり、亜鉛高含有パン酵母を用いた6枚切り食パンを2枚食べることで1日の所要量の1/3を摂取できる。また、表10に示したとおり、亜鉛高含有パン酵母を用いたパンは生地性が良好でパン体積、表皮の着色も良好であった。さらに亜鉛高含有パン酵母を用いたパンは、実施例2と同様に酵母菌自体は同じ菌株である当社XJイーストと比較しても好ましい風味が付与されるという知見を得た。それに対し、亜鉛高含有酵母粉末(死滅酵母)を添加したパンも6枚切り食パン1枚あたり約2mgの亜鉛を含有しているが、表10に示したように製パン工程における生地性はべた付き、ダレが発生し好ましくなかった。焼成後のパン体積も小さく、表皮の着色も過剰で、風味も劣るものだった。
【0054】
【表10】
Figure 2004298014
【0055】
(実施例4) 亜鉛高含有パン酵母を用いた各種パンの試作
実施例1で得られた亜鉛高含有パン酵母を用いてバターロール、クロワッサン、デニッシュペストリー、菓子パンの試作を実施した。
【0056】
【表11】
Figure 2004298014
【0057】
【表12】
Figure 2004298014
【0058】
【表13】
Figure 2004298014
【0059】
【表14】
Figure 2004298014
【0060】
実施例2および3と同様に亜鉛高含有パン酵母を用いたパンは生地性が良好でパン体積、表皮の着色も良好であった。さらに亜鉛高含有パン酵母を用いたパンは、酵母菌自体は同じ菌株である当社XJイーストと比較しても好ましい風味が付与されていた。それに対し、亜鉛高含有酵母粉末(死滅酵母)を添加したパンは生地にべた付き、ダレが発生し、焼成後のパン体積も小さく、表皮の着色も過剰で、風味も劣るものだった。
【0061】
【発明の効果】
本発明により、通常のパン酵母と同等の発酵力、製パン適性、保存安定性を有し、かつミネラルを通常のパン酵母の約1,000倍含有するミネラル高含有パン酵母を用いることで、パンの生地性、内相、風味、食感、着色等の悪化を招くことなく、通常のパン酵母に比較しても特に風味が優れたミネラル高含有パンの製造が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】厚生労働省平成13年国民栄養調査によるビタミン・ミネラル充足率(男女計)を示す図。
【図2】低糖生地における解凍後生地発酵力の推移を示す図。
【図3】高糖生地における解凍後生地発酵力の推移を示す図。
【図4】冷蔵保存下における発酵力の推移を示す図。

Claims (4)

  1. 乾燥菌体中にミネラルを含有し、かつ砂糖分が5%の低糖生地における30℃、2時間の発酵で発生するトータルガス発生量が少なくとも70ml以上、かつ5℃で4週間冷蔵保存したときの同炭酸ガス発生量が製造直後の80%以上を維持していることを特徴とするミネラル高含有パン酵母。
  2. ミネラルが亜鉛であることを特徴とする請求項1記載のパン酵母。
  3. 請求項1記載のミネラル高含有パン酵母を含有することを特徴とするミネラル強化パン。
  4. 請求項1記載のミネラル高含有パン酵母を用いたことを特徴とするミネラル強化パンの製造方法。
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