JP5750294B2 - パン類およびその製造方法 - Google Patents
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Description
より詳細には、グルテンを含有しないかまたはグルテン含量の少ない澱粉質粉体を多割合で用いて製造したパン類およびその製造方法に関するものであり、本発明による場合は、原料粉として小麦粉のみを用いて製造したパンに匹敵する良好な食感、内相および外観を有するパン類を良好な工程性で円滑に得ることができる。
しかし、世界的な異常気象による小麦生産量の低下、小麦消費の拡大などによって、近年、小麦の供給に問題が生じる可能性が懸念され、小麦粉に小麦粉以外の澱粉質粉体を多割合で用いることができるパンの製造技術が望まれている。また、小麦粉に小麦粉以外の粉体を多割合で混合してパン類を製造することにより、従来の小麦粉だけでは得られない新たな風味や食感を有するパン類を創製することが試みられている。
上記(5)の従来技術では、生米および/または米粉に加水して炊き上げ、炊き上げ時および/または炊き上げ後にアミラーゼ剤処理を行い、その後酵素を失活させてペースト状の製パン用フィリングをつくり、当該製パン用フィリングを小麦粉に加えてパンを製造するものであって、米粉をそのまま直接用いてパン類を製造するものでないため、パン類の製造に手間および時間を要する。
しかし、この従来技術では、米飯から得た甘酒の素は風味付けのためだけに用いられていて、パンを製造するための原料粉として専ら小麦粉が用いられており、小麦粉以外の澱粉質粉体は用いられていないため、小麦粉を用いる従来の製パン技術の範疇に属するものであり、小麦粉以外の澱粉質粉体を用いる製パン技術ではない。
さらに、乾燥米麹粉末からなる発酵促進剤を添加してパンを製造することが知られている(特許文献7)。しかし、この従来技術も、乾燥米麹粉末からなる発酵促進剤を、小麦粉に添加してパンを製造していることから、小麦粉を用いる従来の製パン技術の範疇に属するものであり、小麦粉以外の澱粉質粉体を用いる製パン技術ではない。
本発明の目的は、グルテンを含有しないかまたはグルテン含量の少ない小麦粉以外の澱粉質粉体の配合割合を多くしながら、グルテンを別途添加せずに、十分に膨らんでいて、食感、内相、外観などに優れ、原料粉として小麦粉のみを用いたパン類と遜色ない品質を有するパン類を良好な工程性で円滑に得ることができる方法を提供することである。
その結果、小麦粉以外の澱粉質粉体と小麦粉を用いてパン類を製造するに当たって、甘酒を添加すると、グルテンを別途添加しなくても、十分に膨らんでいて、食感、内相、外観などに優れ、原料粉として小麦粉のみを用いたパン類と遜色のない品質を有するパン類が得られることを見出した。また、本発明者らは、甘酒を添加すると、グルテンを添加しなくても、原料粉における小麦粉以外の澱粉質粉体の配合割合が多いときにも、十分に膨らんでいて、食感、内相、外観などに優れるパン類が得られること、特に、小麦粉以外の澱粉質粉体:小麦粉の使用割合を、質量比で、30:70〜70:30の範囲にすると高品質のパン類が得られることを見出した。
そして、本発明者らは、甘酒の添加量は、小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の合計質量に基づいて0.05〜5質量%(乾物換算)であることが好ましいことを見出した。
さらに、本発明者らは、甘酒と共にアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を更に添加する場合には、甘酒の添加時にこれらの酵素を添加すると、得られるパン類の品質がより向上することを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
(1) 小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉を用い且つ甘酒を添加して製造したことを特徴とするパン類である。
(2) 小麦粉以外の澱粉質粉体:小麦粉の使用割合が、質量比で、30:70〜70:30である前記(1)のパン類;
(3) 小麦粉以外の澱粉質粉体が、グルテン含量が5質量%未満の澱粉質粉体である前記(1)または(2)のパン類;
(4) 甘酒が、米の飯または粥に麹を添加して発酵させて澱粉を糖化して得られた甘酒である前記(1)〜(3)のいずれかのパン類;
(5) 甘酒の添加量が、小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の合計質量に基づいて0.05〜5質量%(乾物換算)である前記(1)〜(4)のいずれかのパン類;および、(6) アミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を更に添加して製造した前記(1)〜(5)のいずれかのパン類;
である。
(7) 小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉を用いたパン類を製造する方法であって、甘酒とイーストを小麦粉以外の澱粉質粉体に添加し混捏して第1段目の生地を最初に調製するか、または甘酒とイーストを小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の一部に添加して第1段目の生地を最初に調製し、それにより得られた第1段目の生地に小麦粉の全量または残りの小麦粉を混合して更に混捏して第2段目の生地を調製してパン類を製造することを特徴とするパン類の製造方法である。
(8) 小麦粉以外の澱粉質粉体:全小麦粉の使用割合が、質量比で、30:70〜70:30である前記(7)のパン類の製造方法;
(9) 甘酒が、米の飯または粥に麹を添加して発酵させて澱粉を糖化して得られる甘酒である前記(7)または(8)のパン類の製造方法;
(10) 甘酒の添加量が、パン類の製造に用いる小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の全合計量に基づいて0.05〜5質量%(乾物換算)である前記(7)〜(9)のいずれかのパン類の製造方法;および、
(11) 第1段目の生地の調製時に甘酒と共に、アミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を更に添加する前記(7)〜(10)のいずれかのパン類の製造方法;
である。
本発明による場合は、原料粉における小麦粉以外の澱粉質粉体の配合割合を多くしても、十分に膨らんでいて、食感、内相、外観などに優れるパン類を良好な工程性で円滑に得ることができる。
甘酒とイーストおよび場合によりアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を小麦粉以外の澱粉質粉体に添加し混捏して第1段目の生地を最初に調製するか、または甘酒とイーストおよび場合によりアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の一部に添加して第1段目の生地を最初に調製し、それにより得られた第1段目の生地に小麦粉の全量または残りの小麦粉を混合して更に混捏して第2段目の生地を調製してパン類を製造する本発明の製造方法による場合は、上記した高品質のパン類を、良好な作業性で円滑に製造することができる。
本発明のパン類は、原料粉として、小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉を用いて製造される。
小麦粉以外の澱粉質粉体としては、グルテン含量が5質量%未満で且つ澱粉含量が60質量%以上である粉体が好ましく用いられ、具体例としては、米粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、そば粉、ジャガイモ粉、各種澱粉等を挙げることが出来る。そのうちでも、パン類の風味、食感などの点から、米粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉がより好ましく用いられ、米粉、トウモロコシ粉が更に好ましく用いられる。
本発明のパン類は、小麦粉以外の澱粉質粉体として、上記した澱粉質粉体の1種を用いて製造されていてもよいし、または2種以上を用いて製造されていてもよい。
ここで、本明細書における「グルテン含量」とは、以下の方法で測定されるグルテン含量をいう。
また、本明細書における「澱粉含量」とは、以下の方法で測定される澱粉含量をいう。
グルトマチックシステム(Perten社製)を用いてウェットグルテンを採取した後、80℃、16時間乾燥させてドライグルテンを得て、重量を測定しグルテン含量を算出した。
粉体の乾物総量より、脂質量、蛋白質量、繊維質量、灰分量を減算した値を澱粉含量とした。
小麦粉以外の澱粉質粉体の使用割合が、小麦粉以外の澱粉質粉体と小麦粉の合計質量(全合計量)に基づいて、30質量%未満の場合、製パン性への影響は小さいものの、小麦粉以外の澱粉質粉体を添加することによる効果も小さくなる。一方、小麦粉以外の澱粉質粉体の使用割合が70質量%を超えると、製パン時の工程性、特にパン生地を調製する際の作業性の低下、得られるパン類の品質の低下などが生じ易くなる。
そのうちでも、米の飯または粥に麹を添加して発酵させて澱粉を糖化して得られる甘酒(本格的製法による甘酒)を用いることが好ましく、それによって、パン体積が大きく、且つ食感、内相、外観などに優れるパン類が得られる。
甘酒(本格的製法による甘酒)の製造に用いる麹としては、米麹、豆麹、麦麹、黒麹などを挙げることができ、そのうちでも米麹が好ましく用いられる。
甘酒(本格的製法による甘酒および簡略的製法による甘酒)の製造条件は、特に制限されず、従来法と同様の製造条件を採用することができる。
本格的製法による甘酒は、一般に、米の粥または水分を多めに柔らかく炊いた飯を、50〜60℃程度の温度で保温しながら10〜12時間程度かけて発酵させて、澱粉を糖化することによって製造される。
本発明では、甘酒を調製し、それを用いて本発明のパン類を製造してもよいし、または市販の甘酒をそのまま用いてパン類を製造してもよい。また、甘酒を液体のまま用いてもよく、甘酒を適当な溶媒を用いて希釈したり、逆に溶媒を除去して濃縮または乾固するなどして用いてもよい。
また、甘酒は、保存料などの食品添加物を含まないことが、安全性、嗜好性の点や製パンに用いるイーストへの悪影響がない点から好ましい。
また、乾物換算ではない、水分を含む甘酒自体の添加量は、甘酒中の固形分含量によって異なり得るが、一般的には、パン類の製造に用いる小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の全合計量に基づいて、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、3〜5質量%であることが更に好ましい。市販の甘酒を用いる場合の添加量は、甘酒に含まれる水分量や、保存料、調味料、甘味料などが甘酒に占める割合を考慮する必要がある。
甘酒の添加量が少なすぎると、パン体積が大きく、且つ食感、内相、外観に優れるパン類を得るのが困難になり易く、一方甘酒の添加量が多すぎると、アルコール臭が強く風味の劣るパンとなり易い。
[パン製造時の甘酒の乾物換算での添加量(質量%)の算出方法]
(i) 甘酒(水分を含む甘酒)5gを、温度80℃の恒温槽中で16時間加熱して乾燥して、その時の固形分の質量A(g)を測定して、下記の数式(1)により、甘酒の固形分濃度B(質量%)を求める。
甘酒の固形分濃度B(質量%)=(A/5)×100 (1)
(ii) 次に、上記(i)で求めた甘酒の固形分濃度B(質量%)を用いて、パン製造時の甘酒(水分を含む甘酒)の添加量C(g)中の固形分の量D(g)を下記の数式(2)により求める。
パン製造時に添加した甘酒中の固形分の量D(g)=C×B/100 (2)
(iii) 上記(ii)で求めたパン製造時に添加した甘酒中の固形分の量D(g)を用いて、下記の数式(3)により、パン製造時の甘酒の乾物換算での添加量E(質量%)を求める。
パン製造時の甘酒の乾物換算での添加量E(質量%)=(D/F)×100 (3)
[上記の式中、Fはパンの製造に用いた小麦粉以外の澱粉質粉体と小麦粉の合計質量(g)を示す。]
しかしながら、本発明では、アミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を添加せずに、甘酒のみを添加してもよく、その場合にも良好な作業性で、パン体積が大きく、食感、内相および外観に優れるパン類を得ることができる。
そのうちでも、得られるパン類の品質、入手容易性、などの点から、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼの一方または両方が好ましく用いられ、α−アミラーゼがより好ましく用いられる。
そのうちでも、得られるパン類の品質、入手容易性、などの点から、グルコースオキシダーゼ、が好ましく用いられる。
甘酒と共に、アミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を更に添加する場合は、当該酵素を第1段目の生地の調製時に添加することが好ましい。
かかる方法を採用することによって、グルテンを含まないかまたはグルテン含量の少ない小麦粉以外の澱粉質粉体を第1段目の調製時に加えられる水に十分に水和させると共に、小麦粉以外の澱粉質粉体と甘酒およびイーストとの間の親和、アミラーゼおよび/またはオキシダーゼを更に添加する場合には小麦粉以外の澱粉質粉体と当該酵素との間の親和がなされて、小麦粉以外の澱粉質粉体の製パン適性が増し、小麦粉以外の澱粉質粉体の製パン適性が増した状態で、以後の製パン工程が行われるため、十分に膨らんでいて体積が大きく、しかも食感、内相および外観に優れるパン類を良好な作業性で円滑に製造することができる。
また、当該方法で本発明のパン類を製造するに当たっては、パン類の製造に用いる小麦粉全体の0〜70質量%、特に10〜50質量%を第1段目の生地の調製時に用い、小麦粉全体の100〜30質量%、特に90〜50質量%を第2段目の生地の調製時に混合することが好ましい。
(i)小麦粉以外の澱粉質粉体に甘酒とイーストおよび場合によりアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を添加し加水して混捏するか、または小麦粉以外の澱粉質粉体と小麦粉の一部に甘酒とイーストおよび場合によりアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を添加し加水して混捏して中種生地(第1段目の生地)を調製する;
(ii)上記(i)で得られる中種生地(第1段目の生地)を発酵させる;
(iii)上記(ii)で得られる発酵物に、小麦粉の全量または小麦粉の残部を混合し加水して本捏生地(第2段目の生地)を調製する;
(iv)上記(iii)で得られる本捏生地(第2段目の生地)を用いて、通常の中種製パン法と同様に、例えば、フロアタイム、分割、ベンチタイム、成型、ホイロ、焼成や油揚げなどを行う;
という一連の工程を経て、本発明のパン類を製造することができる。
(i)小麦粉以外の澱粉質粉体に甘酒とイーストおよび場合によりアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を添加し加水して混捏するか、または小麦粉以外の澱粉質粉体と小麦粉の一部に甘酒とイーストおよび場合によりアミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を添加し加水して混捏して第1段目の生地を調製する;
(ii)上記(i)で得られる第1段目の生地に、発酵を行うことなく、小麦粉の全量または小麦粉の残部を混合し加水して第2段目の生地を調製する;
(iii)上記(ii)で得られる第2段目の生地を用いて、通常のストレート法による製パン法と同様に、例えば、発酵、分割、ベンチタイム、成型、ホイロ、焼成や油揚げなどを行う;
という一連の工程を経て、本発明のパン類を製造することができる。
上記第1段目の生地と第2段目の生地を調製してパン類を製造する前記方法を採用してパン類を製造するに当たっては、第1段目および第2段目の生地を調製する際の加水量、混捏、発酵、フロアタイム、分割、ベンチタイム、ホイロ、焼成または油揚げなどの各工程における作業方法や作業条件(温度、時間など)は特に制限されず、製造するパン類の種類や製パン方法などに応じて、従来と同様の作業方法や作業条件を採用することができる。
また、本発明では、甘酒、イースト、アミラーゼおよびオキシダーゼ以外に、パン類を製造する際に従来から用いられている副資材の1種または2種以上を用いることができ、本発明で用い得る副資材の具体例としては、砂糖やその他の糖類;卵または卵粉;脱脂粉乳、全脂粉乳、生乳、チーズ、ヨーグルト、ホエーなどの乳製品;ショートニングやバター、マーガリンやその他の動植物油などの油脂類;乳化剤;食塩などの無機塩類;食物繊維;コーヒーやココアなどの呈味料;果汁;甘味料;香料;色素などを挙げることができる。
前記した副資材を添加する場合は、体積が大きく且つ食感、内相、外観などに優れるパン類を得るために、第1段目の生地の調製時に添加せずに、第2段目の生地の調製時に添加することが好ましい。
以下の例において、パン体積は菜種法で測定した。
また、以下の例において、パン製造時の作業性は、パンを製造した作業者(2名)が下記の表1に示す作業性の評価基準にしたがって評価して、その平均値を採った。
また、得られたパンの品質(食感、内相および外観の評価)は、以下の表1に示す評価基準に従って5名のパネラーが点数評価を行い、その平均値を採ることによって行った。
以下の実施例において、甘酒、酒粕および麹の配合量は、乾物換算での配合量を示したが、配合する際は、乾物状態または水を含んだ状態のいずれでも行った。
(1) 下記の表2に示す配合にて、中種法により食パンを製造した。
ここでは、小麦粉以外の澱粉質粉体として米粉(木徳神糧社製「米粉ファイン;グルテン含量0質量%)を用い、甘酒は丸昌稲垣(株)製の甘酒(「民芸あまざけ」)(固形分含量20質量%)を105℃で10分間加熱して微生物を失活させたものを用い、酒粕は山田酒造食品(株)社製「吟醸酒の酒粕」を加熱処理せずに用い、麹は(株)伊勢惣社製「みやここうじ」を105℃で10分間加熱して微生物失活させたものを用いた。
また、α−アミラーゼとしてダニスコ社製「GRINDAMYL A 10000」、グルコースオキシダーゼとしてダニスコ社製「GRINDAMYL S 757」、イーストとして生イースト(オリエンタル酵母工業社製「オリエンタルイースト」)を用いた。
(3) 次に第2段目(本捏生地作成)工程として、上記(2)で得られた第1段目の生地(中種生地)に、下記の表2に示す第2段目の生地配合(本捏生地配合)の材料を加えて、低速で7分間ミキシングを行なって、第2段目生地(本捏生地)を得た(捏上温度:27℃)。次いで、この生地を温度27℃、相対湿度75%の雰囲気下で30分間発酵させ(フロアタイム)、次いで250gずつ分割して丸め、ベンチタイムを20分間とった後、生地を棒状にしてそれを3つ折にしたもの2本を食パン型に詰めた。その際に、第1段目生地(中種生地)および第2段目生地(本捏生地)の調製時の作業性を表1に示す評価基準にしたがって評価したところ、表2に示すとおりであった。
(5) 上記(4)で得られた食パンを室温(25℃)で1日間静置した後、そのパン体積を菜種法で測定すると共に、食パンの品質(食感、内相および外観)を表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーに評価してもらってその平均値を採ったところ、表2に示すとおりであった。
そして、実施例2では、小麦粉以外の澱粉質粉体(米粉)と小麦粉からなる原料粉に甘酒を添加してパンを製造するに当たって、甘酒と共にアミラーゼおよびオキシダーゼを更に添加したことにより、パン体積が一層大きく、しかも食感、内相および外観に一層優れるパンが得られている。
また、比較例2および3では、小麦粉以外の澱粉質粉体(米粉)および小麦粉を原料粉として用いてパンを製造するに当たって、甘酒を添加せずに、酒粕または麹を添加したことにより、生地に締まりがなく、生地が弛んでいて、ベタツキがあり、製パン時の作業性に劣り、しかも得られたパンは、体積が小さく、食感、内相および外観にも劣っていて、高品質のパンが得られない。
(1) 実施例2において、第1段目の生地配合(中種生地配合)および第2段目の生地(本捏生地配合)における米粉および小麦粉の配合量(配合比率)を、下記の表3に示すように変化させて、実施例2と同じ製パン材料を用いて実施例2と同じ工程を行って食パンを製造した。
(2) 上記(1)の食パンの製造時における第1段目生地(中種生地)および第2段目生地(本捏生地)の調製時の作業性を表1に示す評価基準にしたがって評価したところ、表3に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた食パンを室温(25℃)で1日間静置した後、そのパン体積を菜種法で測定すると共に、食パンの品質(食感、内相および外観)を表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーに評価してもらってその平均値を採ったところ、表3に示すとおりであった。
(1) 実施例2において、第1段目生地(中種生地)の調製時における甘酒の添加量を、下記の表4に示すように変えて、実施例2と同じ製パン材料を用いて実施例2と同じ工程を行って食パンを製造した。
(2) 上記(1)の食パンの製造時における第1段目生地(中種生地)および第2段目生地(本捏生地)の調製時の作業性を表1に示す評価基準にしたがって評価したところ、表4に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた食パンを室温(25℃)で1日間静置した後、そのパン体積を菜種法で測定すると共に、食パンの品質(食感、内相および外観)を表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーに評価してもらってその平均値を採ったところ、表4に示すとおりであった。
(1) 実施例2において、第1段目生地(中種生地)の調製時に添加する酵素の種類および酵素の添加量を、下記の表5に示すように変えて、実施例2と同じ製パン材料を用いて実施例2と同じ工程を行って食パンを製造した。
ここでは、α−アミラーゼ、グルコースオキシダーゼは、実施例2で用いたのと同じものを用い、ヘミセルラーゼとしてはDKSH社製「Bakezyme HS2000」を、リパーゼとしては天野エンザイム(株)製「リパーゼA「アマノ」6」を、プロテアーゼとしては天野エンザイム(株)製「プロテアーゼA「アマノ」」を用いた。
(2) 上記(1)の食パンの製造時における第1段目生地(中種生地)および第2段目生地(本捏生地)の調製時の作業性を表1に示す評価基準にしたがって評価したところ、表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた食パンを室温(25℃)で1日間静置した後、そのパン体積を菜種法で測定すると共に、食パンの品質(食感、内相および外観)を表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーに評価してもらってその平均値を採ったところ、表5に示すとおりであった。
一方、上記の表5の結果にみるように、小麦粉以外の澱粉質粉体(米粉)および小麦粉を原料粉として用い、それに甘酒を添加してパンを製造する際に、リパーゼまたはプロテアーゼを更に添加すると、製パン時の作業性が低下し、しかもパン体積、パンの食感、内相および外観も劣ったものとなり、甘酒を添加したことによる効果が発揮されない。
そのため、本発明では、リパーゼおよび/またはプロテアーゼを添加しないのがよい。
(1) 下記の表6に示す配合にて、ストレート法(直捏法)により食パンを製造した。
ここでは、実施例1〜2で使用したのと同じ米粉、小麦粉、甘酒(加熱して微生物を失活させたもの)、酵素(α−アミラーゼおよびグルコースオキシダーゼ)、イーストを用いた。
(2) 具体的には、第1段階の生地作成工程として表6に示す第1段目の生地配合を用いて、低速で4分間ミキシングを行なって(捏上温度:24℃)、第1段目生地を調製し、次いで当該第1段目生地に、発酵させることなく第2段目の生地配合物を混合して低速で7分間混捏した。
(3) 上記(2)で得られた混捏生地(第2段目生地)を、温度27℃、相対湿度75%の条件下で2時間発酵させた後、250gずつ分割して丸め、ベンチタイムを20分間とった後、生地を棒状にしてそれを3つ折にしたもの2本を食パン型に詰めた。その際に、生地の調製時の作業性を表1に示す評価基準にしたがって評価したところ、表6に示すとおりであった。
(4) その後、ホイロ(温度38℃、相対湿度85%の雰囲気下)を50分間行なった後、温度215℃で30分間焼成して食パンを得た。
(5) 上記(4)で得られた食パンを室温(25℃)で1日間静置した後、そのパン体積を菜種法で測定すると共に、食パンの品質(食感、内相および外観)を表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーに評価してもらってその平均値を採ったところ、表6に示すとおりであった。
特に、甘酒を0.05〜5質量%の範囲内の量で添加した実験番号2〜4では、体積がより大きく、しかも食感、内相および外観により優れる高品質のパンを、一層良好な作業性で得られている。
(1) 実施例2および比較例1において、下記の表8に示すように米粉の代わりにタピオカ澱粉(松谷化学工業「パインベークCC」;グルテン含量0質量%)、ライ麦粉(日清製粉「アーレファイン」;グルテン含量0質量%)、とうもろこし粉(サニーメイズ「コーンフラワーNo.7」;グルテン含量0質量%)またはジャガイモ粉(クレードル食品「マッシュポテトパウダー」;グルテン含量0質量%)を用い、それ以外は実施例2または比較例1と同様に中種法によって食パンを製造した。
(2) 上記(1)の食パンの製造時における第1段目生地(中種生地)および第2段目生地(本捏生地)の調製時の作業性を表1に示す評価基準にしたがって評価したところ、表8に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた食パンを室温(25℃)で1日間静置した後、そのパン体積を菜種法で測定すると共に、食パンの品質(食感、内相および外観)を表1に示す評価基準にしたがって5名のパネラーに評価してもらってその平均値を採ったところ、表8に示すとおりであった。
Claims (3)
- グルテン含量が5質量%未満である小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉を用いて、甘酒を添加してパン類を製造する方法であって;
グルテン含量が5質量%未満である小麦粉以外の澱粉質粉体と小麦粉を、当該小麦粉以外の澱粉質粉体:全小麦粉=30:70〜70:30の質量比で用い;
甘酒を、パン類の製造に用いる前記小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の全合計量に基づいて0.05〜5質量%(乾物換算)の割合で添加し;且つ、
甘酒とイーストを前記小麦粉以外の澱粉質粉体に添加し混捏して第1段目の生地を最初に調製するか、または甘酒とイーストを前記小麦粉以外の澱粉質粉体および小麦粉の一部に添加して第1段目の生地を最初に調製し、それにより得られた第1段目の生地に小麦粉の全量または残りの小麦粉を混合して更に混捏して第2段目の生地を調製してパン類を製造する;
ことを特徴とするパン類の製造方法。 - 甘酒が、米の飯または粥に麹を添加して発酵させて澱粉を糖化して得られる甘酒である請求項1に記載のパン類の製造方法。
- 第1段目の生地の調製時に甘酒と共に、アミラーゼおよびオキシダーゼから選ばれる酵素の1種または2種以上を更に添加する請求項1または2に記載のパン類の製造方法。
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