JP4469296B2 - 自動車のフロアパネル - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のフロアパネルに係り、車体強度や乗り心地の向上を図る技術に関する。
モノコック構造の自動車(以下、モノコック車と記す)は、薄鋼板をプレス成型することで多数のボディパネルを製造した後、これらボディパネルをスポット溶接等により接合することでボディが製造される。モノコック車では、通常、フロアパネルの車幅方向中央にフロアトンネルが形成されている。フロアトンネルは、本来、FR車においてエンジンの駆動力を後車軸に伝えるプロペラシャフトを通すために形成されたものであるが、プロペラシャフトを要さないFF車においては、専らボディ剛性を高める目的で設けられている。
モノコック車ではフュエルタンクがボディ後部(リヤシートとトランクルームとの間)に設置されることが一般的であるが、このようなレイアウトを採った場合、車体の小さい小型車では居住スペースや荷室を十分に確保することが難しい。そこで、本出願人は、フュエルタンクをボディ中央の下部に設置し、車室容積の拡大や後面衝突安全性の向上等を可能とした、いわゆるセンタタンクレイアウトを過去に提案した(特許文献1参照)。この提案に係るセンタタンクレイアウトでは、上述した従来のフロアトンネル(縦フロアトンネル)に加え、縦フロアトンネルの左右側部からサイドシルに向けて左右横フロアトンネルを延設し、これら左右横フロアトンネルとリヤシート下方の床面とを滑らかな斜面でつなぐことによりフュエルタンクの設置スペースをフロアパネルの下面に形成している。
特開2002−302071号公報(段落0010、図1) 特許第3500626号公報(段落0018、図12)
上述した従来のセンタタンクレイアウトでは、左右横フロアトンネルを設けることにより、車室容積の拡大や低床化等を実現しながら、ボディの強度や剛性を比較的高くすることができた。しかしながら、フュエルタンクが配置されることによりフロアパネルの下面側には凹部が殆どなくなるため、衝突時における安全性を向上させようとしても、フロアパネルの下面にクロスメンバ等を追加することが難しかった。なお、フュエルタンクを小型化して、その前方等にクロスメンバを設置することは可能であるが、この場合には、当然のことながら搭載可能燃料量が減少し、航続距離の減少や給油頻度の増加がもたらされることになる。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、センタタンクレイアウトを採用した自動車において、ボディ剛性や乗り心地の向上を実現したフロアパネルを提供することを目的とする。
請求項1の発明は、車幅方向中央にあって前後方向に延在する縦フロアトンネル(7)と、前記縦フロアトンネル(7)の側部から左右サイドシル(2,3)に向けて延設された左右横フロアトンネル(8,9)とを備え、前記左右横フロアトンネル(8,9)の下方にフュエルタンク(6)が配置される自動車のフロアパネル(1)において、前記縦フロアトンネル(7)を貫通してその両端が前記左右サイドシル(2,3)に連結されるクロスメンバ(20)を前記左右横フロアトンネル(8,9)の前方に設置してなり、前記クロスメンバ(20)は、左右方向に延在するメンバ本体(21)と、当該メンバ本体(21)の長手方向中央に接合された略コ字形状のセンタブラケット(22)とを有し、前記縦フロアトンネル(7)の左右側面には、前記クロスメンバ(20)の設置部位に略U字形状の切欠(7a,7b)が形成され、前記センタブラケット(22)は、メンバ本体(21)が前記切欠(7a,7b)に嵌入する状態で前記縦フロアトンネル(7)に溶接されたことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車のフロアパネルにおいて、前記クロスメンバにフロントシートの前脚部を支持させたことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、クロスメンバがフロントシート下方のスペースに設けられるため、フロントシート側の乗員の足下スペースが確保され、リヤシート側の乗員の足下スペースも犠牲にされない。これにより、フュエルタンク容量や車室スペースを減少させることなく、ボディの強度や剛性の向上が実現される。また、請求項2の発明によれば、フロントシートの支持剛性等が向上してフロアパネルの振動が乗員に伝わりにくくなる。
以下、図面を参照して、本発明を適用した自動車のフロアパネルの一実施形態を詳細に説明する。
図1は実施形態に係るフロアパネルを斜め上方から視た斜視図であり、図2は同フロアパネルを斜め下方から視た斜視図であり、図3はフロアパネルの分解斜視図であり、図4はフロアパネルの車幅方向左側の縦断面図であり、図5は図4中のA部拡大図であり、図6は図1中B部の拡大断面図であり、図7は図1中C部の拡大断面図である。
≪実施形態の構成≫
<全体構成>
本実施形態は、ハッチバック乗用車のフロアパネルに本発明を適用したものである。図1,図2に示すように、フロアパネル1は、比較的薄い鋼板を素材とするプレス成形品であり、車室の前後方向中間部の床を構成すべく平面視で略正方形を呈するとともに、ビードや凹凸を形成することにより平面部の剛性を確保している。フロアパネル1には、前縁(図1における左手前側)1Fにフロントダッシュボード(図示せず)が結合され、後縁(図1における右奥側)1Rに荷室の床と一体をなすミッドクロスメンバ(図示せず)が結合される。また、フロアパネル1の左右側縁1Sl・1Srには略コ字断面形状の左右サイドシルインナ2,3がそれぞれ溶接接合されており、これらサイドシルインナ2,3に外板パネルであるサイドシルアウタ(図示せず)が結合される。
図1に示すように、フロアパネル1の上面には、前寄りの部位に左右フロントシート4,5が取り付けられる。また、図2に示すように、フロアパネル1の下面中央には、やはり前寄りの部位にフュエルタンク6が取り付けられる。
図3に併せて示すように、フロアパネル1における車幅方向の中央部には、前後方向での曲げ剛性を高めるために、断面形状が略台形をなし、室内側に突出した縦フロアトンネル7が前後方向に延設されている。そして、縦フロアトンネル7の前寄りの位置には、左右方向についての曲げ剛性を高めるために、縦フロアトンネル7の側部から左右サイドシルインナ2,3に向けて左右横フロアトンネル8,9が、室内側に突出して形成されている。
左右横フロアトンネル8,9は、図4(左側)に併せて示すように、フロントシート4(5)側の床面の一部をなす前部水平部1fhから前壁8fw(9fw)が立ち上げられ、前壁8fw(9fw)の上端から後方へ延出された後に傾斜面8ic(9ic)でリヤシート10側の床面をなす後部水平部1rhに接続されている。
傾斜面8ic(9ic)の下面における後端側には、断面形状が溝形をなす後部補強部材11が、その前後縁のフランジをスポット溶接にて結合されている。これにより、車幅方向に延在する閉断面部が傾斜面8ic(9ic)の後端側の下面に形成されることになる。左右横フロアトンネル8,9によってフロアパネル1の下面に画成された下向きに凹となる空間は、フュエルタンク6の設置場所として利用される。そしてフロアパネル1の下面におけるフュエルタンク6の左右両側部には、前後方向に沿って側部補強部材12l・12rが延設されている。
<クロスメンバ>
図1に示すように、フロアパネル1には、左右横フロアトンネル8,9の前方の部位にクロスメンバ20が設置されている。クロスメンバ20は、鋼管を素材とする円筒状のメンバ本体21と、メンバ本体21の長手方向中央に溶接接合された略コ字断面形状のセンタブラケット22と、メンバ本体21の両端に溶接接合された略L字断面形状の左右サイドブラケット23,24とを備えている。メンバ本体21の上部には、左右それぞれ一対のフロントシートブラケット25が所定の間隔をもって溶接されている。フロントシートブラケット25は、図5に示すように、下方(メンバ本体21側)が開いた略コ字断面形状を呈しており、その内下面にウエルドナット26が取り付けられている。
縦フロアトンネル7の左右側面にはクロスメンバ20の装着部位に略U字形状の切欠7a,7bが形成されており、クロスメンバ20のセンタブラケット22は、図5,図6に示すように、メンバ本体21がこれら切欠7a,7bに嵌入する状態(すなわち、縦フロアトンネル7を貫通するかたち)で縦フロアトンネル7にスポット溶接される。また、クロスメンバ20の左右サイドブラケット23,24は、図7に示すように、サイドシルインナ2,3の上面および側面にスポット溶接される。なお、図6,図7には、スポット溶接部を符号SWで示す。
左右のフロントシート4(5)は、図4に示すようにシートレール15の下面に前脚16および後脚17を有しており、図5にも示すように前脚16がフロントシートブラケット25に締結され、後脚17が傾斜面8ic(9ic)に設置されたリヤシートブラケット18に締結される。なお、図5中の符号19は締結用のボルトを示す。
≪実施形態の作用≫
自動車の走行時あるいは停車時において、他の車両や障害物が自動車の側面や正面に衝突することがある。例えば、フロントドアの側面に他の車両が衝突した場合には、フロアパネル1にはサイドシルから大きな衝突荷重が入力することになる。ところが、本実施形態では、左右のサイドシルインナ2,3と縦フロアトンネル7とがクロスメンバ20によって連結されているため、衝突エネルギがフロアパネル1全体に分散・吸収され、フロアパネル1の大きな変形が起こり難くなる。また、車体正面に他の車両が衝突した場合には、フロアパネル1の前部中央を下方に沈み込ませるかたちで衝突荷重が作用することが多い。ところが、この場合にも、縦フロアトンネル7がクロスメンバ20によって拘束されているため、フロアパネル1の前部中央のみが沈み込み難くなり、乗員の安全性が向上する。
一方、自動車の走行中において、フロアパネル1にはエンジン振動や走行振動がダッシュボードやアウタパネルを介して伝達され、運転席や助手席の床面(フロアパネル1の前部水平部1fh)が振動する。しかしながら、本実施形態の場合、フロントシート4,5の前脚16がクロスメンバ20に締結されているため、床面の振動がフロントシート4,5に直接伝達されなくなって快適な乗り心地が実現される。なお、フロントシート4,5の後脚17はフロアパネル1の傾斜面8ic(9ic)に締結されているが、後脚17には乗員の体重の多くが掛かるため、後脚17からフロントシート4,5への振動の伝達は起こり難い。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、クロスメンバとして、鋼管を素材とする円筒状のものを採用したが、鋼板プレス成型品で矩形断面のもの等を採用してもよい。また、クロスメンバの縦フロアトンネルや左右サイドシルとの連結についても、ボルトを用いての締結等を採用するようにしてもよい。その他、フロアパネルの具体的構造等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
実施形態に係るフロアパネルを斜め上方から視た斜視図である。 実施形態に係るフロアパネルを斜め下方から視た斜視図である。 実施形態に係るフロアパネルの要部分解斜視図である。 実施形態に係るフロアパネルの車幅方向左側の縦断面図である。 図4中のA部拡大図である。 図1中B部の拡大断面図である。 図1中C部の拡大断面図である。
符号の説明
1 フロアパネル
2,3 サイドシルインナ
4,5 フロントシート
6 フュエルタンク
7 縦フロアトンネル
8,9 横フロアトンネル
16 前脚
20 クロスメンバ
21 メンバ本体
22 センタブラケット
23 サイドブラケット
25 フロントシートブラケット

Claims (2)

  1. 車幅方向中央にあって前後方向に延在する縦フロアトンネル(7)と、前記縦フロアトンネル(7)の側部から左右サイドシル(2,3)に向けて延設された左右横フロアトンネル(8,9)とを備え、前記左右横フロアトンネル(8,9)の下方にフュエルタンク(6)が配置される自動車のフロアパネル(1)において、
    前記縦フロアトンネル(7)を貫通してその両端が前記左右サイドシル(2,3)に連結されるクロスメンバ(20)を前記左右横フロアトンネル(8,9)の前方に設置してなり
    前記クロスメンバ(20)は、左右方向に延在するメンバ本体(21)と、当該メンバ本体(21)の長手方向中央に接合された略コ字形状のセンタブラケット(22)とを有し、
    前記縦フロアトンネル(7)の左右側面には、前記クロスメンバ(20)の設置部位に略U字形状の切欠(7a,7b)が形成され、
    前記センタブラケット(22)は、メンバ本体(21)が前記切欠(7a,7b)に嵌入する状態で前記縦フロアトンネル(7)に溶接されたことを特徴とする自動車のフロアパネル。
  2. 前記クロスメンバ(20)にフロントシート(4,5)の前脚部(16)を支持させたことを特徴とする、請求項1に記載の自動車のフロアパネル。
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